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最終更新日 2024年10月29日

ページID 20218

区長記者会見(令和6年10月17日)

令和6年10月17日(木曜日)、保坂展人(ほさかのぶと)区長が記者会見を行いました。

動画はこちらからご覧になれます。

会見で使用したスライド資料は、こちらをご覧ください。(PDF:5,404KB)

令和6年10月17日区長定例記者会見
記者会見の様子

区長あいさつ

令和6年度第5回記者会見を始めます。

まず、悲しいニュースが飛び込んでまいりました。「ぐりとぐら」の作者として知られている児童文学者の中川李枝子(なかがわりえこ)氏が、10月14日(月曜日)に89歳で逝去されました。中川李枝子氏は、世田谷区名誉区民として顕彰させていただき、区民が参加するイベントなどにもご登場いただきました。また、新庁舎の完成にあたり、東棟10階では中川氏の絵本に関する展示も行っていました。

昭和37年に児童文学作家としてデビューされ、当時駒沢にあった保育園の保育士としての経験を活かし、「いやいやえん」、「ぐりとぐら」や「くじらぐも」など、多くの方に愛される作品を発表されました。日本を代表する児童文学者としての中川氏の歩みは、大きな影響があったものと思います。心からご冥福をお祈りいたします。

続いて、能登半島の被災地支援についてです。区ではこれまで、令和6年能登半島地震の被災地支援の一環として、「世田谷区能登半島地震災害支援金」の募集を行い、あわせて都の対口支援先である輪島市へ職員を派遣するなどの支援を行ってきました。

私自身、職員とともに4月26日(金曜日)に輪島市と珠洲市を訪問し、両市長へ500万円ずつ寄贈しました。地震の影響が残っているなかで、9月21日(土曜日)に両市を襲った大雨では土砂崩れなど大きな被害があり、犠牲になった方も多くいらっしゃいました。今回、改めて能登半島地震災害支援金から500万円ずつを、輪島市、珠洲市に危機管理官を団長とする派遣団からお渡ししました。派遣団は10月3日(木曜日)から6日(日曜日)にかけて現地を訪問し、両市の担当者や市長とお話しして、輪島市からは土のう袋の支援を求められたことから、急遽金沢市で土のう袋を調達するとともに、現在、土のう袋を寄贈する手配を進めています。また、珠洲市では、泉谷市長から説明を受けるとともに、罹災証明の発行等で、税関係に携わる職員の中長期的な支援が求められました。こちらも庁内で派遣できる体制を準備しているところです。

また、災害支援金の募集にもさらに力を入れるため、私自身も10月6日(日曜日)に二子玉川駅周辺で街頭募金を実施しました。1時間ほどで多くの方からの支援をいただき30万円弱が集まりました。二重の災害に見舞われた被災地へ確実に届けていきます。今後も被災地に寄り添った支援を続けていきます。

次に、第46回世田谷区たまがわ花火大会についてです。10月5日(土曜日)に開催し、当日はあいにくの天気ではありましたが、昨年は風の関係で上げられなかった尺玉花火を135発打ち上げ、約27万人という多くの方に観覧いただきました。対岸の川崎市では、市制100周年を記念して1万発の花火を打ち上げ、同じ時間帯に多摩川の両岸で花火大会を無事開催することができました。警備に当たられた警察、消防の方、翌日のクリーン作戦を含めて会場の整備にご協力をいただきました皆様に御礼を申し上げます。

次に、総合教育会議についてです。今年度第2回目として「子どもたち一人ひとりの個性を引き出す多様な学び」をテーマに、10月19日(土曜日)に、教育総合センターで開催します。第1部の基調講演では、総務省地域力創造アドバイザーをはじめ、多方面で活躍されている船木成記(ふなきしげのり)氏に「地域づくりの視点から、学びの意味を捉え直したい~『学習する地域』づくりについて~」を講演いただきます。また、取組み紹介として、学びの多様化学校いわゆる不登校特例校に関することとして、不登校特例校分教室「ねいろ」から報告していただく予定です。

第2部では、私と教育委員のほかに、ゲストとして第1部で講演いただいた船木氏も交えてディスカッションを行います。区では、多様な学びが獲得できる新しいタイプの学校というものも現在準備中であり、そうしたことも含めた議論になるかと思います。後日、区公式YouTubeで配信しますのでぜひご覧いただければと思います。

次に、9月23日(月曜日・祝)から10月2日(水曜日)にかけて、姉妹都市であるオーストラリア・バンバリー市の小学生団が区を来訪しました。バンバリー市はオーストラリア西部の、インド洋に面している都市で、1992年に姉妹都市を提携して今年で32年が経ちます。昨年度、バンバリー市のミゲル市長が初めて区を来訪されましたが、市長自身も、子どもの頃に訪問団の一員として世田谷区に来たことがあるということで、大変懐かしがっていました。小学生団の来訪は新型コロナウイルス感染症の関係で休止していましたが、今回は5年ぶりの来訪で、「区長としてのやりがいは?」など子どもたちから多くの質問をいただきました。

小学生団は、区内にグラウンドのあるリコーブラックラムズ東京とのラグビー交流も行いました。また、区立小学校への訪問では、日本の伝統楽器の琴や和太鼓、そして、習字等を体験するなど、交流を深めました。週末は、区内のホームステイボランティア家庭宅でホームステイし、日本の生活を体験しました。今後も様々な交流を行っていきたいと思います。

区では3都市と姉妹都市提携しており、その内のオーストリア・ウィーン市・ドゥブリング区は、区と似た住宅地で、今年、姉妹都市提携40周年となります。10月21日(月曜日)から26日(土曜日)にかけて、ドゥブリング区を訪問し、姉妹都市提携再確認調印式典に出席します。交流の絆を再確認したいと思います。ドゥブリング区にある「世田谷パルク(公園)」を訪問予定で、この公園は本格的な日本庭園であり、故中島健(なかじまけん)氏の設計により造られ、茶室や雪見灯篭、多くの石像、泉水があり、四季の花々が楽しめます。私が訪問するのと同時期に、区の小学生訪問団が現地を訪問するため、その交流の様子も見せていただく予定です。

次に、10月31日(木曜日)から11月5日(火曜日)にかけて二子玉川で開催される、日本最大規模の子ども国際映画祭である第31回キネコ国際文化祭についてです。一般社団法人キネコ・フィルム主催、世田谷区共催で、二子玉川を会場として8回目の開催となります。

多摩川の河川敷での野外上映のほか、シネコンでの世界の短編・長編含めた子ども向け映画の秀作を上映する映画祭です。今回のテーマは「PLAY&PRAY FOR PEACE」とし、メインビジュアルでは争いがやまない世界情勢に悲しむキネコが描かれています。今年は2年ぶりに熱気球が上がる他、河川敷ではミュージックライブが開催され、坂本美雨(さかもとみう)氏とおおはた雄一(ゆういち)氏のユニット「おお雨」がスペシャルゲストとして参加予定です。区内で活動する多彩なミュージシャンも参加しますのでお楽しみいただければと思います。キネコ国際映画祭ならではのライブシネマ、映画の生吹替に、今年は24名の区民の方が参加されます。「世田谷KLAs(クラス)」として、プロの声優の方々と2か月間も練習をされてきたとのことです。また、優秀賞などの選定に、区内を中心とした子どもたちが審査員として参加します。このようなユニークな催しを行っていることをご紹介したいと思います。

発表項目

世田谷区名誉区民の顕彰について

この度、令和6年3月の区立世田谷区民会館のリニューアルオープンを記念して、区民の生活・文化に貢献され、区民から敬愛される3名の方を世田谷区名誉区民として顕彰します。

まず、一人目の桑島俊彦(くわじまとしひこ)氏は、世田谷区商店街振興組合連合会理事長や、世田谷区商店街連合会会長を務められ、また、長年にわたって全国や都の商店街振興組合連合会理事長なども歴任され、区はもとより全国の商店街の振興に貢献をされてきました。

二人目の本夛一夫(ほんだかずお)氏は、劇場経営者、俳優としてご活躍されています。本多劇場をはじめ、下北沢だけで8つの劇場を運営されており、下北沢といえば劇場がある、芝居の街という土台を作ってこられました。長年にわたり文化・芸術を身近に触れ、楽しむことができる地域づくりに貢献されてきました。

三人目の横尾忠則(よこおただのり)氏は、美術家、画家、グラフィックデザイナー、版画家、作家としてマルチに活躍されています。長年にわたり、日本各地、世界各国で個展を開催するなど世界的なアート活動を通して、世田谷区の文化・芸術の進展に貢献をされてきました。90歳を目前にしながら、ものすごいエネルギーで製作活動をされています。

令和7年1月5日(日曜日)には、リニューアルした世田谷区民会館において、新しい名誉区民の皆さんをお披露目する顕彰式を挙行する予定です。新しい年の初めに、区民の皆さんとともに、その功績をたたえて祝福したいと考えています。

余剰電力の仮想個人間電力取引について

次に、新しい挑戦だと考えている、余剰電力の仮想個人間電力取引についてです。

余剰電力を高く買い取ってもらえるなど、FIT制度(固定価格買取制度)が再生可能エネルギーの拡大に貢献しましたが、FITには期限があり、期間が切れると随分と買値が安くなるように感じます。区では令和4年に地球温暖化対策地域推進計画を見直し、2030年の温室効果ガス排出量を、2013年度比で57.1%削減する目標を掲げて、脱炭素社会の構築に向けた様々なプロジェクトを進めようとしています。今回はその1つ、成城地区でゼロエミッションの地域づくりに取り組んでいる「脱炭素地域づくり」の一環として取組む事業のご紹介です。

この事業は、発電した電力が余った時に、地域の中に電力ミニマーケットをつくり、仮想のP2P電力取引市場において、地域の中で電力の売買取引を行うものです。これまで20件程度の規模での実証実験はあったようですが、300件程度の規模で実施するのは、日本初の挑戦です。電気の地産地消を実現していく、再生可能エネルギーを地域内で活用することで、サスティナビリティに貢献する取組みだと思います。発表スライドに記載しているデマンドレスポンスについて、最近は都でも補助が手厚くなっていますが、太陽光等で余分に発電した電気を蓄電池にプールし、それを逆潮流で放電することが可能になったようです。つまり、充電した電気を送電することができるようになります。それにより電力の供給量を調整する仕組みで、これを活用しながら、例えば個人間取引の仕組みの中に組み込めないかと考えています。また、これまでの太陽光発電の欠点として、台風などが多い日本では、太陽光発電のパネルを支えるのに、相当程度の頑丈さが必要で重量が課題でした。次世代分散型電源として、接着剤等で貼り付けられるフレキシブルソーラーも普及させていく。こうした取組みを通して電力の地産地消を進めていきたいと考えています。区のCO2排出の多くは一般家庭によるものですので、非化石燃料電気の使用によって、CO2削減を推進していきたいと思っています。

本事業の実施にあたっては、株式会社JERAをはじめとする5社との基本合意を締結し、各社の持つ知見や技術的な協力を受けながら進めていきます。なお、本事業は都の「環境政策加速化事業」のうち、「将来性のある先進的事業」の令和6年度採択事業として実施します。

続いて、区の再生可能エネルギー100%電力の導入促進についてです。令和6年10月より、新たに公共施設5施設にて、再生可能エネルギー100%の電力供給を開始しました。このCO2削減効果は約1,350トン-CO2です。また、電力供給を行う小売電気事業者のしろくま電力株式会社のご提案により、この機会に区民の方々にも再エネ100%電気への切り換えをご検討いただくことで、区内の脱炭素化をより推進していきたいということで、「世田谷区民限定!電気代&CO2ダブルカットキャンペーン!」を開催しています。期間内にしろくま電力の再エネ100電力に切り替えた区民の方向けに、せたがやPay5,000円分相当のポイントを還元するキャンペーンです。

今後も脱炭素化の取組みを、区民参加を通して、具体的な技術革新も合わせながら進めていきたいと思っています。

福祉人材確保と安定経営のための緊急事業者支援について

次に、福祉人材確保と安定経営のための緊急事業者支援についてです。

区内では、特別養護老人ホームや訪問介護事業所、障害者のための施設や在宅サービス事業所など、合わせて1,500を超える高齢者・障害者施設等が運営されています。高齢者や障害者の生活を支え、欠かすことのできない介護福祉の仕事が、現在、働く世代の減少や物価高騰等の社会状況の変化を背景に深刻な人手不足に悩んでいます。令和6年の国の報酬改定で、全体として介護1.59%、障害1.12%の引き上げがありましたが、高齢者の訪問介護は、2~3%引き下げられてしまいました。理由としては、例えばサービス付高齢者住宅など、高齢者が集合的にお住まいの場合、訪問の負担が小さく利益率が高いためということのようです。確かに、大手事業者にはそのように利益率が高いところもあるかもしれませんが、介護する家庭を1軒1軒回っているという事業所はやはり大変です。経営危機や事業所閉鎖という事態が起きています。令和6年上半期の介護事業所の倒産件数は、介護保険制度の施行以降、最多となっている危機的状況で、区も例外ではありません。

区は、福祉人材の確保や安定経営に必要な経費を補い、区民に必要な福祉サービスの事業継続を支えるため、給付金の支給による緊急安定経営事業者支援策を実施します。

具体的には、高齢者の訪問介護等事業所は1事業者あたり88万円。高齢者と障害者の居宅系サービス事業所は1事業所あたり28万円。そして、高齢者と障害者の通所・入所系施設は定員1人あたり約2万7,000円です。予算総額は約8億7,500万円となっています。

また、区ではこれまで、福祉の現場で働いている方々を応援してきましたが、今後も、例えば法人が住宅を借りあげた際に、最大8万2,000円の家賃を助成する制度など、都の制度や区独自のものも組み合わせて、介護の現場で働く職員の皆さんの給料を支援していきたいと思います。

同性パートナーにおける住民票への続柄の記載について

区では、平成27年11月に、渋谷区とともにパートナーシップ宣誓の取組みを開始しました。

現在では、同様の制度を導入している自治体の人口総数は1億人を超え、いわゆる人口カバー率は8割を超えています。

同性カップルの住民票の続柄欄については、長崎県大村市で「夫(未届)」と記載された事例が大きく報道され、7月以降にも、新たに全国の7自治体で、「夫・妻(未届)」と記載する取扱いが始まっています。区においても、区議会の議論を踏まえ、区民の声としても、当事者に寄り添った記載にしてほしい、「妻(未届)」の表記にできる日が待ち遠しい、「縁故者」では不十分で実態に近い記載をしてほしい、大村市などと同様の取扱いを検討いただきたい、といったお声をいただく中で、取扱開始に向けて制度設計等の具体的な準備を進めてきたところです。

令和4年11月より、パートナーシップ宣誓またはファミリーシップ宣誓を行った方の住民票の続柄について、本人からご希望があった場合には「縁故者」と記載する取扱いを行ってきましたが、令和6年11月より、現状の取扱いに加え、窓口または郵送で交付する住民票の写し等の証明書において、「夫(未届)」や「妻(未届)」などの記載を申出により対応するよう取扱いを拡充します。同性カップルの宣誓を行った皆さんを対象に、区内10か所のくみん窓口及び出張所で対応します。申出者の方に、丁寧かつ正確な対応ができるよう、10月末を目途に区のホームページで周知を図っていきます。

住民票の続柄の欄に、「夫・妻(未届)」と記載されることになりますが、今回の取扱いの工夫として、住民票下部に「本証明書における続柄は世田谷区パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓又は東京都のパートナーシップ宣誓により記載しています」と追記します。この取扱いをめぐる議論の中で、事実婚の方と混同してしまうのではないかという話がありましたが、この記載により、誤認や混同は起こらないであろうと考えています。また、この取扱は、全国一律の制度ではありませんので、区から他自治体に転出される場合には、一旦、「同居人」という記載に戻させていただくことをただし書きし、それに了承し、署名いただいた上で、申出を行っていただくことを考えています。近隣の中野区とも、意見交換しており、実務的な問題点等がないかチェックし、こういったやり方で、中野区も始めると聞いています。

11月1日(金曜日)から、同性カップルの皆さんのうち、パートナーシップやファミリーシップの宣誓を行っている方で、希望される方に発行していくことになります。

質疑応答

  • 記者
    福祉人材確保と安定経営のための緊急事業者支援について伺いたい。国の報酬改定で訪問介護にかかる報酬が引き下げられたために緊急支援が必要とのことだが、訪問介護事業所以外の、通所関係等の施設にも給付を行うこととしている。幅広く福祉業界を支援するというニュアンスは理解できるが、訪問介護にかかる報酬が引き下げられた分を補填する緊急支援というニュアンスからは外れるのではないか。考えを伺いたい。
  • 区長
    まず、昨今の物価高騰、電気・ガス料金などの高騰に対する支援という意味合いもある。訪問介護等事業所だけでなく、通所・入所系施設等へも補助しつつ、介護報酬が下がった訪問介護等事業所に対して、1事業所当たり88万円の給付とし、他の施設と比べて手厚くしている。
  • 高齢福祉部長
    国の改定により訪問介護の報酬が一番下がっているが、介護業界全体が他の産業と比較して賃金が低い状況にある。そうした中で、業界全体における人材不足の支援として給付を行う。また、物価高騰に対する支援として、令和4年度、5年度は国が行っていたが、令和6年度より行っていないため、区独自で訪問介護等事業所に関わらず全体的に支援している。
  • 記者
    絵本「ぐりとぐら」の作者である中川 李枝子氏がお亡くなりになったということで、9月末まで東棟で中川氏の展示をしていたと思うが、ご逝去されたことを受け、企画展など新たな動きがあれば伺いたい。
  • 区長
    中川氏には、区のおしらせの「新春対談」にご登場いただいたことがある。現在は駒沢オリンピック公園になっている場所に、戦後すぐにできた保育園で勤務され、子どもたちに語り聞かせなど、保育の場で子どもに向き合ったことが後の様々な作品の原点しになったといったことをお話しされており、その様子を現在も動画で公開している。
  • 記者
    同性パートナーにおける住民票への続柄の記載について、区民より「当事者に寄り添った記載をしてほしい」などの声が寄せられたとのことだが、制度を拡充するにあたり、区長の気持ちを伺いたい。また、「同居人」、「縁故者」という記載は今後も残り、希望者が「夫(未届)」や「妻(未届)」の記載を選択できるという認識で間違いないか。
  • 区長
    今回の制度拡充は、「同居人」及び「縁故者」の記載がなくなるわけではなく、パートナーシップ宣誓・ファミリーシップ宣誓の証明書を持つ方が希望する場合に、「夫(未届)」又は「妻(未届)」が記載された証明書を発行するものである。令和6年6月には、戸籍上の性別変更後に生まれた子どもとの親子関係を求めた裁判で、最高裁判所は親子関係を認めるという画期的な判断を示した。本件の補足意見において、三浦守最高裁判所裁判官は、同性パートナーシップ宣誓等の制度が多くの自治体に広がるなど、この20年で時代が変わったといった主旨の言及をされていた。今回の取扱い拡充による、事実婚同様の記載を直ちに制度等に反映していくかは各省庁での検討となるが、事実婚の場合も、200以上の制度に少しずつ広がり反映されるようになった経緯がある。ともに暮らし、パートナーとして認めあっている人々に差別があってはならないと思う。今回の、区での取扱いの拡充は、自治体の自治事務として対応できることであり、当事者からも多くの声が寄せられていることを受け止めたものである。先行している自治体もあるが、区は人口約92万人と大規模な自治体で、中野区とともに始めるという意味では、100万人を超える規模で一歩を踏み出すこととなり、大きな一歩になると考えている。
  • 記者
    9月下旬に、総務省から「夫・妻(未届)」の記載では、実務上の支障をきたす恐れがあるとの見解が出されたが、実務上の課題とはどのようなものがあると考えているか。
  • 区長
    現状、総務省は、事実婚と同様の記載では実務上の混乱をきたすのではないかと言及している。今回、区の取扱いでは、利用者が「夫・妻(未届)」の記載を希望した場合、「本証明書における続柄は世田谷区のパートナーシップ・ファミリーシップ宣誓又は東京都のパートナーシップ宣誓により記載しています。」といった記載を追記することで、事実婚とは混同されないような状態にする。「夫・妻(未届)」の記載も、総務省がマニュアルで例示しているものであり、住民票の作成自体は自治事務であり、全体の流れの中から最高裁判決を受けて、同性カップルと異性カップルで峻別し差別するべきではないという認識がある。実務的な支障が出るという点はクリアしている。
  • 記者
    「夫・妻(未届)」を記載する取扱いに伴う、利用者側のメリットについて考えを伺いたい。
  • 区長
    同性パートナーシップ宣誓制度は全国に広がっているが、渋谷区とともに導入した当初は、法的効果がないことなどから、どれだけの効果があるかと指摘されていた。しかし、導入した結果、携帯会社や旅行会社、生命保険会社などで家族割引が適用されるなど変化が見られた。区においても、主に福利厚生で婚姻している方、また事実婚の方と差別がないよう扱いを広げてきた。ただ、積極的に取り組む企業も増えているが、まだ多数ではない。今回の取扱いの拡充により、各企業が1歩踏み出そうというきっかけになってもらえればと考えている。現時点では、企業の取り組みに法的な義務はないが、同性パートナーシップ宣誓制度を導入する自治体の人口総数が1億人規模に広がったことや、最高裁判所が社会の変化に言及し新たな判断が示されたことなどを見ると、政府や国会は宿題を命じられている状態ではないか。より、権利保障に取組む契機となってほしい。
  • 記者
    同性パートナーの住民票の記載について伺う。住民票の写しの下部に、パートナー宣誓によるものという記載を追記したり、注意書きやただし書きの記載についても言及があったが、これは先行自治体を倣ったものか、もしくは区独自のものか。
  • 区長
    様々な想定をしなければならないということで、先行自治体にも苦労している点など様々な話を伺った。記載の追記は区で考えたものである。また、制度の過渡期であることから、申出書を提出いただく際、住民票で「夫・妻(未届)」としても、転出時には記載が「同居人」となるなどの諸条件をあらかじめご了承いただくこととしたのは、中野区などとも議論した中で出てきた工夫である。新たな取扱いに踏み切るにあたり、実務上の混乱が生じたり、当事者からご不満をいただいてしまったりと、せっかくの取組みがマイナスになるようなことは避けたい。そのために、様々なケースを考慮して組み立てていった。何か不足していることがあれば今後も改善していく。
  • 記者
    今回、都内自治体でいち早く中野区とともに制度を始めるということで、転出時に記載を戻すことも踏まえ、都内や近郊自治体にこの取扱いが広がってほしいと考えているのか、区長としての思いを伺いたい。
  • 区長
    いくつかの自治体からは、実務的にどのような形で行うのかなど問い合わせをいただいている。それぞれの自治体の判断だが、現状、パートナーシップ宣誓制度は広がっているものの、社会の価値軸がまだ完全に変わったわけではないという課題がある。国には、こうした課題に対してしっかりと取り組んでほしい。また、自治体としての取組みは、他の自治体にも広がっていくだろうし、広げていきたいと思っている。
  • 記者
    福祉人材確保と安定経営のための緊急事業者支援について、区内の福祉高齢者施設等と障害者施設等の従事者は何人ぐらいいるのか。また、人件費の課題があるのであれば、人ごとではなく、なぜ施設ごとに給付しているのか教えてほしい。
  • 高齢福祉部長
    施設従事者個人への給付では賃金にあたり、行政から個人に賃金をお支払いするというのは違和感がある。また、働く人に、働いた分の報酬が適切に支払われるためには、事業所のマネジメントのもと、従業員が介護を必要とする方のところへ訪問することが必要であるが、事業所の経営が成り立たなければ、円滑に運用することができないことから、事業所への支援として実施する。なお、高齢者施設の介護職員数について、区としては令和4年度実施の実態調査において約9,480人であった。
  • 障害福祉部長
    障害者施設も、考え方は高齢者施設と同様である。株式会社帝国データバンクの情報等によると、令和5年度の障害福祉施設の運営法人の倒産件数が過去最大となったと聞く。事業所自体が倒産してしまうと、障害福祉の利用者にとって結果的にデメリットになる。まずは経営を安定するという趣旨で、高齢者及び障害者施設で緊急的な給付金を支給することとなった。障害者施設の職員数については別途確認して回答する。
  • 区長
    私としては、厚生労働省は訪問介護への対応の感度が少し鈍いように感じている。新型コロナワクチン接種の際にも、エッセンシャルワーカーへ優先接種していく中で、介護施設の職員は優先対象だったが、訪問介護の職員の方は感染リスクが少ないということで対象外であった。区では、訪問介護も最優先で接種するべきだということで、楽天グループ株式会社の職域接種においてご協力いただくなど、優先的に接種することができるようにした。今回の介護報酬についても現場を知る方なら分かると思う。事業所職員の方の平均年齢が高く、ぎりぎりで経営している中で報酬も下がってしまうと、これが原因で事業をやめるというところが区内でも出てきている。これ以上に倒産が増加すれば介護崩壊につながるのではないか。団塊の世代が75歳以上になり高齢人口は急増する時期である。区としては、大事な訪問介護も守り抜きたいので今回の給付を実施する。国としてもしっかりと考えてほしいと思う。
  • 記者
    ふるさと納税について伺いたい。令和6年7月の会見において、所得階層別の寄附額についてお話しがでたと思うが、その後取材をしたところ、所得が2,000万円以上の方の寄附額が、区の流出額の4割程度で高所得者の寄附が流出額の大半を占めるとのことだった。国に問い合わせたところ、所得階層別の寄附額の調査は、今もしてないし今後もするつもりはないとのことだったが、国としてやるべきと思うか、また、区として、所得階層別の寄附額を示した意義を伺いたい。
  • 区長
    今手元に資料がないが、所得が2,000万円以上の方の寄附人数は全体の1割弱だが、寄附額としては、流出額全体の4割を超過していたと思う。税には富の再分配という要素があるが、ふるさと納税は住民税の額に応じてふるさと納税することができ、ふるさと納税の上限額というものはない青天井になっている。特産品を注文することで地域振興に役立てるという理屈は分かるが、年間の寄附額に上限を設けてはどうかということを特別区長会でも提案していこうと議論している。相当多額なふるさと納税をしている方もいるため、上限を定めれば、約111億円という流出額は大きく減少するだろう。そして、そのこととは別に、税制としても疑問がある。ふるさと納税は上限がない制度で、所得が高い人であればあるほど利得が大きい制度である。区も寄附をいただけるよう食事券など寄附メニューの拡充にも取り組み、多くの寄附もいただいているが、収入は約3億3,000万円である。ふるさと納税で流出した都市部の財源が、均等に地方へ配分されるならいい。しかし、地方交付税不交付団体を除く多くの地方交付税交付団体に国が流出分の4分の3を補填し、その補填額は4,000億円となっている。ふるさと納税をしていない方も、事実上はふるさと納税に参加している状態にある。自治体により勝ち組・負け組が分かれてしまう中で、地方でも流出が進む自治体があり、地方創生のためには、財源をより均等に分配すべきではないかという議論もある。
    特別区としても、これ以上の流出は限界だとなると、全国の高所得者向けに、1,000万や2,000万円といった高額の返礼品を用意することになる。それを行うと、地方の富裕層の方の税を都市部が奪ってしまいかねない。現行の制度はそれを是としており、まずいことだと思う。
    国民生活を見ると、生活が厳しいということで、トイレットペーパーやお米などの日常に必要な商品の人気が高いと聞いている。定着したふるさと納税をいきなり全廃するのは難しいと思うので、現実論として是正はしていってほしい。寄附の上限がないこと、ワンストップ特例申請により国が払うべき税源を自治体が立て替えていることは税のあり方として望ましくない。一つひとつ是正のための具体案を提起していきたいと考えている。
  • 記者
    衆議院議員選挙について2点伺う。1点目に、急な解散で特に各自治体の選挙管理委員会事務局の職員は対応に追われ、期日前投票の開始までに投票所入場券が間に合わない自治体もあると聞いている。区では2つの選挙区をかかえ、投開票当日の事務作業に当たる必要人員が膨大な中で、人員が不足する状況はないか。こうした状況に対して、区長として危機感や対策などがあれば伺いたい。2点目として、区長は候補者の応援に行く予定はあるか。
  • 区長
    通常の流れでは11月半ばの執行となるのが順当だが、10月執行となる可能性も踏まえ、人員体制など急ぎ準備が必要ではないかと考えていた。衆院選は今回から区割りが変更することもあり、期間がない中で、選挙公報を全戸配布することは当然急がなければならないが、漏れがないよう正確に配布することも重要である。今回の衆議院議員選挙は、何しろ時間がない。間に合うかどうかというところで必死の努力をしており、公平公正な選挙が行われるように万全を期したいと思っている。候補者の応援に関しては、政治家としての私自身の判断で、前回同様、候補者の主張を踏まえ応援できる方については応援に行く予定である。
  • 記者
    開票作業の人員が不足しているとも聞いたが現状どうなっているか。
  • 広報広聴課長
    選挙管理委員会事務局からの庁内への周知によると、開票作業の人員等については大丈夫だと聞いている。

お問い合わせ先

政策経営部 広報広聴課 

ファクシミリ:03-5432-3001