このページに知りたい情報がない場合は
世田谷区トップページ > 福祉・健康 > 健康・保健・衛生 > 食とくらしの衛生 > 食中毒予防 > カンピロバクターによる食中毒に気をつけましょう!
ここから本文です。
最終更新日 2023年7月11日
ページID 3179
近年、カンピロバクターという細菌による食中毒が増えています。全国で発生している食中毒の病因物質別発生件数でも上位を占めており、世田谷区内でも食中毒事件が発生しています。カンピロバクター食中毒について理解を深め、食中毒を予防しましょう。
カンピロバクターは主にニワトリの腸管内にいる細菌です。カンピロバクターをヒトが摂取すると、主に腸炎を起こしますが、発生機序は不明です。カンピロバクターにはいくつかの種類がありますが、ヒトに腸炎を起こすのは、ほとんどがカンピロバクター・ジェジュニという種類です。食中毒を起こしますが、ヒトからヒトへの感染はほとんどありません。
カンピロバクターは主にニワトリの腸管内に存在しているので、原因食品のほとんどは鶏肉です。ただし、鶏肉を食べることが危険なのではなく、生や加熱不十分な鶏肉料理を食べた場合に多く発生しています。例えば、鳥刺しなどの生の鶏肉メニューや、鳥わさや鳥タタキなどの半生状態の鶏肉メニューを食べたことが原因となっています。また、カンピロバクターは少ない菌量でも食中毒を起こすため、鶏肉からの二次汚染による食中毒も発生しています。
※二次汚染・・生の鶏肉についていたカンピロバクターが、ヒトの手や調理器具を介してサラダや加熱済食品に付着してしまうこと。詳しくは「食中毒予防 ノロウイルス食中毒に気をつけましょう」で解説しています。
カンピロバクターは鶏肉がもともと保有している菌であり、少量でも食中毒を起こします。そのため、購入してすぐの新鮮な精肉や、冷蔵庫内で保存していた消費期限内の精肉でも、生や加熱不十分なまま食べるとカンピロバクター食中毒が発生する可能性があります。
カンピロバクターは酸素に弱いので、空気中では徐々に死滅します。その点においては、むしろ新鮮なお肉ほどカンピロバクターが生きている、と言えるでしょう。
カンピロバクター食中毒は、お肉の鮮度の良し悪しに関係なく発生するので、注意が必要です。
主に下痢、腹痛、発熱などの症状が見られます。おう吐の症状が出ることもありますが、まれです。予後は比較的良好ですが、子どもや高齢者などの抵抗力の弱い方では、食中毒の症状が重症化することがありますので、注意が必要です。なお、原因食品を食べてから、発症までには約2日から7日と、潜伏期間がやや長いことが特徴です。平均で2~3日です。
カンピロバクターによる食中毒の後、自己免疫疾患のひとつであるギラン・バレー症候群を発症する場合があります。ギラン・バレー症候群は重篤な運動神経麻ひを起こす疾患で、手足や顔面の麻ひ、呼吸困難等の症状が出ることがあります。その点からも、カンピロバクター食中毒には注意をしなければなりません。
食中毒予防の三原則「つけない」「増やさない」「やっつける」をご存じですか?カンピロバクター食中毒予防のためには、何に気をつけたら良いのでしょうか。
カンピロバクターは酸素に弱く、空気中では増殖できず徐々に死滅します。一方で、少量でも発症するため、食品に「つけない」ことが重要です。また加熱により死滅するので「やっつける」ことも有効な対策です。
カンピロバクターは少量でも食中毒を起こします。そのため「つけない」対策、つまり鶏肉からの二次汚染を防止することが重要です。生の鶏肉を扱ったあとは必ず手を洗うこと、生の鶏肉の作業に使用した包丁、まな板等の調理器具は、そのまま次の用途に使わず、きちんと洗浄・殺菌をしましょう。
カンピロバクターは加熱でやっつけることができます。肉の中心部が75℃で1分以上の加熱が必要です。調理の際には中心温度計を使用し、お肉の中心部が目標とする温度に達していることを確認すると良いでしょう。
最近では、鳥刺し等の生の鶏肉のメニューによるカンピロバクター食中毒の危険性が周知されつつあり、飲食店ではそれに代わるものとして低温調理の鶏肉のメニューが増えています。また近年の健康志向から、自家製サラダチキン等のメニューがレシピサイトに掲載されるなど、低温調理の鶏肉のメニューはご家庭の料理としても定着しつつあります。
その一方で、飲食店における低温調理の鶏肉のメニューを原因とした食中毒事件は増加しています。ご家庭向けのレシピサイトにも様々なレシピが掲載されていますが、これらのレシピはカンピロバクター食中毒のリスクが除去されているでしょうか?
そこで、鶏肉の低温調理による食中毒のリスクについて検証しました。
低温調理によってカンピロバクターが死滅するかどうかを確認するため、国産の鶏むね肉と鶏レバー肉を使用し、次の2つの実験を行いました。
実験では、肉にカンピロバクターがいると仮定して、あらかじめカンピロバクター菌液を注入しました。実験後、カンピロバクターが死滅しているか確認するため、細菌検査をしました。また参考までに、実験後の肉の中心部の温度を測定しました。
実験1 沸騰後の湯に肉を浸す
まず1つめの実験です。鍋に湯を沸かし、沸騰したらチャック付ポリ袋に入れた肉を投入します。再び沸騰したことを確認したら火を止め、ふたをして20分ほど放置したら完成です。この調理方法でカンピロバクターは死滅するでしょうか。
実験1の結果(1回目)
結果は、カンピロバクターが検出されました。しかしこの実験では、鍋に複数のポリ袋を入れたため、煮えムラができてしまい、それによって加熱が妨げられた可能性がありました。そこで、煮えムラができないように工夫して再度実験をしました。
実験1の結果(2回目)
結果は、カンピロバクターが検出されませんでした。実験後の肉の中心部の温度は65℃弱でしたので、実際の調理中は65℃以上であったと考えられました。肉は煮えて固くなり、中心部の赤みもなくなりました。カンピロバクターは死滅しましたが、柔らかい触感はなくなっていました。
実験2
続いて、2つめの実験です。低温調理器を用いて60℃に保った湯に、チャック付ポリ袋に入れた肉を投入します。20分湯せんしたものと、30分湯せんしたもので結果を確認しました。
実験2の結果(20分湯せん)
まず20分湯せんした結果です。結果は、すべてカンピロバクターが検出されました。実験後の中心部の温度は50℃弱でしたので、調理中の肉の中心部の温度は60℃に届いていなかったと考えられました。肉は生っぽい触感が残っていました。
実験2の結果(30分湯せん)
続いて、30分湯せんした結果です。結果は、こちらもすべてカンピロバクターが検出されました。この場合も、調理中の肉の中心部の温度は60℃に届いていなかったと考えられました。
低温調理による鶏肉メニューは、柔らかく生っぽい触感が好まれているのだと思いますが、それだけにこだわってしまうと、カンピロバクターのリスクを排除することはできません。
レシピ通りの加熱時間と温度で調理しても、実験結果で示したとおり、そのときの食材の大きさや厚さ、鍋に同時に入れる肉の量、また湯量や鍋の大きさなど、ご家庭により条件は異なるので、一律にこのレシピなら安全と示すことも難しいでしょう。
カンピロバクター食中毒を予防するためには、「お肉の中心部まで十分に加熱されているのか?」をきちんと確認する必要があります。
厚生労働省が示している「十分な加熱」の判断は、「75℃1分以上」またはこれと同等な条件として「70℃3分」「69℃4分」「68℃5分」「66℃11分」「65℃15分」です。低温調理を行うときには、中心温度計を使用し、お肉の中心部の温度をきちんと確認すると良いでしょう。
世田谷保健所 生活保健課 食品衛生企画
電話番号:03-5432-2911
ファクシミリ:03-5432-3054