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最終更新日 2025年6月3日

ページID 26016

令和7年第2回世田谷区議会定例会区長招集挨拶

 令和7年第2回世田谷区議会定例会にあたり、区議会議員並びに区民の皆様にご挨拶を申し上げます。

 はじめに、提案型プロジェクトチーム制度についてです。

 行政需要は多岐にわたり、分野横断的に所管部を超えて複雑になっています。

 少子高齢化が進み、多死社会に入る中で、気候変動など変化の激しい時代において、人材育成の新たな取り組みの一つとして、世田谷区職員が主体的に創意工夫を凝らして、テーマを選択し、個々の能力やスキルを活かして挑戦するのが、この提案型プロジェクトチームです。企画・立案から事業実施までのプロジェクトの実現を通して、機動的で課題解決力の高い組織の構築を目指しています。

区長招集挨拶
招集挨拶をする保坂区長

各所管部が提案したプロジェクトに、希望する職員が自発的に参加することができ、通常の業務時間内の限られた範囲でプロジェクト活動を行いました。昨年度は9つのプロジェクトに、庁内公募により32名の職員が参加しました。職場の垣根を超えた職員同士が、精力的に学習や議論を重ねながら、約半年間活動しました。

この3月、私も含めた特別職を前にして、各プロジェクトチームから活動報告を聞き、参加した若手職員から様々な提案を受けました。

「ドローン活用検討プロジェクト」には10名の若手職員が参加し、活発な活動を展開して、全員が操縦の国家資格を取得しました。新たに購入したドローン3機の活用方法についても構想を練り、災害時にとどまらず、平時から区内イベントや観光PR動画を撮影したり、区立施設の建物の点検や、子ども向けにドローン体験イベントを実施するなどの活用策の準備・検討を進めています。3月にはデモフライトを世田谷区役所で行い、ドローンで庁舎の外壁や屋上の映像を撮影して、建築物の記録や施設点検への活用に向けた第一歩となりました。プロジェクトは今年度も継続します。

デジタルツールを活用した業務改善推進プロジェクト「DXラボ」には、3名の若手職員が参加し、それぞれが自身の職場の業務フローにおける問題点の整理とその解決に取り組みました。

デジタルツールの学習、業務課題の洗い出しから始め、業務フローの見直しに向けたフレームワークを作成し、メンバーで話し合いながら、果敢に業務改善にチャレンジし、プロトタイプ作成まで進めることができました。日常的に部長から課長、係長へと「メールのリレー」が繰り返されていることにも着目、情報共有システムを導入するなど、考案したポータルサイトやアプリは、そのままそれぞれの職場の業務改善という成果につながっていきます。

今後はこのプロジェクトに参加した職員が得た知見や経験をもとに、各課のDX推進リーダーや上司、同僚をまきこみながら、それぞれの職場における業務フローの改善にチャレンジしていくことで、DX推進がさらに加速していくことを期待しています。

今回実施した「提案型プロジェクトチーム」を通じ、改めて気づいたことがあります。

一点目は、職員が日々感じている疑問をそのままにするのではなく、専門所管の伴走によって職員自身がチームメンバーと一緒に、その疑問を行政や業務に内在する問題として再考し、問題解決にチャレンジすることの大切さです。こうした体験をより多くの職員に経験してもらえるよう、さらなる「経験学習機会の拡充」を目指していきます。

二点目として、成功体験を一つの事例に留めることなく、規模を広げていくことで、各職場における課題解決へと波及させていくことです。今回得た知見を共有し横展開を図り、優れた提案であれば、短期で採用され実現する組織文化を育成する一歩にしたいと思います。

三点目は、提案型プロジェクトチームの実践は、伴走する管理・監督者のマネジメントにとっても、多様な人材をチームメンバーとして取りまとめるなど有用な経験となることです。領域や部署にとらわれずに、仮説を立ててすばやく実行に移し、試行錯誤を繰り返しながら成果を出すために挑戦する提案型プロジェクトチームの実践は、組織文化として拡げていくべきと感じました。

今年度も、新たなプロジェクトテーマを追加しながら、柔軟な発想で機敏に課題に応えることができ、行動する職員で溢れる「学習する組織」となることを目指し、引き続き「人への投資」に取り組んでまいります。

令和6年1月に改正した「世田谷区人材育成方針」では、重点的に取り組むべき課題の一つとして、「未知の課題に対処するスキルの向上」を掲げています。

従来経験したことのない新たな課題へ対応するためには、多様な視点に基づいた課題の整理と解決のスキルを習得し伸ばしていく「学習機会の拡充」が必要です。

この10年間、1975年以後に大量採用された世代の職員の退職が続き、区役所の年齢構成は若手がベテラン層を上回り、若い世代の割合が高くなっています。従来までのジョブローテーションに加えて、複雑化する行政需要に応えるため、街の中の区民生活の現場に赴き、共に対話を深めながら「参加と協働」を身につけていく必要があります。

提案型プロジェクトチーム制度をはじめとする「人への投資」に加え、これまで縦割り組織の中で、各部署、各担当内に留まることが多かった知見を、データとして庁内で見える化することで共有し、組織の縦割りにとらわれずにコミュニケーションできるよう、デジタルツールの活用も進めていきます。専門性による安定した行政サービスの土台となる組織の縦のラインの良さを残しながら、新たな課題に、柔軟かつ迅速に対応できる、より横断的な事業執行体制の構築のため、成長しつづけられる「学習する組織」づくりを進めてまいります。

さて、令和6年能登半島地震から1年6ヶ月目を迎えました。

輪島市や珠洲市など被災した自治体においては、復興まちづくりの目標や市街地整備等に関する実施方針等を取りまとめた「復興まちづくり計画」が策定されてきているものの、避難所から仮設住宅、その後の住まいの確保や、仕事の再開など、これからの恒久的な住まいの再建や地域を支える生業の再興など、その道のりは長いものです。

区では、能登半島地震とその後の豪雨災害により二重被災となった自治体の復旧・復興を支援するため「能登半島地震災害支援金」を地震発生直後から募集してきました。区民の皆様をはじめ、多くの方々の温かいお気持ちにより4,000万円を超える寄附が寄せられております。これまで、特に被害が甚大である珠洲市に2,000万円、輪島市に1,000万円を寄贈させていただきました。また、1月から3月にかけて、珠洲市に対して区の職員を派遣しました。

被災地の一日も早い復旧・復興と、被災された皆様に穏やかな日常生活が戻ってくることを切に願い、引き続き被災地に心を寄せてまいります。

次に、在宅避難の推進についてです。

区では、昨年度、在宅避難の広報に向けて、各家庭の震災時の備えを支援するとともに、防災意識の更なる向上のため、全世帯への世田谷防災ギフト事業を実施しました。

その結果、約38万世帯、76%を超える世帯から防災グッズのお申込みをいただき、ご希望の物品をお送りすることで、在宅避難への備えを進めることができました。

また、約22万世帯のWEB申込者を対象に実施したアンケートには、96%にあたる約21万世帯の方々からご回答をいただきました。今後は在宅避難も含む防災意識やアンケート結果の利活用を進め、災害対策の進化をはかる一助としてまいります。

今年度は、在宅避難の更なる推進のため、マンション居住者の共助促進策を基軸としたマンション防災事業を実施します。災害対策基金を活用して、1棟あたり最大30万円程度の防災備品をマンション管理組合等に配布する、「マンション防災共助促進事業」の受付を6月16日に開始する予定です。先着順とはなりますが、申請された区内マンション1,000棟には、希望に応じて中型か小型のポータブル蓄電池、軽量電動階段台車、エレベーターチェア、キャリーカートから最大3品目を配布いたします。

また、マンション防災啓発冊子を居住者向けに全戸配布するとともに、在宅避難啓発動画の配信、啓発イベント実施に向けて準備を行うなど、マンションの防災区民組織化を目指してまいります。

次に、備蓄物資の管理についてです。

区にとって、災害時の避難者支援の重要な役割は、物資供給の確保です。令和7年より、より実効性のある体制を構築するため、物資保管や配送等の専門知識を有する物流事業者に備蓄物資の管理を委託することとしました。委託事業者とは災害時協力協定を締結します。災害時には備蓄・支援物資のデータ情報を一元管理し、物資供給におけるオペレーション及び配送等に専門的資源やノウハウを活用することで、災害時の物資供給の迅速性と確実性を向上させてまいります。併せて、昨年度、策定した「災害時物資配送計画」を基にして、有効となる実動訓練も実施します。

被災自治体の首長のお話によれば、遺体を仮安置したあとで、遺族との対応が困難だったと聞いております。災害時の遺体の搬送・収容、職員の配置や遺族への対応などをまとめた、遺体対応マニュアルを被災地の対応状況等も参考に検討し、策定いたします。

引き続き、各地区の特性に応じた地区防災計画に基づき、きめの細かい防災対策を進め、総合的な防災力の向上に取り組んでまいります。

次に、防犯対策についてです。

区では、令和6年8月以降、大きな社会問題となっているいわゆる「闇バイト」による強盗事件等により、区民の犯罪に対する不安感が高まっていることを踏まえ、個々の住宅の防犯機能と区民の防犯意識の更なる向上を図るため、令和7年度当初予算に約2億円を計上し、住宅への防犯カメラ等の防犯設備や防犯物品の購入に対して、その費用を補助する「住まいの防犯対策サポート事業」を実施しています。

本事業は、補助上限額を4万円としており、補助対象は、7年度当初予算では区全世帯数の1%にあたる約5千世帯としており、さらに、第2回定例会で補正予算として約4億円を計上し、対象を全世帯数の3%にあたる約1万5千世帯と拡大する予定です。

地域の防犯力の向上と安全で安心して暮らせる世田谷の実現に向け、引き続き取り組んでまいります。

次に、国際理解教育のあり方についてです。

今、世界は大きく変わりつつあり、コロナ禍以降は、学校教育の現場にも、大きな変化の波が訪れています。これまでの知識の習得を中心とし、迅速な処理能力を鍛えてきた教育から、自分で課題を見つけ、解決することができる主体性のある教育へ本格的に舵を切るべき時が来ています。

子どもたちが、世界の人たちとのつながりを深め、世界の国々の文化や実情を知ることで、地球規模の視野を持つことは重要です。とくに、小中学生の時期に、国際交流を体験することは、その後の人生の歩みで大きな意味を持つことは、言うまでもありません。区としても、これまで姉妹都市交流を基軸としながら、それ以外の国や学校とも、交流を進めてきました。 

まずは新型コロナウイルス感染症の拡大により、令和2年度に中止したアメリカ、オレゴン州ポートランド市への中学生派遣を再開すべく、準備を始めます。

現地で訪問を予定しているポートランド市マウントテイバー中学校は、日本との文化交流を含めた日本語プログラムを導入しており、日本文化にも関心の高いことで知られています。この間、令和5年度以降、3年連続で、のべ110名を超える生徒たちが来日し、世田谷区立中学校を訪れています。ヒロシマ原爆で亡くなった佐々木貞子さんのエピソードを学習し、丹念に織り上げた千羽鶴を持ってきてくれた13歳、14歳の生徒たちが、いくつかの班に分かれて学校訪問をして交流を重ねてきました。

今般先方から、世田谷区の子どもたちにもマウントテイバー中学校に来てほしいとお招きいただいたことを契機として、令和8年度から、世田谷区への受け入れだけでなく現地への派遣も開始できるよう、今年度、区長である私と教育長による現地への表敬訪問、教育委員会による実地踏査を行う予定としました。

また、これに合わせ、英語教育をさらに充実させ、読む、書く、聴くのこれまでの水準を維持しつつ、話すについて、学習の効果をいっそう高めていき、互いのコミュニケーションができるようにしてまいります。

今年度から、新たに区立小学校高学年へのALT(外国人英語教育指導補助員)の配置を開始しています。今後さらに、実践的な会話練習のプログラム、教材の導入など、「話す」ことに重点を置き、小・中学校で連続性をもって取り組んでまいります。

次に、産業化活性化拠点「HOME/WORK VILLAGE」についてです。

本施設は、既存産業の再活性化を図るとともに、社会経済環境の変化を捉えた新しい価値を創出し得る事業者や人材を育成・確保し、区内産業のイノベーションを創出・加速することで、地域経済の持続的な発展を目指す拠点として、4月16日に一部オープンしました。

施設の1階には、メインエントランスからつながるブックラウンジのほか、これから飲食や物販店舗が入居し、様々な方が気軽に訪れ、くつろぎ、楽しめる場になります。グランドオープンとなる7月24日に向けて、鋭意準備を進めています。

2階には、様々な知見を活かして入居者等の支援を行うインキュベーションマネージャーが常駐するコワーキングスペースを設置し、多様な働き方の実現や、既存産業の事業者や起業・創業を目指す方等を対象とした多彩な講座、イベント等による学びや成長、交流の機会を提供していきます。また、子ども向けの常設の学びの場も設け、小学生を中心としたスクール等を実施し、子ども自らが探求し、創造していく力を高め、より深い学びにつながるプログラムを展開していきます。

3階はスモールオフィスとして事業者に活動の場を提供し、成長を支援するとともに、入居者間での連携のみならず、施設外の事業者との関わりも積極的に促進し、様々な交流や協業が生まれる環境をつくってまいります。

その他、体育館や広場、チャレンジショップなど、多彩なスペースを活用しながら、本施設が事業者、大学、NPOや区民等の多様な主体の連携・交流・協働を生み出す拠点となり、様々な効果や影響を区内に波及させていく役割も担ってまいります。

次に、環境政策(気候危機対策)についてです。

 今年度、環境政策部において組織改正を行い、気候危機対策課を設置いたしました。地球温暖化あるいは灼熱化は、今この時にも休むことなく進んでおり、人類の未来の生存環境を脅かしつつあります。

気温の上昇は、地球環境が私たちの生存に適さなくなる水準へと年々深刻さを増しています。すでに地球の平均気温は産業革命以降1.2度上昇しており、自然現象によって生じる毎年の気温のゆらぎである0.5度をはるかに超えており、人為的な影響であることに疑いの余地はありません。

猛暑による健康被害だけでなく、農業など食糧生産への影響、海中温の上昇による漁業への影響、大規模な山林火災が続いています。気候危機の進行と、感染症の蔓延拡大、生態系の急激な変化など、若い世代やこれから生まれてくる世代は、将来、極めて厳しい時代を生きることとなります。わたしたちは未来への責任を果たさなくてはなりません。

 わが国も国際社会の一員としての責任を果たすべく、2030年度の温室効果ガス排出量を、2013年度比で46%削減することを目指しており、世田谷区はこの目標をさらに上積みし、57.1%の削減目標を掲げています。この度の組織改正は、この目標の達成に向け、当区における主な温室効果ガス排出源である家庭の脱炭素化を徹底的に進めるため、昨年度、政策パッケージをまとめ、その実行部門として新たな組織を編成したものです。

世田谷区が掲げる脱炭素の目標達成は、従来の電気をこまめに消したり、エアコンの温度設定を控えめにするなどの、いわゆる「省エネルギー」の取組みでは、はるかに及びません。92万人口の住宅都市を変容させるには、大きな効果がある取組みを先行的な地域モデルとして実現し、横展開していく必要があります。

そこで、家庭の二酸化炭素排出量の3分の2を占める「電力由来の二酸化炭素」に着目し、この排出量をゼロにする政策を主軸に据え、家庭部門脱炭素プロジェクト「Uchikara Project(ウチカラプロジェクト)」を、今年度より2030年度にかけて展開します。

 7年度の脱炭素事業の柱として、化石燃料によらない再生可能エネルギーによる電源利用の拡大に踏み出します。小売電気事業者と区がタッグを組み、家庭における電力契約を二酸化炭素ゼロの再生可能エネルギー由来の電力に切り替えてもらうキャンペーンを7月より実施します。もし、区内の電源が全て切り替わったと仮定すれば、家庭の二酸化炭素排出量は、現在の半分以下となります。積極的にキャンペーンを広げることで、効果の最大化を図ります。

 また、成城地区においてゼロ・エミッションのまちづくりに挑戦する「脱炭素地域づくり」も引き続き進めます。各家庭の太陽光発電設備で発電した電力を個人間で直接取引するシステムの構築、屋根に接着剤で貼り付けるだけで施工可能な「フレキシブルソーラーパネル」の普及拡大、住宅診断を入口として住宅の環境性能を高める改修工事のコンサルティングを行う仕組みづくりなどの実験的取組みを行い、成果が上がったものを順次に全区展開していきます。

次に、清川泰次(きよかわたいじ)記念ギャラリーの改築についてです。

世田谷美術館には3つの分館があり、このうちの1つ、清川ギャラリーは、故・清川泰次氏のご遺族より、成城学園前駅にほど近いアトリエ兼自宅と多数の作品等の寄贈を受け、平成15年11月に開館しました。

 寄贈されたご自宅をもとに活用されて、まもなく築65年を迎えることから、改修に関する調査を行いましたが、長寿命化による改修は難しいとの判断に至りました。

ここには、清川作品を見ていただく展示室と、区民の文化・芸術活動発表の場として区民ギャラリーがあります。成城学園前駅から徒歩圏内のこの区民ギャラリーも、大変人気があり、活用されていることを踏まえて、整備方針に続いて基本構想をまとめました。

今後、清川泰次邸の面影を残しながら、美術館としての存在感をより高め、また、区民ギャラリーとしての機能の充実も図り、地域に根差した、多くの方に親しまれる施設となるよう、改築に向けて取り組んでまいります。

次に、「保育料等の無償化」についてです。

区内の就学前児童数は、令和2年4月の43,901人から令和7年4月には36,296人と、5年間で約7,600人減少している一方、保育需要は当面、高止まりする傾向が続くものと見込んでいます。

区は、子どもたち一人ひとりの健やかな育ちを保障するため、第2子以降のお子さんについて、認可保育所等の保育料を無償にするとともに、認可外保育施設等に通う世帯に対し、保育料負担を軽減するための補助を実施しています。

今般、東京都の第1子保育料等無償化に伴う補助金の拡充を受け、区としても、第1子についても、認可保育所等の保育料を無償化いたします。

また、認可外保育施設等利用者に対しては、無償化相当分の補助を第1子まで拡充する一方、在宅子育て世帯が利用できる預かり事業等についても、第1子まで補助を拡充いたします。あわせて、現在、認可保育所やこども園等に通う3歳から5歳児の一部の保護者にご負担いただいている給食費も、区立・私立を問わず無償化いたします。

引き続き、子育て世帯の負担軽減を一層推進し、子どもを産み育てやすい環境整備をはじめとした少子化対策に、国や都とも連携して取り組んでまいります。

次に、保育施設の経営支援についてです。

区はこれまで、保育待機児童解消に向け、保育の質と量の両輪を重視しながら、私立認可保育所の整備など保育定員の確保に向けて総力をあげた対策に取り組んできました。その結果、平成23年の区長就任時には56園だった私立認可保育所は、令和7年には208園に増加しました。一方で、このところ年齢や地域により空き定員が発生し、保育施設運営事業者への経営への影響が生じるなどの新たな課題が発生しています。また、一部の地域では保育施設が足らずに、ふたたび待機児童が生まれる事態にもなり、私立認可保育所分園を整備するなど、その解消につとめています。

令和7年度から5年間を計画期間とする「子ども・子育て支援事業計画」において、今後就学前人口は減少する一方で、保育需要は当面高い状況が続くことを見込んでおり、引き続き保育需要に応えていくためには、既存の保育施設が今後も定員を維持し、安定的に運営していけることが重要です。

そこで区では、保育施設の経営を支援するため、経営面への影響が特に大きい0歳児の欠員に対する運営費の補助を、今年度より新たに開始しました。あわせて、令和6年度より在宅子育て支援として実施している「はじめてのおともだち事業」の対象年齢を、これまでの0歳児のみから2歳児まで拡大するなど、保育施設への経営支援とともに、在宅子育て支援の一層の充実に取り組んでいます。

区は、「世田谷区保育の質ガイドライン」を令和7年3月に改訂しました。保育の質の更なる向上を図るとともに、「子どもの権利」の視点から保育者ではなく、子ども目線から改訂しました。「保育の質」を保つと共に、引き続き施設をサポートし、保育需要に対応した保育定員の確保と在宅子育て支援の一層の充実に取り組んでいきます。

次に、高齢者等への新たな金銭管理支援事業についてです。

認知機能の低下等により、日常における金銭管理が難しくなってきた区民への支援については、日常の金銭管理の一部支援を行う社会福祉協議会による日常生活自立支援事業(あんしん事業)や、後見人などを決めて金銭管理等の支援を行う成年後見制度があります。

これらの事業については、社会福祉協議会の審査や家庭裁判所の審判等に一般的に2か月前後、ケースによってはそれ以上の時間を要するため、その間にも認知機能の低下がさらに進むことにより、厳しい状況に置かれる区民もいらっしゃいます。このような時には、福祉事業者などの当事者との関わりのある者が、区民の金銭管理に関わらざるを得ないケースがあり、多忙を極める福祉関係者の悩みのひとつとなっていました。

そこで区では、日常生活自立支援事業(あんしん事業)や成年後見制度の申請から開始までの間をつなぎ、その間の区民生活を支援する「プレあんしん事業」、「プレこうけん事業」の2つの新たな金銭管理支援事業を始めることとし、準備を進めております。

区としては、新たな金銭管理支援事業を進めていくとともに、現行制度の期間短縮や隙間を埋めることができる総合的な金銭管理支援制度を国に求めてまいります。

次に、「世田谷区介護事業者経営改善支援事業」についてです。

物価高騰や介護人材の不足等、社会状況の急激な変化による影響を受け、介護事業者の経営は依然として厳しい状況です。

そこで、区では、介護事業者の経営の持続可能な基盤づくりを支援すると共に、区民に必要な介護サービスの提供を保証したいと考えています。まずは、業務上のスキル向上や介護職員の処遇改善等につながる経営改善の意欲のある介護事業者を対象に、経営課題の分析と経営改善をコンサルティング会社に一部委託し、区が主体となって伴走型支援を行う「介護事業者経営改善支援事業」を実施いたします。

対象は、区内に主な事業所がある介護事業者とし、主に訪問介護、通所介護、特別養護老人ホームから10事業所を募集のうえ、決定していきます。

経営改善策が効果的に実行されるよう、介護事業所に対する助言や進捗確認、必要なサポート等の実行支援を行うとともに、各介護事業所の経営改善の取組みや成果をまとめ、成功事例を横展開することで、経営改善支援を行った事業所だけでなく、区内の介護事業所全体へと波及させてまいります。

次に、聴こえに関する支援としての「中等度難聴者のための補聴器購入費助成」の対象者拡大についてです。

区では、18歳以上の住民税非課税世帯の方を対象に、補聴器購入費用の助成を令和6年4月より開始し、この1年間で1,700件を超えるお問い合わせを受け、440件を超える申請をいただきました。

この事業の反響を受けて、より多くの中等度難聴者の方にライフステージに応じた生活の質を高めていただくため、令和7年4月より、住民税が非課税の世帯から非課税の個人へと対象者を拡充しました。さらに、65歳以上の方も本事業の助成から5年以上経過した後は、本助成金の再交付ができるようにしました。

今後も、補聴器購入費用の一部を助成することにより、日常生活における円滑なコミュニケーションが図られ、積極的な社会参加や地域交流が促されるよう引き続き支援していきます。

次に、「ヤングケアラーへの支援」についてです。

区は、令和6年7月から、新たにヤングケアラーコーディネーター2名を配置し、関係機関への助言・相談対応や、当事者である子ども・若者への同行を含む伴走支援、研修やアウトリーチ活動等、幅広い取組みを行うほか、当事者が直接相談できるLINE相談窓口により、子どもや若者の思いに耳を傾け、寄り添う支援にも取り組んできました。

この間、小学生から20代までの子どもや若者をはじめ、関係機関からも多くのご相談をいただき、子ども家庭支援センターやぷらっとホーム世田谷等、各関係機関と連携を図りながら、個別に支援を行っています。

引き続き、ケアを担う子ども・若者の将来の選択肢が守られるよう、教育・高齢・障害・生活福祉・医療・地域の支援団体等の関係機関が連携し、ヤングケアラーとその家族に寄り添い、必要な支援へ早期につなげる取組みを進めていきます。

次に、「地域整備方針(後期)」の策定についてです。

「世田谷区都市整備方針」は、長期的な視点に立った区の都市づくり・街づくりにおける総合的な基本方針です。平成27年(2015年)の策定から10年が経過したことから、中間見直しを行い、今般、令和7年度(2025年度)より、次回の令和16年度(2034年度)の全面改定までの概ね10年を計画期間とする「地域整備方針(後期)」を取りまとめました。

この方針では、街づくりを優先的に進める地区である「アクションエリア」として、三軒茶屋駅周辺地区や下北沢駅周辺地区、二子玉川駅周辺地区等に加え、この10年の街づくりの動きを踏まえ、新たに、連続立体交差事業が進められている京王線沿線などを位置づけました。

今後も地区の街づくりを進めるに当たっては、世田谷区街づくり条例に基づく、区民・事業者・区の協働による街づくりをより一層進めていきます。

また、区をとりまく新たな状況を考慮し、気候変動対策や、区民の意見聴取や意見交換などのツールとして、デジタル技術の活用についても検討しながら、子ども・若者を含む、すべての区民が街づくりに参加しやすくなるよう工夫し、区民主体の街づくりを進めていきます。

次に、令和7年度一般会計第1次補正予算についてです。

東京都の施策と連動した、認可保育園等における第1子保育料の無償化や、帯状疱疹予防接種への対応など、速やかに対応すべき施策について、歳入歳出それぞれ29億2,100万円の補正予算を計上するものであります。

最後に、本議会にご提案申し上げます案件は、令和7年度世田谷区一般会計補正予算(第1次)など議案20件、同意1件、報告5件です。

何とぞ慎重にご審議の上、速やかにご議決賜りますようお願いしまして、ご挨拶とします。

お問い合わせ先

世田谷区
電話番号 03-5432-1111
ファクシミリ 03-5432-3001