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最終更新日 2024年11月26日

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令和6年第4回世田谷区議会定例会区長招集挨拶

令和6年第4回世田谷区議会定例会にあたり、区議会議員並びに区民の皆様にご挨拶を申し上げます。

元日に発生した令和6年能登半島地震から11ヶ月が経ちました。仮設住宅に移動したものの倒壊した家屋の公費解体も、がれきの撤去が進まない状況にあっても、復旧復興の歩みを進めているさなか、非情にも台風の影響を受けた9月21日の豪雨は、能登地方の地震災害に追い打ちをかけ、甚大なる被害をもたらすこととなりました。

区では能登半島地震発生後、直ちに「世田谷区能登半島地震災害支援金」の募金を始めています。4月下旬、犠牲者が多く、被害が大きかった石川県輪島市と珠洲市へと私自身が訪問して各500万円をお渡しました。

今回の豪雨災害での二重被災を受けて、改めて被災地の現状と支援ニーズを把握するため、輪島市、珠洲市に対して、区職員による現地訪問・視察のための先遣隊を派遣しました。10月3日に第2次分として災害支援金各500万円を追加でお渡ししています。

現地訪問により把握した支援ニーズに応えて、珠洲市の税務事務を支援するため職員2名を派遣したほか、輪島市に対しては物資の支援を行ったところです。区として、被災地の一刻も早い復興に少しでも寄与できるよう引き続き支援してまいります。

 

区長招集挨拶
招集挨拶をする保坂区長

次に、時代の変化に対応できる「組織の柔軟性」と、課題を乗りこえていくことのできる「強さ」を考えてみたいと思います。

区長就任以来、「縦割りを横つなぎへ」、所管や領域を超えた「マッチング」を心がけてきました。政策実現のために組織の枠を横断しながら、課題解決へ向かう組織をめざしてきました。

13年余りの区政運営を振り返り、改めて「行政組織の縦割り」とフラットになりにくい「中央集権的ピラミッド組織」の改革は大きな課題だと考えます。国の省庁ごとに運営する法制度があり、そこに対応するために自治体の組織はできています。国が縦割りであれば、地方行政もまた縦割りにならなければ、日常的な制度運営ができないという構造となっています。

世田谷区長として仕事を始めた私は、「漸進的(ぜんしんてき)改革」を志して、慎重かつ時間をかけて、あえて急激な変革を求めずに「行政の95%は継続、残る5%は大胆に改革」と堅実な区政運営をめざしてきました。

ところが、「急激な変化」が私たちの社会を揺さぶっています。冒頭にあげた能登半島の豪雨災害のみならず、今年の「大雨の季節」は5月から10月まで途方もない降雨量をもたらし、その雨が上がると、35度を超える異常高温の灼熱の日々が続きました。

「気候変動」は、ここ数年で明らかに極端な気候を生み出し、災害は大規模化、激甚化しています。世界では、渇水による砂漠化や、乾燥による山火事の大規模化が進み、海水温の上昇は台風を大型化させています。安定した気候を前提に営まれてきた農業も大きな打撃を受け、近い将来の食糧危機が懸念されています。

2020年から、私たちが格闘してきた「新型コロナウイルス感染症」の拡大もまた、都市開発・森林伐採による生態系の変化を背景の1つとしています。インバウンド観光客数の急上昇を迎えている現在、未知のウイルスや病原体による新たな感染症の出現に見舞われた時に、私たちの社会はまだ弱くもろい状態が続いています。

少子高齢化と労働力不足も「急激な変化」です。近隣諸国の合計特殊出生率は韓国(0・72)や台湾(0・87)はすでに1を切っていて、中国(1・15)も日本(1・37)を下回っています。これから、次第に生産年齢人口の減少は、顕著となり各国で産業の担い手の奪い合いが予想されます。

やがて逆ピラミット型となる人口分布で高齢者の人口は拡大し、医療や介護、ケア労働の担い手不足は、すでに深刻です。区内でも、高齢者施設にインドネシアやベトナム等から技能研修生を積極的に受け入れることで、持続可能な介護サービスをめざすことも、当たり前になりました。「多文化共生」を掲げて地域社会やコミュニティで外国人をどう受け入れていくかも、住民サービスの視点に欠かせません。

そして、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、2年半を経過して、多くの戦死者や市民の犠牲を伴いながら膠着状態が続いています。

さらに、昨年10月のパレスチナ自治区ガザを実効支配してきたハマスによるイスラエル市民への攻撃に端を発する戦争は、イスラエルの自衛の名のもとに、人口密集地であるガザ地区で、子どもや女性たちを含めて4万人を超える犠牲者を生みました。今年9月には、イスラエルによるレバノンのヒズボラ攻撃は激しい空爆と、ヒズボラのミサイル攻撃の応酬を生んで、犠牲者を増やしています。しかも、今日の戦火は、さらに世界規模へと拡大するリスクを持っていることに注意したいと思います。

私たちも行政組織として、「激しい変化」にさらされています。日々、変容する社会に柔軟に対応できる組織がより強く求められ、何がどのように変化しているのか、その流れを正確につかみ、内なる改革のスピードをさらに上げていくべき時だと感じています。

区は役割に応じて業務を高度に細分化し、分業することで責任の所在を明確にしながら、職務を遂行しています。現在の組織は、各所管が専門性や習熟した経験と技術を発揮して課題解決することに適した形態となっています。

一方で、今日の区や区民が直面する課題は、複雑・複合化し複数の所管が関連することはもちろん、前例のない未経験の事態では担当所管を明確にすることが難しい場合も多くなっています。

業務マニュアル等による従来の対応では解決が困難な課題に対しては、縦割りを超えたマッチングに加え、区と区民・事業者が互いに意見を交わし、プランの作成や、合意を図るために試行錯誤するなど、結論が容易に出ない場面では粘り強く継続することも必要となります。

世田谷区基本計画で掲げる「参加と協働」の姿勢は、十分な時間をかけて、意見の違いを乗りこえて共通の課題認識を共有する信頼関係を築き、「熟議」とも呼べるプロセスを重視してきました。

下北沢を中心とした小田急線の線路上部、及び駅周辺の街づくりは、その典型例です。10年間で200回に及んだシンポジウムや、街歩きとワークショップなどの集積が、今日の線路跡地の緑地・植栽部分の維持・管理を、区民団体が担う新たな形態も注目されています。

振り返れば、「参加と協働」は一直線に最短コースを結ぶのではなく、迂回したり、戻っては進んだりというプロセスを描いてきました。住民の熱意と事業者の意欲、そして行政職員の粘りが結実して、他に例のない住民参加型街づくりの代表例となりました。

「参加と協働」の場を各領域に展開していくことは、住民参加による主体的な関わりを生み、地域への愛着や災害時の相互扶助にもつながります。

「激しい変化」の時代に必要な人材は、対話とコミュニケーションの基盤があり、共に複雑な利害関係者の共通課題の解決へと向かうコミュニティ(ソーシャル)ワークができ、区や区内資源を的確に把握し、事業者や専門家の助言も政策展開に生かすことのできる幅広い視野をもつ人材です。

世田谷区職員の平均年齢は令和6年4月には40.4歳で、10年前の42.4歳より若返っています。本来なら組織が活性化し柔軟な変容が期待できるところですが、若手職員の希望や意欲を生かしきれず、入庁してまだこれからという時に、早期退職する職員が目立つことにも危機感を抱きます。

特別区職員採用選考の1類事務では、受験者数の減少と需要数の増加により、10年間で合格倍率が約3分の1に低下しており、行政での仕事が若い世代にとって魅力を十分に持つとは言えない状況が生まれています。また、若手職員の退職や、一時休職者の増加に加え、令和5年度に実施した職員意識調査では「将来的なキャリアが描きづらい」「チャレンジできる機会がない」「区に大切にされていない」と感じている職員が多いという結果もあり、若い世代の可能性と挑戦意欲を伸ばしていけない組織のあり方に責任を感じています。

先の見通せない時代にあっても、区民の暮らしの幸福(Well-Being)を最大化するためには、縦割り組織の持つ課題を克服し、持続可能な組織をつくる必要があります。そのためには、まず、職員のワークエンゲージメントを高め、魅力ある職場、やりがいのある仕事、柔軟な組織づくりに向けた「人づくり」に真正面から取り組みたいと思います。

今年度より、「新たな行政経営への移行実現プラン」の下、庁内横断的な検討が必要なものについてPTを設置しました。

また、職員の自発的な企画提案や事業実施をめざして、「提案型プロジェクトチーム制度」を開始し、現在9プロジェクトに32人の若手職員が参画するなど、これまでの前例と経験にとらわれない新鮮な発想と、失敗を恐れないチャレンジ精神を発揮してもらいたいと考えています。

このように、従来の政策形成の手法を見直して、職員が希望する課題に対して、庁内において副業的に取り組むことができる制度がスタートしています。

一方、今年度、自治体の組織風土の改革等で実績のある外部人材を、行政手法改革担当参与として招聘したところです。参与は、広告代理店においてソーシャルマーケティングを専門とし、内閣府や長野県など複数の政府機関や自治体行政に派遣されてきました。現在は独立し、総務省の地域力創造アドバイザーとしても広範囲に活躍されてきました。

基礎自治体では、兵庫県尼崎市において、対外的な情報発信やPRではなく、地域アイデンティティを基盤とした、職員のみならず市民の方々も含めた、地域理解とシビックプライド(まちに対する誇り)を醸成するインナーブランディングを展開して地域づくりや組織開発に尽力されました。

地域と関わり、地域に出ていく職員の育成や、社会教育と学びを中心とした自治的な地域づくりを進め、地域コミュニティでの自治と協働を担う職員配置と若者を応援するまちづくり等、これらの取組みを10年間続けた結果、尼崎市は都市イメージの転換を成し遂げ、民間調査では住みやすいまちランキングの順位を上げるだけでなく、子育て世代からも大いに注目される街となったということです。

地域住民と共に課題解決に職員が能動的に動く中で、街全体の価値が浮揚していくアプローチに注目して、行政手法改革担当参与の提案を積極的に受け入れていきたいと考えています。

区職員として、92万区民が暮らす地域と出会い、世田谷区を好きになり、自分の公務員キャリアが、世田谷区で培われと感じられることが重要です。組織運営上の観点から、世田谷区職員の学びや自己成長の場を準備し、特に若手職員の世田谷区に対する深い愛着や関わりを基礎としたワークエンゲージメントを高めてもらいたいと思っています。

 今年度は、問題意識の理解を進めながら、まちづくりセンターの若手職員を対象とした職員研修や働き方についてのワークショップ、都市整備領域での職員研修等に着手しました。来年度からは、希望者を募って、職員を対象とした本格的な行政職員としての力量形成を目指した志願者でつくるゼミを実施する予定です。

 今後は、世田谷に育てられたと感じられるよう、組織として「職員が仕事を通して学べる環境の整備」や「地域と出会う機会の提供」などを行い、日常業務の中で「経験学習」の視点をもって、特に若手職員のワークエンゲージメントを高めるためにも「学習する組織」の構築をめざしていくことが肝要です。

「学習する組織」は、1990年にマサチューセッツ工科大学の経営学者ピーター・センゲの著書により広まりましたが、変化の激しい時代に適応するよう、集団としての意識と能力を継続的に高め、伸ばし続ける組織論として、改めて注目されています。

 年度当初に与えられる事務分担表上の業務が、どこまでできたのかという「業績評価」は仕事上の指標として重要です。一方で、事業遂行の過程において、職員個人の成長や学びを評価する視点も重要になります。

今後は、職員の学びと自己成長の視点を重視していく必要があります。そのためには、所属長と職員個々の信頼関係がより重要であり、職員と向き合う時間を作るための対話などを実施し、個人の成長を促しながら、その成長を組織の成長へとつなげ、それらが世田谷区役所の資産となり、ひいては区民全体の共有財産としていきたいと思います。

これまでの区は、進取の精神を持って、積極的に海外に職員を派遣し、都市デザインや福祉、保健などの専門領域の知見を生かして、また幅広い視野を持って区の専門領域の先進性を高めることに貢献してきました。コロナ禍前まで行ってきた職員企画提案型の海外研修も再開に向けて検討を進め、職員の職務に対する意欲向上や先進自治体の取組みの区政への還元に繋げていきたいと考えています。

参考となるのは、優秀な職員を長く確保するために、人材流動性が高いIT業界では、自己研鑽の仕組みや自己成長のためのプログラムが充実している点があげられます。 

区でも職員の成長を促すため、webコンテンツなど自己啓発の取組みを行っています。今後は、こうした取組みに加え、仕事を通じての学びや自己成長できる実感を得るために、管理職のマネジメント力向上にもさらに取り組み、職員を成長させる組織を作っていくこと、そして、職員のこれからのキャリアデザインを支援する体制などを検討し、進めてまいります。

「人へ投資」を怠らず、機能的で柔軟、かつ時代課題に正面から取り組んでいける行政組織改革に臨みます。

次に、区の児童相談所についてです。

区の児童相談所は、令和2年4月に特別区初の児童相談所として開設しました。開設に至るまでには都区における10年以上の長い協議の歴史があり、特別区長会として求めてきた平成28年の児童福祉法改正により、ようやく特別区においても中核市と共に児童相談所が開設できる法的根拠が生まれた経過があります。

児童相談所開設前は、都の児童相談所と、区の子ども家庭支援センターが互いに連携しながら、子どもの安全を確保しようとしてきました。しかしながら、設置主体が異なることから、即時に情報共有がないことで、子どもや家庭との関係が途切れたりするなど、迅速かつ的確な対応、継続的な支援につながりづらい状況もあり、この解消が喫緊の課題となっていました。

区では、子ども家庭支援センターと児童相談所が相互補完的に結びつく基礎自治体ならではの切れ目のない児童相談行政の再構築を目指し、児童相談所の開設を決断しました。

開設にあたっては、区議会の皆様や有識者の方々からいただいた貴重なご意見やアドバイスも踏まえながら、2年以上の準備期間を設け、人材の確保・育成、一時保護所における個室居住を導入するなど子どものプライバシー確保や、家庭的な雰囲気の創出に配慮した整備を行ってきました。

特に、児童虐待通告窓口の一本化による子どもの安全確認体制の迅速化や、児童相談所と子ども家庭支援センターと協働して支援を行う「のりしろ型支援」は、双方の設置主体が同一の区であるからこそ成し得ることができた特徴的なものであると言えます。

児童相談所開設から5年目を迎えた現在、当初からの職員は中核を担うだけの専門性を身に着けつつあるほか、子ども家庭支援センターとの一元的運用は安定的に機能しています。互いの機関の強みを生かしながら、子どもや家庭のニーズに合った的確な支援を途切れることなく実施することができているなど、区の当初目指していた予防型の児童相談行政の基盤が整いつつあります。

令和4年の児童福祉法改正により、本年4月から子どもの「意見聴取等措置」や「意見表明等支援事業」が新たに開始されました。児童相談所は、これまで以上に、子どもの意見をよく聞き、子どもに寄り添って子どもの権利擁護に配慮した相談支援が求められるようになりました。また、来年6月からは一時保護に親権者等が同意しない場合、裁判所による一時保護の適性性についての審査が必要となる制度運用が始まります。

このように、児童相談所を取り巻く状況は、法改正による制度新設が続き刻一刻と変化しています。区がこれまでの約5年間に培ってきた予防型の児童相談行政を基軸にしながら、子どもの最善の利益の保障のために、引き続き全力で取り組んでまいります。

次に、同性カップルの住民票の続柄(つづきがら)記載についてです。

同性カップルの住民票の続柄記載につきましては、本年5月に長崎県大村市で、男性カップルの住民票に、当事者の求めによって世帯主と同居するパートナーの続柄欄に、「夫(未届)」と記載されました。7月以降、栃木県鹿沼市、栃木市、神奈川県横須賀市、香川県三豊市など、同様の記載を実施する自治体が増えてきました。

区では、6月の第2回定例会で同様の取組みを検討するかとの質問を受け、「その制度設計について早急かつ具体的な検討を準備するよう所管に指示した」と答弁、担当所管が事務上の手続きについて精査をした上で制度設計に入り、先の9月の第3回定例会では、「11月の段階で取扱いを開始できるよう、準備を進めているところです」と答弁しました。

区といたしましては、同様の検討をしている近隣区とも意見交換を行いながら検討を進め、中野区とともに11月1日より取り扱いを開始したものです。

今回の取り扱いは、世田谷区のパートナーシップ宣誓、ファミリーシップ宣誓または、東京都のパートナーシップ宣誓を行った方を対象に本人からの申し出に基づき、住民票の続柄欄に「夫(未届)」あるいは「妻(未届)」等と記載するもので、取り扱い開始後、11月8日までに5件の申し出がありました。今回の住民票上の記載をもって、法的効果が生じるものではありませんが、当事者の方々が望む実情により近いものとなったと考えております。

今回の住民票の続柄の取り扱いは、現行の住民基本台帳制度の中で自治事務として取りうる過渡的な対応であると考えています。総務省からは、異性間の事実婚と同様の続柄の表記では、各種保険者等が「混同」する恐れがあるとの懸念が示されましたが、性別欄だけでも確認できる上、同性パートナーシップ宣誓書受領者の中で住民票の写しを希望する方に向けて発行する旨のスタンプで住民票の写しに明示するようにしています。

他方で、令和6年(2024年)の最高裁判決は、犯罪被害者等給付金の支給について「同性カップル」にも差別があってはならないと判断していて、国は各種制度における「同性カップル」の扱いについて最高裁の判決に従っての検討を進めていることにも注目していきたいと考えています。

同性カップルの住民票における続柄については、パートナーの方の社会状況に対応した、制度の整備を国に求めてまいりたいと思います。

次に、区の平和事業についてです。

 区では、終戦の日から40周年に当たる昭和60年(1985年)8月15日に、核兵器の廃絶と世界に平和の輪を広げていくことを誓い、平和都市宣言を行いました。その翌年、区内の戦跡の一つでもある世田谷公園内に、平和都市宣言全文を刻み込んだ、区内彫刻家の佐藤助雄氏による「平和の祈り」像を設置しました。当時、多くの区民の皆さんからの寄附もいただきました。

また、世田谷公園には、宣言から5周年を記念して、区内彫刻家の向井良吉氏によるモニュメント「平和の灯(ひ)」の設置、10周年には、児童文学作家の大川悦生氏の寄贈による、広島・長崎での被爆二世の木のアオギリと柿の木の植樹を行うなど、区民をはじめ区の取組みにご賛同いただいた多くの方々のご協力により、平和への願いをつないできました。

平和都市宣言から30周年を迎えた平成27年(2015年)8月15日には、区立玉川小学校にあった平和資料室をより充実させて、世田谷公園内に新たに平和資料館を建設し、愛称を「せたがや未来の平和館」として開設いたしました。基礎的自治体がつくる平和資料館の例は少なく、23区内においても唯一世田谷区だけが有しています。

先にふれたように、ウクライナをはじめ、中東やアフリカでの紛争は激化していて、平和な世界を構築することは、私たちにとっても身に迫る問題です。10月、ヒロシマ・ナガサキの被爆者の声を世界に届けてきた日本原水爆被害者団体協議会(被団協)がノーベル平和賞を受賞しました。国連総会において核兵器禁止条約の採択にこぎつけた長年の活動への評価であると共に、戦後80年が経過して核兵器の使用が迫っていることへの危機感の現れだとも伝えられています。

 「せたがや未来の平和館」は来年、開設から10年目を迎えます。この間、展示室では、過去の戦争を振り返ると共に、戦争の証言や実像を次世代に伝える工夫を重ねてきました。10年目の節目に、より見やすく伝わりやすい展示室へのリニューアルを予定しています。

また、館内の展示にとどまることなく、中学校や公共施設への出前授業や出張展示をはじめ、図書館や地域イベントとの連携、世田谷の戦跡を歩いて巡るツアーやワークショップの開催など、子どもを含めた対話型や参加型の事業も展開してまいりました。

私は毎年、平和都市宣言を行った自治体の長として、平和首長会議に参加しています。これからも、積極的に発言して、平和活動の推進や核兵器廃絶への声をあげていきます。

 次に、世田谷区名誉区民についてです。

令和6年第3回区議会定例会におきまして、区議会の同意を賜り、新たに3名の方を名誉区民として顕彰することといたしました。

まず、お一人目の桑島俊彦(くわじま としひこ)氏は、世田谷区商店街振興組合連合会理事長、世田谷区商店街連合会会長としてご活躍されています。長年にわたり、全国や東京都の商店街振興組合連合会理事長などを歴任され、世田谷区はもとより、全国の商店街の振興に貢献されてきました。

お二人目の本夛一夫(ほんだ かずお)氏は、劇場経営者、俳優としてご活躍されています。本多劇場を含め、9つもの劇場を経営する傍ら、下北沢演劇祭を始めとする様々な地域行事にも主体的に関わるなど、長年にわたり文化・芸術を身近に触れ楽しむことができる地域づくりに貢献されてきました。

そして、三人目の横尾忠則(よこお ただのり)氏は、美術家、画家、グラフィックデザイナー、版画家、作家として多才にご活躍されています。長年にわたり、世界的なアーティスト活動を通じて、世田谷区の文化・芸術の進展に貢献されてきました。

来年1月5日(日曜日)には、リニューアルした世田谷区民会館におきまして、このお三方をお披露目する名誉区民顕彰式を挙行する予定です。新しい年の初めに、区民の皆様とともにその功績を称え、祝福したいと考えています。

次に、ふるさと納税についてです。

区では、ふるさと納税制度の影響による区民税の流出が令和6年度(2024年度)は、約111億円にのぼり、平成27年度(2015年度)からの10年間の累計では実に569億円もの税源が流出しています。流出額の増加率は直近3か年平均で約16.4%となっており、この状況が続けば、3年後には、170億円を超える流出も想定されます。

 ふるさと納税制度は、高所得者であればあるほど恩恵が増す「利用額に上限のない制度」です。

世田谷区でも、高所得になるほど納税義務者に対するふるさと納税制度の利用割合が大きくなる傾向にあります。地方税の本旨や、ふるさとやゆかりのある地域を応援するという制度の本来の趣旨から言えば、現在は青天井の利用額に一定上限を設ける規制や、本来、国の所得税から控除すべき分を、自治体の住民税で肩代わりしているワンストップ特例制度を見直す等、抜本的に見直しが必要です。引き続き、特別区長会などで、粘り強く国に制度是正を求めてまいります。

 一方で、ふるさと納税に対しての区の取組みも反響を生んでいます。今年6月下旬から寄附募集を始めた等々力渓谷プロジェクトには、区内を中心として共感が広がっています。動物関連施策への寄附募集は、この10月から使途を拡充しています。引き続き、このような社会貢献型のプロジェクトを継続するとともに、ふるさと納税を検討している方に、世田谷の取組みを知っていただくきっかけとなるPR活動にも取り組み、さらなる寄附獲得を目指してまいります。

次に、新たな産業化活性化拠点構築事業についてです。

 区では旧池尻中学校跡地に、区内の既存産業の再活性化や、新しい価値を創出する人材の育成など、区内産業のイノベーションを創出・加速し、地域経済の持続的な発展を目指す拠点となる施設を令和7年(2025年)4月に開設すべく、現在整備を進めています。

 本施設では、「既存産業の活性化支援」と「起業・創業支援」を中核的な事業に据え、事業者の活動の場としてスモールオフィスを設けるほか、新商品開発や業務効率化に向けた専門家による伴走支援を行っていきます。また、ビジネスのアドバイス支援や事業者間の交流を促すインキュベーションマネージャーを配置するとともに、創業支援講座等のアクセラレータープログラムの実施も併せ、事業者の成長を支援していきます。

加えて、「産業と連携した学びの支援」として、子どもを対象とした常設の学びの場やスクールプログラムを設けるとともに、「区民に開かれた場」の創出として、モデル実証やトライアル販売の場や、多彩な飲食店やアパレル・雑貨等の物販店舗を設け、誰もが気軽に利用でき、多様に活用できる公共空間を形成していきます。

 次に、国際交流についてです。

世田谷区は、これまでカナダ・ウイニペグ市、オーストリア・ウィーン市ドゥブリング区、オーストラリア・バンバリー市の姉妹都市と親善訪問や教育交流を中心に相互交流を行ってきました。この度、ウィーン市ドゥブリング区と世田谷区が姉妹都市提携40周年を迎えることから、10月21日から26日までの期間で議長及び議員親善訪問団とともに訪問してまいりました。

ドゥブリング区と世田谷区は、緑に恵まれた住宅都市であり、また文化都市を志向しているなどの共通点があり文化・芸術活動を中心とした国際親善として、毎年小学生派遣団がドゥブリング区を訪問しています。私が訪問した時も区立小学校の5年生児童16名が訪問しており、Maria Regina(マリアレジーナ)学校での交流の様子を視察しました。また、姉妹都市提携40周年再確認調印式典では、議長をはじめ議員親善訪問団とともに調印式に臨み、ドゥブリング区長や議員の皆様と改めて文化・芸術等あらゆる分野を通じた交流を深めることを確認し合い両区長が再調印しました。 

世田谷区は姉妹都市交流以外にも台湾・高雄市との音楽交流や東京2020大会で世田谷区がアメリカのホストタウンとなったことから、アメリカ大使館とのつながりやポートランド市の中学生訪問団による区立中学校訪問、ダンス交流等分野別の交流も進めています。 

次に、大学との連携についてです。

 区内及び近隣には、17にものぼる大学・学部があり、他にない大変恵まれた環境にあります。私は、平成26年(2014年)から、区内大学の学長・学部長に声かけをして、大学学長と区長との懇談会を定期的に開催してきました。10年をへて、区と大学との協力・連携は大きく広がりました。現在、教育、災害対策、生涯学習、地域コミュニティなど、区と大学が相互に連携・協力するプロジェクトは100を超えるまでになっています。

去る11月7日には、11回目となる懇談会を開催いたしました。年1回の懇談会を通して交わされた課題について、大学事務局と政策経営部との間で年間を通して協議や情報交換を行うことで、プロジェクトの立ち上げや修正、相互提案や検証を行っています。

10年にわたり区と区内大学のつながりが深まっていることを可視化すべきで、そのための区民・大学関係者の周知の上で合同イベントができないか、ふるさと納税の流出対策で区内大学の資源やせたがやPayが利用できないか等、活発な議論が交わされました。更なる交流連携に向けて協働の推進を図っていきます。

次に、空家対策についてです。

 区は、令和6年4月より世田谷区空家等対策計画(第2次)をスタートさせ、空家等対策を進めております。

「世田谷区空き家対策ガイドブック」を改訂し、家についての終活をサポートする内容を加えた「せたがや 家の終活」を発行しました。解決のために時間がかかることも多いため、「知る、準備する、対処する」という3つのステップで段階的に、早い時期から気軽に始めることができる構成としています。 

 昨年12月、改正空家等対策の推進に関する特別措置法が施行されました。改正により、これまでの特定空家等に加え、管理不全空家等に対しても、指導、勧告ができるようになりました。この間、改正法による対応を進めたところ、管理不全空家等と判断される前段階で改善されるケースも増えてまいりました。また、長期間に及び放置されてきた管理不全な空家についても所有者による対応が進む等、空き家対策の手ごたえを感じており、引き続き空家所有者等による維持管理の適正化に努めてまいります。

次に、職員の給与改定等についてです。

去る10月9日に、特別区人事委員会より、職員の給料及び特別給について引き上げるべき旨の勧告がなされました。これを受け、職員の給料及び特別給の引き上げを実施する必要があると判断しました。このため、条例改正を行う必要が生じましたので、ご提案する次第でございます。

また、特別職の報酬等については、11月22日に世田谷区特別職報酬等審議会より、報酬等を引き上げるべき旨の答申をいただきました。これを受け、特別職の報酬等につきましても、引き上げを実施する必要があると判断いたしました。このため、条例改正を行う必要が生じましたので、ご提案する次第でございます。

最後に、本議会にご提案申し上げます案件は、令和6年度世田谷区一般会計補正予算(第4次)など議案18件、諮問1件、同意2件、報告6件です。

何とぞ慎重にご審議の上、速やかにご議決賜りますようお願いしまして、ご挨拶とします。

お問い合わせ先

世田谷区
電話番号 03-5432-1111
ファクシミリ 03-5432-3001