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最終更新日 2024年9月17日

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令和6年第3回世田谷区議会定例会区長招集挨拶

令和6年第3回世田谷区議会定例会にあたり、区議会議員並びに区民の皆様にご挨拶を申し上げます。

記録的な猛暑と豪雨、台風と不安定な天候が続き、8月29日から31日にかけて、九州地方に上陸した台風10号の影響で、世田谷区でも積算雨量270mmを超える大雨となり、土砂災害の警報発令に伴い「避難指示」を発令しました。

また、8月8日には気象庁から「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表されるなど自然災害のリスクを日々、感じるようになりました。区は、8月に入って「防災カタログギフト」を区内全世帯に送付しました。「在宅避難」を準備する上で何が必要か、共に考えるきっかけにしていただけたらと思います。

この度、一部完成した新庁舎に備えられた「オペレーションルーム」を活用して、台風上陸に伴う水害や土砂災害、地震などを想定した防災訓練も始めています。とくに、災害時医療救護体制の構築を意識した準備を加速させていきます。

 

区長招集挨拶の写真
招集挨拶をする保坂区長

現在、そのために2つの取組みを進めています。

1点目は、地域広帯域移動無線アクセス(地域BWA)用の通信機器の導入促進です。現状の災害時の医療関係者との通信手段はMCA無線と一般のインターネット通信回線のみですが、一般の通信回線とは異なる周波数帯の地域BWA用の通信機器を区内医療関係団体に設置することで、災害時にインターネットにつながりやすくなり、医療関係者が被災情報等を迅速に共有することで、適切な医療救護に繋げられます。

2点目として、災害時医療救護体制の再整備です。区では、震度6弱以上の大規模地震発生時に、梅丘にある保健医療福祉総合プラザに医療救護本部を設置し、区内各所の医療救護活動を把握し統括すると共に、緊急対応が必要な広域搬送等の調整を医療関係団体と行います。同時に、区内5箇所の災害拠点病院等の敷地内に緊急医療救護所を迅速に立ち上げ、医療救護活動を行います。

現在、世田谷保健所を中心に医療関係団体との協議、調整を進めるとともに、実効性を高めるための災害対策訓練等を準備しています。さらに、令和7年3月改定予定の世田谷区地域防災計画において、災害時医療救護関連の内容の充実を図ります。

 次に、「せたがやふるさと区民まつり」についてです。

8月3日、4日の2日間、「第45回せたがやふるさと区民まつり」を8年ぶりに「JRA馬事公苑」及び「けやき広場」、「東京農業大学「食と農」の博物館」を会場として開催し、2日間で29万5千人の来場者を迎えました。

馬事公苑での開催を心待ちにしていた多くの皆さんが、リニューアルされた会場を巡ってテントや各コーナーを存分に楽しんでいただきました。昨年までの区役所・若林公園ではできなかった子どもたちに大人気なキャラクターショーや、「盆踊り」「よさこい」「阿波踊り」、「サンバ」のステージと久しぶりの「おみこし行進」、まつりのラストを飾ったシシド・カフカさん率いるエル・テンポによるフィナーレコンサートも盛り上がりました。

けやき広場では、世田谷区と交流を深めている全国34の交流自治体が参加する「ふるさと物産展」が大好評で、全国各地が出品する物産品を手にする区民で賑わい、区民と交流自治体関係者とのつながりも深めることができました。

能登半島地震の復興支援にも取り組みました。会場で「令和6年能登半島地震災害支援金の募金」を呼びかけるとともに、被災した新潟県、石川県、福井県から協力を頂き「復興支援物産展」を実施いたしました。

 久々の大規模イベントでしたが、熱中症で手当てを受けた方がいたものの大事には至らず、大きな事故もなく終わったことを参加自治体、区内団体の皆様や協力いただいた皆様に、実行委員会とともに感謝いたします。

次に、子ども条例の一部改正についてです。

区では、子どもの意見・発言を聴きながら、「世田谷区子ども条例」の改正に向けた検討を進めています。子ども基本法の施行を踏まえ、今回の改正においては、「子どもの権利」を条文に規定し基盤とする総合条例を目指し、名称を「子ども条例」から「子どもの権利条例」に改めます。

子どもによる意見表明権が実現へ向かうプロセスとして、今年の6月から、区内の中学生・高校生世代15人による「子ども条例検討プロジェクト」を立ち上げ、昨年度アンケートなどで広く子どもたちから聴いた意見も踏まえて条文の検討を行いました。熱心な話し合いの中で、「条例の前文」に記載する子どもの想いや大人へのメッセージ、「条例の目標」、「子どもの権利」の3点について考え、このプロジェクトで練り上げた生の文章を条例素案に盛り込んでいます。

子どもたちが決めた条例の目標は、「みんなが自分らしくチャレンジでき笑顔になれるまち」です。令和7年度からの「子ども・若者総合計画(第3期)」の基本方針での「目指すまちの姿」としても掲げて、条例改正の理念を、計画の推進により実現していきます。

パブリックコメントでいただいたご意見も踏まえ、子ども・若者、そして区民、議会の皆さんと条例改正に向けた検討を進めてまいります。 

次に、保育の質の更なる向上に向けた取組みについてです。

区では、昨年12月13日に起きた区内認可外保育施設における重大事故を重く受け止めています。改めて、亡くなったお子さまに哀悼の意を表し、再発防止の具体策を進めます。

区は、令和6年2月より学識経験者や医師で構成される重大事故検証委員会を設置し、検証を重ねてきました。死亡事故の事実関係を可能な限り把握し、事故発生原因の分析等を行うとともに、検証報告書における「12の提言」を踏まえ、有効な再発防止策に取組んでいきます。

この間の重大事故をふまえるとともに、保育の質を更に向上させていくため、「世田谷区保育の質ガイドライン(平成27年(2015年)3月策定)」を来年度に向けて改訂します。区はこれまで、保育待機児童解消に向け、保育施設数を増やし「保育の質」を確保しつつ、保育定員の拡大の実現をはかってきました。

私立認可保育園はこの10年間で、66施設から203施設へと増えて、待機児童の数も減少しています。一方で、近年の保育事故や虐待事案を踏まえ、改めて「保育の質」が更に向上するように、原点に返って検討を始めたところです。

改訂ガイドラインでは、子どもの権利条約で示されている「4つの一般原則」を明記します。保育施設での実践が「子どもの権利の具体化」となり、先の子ども条例改正(子どもの権利条例)の検討内容も反映していきます。

次に、保育待機児童対策についてです。

令和6年4月入園に向けては、ここ数年にない待機児童が生じる懸念がありました。そのため、緊急対策として、区立保育園におけるさらなる定員確保に加え、私立保育園等の協力も得ながら0歳児欠員枠の1・2歳児への振替えや、定期利用保育の受入れ枠の拡大等、既存の保育施設を活用した対策を行いましたが、今年度58人の待機児童が生じる結果となりました。

また、令和7年度以降の保育需給の予測を行ったところ、一部地域や年齢で待機児童の発生が予測されました。そこで、来年度の待機児童対策として、既存保育施設の更なる活用とともに、地域や年齢を限定した私立認可保育所分園3か所の新規整備を進めます。また、近年、施設数・定員数が減少している認証保育所への補助拡充等も予定しています。

次に、困難な問題を抱える女性への支援のあり方についてです。

 令和4年(2022年)の5月に制定された「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(女性支援新法)が、本年4月に施行されました。これまで女性を支援する法的な根拠は昭和31年に制定された売春防止法でした。女性支援新法は、この売春防止法制定時に創設された「婦人保護事業」を切り離して、女性の人権の尊重、福祉の増進や自立支援等の視点で刷新し、女性支援の新たな枠組みへの移行を目指しています。このたび66年ぶりに、女性への「保護」「指導」「矯正」から、女性への「支援」へと転換が図られました。

 昨年度、世田谷区では、特別区長会調査研究機構に研究テーマとして、「特別区における女性をとりまく状況と自治体支援の方策」についての共同研究を提案しました。研究会では、女性を取り巻く状況と経済的な困難や、生きづらさを抱える女性の詳細な調査を実施し、女性が自ら希望するライフコースを選択できるよう、特別区の女性支援の方策の方向性について分析と研究を行いました。本年7月には、区政会館にて研究結果の報告会が開催され、提案区の区長として私も参加してきたところです。

 本年5月、区は「困難な問題を抱える女性への支援のあり方検討会」を設置しました。今後、本検討会において、国の基本方針や東京都の基本計画に基づき、一人ひとりの女性の意思を尊重しながら、寄り添った支援を切れ目なく行うことを念頭に、区の基本的な方針の策定をめざし、女性支援を包括的に提供できるよう具体策を整えてまいります。

次に、総合教育会議についてです。

世田谷区では、平成27年(2015年)から毎年、区長である私と教育長・教育委員との間で、公開の場で教育に関わる重要なテーマで議論を重ねてきました。「学びの質の改革」「非認知能力を養う遊びや学び」「デジタル機器を活用した教育」「特別支援・インクルーシブ教育」「不登校の児童・生徒の居場所と学び」「幼児期からの遊びと学び」「多様な学びの選択肢」など多様な角度で掘り下げてきた内容を盛り込んで「教育大綱案」をつくりました。

昨年7月の総合教育会議で、区と教育委員会で作成してきた「教育大綱案」を読んだ子どもたちによるプレゼンテーションと討論を経て、昨年11月、教育行政の基本指針となる「世田谷区教育大綱」を策定しました。また大綱と合わせて、教育委員会では令和6年度を初年度とする「教育振興基本計画」を定めています。

 今年度は、第1回目となる総合教育会議を7月13日に行い、「これからのせたがやの学びについて」というテーマのなかで、教育振興基本計画の取組みにも掲げる「地域との学びの場づくり」について取り上げました。区立若林小学校と地域の商店街、国士舘大学との交流・連携についての報告や、同大学に留学する外国人学生が区内の学校で日本語を母語としない生徒の授業理解に寄り添った活動の報告などを、当事者の小学生や留学生、教員の話も交えて聞くことが出来ました。

次に、教員の働き方改革についてです。

「学びの質の転換」と教育環境の向上を図るためには教員が、子どもたちと直接向き合う時間や授業研究の時間が必要です。「教員の働き方改革」を前進させるために、昨年度、教育委員会が実施した教員へのアンケートでは、「子どもと向き合う時間がとれない」「授業の準備時間が足らない」等、学校現場の教員が、多忙化の中で悩む姿が改めて浮き彫りになりました。

 本来は、教員がじっくりと子どもたちと向き合い、入念に授業の準備をして、かつ社会人としての平均的な勤務時間で仕事を終えて、自分の時間が持てるようになることが重要です。教育委員会では、アンケート結果を教員の勤務実態にあわせ時間帯別に詳細に分析し、教員が抱える事務処理等を軽減するために、基本的な考え方と緊急対策プランとして改善のための優先度の高い取組項目をまとめました。

 これまでの検討や、一部実施にとどまっていた教員の区独自採用の人数を増加させ、区として若手教員の支援等の体制を組むなど、有効かつ実践的な一連の取組みを集中的に実施することにより、教員の負担を軽減させ、学校経営、学級運営の質を高められる一歩としました。

 今後の社会の中心は、今の子どもたちです。子どもたちが共に学び、共に育っていく上で、教育の質の向上を図ることは重要であり、待ったなしの命題であります。引き続き、この基本的な考え方のもと、前例にとらわれることなく、大胆、かつ、着実に教員の働き方改革を推進してまいります。

 次に、世田谷区民会館のリニューアルについてです。

世田谷区民会館は、旧区民会館の空間特質をできる限り継承することとし、世田谷区本庁舎等整備の第1期工事と併せて改築しました。メインとなるホールの音響性能を高め、可動式前舞台の設置や座席空間を広くしたことに加え、練習室や親子室を新設するなど、機能面の充実とサービスの向上を図りました。ここを、世田谷区の文化・芸術の拠点と位置付け、多様な表現に触れ、体験・参加できる機会を提供できる施設として9月1日にリニューアルオープンしました。

開館に先駆けて、8月11日に人間国宝の今藤政太郎(いまふじ まさたろう)さん監修の邦楽による杮落(こけらお)としとなるオープニングイベントを開催しました。来年3月まで、区民団体がパフォーマンスを披露するイベントやオーケストラによるコンサートなど、残り5公演をリニューアル記念で開催していきます。また、世田谷区民会館が長く区民に愛され、親しみを持って利用いただけるよう、12月15日まで愛称を募集しています。

また、新たな区民会館にふさわしい今後の企画展開を図っていくため、アドバイザーとして音楽のプロデュースを手がける専門家にお集まりいただき、幅広くご意見をいただく機会を設けました。

改築後の区民会館ホールは、出演者が多い場合に楽屋・控室としても使えるリハーサル室を新設したり、ステージ裏楽屋を増設したりしたことで出演者にとって以前より使いやすくなり、音響性能が向上したことで表現の幅が広がったとの評価を頂きました。今後、世田谷生まれのアーティストを育成していくことや、区内のミュージシャンが次々と関わるような意欲的な企画が展開されると良いとの提案・意見をいただきました。

新しさの中に旧区民会館の面影を残す、世田谷区の文化・芸術を未来に繋ぐ施設として、いただいたご意見等を今後の運営に活かしていきたいと考えています。

次に、三軒茶屋駅周辺の公共施設についてです。

 区では、世田谷区民会館別館「三茶しゃれなあどホール」を、三軒茶屋分庁舎世田谷御幸(みゆき)ビル5階から、新築の三茶昭和ビル4・5・6階に移転しました。本年6月12日より移転先での運営を開始しました。

定員135名の第1集会室「オリオン」は、講演会やアート表現の場にふさわしく、天井が高く、音や振動を抑える遮音・防振機能を持たせるなど、ホールとしての質を高めています。また、新たに定員54名の第4集会室「シリウス」を新設し、用途に応じた集会室としました。

さらに、同ビル3階には「世田谷区マイナンバーカードセンター」が、7月1日よりオープンしました。今後、令和7年度からのカードの電子証明書の更新や、令和12年度からのカード自体の更新が本格化することから、窓口の混雑が予想されます。これまでのキャロットタワーの専用窓口を、このセンターに統合し、迅速な事務処理と利用環境の向上を図っています。

今回の移転により生じた三軒茶屋分庁舎5階の空きスペースを活用して、区の就労関係施設と産業部門との連携を強化します。すでに、三軒茶屋駅周辺にある生活困窮者支援の「ぷらっとホーム世田谷」、若者支援機関の「メルクマールせたがや」、「せたがや若者サポートステーション」を集約・配置する準備を進めています。今後は、女性や高齢者、障害者などに係る就労部門と、分庁舎にある就労や産業などの機能との連携強化を図ることで、三軒茶屋駅周辺の公共サービスのさらなる機能向上をめざします。

次に、自治体間連携フォーラムについてです。

世田谷区と交流を深めている全国の市町村とつながりを発展させる場として平成27年(2015年)より「自治体間連携フォーラム」を実施しており、今年は7月9日に、北海道中川町にて開催しました。

中川町は北海道の旭川市と稚内市の間にある自治体で、また、下高井戸には「ナカガワのナカガワ」というサテライトスペースを開設して特産品の販売だけでなく、中川町で発掘されたアンモナイトの展示や観光・イベント情報も発信しております。

 今回のフォーラムでは、「地域特性を活かした交流拠点による地域づくり」をテーマに、4自治体からの報告をもとに具体例を紹介しました。

また、参加9自治体の首長等による意見交換では、初参加の北海道白老町から「遠隔地の自治体で交流しているからこそ、災害時に協力し合える関係を構築できれば」という声もあり、改めて自治体同士の連携・交流の可能性を認識しました。今後も地方とともに相互に発展・成長できる取組みを推進してまいります。

 次に、第46回世田谷区たまがわ花火大会についてです。

平成29年(2017年)急激な雷雨に見舞われ、開催日を10月の秋花火に移行している「たまがわ花火大会」は、途中、コロナ禍で中止や縮小が続きましたが、昨年、4年ぶりに開催することができ、大変多くの皆様にご来場いただきました。

今年は、10月5日土曜日、午後6時から約6000発を打ち上げ、対岸の「川崎市制記念 多摩川花火大会」との合同開催となります。

澄み渡る秋の夜空に音楽とシンクロした、色とりどりの花火が咲き誇り、夜空を彩る華やかな光の祭典を演じます。恒例の尺玉は、川崎市制100年の祝意も込めて、例年の倍の135発の打ち上げを予定しています。

また、能登半島復興支援として、能登の花火師が作製した尺玉も打ち上げます。フィナーレでは、白銀の尺玉と黄金の尺玉の連続打ちを行います。夜空に打ち上がる大迫力の花火の演出をお楽しみいただけます。

 今年も、多くの皆さんの来場が予想されますので、安全対策につきましては、川崎市、警察・消防を始めとした関係機関と綿密に協議を重ね、万全な対策を講じてまいります。

次に、老老介護とその課題についてです。

世田谷区の高齢者人口は平成7年度(1995年度)の約17万5千人から増加を続け、本年8月1日現在では約18万9千人となりました。今後、令和22年(2040年)には約24万4千人とさらに増加し続ける推計がされています。

また、区内で高齢者がいる世帯のうち、65歳以上の高齢者だけで暮らしている世帯は7割を超え、そのうち半数が一人暮らしとなっています。

地域で高齢者の暮らしの困りごとや介護の相談などは、区内28地区のまちづくりセンターにある福祉の相談窓口で受けているだけではなく、あんしんすこやかセンターや民生委員による高齢者宅の訪問を通して、福祉サービスやインフォーマルサービスにつなげています。

一方、かつての家族観を持つ高齢者は、「介護は家族がするもの」「家族のことは家庭のなかで」という意識が依然高く、ご自分から相談したり、介護サービスを求めたりせず、いわゆる高齢者同士の「老老介護」で、同居する要介護状態の配偶者や家族の介護を一身に背負っている方々も少なくありません。

昨年10月、家庭内での介護負担の限界に耐えられなくなり、長年寄り添った配偶者を手にかけてしまうという悲しい事件も区内でおこりました。 

このケースでは、身近な地区で「福祉の相談窓口」である、あんしんすこやかセンターともつながり、困難な状況を訴える御相談を受けていたところでした。相談を受けて、次のサービスへ移行する手続きを進めている途上であるにもかかわらず、介護による負担が重なって心身ともに疲弊する中で、「このまま介護されるのは相手も辛いだろう」という気持ちが高じたために起きた事件と報道されました。また、あんしんすこやかセンターが訪問診療なども手配していましたが「介護は家族でやるもの、本人も嫌がっている」という理由で断っていたことが公判での陳述で明らかにされました。

今回のケースでは、「身近な相談窓口」からあんしんすこやかセンターの訪問相談から訪問医療へと、区の福祉資源をもってサポートに取り組んだにも関わらず、日々の老老介護による介護疲れと気持ちの限界が生んだ悲劇に至ってしまったことに、忸怩(じくじ)たる思いです。

高齢者の孤立や孤独を防いでいくために、機動力があり、かつ専門性のあるフォローが必要です。高齢者を置き去りにせず、生命を守る有効なセーフティネットを強化していきます。健康づくり、福祉、医療、コミュニティなどを横断的につなぐ多機関協働の仕組みや、区民・事業者・地域活動団体と力を合わせた「高齢者の居場所づくり」をさらに広げていきたいと考えています。

次に、都市整備方針の見直しについてです。

 現在の世田谷区都市整備方針は、長期的な視点に立った区の都市づくり・街づくりにおける総合的な基本方針として、平成27年(2015年)4月に策定したものです。方針の第一部に当たる「都市整備の基本方針」において、区が目指すべき将来都市像を「安全で快適な暮らしをともにつくる都市 世田谷」として、区民の暮らしや生活に着目した都市づくり、まちづくりの方向性を明らかにすると共に、第二部に当たる「地域整備方針」において、より身近で区民生活に密着した地域におけるまちづくりの考え方を明らかにしております。

 策定後まもなく10年を迎えることから、各地域の「地域整備方針」に示していく優先的に街づくりを進めるアクションエリアの方針などについて、新しい世田谷区基本計画との関連と調和を心掛け、見直しに向けた検討を進めています。

区民の無作為抽出や公募参加により7月末から8月にかけて実施した地域別区民意見交換会や区民意見募集などを経て、「地域整備方針(後期)」(素案)の作成に向け取り組んでいます。

近年、区民の活動団体や民間企業等による自主的な企画や活動に端を発する街づくりも始まっていて、今回の見直しではこうした内容を盛り込んでいます。今後も区議会をはじめ、都市計画審議会や有識者の部会においてご議論いただきながら、区民、事業者、区が協働して実現する街づくりの指針として「地域整備方針」をアップデートしていきます。

次に、世田谷区地域公共交通計画についてです。

区では、令和7年度(2025年度)から5か年の地域公共交通計画の策定を進めています。

これまで区は、平成14年(2002年)に交通まちづくり基本計画を定め、南北交通の補完や公共交通不便地域対策のためのコミュニティバスの導入支援や、砧モデル地区におけるAIデマンドワゴンの実証運行をはじめとする各事業を、交通事業者や地域の方々との協働により取り組んできました。

しかしながらこの間、コロナ禍を経てのライフスタイルの変化等により、公共交通機関利用者は以前の水準までには戻らず、また、運輸業等での時間外労働の上限規制がスタートした2024年問題も背景にあって、乗務員不足に拍車がかかるなど、交通事業者の努力だけでは、地域公共交通の中核を担う路線バスを維持していくことが困難な状況となっています。

今後、区内でも更なる路線バスの大幅な減便や廃止の可能性もあり、交通弱者が増大する中、区民生活の基盤を支える足の確保が政策課題となってきます。

区では、令和5年度より、学識経験者、区民、交通事業者、国、東京都等から構成される、「世田谷区地域公共交通活性化協議会」を発足し、地域公共交通に係る様々な方と議論を重ね、公共交通機関の利用促進や交通事業者への支援の在り方、新たな公共交通不便地域対策の取り組みなど、交通計画の再構築を進めているところです。

区議会や区民の皆様の様々なご意見を伺いながら、交通不便地域対策等の取組みを前進させ、誰もが安全・安心・快適に移動できる世田谷を目指してまいります。

次に、駒沢一丁目1番地区に現存する旧林愛作邸の保存及び活用についてです。

米国の建築家フランク・ロイド・ライトの建築作品は、北米及び日本にしか存在せず、国内には自由学園明日館(みょうにちかん)と旧山邑(やまむら)家住宅の2棟が重要文化財に指定されています。また、旧帝国ホテルは、明治村に中央玄関のみが移築されており、国登録有形文化財に指定されています。

旧林愛作邸は、フランク・ロイド・ライトがこの旧帝国ホテルの設計を依頼した支配人・林愛作氏のために大正6年に設計した住宅で、国内の2棟の重要文化財と同様に国民共有の財産であるとともに、世田谷の近代化の過程を物語る貴重な地域の歴史的遺産でもあります。

区では、この旧林愛作邸の現位置での保存・活用に向け、所有者の保存・活用への考え方や要望を踏まえ協議を進めており、7月に開催した説明会で、周辺にお住まいの皆さんのご意見等を伺い、この度、「駒沢一丁目1番地区に現存する旧林愛作邸の保存及び活用に向けた土地利用の基本的な考え方」を取りまとめました。

歴史的建造物を保存する土地利用の考え方の重要な柱として、地域資源の魅力を高める取組み、都市計画諸制度等の活用による歴史的建造物の保存とこれまでの街づくり誘導指針を踏まえ、みどりの保存や防災面の強化など周辺環境への配慮の取組みが必要であるということです。

 所有者のご協力のもと、8月2日、3日に開催した見学会には、周辺にお住まいの多くの方や、区議の皆さんにもご参加いただきました。引き続き、本考え方を基本に、旧林愛作邸の保存・活用及び当該地の土地利用について、区民、議会のご意見を伺いながら所有者と協議を進めてまいります。

次に、令和5年度決算についてです。

一般会計の決算ですが、歳入は、特別区税が、前年度比で31億円の増となった一方、国庫支出金が前年度比で198億円の減となったことなどにより、歳入総額は、3,919億円、前年度と比較して0.5%の減となりました。

歳出は、新型コロナウイルス感染症ワクチン住民接種事業の減などにより、歳出総額は、3,717億円、前年度と比較して0.6%の減となりました。

この結果、令和5年度決算の実質収支は、111億円となりました。

なお、年度末における基金残高は、1,470億円となり 、昨年度に引き続き、特別区債残高481億円を上回っております。

また、「健全化判断比率」につきましては、令和5年度においても、引き続き健全な状況を維持しました。

次に、補正予算案についてです。

このたびの補正は、高齢者・障害者施設等への経営支援や保育待機児童にかかる緊急対策の取組み、高齢者新型コロナウイルスワクチン接種への対応などについて、速やかに対応するため計上するものであります。

あわせまして、国民健康保険事業会計など4つの特別会計につきまして、前年度繰越金の確定などに伴う補正も行っております。

すべての会計を合わせますと、88億8,100万円の増額補正となっています。

最後に、本議会にご提案申し上げます案件は、令和6年度世田谷区一般会計補正予算(第2次)など議案20件、認定5件、諮問1件、同意4件、報告34件です。

何とぞ慎重にご審議の上、速やかにご議決賜りますようお願いしまして、ご挨拶とします。

お問い合わせ先

世田谷区
電話番号 03-5432-1111
ファクシミリ 03-5432-3001