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最終更新日 2025年9月16日

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令和7年第3回世田谷区議会定例会区長招集挨拶

 令和7年第3回世田谷区議会定例会にあたり、区議会議員並びに区民の皆様にご挨拶を申し上げます。

 昭和天皇による「玉音放送」によって、昭和20年(1945年)8月15日、国民に対して、「日本はポツダム宣言を受諾する」と戦争終結が伝えられてから、ちょうど80年の歳月が刻まれました。改めて、日中戦争からアジア太平洋戦争へと拡大した戦史をひもとくと共に、この戦争で尊い生命を落とした兵士、民間人の犠牲者など計り知れない内外の戦争犠牲者に、心から哀悼の気持ちを表明いたします。

 80年という歳月は、三世代にまたがる大変に長い時間です。私たちは「戦後80年」という言葉を噛みしめながら、この間に一度として他国と戦火を交えることのなかった歴史に、先人たちのたゆまぬ平和への努力や対話を重ねてきた歩みを強く感じます。

招集挨拶をする保坂区長
招集挨拶をする保坂区長

各メディアでは、この8月、かつての戦争をふりかえる特集記事や、数々の特別番組が発信されました。20年前は、兵士や将校として戦地に赴いた戦場経験の証言者が多くいましたが、現在、その証言者はぐっと減り、90代から100歳を超える高齢となっています。

私たちが現実に生存者から証言が聞ける時間も、そう長くは残されていません。戦場体験だけでなく、民間人として原爆や空襲、艦砲射撃、機銃掃射などの戦火から逃げまどい、怪我をし、後遺症に悩み苦しむ人たちも高齢化しています。かつての厳しい戦争体験と平和への歩みを次世代に伝える機会を、区長としてしっかり担う決意を新たにしています。

この夏は、世田谷区にとって、昭和60年(1985年)8月15日に行った「平和都市宣言」から40周年、そして世田谷区立平和資料館(愛称:せたがや未来の平和館)が世田谷公園の地に移設開館してから10周年という節目になります。この間、平和の尊さを改めて考える機会として、さまざまな記念事業を実施しました。

まずは、7月16日、せたがやイーグレットホールで記念シンポジウム「次世代への継承 ~戦後80年 語り継ぐには~」を開催しました。基調講演には、戦争体験者4,000人への取材を行ってきたノンフィクション作家・評論家の保阪正康さんをお迎えし、豊富な実証に基づくお話を伺いました。

保阪正康先生の大変示唆に富むお話に、歴史と向き合うことの大切さを、改めて区民の皆様と一緒に確認できたのではないかと思っています。この内容は、この度、YouTubeで配信を開始し、広く区民の皆さんにお知らせしています。

二つ目として、7月20日には、主に若い方を対象に、演劇「あの夏の絵」を上演しました。高校生が被爆者から直接お話を聴き、対話を重ねながら、その記憶を絵に表現する取組みを行っている、広島市立基町(もとまち)高校の取組みをモデルにした演劇です。約200名が鑑賞し、親子連れの参加も目立ちました。

会場のロビーでは、高校生の描いた実際の「原爆の絵」のレプリカを展示し、参加者は熱心に見入っていました。

三つ目は、7月に、せたがや未来の平和館開館10周年を記念し、記念誌『平和な未来をせたがやから』を刊行しました。記念誌には、区民からの寄贈品やこれまでの企画展、語り部活動、来館者の声などを豊富な写真とともに分かりやすく紹介しています。記念事業等でも幅広く配布し、せたがや未来の平和館の存在と役割を広くPRしました。

さて、私は8月7日から長崎市で開かれた「第11回平和首長会議 被爆80周年記念総会」に出席してきました。この平和首長会議は、昭和57年(1982年)に広島市・長崎市の提唱により、核兵器廃絶と恒久平和実現に向けた都市連帯推進計画に賛同する世界各国の都市で構成されています。

世界166か国、8509都市(国内1740都市 本年8月1日現在)が加盟し、世田谷区は、平成22年(2010年)4月1日、熊本前区長時代に加盟しています。

会議には、世界中の加盟都市及び国内都市からの参加があり、私は「人権・難民」の分科会で報告者となり、世田谷区の平和事業について紹介すると共に、UNHCRの呼びかけるグローバルキャンペーン「難民を支える自治体ネットワーク」への参加自治体として活動報告をしました。会場では、多くの難民を受け入れているドイツのハノーバー市からの報告もあり、また、フランスやトルコからの難民問題に取り組む都市の発言がありました。

総会参加者は14か国135都市224人(うち国内参加者183人)と、海外からの参加者も多く、熱意を持った積極的な意見が交わされました。

また、8月9日の長崎原爆の日には、首長会議の一員として、原爆犠牲慰霊平和祈念式典に参列するとともに、核兵器廃絶に向けた共同アピールを発出し、都市間の連帯を強めました。

一方で、世界に目を向けますと、ロシアによるウクライナへの侵攻は長期化し、この間のイスラエルによるパレスチナ自治区ガザでの戦闘や完全封鎖による飢餓で、おびただしい犠牲者を生んでいます。

過去の戦争の事実に目を向けると共に、現在行われている戦争に対して平和的な解決を促し、核兵器の廃絶と再使用をさせない働きかけを行っていく必要があることを私は訴えてきました。こうして、この夏は、平和記念事業や国際会議への参加を通して、戦争を振り返り、平和を創りあげる議論を積極的に担ってきました。

世田谷区は、区民とともに、平和の灯火を掲げる活動を続け、行動していきます。

次に、「世田谷区パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓10周年」についてです。

平成27年(2015年)11月5日に、渋谷区とともに全国に先駆け開始した「世田谷区パートナーシップ宣誓」が本年11月に10周年を迎えます。

区で宣誓受領証発行を開始して以降、同様にパートナーシップ宣誓を導入した自治体は、令和7年(2025年)5月末現在、530自治体に達しており、人口カバー率も92.5%に達するなど、全国に対しても大きな影響を与えてきました。

区における宣誓件数では、本年8月末時点で延べ268件となっています。また、令和4年(2022年)11月には、多様な家族のあり方に対応するために、パートナーの方々の子どもや親を含めたファミリーシップ宣誓を開始し、内容の充実も図ってきました。

性的マイノリティの方々に対する理解促進を図るため、いくつかの記念イベントを開催しています。今後は、10月19日に、ロバートキャンベル氏をお招きした「セクシュアル・マイノリティフォーラム」の開催を北沢タウンホールにて予定しており、「一人ひとりの選択を尊重する社会へ」をテーマに講演いただきます。

11月には、「パートナーシップ10周年」を期して、北沢タウンホール及び中央図書館において、この間の歩みや性的マイノリティの理解啓発に関するパネル展示を行います。また、「パートナーシップ10周年」のポスターを掲示し、レインボーフラッグを庁内窓口に掲示するなど、区民に広く周知してまいります。

また、パートナーシップ宣誓した区民に出演いただく啓発動画を制作しました。この区の取組みへの想いや宣誓によって変わった生活環境などについて映像として区民に見ていただき、性的マイノリティの方々を身近な存在として感じていただきたいと考えています。

 区では、「多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例」の理念に則って、一人ひとりが尊重され、自分らしくいられるよう、さらに取組みを推進してまいります。

近年は記録的な猛暑が続き、7月10日には、数年に一度しか発生しないような大雨と言われる記録的短時間大雨情報が世田谷区においても発表され、1時間あたり降水量100ミリに迫る数値を観測した地点もありました。その大雨の影響で、区内で道路冠水6か所、住宅の床上、床下浸水もあわせて70件以上報告されており、気象環境の変化が危機的状況にあるということを実感しています。

連日の体温に近い、また超えるような暑さは「猛暑」のレベルを超えて、災害級となっており、熱中症の危険が高く注意が必要です。また、8月も「戻り梅雨」とも呼ばれる発達した低気圧が長期間にわたり、九州及び東北地方で記録的な降雨量の豪雨被害をもたらしました。異常高温と豪雨被害、そして台風の季節に入り、災害対策は連日の対応ができるように備えていきます。

昨年の令和6年(2024年)元日に発生した能登半島地震の直後から、区では「能登半島地震災害支援金」を立ち上げて、区民や区内団体の皆様のご協力で、同年9月の水害被害も重なった石川県輪島市と珠洲市の両市に、合計4,000万円をお送りしました。なお、今後も支援を継続します。

一方で、昨年8月の南海トラフ巨大地震注意の発令、本年6月の鹿児島県トカラ列島近海において地震が頻発するなど、地震などの自然災害に対する不安は後を絶ちません。区では、令和7年(2025年)2月に修正をした世田谷区地域防災計画において、令和12年度(2030年度)までに、「首都直下地震等による人的・物的被害を概ね半減」するという減災目標を掲げ、その実現に向けて災対各部において取り組んでいるところです。

この度、この減災目標の達成をより確実なものとするため、8つの重点的に取り組むテーマを定め、「災害対策強化プラン」としてまとめました。災害対策の着実な積み上げを区民の皆様に実感していただき、自然災害に対する備えがさらに進むように全庁をあげて取り組んでまいります。

次に、マンション防災共助促進事業の受付状況・再募集についてです。

6月16日より、マンションの管理組合や管理会社、オーナーの方などが申込むことができる区内の希望するマンションに対して防災備品を配布し、共助を促す「マンション防災共助促進事業」の申込みを開始しました。申込み開始直後から、当初の予想を上回る多くのお申込みをいただき、翌日には申込み件数が予算の上限に達する見込みとなったため、受付を1日あまりで終了することになりました。該当するマンションへのチラシの配布が終わる前に受付終了となってしまったことをお詫びいたします。

現在、6月受付分の1,156棟について、防災備品の配送を順次行っているところです。多くのマンションに居住される区民の皆さんが、マンション防災に対し高い関心と要望をお持ちであることをふまえて、9月18日から10月17日まで申込を受け付けることとし、新たに1,000棟分の追加募集を実施いたします。在宅避難の更なる推進、マンション居住者の防災意識の向上を目指し取り組んでまいります。

次に、住まいの防犯対策サポート事業の受付状況・申請期限の延長についてです。

区では、個々の住宅の防犯機能と区民の防犯意識の更なる向上を図るため、住宅への防犯カメラ等の防犯設備や防犯物品の購入に対して、その費用を補助する「住まいの防犯対策サポート事業」を実施してまいりました。

本事業は、補助上限額を4万円としており、補助対象は7年度当初予算及び第2回定例会の補正予算の合計で約6億円を計上し、対象を全世帯数の3%にあたる約1万5千世帯としております。

9月1日時点での受付件数は約5,700件となっていることから、更なる事業周知のうえ利用機会を設けるため、申請期限を令和8年(2026年)1月末まで延長いたします。

 次に、ふるさと納税についてです。

区では、ふるさと納税制度の影響による区民税の流出が令和7年(2025年)度は、約124億円にのぼり、平成27年(2015年)度からの累計では実に693億円もの税源が流出しています。

 ふるさと納税制度は、受益と負担という地方税の原則を逸脱しており、東京23区からの流出額に歯止めがかかりません。ふるさとやゆかりのある地域を応援するという制度発足時の目的を鑑みれば、寄附金控除額に上限を設ける等、制度そのものを抜本的に見直すべきです。引き続き、特別区長会、東京都などとともに、様々な機会を捉え国に制度是正を求めてまいります。

 一方、令和6年(2024年)度には、10億3,900万円程の寄附を区にお寄せいただきました。このうち、約6億8,400万円は遺贈によるもので、それ以外の個人からの寄附、「ふるさと納税」では、約3億3,700万円となりました。寄附者の共感を得る取組みや返礼品の拡充などにより、昨年度から約2,100万円の微増となっています。

 区は、新たな寄附募集の取組みとして、区内大学等応援補助事業を実施いたします。区内大学等応援補助事業は、区内大学が実施する公益的事業に対してふるさと納税の仕組みを活用して寄附を募り、その寄附を財源に区内大学に補助金を交付する事業です。

地域課題の多様化・複雑化などにより、行政だけでの課題解決には限界があるなか、区内大学の独自色のある地域参加、コミュニティの活性化に資する活動は今後より一層重要であるため、区内大学等応援補助事業を今年度10月から実施することといたしました。

区税流出額が増加する中、ふるさと納税において新たな選択肢を寄附者に提供することで、各大学による地域課題の解決に取り組むとともに寄附文化を醸成していき、区税流出の一助につなげてまいります。

次に、自治体間連携フォーラムについてです。

世田谷区と交流を深めている全国の市町村とのつながりを発展させる場として、平成27年(2015年)より毎年、「自治体間連携フォーラム」を実施しております。今年度は10回目の節目であり、6月26日、27日の2日間にわたって北海道白老町で開催しました。白老町にはアイヌの文化の復興・創造等の拠点となるナショナルセンター「ウポポイ(民族共生象徴空間)」があり、町では互いの文化や個性を尊重する多文化共生のまちづくりに積極的に取り組んでいます。

今年度のフォーラムは「多様な主体による持続可能な地域づくり」をテーマに、5自治体・1団体が事例発表しました。

アイヌ文化との共生、大学との連携、自然エネルギー、新たな認知症観への転換、福祉施設での外国人材の活躍、在住外国人施策など、様々な分野があり、改めて自治体同士の連携・交流による課題解決の可能性を認識いたしました。

また、2日目の意見交換会に先立ち「ウポポイ」を視察し、多文化共生の理解を深めることで、より活発な議論をすることができました。

今後も、自治体間連携を通して、地域課題を解決し、相互に発展・成長できる取組みを進めてまいります。

次に、デジタル地域通貨「せたがやPay」についてです。

今般の、食料品価格等の物価高騰の影響を受ける区民や事業者を支援するため、国の令和7年度予備費の支出を裏付けに充当された「重点支援地方交付金」に一般財源を上乗せし、7月1日から1か月間、せたがやPayによる最大15%ポイント還元事業を実施いたしました。

7月の東京23区の消費者物価指数によれば、食料品の値上がり傾向は継続し、「生鮮食品を除く食料」は前年同月比で7.4%の上昇、このうち「米類」に至っては81.8%の上昇という高い水準を示していました。

このような大変厳しい状況下において「せたがやPay」は大いに活用され、7月の1か月間で、約2.5億円のポイント還元に対し、約19億円の決済が区内で行なわれ、10万人以上の方にせたがやPayをご利用いただくことができました。

また、7月から8月にかけては、商店街を始めとする地域の方々のご尽力により、夏祭りや盆踊り大会が各地で開催されました。そこでも多くの区民や事業者の皆様にせたがやPayをご利用いただき、区民生活に根差したデジタル地域通貨として着実に成長し、地域コミュニティや地域福祉の企画者へのポイント付与などをとおして、これから益々活用を拡げていきます。

次に「第46回せたがやふるさと区民まつり」についてです。

昨年より「馬事公苑」と「けやき広場」を会場とし、今年は8月2日、3日に開催いたしました。開催前日の金曜日には台風9号の接近が心配されましたが、当日は2日間とも晴天に恵まれ、昨年より1万5,000人以上多い、31万500人の来場者がありました。

とりわけ人気の高い「ふるさと物産展」では、30の交流自治体より自慢の特産品を販売いただくとともに、クイズなどのお国自慢大会といったイベントに多くの方にご参加いただき、区民と交流自治体との交流が深まりました。

各ステージでは、出演を希望していた全ての団体にパフォーマンスや音楽等を披露いただき、区民団体や商店街等の出店では、子どもからお年寄りまで楽しめる様々なブースがあり、大変多くの方で賑わいました。

また、馬事公苑に戻って復活した盆踊りや阿波踊り、各地から集結する「みこしの連合行進」はまつりをいっそう盛り上げ、ミュージカル俳優の中川晃教(なかがわ・あきのり)さんとマリア・イーさんを迎えたフィナーレコンサートでは、会場の一体感を感じられる等、「ふるさと世田谷」を感じて頂ける機会を提供できました。

 酷暑の中での開催となりましたが、大きな事故もなく終了できたことを、会場を提供いただいたJRA馬事公苑をはじめ、ご協力頂いた交流自治体や区内団体、関係機関、実行委員会の皆様に厚く感謝いたします。

次に、「第47回世田谷区たまがわ花火大会」についてです。

区民に花火を通して、多摩川の水辺に親しんでもらうとともに、周辺環境の美化に努めることにより、「ふるさと」意識の醸成と「区民相互の絆」を深めることを主旨に今年も開催いたします。

日程は、10月4日(土曜日)午後6時から、打上発数は前回と同規模の約6,000発を予定し、「川崎市制記念 多摩川花火大会」との合同開催となります。

秋の夜空に音楽とシンクロした色とりどりに咲き誇る花火には、能登復興支援として、能登の花火師が作製した花火を打ち上げるほか、恒例の尺玉による大迫力の演出も企画しています。さらに、今回は長谷川町子美術館のご協力により、サザエさん花火の打ち上げを予定しています。

なお、今年も、来場者の安全対策につきましては、川崎市、警察・消防を初めとした関係機関と綿密に協議を重ね、万全な対策を講じてまいります。

次に、保育の定員確保の取組みについてです。

令和7年(2025年)4月入園において、1・2歳児で合計47人の保育待機児童が生じました。この結果を踏まえ、令和7年度から5年間を計画期間とする「子ども・子育て支援事業計画」で示した保育の需要量と確保量の見込みについて再推計を行ったところ、計画を上回る保育の利用意向の増加等により、保育施設の一部確保量に不足が見込まれることが判明しました。

こうした状況を受け、区では保育待機児童が生じている1・2歳児について、令和8年4月入園に向けて、砧地域に1園、烏山地域に1園の私立認可保育園分園をさらに追加し整備していくこととしました。

また、この9月からは保育料の第1子無償化も始まりました。今後、保育の利用を希望される方がさらに増えることも想定する必要があることから、中長期の目標を掲げて、需要量見込みをさらに上乗せし、令和9年度以降も計画的に施設整備に取り組んでいきます。

加えて、既存保育施設の定員確保に向けた取組みも重要です。区では、これまでも既存施設の弾力化等による定員の拡充を行うとともに、定員確保に向けた様々な取組みや施設への経営支援にも取り組んできました。令和8年4月からはこれらの取組みに加え、都の補助を活用し、区が定員確保の要請を行った施設に対して、定員が埋まらなかった場合に、その欠員分を補償する制度を新たに導入します。引き続き施設をサポートし、保育待機児童解消に向けて、保育の質と量の両輪を重視しながら、今後も保育定員の確保に全力で取り組んでいきます。

次に、終活支援についてです。

人生の最終章を自分らしく、安心して迎えるための準備を「終わり」の「活動」と書いて「終活」と言いますが、終活として整理しておくべき課題は、老後の介護や医療、死後の葬儀や遺品整理、相続等多岐に渡ります。

区では、世田谷区社会福祉協議会に成年後見センター事業を委託しています。成年後見センターでは、相続や遺言などに関する「あんしん法律相談」や老い支度講座、終活講座やエンディングノートの配布による普及啓発を実施しておりますが、終活に関わる多様な相談ニーズに対しては、総括する窓口はありませんでした。

こうした相談ニーズに対応するため、現在、区では、新たに「(仮称)終活支援センター」を開設することを検討しています。

この「(仮称)終活支援センター」では、総合相談窓口を設置するほか、昨今話題になっているデジタル終活や遺品整理など、テーマを設定した終活講座の実施や、高額な利用料のため民間のサービスの利用が困難な一人暮らしの低所得者へ向けた、入院時の身元保証や死亡後の手続き等を担う、高齢者終身サポート事業を実施する予定です。

まだ検討段階ではありますが、全ての区民が人生の最後まで安心して、尊厳をもって生活できる社会を実現するため、取り組んで参ります。

次に、新たな学びの多様化学校、「世田谷区立北沢学園中学校」の開校についてです。

7月19日と23日の両日、教育委員会は、令和8年度に新たに開校する北沢学園中学校と、既に開校している「世田谷中学校分教室ねいろ」の、令和8年度転入学に向けた保護者説明会を開催しました。両日で180名を超える保護者に参加いただきました。教育委員会の説明に対し、参加者から高い関心が寄せられ、教育内容や学校運営、入学までの流れなど多方面にわたり、たくさんの質疑が行われ、大変活発な説明会となりました。

北沢学園中学校の特徴の第一は、特別な教育課程です。生徒の社会的自立に向けて、生徒の実態に配慮した独自の柔軟性のある教育課程を作成し、一人一人の状況に応じた指導を行います。

不登校や学校になじめないなど学習の遅れを心配している生徒も多いことから、基礎基本の教科の学習を、午前中を中心にしっかりと行います。またリ・ラーニングということで、放課後補習の時間を設け、小学校、中学校の授業の復習や今学習している内容に取組む時間を設定します。この取組みは、高校生を含む学生等のボランティアを募って実施します。

午後は体験活動や探究活動をメインとした多様な学びを実施するため独自の教科を編成し、自ら学ぶ時間とします。

キャリアデザイン科は、「特別な教科 道徳」、及び総合的な学習の時間の趣旨を生かし、探究的な学びに取り組んだり、自分を振り返るなど生き方を考えたりする時間としますが、ソーシャル・スキル・トレーニングやグループエンカウンター等のコミュニケーション力を育てる活動も取り入れます。

マイ・デザイン科では、音楽・美術・技術家庭の基礎的な技能を学びつつ、自己を表現する力を高めます。

3年次には科学・技術・工学・芸術・数学の分野を統合的に学習するSTEAM科を設け、今までの学習のまとめに取り組みます。技術分野、家庭分野等と連携し、「人に役立つ」「社会に役立つ」「自分に役立つ」ものを作り上げることが目標です。

特色のある特別な教科については、作品の展示や発表・プレゼンテーションを地域文化芸術交流会として実施し、子どもたちの学びのまとめとします。この交流会は、大学連携として行う美術・音楽・演劇等の各講座の成果発表の場にもしていきます。

もう一つの特色は、北沢学園中学校の同一施設の中に、ほっとスクールと、地域の子どもたちの放課後の居場所・あそび場である「きたっこ」が併設されることです。学びの多様化学校と、世田谷区では「ほっとスクール」と呼ぶ教育支援センター、さらに、「きたっこ」のような施設を同一の場に包含している例は、全国的にも初めてのようです。多様な年代や背景のある子どもたちが共存し、施設を有効に使えるよう工夫します。同時に、互いの活動を目の当たりにし、時に共同の時間を設けることで、子どもたちの成長に資する交流が生まれることを期待しています。

この度、区民のまちづくり活動を技術面・資金面で支援するために平成4年(1992年)に設立された「公益信託世田谷まちづくりファンド」の長年の実績が評価され、日本都市計画学会賞 石川賞を受賞いたしました。特に評価された点は3つあります。

一つめは、世田谷トラストまちづくりが資金の助成だけではなく、活動支援を行っていること。

二つめは、行政と区民のほか、企業も寄附という形で参画する包括的な仕組みになっていること。

三つめは、助言機関である運営委員会に、ファンドの卒業生が関わり、まちづくり全体に関与しようという人財の発掘・増加に寄与していることです。

30年以上にわたり区民を支援してきた世田谷まちづくりファンドは、日本各地のまちづくりファンドや中間支援組織のモデルとして高く評価されました。

6月29日に開催された活動報告会では、14団体から活動報告がありました。助成を受けスタートした活動がやがて軌道にのり、自律した活動として展開できるようになったという報告や、公共事業への関心から集まった小規模な活動が拡がりをみせ、いまでは200名を超える団体に成長したという報告など、活動の持続性や拡がりが示されたところです。

世田谷まちづくりファンドは、信託財産の終了に伴い、今年度から段階的に世田谷トラストまちづくりの運営する「世田谷トラストまちづくり活動助成事業」へと移行します。区としても、この度の評価、まちづくりファンドの考え方を継承する、この取組みを引き続き支援してまいります。

次に、補正予算案についてです。

このたびの補正は、マンション防災共助促進事業や区立小学校普通教室及び体育館のエアコン改修工事、保育待機児童対策としての新規保育施設の整備などについて、速やかに対応するため計上するものであります。

あわせまして、国民健康保険事業会計など4つの特別会計につきまして、前年度繰越金の確定などに伴う補正も行っております。

すべての会計を合わせますと、67億7,600万円の増額補正となっています。

最後に、本議会にご提案申し上げます案件は、令和7年度世田谷区一般会計補正予算(第3次)など議案32件、認定5件、諮問1件、同意1件、報告29件です。

何とぞ慎重にご審議の上、速やかにご議決賜りますようお願いしまして、ご挨拶とします。

お問い合わせ先

世田谷区
電話番号 03-5432-1111
ファクシミリ 03-5432-3001