令和5年9月の「区長の談話室」(ゲスト:斎藤環氏)

最終更新日 令和5年10月9日

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令和5年9月の「区長の談話室」

令和5年9月3日・10日放送
区長の談話室「生きづらさを抱えた若者を支援します!」

※9月10日は3日の再放送です。

不登校やひきこもりなど、生きづらさを抱えた若者とその家族を支えるための施設、世田谷区若者総合支援センター「メルクマールせたがや」が開設されて10年を迎えます。その記念行事として行われるシンポジウムを機に、斎藤 環氏(筑波大学社会精神保健学教授)をゲストに迎え、現状や支援策などについてお話しをしていきます。

ゲスト紹介

  • パーソナリティ:保坂区長、今日もよろしくお願いします。
  • 区長:よろしくお願いします。
  • パーソナリティ:今日は、不登校やひきこもりなど、生きづらさを抱える若者たちの支援についてお送りをしてまいりたいと思います。では、早速ゲストをご紹介いたします。筑波大学社会精神保健学教授の斎藤環さんです。斎藤さん、よろしくお願いいたします。
  • 斎藤氏:はい、よろしくお願いいたします。
  • パーソナリティ:区長、斎藤さんは著名な方でいらっしゃいます。プロフィールをご紹介いただいてもよろしいですか。
  • 区長:はい、今ご紹介あったように、筑波大学で学生さんを教えながら、ひきこもりの問題で非常に早い時期から発言をされ、もちろん治療もしてこられた中で、これを悪い意味で利用している連れ出し屋とか、そういったビジネスはおかしいということも初期から言っておられました。ひきこもりについて第一人者。行政なり、国なりで、大変大きな影響力をもっていらっしゃいます。同時に世田谷区も「メルクマールせたがや」を開設しておりますが、そこにもリーダーシップを振るって、しっかり世田谷区のひきこもり支援にも貢献をいただいているというのが斎藤環さんです。
  • パーソナリティ:斎藤さん、区との縁も深いということで、改めてよろしくお願いいたします。

不登校、ひきこもりの若者の現状

  • パーソナリティ:今回、不登校やひきこもりなど、生きづらさを抱えている方たちが増えているということで、改めて区長、現状はいかがでしょうか。
  • 区長:やはり新型コロナの3年間がありました。特に初期には、事実上の外出禁止、学校も休み。逆に言うと全員が社会活動をしないみたいな時期になり、その後で随分大きなストレスをですね、いわゆる学校生活で「近づくな」「しゃべるな」「笑うな」、食べるときは黙食で「黙って」と。これが3年も続いたという中で、小学生、中学生だけでなくて、大学生とか多くの若い人の中に相当の生きづらさというか、いろんな意欲がしぼんでしまう、また外に出たり、人間関係を作るのが非常に苦手になるといった、変化があるという風に聞いています。そのあたり、斎藤さん実際に若い人に向かい合っていて、どんな変化があったんでしょうか。
  • 斎藤氏:そうですね。今、内閣府調査でひきこもりが146万人という統計も出ておりますし、全世代にいるということも分かってきました。若者に限定されないということもあるんですけれども、一方で、不登校が2年前の統計で24万人と最多を記録するということもあって、非常に社会参加が苦しいという若者の心情が露呈したと考えてもいいと思うんですけれども。コロナ禍で浮き彫りになった部分って相当ありまして、もともと社会参加を頑張って続けている人は結構いたわけですけれども、結構無理をしていた可能性が高いと私は思っているんですよね。背伸びをして頑張っていたと。そんなところへ、コロナ禍がやってきて、家にひきこもらざるを得ない状況になった。もちろん出たくてしかたない人もいっぱいいるし、友達と交わりたい人もいっぱいいたはずなんですけれども、結構無理していた層の若者にとっては、このコロナ禍で外出しない期間が3年続いたということによって、もう無理がきかない状況になってしまったと。これが不登校の急増とか、ひきこもりの急増につながった部分というのは相当あるかもしれないと。コロナ禍が、それまで感じていて、潜在していた若者の生きづらさを浮き彫りにしたというような側面もあるように思っています。
  • 区長:若い人たちのひきこもりでいうと、女性のひきこもり。実際には今まで把握されていた以上に、いわゆる家事手伝いとかそういう概念で括られていたこともあって、やはり若い世代の女性が男性よりもかなり負荷を負うという部分で、つらい現実を生きているということも、世田谷区でも感じるようになりました。その辺はいかがでしょうか。
  • 斎藤氏:そうですね、ひとつ象徴的なのは、コロナ禍で女性の自殺率が急増したということがあって、どんな地域でも女性の自殺率は男性の半分ぐらいなんですよね。それは、生きづらさが低いという意味ではなくて、それまでの女性のつらさみたいなことは、横のつながりですね、所謂ソーシャルキャピタルとか言いますけれども、井戸端会議的なつながりとか、ファミレス仲間とか、そういうつながりの中で、愚痴をこぼし合う中で援助希求行動がなされていたわけなんですけれども、コロナ禍でそのつながりが断たれてしまったという状況があって、一気に女性の孤立化が進んだという風に考えていいと思うんですよね。そう考えると、孤立した女性において自殺率が上がってしまうことは、そこに女性の生きづらさがあったのかなということを改めて認識するような、そういう状況だったかと思います。
  • 区長:ひきこもり観というか、ひきこもりっていう言葉で何を思うかということにつながるんですが、僕が政治家になる前は子どもの現実を取材するジャーナリストで、もう随分前になりますが、「戸塚ヨットスクール」っていう現場を取材したことがありました。当時は「根性を叩き直す」みたいなことで、そこに暴力があったり、命の危機があっても、それで覚醒させるんだみたいな、これがやはり命の教育ではないかと擁護する人たちもいて、いやそれは違うと思うという側で私はいたんです。で、その当時だと、登校拒否症っていう病気があるんじゃないかっていう風に考える人たちがいて、それで専門機関と称する、「戸塚ヨットスクール」だけじゃなくて、いろんな牢屋みたいなところへ放り込むところで、何百万円と親からもらってというような所がありました。で、その後ずっと見ていくと、先ほど冒頭で紹介しましたけれども、引き出し屋っていうんですか、ひきこもりの状態にある人についてとにかく叩き直すんだみたいな、そういうビジネスもかなり広がっていたんですね。
  • 斎藤氏:そうですね。ひと頃そういったビジネスがマスコミ等でも報道されまして、非常に反響があったりするんですけれども、私からみるとあれは非合法活動なので。活動自体は止めようがないのもありますけれども、せめてメディアが褒めることはやめましょうという形でアピールしまして、幸い今はそういう活動がテレビで紹介されることはまずないと。
  • 区長:そうですね。
  • 斎藤氏:そういうところまで来ましたけれども。ただ、今はYouTubeがありますので。YouTubeを見ていくと、まだそういった活動をしている人々が自分たちの活動を紹介したりしているということがあったりしますんで、なかなかそういった強制的な暴力的な、鍵括弧付きの支援活動みたいなことは、なかなか治まらないなという残念な印象を持っています。
  • 区長:そこで、ひきこもりの状態にある人たちっていうのは、果たしてなかなか治すことができない病気なのか、あるいはどうなのかというところって、細田さんどう思います?
  • パーソナリティ:病気と捉えるにはって、私の子どもも小学校だったり高校に通っているんですが、今年になって不登校になったり、ひきこもりになったりっていう。でも普段会うと元気だったりするっていうところで、病気と括っているのはかわいそうなのかな。でも、寄り添ってあげたいなっていう風に悩んでいたりはするので、そういった決めつけることなく寄り添いたいなと思うんですが。区長、あらためてそういった寄り添う場所として、世田谷区も支援をされていたりするんですよね。
  • 区長:そうですね。おっしゃるように、今、登校拒否は病気だという主張は全くなくなりました。どの子にも起こり得ると。ひきこもりも、状態のことを言う言葉であって、いろんなケースがあるっていうことですよね。やはり146万人ですか、全国で。ものすごく多いんですよ。多いけれど見えないんです。で、かなりご家庭の中で悩んでいたり。で、本人がじゃあ楽にやっているかっていうと、なかなかそうではなくて、すごく葛藤していて、自分はどうなっていくんだろうか。あるいは親からみてこの子はどうなっていくんだろうかっていうことで、すごく心配に心配を重ねているような状態で。そこにやはり行政として、相談の窓口と、大事なのはその状態にある人たちが、ここなら来れるよっていうプラットホームというか居場所、これも必要だなということで。世田谷区では斎藤先生にアドバイスいただきながら、もうやがて10年になります。今日その記念シンポジウムを前に、この収録をやっています。

「メルクマールせたがや」の果たしてきた役割、区の支援策について

  • パーソナリティ:世田谷区の若者総合支援センターでもある「メルクマールせたがや」ということで、斎藤先生にもお力添えをいただいてということですが、世田谷の印象はありますか?活動を通して世田谷がどう変化しているのかとか、ありますか? 
  • 斎藤氏:どういう変化をしたかに関しては、成果報告がこれからあると思いますので、そちらで数字がはっきりすると思いますけれども、非常にユニークな取組みでありまして、相談窓口でもあったりとか、居場所の提供ができたりとか、もしくはいろんな専門家のネットワークづくりをするとか、そういった重層的な機能になっていて、こういう活動を10年続けてくるっていうのはなかなか稀有なことではないかというように感じています。やっぱり、ひきこもりや不登校の問題といいますか、この種の状態に対するアプローチというのは、今申し上げたように窓口があって、それから居場所があって家族相談ができるという風にいろんな多面的な支援をしないと対応できないところがありますし、かかわる人にしても、医療に限らず福祉だったりとか教育だったりとか心理だったりとか様々な専門家が、一人のケースを複数の専門家で抱える必要があるんですけれども、そういったことに関しても非常に上手に適応されているように感じます。こういった活動はぜひ10年、10周年の節目ではありますけれども、もっともっと継続していってほしいかなと。できればこういった有意義な活動は他の地区でも、他の区でもぜひモデルにしていって欲しいと感じております。
  • パーソナリティ:区長、10年というと感慨深いところもあるかと思います。どうですか、果たしてきた役割など。
  • 区長:そうですね。累計800近い家族の支援をされて、今、年間でいうと5000件近い相談を受けているんですね。この「メルクマール」の活動がだんだん浸透してきて、逆に見えてきた課題っていうのがありまして、それは実は若者支援っていうことでやってきました。従って、40歳に至る前までの人たちを支援するよと。これが「メルクマール」だったんですが、実は45歳の方だとか、53歳の方だとか、あるいは60代の方でも同じ状態で苦しんだり悩んだり、年老いた親とともに悩み深い方たちがいて、その人たちを別の機関、「ぷらっとホーム世田谷」ってところで応援していたんですが、この法律上の年齢区分っていうのは、とっぱらってしまいましょうということで、昨年の4月から「リンク」っていう総合相談窓口をつくって、何歳っていうのをやめて一緒にやる、これが新しい到達点でしょうかね。
  • 斎藤氏:そうですね。年齢制限の撤廃は非常に画期的だと思うんですよ。若者の高齢化が進んでいると私言っていますけれども。そういう形で、若者という区分自体が意味を持たなくなってくるかもしれないという風に考えています。そういった意味で、先駆けて「リンク」のように上限を撤廃して支援していくっていうことは、非常に貴重な試みだと思いますし、これも是非広がってほしい考え方だと思いますね。
  • パーソナリティ:それでは、世田谷区でその寄り添う窓口として皆様に親しまれている「メルクマールせたがや」の、8月8日に行われました開設10年目の記念シンポジウムの様子をお聞きください。 

【「メルクマールせたがや10年目シンポジウム」音声】

  • 斎藤氏:これ誤解なく言うの難しいんですけれども、不登校・ひきこもりのような類いの問題に対して関わる際には、ものすごく高度な専門性はいらないってことです。医師としての勉強を6年間やって国家試験を受けて研修を何年かやって10年ぐらいかかって医者ができるわけですけれども、そういう手間暇のかかる専門性はいらないと私は申し上げたい。イギリスなんかでは、セミプロフェッショナルという言い方があります。半専門家。もっと短期間の経験と研修でなれるタイプのセミプロフェッショナル。こういう人がたくさん出てきた方がはるかに意味があるということです。私は、「メルクマールせたがや」っていうのは、そういう支援の現場としてたくさんの家族とたくさんの当事者が救われてきた面がすごく大きいと思いますけれども、もう一個大きい要素として、セミプロフェッショナルを醸成する空間としてもすごくポジティブな意味があるんじゃないかと思っているんですよね。で、そこで得られた経験というものは、むしろ、なまじな専門医とかよりも場合によっては有効かもしれないと思うところがありますし。なんでそう思うかというと、専門医、医者というのは基本的に個人病理は得意ですけれども、ソーシャルワークとかですね、ケースワークとかあんまり得意じゃない人がまだ多い業界ですので、そういうことにどんどん飛び込んでいって、場合によっては訪問もばんばんやって積み上げてきた経験っていうのはすごく貴重なもので、10年という蓄積は本当に素晴らしいと思いますし、そこで得られたものは、どんどん継承していって欲しいと思うんですけれども。それは逆に言えば通常の意味での専門性では得られないようなプロフェッショナルリズムとして、貴重なものだと思いますし、このモデルは世田谷に限らず他の区でもどんどん広げていって欲しい実績だなあと感じております。 

  • パーソナリティ:皆様には、「メルクマールせたがや」開設10年目の記念シンポジウムの様子をお聞きいただきました。まだまだこの後もお話は続いてまいります。

私たちにできること

  • パーソナリティ:今日は、不登校やひきこもりなど、生きづらさを抱える若者たちの支援についてお送りしています。ゲストには、筑波大学社会精神保健学教授の斎藤環さんをお迎えしています。斎藤さん、不登校、生きづらさ、ひきこもりというと、どういう風に皆さんが見守った方がいいのかっていうのもありますか?
  • 斎藤氏:そうですね。見守るというと多くの人がイメージするのは、「干渉しないでそっとしておきましょう」なんですけど、これは典型的な間違いと私は考えています。つまり、見守るだけでは足りなくて、対話して欲しいんですよ。とにかく対話する関係を構築していただければ、かなりのところにいけるんですけれども、多くの場合、不登校とかひきこもりが起こってしまうと対話がまず失われてしまって、ずっと家の中でも沈黙が続いてしまうことになりやすいんですけれども。この中でお子さんはどんどん不安になっていくということがあります。その不安を解くカギが対話にあると考えていただければと思っております。
  • パーソナリティ:例えばなんですが、どういう風に、親として家族として背中を押せばいいのでしょうか。
  • 斎藤氏:背中を押す発想をまず捨てていただくことがポイントですね。
  • パーソナリティ:あぁ、そうなんですね。
  • 斎藤氏:はい。何か結論を求めるような、変化を求めるような、改善や回復を求めるような対応をまずやめていただいて、それこそ当たり障りがないどうでもいい内容の対話をたくさんしていただくのが、この場合一番ポイントになると思います。
  • 区長:斎藤さんから以前に聞いて、なるほどという風に思った点なんですね。つい、良かれと思って、その子の言う通りにするとか、あるいはちょっときっかけを作って、「ここで上手く羽ばたくんじゃないか」って作為的なことを考えがちなんですが、そういうことでなくて、要するに普通の他愛もない話をいくらでもしようよってことをおっしゃっていて、それは本当に大事だなっていう風に思います。
  • 斎藤氏:安心できる環境がないと自発性が出現してこないっていうことがありますので。安心の一番のポイントが対話する関係となります。対話がないと、むしろ、いつ親から見放されるんではないかっていう不安が高まってしまいますので、とにかく対話をたくさんしていただくということで安心の空間を作っていただくということがまず大事ですね。
  • 区長:斎藤さんが日本に紹介されているオープンダイヤローグ。これはフィンランドの西ラップ地方でしたっけ、そちらで発達した手法なんですが、大勢で患者さんの家族のリビングに行くんですね。その患者さんの前で、彼の話、彼女の話を徹底的に聞いて、その後にどうするかっていうのを、影でコソコソやらないっていう。
  • 斎藤氏:そうです。
  • 区長:オープンなままでやるっていう、これが特徴で、すごく参考になりました。
  • 斎藤氏:専門家や親も迷ったり困ったりしているという姿を、本人の前で見せていくと。これが一番の安心につながるという発想なんですよね。
  • パーソナリティ:認めてあげる、そして肯定してあげるというのが。心の栄養を与えてあげるというところもありそうですね。
  • 斎藤氏:その肯定する際のポイントとして、よく言われるように、「あなたはそのままでいいよ」ではなくて、そうじゃなくてですね、あなたのことをもっと教えてというのが肯定のポイントとなります。もっと知りたいと。あなたが今考えていること、あなたが不安に感じていること、恐れていること、欲することを教えて欲しいと。実は本人もよく分からないことがあるので、「じゃあ一緒に考えていきましょう」という風にもっていければ、素晴らしい対応になると思いますけれど。
  • 区長:どう声をかけるかによって、全然意味が違ってきますね、細田さんね。
  • パーソナリティ:本当ですね。その寄り添い方も負担をかけないようにっていうところが大事なのかなと感じたりもしました。
  • 区長:例えば「メルクマールせたがや」でも、ご家族が相談に来られたときにそういったアドバイスをされていくってことですよね。
  • 斎藤氏:そうですね。家庭内でよい対応ができるように、専門家がファシリをするというか、サポートをするという感じになると思いますけれども。
  • 区長:で、ご本人が居場所に来るために、あまり無理に引っ張ってくるとか、そういうことは当然しないと。
  • 斎藤氏:無理強いは禁物ですけれども、一緒に行って欲しいという気持ちを込めて、誘うのは全然ありだと思います。
  • 区長:なるほど。
  • 斎藤氏:「一緒に行きましょう」と。「いってらっしゃいよ」じゃなくて、「一緒に行きましょう」と誘うことは、プラスになると思います。
  • パーソナリティ:「メルクマール」でも様々なイベント開催されて、ワークショップですとか、体を動かすとか、きっかけづくりの場所でもありますね、区長。
  • 区長:そうですね。例えば発達障害に悩んで、仕事がどうも上手くいかないなっていう若者たちが交流したりすると、意外と一緒に遊んだりゲームをしたりしながら親しくなって。そうやっておしゃべりができるっていうのは大事ですよね。
  • 斎藤氏:孤立してる若者がものすごくエンパワーされるっていうのは、やっぱり仲間の力というか。家族も大事なんですけれども、ある程度以上のエンパワーメントは、家族以外の同世代の仲間による承認がないとなかなか難しいところがありまして、こういった場面でつながったりとか、親しくなったりとか、それが彼らをすごく勇気づけるというかエンパワーすると思いますね。
  • 区長:今世田谷で始めているひきこもり支援も、東京都もだいぶ力を入れてやろうとされていますよね。
  • 斎藤氏:そうですね。私もそのひきこもり対策会議のメンバーなんですけれども、ガイドラインを作ったりですとか、かなり先駆的な試みをしようとしています。ちなみに、東京都のガイドラインの中からは、もう支援という言葉はやめようと。
  • 区長:あ、支援という言い方をね。
  • 斎藤氏:支援という言葉に微妙に入っている上から目線がよろしくないということで。上の人が下の人に手を差し伸べて引っ張り上げるみたいなイメージではなくて、伴走型支援ですね。一緒に走って一緒に変わっていきましょうという、そういうスタイルのサポートにしていこうという風に、考え方も変わっていこうとしていますね。
  • パーソナリティ:本当にひきこもりって、誰もがなりうる状態なのでね、治療するものではないですよ、などもパンフレットに書いてあったりもしますもんね。世田谷としても、またこれからもこういったサポートというところも大切ですね。
  • 区長:今やはり相当厳しい競争社会なんですね。親とか、かつての昭和の時代は、いっぱい余計なところっていうか寄り道できるところがあったり、子どもたちだけのアジトがあったり、親の目とか届かないところがたくさんあって。今はそういう時代と違って、本当にギリギリ、ギリギリって競争社会の中で、いいか悪いかっていう、そういう成果主義みたいなものがあって、一旦自己否定が始まるとなかなか抜け出せないっていうところがありますよね。
  • 斎藤氏:そうですね。
  • 区長:そういうのとは違う、フラットな文化というか、そういうものを、具体的に提示するっていう役割が「メルクマール」とか、その他の世田谷区の施策の中での若者支援でももっと広げていきたいなと思います。
  • パーソナリティ:斎藤さんもどうですか?誰もが生きやすい社会づくりっていうと、壮大なテーマにはなるのかなと思うんですが、今回もいろんなヒント、気付きもいただきましたが、こういうこと伝えていきたいとかありますか。
  • 斎藤氏:そうですね。生きづらさというものはもう普遍的な問題になっていて、特殊な若者の特殊な問題ではないっていうことですね。だから、我が事として考えて、自分がたまたま上手くいったときは上手くいっていない人の支えになろうという風な、そういう発想を是非持っていただければと思っています。

まとめ

  • パーソナリティ:斎藤さんからいただいた言葉も、あらゆる子育てにも通じるなと感じました。素敵なお話伺ったんですけれども、あらためて区長、まとめをいただいてもよろしいでしょうか。
  • 区長:はい、世の中だんだん進んできた部分もあって。世田谷区で斎藤環さんの「ひきこもりシンポジウム」をやった時、10年ちょっと前ですけれども、もう満杯になったんですね。そういう場を求めていたと。多くの区民が。でも今、こうやって常設で相談や居場所があるという風に変わりましたので、そういうところで一旦休憩したり少し休んだりして、その後また自分でいろいろ選んでいくという、その広がりっていうんですかね、どこでも選べるっていう角度が広がれば広がるほどいいなあっていう風に願っております。
  • パーソナリティ:皆さんにとってというところで色々な気付きとなるかと思いますので、またぜひ斎藤さんお話も伺えたらと思っております。本日は生きづらさを抱える若者を支援しますというテーマでお話を伺ってまいりました。保坂区長、斎藤さん、ありがとうございました。
  • 区長・斎藤氏:ありがとうございました。
写真9月放送
写真左よりパーソナリティ、斎藤氏、保坂区長

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