区長記者会見(令和6年3月25日)

最終更新日 令和6年4月2日

ページ番号 209084

会見を行う区長
記者会見の様子

令和6年3月25日(月曜日)、保坂展人(ほさかのぶと)区長が記者会見を行いました。

動画はこちらからご覧になれます。新しいウインドウが開きます

PDFファイルを開きます会見で使用したスライド資料は、こちらをご覧ください。

区長あいさつ

令和5年度最後の定例記者会見を始めます。

区では、在宅避難啓発冊子「災害時お家生活のヒント-どうしたらいいの?在宅避難-」を区内の全世帯・全事業所約50万か所に配布しました。全20ページで、漫画やイラストをふんだんに織り込み、避難の仕方や災害時のトイレ、備蓄の方法など、様々な在宅避難に必要な情報をまとめています。この冊子の作成にあたり、サレジアン国際学園世田谷中学高等学校の高校1年生にご協力いただき、4コマ漫画で在宅避難の大切さを描いてもらい、ぼうさい宝探しと題してスーパーのオオゼキで備蓄できそうなものを発見してもらうなど、生徒の視点を取り入れ、親しみやすい内容となるよう工夫しました。ぜひ区民の皆さんに読んでいただけると幸いです。

また、これらの在宅避難の啓発と関連して、全世帯に、防災用品に絞ったカタログギフトを配布します。1人当たり3千円相当のポイント、4人世帯では1万2千ポイントが付与されます。なるべく早い時期にということで、この事業は補正予算を組んで進めており、カタログを秋までに配布し、防災物品や備蓄などに利用いただくことを期待しています。

さて、区では過去の災害を教訓とした対策を進めていますが、区民92万人がすべて避難所に入るということは大変困難であり、自宅で過ごせる状況であれば、在宅避難が原則となります。指定避難所は、町会・自治会などを中心とした避難所運営委員会により運営され、自宅の倒壊や焼損により生活の場を失った被災者を、地域で支え合う「共助」の場です。在宅避難が広がれば、避難所の密集が避けられ、住まいを失い、生活に困った方を受け入れることができます。

区では、在宅避難における不安な点としてお声をいただいている、「情報が届かないのではないか」「避難所に集まる支援物資が住宅まで来るのか」といったことの解消に具体的に取り組んでいきます。

さて、4月1日(月曜日)から、小田急線下北沢駅で、図書館ブックボックスモデル事業を開始します。下北沢駅の中央改札口を出てすぐ横のエレベーター脇、約1平方メートルの限られたスペースですが、34のボックスを備えたロッカーを設置します。パソコンやスマホによる予約で、始発の朝5時から終電の25時頃まで利用いただけます。図書館の共通利用カードのバーコードをかざすことでボックスを開け、予約した本を最大5冊まで受け取ることができます。この事業を始めたきっかけは、平成25年に韓国ソウル市を視察した際、地下鉄の駅に設置された無人の予約資料の自動受取機を見たことがヒントになっています。約10年前ですが、その当時、区ではまだ全書籍にICタグがついていなかったため運用することは難しい状況だったことから、まずは図書館カウンターなど、身近な図書館サービスに取り組んできました。今回はモデル事業として開始しますので、反響や利用状況を踏まえ、拡充していくかも含めて判断しようと思います。

その図書館カウンターについてです。最初に二子玉川で、公共的に使用できるスペースがありましたが、図書館を作るほどの広さは無かったため、貸し出し・返却に特化した、蔵書のない図書館カウンターとして始めたところ利用率が非常に伸び、約20万冊近い貸出実績を推移しています。二子玉川の次に、三軒茶屋に図書館カウンターを設置しました。世田谷通り沿いの目立つ場所にあり、障害者施設で作られたお菓子やギフトなども販売しています。そして、新しくできたのが図書館カウンター下北沢です。コンテナのような建物で、区内の3大広域生活・文化拠点に図書館カウンターがあることになります。先ほどのブックボックスも下北沢駅に設置するということで、予約リクエストがあった際にはブックボックスに入れ、返却する際には図書館カウンターの入口前にあるブックポストに入れていただくこととなります。

区のサービスを身近に感じるのは、乳幼児期や保育園、小中学校といった子育て世代、高齢になった際の介護、障害のある方や病気など、何らかの支援が必要な方が多いと思いますが、今回のブックボックスや図書館カウンターも区のサービスです。それ以外の年齢の方や働いてる方などは、区に税金を納めているが、ごみ収集のほかに区のサービスとして認識できるものが少ないとの声を聞きます。今後、本を身近に感じられるネットワークを、図書館カウンターやブックボックスモデル事業の取組みとともに、広げていきたいと思います。

次に、新たに複数の文化財が登録・指定されたことについて報告します。このうち7件が天然記念物の登録・指定ですが、天然記念物の登録・指定は区として初めてのことです。いずれの樹木も「世田谷名木百選」に指定されており、天然記念物となったことでこれまで以上に大切にされることが期待されます。すべて現地でご覧いただくことができますので、登録及び指定天然記念物、登録天然記念物のどちらも、ぜひ見ていただきたいと思います。

また、新たに有形文化財として、堂ケ谷戸(どうがやと)遺跡出土の顔面把手付土器(がんめんとってつきどき)を指定しました。顔面をかたどった、取っ手状の突起のあるユニークな縄文土器です。岡本二丁目の発掘調査で出土したもので、約5千年前の姿がほぼ維持されており、区内では初めての事例とのことです。この土器は現在、区立郷土資料館で展示していますので、実物を間近で見ていただくことができます。また、現地に行くことができない場合も、インターネットを通して「世田谷デジタルミュージアム」によって、世田谷の歴史や文化財を手軽に見ていただくことができるので、ご活用いただければと思います。

次に、3月16日(土曜日)に「第13回砧地域ご近所フォーラム2024」が開催されました。テーマは「砧は私たちの誇り~地域でわかりあえる仲間を作ろう~」でした。このフォ―ラムは平成22年から始まった取組みで、医師会、歯科医師会、薬剤師会、高齢・障害・子育てなどの福祉・介護関係者や社会福祉協議会、社会福祉事業団、大学、あんしんすこやかセンターなど、官民問わず区民も個人で参加される方もいらっしゃり、約110人が参加されました。今回は、「認知症」、「子ども・若者」、「看取り」という3つのテーマについて、約30人の実行委員と約80人の参加者がテーブルを囲み、グループワークのほか、トークセッションで、会場全体で一緒に考える時間も持ちました。皆さんが非常に積極的に発言されており、終わった後には、自身がお住まいの地域に、福祉等それぞれのテーマで活動する人たちがいることが分かり、人脈もできていくことになります。

発表項目

本庁舎等整備工事の工期延伸に係る違約金等に関する合意書の締結及び区役所本庁舎1期棟・区民会館の完成について

本庁舎等整備工事についての報告です。本庁舎等整備工事は、2月初旬より、都や消防庁による行政検査が行われてきました。3月22日(金曜日)、都から検査合格を示す仮使用認定通知書をいただきました。仮使用認定通知書というのは、本庁舎等全体では3期工事全てが竣工して完成することとなりますが、1期工事で竣工した庁舎等は供用を開始しますので、その部分の使用を認めていただいたものです。

そして、本日3月25日(月曜日)の午前中には、大成建設から1期工事の竣工届を提出いただきました。工期の遅れなど思わぬアクシデントがありましたが、ここに至った関係者の熱意と努力に、心から感謝したいと思います。また、区民会館ホールなどの完成を待たれていた区民の方々に、お待たせしてしまったことを申し訳なく思うとともに、いよいよ新庁舎やリニューアルした区民会館がスタートすることを報告したいと思います。

本庁舎等整備工事の工期延伸に係る違約金等に関する合意書を大成建設との間で締結しました。令和5年5月の大成建設による工期延伸の申し出以降、違約金等に関する協議を重ね、和解の議決を受け、令和6年3月1日(金曜日)に大成建設と合意書を締結しましたので、交渉過程を報告します。

大成建設では当初、遅延違約金は、3期工期の遅延のみに適用するものとして、遅延違約金の約4.2億円と技術提案不履行違約金の約4.15億円を合わせた約8.4億円とする見解が示されました。

区の主張としては、遅延違約金は、それぞれの工期で延伸した日数×規定されたパーセンテージにより算出した金額と、技術提案3点の不履行による違約金約4.15億円を合わせた約16億円に加えて、工期が延伸することに伴い区に発生する損害を別途支払っていただくものとして、約16億円+Xの支払いを要求するもので、両者の主張には開きがありました。 

大成建設の主張に対して区は、契約約款をどのように読んでも、大成建設が主張されるような解釈では読み取れず、損害賠償は、遅延違約金とは別に支払われるべきと主張しました。

次に大成建設から、違約金の算出を各工期の遅延日数で計算し、そこに技術提案不履行の違約金を合わせた金額約16億円から、仮庁舎の家賃経費など、遅延により区に生じる損害額の合計金額が超過した場合に、その差額も支払うという代替案が示されました。遅延違約金の中に、損害賠償額が含まれるという考え方です。それに対して区は、契約約款からは、そのような考え方となる根拠は見当たらないと申し上げてきました。

最終的には、契約時に区が作成した技術提案の取扱規定に、区に生じた実際の損害額が技術提案不履行違約金の額を超える場合においては、超過分について支払うものとすると明文化されていました。一方、大成建設の主張の根拠は特段示されなかったことから、この規定を活かして、当初は両者の主張に相当の開きがあったところ、大成建設が区の主張に接近してくれて合意することとなりました。

そしてこの度、本合意の内容について区議会第1回定例会にお諮りし、議決に至りました。地方自治法96条に、裁判等で区が争っている案件が和解に至った場合は議決を得ることと定められており、本合意についても、互いに譲歩し争いをやめることを約束するということで、一種の訴訟外の和解であるという解釈から、議決をいただいたものです。

今後、この合意書に基づき、1期竣工後に、1期の8か月遅延違約金と技術提案不履行違約金の合計、約7億8,000万円を、大成建設への1期工事の竣工時の支払いから相殺します。同様に、2期、3期の遅延違約金も、それぞれの工期の工事竣工払いにおいて相殺します。

区に生じた損害額については、今後、現時点では見えていない部分も含め順次算定し、大成建設との協議を重ね、合意した部分を損害として加算していきます。今回の合意で、違約金等の支払いフレーム、計算式が定まりましたが、具体的な金額部分は今後の協議が必要ですので、大成建設との具体の損害賠償の交渉を着実に進めていきます。

続いて、竣工に至った区役所本庁舎1期棟及び区民会館をご紹介します。

新庁舎東棟のエントランスホールには、区役所第1庁舎1階大階段脇にある大沢昌助氏原画作成のレリーフを、約70%のサイズに縮小しつつ、竣工当時の色彩で復原しました。現在の第1庁舎のレリーフは、何の手違いかあるいは誰かが同じ色がいいと思ったのか、長い歴史の中で壁と同色に塗られてしまっているのですが、この度、元々の色を再現したものがエントランスホールに設置されます。また、エントランスホールの階段も特徴的なもので、こちらは区民会館ホワイエの大階段を復原したものになります。

議場については、9階と10階にあるため外光も入り、木の素材がふんだんに使われています。傍聴席についても現在の69席から93席と大幅に増えております。親子傍聴室も新たに設置し、お子さんと一緒に気兼ねなく傍聴できるようになっています。

10階には、区民に無料開放する展望ロビーもあります。

区民会館についても、ホール部分を保存・改修し、耐震性を高め、大幅にリニューアルしました。熟練工の手作業により、クラック跡などを修復することで、建設当時の姿を復元した外観となっています。

音響についても、天井が舞台側に行くにつれて下がっていくような作りになっており、以前は残響が空席時で1.7秒、満席時には1.3秒でしたが、今回のリニューアルにより、空席時で2秒、満席時には1.7秒と、中規模ホールでは適度な残響設定としたことで、音響効果を向上させています。また、空調設備騒音の低減等により静粛性も向上しています。天井等も全て張りかえており、中に入ってみると、リニューアルというより新しいホールだと感じる方が多いかもしれません。ただ、例えば柱の中ほどにはスピーカーをビルトインするなど、昔のデザインを意識した作りとなっており、リニューアルされた前川建築として立派に再現されたと思っています。さらに、親子室も2つ新設しました。また、地下には練習室、リハーサルスタジオを新設しました。楽屋については、これまで非常に狭く230平方メートルしかなかったのが、540平方メートルと2.3倍になりました。小部屋が4つ、中規模の部屋が2つあり、シャワー室等を備えまして、3階建てになりました。

区民の皆様には、5月19日(日曜日)に、内覧会を開催し、新しい東1期棟、区民会館をご覧いただきたいと思っています。本日3月25日発行の区のおしらせ「せたがや」特集号にもご案内を掲載しています。

子どもの生活実態調査(高校生世代)の結果(速報版)について

次に、子どもの生活実態調査(高校生世代)の結果(速報版)についてです。

令和7年度から令和16年度までを計画期間とする「子ども計画(第3期)」に内包する、次期子どもの貧困対策計画の策定に向け、高校生世代の子どもと保護者を対象とする実態調査を実施しました。前回平成30年度には小中学生を対象に調査を実施しましたが、今回は高校生世代の子どもの実態を把握し、重点的に取り組む施策を検討するために行ったものです。調査対象は、高校に在籍しているかどうかにかかわらず、区内在住の高校2年生世代のすべてのお子さん本人とその保護者6,875世帯となっています。

本調査では、貧困を測定する指標である「生活困難度」をもとに分析をしています。(1)低所得、(2)家計の逼迫、(3)経済的な理由による子どもの体験や所有物の欠如の3つの要素のうち、1つ以上に該当する世帯を「生活困難層」と定義しますが、15.4%の高校2年生世代の子どもが経済的な理由による生活困難を抱えていることが明らかになりました。生活困難層の子どもは、食や学び、体験、人間関係、健康面等での影響を受けていました。また、生活困難層の保護者は、保護者自身が子ども期に暴力を受けたり、育児放棄をされたりした経験があるなど、困難を抱えていたということもわかりました。

今回の調査結果を踏まえ、来年度、次期子どもの貧困対策計画の策定において、高校生世代の学習支援や居場所、経済的負担の軽減、高校生世代の子どもの状況改善に向けて、区としての取り組みを検討していきます。

公園等整備とイベント開催について

(仮称)北烏山七丁目緑地について

(仮称)北烏山七丁目緑地にて、現地開放イベントを実施します。日時は、3月27日(水曜日)と30日(土曜日)の2日間、午前10時から午後3時までです。場所は、(仮称)北烏山七丁目緑地計画地である北烏山7丁目12番(一部)・14番となります。イベントの内容は、基本構想や緑地内に生息する植物・動物の調査結果をパネル展示にて紹介するとともに、お花見や植物スタンプラリー、また、鳥や虫に詳しい方をお呼びして、観察会等のイベントを開催します。ぜひお気軽にお越しください。当日は椅子やテーブルを貸し出します。ちょうど桜のシーズンにもなりますので、自由にくつろいでいただきながら、大きく育った樹木など現地に残された自然を感じて、緑地の魅力に触れていただきたいと思います。

現地開放でいただいた意見やご感想を踏まえながら、令和6年度以降、地域の方々に参加いただくワークショップや、地域の子どもたちと一緒に緑地づくりを考える場を持ちながら、地域住民との協働により、緑地の計画づくりを進めていきます。

玉川野毛町公園拡張事業について

次に、玉川野毛町公園拡張事業についてです。国家公務員宿舎の跡地約2.8ヘクタールを取得し、玉川野毛町公園拡張事業として今年度、第1期工事を行い、雨水貯留槽をはじめ、園路の一部や草地の広場を整備したところです。今後、拡張予定地において、令和6年度から7年度の2か年をかけて、残る広場の整備や、公園利用の活動の拠点となる建物や防災倉庫などの整備を行います。また、既に開園している区域においても、令和6年度からテニスコートや多目的広場の改修に着手していく予定です。

スライド29枚目は、今年度実施した第1期工事の写真です。拡張予定地の中央に位置する草地の広場になりますが、今は冬なので茶色ですが、これから芝などが成長し、緑が映える空間となっていきます。また、地形の起伏を活かした小さな山を残し、子ども達には元気に遊んでもらいたいと考えています。そして、園路も草地と調和するように、直線は用いず、曲線や敷石の縁を互い違いにするなど、自然に馴染むような工夫を行っています。

全体の完成にはいましばらく時間がかかりますが、一部開園イベントを実施します。日時は、3月30日(土曜日)の午前10時から午後4時までです。

設計段階から区民参加による取り組みを重ね、一緒に考えてきた公園がいよいよ目に見える形になります。当日は、今回整備した草地の広場での種まきをはじめ、今後建築を進める公園利用や活動の拠点になる施設の説明や「パークらぼ区民の会」による古墳散策ツアー、青空ヨガ、たんぽぽ観察ツアーのほか、区民の皆さんが、企画した様々なイベントが開催されます。やぎのいる風景を楽しむといったプロジェクトも提案、実施されています。

岡本公園について

最後に、岡本公園についてです。区の有形文化財である岡本公園民家園のある、昭和52年に開園した岡本公園では、老朽化が進んでいたことから、令和5年度に公園部分の全面的なリニューアル工事を行いました。ユニバーサルデザインやインクルーシブの視点を取り入れ、鳥のさえずりや草木のにおいなど、五感で楽しむをテーマに改修計画をまとめたものです。

改修整備内容の一部を紹介します。そよ風による竹林の音を感じられる縁台や崖線の湧水をいかして製作した水に触れられる遊具、体幹の弱い方でも楽しめるよう工夫されたディスクブランコなどを整備しています。3月30日(土曜日)には、「おかえり岡本公園」と称してリニューアルイベントを開催します。オープニングセレモニーを午前10時30分から行い、岡本ばやしやラジオ体操、ミニライブなど行います。また、伐採した樹木でのクラフト体験や大道芸、プレーリヤカー、フードトラックなども行いますので、ぜひお気軽にお越しください。発表は以上です。

質疑応答 

  • 記者

新庁舎についてお伺いする。各区でも庁舎の建て替えについて検討・実施を進めており、内部の構造などそれぞれ工夫を凝らして考えられているようだが、区長から見た世田谷区の新庁舎の特長、PRポイントがあれば教えていただきたい。

  • 区長

まず、現在の東京都の庁舎は、建築家・丹下健三氏の構想案を採用した超高層のものだが、当時の都庁コンペでは、建築家の磯崎新氏が「横展開」という考え方を打ち出していた。区民サービスの拠点であり、区民サービスを担う職員が働く場でもある庁舎は、それぞれのコミュニケーションがよくなければならないという考え方を示したものだと思う。区の東1期棟は10階建てだが、この部分を除くと、5階建ての低層で横に長い庁舎がぐるりと中庭を囲む構造になっている。この中庭では、ホール内での催し等とも連動しながら、様々な区民参加のイベントが行われることを想定している。これから始まる2期工事では、区民参加の自主的な運営スペース等も作る予定である。区民が主役の、住民自治・区民活動の拠点としての庁舎になっていること、区民に開かれた場であるということは、新庁舎の大きな特長であると思う。

また、庁舎には災害時の司令塔という役割もあるため、災害に強い庁舎ということも大いに意識した構造としている。

そして、現在の庁舎及び区民会館は、建築家・前川國男氏の近代建築の代表作とも言われてきたものである。全て残した方が良いのではないかという意見もあったが、キャパシティや機能上の課題から難しかった。ただ、区民会館ホールについては保存した上で手を加えることで再生させ、さらにホールとピロティがつながるデザインを再現した。エントランスホールにも、レリーフやホワイエの大階段を再生している。このように、新しく建て替える中にも古い意匠を再現する工夫を凝らすことで、前川建築の空間特質を継承した新庁舎になったと思う。長い議論を経て、時間はかかったが、新庁舎の特に難しい部分であった3分の1がいよいよ竣工を迎えようとしているというところである。

  • 記者

子どもの生活実態調査について、区市町村において高校生は制度の狭間になっている部分があるかと思うが、今回高校生を調査対象とした理由をお聞きしたい。

  • 区長

世田谷区には若者支援を担当する専門の課があり、約10年間、例えば青少年交流センターの設立や、各地域の児童館のうち1か所を中高生支援館として位置づけ中高生が活用できるようにする仕組みづくりなどに取り組んできた。仰るように、区には区立高校はなく、都立、私立、あるいは国立となるため、高校生世代になると区との関係が非常に薄くなるというのが現状である。高校生が地域の中で小中学生と同様に支えられ、かつ本人の成長も踏まえて年少の子どもとはまた違う形で居場所がある、そんな地域を目指したいと思っており、具体的な困窮の度合いや在り方を把握するために今回全員調査を行った。15%台というかなり大きな数字が出たと思っている。

  • 子ども・若者部長

区としてはこれまで中学生世代までの学習支援や居場所支援に取り組んできたところであり、高校生世代についても実態を把握し、どういった支援が必要なのかをしっかりと議論していくため、今回の調査を実施した。令和6年度に、次期子どもの貧困対策計画を策定する中で具体的に検討していきたいと考えている。

  • 記者

本庁舎等整備について、現時点での工期短縮後の完成見込み時期はいつか。また今回、協議を経て、かなり区側の主張を受入れる形で合意に至ったと思うが、これについて区長から一言いただきたい。

  • 区長

まず協議については、私自身も大成建設の社長にお会いしたが、今回、工期の大幅な延期の原因については発注者ではなく受注者にすべて責任があるということを前提に合意をしており、こういったケースはそう多くはないと思う。ましてや公共施設においてこれだけ大幅な延伸があり、また損害賠償請求の話をせざるを得ないという事態に陥ったのは初めてだったと思う。前例のないことなので、双方とも慎重に、専門の法律家も含めて議論を積み上げていった。最終的には、技術提案等の取扱いに明文化されていたことが1つの転換点になったと考えている。駆け引き論ではなく、あくまでもロジカルに粘り強く交渉した結果だと思っている。

次に、最終的な完成見込み時期について、工程検証委員会で現在工期の短縮について持ち帰り検討していただいているところがあり、その結果次第で数か月前倒しできる可能性がある。

  • 庁舎整備担当部長

区のおしらせ新庁舎整備特集号の最後のページにも記載しているが、3期工事の竣工時期は、現在の公表では令和11年6月としているところ、工期の短縮ができれば令和11年4月頃に前倒しとなる。工期短縮ができるかどうかの結論は、令和6年3月末に見極めることで予定している。

  • 記者

本庁舎等整備についての発表で、粘り強く交渉したとのことだったが、交渉においてどのような思いで交渉にあたっていたか。

  • 区長

工期が2年近く遅れると最初に聞いた時は大変な衝撃だった。これまで行政施設で1年を超える大幅な遅延の例はほとんど聞いたことがなかった。重大な事態であり、遅延が長ければ長いほど支出も増加する。その原因は施工者にあるということを大成建設自身も認めているので、原因者が、区の予定外の出費を補償することは当然だろうと思う。そのような原則のなかで、補償にあたっての解釈が大きく分かれたことを今回の発表で説明した。

交渉の初期段階では解釈の乖離が非常に大きく、これは建築工事紛争審査会、或いはもしかすると司法判断を求める事態になるかもしれないと念頭に置きながらも、工事は引き続きお願いしていくことから、一番良いのは、信頼関係を保ちつつ、論理的に補償金額を算出していくことだと思う。最終的に合意案が出てきた際、区の当初の主張と比べ、技術提案不履行による違約金部分に差はあったが、契約時に明文化されていた記述を根拠に、相手方もそこに歩み寄っていただくことで合意した。考え方のフレームができ上がり、今後、損害額の算出における中身について、補償の枠に入るかどうかといった議論は残るが、信頼関係を維持した上で、2期・3期工事を安全で良質に進めていきたいという思いは叶ったと思っている。

  • 記者

子どもの生活実態調査について、詳細な調査結果を見てはいないが、一定数の高校生世代の子どもが金銭面での困難を抱えている状況が推察される。居場所づくり等のサポート以外に、金銭面でのサポートを実施する考えが現時点であるのか伺いたい。

  • 区長

まず、調査結果の内容をもう少し詳しく担当所管からご説明する。

  • 子ども家庭課長

今回、区が行った調査は、国の実施する国民生活基礎調査とは少し趣旨が異なる。国民生活基礎調査は所得だけにフォーカスしているが、区の調査では「低所得」以外に、「家計のひっ迫」「子どもの体験や所有物の欠如」という要素も加えている。3つの要素のうち、いずれか1つに該当する世帯を「周辺層」、2つ以上に該当する世帯を「困窮層」とし、周辺層と困窮層を合わせて「生活困難層」と位置付けている。今回の調査で、例えば低所得のみに該当する周辺層、家計のひっ迫のみに該当する周辺層など、それぞれの層の分布や割合等が明らかになった。今回の調査結果は、今後、高校生を対象とした支援の仕組みづくりを学習支援や居場所支援のほか、経済的負担の軽減も含めて総合的に検討する上での基礎資料とする予定である。その検討結果については、令和6年度に策定する子ども計画の中に内包する次期子どもの貧困対策計画に反映していきたいと考えている。

  • 区長

居場所の問題については、高校生の場合にも非常に多く、青少年交流センターなどでも試験前は学習室が埋まる状況である。その一方で、図書館などでは、閲覧席等の座席数が限られ、高校生が勉強をしづらい問題もある。区では今年度から、地区会館等の区民利用施設について、利用率を踏まえ、空いている部屋があれば中高生の学習場所に開放する取組みも始めている。今回の調査結果をより詳細に分析していく。前回の小学5年生・中学2年生世代とその保護者への調査の際には、約7人に1人が生活の困難を抱えている結果を受け、「まいぷれいす」という事業を立ち上げた。これは、中学生の子どもが、ご飯を一緒に食べたり、勉強をしたりできる居場所を提供する取組みで、今後2か所目を設置していく方向だが、そのように具体的な事業にも繋がっている。今回の高校生世代への調査についても、何かしら取組みに繋げていけるか考えていきたい。

会見のテーマ外であるが、今の国会に地方自治法の改正案が提出されており、自治体にとって非常に大きな問題なので一言申し上げたい。

改正案は、大規模災害時や新型コロナのようなパンデミックの事態において、閣議決定により、国が地方に対して補充的指示をできるようにするという内容であり、これに関しては国会でしっかり議論していただきたい。新型コロナ対策など、地方自治体が国より早い段階で提案し、その後に国が了承したというような事例があり、区の取組みでも同様の例がある。

補充的指示ができるようになると、自治体が実施したい取組みを、国に伺いを立てた際に駄目だとなれば、何もできないということになってしまう。立法する理由があるのだろうか、ぜひ実証的に振り返ってみてほしい。国会ではこれから議論になると思うが、この件に関してあまり聞こえてこない。

国と地方自治体は、主従関係ではなくて対等・平等の関係であると地方分権一括法で示されているので、原点に立ち返ってほしいと今後発言していきたいと考えている。

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