世田谷区 建築にともなう緑化のための植栽ガイドブック はじめに 世田谷区では、区政100周年となる2032年(平成44年)に「みどり率」33パーセントの達成をめざす「世田谷みどり33」を長期目標に据えています。 1 「世田谷みどり33」実現のためには、行政だけではなく、区民、事業者をはじめとする多くの皆様のご協力が必要です。 世田谷区の緑の6割は民有地のみどりであり、このみどりを守り増やしていくために、世田谷区みどりの基本条例及び施行規則等により、 建築行為、開発行為等の緑化基準を設けています。また、平成22年10月からは、都市緑地法に基づく緑化地域制度を導入し、建築に伴う 緑化が法的に義務付けられました。 この緑化基準、緑化地域制度によって確実なみどりの確保を目指すとともに、緑化の計画時や維持管理時に、より質の高いみどりを生み出す ことに役立てていただけるよう、本ガイドブックを作成しました。 本ガイドブックの構成 「2植栽計画」では、既存樹木の保全や移植、樹木の選び方と樹木の大きさ、日あたりなどの環境条件、敷地外周や建築物周りなど植栽の 配置場所、そして土地利用形態ごとの留意点を記載しています。 「3維持・管理」では、植栽工事終了後、植栽を健全に育てていくために必要な管理について記載しています。 「4みどりの支援制度」には、世田谷区でご利用いただける緑化の助成について記載しています。 都市緑地法に基づく緑化地域制度、みどりの基本条例に基づく緑化基準では、樹木や、地被類で被われている部分、花壇等に加え、樹木や 地被類など植物を植えること=「植栽」について取り上げています。 本ガイドブックでは、高木・中木・低木という言葉を次のように使っています。 1高木・好条件下で生長したとき、樹高が約5メートルを超える樹木。 2中木・好条件下で生長したとき、樹高が約2〜5メートルになる樹木。あるいは、庭木など造園樹木として管理する場合、おお よそ人の背丈以上2〜3メートル以下の高 さで、刈り込んで管理することの多い 樹木。 3低木・好条件下で生長しても、樹高が約2メートル以下の樹木。あるいは、庭木など造園樹木として管理する場合、おおよそ 人の背丈より低い高さで、刈り込んで 管理することの多い樹木。 (補足)みどりの基本条例の「樹木の本数基準」における「樹木区分」では、樹木を植栽時の樹高によって、高木、準高木、中木、低木 の4つに区分しています。この樹木区分と本ガイドブックで使用する高木、中木、低木とは、概念が異なりますので、ご注意ください。 2 みどりの基本条例に基づく緑化計画 区では、みどりの基本条例に基づき、建築行為等に伴う緑化計画の届出制度を設けています。平成21年9月には、緑化基準の見直しを行い、 さらなるみどりの確保を目指して大規模敷地(1,000平方メートル以上)の緑化率の引き上げを行いました。また、世田谷区にふさわしい 目に見える質の高い緑化を実現するため、樹木本数基準に高木(大きく生長することを見込む樹木)の本数基準を導入し、新しい基準として接道 部及び敷地境界部の緑化基準を設けました。 具体的な基準の項目については、右記のとおりです。 (緑化基準の項目) ・地上部の緑化基準 ・建築物上(屋上・壁面等)の緑化基準 ・樹木の本数基準 ・接道部の緑化基準 ・敷地境界部の緑化基準 ・指定作業場(駐車場等)の緑化基準 世田谷区みどりの基本条例に基づく緑化計画届 出 の 時 期 や 対象、基準の詳細については、「みどりの 計 画 書 ・ 緑化率適合証明申請書提 出の手引き」をご確認ください。 都市緑地法に基づく緑化地域制 みどりの基本条例に基づく質の高い緑化を確実に実施していただくため、平成22年10月1日より、世 田谷区に都市緑地法に基づく緑化地域制度が導入されます。緑化地域では、建築に伴い敷地の一定割 合を緑化することが法律で義務付けられ、建築基準関係規定となることから、緑化が建築確認及び完了 検査の要件となります。 なお、緑化地域制度の概要及び世田谷区における緑化地域の指定内容は「みどりの計画書・緑化率 適合証明申請書提出の手引き」をご覧ください。 世田谷区の取り組み 世田谷区みどりの基本条例に基ずく緑化計画(効果的なみどり量の確保と質の高い緑化) 都市緑地法に基づく緑化地域制度 (緑化の義務) 3 建築計画・緑化計画と植栽ガイドブックの関連について 世田谷区では、条例と法律による取り組みにより、質の高い緑化を確実に実施していただくことを目指し ています。このため、建築計画や緑化計画時に世田谷らしいみどりを実現するための参考書として、この 植栽ガイドブックを作成しました。計画の各段階に応じて、該当のページをご参照ください。 建築敷地が決まったら 2 植栽計画 (1)植栽のその前に 建築計画・緑化計画にあたり 2 植栽計画 (2)樹木の選び方・大きさ別に考える(3)植栽計画の環境条件別に考える (4)植栽計画の場所別に考える(5)土地利用の形態別に考える 建築工事が終わったら(本書を、建築主にお渡しください。) 3 維持・管理 (1)剪定、刈り込み (2)落ち葉の清掃(3)病気や害虫の防除 みどりに関する支援制度  4 みどりの支援制度 「みどりの計画書・緑化率適合証明申請書提出の手引き」における各緑化基準との関連について 提出の手引きにおける各基準と植栽ガイドブックの対応ページ 手引き項目1地上部の緑化基準7〜13ページは植栽ガイドブックの項目2−(4)植栽計画の場所別に考える16〜23ページ及び26ページに関連 手引き項目2建築物上の緑化基準14〜16ページは植栽ガイドブックの項目2−(4)植栽計画の場所別に考える「建築物上」24〜25ページに関連 手引き項目 都市緑地法に基づく緑化地域制度は上記、1、2に含みます。 手引き項目3樹木の本数基準18〜19ページは植栽ガイドブックの項目2−(2)樹木の選び方・大きさ別に考える9〜13ページに関連 手引き項目4接道部の緑化基準20〜22ページは植栽ガイドブックの項目2−(4)植栽計画の場所別に考える「敷地の外周」(接道部の緑化)18ページに関連 手引き項目5敷地境界部の緑化基準23ページは植栽ガイドブックの項目2−(4)植栽計画の場所別に考える「敷地の外周」(敷地境界部の緑化)に関連 手引き項目6指定作業場の緑化基準24ページは植栽ガイドブックの項目2−(4)植栽計画の場所別に考える「駐車場」26ページに関連 1.緑化の効果 みどりには実に多くの機能があり、緑化することによって様々な効果が期待できます。 空気をきれいにする。 植物は、地球温暖化の原因でもある二酸化炭素を吸収して、酸素を作り出してくれます。また、大気汚染物質を吸着・吸収してくれます。 快適な気候を保つ。 植物は、木陰を作るとともに葉から水分を蒸散して、都市のヒートアイランド現象や冬の乾燥化を軽減します。 また、ビル風など強風の被害を和らげます。 災害の被害を抑制する。 植物は水分を蓄えているため、火災の際の延焼防止に役立ちます。また、雨水を貯留して河川への流出を減らし、洪水の被害を軽減します。 生活にうるおいを与える。 植物の存在は、私たちの心をなごませ、街にうるおいを与えます。大きく生長した樹木や樹林は、街のシンボル、地域の財産です。 生きものと共生する。 植物を植えることで、様々な虫や鳥たちがやってきます。地域の生態系に配慮した植栽は、地域特有の動植物の保全にもつながり、子どもたちへ の環境教育の場ともなります。 建物の省エネに効果がある。(屋上・壁面緑化) 特に市街化が進んだ地域では、建築物の屋上や壁面は、都市に残された広大な緑化スペースとなります。 屋上緑化や壁面緑化を積極的に進めていくことにより、みどりの少ない地域にも貴重なみどりを確保でき、建物の省エネ効果も期待できます。 延焼の防止 生活にうるおいを与える ビル風を緩和 生き物との共生 屋上・壁面の緑化 大気の浄化