(2)接道部の緑化  (18ページ) 接道部を生垣にすると、街並み景観が向上します。地震時に倒壊する恐れもなく、防災上も有効です。 生垣を遮へいや目隠しに利用するときは、常緑樹で枝葉が密生し、刈り込みに耐えるものを選びます。 生垣による緑化 生垣は、将来的にどの程度の高さにしたいのか、また、どの程度枝葉が茂るのかを考えて、樹木の大きさと植栽 間隔を決めましょう。 生垣に変化をつけるのも良いでしょう。複数の樹種を混ぜると、通りの表情が豊かになります。前面に低木を配し て二列に植栽をすると、奥行きがでます。 ・樹種の例:イヌツゲ・イヌマキ・カナメモチ(レッドロビン)・コニファー類・トキワマンサク・キンモクセイ・ セイヨウイボタ 敷地に余裕がある場合、開放的な外構計画もお勧めです。植栽スペースの幅を広めに取り、低木を中心に高さの 異なる樹木を組みあわせて植栽します。樹木間にすき間が生まれ、敷地内への風通しも良くなります。 つる植物による緑化 植栽スペースに余裕がない場合、フェンスにつる植物を絡ませると、緑のスクリーンとすることができます。 多少の余裕がある場合は、フェンスの前面に低木や地被類などを植栽すると、変化のある景観をつくり出すことができます。 ・樹種の例:テイカカズラ・ムベ・ヘデラヘリックス・カロライナジャスミン・ツキヌキニンドウ・ビグノニア 地被類による緑化 生垣やつる植物による緑化がどうしても難しい場合は、地被類による緑化を考えても良いでしょう。地被類を一列 植栽するだけでも、敷地周りの雰囲気を和らげるのに役立ちます。 ・地被類の例:タマリュウ・リュウノヒゲ・ヤブラン・キチジョウソウ・アジュガ・マツバギク・シバザクラ・ オカメザサ・コグマザサ (コラム) 歩道沿いの緑化 敷地周りの道路に接した部分に、歩道状の空地を設ける場合には、この歩道状空地沿いの緑地帯に高 木を植栽することで、歩道に緑陰を与え、緑豊かな通りを演出することができます。 (3)敷地境界部の緑化 (19ページ) 敷地周りを緑化することは、緑豊かな街並みづくりに大きく貢献します。特に風致地区内では、壁面 後退により敷地周りに幅のある空地が生じますので、変化に富んだ緑化が可能です。 樹木や地被類による緑化 建物と建物の間で、あまり日があたらないような場所では、日陰に耐える樹木を用いたり、地被類やつる植物をグ ランドカバーとして植栽します。できるだけ管理の手間が掛からない植物種を選びましょう。 高木の場合、生長が遅いものや、あまり高くならない樹木を選びましょう。 ・樹種の例 樹木:イヌマキ・コニファー類・ソヨゴ・モチノキ・モッコク・カクレミノ・キンモクセイ・ユズリハ・アオキ・ヒサカキ・ センリョウ・ジンチョウゲ・マンリョウ 地被類など:ヤブコウジ・ヤブラン・フッキソウ・キチジョウソウ・シャガ・ギボウシ・ツワブキ・ヘデラカナリエンシス 花壇による緑化 日あたりが良い場所では、花壇をつくり、好きな草花を植栽するのも楽しいものです。管理の手間を減らしたい場 合は、多年草や、こぼれ種で増える草花を選ぶと良いでしょう。 ・草花の例:イカリソウ・エビネ・シラン・ドイツスズラン・ハナニラ・宿根バーベナ・スイセン・ムスカリ・オシロイバナ・ コスモス・トレニア・ムラサキハナナ 隣地への配慮 敷地境界部の植栽は、近隣への配慮が特に大切です。 高木を植栽する場合、将来的に落ち葉や日陰、電波障害などの問題が発生する可能性があるため、樹木の将来的な 樹形を考慮し、隣地境界から十分離して植栽しましょう。 特に、落葉樹の高木は、秋に大量の落ち葉が出るため、隣地境界付近の植栽は避けたほうが良いでしょう。 中木や低木を隣地境界沿いに列植すると、刈り込みなどの管理が困難となるので、列植する場合は隣地境界からある 程度離して植栽しましょう。 (4)擁壁の緑化 (20ページ) コンクリートの擁壁や石垣は圧迫感を与えますが、緑化することでソフトな印象を与えることができます。 のり面の緑化 敷地に余裕がある場合は、傾斜のゆるいのり面として緑化します。 擁壁の緑化 敷地に余裕がない場合には、擁壁の壁面をつる植物で被ったり、擁壁の下に樹木を植栽して壁面を隠 すこともできます。 低木や草花を植えることができる緑化ウォールという擁壁もあります。 2)建築物周り (21ページ) (1)建物の足元周りの緑化 建物の足元周りは、緑の多い施設づくりを考える場合、もっとも積極的に緑化したい空間です。 建物周りに様々な緑化を施すことによって、その施設のイメージを大きく向上させることができます。 低木や地被類による足元の緑化 足元に緑があることで無機的な印象をやわらげます。 四季の花などは見る人の心を和ませてくれます。 ・樹種の例:ツツジ類・ヒュウガミズキ・コムラサキ・コデマリ・ハギ類・ハクチョウゲ・ヒペリカムヒデコート・ ヒメウツギ・ボケ 中木による壁前の緑化 中木を用いた建物の前面の緑化です。 壁面をある程度被い隠すことを目的とする場合、 樹木の植栽スペースとして、足元に50センチメートル以上の空間が必要となります。樹種は、刈り込みに耐える常 緑樹や自然樹形が縦長のものがよいでしょう。 ・樹種の例:「生垣による緑化」の樹種の例を参照 変化のある建物周りの緑化 通行人が緑を楽しむことを目的とする場合、その建物の雰囲気にあった樹木を植栽します。同種類の 樹木を等間隔に配置すると洋風に、多種類の樹木をランダムに配置すると野趣あふれる雰囲気になります。 (コラム) 窓先空地は緑化できる? 共同住宅において避難通路を確保するために、住戸の窓先に設ける空地を「窓先空地」と言います。 窓先空地に樹木は植えられませんが、芝生や地被類を用いて緑化することは可能です。日当たりの良い 場合は芝生も有効ですが、管理に手間が掛かります。また、日陰では芝生は生育しないので、日陰に強 い地被類をグランドカバーとして活用することも検討しましょう。 (補足)窓先空地内には、地被植物は植栽可能。ただし、樹木は植栽できない。 (2)広場(主庭)の緑化 (22ページ) 広場はその敷地のメインとなる庭です。屋内から眺める庭園にするのか、散策ができる庭園にするの か、それとも、子どもが遊べる広場にするのか、建物とのバランスや、居住者・利用者のニーズを考慮 して決めましょう。 高木による緑化  高木は存在感が大きいため、庭のアクセントやシンボルとなります。雑木林風の庭ならばコナラやカシ 類、エゴノキなど、和風ならばアカマツやサクラ類、モミジ類、カキなど、洋風であればコニファー類やオ リーブ、アメリカザイフリボクなど、高木によって庭の表情は大きく変わります。 高木の中でも、ケヤキやソメイヨシノ、クスノキ、ユリノキ、イチョウ、ヒマラヤスギなど、非常に大きくな る樹木の場合は広場の中央部分に植栽するなど、将来の樹冠の広がりを見越して、十分な植栽スペースを確保しましょう。 単木のデザイン 高木の単木植栽では、根元部分はできるだけ大きな植栽基盤を確保しましょう。 また、既存樹木を保全した際、根元部分の地盤高が周りより高くなってしまう場合があります。このよう な場合、植栽ますを広く取って立ち上げることで解決できることもあります。 単木デザインのいろいろ ・一般のツリーサイクル・ベンチとして活用可能なもの ・根元の植栽地を大きく確保し、低木や地被による根締めを施す。・植栽ますを広く取って立ち上げる。 組み合わせによる緑化 高木の植栽計画が決まったら、中木、低木を効果的に組み合わせて、明るく、個性ある緑化を考えまし ょう。季節ごとに花や実が楽しめる庭、さまざまな色や香りの花が咲く庭、小鳥やチョウがやって来る庭な ど、どういったテーマの庭にするか計画するのも楽しいものです。 (3)中庭の緑化  (23ページ) 中庭は、庭の中でも特に生活に密着した空間であり、四方から見られることが多い場所です。 中庭を明るく緑化して、快適な生活空間を演出しましょう。 低木や地被類による緑化 中庭の植栽は、視線が通りやすいように低木や地被類などによる緑化が効果的です。日あたりが期待できない場 所が多いので、日陰に耐える樹種を選びましょう。 花や実が楽しめる植物を選ぶと、中庭を楽しい空間とすることができます。 ・樹種の例:ヤマブキ・ユキヤナギ・アセビ・アジサイ・アベリア・キチジョウソウ・シャガ・クリスマスローズ 中木や高木による緑化 比較的広い面積を確保できる場合は、中木や高木による緑化も考えられます。形よくまとまり、小ぶりに剪定でき る樹種を選ぶと良いでしょう。 ・樹種の例:イヌマキ・ヤマボウシ・ニワトコ・エゴノキ・ハナカイドウ・リョウブ・サンシュユ・シモクレン コンテナ緑化 コンテナ(プランター)緑化は植栽後も動かすことができ、高くなる樹木も小ぶりにまとめられるので、中庭向きといえ ます。ただし、潅水には十分注意する必要があります。 (補足)世田谷区の緑化基準では、コンテナは100リットル以上のものを使用すれば、緑化面積として算入することができます。 ・樹種の例:ハナミズキ・コニファー類・イヌツゲ・カラタネオガタマ・オリーブ・ゲッケイジュ・フェイジョア 階段状の緑化 低木や地被類などを、階段状に連続して植え込みます。高低差のある敷地やドライエリアの緑化に有効です。 ・樹種の例:ツツジ類・イヌツゲ・クチナシ・コトネアスター類・サルココッカ類・ササ類 3)建築物上 (24ページ) (1)屋上緑化 屋上への照り返しの防止などを主な目的とした緑化の場合、地被類で被うだけでも効果が期待できます。 庭として楽しむことを想定した緑化の場合は、様々な樹木や地被類を活用した緑化計画を考えますが、 技術的に配慮すべき点が多いため、専門家のアドバイスを受けましょう。 屋上の緑化 屋上緑化では、建物への防水、積載荷重の検討、手すりの高さ確保など安全への配慮とともに、生育 基盤としての土壌の保水や排水、風対策などに十分配慮する必要があります また、屋上は乾燥しやすいので、潅水のための給水設備が必要です。特にこまめな水やりが難しい場 合は、自動潅水装置を設置したほうが良いでしょう。 (地被類による緑化) 地被類の場合、厚さ10センチメートル程度の土壌があれば生育できます。軽量の人工土壌を用いれば、一般の 木造建築等でも、多くの場合、緑化が可能です。 ・地被類の例:シバ類・タマリュウ・シバザクラ・コトネアスター類・ハーブ類 (樹木による緑化) 樹木の植栽には、土壌厚を多く必要とするため、建物への積載荷重に十分留意する必要があります。 また、強風対策も必要となります。屋上に樹木を植栽する場合、単木植栽ではなく群植するのがよいで しょう。建築物上は地上部よりも土壌が浅いため、樹木はワイヤー支柱などで固定するのが安全です。 風の影響を受けにくい背の低い植物を植えることも効果的です。低木や地被類などの植物で被ったり、 表層にマルチング材を敷くと土壌の飛散防止効果があります。 ・樹種の例:ウバメガシ・ヤマモモ・ユズリハ・エゴノキ・シャリンバイ・トベラ・ハイビャクシン・ シモツケ・ニシキギ 屋根の緑化  (25ページ) 屋根には雨水を流れやすくするための勾配があり、乾燥しやすくなっています。乾燥を防ぐために、水分が蒸発しにくく 十分な潅水ができるシステムを導入する必要があります。日常的な手入れが難しいため、管理に手間がかからない植物 種を選ぶとよいでしょう。 (2)壁面緑化 壁面緑化の利点は、狭い場所でも育ち、管理にあまり手が掛からない上に、多くの人の目に付きやす いことがあげられます。 木本のつる植物は、壁面を被うまでに時間が掛かるため、植栽直後はアサガオやゴーヤなど草本のつ る植物と併用するのも良いでしょう。 補助資材を使用した壁面の緑化 壁面にワイヤーやメッシュ、ネット、登はんマットなどの補助資材を設置し、つる植物を絡ませることで壁面を被いま す。植物を確実に絡ませるためには、メッシュ径やワイヤー間隔は40センチメートル以内とすることが必要です。 利用可能な植物種が多く、植物で被う範囲をあらかじめ限定できる利点もあります。 ・樹種の例:カロライナジャスミン・テイカカズラ・ビナンカズラ・ツキヌキニンドウ・スイカズラ・ムベ・ビグノニア 植栽基盤を壁面に取り付ける緑化 植物が生育可能な基盤に植物を生育・繁茂させたパネルを、壁面に取り付けるタイプの壁面緑化です。基盤や植物と ともに、潅水装置・排水装置を取り付けたパネルなども製品化されています。デザイン性が高く、施工直後から高い被覆 を実現することが可能ですが、荷重負担や高さに配慮し、耐久性や安定性をしっかりと確保する必要があります。 ・樹種の例:ヘデラカナリエンシス・ヘデラヘリックス・イヌツゲ ベランダの緑化 屋根のないベランダにプランターを設置して、つる植物を下垂させます。設置も維持管理も簡単ですが、使える植物種が 限定されます。特に、風の強い高層階などでは葉の薄い樹種は避けましょう。 ・樹種の例:ヘデラカナリエンシス・コトネアスター類・地を這うタイプのコニファー類・ビンカマジョール スペースに余裕がある場合は低木や草花も植栽すると、内部からも楽しめます。 4)駐車場 (26ページ) 駐車場緑化は、駐車場を街並みに馴染ませるとともに、大気浄化作用やヒートアイランド現象の緩和な どにも貢献します。利用頻度の高い場所では駐車場周りの緑化を中心に計画し、利用頻度の低い場 所では、芝生(地被類)舗装なども検討してみましょう。 駐車場周りの緑化 駐車場の外周や駐車区画の周囲に、樹木や地被類などを植栽します。車止めの後ろやデッドスペースの隅など、ちょっとしたスペース も緑化することができます。 排気ガスが植物に直接かかる場合には、植栽ますを立ち上げるなどの配慮をしましょう。 病害虫に強く、管理の手間があまり掛からない常緑の樹木や地被類が適しています。 ・樹種の例:シャリンバイ・ツツジ類・コニファー類・ササ類・ヤブラン・リュウノヒゲ 緑陰樹の植栽 駐車スペースの近くに高木を植栽します。駐車場内にまとまった緑を確保でき、生長とともに、 駐車する車両に快適な木陰を提供することもできます。 樹木の枝や樹液などの落下が少ない樹木が適しています。 ・樹種の例:エノキ・シマサルスベリ・ウバメガシ・クロガネモチ・ヤマモモ・オリーブ 芝生(地被類)舗装 利用頻度が低い場合は、芝生(地被類)による舗装も考えられます。車の荷重を支えるため、 保護材やブロックなどの敷設が必要です。 <全面芝生(地被類)舗装> 植物の保護材を敷設し、その上に芝生(地被類)を植栽します。 <緑化補助資材を用いた芝生(地被類)舗装> ブロックや材木を敷設し、その隙間に芝生(地被類)を植えつけます。芝生(地被類)舗装のための緑化ブロックという製品もあります。 ブロックや材木は、歩行の際、つまずく恐れがあるので、特にバリアフリーに配慮が必要な施設では注意が必要です。 (補足)世田谷区の緑化基準では、緑化補助資材を使用した場合、実際に植栽が被っている部分の水平投影面積を、緑化面積として参入することができます。 (5) 土地利用の形態別に考える (27ページ) 植栽計画を立てる際には、土地利用の形態によって、特に留意すべきポイントが異なります。 ここでは、代表的な4つの事例を挙げ、事例ごとの留意点について説明します。 1)敷地の周囲に余裕のない場所での植栽(商業系地域などでの計画事例) 指定建ぺい率が高い地域の敷地では、狭い空地面積の中でどうやって緑地を確保するかがポイントです。 屋上緑化や壁面緑化を検討しましょう。 地上での緑化が難しい場合は、屋上や壁面を積極的に緑化しましょう。 (24、25ページ「屋上緑化・壁面緑化」参照) 樹木を配した庭園風の屋上は、来訪者や居住者の憩いの場となります。 小さなスペースを効果的に緑化しましょう。 敷地外周の緑化では、葉張りが小さい樹種による生垣緑化や、つる植物を活用したフェンス緑化がおすすめ です。植栽の幅が取れない場合は、地被類や小ぶりの低木による緑化を検討しましょう。 ・地被類や小ぶりの低木例:ヒメウツギ・ヒペリカムカリシナム・セイヨウイワナンテン・アベリアエドワードゴーチャ・ 地を這うタイプのコニファー類 建築物周りの緑化では、狭い植栽スペースでも花の咲く低木や草花を植えると、四季が感じられる楽しい空 間になります。コンテナ緑化も良いでしょう。 樹木は生長が遅く、剪定しやすい樹種がおすすめ。 植栽面積が小さい敷地では、樹木の生長できるスペースが限られ、剪定もしづらくなります。樹木を 選ぶときは、生長が遅いものやあまり大きく生長しないもの、剪定のしやすいものを選ぶと良いでしょう。 枝葉が横に広がらない園芸種も流通しているので、樹種の選択肢は増えています。 ・樹種の例:エゴノキ・ヤマボウシ・ハナミズキ・クロガネモチ・ソヨゴ・カクレミノ・イヌマキ・ ユズリハ 2)大規模な集合住宅等での植栽(中高層住居系地域などでの計画事例) (28ページ) 大規模な集合住宅の敷地では、広い緑地面積で様々な緑化を演出できるのが特徴です。建築規模が大きい ぶん、周辺環境に与える影響も大きいので、近隣への配慮には十分留意しましょう。 効果的な植栽で、建物を周辺景観となじませましょう。 建物周りに高木を植栽し、建物を隠すことで、圧迫感を和らげることができます。遠景も考えて、植栽する樹 木は建物の隅部分を高く、中心を低くするとバランスがよいでしょう。ただし、車や人が往来する出入り口部分 は、見通しを確保し、樹木で視界が遮られないように注意しましょう。 また、接道部に幅のある緑地帯を設け、シンボルやアクセントとなる高木、遮へい効果のある中木の生垣、 足元を覆う低木・地被類を組み合わせて開放的な外構にすると、緑豊かな空間となり、街の景観向上に役立ちます。 高木の植栽は、近隣への配慮も必要です。 敷地が広くなると、植栽する樹木本数も多くなります。特に、高木は、環境形成効果が極めて大きい一方、落ち葉や 日陰などが近隣トラブルの元となることがあります。植栽する場所と使用する樹種について、事前に十分に検討しましょう。 (19ページ「隣地への配慮」参照) 広場(主庭)の積極的な緑化で、建物の個性を演出しましょう。 大規模な集合住宅では、その規模に見合った広い面積の広場(主庭)を設けられることが大きな利点です。 この広場を緑化の核として位置づけ、既存樹木の活用、建物との調和、想定する居住者層などを考えな がら、積極的な植栽で建物の個性を演出しましょう。 既存樹木群を生かした自然風庭園や、シンボルツリーを際立たせた開放的な広場など、美しい緑化空間に 仕立てると、敷地全体の雰囲気も大きく向上します。 3)小規模な集合住宅等での植栽(低層住居系地域などでの計画事例) (29ページ) 小規模な集合住宅の敷地では、建物の顔となる玄関先や、接道部への積極的な緑化がポイントです。隣地な ど周辺への配慮と、管理のしやすさを考慮しましょう。 接道部を積極的に緑化しましょう。 道路と接する部分を緑化すると、建物の圧迫感が和らぎ、緑豊かな街並みの創造にも役立ちます。 中木の生垣や、低木・地被類による緑地帯を積極的に配置しましょう。また、ごみ置き場や設備機器 が道路からむき出しに見える場合、緑化によって隠すことも考えましょう。ただし、エアコン室外機等で は、機械や樹木への悪影響を避けるため、30センチメートル以上離すことが必要です。 隣地境界部の植栽では、樹種の選択に注意しましょう。 小規模な集合住宅では、隣地境界部にあまり広 い空地が取れないこともあります。このような場所 には、日陰に強い樹木や、できるだけ剪定の手間が少なく病害虫にも強いような、管理の手間の掛か らない樹木が向いています。 また、中木以上の樹木では、生長が遅いものや、あまり高くならないものを選びましょう。 (19ページ「樹木や地被類による緑化」参照) 玄関先にシンボルツリーを植栽するのもおすすめ。 玄関先などの出入り口部分は、その建物の顔となる場所です。特に小規模な集合住宅では、庭など のまとまった植栽スペースが取れない場合もあるので、玄関先を緑化の核として捉え、積極的に植栽し ましょう。高木のシンボルツリーや、四季の移り変わりを感じられる低木などを植栽すると、居住者や来 訪者にも心地よい印象を与えることができます。 (17ページ「出入り口の緑化」「アプローチの緑化」参照) 4)戸建住宅等での植栽(低層住居系地域・風致地区などでの計画事例) (30ページ) 戸建住宅は、集合住宅に比べると規模は小さいですが、一軒一軒がみどり豊かな住宅づくりに配慮することで、 地域全体の街並づくりに大きく貢献します。隣地への影響に配慮しつつ、敷地周りなどできるだけ緑化に努めましょう。 好みの樹木で庭を楽しみましょう。 花木を計画的に植栽すると、四季を通して花を楽しめます。 ・樹種の例:春、ハクモクレン・シモクレン・ツツジ類・ヤマブキ・ユキヤナギ・コデマリ 夏、ヒメシャラ・アジサイ・サルスベリ・フヨウ・ムクゲ 秋、キンモクセイ・ハギ類 冬、ウメ・ロウバイ・マンサク 収穫が楽しめる果樹の植栽も、おすすめです。 果樹の例:ミカン・ユズ・アンズ・スモモ・カキ・カリン・ブラックベリー・ブルーベリー・キウイフルーツ 生き物が好きな方であれば野鳥が実を食べる樹木、チョウが花を吸蜜に来る樹木、チョウの幼虫が葉を食樹としている樹木 などを植えると、生き物を呼ぶことができ楽しみが広がります。 隣地境界部を緑化しましょう。 隣地境界部は、日あたりや空地の幅、建築主の好みを考え、緑化計画を立てましょう。一般的 に、整形的な仕立てにすると管理に手間が掛かり、自然的な仕立てにすると管理の手間を減ら すことができます。また、あまり高く生長する樹木は管理の手間が掛かる上、将来的に落ち葉 や日陰などの問題が発生する可能性があるため、注意が必要です。 日あたりが良い場所であれば、花壇を作り、四季折々の花づくりや家庭菜園ができるように するのも楽しいでしょう。 (19ページ「敷地境界部の緑化」参照) 接道部を緑化しましょう。 接道部は、地震時に倒壊の恐れがあるような高い塀はできるだけ避け、緑化を心がけましょう。樹木による生垣や開放的な外 構が望ましいですが、つる植物や地被類による緑化も考えられます。(18ページ「接道部の緑化」参照) 玄関先に、家のイメージを表現するようなシンボルツリーを植栽するのもお勧めです。植栽計画は事業者にお任せという建築 主の方も、シンボルツリーだけはご自分で決めてみてはいかがでしょうか。(17ページ「出入り口の緑化」参照)