2)高木・中木・低木 (11ページ) 樹木を植栽するときには、その樹木にどんな効果を期待するのかを考え、それに見合った高さの樹木を選ぶことが大切です。 中木や低木は、あまり大きく生長しないか、あるいは大きくならないように刈り込み等の管理をすることが一般的 ですが、高木は種類によっては非常に大きく生長します。 植栽時の高さだけでなく、将来どの程度の大きさになるのかをイメージして植栽計画を立てることが大切です。 (1)高木 高木は生長とともに緑陰をつくり、下から見上げることにより広がりのある空間を生み出します。街並み 形成効果が極めて大きく、特に高層建築の場合、建物の圧迫感を大きく和らげます。 高木を効果的に配置することで、建物の印象はもちろん、街並みの印象も大幅に向上させることができます。 特に、中木や低木、地被類など、高さの異なる樹木と組み合わせて植栽することで、階層的な構造を 持つ、質の高い緑地帯を形成することができます。 大きな植栽スペースが必要な樹種の例 ・常緑樹 ヒノキ類(ヒノキ・サワラなど)・クロマツ・アカマツ・コウヤマキ・カヤ・ヒマラヤスギ・ドイツトウヒ・ カシ類(アラカシ・シラカシ・ウラジロガシ)・スダジイ・モチノキ・クスノキ・タブノキ・ヤブニッケイ・ タイサンボク・ヤマモモ ・落葉樹 コナラ・クヌギ・サクラ類(ヤマザクラ・サトザクラ・カワズザクラなど)・アカシデ・イヌシデ・ムクノキ・ エノキ・ケヤキ(ムサシノケヤキ)・コブシ・ハクモクレン・トチノキ・センダン・ナンキンハゼ・エンジュ・ヒトツバタゴ 比較的小さいスペースでも植栽できる樹種の例 ・常緑樹 ヒノキ類(コノテガシワ・ニオイヒバなど)・イヌマキ・ウバメガシ・マテバシイ・クロガネモチ・タラヨウ・ ソヨゴ・セイヨウヒイラギ・モッコク・カクレミノ・ユズリハ・ゲッケイジュ・オリーブ・ビワ ・落葉樹 モミジ類(イロハモミジ・トウカエデなど)・ヤマボウシ・ハナミズキ・ナツツバキ・ヒメシャラ・カキ・ サクラ類(マメザクラ・ヨコハマヒザクラなど)・カリン・ヒメリンゴ・アメリカザイフリボク・ウラジロノキ・リョウブ・ハクウ ンボク・アキニレ・ネムノキ 将来を見つめる植栽スペース (12ページ) 樹木は年々生長します。後々、管理の支障とならないよう、10年先、20年先を予測して、適当な間隔を確保しましょう。 特に、ソメイヨシノやイチョウ、クスノキなど生長の早い高木は、十数年程度でも非常に大きくなるので、注意が必要です。 苗木から10年以降の育成空間規模(ソメイヨシノ) 高さ・樹木の高さ(庭木として育てる場合) 幅・樹木の高さに対する枝の広がり  苗木、高さ2.5メートル幅0.8メートル 10年後、高さ9.0メートル幅9.0メートル以上 20年後、高さ13.0メートル幅13.0メートル以上 30年後、高さ15.0メートル幅15.0メートル以上 樹木の育成に必要なスペース 土の厚さ15センチメートル・(地被類)ササ類、シバザクラ、フッキソウ、リュウノヒゲ 土の厚さ30センチメートル・(低木)コデマリ、ツツジ類、ナンテン、ユキヤナギ 土の厚さ45センチメートル・(中木)シャクナゲ、タニウツギ、ハコネウツギ、ハナズオウ、マサキ、マンサク、ムクゲ 土の厚さ60〜90センチメートル・(浅根性高木)サンゴジュ、ナツツバキ、ハナミズキ、モチノキ、モッコウ、ヤブツバキ 土の厚さ150センチメートル・(中間型)カキ、コブシ、ネムノキ、シモクレン、ヤマモモ (深根性高木)アカマツ、イヌマキ、 クヌギ、クロマツ、コナラ、スダジイ (2)中木 中木は、列植(連続して植栽)して生垣にすることで、視線をさえぎったり、エリアをはっきりさせること ができます。逆に、見通しを確保する必要のある場所での列植には、注意が必要です。 (3)低木 低木は、群植して地表を被うことにより、緩やかにエリアを遮ったり、土壌の表面の乾燥を防ぐ効果があります。 また、小さい面積でも多くの本数を植栽することができるため、様々な種類の低木を織り交ぜて植栽することで、 四季折々、様々な花や実が観賞できるような楽しい場を演出することもできます。 みどりの基本条例の「樹木の本数基準」における「樹木区分」について みどりの基本条例の「樹木の本数基準」における「樹木区分」では、樹木を植栽時の樹高によって、高木、 準高木、中木、低木の4つに区分しています。 この樹木区分と、上述@〜Bの高木、中木、低木とは、概念が異なりますので、ご注意ください。 (1ページ参照) みどりの基本条例では、「地上部の緑化基準」により緑化の量を確保するとともに、「樹木本数基準」により 緑化の質を確保することを目指しています。芝生や草花ばかりではなく、高木や準高木など、敷地の規模に 応じて大きく生長する樹木を植栽していただくことで、世田谷区に相応しいみどり溢れる街並みを保全・形成 していくことができます。 なお、みどりの基本条例における樹木区分の定義は以下のとおりです。 高木:植栽時の樹高が4メートル以上で、大きく成長が見込まれる樹木。 準高木:植栽時の樹高が2.5メートル以上4メートル未満の樹木。 中木:植栽時の樹高が1メートル以上2.5メートル未満の樹木。 低木:植栽時の樹高が30センチメートル以上1メートル未満の樹木。 (3) 植栽計画の環境条件別に考える (14ページ) みどりの配置を考えるにあたっては、日あたりや乾燥、風通しなど、環境条件を考慮した植栽方法・樹種を選ぶことが大切です。 敷地の環境条件を把握して、適切な植栽計画を立てましょう。 1)日あたりへの配慮 樹木の生育に、日あたりは重要な要素です。 日あたりを必要とする樹木(陽樹)が多いですが、日陰でも育つ樹木(陰樹)もあります。 (1)日なたでは 建物の東・西・南側にあたる場所は、日あたりの良い場所になります。 東側は朝日が差し込むため、やわらかな日の光を好む樹木が向きます。 南側は 1 日中日があたるため、ほとんどの樹木が植栽できますが、特に陽樹が向きます。 西側も陽樹が向きますが、西日に弱い樹木は避けましょう。 ・東側に向く樹木の例:シラカシ・スダジイ・サワラ・コブシ・エゴノキ・モミジ類・ソヨゴ・アメリカザイフリボク・ オオデマリ・ミツバツツジ・ロウバイ ・西日に弱い樹木の例:タイサンボク・ハナミズキ・ヤマボウシ・エゴノキ・ナツツバキ・ヒメシャラ・トチノキ・ モミジ類・ソヨゴ・キンモクセイ・センリョウ (2)日陰では 建物の北側では終日日があたらないため、陰樹を選択するとよいでしょう。斑入りの品種を選んだり、 日陰に強く花の可愛らしい地被植物や山野草を植栽すると、明るい雰囲気を演出できます。 ・日陰に強い樹木や地被類の例:カクレミノ・ヒイラギモクセイ・モチノキ・イヌマキ・イヌツゲ・アオキ・アセビ・ヒサカキ・ ジンチョウゲ・ナンテン・ヒイラギナンテン・マンリョウ・ヤツデ・アジサイ・ヤブコウジ・ツルマサキ・ビナンカズラ 日陰の庭でも、植栽する植物を選べば、趣向を凝らした植栽をすることができます。 2)乾燥への配慮 (15ページ) 夏期の南側や、舗装の中の単木、コンテナ緑化、屋上緑化は、土壌が乾燥しがちな場所です。 乾燥に強い樹種を植栽したり、土壌の保水性を高める土壌改良材を施すのも一つの方法です。 植栽後のまめな水やりも大切です。自動潅水装置を用いることで、水やりの負担を減らすこともできます。 建物の庇の下は、雨が直接当たらないため、乾燥しがちになります。また、葉の汚れが洗い流されない ため、生育不良になりやすく、病害虫の被害も受けやすくなります。庇の下への植栽は、極力避けたほうが無難です。 (補足)世田谷区の緑化基準では、庇の下の植栽は緑化面積に加えることができません。 ・乾燥に強い樹木の例:ウバメガシ・コナラ・オリーブ・トベラ・マサキ・ハマヒサカキ・ハイビャクシン・ グミ類(アキグミ・ナツグミ・ナワシログミなど)・ローズマリー 3)風への配慮 風通しが悪いと、病害虫が発生しやすくなります。特に壁や塀で囲まれた場所では、樹木を壁から離し たり、植栽が過密になり過ぎないように、樹木の間に風が入るような工夫が必要です。 植栽したばかりの樹木に強い風があたると、揺れによって樹木の活着に悪影響を及ぼすので、支柱 (控木)を取り付ける必要があります。 支柱には、樹木の大きさや用途にあった形のものを選びましょう。 (4) 植栽計画の場所別に考える  (16ページ) 建築に伴う植栽では、敷地の外周や、建築物周り、建築物上、駐車場など、植栽場所に応じて、適切な植栽 を検討する必要があります。 敷地の状況や建築計画だけでなく、近隣の状況なども踏まえて、植栽方法や樹木の種類を考えましょう。 1)敷地の外周 1.出入り口・アプローチの緑化 2.接道部の緑化・生垣やつる植物、地被類による緑化 3.敷地境界部の緑化・樹木や地被類、花壇による緑化 4.擁壁の緑化・のり面、擁壁の緑化 2)建築物周り 1.建物の足元周りの緑化・樹木や地被類による建物周りの緑化 2.広場(主庭)の緑化・高木による緑化、中低木との組み合わせによる緑化 3.中庭の緑化・樹木や地被類による緑化、コンテナ緑化、階段状の緑化 3)建築物上 1.屋上緑化・地被類や樹木による屋上緑化 2.壁面緑化・補助資材を使用した壁面緑化、植栽基盤を壁面に取り付ける壁面緑化、ベランダの緑化 4)駐車場 1.駐車場周りの緑化 2.緑陰樹の植栽 3.芝生(地被類)舗装・全面芝生(地被類)舗装 緑化補助資材を用いた芝生(地被類)舗装 既存樹木の保全 既存樹木が、建築計画上支障となる場合も、可能であれば計画を見直したり、 移植を検討したりして、保全することを考えてください。 1)敷地の外周 (17ページ) (1)出入り口・アプローチの緑化 道路と建物を結ぶスペースなので、緑化をすることによって、緑豊かな建物として印象づけることができます。 シンボルとなる高木の植栽や出入り口を引き立てる緑化などによって、入口をわかりやすく誘導します。 また、緑を入口から玄関まで連続的に、あるいはリズミカルに配置することで、印象深いアプローチを 演出することができます。 出入り口の緑化 出入り口付近を敷地側に後退(セットバック)させたり、閉鎖的な門や塀、フェンスを撤去することで、見 通しの良い、開放的なエントランスとすることができます。 植栽スペースを設け、可能であれば、通りのシンボルとなるような高木(シンボルツリー)も植栽しましょ う。大きな木1本で構えをつくる方法や2本を組み合わせてゲートツリーとする方法などがあります。樹形 のきれいな樹木や花の咲く樹木などが親しまれます。 ・シンボルツリーの例 大規模敷地(集合住宅等): サクラ類・モミジ類・コブシ・ハクモクレン・ケヤキ・ モチノキ・タイサンボク 小規模敷地(戸建住宅等): ヤマボウシ・ハナミズキ・ヒメシャラ・サルスベリ・コニファー類・ソヨゴ・モッコク アプローチの緑化 両側に花や実の美しい樹木、地被類を植栽すると、季節感のあふれる楽しい空間となります。 幅員の狭い小規模なアプローチでは、枝葉のボリュームが出やすい樹木、触れると痛い樹木、害虫の 被害を受けやすい樹木は避けましょう。 玄関まで距離があり、幅員も十分確保できるような大規模敷地の場合、並木にすることでアプローチ効 果を高めることができます。