ちゅうすいをご存知ですか〜地下水を保全し水辺環境を守るために〜  世田谷区内には、国分寺がい線に沿う一帯を中心に約100か所の湧水が存在し、自然豊かな水辺環境が形成されています。これらの湧水は、地中に浸透した雨水が再び地表に湧出した地下水の一部であり、貴重な湧水を守るためには、地下水を保全することが不可欠です。  区内に特徴的な地下水のあり方に、ちゅうすい・ちゅうみず、があります。ちゅうすいは、比較的浅い地層中に存在する地下水の分布形態で、烏山弁天池の貴重な水源にもなっています。その一方、ちゅうすいの地下水面は地表に近い位置にあることから、建築工事に伴う掘削によって漏水を起こす可能性が高く、その結果、周辺地域における地下水位の低下や既設井戸の枯渇等に影響を与える場合があります。  ちゅうすいの保全により区内の豊かな水辺環境を守るとともに、工事に伴う周囲への影響を未然に防ぎましょう。 ちゅうすい分布想定図  この想定図は、区が実施したちゅうすい現況調査の結果に基づき、ちゅうすいが分布する可能性の高い範囲を示したものです。 ちゅうすいは、降雨条件や地下水の揚水,地表被覆の改変等によって、その分布範囲に変化がみられるため、図中の想定範囲の全ての地域にわたって常にちゅうすいが分布するとは限りません。また、想定範囲外であっても、ちゅうすいが分布する場合もあります。 補足、ちゅすい現況調査 平成23年及び24年度に日本大学文理学部地球システム科学科水圏環境科学研究室の協力により実施し、既存のボーリングデータを用いた地質の分析、井戸の水位測定等の調査により、区内のちゅうすいの分布状況を把握しました。 世田谷区の地下水  世田谷区内には、主として地表から約10メートル〜15メートルの深さに浅層地下水、不圧地下水が賦存し、武蔵野れき層と呼ばれる砂れき層中をゆっくりと流動しています。国分寺がけ線に沿って地表に湧出する貴重な湧水はこのような地下水の一部であり,ちゅうすいと区別する意味でほんすい・ほんみずと言われます。  本水に対しちゅうすいは、地表から約2メートル〜4メートルの浅い置に賦存し、砂れき層の上部を覆うローム層中に分布しています。ちゅうすいは、本水に比べると広く一般に認知されているとは言えませんが、世田谷区の水環境を特徴づける貴重な地下水の分布形態です。 ちゅうすいとは  地表に降り注ぐ雨水の一部は地中に浸透し、その多くはローム層を通過してさらに下位の砂れき層中の本水を涵養します。しかし、ローム層中に粘土質等の水を透し難い層、難透水層が介在する場合には、水が地中で局地的に受け止められる結果、本水より地表に近い位置にも地下水が分布します。これがちゅうすいです。  ちゅうすいは、区内のどこにでも存在する地下水ではなく、武蔵野台地の限られた地域に地形や地質などの条件によって分布しており、水の得やすさの面から古来より集落の立地と密接に関わってきました。 ちゅうすい保全の必要性  ちゅうすいに恵まれた地域では、地下水面が地表近くに位置することから井戸の掘削深度が浅く、古くから浅井戸による地下水の利用が行われてきました。  また、豊水期にはちゅうすいは本水との連続性を持つ場合もあります。  潤いのある世田谷区の水環境を次代に継承するために、ちゅうすいの保全が必要です。 烏山弁天池とは?  烏山弁天池は、ちゅうすいを水源とする池です。この地域は、区内でも地下水位が特に高く、地表近くのちゅうすいが池の水を涵養しています。鴨池の名で親しまれ、夏にはスイレンやコウホネが見事な花を咲かせます。みどりとみずが一体となった貴重な環境であり、区の特別保護区に指定されています。 地下掘削の際は要注意〜ちゅうすいを保全し、漏水による周囲への影響を防ぐために〜  ちゅうすいが分布する地域で地下を掘削すると、掘削深度によっては開削部分にちゅうすいが漏水したり、基礎杭がちゅうすいを保持している難透水層に達することで周辺の地下水位が低下する可能性があります。これにより、周辺の既設井戸の枯渇や地盤高の変化に影響を及ぼすことも考えられます。  ちゅうすいの存在が想定される地域では、建築工事などに伴う地下掘削の際にちゅうすいの特性に留意した施工が必要です。 建築の際の注意点〜ちゅうすいは貴重な水資源です。保全に努めましましょう。〜 ・事前にボーリング調査を行いましょう。  ちゅうすいの分布を確認するにはローム層中の難透水層の有無をボーリング調査の結果に基づき判断し、地下水位とその季節変化を把握することが必要です。合わせて,既存のボーリング資料に基づく地質柱状図を積極的に活用しましょう。 ・地下水面の高さに配慮した建築計画を立てましょう。 ・止水工法により漏水を未然に防ぎましょう。  が存在する地域では、漏水を防ぐ工法を計画することが有効です。具体的な手法としては、シートパイル、鋼矢板の貫入、ソイルセメント壁の築造など多岐に渡るため、計画・設計の段階で十分な検討をお願いします。 地下水を保全し自然の水環境を維持しましょう  世田谷区内を流れる多摩川や野川、仙川などの河川の流れには、雨水が地中に浸透し再び地表に現れた地下水が大切な役割を果たしています。こうした自然の水循環は、都市化の進行により変化しつつありますが、世田谷区には河川や湧水などの豊かで貴重な水辺環境が未だ多く残されています。  地下水を保全し自然の水循環を維持するためには、降り注ぐ雨水を地中に浸透させることが必要です。植栽や花壇による自然浸透面を確保すると共に、雨どいへの雨水浸透ますの設置などにより、身近なところから可能な取り組みを広げましょう。世田谷区では、雨水を地中により多く浸透させる施策を積極的に推進しています。 問い合わせ先  世田谷区みどり33推進担当部みどり政策課 電話番号03-6432-7904 ファクシミリ03-6432-7989