世田谷区舗装更新計画 2018年(平成30年)3月 世田谷区 目 次 T 計画の概要  1. 策定の背景・目的  2. 位置づけ  3. 計画期間  4. 計画の対象 U 現状と課題  1. 区道の舗装  2. 舗装更新の取組みの状況  3. 主要な区道の舗装の現状  4. その他区道の舗装の現状  5. 舗装に対する区民の関心 V 基本方針  1. 良好な舗装による安全で快適な道路利用環境の保持  2. 道路の特性に応じた計画的かつ効率的な維持管理  3. 予防保全型管理による修繕時期の平準化  4. 舗装の長寿命化によるライフサイクルコストの抑制 W 主要な区道の舗装更新計画  1. 管理基準の設定  2. 長期シミュレーションによる課題  3. 舗装更新の方向性  4. 計画期間の取組み X その他区道の舗装更新計画  1. 管理基準の設定  2. 長期シミュレーションによる課題  3. 計画期間の取組み Y 計画の実現に向けて  1. メンテナンスサイクルの構築  2. 計画の見直し  3. 更なる効率化の取組み 付録 用語の定義 T 計画の概要                     1. 策定の背景・目的  世田谷区では、区が管理する建築物や都市基盤施設等の公共施設について、将来の財政見通しに基づき、適切に管理、保全、更新し、長寿命化や集約化、統廃合を推進するための計画として、2017年(平成29年)3月に「世田谷区公共施設等総合管理計画」を策定しました。  都市基盤施設の中で道路は、区民生活を支える最も基礎的な都市施設であり、道路を構成する舗装は、利用者との接点として、安全で快適な移動のために良好な状態で維持管理する必要があります。  これまで区では、日常のパトロール、区民から寄せられる通報などに基づき、舗装の劣化損傷箇所の修繕、更新を行ってきましたが、区内の特別区道は、23区中最長の延長1,094km(2017年[平成29年]4月現在)もあり、今後、この膨大な舗装を適切に管理していくために、長寿命化によるライフサイクルコストの縮減、予防保全型管理による修繕時期の平準化など、計画的で効率的な舗装更新に取組んでいかなければなりません。  このような状況を踏まえ、「世田谷区公共施設等総合管理計画」の個別計画として、区道の舗装について、これからの維持、更新、管理の方針、具体的な取組みの内容などを示した「世田谷区舗装更新計画」を策定することとしました。 2. 位置づけ  本計画は、「世田谷区公共施設等総合管理計画」(2017年[平成29年]3月策定)の個別計画として策定します。 3. 計画期間  計画期間を2018年度(平成30年度)から2027年度(平成39年度)までの10年間とし、その期間内の具体的な取組みを示します。  また、長期的な視点から舗装のメンテナンスサイクルやライフサイクルコストなどを検討し、今後50年間の舗装更新の方向性を示します。 4. 計画の対象  区が管理する特別区道(総延長1,094km)の舗装を対象とします。  区道には地区幹線道路から、地先道路(生活道路)まで様々な規格が存在し、大型車両の交通が多い道路、もっぱら歩行者や自転車が通行する道路など、利用状況も多様で、舗装の構造も異なります。また、多くの区民が利用しているバス通りや、災害時に支援物資の輸送に使われる緊急輸送道路などは、より高い水準で管理する必要があります。  本計画では、舗装の維持更新を効率的に進めるため、大型車交通量の多い路線、バス路線、緊急輸送道路などの延長151kmを「主要な区道」に、それ以外の943kmを「その他区道」に分類し、それぞれ特性に応じた舗装更新計画を定めます。 なお、今後区が管理することとなる道路の舗装についても、本計画の対象として取扱い、新設される道路の舗装は、本計画に準じた構造にすることとします。 ・主要な区道 舗装の劣化損傷は、重量の大きい大型車の通行により強い影響を受けます。このため主要な区道の中でも、バス通りなどでは舗装の劣化損傷が短期間で進みやすい特徴があります。 延長151km、面積155万u(内車道面積118万u)、平均幅員は約10.3mです。 ・その他区道 生活道路が中心のその他区道は、大型車の通行が少ないことから、通常、舗装の劣化損傷は緩やかに進行します。 延長943km、面積494万u、平均幅員は約5.2mです。 U 現状と課題                   1. 区道の舗装  世田谷区内の特別区道の延長は23区でもっとも長い1,094km、面積は行政面積の11%を占める649万uもあり、舗装率は99.6%、その9割はアスファルトコンクリートにより舗装されています。  標準的なアスファルトコンクリート舗装は、表面のアスファルトコンクリートと、その下の砕石などによる路盤から構成されていて、自動車交通量に応じた厚みが定められています。  バス通りなどの主要な区道では、舗装の厚さが55cmと60cmの構造が多く、生活道路が中心のその他区道では、20cm〜40cmの構造が一般的です。  区内では、昭和50年代から平成初頭にかけて下水道の普及が進み、下水道管の敷設工事に伴い舗装の打換えが行われました。下水道は区の東部、南部から先行して整備されたため、世田谷地域、玉川地域の舗装は古く劣化が進んでいる箇所が多いという特徴があります。また、下水道工事による舗装の復旧では、路盤を省略するなど簡易な舗装で施工されたケースもあり、実際には必要な厚さを有していない路線も多く存在しています。  近年では、自然環境の保護、沿道環境の保全、災害対策などを目的として、雨水の浸透、路面温度の低減、騒音発生の抑制等の効果がある、透水性舗装、遮熱性舗装、低騒音舗装等、高機能舗装の施工も進めています。   2. 舗装更新の取組みの状況  区では、日常のパトロールによる点検、区民から寄せられる情報などに基づき、舗装の状態を確認し、劣化損傷の状況に応じて部分的な補修工事や全面的な修繕工事を行ってきました。  2006年度(平成18年度)から2015年度(平成27年度)までの10年間では、路面改良工事、歩道整備工事により、年平均6.7万uの舗装を更新していますが、現在の施工量では、全区道の舗装更新に97年を要することになります。  また、更新費用は年平均13.3億円で大きな増減はありませんが、施工単価の高騰により更新面積は減少傾向です。 3. 主要な区道の舗装の現状  主要な区道については、2007年度(平成19年度)と2013年度(平成25年度)に路面性状測定車を用い、車道部のひび割れ率、わだち掘れ量、平坦性の3項目を測定し、MCI※(舗装の維持管理指数)を算出しました。  2013年度(平成25年度)調査の全路線平均MCIは6.6であり、良好な状態にあります。しかし、2007年度(平成19年度)調査と比較し、MCIが5.0以下の区間が増え、平均MCIは低下していることから、劣化損傷の進行に対して、更新が追いついていないことが判明しました。 ※MCI:旧建設省土木研究所が開発した舗装の維持修繕の要否を判断するための指標。 4. その他区道の舗装の現状  その他区道では、2009年度(平成21年度)と2015・2016年度(平成27・28年度)に、専用の測定車両を用い、ひび割れ率の測定を行いました。  2015・2016年度(平成27・28年度)の調査による全路線平均のひび割れ率は3.0%未満と良好な状態ですが、ひび割れ率が20%以上の道路面積は、2009年度(平成21年度)調査の33.2万uから36.9万uに増加しており、主要な区道と同様、全体的に劣化が進行しています。 5. 舗装に対する区民の関心  舗装の状態は、歩きやすさや、自動車や自転車の走行のしやすさなど、供用性を左右します。また、舗装の劣化損傷は、自動車の通行による騒音、振動の発生原因となり、沿道環境に影響を与えます。このため、舗装に関する区民の関心は高く、年間2〜3千件にのぼる通報や苦情が寄せられています。 V 基本方針                     上位計画である「世田谷区公共施設等総合管理計画」で示す方針、及び、舗装更新の取組み等の課題から、今後の舗装更新に関する4つの基本方針を以下の通り定めます。 1. 良好な舗装による安全で快適な道路利用環境の保持  道路は、大多数の区民が毎日利用する施設であり、道路利用者との接点となる舗装は、供用性を損なわないよう、常に良好な状態で管理されていることが求められます。  また、区民も路面の状態に関して高い関心を持っており、舗装の損傷や、これに起因する騒音振動などの通報が日々寄せられています。  区では、区道の舗装の適切な維持更新によって、引き続き現状の良好な水準を維持し、安全で快適な道路の利用環境を保っていきます。 2. 道路の特性に応じた計画的かつ効率的な維持管理  区道には、地区幹線道路から地先道路(生活道路)まで様々な規格があり、自動車交通量、舗装構造、地盤の状態等により、舗装の劣化損傷の進み方も一様ではありません。  膨大なストック量の舗装を、厳しい財政状況の下で適切に管理するためには、供用性の確保と維持更新に要する費用の縮減を両立する管理手法を用いる必要があります。  区道を、大型車の交通量、管理の重要性などから主要な区道とその他区道に大別し、さらに利用状況等を踏まえ、個々の路線ごとに最適な舗装構造を設定し、適切なタイミングで修繕を行うなど、道路の特性に応じた方法により、計画的かつ効率的な舗装の維持管理を進めていきます。 3. 予防保全型管理による修繕時期の平準化  これまで区では、主に日常の点検パトロール、区民からの通報等により劣化損傷箇所を特定し修繕する、事後保全型の維持管理を行ってきました。しかし、現在の管理手法では、舗装の修繕時期が集中した場合、過度な財政負担が生じ対応が困難になると考えられます。  このため、定期的な点検により劣化損傷の進行状況を把握し、軽微なうちに補修を行うなど、予防保全型の管理手法を用いることで、修繕時期の集中を回避する必要があります。  舗装の維持管理の方法を事後保全型から予防保全型に転換し、計画的な舗装の更新によって修繕時期の平準化を図っていきます。 4. 舗装の長寿命化によるライフサイクルコストの抑制  限られた財源の下で、施設を適切に管理するためには、施設の構造とメンテナンスの方法を一体的に検討し、最も効率的な組合せにする必要があります。  通常、舗装の劣化損傷は、表面に生じるひび割れ等から始まり、徐々に舗装全体に損傷が進行し構造的な破壊に至ります。舗装下部まで打換える大掛かりな工事を繰り返すよりも、適切な舗装構造によって高い耐久性を持たせ、表面の補修により機能を維持していく方が、合計の費用を抑制できるケースが多いと考えられます。  地盤条件や利用状況に応じた舗装構造と、表面の適切な補修により、舗装の長寿命化を図り、ライフサイクルコストを抑制します。 W 主要な区道の舗装更新計画              1. 管理基準の設定  主要な区道の車道部では、現在の良好な舗装状態を維持するためにMCIが5.0を下回った段階で修繕を行うこととします。  一般にMCIが5.0以上は良好な状態、5.0を下回ると修繕を行うことが望ましい状態とされており、他自治体の修繕実施の基準も参考にして、世田谷区の管理基準を設定しました。  なお、MCIが5.0に至る期間は、路面性状調査の結果より、舗装更新後、約15年と予測されます。 2. 長期シミュレーションによる課題  現状の予算規模、従来の維持管理手法により舗装を更新していくと、50年後には平均MCIが3.6以下になると予測されます。区全体で主要な区道の車道部の舗装は相当悪化した状態となり、移動の安全性や円滑性が損なわれ、騒音振動が発生するなど、供用性は大幅に低下することになります。 また、概ね20年のサイクルで修繕を行っている現在の管理手法により、良好な舗装の状態を維持しようとした場合、車道部、歩道部を合わせ50年間で1,025億円、年平均20.5億円の費用が必要になります。さらに、修繕時期が集中し、過度な財政負担が生じることも想定されます。 3. 舗装更新の方向性 (1)舗装の長寿命化  主要な区道の車道部では、ライフサイクルコストを縮減するため、半永久舗装※により長寿命化します。 ※【半永久舗装】  主要な区道では、アメリカのアスファルト舗装同盟(Asphalt Pavement Alliance)により2000年に提唱された永久舗装(Perpetual Pavement)の概念を取入れ、50年累積の大型車の荷重に耐えられる舗装構造(半永久舗装)を採用します。半永久舗装化することで、表面に現れる軽微な損傷に対して定期的に表面の更新を行うだけで、大規模な修繕を行うことなく50年以上機能を維持することができます。 半永久舗装化のために舗装構造を強化する必要がある場合、初回の修繕費用は高くなりますが、二回目の修繕以降は、表層の更新のみで機能を維持できるため、更新時に大規模な修繕も必要となる従来の舗装と比べ、50年間のライフサイクルコストは低くなります。 (2)半永久舗装の仮判定  半永久舗装の設定条件※により調査したところ、主要な区道151kmの内、約130kmは現在の舗装構造で半永久舗装の条件を満たしていると考えられます。なお、仮判定は、推計値等を用い検討したものであり、本計画策定後の最初の修繕を行う際に、詳細調査を実施し、半永久舗装の対応状況を確認することとします。 ※(半永久舗装の設定条件)50年累積大型車交通量(推計値)、路床CBR(3.0%に仮定)、弾性係数(既存資料によるの舗装厚) (3)車道部の舗装更新  車道部はMCIが5.0に至る劣化予測に基づき、概ね15年サイクルで修繕を実施し、年間7. 7万uの舗装を更新することを目標とします。  半永久舗装化された路線では、表層の更新を行うこととします。また、今後、半永久舗装化する路線では、コスト縮減、工期短縮などの点から、既設の舗装を活用した打換えや路盤の強化等の工法により、適切な舗装構造に変更します。 (主な修繕方法) 半永久舗装対応済・・・修繕工法の例(表層の更新)切削オーバーレイ工法 半永久舗装未対応・・・修繕工法の例 (舗装構造の強化)路盤層までの打換え、アスファルト層の厚さの変更など (4)修繕時期の平準化  修繕時期が集中することが予測されるため、補修により劣化の進行を遅らせる、または、修繕工事を前倒しして実施するなど、予防保全型の管理に転換し、修繕時期の平準化を図っていきます。   (5)歩道部の舗装  主要な区道には、歩道が設置されている道路も多く含まれています。歩道部の舗装については、沿道の建築工事や占用工事等に伴い舗装が更新されることも多いため、区の工事による舗装更新は50年サイクルで実施することとし、年間0.7万uの舗装を更新することを目標とします。 (6)更新費用  車道部、歩道部をあわせた主要な区道の更新費用は、50年間で555億円、年平均11.1億円(車道部7.7万u、8.9億円、歩道部0.7万u、2.2億円)となります。  従来の管理手法と半永久舗装による管理手法による費用を比較すると、50年間総額470億円が削減可能になります。  一順目の修繕には半永久舗装化する修繕が含まれるため費用がかさみ、修繕できる面積は少なくなりますが、二順目以降は表層のみを修繕するため費用を低く抑えることができます。  また、MCIが5.0の段階で修繕することにより、主要な区道の平均MCIは概ね6.0程度で維持できます。 4. 計画期間の取組み(2018年度〔平成30年度〕〜2027年度〔平成39年度〕)  計画期間内の修繕箇所と更新量を、前期後期に分けて示します。原則として、劣化の進行している路線から順次修繕を行うこととします。  半永久舗装化する路線約20kmについては、計画策定後概ね15年間で、全路線で半永久舗装化を完了することを目標とし優先的に取組みます。  なお、半永久舗装化の工事は、舗装構造を強化する必要があり、表層のみの更新工事と比べ費用が高くなるため、計画期間内の車道部修繕面積は長期の取組みとして示した数値(7.7万u/年)を下回ります。     ・1年当りの計画目標   車道部  半永久舗装未対応(要舗装構造強化)1.1万u 5.0億円        半永久舗装対応済         3.7万u 3.9億円   車道部計                  4.8万u 8.9億円   歩道部                   0.7万u 2.2億円  ・各年度の計画目標 2018年度 (平成30年度)・・・3.7万u 2019年度(平成31年度)・・・目標5.5万uに向けて徐々に増加 2020年度(平成32年度)・・・目標5.5万uに向けて徐々に増加 2021年度(平成33年度)・・・目標5.5万uに向けて徐々に増加 2022〜2027年度(平成34〜39年度)・・・毎年5.5万u X その他区道の舗装更新計画     1. 管理基準の設定  その他区道は大型車交通が極めて少なく、わだち掘れ、平坦性の影響は少ないため、ひび割れ率を管理指標とします。  ひび割れ率25%以上の劣化が進行すると、表層がはがれてポットホールが発生しやすくなり、安全性が損なわれる状態になります。このような状況に至らないよう、修繕の目安となる管理基準をひび割れ率20%に設定します。なお、路面劣化調査の結果より、その他区道では、舗装更新後、概ね45年でひび割れ率20%に達すると予測されます。   2. 長期シミュレーションによる課題  現状の予算規模により舗装を更新していくと、50年後にはその他区道の約6割の面積がひび割れ率25%以上になると予測されます。  その他区道の舗装更新を45年間で一巡させるためには、年平均10.8万uの工事を実施する必要があり、27.1億円の費用がかかります。これは、現状予算額の約4倍の規模になります。 3. 計画期間の取組み(2018年度〔平成30年度〕〜2027年度〔平成39年度〕)  計画期間内の修繕箇所と更新量を、前期後期に分けて示します。原則として、劣化の進行している路線から順次修繕を行うこととします。  近年、区内では、ライフラインの耐震化、老朽化対策等の占用工事が多く実施されており、ひび割れ率20%以上のその他区道では、占用工事による復旧で年平均7.6万uの舗装が更新されています。長期シミュレーションの結果より、その他区道では年10.8万uの舗装を更新する必要がありますが、占用工事の状況から、計画期間内では年3.2万uの舗装を更新することとします。 ・1年当りの計画目標   計画目標:3.2万u/年、費用:8.1億円/年 ・各年度の計画目標 2018年度 (平成30年度)・・・ 2.2万u 2019年度 (平成31年度)・・・目標3.2万uに向けて徐々に増加 2020年度(平成32年度)・・・目標3.2万uに向けて徐々に増加 2021年度(平成33年度) ・・・目標3.2万uに向けて徐々に増加 2022〜2027年度(平成34〜39年度) ・・・ 毎年3.2万u ・世田谷区舗装更新計画(2018年度〜2027年度)〔平成30年度〜平成39年度〕  凡例:2018〜2022年度(平成30〜34年度)主要な区道工事予定【20.5万u、約20km】、その他区道工事予定【13.5万u、約26km】     2023〜2027年度(平成35〜39年度)主要な区道工事予定【27.5万u、約27km】、その他区道工事予定【27.5万u、約27km】  ※(1)本図は、世田谷区が管理する道路について、舗装の修繕の予定を示しています。    修繕の実施は、占用工事、その他関連する工事等と調整した上で確定します。計画に示した箇所の他、想定よりも損傷の進行が早い等、早期の更新が必要と判断された箇所では、修繕を実施します。維持工事は本図に含みません。  ※(2)本図で示した道路工事の予定は、5年毎に更新を行うものとします。  ※(3)社会情勢や経済状況等により、計画の内容に変更が生じることがあります。 Y 計画の実現に向けて               1. メンテナンスサイクルの構築  計画的かつ効率的な舗装更新を進めるためには、点検、診断、措置、記録という流れのメンテナンスサイクルを確立し、継続的に回していく必要があります。  区では、舗装に関するメンテナンスサイクルの各構成内容を下表の通り定め、必要な環境、体勢を整え、確実に実行していきます。  ・主要な区道  点検:路面性状調査 当面5年毎に実施(点検項目:ひび割れ、わだち掘れ、平坦性)、日常点検〈パトロール〉 随時実施  診断:指標:MCI、MCI>5.0損傷レベルT、5.0≧MCI>4.0損傷レベルU、4.0≧MCI損傷レベルV  措置:修繕実施基準:損傷レベルU(MCI5.0以下)※実施前に半永久舗装の対応状況を確認。対応している場合→表層改良(切削OL)、未対応の場合→打換え等により、舗装構造を強化。     損傷が小規模な場合は補修を実施ひび割れ→シール材注入、わだち掘れ→パッチング等  記録:舗装管理台帳の整備、点検・診断・措置の記録、点検結果の記録(劣化調査、性状調査、陳情、苦情通報など)、診断結果の記録、措置内容の記録(補修工事、修繕工事)、その他の情報の記録(占用工事、舗装構成、CBR、交通量など)  ・その他区道  点検:路面劣化調査。当面5年毎に実施(点検項目:ひび割れ)、日常点検〈パトロール〉 随時実施  診断:指標:ひび割れ率(C)%、 C < 12.5%損傷レベルT、12.5%≦C<25.0%損傷レベルU、25.0%≦C損傷レベルV  措置:修繕実施基準:損傷レベルU (ひび割れ率20%以上)⇒ 損傷レベルV発生の抑制。舗装厚が不足している、または透水性舗装に変更する場合→打換え、上記以外→表基層打換え     損傷が小規模な場合は補修を実施。ひび割れ→シール材注入、わだち掘れ→パッチング等  記録:点検・診断・措置の記録、点検結果の記録(劣化調査、性状調査、陳情、苦情通報など)、診断結果の記録、措置内容の記録(補修工事、修繕工事)、その他の情報の記録(占用工事、舗装構成、CBR、交通量など)   2. 計画の見直し  舗装更新計画に基づき、計画的かつ効率的な取組みを継続していくためには、計画に定められている内容が、状況の変化に対応しているなど、実態に即していることが重要です。  社会経済の動向によって、自動車交通量の増減等、道路の利用状況が変化し、舗装の劣化損傷の進行に影響を与える可能性があります。また、予防保全型の管理への移行、長寿命化の推進などは、本計画の策定後に初めて本格的に着手するものであり、実際に業務を進める中で、計画策定時には想定できない問題が生じることも起こり得ます。  このため、本計画は実効性を保つよう、定期点検の結果に加え、メンテナンスサイクルを回す過程で生じた新たな課題などを踏まえ、概ね5年毎に見直しを行うこととします。 3. 更なる効率化の取組み  区では、インフラ老朽化対策以外にも、地震や水害などの災害対策、電線類地中化、自転車通行空間の整備、バリアフリー化など、諸課題に対応する様々な整備事業に取組んでいかなければなりません。  限られた財源、執行体制の下で、多くの事業を進めるためには、執行方法の見直しなど様々な工夫を凝らし、継続的に効率性を高めていく必要があります。  舗装更新に関しては、次のような取組みにより、更なる効率化を進めていきます。 (1)その他区道における適切な舗装構造の検討  生活道路が中心のその他区道は、大型車の通行がほとんど発生しないため、一般に舗装の劣化損傷の進行は緩やかで、主要な区道と比べ簡易な舗装構造となっています。  各路線の舗装構造は経験則で設定されていますが、一部では、修繕後に短期間で劣化損傷が進んでしまう路線や、交通量に対して過剰な構造の路線も存在しています。  その他区道の舗装について、利用状況などを反映した適切な舗装構造を設定し、長寿命化等によるライフサイクルコストの縮減を進めていきます。 (2)占用工事との連携強化  道路はライフラインの収容空間としての機能もあり、区道の殆どの路線には上下水道、都市ガスなどの管路が埋設されています。  これらの管路の工事では、舗装が掘り返され、管路を敷設した後、舗装が復旧されますが、部分的な復旧の場合、舗装の一体性が失われ、舗装の継ぎ目からひび割れが広がるなど損傷が進行してしまうこともあります。  一方で、毎年多くの占用工事が行われていることから、占用工事による舗装の復旧は区道の舗装更新に貢献している一面もあります。復旧工事の際に占用企業と区が調整し、復旧範囲の内外を同時期に施工することによって、舗装の一体性は失われずに、効率的に舗装を更新することが可能となります。  区では施工予定の工事箇所を積極的に公表し、占用企業との工事調整を密に行うなど、占用工事との連携を強化することで、舗装の早期劣化を抑制し、あわせて舗装更新の効率化を図ります。 (3)工事発注方法等の工夫  公共工事は、年度単位の予算で執行されることが多く、第1四半期の発注量が少なく、下半期に集中する傾向があります。  複数年度に渡る工事の発注、柔軟な工期の設定等により、年間における工事の施工時期の偏りを無くすことで、人材・資材の効率的な活用が促進されるなど、建設産業全体の生産性が向上すると考えられます。  特に道路工事は件数が多いため、このような発注方法の工夫による効果が大きく、さらに、柔軟な工期の設定により、関連する占用工事とのスケジュール調整が行いやすくなるなどの効果も期待されます。  区では、発注方法等の工夫に取組み、舗装更新の更なる効率化を進めていきます。   (4)新工法・新技術の活用  インフラ老朽化対策は大きな社会問題となっており、舗装の維持更新に関しても、省力化、高度化等を目的とした開発、研究が盛んに行われています。  区では、このような動きを注視し、区道の舗装の管理について、ICTを活用した点検や高耐久性のアスファルト混合物による舗装など、新工法、新技術を積極的に活用し、より効率的な舗装更新を進めていきます。 付録 用語の定義  本書で用いる用語は、以下のように定義する。 1)劣化  道路の長期供用に伴い、性能・品質等が低下して以前より劣ってくること。  主な劣化原因の一つは、紫外線や風雨等であり、アスファルトが硬化・収縮し、舗装表面にひび割れが発生する。 2)損傷  ひび割れ、わだち掘れ、平坦性の低下、ポットホール、段差、剥離等が発生し、路面の状態が悪化すること。アスファルト舗装の損傷は、材料や設計・施工に起因するもの、舗装構造に起因するもの、長期供用に伴う疲労に起因するものなどがあり、それらの要因が相互に影響していることが多い。 3)メンテナンスサイクル 予防保全型の維持管理を行うための考え方で、点検⇒診断⇒措置⇒記録⇒次の点検⇒...という流れの業務サイクル。 4)点検 舗装の状態を把握する行為。機械を用いてひび割れ率、わだち掘れ量、平坦性などの項目を定量的に測定する定期点検とパトロールにより異常箇所を発見する日常点検がある。 5)管理基準 舗装の修繕を実施する目安。道路の役割や性格を踏まえ、道路管理者が設定する。 6)診断 点検から得られた情報により、舗装の健全性を管理基準に照らして判定すること。 7)措置 診断結果に基づいて行う補修や修繕。設定した管理基準を満足させる、あるいは満足し続けることを目的とする。 8)修繕 管理基準を超過した段階、あるいは、早期に超過する見込みとなった段階で、建設時の性能程度に舗装の機能を回復させる措置。主な修繕工法には、切削オーバーレイや打換えなどがある。 9)補修 管理基準未満の段階で舗装の機能を維持するために行う部分的な措置。主な補修工法には、ひび割れ箇所へのシール材注入、わだち掘れのこぶとり、段差解消のためのパッチングなどがある。 10)ライフサイクルコスト 設計、建設、供用後のメンテナンスから再建設まで、一定期間における舗装の維持、更新、管理に必要な全てのコストの合計 詳細な内容については以下の担当部署へご連絡ください。 土木部土木計画調整課 電話 03-6432-7955 ファクシミリ 03-6432-7993