せたがや道づくりプラン(道路整備方針)平成28年3月見直し版 「せたがや道づくりプラン」の策定にあたって 平成23年3月11日の東日本大震災をきっかけとして、災害に強い復元力をもつまちづくりに対する関心は更に高まり、区民生活に最も身近な自治体である区に寄せられる期待は増大しています。「区民の生命と財産を守る」ことは区の責務であり、区は、今後発生が予測されている首都直下地震などの大規模な災害に備えるため、防災・減災を基軸に区政全般の見直しを行ってきました。 道路は区民の日常生活を支える最も重要な都市基盤の一つであり、災害時においても延焼遮断帯として、また、避難路や救助活動のためのスペースなどとして、その役割は多岐にわたります。戦後の急速な都市化や宅地化によって、区内には、道路の整備が不十分な地域があり、防災対策という観点からも大きな課題となっています。 「せたがや道づくりプラン」は、平成26年度からの10年間に区が取り組む道路整備の方向性を示すものです。緊急物資の輸送路となり、延焼遮断帯としての機能も持つ都市計画道路網の整備や、震災時に大きな被害の発生が危惧される住宅密集地域の道路整備を重点化するなど、防災・減災の考え方を強く意識し、災害に強く安全な都市を目指した内容としています。 区では、昨年9月に策定された「基本構想」や、区の街づくりに関する総合的な方針である「都市整備の基本方針」に掲げる都市像の実現に向けて、区民の皆様のご理解とご協力のもと、本プランに基づいて計画的な道路の整備を進めてまいります。 本プランの策定にあたり、アンケート調査やパブリックコメントを通じて貴重なご意見をいただきました。人にやさしい都市基盤の整備を、これからも目指してまいります。ご意見をいただいた皆様に、心より感謝を申しあげます。 平成26年3月 世田谷区長 保坂展人 目次 第1章 プランの概要 1-1 策定の背景 1-2 位置付け 1-3 内容と計画期間 第2章 現状と課題 2-1 道路整備の現状 2-2 道路整備の取り組みと課題 2-3 道路整備に関係する防災上の課題 2-4 道路整備を取り巻く社会の動向 第3章 道路整備の基本方針 3-1 将来の道路網計画 3-2 将来道路網計画の実現に向けて 第4章 道路整備の目標 4-1 目的 4-2 道づくりの方向性 4-3 重点化すべき事項 第5章 事業化プログラム 5-1 策定の背景 5-2 プログラムの考え方 5-3 優先整備路線 5-4 交差点改良 5-5 東京における都市計画道路の整備方針(仮称)への反映 5-6 地先道路の整備 5-7 道づくりの推進に向けた取り組みの検討 平成28年3月見直しの内容 第1章 プランの概要 1-1 策定の背景 世田谷区内には、計画的な基盤整備が行われないまま市街化が進行した地域が多く、全体的に道路の整備水準が低いことから、その改善に向けて、平成2年には「道路整備方針」、平成8年には「地先道路整備方針」を定め、以降は2つの方針に基づき計画的な道づくりを進めてきました。 およそ四半世紀に渡る取り組みによって、新たに道路が完成し安全性や利便性が向上した地域もありますが、その効果は限定されており、いまだに、交通渋滞の発生、通り抜け車両による住環境の悪化など、道路ネットワークの整備が遅れていることが原因でさまざまな問題が生じています。 さらに近年では、首都直下地震等に備えた防災・減災対策の推進、高齢社会の進行、街づくりとの連携など、今後の社会変化に対応していくための道路網整備の必要性がますます高まってきています。 「せたがや道づくりプラン」は、「道路整備方針」及び「地先道路整備方針」の上位方針である「都市整備の基本方針」の改定、並びに区政の総合計画である「基本構想・基本計画」の策定とあわせて、道路整備に関する2つの方針を全面的に改定、統合し、道路の新設・拡幅整備に関する総合的な方針として策定するものです。 今後、区では、本プランに従って計画的な道づくりを進め、将来道路網の実現を目指していきます。 1-2 位置付け 「道づくりプラン」は、世田谷区街づくり条例第10条に規定する「都市整備方針」の分野別方針の一つとして策定するものです。 「都市整備方針」は、区政の公共的な指針である「基本構想」が示す将来像を実現するためのものであり、「道づくりプラン」は、「都市整備方針」に定める街づくりに関する目標を実現するうえで、必要となる道路整備に関する取り組みを示すために策定します。 1-3 内容と計画期間 1-3-1 地先道路整備方針との統合 これまで道路整備に関する分野別の方針は、地区幹線道路(都市計画道路補助線街路)と主要生活道路を対象とした「道路整備方針」と、地先道路を対象とした「地先道路整備方針」の2つに分けて定めていました。 「地先道路整備方針」については、平成8年に策定の後、17年が経過し、その間に動きのあった街づくりとの整合が求められており、また、防災・減災対策を重点化するという流れの中で、円滑な避難経路や防災拠点施設へのアクセス路の確保などの課題に対して、骨格的な道路から地先道路に至るまで総合的な道路網を検討する必要性が生じています。このため、「道づくりプラン」は、これまでの「道路整備方針」と「地先道路整備方針」を統合した道路整備に関する総合的な方針として定めることとしました。 1-3-2 プランの内容 「道づくりプラン」には、「道路整備の基本方針」、「道路整備の目標」及び「道路の事業化に関する計画(事業化プログラム)」を定めることとします。 道路整備の基本方針 長期的な視点で必要と考えられる道路の配置計画(道路網計画)と、その計画を実現するための考え方を定めたものです。 道路整備の目標 計画期間内における道づくりの目標として、上位計画が掲げる将来像の実現に向けて取り組むべき道づくりの方向性と、喫緊の課題解決などのために特に重点化すべき事項を定めたものです。 道路の事業化に関する計画(事業化プログラム) 世田谷区が主体となり新設または拡幅整備を行う地区幹線道路、主要生活道路、地先道路及び交通広場を対象に、緊急性が高く早期に整備すべき路線や区域、事業の方法などを、道路整備の目標に基づき具体的に定めたものです。 1-3-3 計画期間 事業化プログラムの計画期間は、平成26年度から平成35年度の10年間とします。 1-3-4 プログラムの見直しについて 事業化プログラムは、平成27年度末に予定されている「東京における都市計画道路の整備方針(仮称)」の策定にともない必要な変更を行うほか、関連する上位計画の変更、街づくりの動向の変化などに応じて見直しを行うものとします。(46ページ参照) 第2章 現状と課題 2-1 道路整備の現状 2-1-1 区の道路整備の現状 世田谷区では、区画整理事業などによる計画的な基盤整備が行われないまま市街化された地域が多いため、全体的に道路整備の水準が低く、道路率(14.1%)や平均幅員(6.9メートル)は、区部全体の平均(道路率16.4%、幅員8.6メートル)を下回っています。 区内の各地域では、市街化が遅れて始まった区の西部の砧地域や北西部の烏山地域は道路率が低く、また、古くから市街化が進んだ区の東部では狭小な道路が多いという特徴があります。また、耕地整理などの基盤整備事業が広範囲に行われた玉川地域は、道路率が高く、幅員6メートル以上の道路が多く配置されています。 2-1-2 都市計画道路、主要生活道路の整備状況 昭和39年に開催された東京オリンピックを契機として、環七通り、環八通り、甲州街道、玉川通りなどの幹線道路の整備が始まり、現在では約9割が完成していますが、これらを補完する地区幹線道路(都市計画道路補助線街路)及び主要生活道路の整備率はいずれも4割弱にとどまっています。 世田谷地域、玉川地域と比べて、世田谷区の北部や西部に位置する、北沢地域、砧地域、烏山地域の整備率が低く、地域によって偏りがあります。また、東西方向に比べて南北方向の整備が遅れています。 戦災復興の事業などにより基盤整備が進んだ都心部の区や東部に位置する区と比べて、西部に位置する世田谷区の都市計画道路の整備率は低い状況になっています。 2-1-3 地先道路の整備状況 消防活動困難区域を解消するために必要とされる地先道路の配置計画(幅員6から8メートル以上の地先道路を250メートル間隔で配置する)を満足しない地域が、世田谷区の北部、西部を中心に存在しています。 2-1-4 区民の日常生活への影響 道路のネットワークが不完全であること、狭い道路が多いことなどにより、区民の日常の生活にさまざまな問題が生じています。 公共交通機関の利用が不便な地域の存在 都市計画道路や主要生活道路の整備水準が低い世田谷区の西部地域を中心として、バス路線網などの公共交通機関の利便性が低い地域が広がっています。 歩行者や自転車交通の安全性の低下 幅員が狭く歩道が整備されていない道路にも多くの自動車が通行する箇所もあり、歩行者や自転車利用者の安全性向上について、区民の方々から多くの要望が寄せられています。 毎年実施されている区民意識調査でも、「道路が狭くて危険」、「車など交通が激しい」といった項目が、地域における日常生活での困りごととして上位に挙げられ、道路整備が不十分であることから生じる影響を多くの区民が問題視しています。 住宅地の生活道路への通過交通の流入 交通処理に必要な道路網が整っていないことから、本来大量の交通を処理することを目的としていない生活道路へ通過交通が流入し、住宅地や商店街では、歩行者や自転車の安全性の低下、環境悪化などの問題が発生しています。 2-2 道路整備の取り組みと課題 2-2-1 取り組みの成果 世田谷区では、平成12年度に改定した第2期道路整備方針に基づく取り組みにより、平成12から23年度の期間に、地区幹線道路及び主要生活道路をあわせて約4.7キロメートル供用開始し、新たに約5.8キロメートルの区間で事業に着手しました。 都市計画道路全体としては東京都事業、再開発、区画整理事業等による整備を含め約9.3キロメートルを供用開始し、平成12から23年度の期間で整備率は約6ポイント増加しています。 また、地先道路は、平成8年に地先道路整備方針を策定し、地域特性に応じた整備を進めてきています。平成12から23年度の期間で、約7,600uの地先道路用地を取得しました。 第2期道路整備方針の計画期間では、補助事業の活用による財源の確保とともに、道路事業の事業期間の短縮や、用地の取得が困難な物件のある路線の事業の収束を目的とした新たな事業手法の導入を検討し、都市再生機構(UR)の直接施行による補助209号線の整備、主要106号線(恵泉裏通り)や補助217号線における土地収用法の適用、補助154号線における小規模な区画整理事業の実施など、それぞれの路線の実情に応じた手法により事業を展開してきました。 第1期道路整備方針と比較すると、第2期道路整備方針の期間における年平均事業費は半分以上減少していますが、事業費に占める補助金や交付金などの割合は、8%から30%に増加しています。 2-2-2 取り組みの課題 第2期道路整備方針で新規に事業着手を目指した優先整備路線のうち、実際に計画期間内に着手した路線は約半分ほどであり、平成12年の策定以前から事業を進めていた路線のおよそ3割は、現在も事業を継続しています。また、現在事業中の路線には、多くの未取得用地(約23,000u 平成25年度末見込み)が残されています。 事業が長期化している原因として、財政的な理由以外に、共同住宅、テナントビルといった権利関係が複雑で用地取得が困難である物件が増加していることなどが挙げられます。 財政面に関しては、第1期道路整備方針を策定した当時から現在にかけて、行政需要が多様化し、保育サービス等の子ども関連経費や介護保険サービス等の高齢者関連経費、生活保護費などの扶助費が増大する一方で、土木関係の予算は削減傾向にあります。 近年、世田谷区の道路整備の予算である道路橋梁費は減少傾向が続いています。一般会計における割合でみると、平成3年度には約17%であったのが、平成23年度では約4%に減少してきています。 今後の道路整備においては、安定した財源の確保に加えて、事業期間の短縮、事業費の削減、事業効果の早期発現などを目指し、これまで以上に効率的な事業を展開していく必要があります。 2-3 道路整備に関係する防災上の課題 2-3-1 延焼遮断帯の形成 平成24年4月に東京都が発表した首都直下地震の被害想定では、建物の倒壊によるもののほか、地震による火災によって多くの方が亡くなるという予測が示されており、世田谷区の防災対策でも地震にともなう市街地大火のリスクを減らすことが重要となります。 阪神・淡路大震災の事例では、火災が多数同時に発生し、消火活動が追いつかず、地震にともなう断水や防火水槽につながる道路が建物の倒壊によって塞がれたことなどで、消防水利を確保できない事態が発生しました。その一方で、幅員が12メートル以上の道路によって延焼が食い止められたことも確認されています。道路閉塞などによって初期消火が行えないことも想定すると、地震による火災の燃え広がりを防ぐ空間となる、一定幅員以上の道路の整備が防災上効果的であるといえます。 平成22年1月に都が改定した「防災都市づくり推進計画」では、地震にともなう市街地火災の延焼を阻止する機能を果たす都市計画道路、河川、鉄道、公園などの都市施設及びこれらと隣接する耐火建築物から構成される不燃空間を「延焼遮断帯」として、その重要度から「骨格防災軸」、「主要延焼遮断帯」、「一般延焼遮断帯」の3つに区分して位置付けています。 区で延焼遮断帯となる都市計画道路の整備状況は、骨格防災軸となる放射線、環状線などはほぼ完成していますが、主要延焼遮断帯や一般延焼遮断帯となる地区幹線道路の整備が遅れています。被害想定で予測されている市街地大火のリスクを低減するためには、残されている未整備区間の早期整備が必要です。 2-3-2 緊急輸送道路ネットワークの充実 防災・減災の取り組みでは、被害のリスクを減らすことに加えて、被害を受けた際にどのように街を復旧・復興していくのかを考える必要があります。 東京都では、震災時の避難、救急救命活動、緊急物資の輸送や復旧・復興に利用される動脈として重要な役割を担う道路を、緊急輸送道路として指定しています。また、世田谷区では都の指定する路線のほか、広域避難場所に接続する応急対策活動のための路線や、主要公共施設 (病院、 防災倉庫、 土木資材倉庫等)、 給水所、 警察署及び消防署等を結ぶ路線などを、緊急啓開(道路障害物除去)路線として定めています。 区内の緊急輸送道路ネットワークは、国道・高速道路を含め、総延長で約127キロメートルありますが、その中には幅員6メートル未満の道路も含まれており、火災や建物の倒壊などによって閉塞されてしまう可能性があります。 被災後の速やかな復旧復興のために、道路拡幅または機能を代替する道路の整備によって、信頼性の高い緊急輸送道路ネットワークを構築することが必要となります。 2-3-3 避難所など目的地までの複数経路の確保 大規模な震災時への対策として、道路ネットワークを充実し消防・救援・救護活動や避難のための経路を多重化することも重要となります。 世田谷区内には、広域避難場所をはじめ、避難所となる学校、行政機関、給水施設、医療機関といった、防災拠点となる施設が点在しています。これらの施設には、狭あいな道路に面しているものや、主要な道路からの経路が一路線しかないようなものも多く、火災や建物の倒壊などによって、道路が不通になった場合に地域が孤立してしまうなど、重大な影響を及ぼす恐れがあります。 災害時に防災拠点が十分な機能を発揮するためには、目的地まで複数の経路が確保できるような道路ネットワークの整備が不可欠です。 2-3-4 避難困難区域の解消 狭い幅員の道路や行き止まりの箇所が多い地域では、地震発生時に円滑な避難ができなくなることが懸念されます。阪神・淡路大震災の際にも、建物・塀の倒壊や火災により、避難に支障が生じたことが報告されています。 ネットワーク化された幅員6メートル以上の道路に約100メートル圏内で到達できないなど、近距離避難が困難とされる区域は、区内全域に存在しており、避難路となる道路のネットワークの構築や行き止まり道路の解消、二方向避難路の確保など、災害時の避難路の確保に向けた整備が必要です。 2-3-5 消防活動困難区域の解消 震災時に消防活動が可能とされる区域は、震災時有効水利(消防車が震災時に利用できる消火栓、防火水槽など)から半径280メートルとされ、また、建物などの倒壊があっても消防車が通行し円滑な消火活動を行うには、幅員6メートル以上の道路が必要とされています。 しかし、世田谷区内の道路はおよそ6割が幅員6メートル未満の道路であり、災害時に消防車などの緊急車両が火災発生場所へ容易に近づくことができない地域も存在します。 災害時の火災に対して円滑な消火活動を行うため、適切な配置計画に基づき幅員6メートル以上の道路網を整備することが必要です。 2-4 道路整備を取り巻く社会の動向 2-4-1 将来人口の推移と高齢化の進行 平成25年9月に実施された世田谷区の将来人口の推計(速報版)によると、区の人口は引き続き増加する傾向です。また、高齢化の伸びは著しく、総人口が減少した後も増加が続き、平成50年には区民の4人に1人が高齢者(65歳以上)になることが見込まれています。 これまで、区では人口が増加の傾向にあったにも関わらず、自動車の保有台数は減少してきました。その一方で、今後20年間で、高齢化の進行により余暇時間が増え、自動車、自転車、徒歩によるレジャーなどの私事目的の移動が増加することが予測されています。(平成24年1月 東京都市圏交通計画協議会 パーソントリップ調査からみた東京都市圏の都市交通に関する課題と対応の方針) また、近年、ライフスタイルの多様化などにともなって、宅配便や食材・惣菜の宅配など、さまざまな形態の配送サービスが提供されており、宅配便の取扱個数が平成2年からおよそ3倍になるなど、小口貨物の物流量が著しく増加しています。 今後、高齢化の進行にともない、宅配のトラックなどによる配送サービスの需要は、より一層拡大していくと考えられます。 2-4-2 地球環境問題への意識の高まり 温室効果ガスである二酸化炭素は、世田谷区内では運輸部門から排出されるものがおよそ4分の1を占め、そのほとんどが自動車によるものです。 自動車からの二酸化炭素の排出量は、走行速度が低いほど多い傾向があります。そのため、交通渋滞の原因となっている交差点の改良、集中する交通を分散するための道路ネットワークの形成など、自動車交通を円滑化する取り組みが二酸化炭素排出量の削減に効果的です。 2-4-3 区内各地で進む街づくりの動き 現在世田谷区内では、東京外かく環状道路や京王線連続立体交差事業が本格的な整備に向けて動き出しています。また、大規模な団地の多くが建替えの時期を迎えており、今後次々と建て替えが進められていく予定です。 これらの施設の近くにある都市計画道路や主要生活道路は、大きな街づくりの動きとあわせて整備することにより、お互いの事業効果を相乗的に高められると考えられます。 第3章 道路整備の基本方針 3-1 将来の道路網計画 3-1-1 道路の機能 都市における道路は、人や自動車が移動するためだけでなく、街並みの形成、ライフライン施設の収容、消防活動の空間、イベントや交流の場などの多様な機能を有しており、子供から高齢者、障害者などさまざまな人が利用する最も基本的な社会基盤となるものです。 これらの多様な機能を効果的に発現させるためには、規格の異なる道路を適切に組みあわせて配置することが必要となります。 世田谷区では、求められる機能に応じて、道路を幹線道路、地区幹線道路、主要生活道路、地先道路に分類し、適切な密度で配置することで、あらゆる区民の生活を支える機能的な道路網の形成を目指します。 3-1-2 道路の分類 道づくりプランでは、道路を機能に応じて次のとおり分類します。 幹線道路 歩道と車道を分離した片側2車線以上の相互通行の道路であり、幅員は22メートル以上です。主に長距離の移動に使われることを目的とし、大量の自動車交通を処理する役割を担います。代表的な路線として、環七通り、環八通り、玉川通りなどがあります。 地区幹線道路 歩道と車道を分離した片側1車線以上の相互通行の道路であり、幅員は15メートル以上です。主に中距離の移動に使われることを目的とし、地域のバス交通や隣接する区や市を結ぶ役割を担います。代表的な路線として、世田谷通り、駒沢通り、淡島通りなどがあります。 主要生活道路 歩道と車道を分離した道路とし、整備形態は地域の実情にあわせて行います。幅員は10から13メートルです。※1幹線道路と地区幹線道路で囲まれたエリアの交通を処理する役割を担います。なお、自転車走行環境の整備が必要な場合は、幅員13メートルを標準とします。代表的な路線として、赤堤通り、城山通り、梅丘通りなどがあります。 6メートル以上の地先道路 歩行者の安全性を高め、消防車両の通行や消火活動が可能な道路で、幅員は6から8メートル程度です。各宅地から主要生活道路や地区幹線道路までを結ぶ道路であり、日常生活の中で利用する最も基本となる道路です。なお、地先道路には幅員6メートル未満の道路も含まれますが、計画的な整備を行う地先道路として、本プランでは幅員6メートル以上の道路を対象とします。幅員が4メートル未満の道路は、狭あい道路整備事業により幅員4メートルに拡幅します。  その他道路の分類には、鉄道とバスの乗り継ぎなど交通を結節する駅前交通広場や、自転車と歩行者のみが利用できる自転車歩行者専用道路があります。 3-1-3 将来道路網計画 23区一体で計画された都市計画道路は、都心部から放射状に計画されており、区部の西端に位置する世田谷区では配置間隔が広くなるため、都市計画道路である幹線道路と地区幹線道路で形成する区域が都心部と比較して大きくなる特徴があります。 これら都市計画道路で囲まれる区域内の交通を集散させ、ミニ防災生活圏を形成する延焼遅延帯を整備するため、その区域内に主要生活道路を配置します。さらに、都市計画道路と主要生活道路で囲まれた区域内の消防活動困難区域の解消などを目的とし、地先道路を配置します。幹線道路、地区幹線道路、主要生活道路、地先道路が各々の機能を十分発揮するよう、適切に組みあわせた段階的な道路網を構成します。 なお、将来道路網計画は、平成16年の道路整備方針中間見直しにおける「今後検討を行う路線」の検討結果を反映しています。 幹線道路・地区幹線道路(都市計画道路) 都心部を中心にして放射状に配置され、周辺区である世田谷区の配置間隔は広く約1から1.5キロメートルです。路線の多くは延焼遮断帯に指定され、災害時には避難路・物資の輸送路などの多様な機能を担います。整備は東京都と区が分担して行います。 主要生活道路 幹線道路・地区幹線道路に囲まれた区域内の交通の処理、バス交通網の確保、ミニ防災生活圏の形成などの観点から、およそ500メートル間隔で配置します。幹線道路・地区幹線道路を補完する役割を担っており、整備は世田谷区が行います。 地先道路(幅員6メートル以上) 消防活動困難区域が生じないよう、おおむね250メートル以下の間隔で幅員6メートル以上の道路を配置します。また、地域の交通需要や土地利用の状況のほか、防災拠点へのアクセス性も考慮した配置とします。整備は世田谷区が行います。 これらの道路は、整備の際には歩行者や自転車の走行など、さまざまな利用者の安全性、快適性の確保を考慮し、道路構造を検討します。 ※都市計画道路補助第52号線の一部区間の廃止にともない、接続する主要生活道路の区間を変更しました。(46ページ参照) 平成16年の道路整備方針中間見直しにおいて「今後検討を行う路線」に位置づけた路線について 平成16年の道路整備方針中間見直しにおいて、「密集市街地内に位置し、主要生活道路の考え方に整理が必要な路線」「関係機関等との調整が必要な路線」に該当する下記の10路線を「今後検討を行う路線」とし、この間検討を進めてきました。 これらの路線の検討課題と今後の取り扱いは次のとおりです。 密集市街地内の主要生活道路 これまで、密集市街地内の主要生活道路は、計画の幅員を6から8メートルとしてきましたが、幅員6から8メートルの道路が主要生活道路の機能を担うことは困難であるため、これらの路線を主要生活道路と位置付けておくことが適当であるか検討を行いました。その結果、計画の幅員6から8メートルの主要生活道路は、主要生活道路として必要な機能を満たさないことからの位置付けを廃止し、策定済みの地区計画・地区街づくり計画において、地区施設や壁面の位置の制限により地先道路として整備を進めることとします。 主要生活道路127号線 太子堂四から五丁目 平成15年に西太子堂駅北側で火災が発生した際、狭あいな道路が多く、円滑な消火活動ができなかったことを受けて、地区の防災性向上に寄与するこの路線の早期整備を目的として、最適な計画線について検討しました。世田谷通りから西太子堂駅の間、太子堂八幡神社手前から淡島通りの間の2区間で既存ルートと代替ルートの比較検討を行い、既存の計画線の方が事業効果、実現性などの点で総合的に優位であったことから、既存の計画線位置で整備することとします。 主要生活道路335号線 砧四から六丁目 本路線は水道道路を主要生活道路に位置づけていますが、水道道路には水道本管の保護を目的とした走行車両の重量制限がされていることから、路線バスの運行を検討する際の制約となるなど、円滑な車両交通が阻害される可能性があるため、計画線について検討しました。その結果、他地区の事例の検証などから水道道路を拡幅し、バスの通行も可能であると考えられるため、この路線は既存の計画線位置で整備することとします。事業化に際しては、道路の機能・財産の管理形態などについて関係機関との調整を行います。 下本宿通り 北烏山二から七丁目 東八道路につながる下本宿通りは通過交通が多く、交通安全上の問題があることから、下本宿通りを新たに主要生活道路として位置付け、整備すべきかを検討しました。下本宿通り周辺では、東京都によって並行する都市計画道路放射5号線の事業が進められており、その完成により下本宿通りの交通環境が改善されることが想定されます。また、地先道路事業により一部歩道整備を行っている箇所もあり、一定の安全性向上が図られていることから、引き続き局所的な歩道整備など適切な安全対策を講じ、歩行者の安全性向上に取り組みます。 3-2 将来道路網計画の実現に向けて 3-2-1 計画実現への姿勢 道路網の計画は、長期的な視点で必要性を検証し、計画区域で一体的に一括して策定するもので、その計画量は大きなものとなり、全ての整備を完了するまでに相当の時間を必要とします。このため、世田谷区では計画的かつ継続的な道路整備の取り組みによって、東京都や周辺区市などの関係機関とも連携を図りながら将来道路網の実現を目指します。 3-2-2 道路網計画見直しの考え方 都市計画道路の計画は、23区を一つの計画単位として一体的に定められていることから、その見直しについても23区全体で検討すべきでものであるため、世田谷区単独で策定する道づくりプランでは都市計画道路の見直しは行わないこととしています。 なお、既存の都市計画道路は、平成16年に東京都と23区が合同で策定した「区部における都市計画道路の整備方針(第三次事業化計画)」において、都市機能の確保などの観点から必要性の検証がなされたものです。 また、都市計画道路の見直しは、都と区市町で定める「東京における都市計画道路の整備方針(仮称)」の策定作業において、再度必要性の検証が行われる予定です。主要生活道路の見直しについては、道路網の段階構成の観点から、上位となる都市計画道路の見直しの検証結果を踏まえて、必要に応じて検討を行います。(46ページ参照) 第4章 道路整備の目標 4-1 目的 世田谷区内の道路整備の遅れは、区民の日常生活にさまざまな影響を及ぼし、高齢社会への対応、地区の防災性の向上といった、将来への備えという点でも不安材料となっています。 このような多くの問題の解決には、第3章で示した将来道路網を実現する必要がありますが、現実には、未整備の路線が多く、投資できる財源も限られており、将来道路網の実現までには相当の期間を要することになります。このため、今後の道づくりには、対象となる多くの路線の中から、その時代の行政課題や区民ニーズを踏まえ、整備の優先性の高い路線を選定し、順次事業化を進めるという、効果的で効率的な取り組みが求められます。 道路整備の目標は、具体的な取り組みの検討にあたって、道づくりプランの計画期間内における道路整備のあり方を示したもので、基本構想や都市整備方針が掲げる将来像の実現に向けて進むべき「道づくりの方向性」と、早期に解決すべき課題への対応として「重点化すべき事項」を定めることとします。 4-2 道づくりの方向性 基本構想や都市整備方針が掲げる将来像の実現に向けて、進めるべき道づくりの方向性を示します。 4-2-1 防災・減災に寄与する道づくり 都市における道路は、避難路、延焼遮断帯、消防活動のためのスペース、緊急物資輸送路など、災害発生から復旧復興に至るあらゆる場面で多様な役割を担う大変重要な施設です。 災害に強く、復元力を持つまちの実現のため、ハード面での対策として、道路のもつ防災・減災機能を重視し、防災性向上に寄与する道づくりを推進していきます。 4-2-2 すべての人にやさしい道づくり 道路は、子供から高齢者、障害者などさまざまな人がいろいろな目的、手段で利用する施設です。 高齢者の移動手段となるシニアカーや車椅子の利用者にも配慮し、ユニバーサルデザインの視点を踏まえ、多様な利用者の意見も反映し、全ての歩行者にとって安全で楽しく歩ける道路整備を推進します。また、自転車走行環境に配慮した道路整備、公共交通不便地域の解消につながる道路整備など、さまざまな交通手段に対応する道づくりを進めていきます。 4-2-3 環境の向上に資する道づくり 世田谷区内の道路網を整え自動車交通を分散化、円滑化することで、住宅地内の通過交通を減らし住環境の改善を図るとともに、渋滞解消により排出ガスを削減します。また、道路内の緑化を充実し、連続したみどりの空間を創出するなど、環境の向上に資する道づくりを進めます。さらに維持管理性を考慮した設計、雨水浸透施設の設置、しゃ熱性舗装の施工、街路灯のLED化など環境を重視した道路の整備を行っていきます。 4-2-4 人が集い街のにぎわいを高める道づくり 人々が多く集まる駅周辺などでは、街のにぎわいを高め、人々がいきいきと交流するコミュニティの場とするため、オープンカフェの設置等も想定したゆとりある歩行者空間、広場を整備するとともに、これらの拠点間をつなぐ都市軸となる道づくりを進めていきます。 4-2-5 広域的な課題解決に資する道づくり 国や東京都、近隣自治体との協力、連携によって、世田谷区内だけでなく区周辺の道路整備を推進し、道路交通環境の改善、防災・減災対策の充実など、広域的な課題を解決するための道づくりを進めていきます。 4-3 重点化すべき事項 道づくりの方向性に加えて、道路整備に関する現状認識、課題分析などを考慮し、計画期間内において重点化すべき事項を定めます。 4-3-1 都市の骨格となる道路ネットワークの整備 甲州街道、玉川通り、環七通り、環八通りなど、都市計画決定されている世田谷区内の幹線道路網はおおむね整備が完了していますが、これらを補完する地区幹線道路網の整備は遅れており、計画延長約92キロメートルに対して整備率は約35%にとどまっています。 幹線道路に加えて地区幹線道路のネットワークを整備することで、スムーズな自動車交通の処理が可能となり、地先道路への通り抜け車両の流入抑制、渋滞の解消、二酸化炭素の排出削減などに大きな効果があります。 また、その多くは延焼遮断帯に指定されており、地震にともなう市街地火災の延焼を防止する機能に加えて、防災拠点を繋ぎ緊急物資の輸送路や避難路としての役割も担うなど、都市の防災性向上に大きく寄与するものです。 さらに、地区幹線道路にはバス交通の導入が可能であり、区内の北部や西部のエリアでは南北方向の路線整備によって公共交通不便地域を縮小することができます。高齢者の移動の円滑化、公共交通機関の利用促進など、福祉的な視点や環境問題への対応策としても有効な取り組みと考えられます。 以上のように地区幹線道路の整備効果は高く、多くの区民に便益が及ぶことから、都市の骨格となる地区幹線道路を中心とした道路網の早期形成を重点化します。 なお、地区幹線道路の整備は東京都と区で分担し行っていることから、区施行の事業を推進していくことと合わせて、都に対しては区内の地区幹線道路の整備促進を働きかけ、都が施行する道路整備とあわせた沿道の街づくりを進めるなど円滑な事業執行にも協力していきます。 4-3-2 防災対策に資する道路整備 世田谷区の東部、あるいは鉄道駅の周辺には、木造住宅が密集し震災時に大きな被害の発生が予測される地域があります。これらの地域では、外周の都市計画道路は整備が完了していても、内部の道路網は狭あいな道路により構成されており、消防車が進入できず消防活動に支障のある区域が存在し、また行き止まりの道路も多く、円滑な避難を行う上でも問題があります。 密集地域では以前より防災街づくりを進めてきたところもあり、建物の不燃化、耐震化、公園などの整備とあわせ、道路整備にも取り組んできていますが、権利関係が複雑で狭小な敷地も多いという地域の特性から、用地の取得に時間を要し事業が長期化しているケースも見受けられます。 切迫している首都直下地震等への対策として、震災時に大きな被害の発生が予測される地域の改善は、より一層のスピードが求められており、地域内での道路整備についても、新たな事業手法を導入するなどの工夫によって早期完成を目指していきます。 4-3-3 多様な利用者の安全性を高める道路整備 世田谷区が毎年実施している区民意識調査では、日常生活における困りごとの第1位は8年連続して「道路が狭くて危険」となっています。また、平成25年7月に実施した道路整備に関する区民アンケート調査で「道路整備に関係した日常生活への影響」の設問に対して、「歩行者などの安全性の確保」の項目が、現状に対する満足度が最も低く、今後の整備の重要度が最も高い結果となりました。 実際に区内には、適切な道路網が未整備なため、本来であれば通過交通の車両が入り込まないような幅員が狭い道路にも多くの自動車が通行せざるを得ない状況があり、その結果、区民生活に深刻な影響が及んでいます。 このような実態から、特に自動車交通量が多く歩道が未整備な箇所などを対象として、道路拡幅による歩道設置や代替機能を持つ道路ネットワークの整備による自動車交通の分散化など、歩行者や自転車利用者の安全性向上につながる道路整備を重点化します。 4-3-4 街づくりの動きに連携した道路整備 世田谷区内では、小田急線に引続き、京王線でも連続立体交差事業が動き出しています。また長年凍結されていた東京外かく環状道路も東名高速道路以北の区間で工事が始まり、区内には東名高速道路、中央自動車道とのジャンクションが建設されます。 これらの国や東京都が行う基盤整備事業の周辺地区では、事業を契機とした街づくりも検討されており、駅前広場やジャンクションの周辺道路等は、このような事業と連携して整備を展開していく事が、それぞれ個別に整備する場合よりも効率的で、相乗的な効果が得られると考えられます。 現在進行している基盤整備事業を契機として、周辺街づくりの中で必要とされる道路整備は機会を逃がすことなく進めていきます。 「せたがや道づくりプラン(道路整備方針)」の策定に向けた区民アンケート調査結果(抜粋) 目的 「せたがや道づくりプラン」に区民の意向や意見などを反映することを目的として実施。 調査の方法 満16歳以上の区民(外国人を除く)より4,000名を無作為に抽出。 回収結果 郵送による配布、回収。(調査期間 平成25年7月8日から7月20日まで) 有効配布数  3,976 件、総回収数 1,275 件、回収率 32%。 問 日常的に利用している道路、または、住まい周辺の道路の、使いやすさ、整備状況、交通環境などに関する現状の「満足度」と今後の「重要度」は? ・車の流れがスムーズで渋滞がないなど、移動の快適性【 交通渋滞などの解消】 (満足度)満足4%、やや満足9%、普通36%、やや不満35%、不満12%、不明・回答なし4% (重要度)重要40%、やや重要31%、どちらともいえない16%、あまり重要でない5%、重要でない2%、不明・回答なし6% ・バスなどの公共交通サービスの利用のしやすさ【公共交通サービスの利用しにくい地域の解消】 (満足度)満足11%、やや満足19%、普通37%、やや不満20%、不満9%、不明・回答なし4% (重要度)重要36%、やや重要32%、どちらともいえない19%、あまり重要でない5%、重要でない2%、不明・回答なし6% ・車道と歩道が分離されているなど、歩行者や自転車利用者の安全性【歩行者などの安全性の確保】 (満足度)満足3%、やや満足7%、普通19%、やや不満36%、不満32%、不明・回答なし3% (重要度)重要59%、やや重要25%、どちらともいえない8%、あまり重要でない1%、重要でない0%、不明・回答なし5% ・身近な生活道路への通り抜け車両がなく、交通騒音がないなど、良好な住環境の確保【住宅地などへの通り抜け車両の抑制】 (満足度)満足6%、やや満足14%、普通39%、やや不満25%、不満13%、不明・回答なし3% (重要度)重要37%、やや重要32%、どちらともいえない21%、あまり重要でない3%、重要でない1%、不明・回答なし6% ・行き止まりがなく、目的地まで複数の経路があるなどの目的地までの到達性【道路ネットワークの整備】 (満足度)満足6%、やや満足13%、普通47%、やや不満22%、不満9%、不明・回答なし3% (重要度)重要22%、やや重要31%、どちらともいえない32%、あまり重要でない7%、重要でない2%、不明・回答なし6% 問  世田谷区のこれからの道路整備について、課題ごとの区の考えについて、どう思うか?      ・超高齢社会へ対応した道路整備 【区の考え】安全で歩きやすい歩行者環境の創出やバスなどを利用しやすい道路ネットワークの充実が必要 共感できる59%、まあ共感できる30%、どちらともいえない6%、あまり共感できない2%、共感できない1%、不明・回答なし1% ・地球環境に配慮した道路整備 【区の考え】交差点改良による渋滞解消など、自動車の流れをスムーズにする取り組みが必要 共感できる57%、まあ共感できる30%、どちらともいえない7%、あまり共感できない3%、共感できない2%、不明・回答なし1% ・防災対策と道路整備 【区の考え】安全な避難路や火災の燃え広がりを防ぐ防災空間となるような道路の重点的な整備が必要 共感できる63%、まあ共感できる27%、どちらともいえない6%、あまり共感できない2%、共感できない1%、不明・回答なし2% ・大規模な街づくり事業と合わせた道路整備 【区の考え】街づくりの事業とあわせて、近くの道路や駅前広場を一体的に整備することが必要 共感できる53%、まあ共感できる28%、どちらともいえない11%、あまり共感できない3%、共感できない3%、不明・回答なし2% 第5章 事業化プログラム 5-1 策定の背景 世田谷区が道づくりで目指す最終的な目標は、第3章で示した将来道路網の実現です。しかし、区内にはまだ未着手の路線が多く、また道路の整備には非常に多くの時間を要することから、将来道路網の実現に向けて、今後も計画的かつ効率的な取り組みを継続して行っていく必要があります。 第4章では、道づくりプランの上位計画となる「基本構想」や「都市整備方針」で掲げられた将来都市像の実現及び現状で区が抱える道路に関する課題の解決に向けた道路整備の目標として、5つの道づくりの方向性と4つの重点化すべき事項を示しました。 この事業化プログラムでは、第4章で示した道路整備の目標に基づいて、道づくりプランの計画期間における道路の新設・拡幅整備について行う具体的な取り組みを示すこととします。 5-2 プログラムの考え方 事業化プログラムでは、未着手の都市計画道路や主要生活道路について、整備の優先性が高い路線を抽出し、道づくりプランの計画期間内で事業化を目指す路線を優先整備路線に位置付けます。 一方、優先整備路線以外の路線については、密集市街地の整備事業、区画整理や再開発事業、大規模な団地の建替えなど、面的または規模の大きい街づくりが進み、道路整備の機運が高まった場合に、必要な整備を検討することとします。 現在事業中の路線については、今後も円滑な事業執行に努め、早期の事業完了を目指していきます。 また、現在事業中路線の残事業量及びこれまでの用地取得の実績を踏まえて、道づくりプランの計画期間内において新規事業化が可能な事業規模(事業フレーム)を設定します。 5-2-1 都市計画道路 都市計画道路には、平成16年に東京都と特別区で策定した「区部における都市計画道路の整備方針」の第三次事業化計画において、平成27年度までに優先的に整備すべき路線として位置付けられている路線があります。 第三次事業化計画は、計画期間が平成27年度までとなっており、平成27年度末には「東京における都市計画道路の整備方針(仮称)」が策定され、次期事業化計画で新たに優先的に整備すべき路線が選定されることが見込まれます。 この次期事業化計画における優先的に整備すべき路線も、第三次事業化計画の優先的に整備すべき路線と同様に、都と区市町において整備の必要性や優先性を検証したうえで位置付けるものです。 道づくりプランでは、「区部における都市計画道路の整備方針」と「東京における都市計画道路の整備方針(仮称)」との整合を図り、それぞれの事業化計画で優先的に整備すべき路線とされる路線のうち、世田谷区が施行する路線を道づくりプランにおける「優先整備路線」として位置付けます。 各路線の整備の優先性は、第4章で示した道路整備の目標に、これまでの事業化に向けた取り組みの実績や事業の実現性といった観点も加えて検証します。検証の結果に基づいて、「東京における都市計画道路の整備方針(仮称)」の次期事業化計画で優先的な整備が望ましい路線や、第三次事業化計画の優先整備路線の中でも特に事業効果が高く早期の整備が望ましい路線を示します。(46ページ参照) 5-2-2 主要生活道路 第4章で示した道路整備の目標に加えて、これまでの事業化に向けた取り組みの実績や事業の実現性といった観点から、各路線について整備の優先性を検証します。 主要生活道路は、この検証の結果に基づいて、防災性の向上に資する路線や、これまですでに事業化に向けた取り組みを進めている路線などを、「優先整備路線」として位置付け、事業化を図っていきます。 5-2-3 交差点改良 大気汚染、騒音などの環境問題や、住宅地への通過交通の発生などのさまざまな問題の要因の1つとなっている交通渋滞を解消するため、事業の効果や実現性が高い交差点について、交差点改良の重点整備箇所として位置付け、事業化を目指します。 5-2-4 地先道路 地先道路は、消防活動困難区域を解消するために、おおむね250メートル以下の間隔で配置する必要があります。 道づくりプランでは、この配置計画と現状が乖離しているなど、整備状況に課題がある地域を示します。地先道路整備の取り組みの内容については、平成26年度に策定予定の「都市整備方針(仮称・地域の整備方針)」において整備の必要性を検討し、地先道路の整備を行おうとする地区ごとに、配置計画などを示した「地先道路整備計画」を策定することとします。 5-3 優先整備路線 道づくりプランの計画期間内に事業化を目指す路線として、次の路線を優先整備路線とします。 まず、都市計画道路については、 都市計画道路補助154号線 松原二丁目から五丁目の区間で、延長は710メートルです。 都市計画道路補助216号線(大蔵U期) 大蔵六丁目から鎌田四丁目の区間で、延長は390メートルです。 都市計画道路補助217号線(大道北南側) 上祖師谷四丁目から六丁目の区間で、延長は160メートルです。 都市計画道路補助54号線 松原四丁目から松原六丁目の区間で、延長は780メートルです。 都市計画道路補助128号線 松原三丁目の区間で、延長は170メートルです。 都市計画道路補助216号線 北烏山一丁目から南烏山四丁目の区間で、延長は1030メートルです。 世田谷区画街路7号線 上野毛三丁目から上野毛二丁目の区間で、延長は400メートルです。 世田谷区画街路11号線 成城二丁目の区間で、延長は50メートルです。成城学園前駅駅前広場及び駅前広場導入路の部分です。 世田谷区画街路12号線 成城六丁目の区間で、延長は30メートルです。成城学園前駅駅前広場導入路の部分です。 このうち、補助154号線、補助216号線(大蔵U期)、補助217号線(大道北南側)の3路線は、都市計画道路の優先整備路線の中でも特に整備の優先性が高いと考えられる路線として、事業化に向けた取り組みの重点化を図ります。 なお、都市計画道路の優先整備路線は、「東京における都市計画道路の整備方針(仮称)」の次期事業化計画の策定にともなって、必要な見直しを行う予定です。(46ページ参照) 次に、主要生活道路については、 主要生活道路122号線(六所神社前通りV期) 給田一丁目から給田三丁目までの区間で、延長は540メートルです。 主要生活道路127号線 太子堂四丁目から太子堂五丁目までの区間で、延長は830メートルです。 主要生活道路229号線(松栄会通りU期) 若林四丁目から若林五丁目までの区間で、延長は450メートルです。 主要生活道路232号線(深沢八丁目南側U期) 深沢八丁目の区間で、延長は180メートルです。 5-4 交差点改良 次の箇所を交差点改良の重点整備箇所として位置付け、事業化に向けた取り組みを行っていきます。 梅丘通り(環七通りとの交差点) 梅丘通りと環七通りとの交差点は、平日の夕方を中心に、当該交差点を起点として東側(淡島通り方面)に激しい渋滞が発生しており、バスの定時運行に支障が生じ、区民からも渋滞解消の要望が出されています。 渋滞の原因は、梅丘通りから環七通りへ右折する車の滞留によるものであり、交通量等の実態調査や交通シミュレーションによる検証の結果、右折レーンの設置によって渋滞解消に一定の効果が期待できることから、交差点改良の重点整備箇所として位置付けることとします。 5-5 東京における都市計画道路の整備方針(仮称)への反映 「東京における都市計画道路の整備方針(仮称)」の策定に向けて、以下に示す路線を、次期事業化計画で優先的に整備すべき路線として反映していけるよう調整を図っていきます。(46ページ参照) 世田谷区の北部や西部の南北交通の課題を解消する路線 延焼遮断帯に指定されているほか、避難困難区域の解消や防災拠点などへのアクセスルートとなるなど、防災性の向上に大きく寄与する路線 東京外かく環状道路整備や京王線の連続立体交差事業、団地建替えなどとあわせた一体的な整備が望ましい路線 隣接する区市と接続し、広域的な道路ネットワークの形成に資する路線 渋滞の解消など交通環境の改善が望まれる東京都管理の路線 5-6 地先道路の整備 幅員6メートル以上の道路の整備が不十分なことにより、消防活動が困難となっている地域は、世田谷区の北部や西部を中心に広がっています。これらの地域の中でも、災害時の危険性が高いとされている密集地域では、特に整備の必要性が高いと考えられます。 東京外かく環状道路の整備や京王線の連続立体交差事業など、国や東京都が行う基盤整備事業を契機とした周辺街づくりにおいて、地先道路についても、その機会を逃さずに整備をしていくことが必要です。 幅員6メートル以上の道路に囲まれていない避難所や給水拠点などの防災拠点は、大規模な災害時には建物や塀の倒壊によって周辺の道路を通行できなくなり孤立してしまう恐れがあります。そのため、避難経路の確保や物資輸送の観点から、このような防災拠点につながる地先道路の整備も必要となります。今後、策定する「地先道路整備計画」において、防災拠点までのアクセスルートについても考慮していきます。 5-7 道づくりの推進に向けた取り組みの検討 現在事業中の路線も多く、財源も限られる中で、今後も新たな路線の事業化を進めていくためには、既成の枠組みを超えた新しい仕組みを活用するなど、より一層の効率化が必要になります。 世田谷区では、今後も区民の理解と協力のもとで道づくりを着実に推進していくために、次のような取り組みを検討していきます。 1 安定した財源の確保 平成2年の道路整備方針の策定以降、国や東京都の補助金、交付金制度を活用した道路整備を進めてきており、その実績は第2章で示したように増えてきています。 今後も着実に道づくりを進めていくため、補助金、交付金制度を引き続き積極的に活用し、道路整備のための安定した財源の確保を図ります。 2 公有地の有効活用 世田谷区では、道路代替地のほかに、国から譲与を受けた土地を区内の各所に保有しています。 道路整備にかかる事業費の抑制のため、道路事業用地の取得にこれらの区有地を積極的に活用していきます。 3 東京都と連携した道づくり 都市計画道路の整備は、東京都と世田谷区で分担して進めるもので、「区部における都市計画道路の整備方針」の第三次事業化計画優先整備路線は、路線ごとに事業主体が決められています。 区が主体となって施行する路線の事業化に向けた取り組みだけではなく、都が主体となって施行する路線についても整備の促進を積極的に働きかけ、また、沿道の街づくりなどの事業協力をあわせて行うことを検討していきます。(46ページ参照) 4 密集地域の主要生活道路への個別対応事業の適用 現在、密集地域の主要生活道路130号線で取り組んでいる個別対応事業について、その事業効果などを評価、検証し、他の密集地域にある主要生活道路への適用を検討していきます。 ここで、個別対応事業について説明します。 主要生活道路の新設・拡幅事業は、その規模や整備効果の面から、路線全体または一定の区間について、期間を定めて事業実施する「路線型」の事業により取り組むことを基本としています。 密集市街地においては、権利関係が複雑なため、路線型事業の実施に対して、関係権利者との合意形成には相当の時間を必要とします。また、建替えを契機に更地の状態で事業用地を取得する「建替え連動型」の事業手法も用いられていますが、敷地が小さく再建築ができないなど、生活再建の観点から困難なケースがあります。 「個別対応事業」とは、密集市街地における主要生活道路の整備にあたって、権利者の生活再建への支援を充実し、事業のスピードアップを図ることを目的に考案したものです。道路計画区域において、事業に協力を得られる箇所から順次事業用地を取得し、事業によって権利者が通常受ける損失に対して個別に生活再建のための補償を行います。 5 事業中の路線における暫定的な整備 事業中の路線の中には、さまざまな理由で道路事業用地として未取得の用地が残り、事業が長期化しているようなケースがあります。 現況道路を拡幅し、歩道を整備するような場合には、用地取得が完了している一部の区間で暫定的に歩道を設置することにより歩行者の安全性が向上するなど、一定の整備効果を発現させることが可能となります。 事業中の路線において、事業の早期完了を目指すとともに、事業中の段階でも、状況に応じた暫定的な整備などの工夫により、一定の事業効果を発現させるような取り組みを検討していきます。 平成28年3月見直しの内容 ・「東京における都市計画道路の整備方針(第四次事業化計画)」の策定にともなう「せたがや道づくりプラン」の見直しについて  平成28年3月に東京都・特別区・26市・2町は、「東京における都市計画道路の整備方針(第四次事業化計画)」を策定し、今後10年間(平成28年度から平成37年度)で優先的に整備すべき路線(優先整備路線)を選定しました。  世田谷区では、「せたがや道づくりプラン」と「東京における都市計画道路の整備方針(第四次事業化計画)」との整合を図るため、第四次事業化計画で位置づけられた世田谷区施行の優先整備路線を、道づくりプランにおける優先整備路線とする見直しを行いました。 ・将来道路網計画の見直しについて  平成16年3月に策定された「区部における都市計画道路の整備方針」において「見直し候補区間」に位置づけられていた都市計画道路補助第52号線の一部区間(補助第217号線から西側の約550メートル)の都市計画が平成28年3月に廃止されました。  この都市計画道路の廃止にともない、接続する主要生活道路の見直しを行い、主要生活道路204号線及び331号線の区間を変更しました。 詳細な内容については以下の担当部署へお問い合わせ下さい。 道路・交通計画部道路計画課 電話 03-6432-7935 ファクシミリ 03-6432-7991