世田谷区自転車活用推進計画及び自転車等の利用に関する総合計画  表題 3章 計画の基本理念と基本方針 69ページ 3章 計画の基本理念と基本方針 3.1 計画の基本理念の考え方 これまでの計画、平成23 年4月の「世田谷区自転車等の利用に関する総合計画」及び、平成28 年4月同中間見直しでは、 @放置自転車ゼロ A安全で快適な自転車利用の環境整備 B低炭素社会の実現に貢献する自転車利用への転換 を区民・事業者行政が協働して推進すべき目標として掲げ、これを支える基本理念として自転車利用を基軸とした世田谷の都市交通社会の実現を掲げました。 その後、区内では自転車利用がよりいっそう普及浸透し、区民の地域生活にますます必要不 可欠なものとなる一方、大型自転車への対応など新たな課題も生じています。 自転車活用の動きは全国的なものであり、平成29年5月には自転車活用推進法が施行され、各都道府県には、東京でオリンピック・パラリンピックの実施が予定されていた令和2年までの間に、自転車活用推進計画を策定するよう努力義務が課せられました。 こうして自転車を取り巻く社会環境が大きく変わる一方で、区では、すでに自転車利用が区民生活に広く普及浸透し、また以前から様々な自転車施策を展開しており、区の現況や特性に適合した自転車活用を今後どう進めていくのか、そのあり方が改めて求められています。 こうした問題認識のもと、これまで区が進めてきた自転車施策の成果等を踏まえ、本計画では、今後10 年を見通し、引き続き「世田谷の安全・安心・快適な交通社会の実現」を基本理念の中心に掲げます。これに加え、区の現況や特性に適合した自転車活用の方向性として、通勤や通学のための自転車利用のみならず、買い物等の利用、介護や宅配等の業務利用等も含めた、身近な地域での生活を支えるすべての自転車の利用を「生活自転車」として区で独自に定義し、環境負荷の低減とユニバーサルデザインの視点を含め、歩行者、自転車、自動車が安全・円滑に移動できるようバランスを取りながら、これらを誰もが安全に利用しやすい環境の整備を目指します。 3.2 計画の基本理念 基本理念は、 人口90 万人を超える住宅都市 世田谷にふさわしい安全・安心・快適な交通社会の実現に自転車を有効に活用するため、環境にやさしく身近な地域での生活に必要な「生活自転車」を、誰もが安全に利用しやすい環境に整備する。です。 70ページ 「生活自転車」とは。 区の自転車施策は放置自転車対策からスタートしました。区は、駅周辺にあふれる放置自転 車の撤去を行うとともに、次第に駐輪場を整備するようになり、放置自転車の状況も大きく改善をしてきました。また、自転車利用の普及浸透を受けて、自転車安全利用、レンタサイクル、さらには自転車通行空間整備や民間シェアサイクルの活用へと、施策の対象範囲が広がってきました。その一方で、当初の放置自転車対策の主な対象が、通勤や通学のための自転車だったため、買い物利用等の多様なニーズに対する取組みが十分とはいえない状況です。 このことから、この度の計画策定にあたっては、通勤や通学のための自転車利用のみならず、買い物等の利用、さらには介護や宅配等の業務利用等も含めた、身近な地域での生活を支えるすべての自転車の利用を「生活自転車」として区で独自に定義し、生活を支える様々な自転車利用を対象にして、誰もが安全に利用しやすい環境を目指します。 また、自転車利用について、改善や質の向上を図るためには、行政が「自転車の利用環境の整備」を図るだけでなく、自転車利用者が自ら率先して行動し、交通ルールやマナーを守り、路上に放置せず、必ず駐輪場を利用するなど、歩行者、自動車、ほかの自転車と配慮、思いやりをもってコミュニケーションを図り、自転車を安全・適切に利用することが必要不可欠です。 今回、自転車が区民生活に広く普及浸透している区において、改めて「自転車を活用する」とはどういうことか検討した結果、私たちは「自転車にやさしいまち」を目指すだけではなく、「自転車がやさしいまち」を目指すべきだと考えました。 そのためには自転車利用者の自覚的な行動が必要不可欠です。このため、自転車利用者に率先行動を呼びかけるとともに、行政は区民・事業者・関係機関と協働して、そのための環境整備を進める等、双方向からの取組みが必要です。 それを表現したのが72 ページの4つの基本方針です。 71ページ 参考 「生活自転車」の楽しみと社会的責任 「準備してサイクリングに出かけるの」ではなく、学校や会社の帰り道に、子どもの送り迎えや買い物の途中に、「自転車で少し“道草”してみませんか」と、区では気軽な「自転車散歩」を薦めています。通い慣れた道のすぐそばに広がるまだ知らない世界を、きっと発見できると思います。“道草”なので、最初から行き先を決めておくのではなく、「今日はこっちの道を行ってみようかな」とスタートし、「こんなところに素敵な木立がある」、「ここの眺めがいい」、「雰囲気のいいお店がある」など、自分が住むまちの「小さな魅力の再発見」をしてもらうのがねらいです。 探検気分で知らない道を行くと、自然と周りに注意します。新鮮な景色、いろいろな発見、お店の人とのちょっとした話など、知らず知らずのうちに周囲に合わせて自転車に乗るようになります。自転車の危ない運転は、この「周囲に合わせて」がないのが原因です。景色は見ておらず、歩行者も障害物と思えてしまいます。そうではなく、自転車に乗るのに必要な「心の余裕」を取り戻してもらおうというのが、「自転車散歩」の一番のねらいです。 人や車が通らない海沿いの街道や、山中の峠道を走るスポーツ・サイクリングと異なり、街中を自転車で通行するということは、歩行者、自動車、他の自転車とどうしても関わりを持たざるを得ません。自転車自体は単なる道具に過ぎませんが、人口の集中する都市で自転車を利用する場合、自転車は「社会的責任」の伴う「社会的存在」となります。例えば、狭い歩道で人とすれ違う際、互いに傘を傾けて避けます。それは決められたルールやマナーではありませんが、人と人が触れ合う身近な生活の場では当然必要な心配り・思いやりです。すれ違うときに傘を傾けるように、歩行者の多いところでは自転車から降り、「押し歩き」することも、同じことなのです。 人と人との触れ合いやコミュニケーション、発見のある身近な生活の場で用いられるからこそ、「生活自転車」には出会いを楽しむ余裕と、そこから生まれるちょっとした心配りや思いやりが求められるのです。 図 69 では自転車散歩のススメ、区のお知らせ、令和2年10 月15 日号より抜粋して掲載しています 72ページ 3.3 計画の基本方針 基本理念の「人口90 万人を超える住宅都市 世田谷にふさわしい安全・安心・快適な交通社会の実現に自転車を有効に活用するため、環境にやさしく身近な地域での生活に必要な「生活自転車」を、誰もが安全に利用しやすい環境に整備する」の実現に向けて、4つの基本方針を定めます。また、施策を基本方針のもとで体系化し、区民、事業者、区の協働のもと、連携して取組みを進めます。 基本方針1は自転車が安全・安心を守るまちです。 交通安全意識・行動を徹底し、万が一の事故にも備え、自転車の安全・安心な利用を促進することにより、「自転車が安全・安心を守るまち」づくりを進めます。 基本方針2は自転車が快適に走るまちです。 安全で快適な自転車走行環境の整備とその利用の促進により、「自転車が快適に走るまち」づくりを進めます。 基本方針3は自転車がスマート※14にとまるまちです。 駐輪場情報の提供や自転車シェアリングにICTを活用するなど、駐輪環境の整備と放置自転車の防止により、適正な自転車利用を推進し、「自転車がスマートにとまるまち」づくりを進めます。 基本方針4は自転車が身近なくらしを支えるまちです。 身近な生活における多様なニーズに対応でき、健康によく環境にもやさしい自転車の利用を促進し、「自転車が身近なくらしを支えるまち」づくりを進めます。 ※14ここではスマートの語に整然と、カッコよくと賢い、ICTを活用した2つの意味を掛けています。 73ページ 3.4 基本方針の考え方 これまでの計画では、次の3つを基本方針として掲げました。 基本方針1 安全な自転車利用を展開する世田谷の"風土"づくり 基本方針2 日常生活を支援する安全で快適な自転車利用の"場"づくり 基本方針3 地域交通を支える自転車利用環境の"しくみ"づくり 本計画では、区の現況や特性に適合した自転車活用のあり方が改めて問われていることから、区において自転車が担う社会的役割に基づいて、「守る」「走る」「とまる」「支える」の4本の柱を立て、それぞれに基本方針を定めました。 また、区民にとって親しみやすく、内容がひとめでわかるよう、守るの守、走るの走、駐車の駐、支えるの支、と漢字一文字を、各基本方針のシンボルマークとして掲げました。 これにより、区の自転車に関する業務の基本的な区分1から5を、次のようにわかりやすく配分でき、その結果、4章にお示しする施策体系も見通しよく、わかりやすいものとなりました。 区分1自転車交通ルール・マナーの普及啓発 区分2自転車通行空間の整備 区分3駐輪場の整備、 区分4放置自転車対策の実施 区分5身近な生活を支え、健康・快適に自転車を利用するための環境づくり です。 自転車が安全・安心を守るまちは、区分1自転車交通ルール・マナーの普及啓発 自転車が快適に走るまちは、区分1自転車交通ルール・マナーの普及啓発、区分2自転車通行空間の整備 自転車がスマートにとまるまちは、区分3駐輪場の整備、区分4放置自転車対策の実施 自転車が身近なくらしを支えるまちは、区分1自転車交通ルール・マナーの普及啓発、区分2自転車通行空間の整備、区分3駐輪場の整備、区分5身近な生活を支え、健康・快適に自転車を利用するための環境づくりです。