世田谷区自転車活用推進計画及び自転車等の利用に関する総合計画 表題 2章 自転車等の利用の現状 11ページ 2章 自転車等の利用の現状 2.1 世田谷区の概要 世田谷区の概要のうち、特に自転車利用と関わりの深いものについて、以下に示します。 (1) 人口 自転車利用の基本となるのは「人の移動」であり、その根底にはそこに住む人の数(人口)があります。 自転車は鉄道やバス、自動車に比べ、より短距離の移動に多く利用されます。また、世田谷区は主として住宅地であり、昼間の人口流入がそれほど多くないことから、区内の自転車利用の増減は、人口に大きく影響されます。 本計画期間中、区の総人口は先行きが不透明な状況 区の人口は平成7年の国勢調査以降、減少から増加に転じています。「世田谷区将来人口推計」(平成29 年7月のもの)によると、区の総人口は本計画の計画期間(令和12 年度)においても増加が続くものと推計されていますが、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、先行きが不透明な状況です。 図 5では 地域別人口の将来予測を示しています。 資料は世田谷区将来人口推計、世田谷区、平成29 年7月のものを基に作成しています。 この資料は日本人のみで予測をしています。 平成29 年の人口を100 とし、令和24年の推計を示しています。推計値の高い地域より、数値を示します。 烏山地域は127.3、世田谷地域は124.9、北沢地域は124.3、区全体は121.0、玉川地域は116.1、砧地域は114.4となることが予測されます。 図 6 では区内5地域を色分けで区分けしています。 12ページ 図 7 では年齢3階層別人口の将来予測を示しています。 資料は世田谷区将来人口推計、世田谷区、平成29 年7月のものを基に作成しています。 この資料は日本人のみで予測をしています。 平成29 年の人口を100 とし、令和24年までの推計を示しています。 高齢者人口142.9、年少人口135.7、区全体は121.0、生産年齢人口は111.8となることが予測されます。 年少人口とは14 歳以下の人口です。生産年齢人口は15 歳から64 歳の人口です。高齢者人口は65 歳以上の人口です。 補足 住民基本台帳に基づく令和元年1月1日時点での区の人口は、合計917,486 人 内訳は日本人894,452人、外国人23,034 人です。 推計による人口は、合計926,598 人 内訳は日本人902,184 人、外国人24,414 人であり、実際はこれを下回っています。 人口の動向は、今後の社会経済動向等により影響を受けるため、注視する必要があります。 13ページ (2) 商業 店舗数や事業所数、従業員数、小売業の販売額などは、いずれも自転車を利用した通勤や買い物等の移動の要因となるものであり、区内の自転車利用の増減は、これらの数値にも大きく影響されます。 区内全産業の従業員数は横ばい、事業所数は減少傾向 商店街での買い物目的の自転車利用は地域経済にとって重要ですが、区内の従業員数は横ばい、事業所数は減少傾向にあります。前計画の中間見直し後の平成28 年は、事業所数、従業員数ともに平成26 年から減少しています。 事業所数、従業員数の減少に伴い、通勤や営業等の自転車利用の減少が想定されます。 図 8では 区内全事業所数と全従業員数の推移を示しています。 資料は世田谷区統計書 令和元年版2019年、世田谷区、令和2年4月のものを基に作成しています。 全従業員数は平成26年28.9万人から平成28年26.3万人に減少していることを示しています。 全事業所数は平成26年2万9千事業所から、2万7千事業所に減少していることを示しています。 区内小売業の事業所数と年間販売額はともに増加傾向 区内における小売業の事業所数と年間販売額は減少傾向にありましたが、平成24 年以降は増加に転じています。前計画の中間見直し後の平成28 年は、平成26 年と比べて事業所数は微増し、年間販売額は大きく増加しています。 小売業の事業所数と年間販売額の増加に伴い、買い物を目的とした自転車利用及び短時間駐輪が増加していくと考えられます。 図 9 では区内小売業事業所数と年間販売額の推移を示しています。 資料は世田谷区統計書、令和元年版、2019年、世田谷区、令和2年4月のものを基に作成しています。 小売業年間販売額は平成26年5千8百億から、平成28年7千5百億に大きく増加していることを示しています。 小売業事業所数は平成26年3千7百事業所から3千8百事業所に微増していることを示しています。 14ページ (3) 道路 道路は「人の移動」を支える基盤であり、区内の自転車利用の安全性や快適性は、道路の状況に大きく影響されます。 区道の6割以上が幅員6.0メートル未満 主要な幹線道路は整備されていますが、都市計画道路の整備率は約5割と低いです。(図10参照) 区道は、幅員4.0メートル以上6.0メートル未満が最も多く、区道全体の約4割を占めます。また、幅員4.0メートル未満の区道も含めると6.0メートル未満の区道は6割以上に及びます。特に北沢地域は幅員の狭い道路が多く、延長で見ると区道の8割以上が幅員6.0メートル未満です(図12、図 13参照)。 狭い道路が多いことや、国分寺崖線(図 14 参照)※1 周辺を中心とした起伏のある地形などが影響し、自転車による地区間、地域間移動は必ずしも円滑とは言えないため、安全・安心・快適に自転車を利用できる環境を目指します。 ※1 国分寺崖線は区内の南西部に約8キロメートルにわたり続く崖の連なりで高低差は20メートル ほどあります。 図 10 では都市計画道路の整備率を示しています。 特別区平均は65.6パーセント、世田谷区は50.1パーセントで、大田区、杉並区に次ぎ、整備率が低くなっています。 資料は道路整備白書、世田谷区、令和2年4月のものです。 図 11 では都市計画道路、主要生活道路の整備概況を示しています。 資料は道路整備白書 世田谷区、令和2年4月のものです。 道路の整備済み区間、構成区間、事業中区間、未整備区間を示しています。 15ページ 図 12では 地域別にみた幅員別道路延長の割合(区道)を示しています。 資料は世田谷区統計書、令和元年版2019年、世田谷区、令和2年4月のものを基に作成しています。 区全体では、 4.0メートル未満26.5パーセントです。 4.0メートル以上6.0メートル未満38.3パーセントです。 6.0メートル以上7.5メートル未満19.9パーセントです。 7.5メートル以上10.0メートル未満7.9%パーセントです。 10.0メートル以上7.4%パーセントです。 になります。 世田谷地域では、 4.0メートル未満27.8パーセントです。 4.0メートル以上6.0メートル未満41.6パーセントです。 6.0メートル以上7.5メートル未満16.1パーセントです。 7.5メートル以上10.0メートル未満6.3パーセントです。 10.0メートル以上8.1パーセントです。 になります。 北沢地域では、 4.0メートル未満33.8パーセントと地域別では一番高い割合です。 4.0メートル以上6.0メートル未満49.0パーセントと地域別では一番高い割合です。 6.0メートル以上7.5メートル未満9.1パーセント。 7.5メートル以上10.0メートル未満3.6パーセントです。 10.0メートル以上4.6パーセントです。 になります。 玉川地域では、 4.0メートル未満14.4パーセントです。 4.0メートル以上6.0メートル未満35.1パーセントです。 6.0メートル以上7.5メートル未満29.5パーセントです。 7.5メートル以上10.0メートル未満11.1パーセントです。 10.0メートル以上9.8パーセントです。 になります。 砧地域では、 4.0メートル未満31パーセントです。 4.0メートル以上6.0メートル未満32パーセントです。 6.0メートル以上7.5メートル未満23.7パーセントです。 7.5メートル以上10.0メートル未満7.5パーセントです。 10.0メートル以上5.8パーセントです。 になります。 烏山地域では、 4.0メートル未満33パーセントです。 4.0メートル以上6.0メートル未満35.2パーセントです。 6.0メートル以上7.5メートル未満14.5パーセントです。 7.5メートル以上10.0メートル未満10.2パーセントです。 10.0メートル以上7.1パーセントです。 になります。 図 13 では幅員別道路延長の推移(区道)を示しています。 資料は世田谷区統計書、世田谷区、平成16 年、平成21 年、平成26 年、令和2年のものを基に作成しています。 道路幅員、4.0メートル以上6.0メートル未満での道路延長は約400キロメートルを推移しています。 4.0メートル未満では300キロメートルを推移しています。 6.0メートル以上7.5メートルでは200キロメートルを推移しています。 7.5メートル以上10.0メートルと10メートル以上では100キロメートルを推移しています。 図 14 では立川氏から大田区までの国分寺崖線を地図で示しています。 16ページ (4) 公共交通 区内における「人の移動」の基本は徒歩と公共交通利用であり、自動車や自転車は、それを補完または代替するものです。 区内には、鉄道駅から徒歩圏外にある区域や、幹線道路が未整備のためバスが運行していない地域などがあるため、最寄りの鉄道駅までの移動手段として自転車が多く使われており、区民の身近な生活を支える欠かせないものとなっています。 区の西側を中心に公共交通不便地域が存在 区内の鉄道は東西方向に発達していますが、西に行くほど鉄道の間隔が広く、また、バス路線が限られることから、公共交通不便地域※2が存在しています。公共交通不便地域の面積割合は、令和元年、2019 年、11 月現在で20.2パーセントとなっており、区の西側に位置している傾向にあります。 図 15 では公共交通不便地域を示しています。 区の西側に多く広がっていることを図示しています。 資料は世田谷区交通まちづくり基本計画(中間見直し)・世田谷区交通まちづくり行動計画、世田谷区、令和2年4月のものを基に作成しています。 ※2 公共交通不便地域は、最寄りのバス停留所から200メートル以上、かつ鉄道駅から500メートル以上離れている地域のことです。 17ページ 2.2 自転車等の利用及び利用環境の状況 区における自転車の利用特性について、以下に示します。自転車の利用と地域特性の結びつきや、自転車が日常生活で広く利用されていること等がわかります。 (1)自転車の利用状況 都心部と郊外の中間に位置する世田谷区は自転車の分担率が高い 東京都区部における自転車の利用状況を見ると、山手線内のエリアは自転車利用が少なく、その周辺のエリアで多くなっていることがわかります(図 17参照)。 山手線内は地下鉄網が発達しており、鉄道駅の密度が高く、駅まで徒歩で行くことが多いのに対し、その外側では、JRや私鉄の路線が放射状に広がっているため、都心から離れるほど駅が分散し、駅まで自転車を利用することが多くなっているためです。 また、山手線内は鉄道の分担率が高く、自動車や自転車の分担率が低いのに対し、多摩川以南は鉄道の分担率がそれほど高くなく、自動車や自転車の分担率が高くなっています。鉄道と自動車および自転車は、片方の分担率が高くなれば、もう片方の分担率が低くなる関係にあることがわかります(図 16 参照)。 しかし、世田谷区については、鉄道の分担率は多摩川以南と同程度ですが、自動車の分担率が低く、自転車の分担率は多摩川以南よりもさらに高くなっています。モータリゼーションの進展に伴い、交通混雑や交通事故、二酸化炭素排出に伴う地球温暖化の進行の弊害も生じており、区では自転車利用が、モータリゼーションの進展の防波堤の役割を果たしているといえます。 図 16 では代表交通手段別分担率(近隣地域との比較)を示しています。 資料は第6回東京都市圏パーソントリップ調査※3結果、東京都市圏交通計画協議会、令和元年11 月のものを基に作成しています。 ※3 パーソントリップ調査は、どのような人が、どのような目的で、どこからどこへ、どのような交通手段で、移動したかなどを調べるもので、鉄道、自動車、徒歩といった各交通手段の利用割合や交通量などを集計することができます。 トリップは人がある目的をもって、ある地点からある地点まで移動する単位です。代表交通手段が、1つのトリップがいくつかの交通手段で成り立っているとき、このトリップで利用した主な交通手段を指します。主な交通手段は、鉄道、バス、自動車、二輪車、自転車、徒歩の順に優先順位が定められており、利用した交通手段のうち、より上位にあるものが代表交通手段となります。 分担率とは、例えば自転車分担率は、全代表交通手段のトリップ数における、自転車のトリップ数の割合のことです。 世田谷区は、鉄道41.8パーセント、バス3.4パーセント、自動車9パーセント、自転車17.4パーセント、徒歩26.2パーセント、その他0.1パーセント、不明1.2パーセントです。 山手線内の千代田区は鉄道79.3パーセント、自動車4.4パーセント、自転車は1.4パーセントです。港区は鉄道71.6パーセント、自動車6.1パーセント、自転車は2.3パーセントです。渋谷区は鉄道61.2パーセント、自動車5.6パーセント、自転車は6.1パーセントです。 多摩川以南の川崎市高津区は、鉄道38.1パーセント、自動車12.4パーセント、自転車15.8パーセントです。川崎市多摩区は、鉄道は42.0パーセント、自動車は13.6パーセント、自転車は13.8パーセントです。稲城市は鉄道29.2パーセント、自動車は24.3パーセント、自転車は13.6パーセント、町田市は鉄道29.8パーセント、自動車27.4パーセント、自転車は8.2パーセントです。 18ページ 図 17 では自転車分担率と自動車分担率の比較を示しています。 資料は第6回東京都市圏パーソントリップ調査結果、東京都市圏交通計画協議会、令和元年11 月のものを基に作成しています。 区部西部は都心部に比べ自転車分担率が高く、市部に比べ自動車分担率が低いことを示しています。 19ページ 参考  自転車分担率の各国の都市との比較 自転車分担率について各国の都市との比較をみると、大阪市や東京都区部は、コペンハーゲン等の海外のいわゆる自転車先進都市に引けを取りません。図 19 をみると、コペンハーゲンは自動車分担率が東京都区部平均や世田谷区よりはるかに高くなっています。自転車分担率だけの比較では、図 18 に示すように東京都区部はコペンハーゲンより下回っていますが、自転車活用推進の目的の1つである自動車交通の抑制については、図 19 に見られるように上回っています。 さらに、世田谷区は、東京都区部平均よりも、自転車分担率が高くなっています。世田谷区では、既に自転車の利用は深く浸透しており、私たちの日々の生活に無くてはならないものになっています。 図 18 では自転車分担率の各国都市比較を示しています。 資料は第32 回総合的交通基盤整備連絡会議資料 資料名は都市交通としての自転車の利用についてです。 資料は、国土交通省国土技術政策総合研究所道路研究室、平成24 年1 月のものです。 自転車分担率、コペンハーゲンは30.1パーセント、東京都区部は14パーセントです。 図 19 では東京都区部、世田谷区、コペンハーゲンの交通手段分担率の比較を示しています。 資料は第6回東京都市圏パーソントリップ調査結果です。東京都市圏交通計画協議会、令和元年11 月のものです。資料名、シティ オブ コペンハーゲン バイシクリング アカウント 2014を基に作成しています。 東京都区部は徒歩24パーセント、自転車13パーセント、公共交通54パーセント、自動車9パーセントです。 世田谷区は徒歩27パーセント、自転車18パーセント、公共交通46パーセント、自動車10パーセントです。 コペンハーゲンは、徒歩17パーセント、自転車30パーセント、公共交通20パーセント、自動車33パーセントです。 20ページ 世田谷区は鉄道までの移動、買い物等における自転車分担率が高い 区内では、通勤・通学のための駅へアクセスする自転車だけでなく、日常の買い物、子どもの送迎、レジャー、スポーツ、業務利用等に幅広く利用されています。 また、子どもから高齢者まで幅広い年齢層に利用されており、自転車が区民の身近な生活を支える欠かせないものとなっています。 図 20では 区内の自転車の利用目的を示しています。 資料は世田谷区民意識調査2018、平成30 年5 月実施のものを基に作成しています。 通勤・通学の目的地までの間13.3パーセント、通勤・通学、鉄道駅までの間16.3パーセント、買い物43.2パーセント、子どもの送り迎え9.8パーセント、レジャー、スポーツ5.6パーセント、その他5パーセント、無回答6.9パーセントです 図 21では 区内の自転車の利用頻度(性別・年齢別)を示しています。 資料は世田谷区民意識調査2018、平成30 年5 月実施のものを基に作成しています。 男性全体では、週5日以上18.1パーセント、週3日以上11,1パーセントです。 女性全体では、週5日以上26.2パーセント、週3日以上12パーセントです。 全体では、週5日以上23.1パーセント、週3日以上11.5パーセントです。 子どもから高齢者まで幅広い年齢層に利用されていることを示しています。 21ページ 参考 自動車利用の負の側面 2.2(1)自転車の利用状況、17ページで述べた「区では自転車利用が、モータリゼーションの進展の防波堤の役割を果たしているといえます」について、さらに説明します。18 ページ中段の分布図をご覧ください。区の西側の境は、より自動車分担率の高いエリアに接しています。上段の「自転車分担率」の図をみると、東京都市部にも自転車分担率の高い区域があるため、少しわかりにくくなっていますが、下段の自転車と自動車の分担率を直接比較した分布図でみれば、都心地区を除き、都の東部と西部が自転車優勢と自動車優勢にくっきりと分かれています。自転車利用と自動車利用は、一方が上がれば他方が下がる「シーソー」の関係になっていると考えられます。このことを「自転車が自動車利用の『防波堤』の役割を果たしている」と表現しました。 駅へのアクセスや日常の買い物に、自転車ではなく、自動車を頻繁に使うようになるとどうなるでしょうか。区内の生活道路は自動車で混雑し、「せっかく自動車で買い物に行くのだから駐車場完備の郊外の大型スーパーに行こう」ということになれば、区内の商店街は、衰退してしまいかねません。 さらに、自動車による交通混雑・渋滞、排気ガスによる二酸化炭素排出に伴う地球温暖化の進行、交通事故、特に交通死亡事故の増加等、自動車利用の負の側面が露になってしまいます。 都市計画道路の整備が進んでいない世田谷区では、こうした自動車利用の負の側面が顕在化しないよう、注意を払う必要があります。 図 22では 区内の生活道路における渋滞の一例を写真で示しています。 22ページ 自転車乗入台数は様々な要因が影響 駅への自転車乗入台数とは駐輪場に実際に駐車している台数と放置自転車等の合計のことです。駅への自転車乗入台数は、駅の乗降客数だけでなく、駅勢圏※4の広さ、公共交通不便地域の状況、駅の利便性、駐輪環境の整備状況、商業集積等と関連があると考えられます。 令和元年度における平日昼間時点の区内の駅の自転車乗入台数をみると、千歳烏山駅が5,456 台で最も多く、次いで二子玉川駅(4,334 台)、成城学園前駅(3,793 台)が多いです。いずれも公共交通不便地域が存在する区の西側に位置しており、急行が停車する等利便性が高い駅は、自転車乗入台数が多い傾向にあります。(図23参照) ※4 駅勢圏は、その駅を利用する人の比率が高い地域範囲のことです。 駐輪場と自転車等駐車場について 自転車を駐輪するための決められた場所として、駐輪場、の語が広く使われています。この計画書でも基本的にこの語を用いています。もうひとつ、自転車等駐車場、という語があり、これは自転車と原動機付自転車をあわせて、自転車等、と呼ぶためで、法律上の用語や正式名称に用います。 図 23 では駅別乗降客数と駅への自転車乗入台数を示しています。 資料は世田谷区統計書、令和元年版2019年、世田谷区、令和2年4月、世田谷区資料を基に作成しています。 注1 明大前、下北沢、二子玉川、自由が丘の乗降客数には、他線への乗換も含まれているため、実際の乗降客数よりも多く計上されています。 注2 東急電鉄の駅別乗降客数は、年間の駅別乗降客数を日にちで割戻し、小数点第1 位を四捨五入した数です。 注3 千歳烏山を除く京王電鉄京王線の駅、喜多見、池尻大橋、自由が丘の自転車乗入台数は、他区調査台数との合算値です。 注4 直近のデータである令和2年度の乗入台数は、コロナ禍の影響を受けて大幅に減少しているが、今後の自転車利用の傾向について十分に把握できないことから、従来の傾向と連続性が保たれている令和元年度データに基づく分析としています。 自転車乗入台数をみると、千歳烏山駅が5,456 台で最も多く、次いで二子玉川駅4,334 台、成城学園前駅3,793 台を図で示しています。 23ページ 2 交通事故の状況と交通安全の取組み 区内では自転車が多く利用されており、自転車による交通事故も多くなっています。交通事故の状況※5と交通安全の取組みについて、以下に示します。 区内の自転車事故件数は依然として多い 区内の自転車事故件数は減少傾向にありましたが、平成28 年以降概ね増加傾向にあり、平成23 年から平成29 年までは、平成27 年を除き都内ワースト1位、平成27 年、平成30 年はワースト2位、令和元年の自転車事故件数892件はワースト3位と依然として多く、自転車事故の削減が喫緊の課題です。一方、令和元年中の自転車関与事故件数※6は808 件であり、このうち対自動車が504件(62.4パーセント)と最も多く、次いで自転車同士、自転車単独、対歩行者、対二輪車の順に多くなっています。 区内における自転車事故の背景には、区内の人口の多さ、面積の広さ、交通量の多さ等があり、例えば人口当たりの事故件数をみると、特別区の平均程度となります。 図 24 では自転車関与事故件数・自転車関与率の推移を示しています 資料は都内自転車の交通事故発生状況、警視庁、平成23 年中から令和元年中のものを基に作成しています。 自転車関与事故件数は、平成28年681件、平成29年775件、平成30年816件、令和元年808件です。自転車関与率は、平成28年35.2パーセント、平成29年37パーセント、平成30年39.8パーセント、令和元年41.6パーセントです。 区内の自転車関与率は全国平均のおよそ2倍 区内の交通事故における自転車関与率※7は、約42パーセントと全国平均のおよそ2倍の水準に達しています。区内では自転車がよく利用されているため、自転車事故が多くなっています。 ※5 交通事故の状況については、直近のデータである令和2年中の交通事故件数等については、コロナ禍の影響を受けて大幅に減少しており、外出自粛による一時的なものと考えられるため、従来の傾向と連続性のある令和元年中までのデータを掲載した。なお、令和2年中の交通事故の傾向として「事故件数の減少に対し死亡者数は増加」が挙げられ、区内で発生した自転車事故についても、死亡者数は0人(令和元年中)から3人(令和2年中)と増加しています。 ※6 自転車関与事故件数は、自転車事故件数から自転車同士の事故を重複分として差し引いた件数のことです。 ※7 自転車関与率は、交通事故全体に占める自転車関与事故の割合のことです。図 25 では自転車関与率の比較を示しています。 資料は世田谷区資料、都内自転車の交通事故発生状況 警視庁の令和元年中のもの、令和元年中の交通事故の発生状況、警察庁の令和2年2月のものを基に作成しています。 自転車関与率は、世田谷区は41.6パーセント、東京都39パーセント、全国21.1パーセントです。 24ページ 20 歳代から40 歳代の自転車事故が半数以上を占め、それ以外の年齢層でも増加傾向 年齢層別では、10 年前よりは減少していますが、現在でも20 歳代から40 歳代の自転車事故が多く、半数以上を占めています。一方、平成29 年以降の推移をみると、20 歳代を除く全ての年齢層が概ね増加傾向にあるため、自転車交通ルール・マナーの普及啓発を強化し進めていきます。 図 26では 年齢階層別自転車事故件( 区内)のものを示しています。 資料は世田谷区資料を基に作成しています。 自転車事故件数は、20歳から40歳代で53.9パーセントと半数以上占めることを示しています。 幹線道路の交差点や一部の駅周辺で自転車事故の発生密度が高い 地域別では、幹線道路の交差点のほか、三軒茶屋、下高井戸、八幡山、千歳烏山駅周辺等で自転車事故の発生密度が高いです。自転車関与事故の多い路線など、自転車通行空間を整備し、安全・安心に自転車を利用できる環境を目指します。 図 27では 自転車事故発生密度を示しています。 資料は交通事故発生マップ、警視庁、令和元年8月時点のものに加筆したものです。 このマップは、区内の自転車事故の発生状況を件数に応じて密度表示をしたものです。 三軒茶屋、下高井戸、八幡山、千歳烏山駅周辺などで自転車事故の発生密度が高いことを示しています。 25ページ 交通安全の取組み 区では、平成24 年4月に、自転車に乗る際の心構えを示した「世田谷区民自転車利用憲章」※8を制定し、自転車利用のルールとマナーをわかりやすくまとめた「自転車安全利用五則」とともに、啓発リーフレットの配布等により普及浸透を図っています。 区立小中学校全校で、毎年度、1年生で歩き方教室、3年生で自転車教室等、交通安全教室を実施しています。また、区立中学校全校で、在校中に必ず体験できるよう、3年に1度の頻度で交通事故再現型交通安全教室を実施しています。 地域ではイベントの機会を活用した交通事故再現型交通安全教室の実施、警察署や交通安全協会と連携した高齢者向け交通安全講習の開催を行っています。 警察署、交通安全協会、小学校PTA等との協働により、小・中学校や地域で交通安全教室を開催し、自転車安全利用啓発を進めています。 ※8 世田谷区民自転車利用憲章は制定当時、自転車に限った自治体の憲章の制定は珍しく、ルール遵守とマナー向上を呼び掛けた憲章制定は23 区初の試みと報じられました。 図 28 では世田谷区民自転車利用憲章と自転車安全利用五則リーフレットを掲載しています。 図 29 では交通安全教室の様子を掲載しています。 26ページ 20 歳代から40 歳代への啓発の強化 自転車事故の多い20 歳代から40 歳代に対し、区内事業者、区内大学、子育て家庭への対応を中心に、情報提供の場や機会の開拓をはじめ重点的に啓発を進めています。 ・区内事業者への取組み 従業者への自転車安全講習の実施等、自転車を通勤・事業に使用する事業者の責務について、事業者連絡会での呼びかけ等、区内事業者への啓発を進めています。 ・区内大学への取組み 新入生オリエンテーションにおける自転車安全利用啓発等を区内各大学12 大学14 学部に呼びかけ、そのすべてで取組みを進めています。 図 30 では大学生向け啓発リーフレット、校章・校名ロゴ入りのものを掲載しています。 27ページ ・子育て家庭への取組み 区民から「歩道でスピードを出す子どもを乗せた自転車が怖い」との声が多く寄せられている状況を踏まえ、また、同乗する子どもの安全を守るため、保育園、幼稚園、おでかけひろば等の子どもの施設を通じて、様々な機会をとらえて体験型講習や、冊子の配布等を通じて自転車安全利用啓発を進めています。 図 31 ではおでかけひろば主催で区が実施した体験講習「初めての子育て自転車」の様子を掲載しています。 初めての子育て自転車はチャイルドシートに子どもの体重分のおもり約10キログラムを乗せ、押し歩き、試乗等を行い、利用の注意点、車体コントロールのコツ等を、体験を通じて学ぶものです。 図 32では 子育て自転車用ガイドブック「子育て自転車の選び方&乗り方」の冊子を掲載しています。 28ページ 自転車安全利用推進員の育成・支援 区では、区民が自主的に自転車安全利用啓発に取組む「自転車安全利用推進員」の育成・支援を図り、区民の身近なところで啓発を進めています。 自分たちで率先して守り広めるため、地域主体でローカル・ルールを定め、二子玉川では普及啓発する「たまチャリルール」に加え、踏切待ちの自転車や、毎朝駅に向かう通勤・通学自転車の流れに自転車安全利用を何度も繰り返し呼びかけるユニークなキャンペーンも、自転車安全利用推進員の活動から生まれました。 今後は、交通事故データの活用等により、さらに地域にわかりやすく働きかけることが必要です。 図 33 ではたまチャリルール、3つの交通ルールを示しています。 二子玉川地域で、地元の住民主体で、自分たちでルールを作って、自分たちで守るため、3つのルールをつくっています。1つめ、押しチャリとは、人通りが多いところでは自転車の押し歩きをしよう、というものです。2つめ、足ポンとは、停止線や交差点では、必ず両足置いて、一時停止しましょう、というものです。3つめ、ヒダリンクルとは、交差点で右にまがるときは、2段階右折をして、大回りで左を走りましょう、というものです。 図 34では 自転車安全利用を呼びかけるキャンペーンを示しています。 過去にろか公園駅の踏切での押し歩きをお願いするキャンペーンや、たまちゃりルールの啓発を行ったキャンペーンの写真を掲載しています。 29ページ 世田谷区区民交通傷害保険の実施 区では、自転車加害事故に備えた損害賠償責任保険への区民の加入を促進するため、東京都条例改正による保険加入義務化(令和2年4月施行)以前の平成30 年7月から、区内在住・在勤・在学者を対象に「世田谷区区民交通傷害保険」を実施しています。 自転車利用時に事故を起こし、相手にけがを負わせる等により損害賠償金が発生した場合、当保険から補償が受けられることにより、被害者・加害者の双方が救われています。 表 1 では世田谷区区民交通傷害保険の加入実績を示しています。 保険加入者数は平成30 年度約7千人、令和元年度約1万人、 令和2年度約1万4千人 と加入実績を示しています。 図 35 では区民交通傷害保険、世田谷区自転車条例改正PRちらしを掲載しています。 子どものヘルメット着用義務化等 東京都条例の改正による自転車損害賠償保険加入義務化にあわせ、世田谷区自転車条例を令和2年4月改正・施行し、13 歳未満の子どもの自転車ヘルメット着用の保護者に対する義務化、自転車点検整備の自転車利用者に対する努力義務化等を実施しました。子どものヘルメット着用義務化は令和2年10 月施行しました。 図 36 では、区のお知らせ、令和2年4月1日号の第1面を抜粋したものを掲載しています。 30ページ 3 自転車通行空間の整備状況 「自転車は車両の一種。車道左端の通行が原則で、歩道は例外」を目に見えるようにしたものが「自転車通行空間」です。十分な幅を確保し、道路交通法上も「自転車専用」としているものから、目安としての通行位置をマークで表示したものまで様々ですが、幅の広い道路が少ない区では、整備できる箇所が限られています。 区は優先整備路線を定め、自転車通行空間の整備を推進 区内では、平成27 年3月に策定された「世田谷区自転車ネットワーク計画」において、自転車ネットワーク路線が選定されています。 区では、全路線のうち、優先して整備すべき路線(優先整備路線)を定め、自転車通行空間の整備を推進しています。 なお、国道、都道はそれぞれの道路管理者である国、都、駅周辺を中心に交通管理者である所轄警察署が自転車通行空間の整備を進めており、これらと連携・連続した自転車ネットワークを形成することも必要です。 さらに、自転車通行空間の整備効果の検証や、路上駐車対策等による利用促進も必要です。 表 2 では計画に対する整備率(区が管理する道路)を示しています。 資料は世田谷区資料を基に作成しています。 平成26 年度末 計画路線延長 未整備163.6キロメートル、整備済み3.8キロメートル 合計167.4キロメートル、整備率2.3パーセントです。 令和元年度末 計画道路延長 未整備138.1キロメートル、整備済み29.3キロメートル 合計167.4キロメートル、整備率 17.5パーセントです。 表 3 では優先整備路線の内訳を示しています。 駅周辺の路線55.3キロメートル、自転車関与事故の多い路線3キロメートル、連続性を確保するための路線14.2キロメートル、合計72.5キロメートルです。 資料は世田谷区自転車ネットワーク計画 世田谷区、平成27 年3月のものを基に作成しています。 図 37 では自転車通行空間の整備形態を示しています。 資料は世田谷区自転車ネットワーク計画、世田谷区、平成27 年3月のもの、世田谷区交通まちづくり基本計画(中間見直し)・世田谷区交通まちづくり行動計画、世田谷区、令和2年4月のものを基に作成しています。 自転車専用通行帯、 自転車走行帯ブルーゾーン、 自転車走行位置表示の3つの整備形態を写真で示しています。自転車専用通行帯は、道路の歩道側の一部を、白で自転車専用通行帯と文字を表記したものです。自転車走行帯ブルーゾーンは、道路の歩道側の一部を青色に着色し白で矢印と自転車を走行している人のイラストがのっているものです。自転車走行位置表示は、青の矢印と白の自転車を走行している人のイラストがのっているものです。 31ページ <参考> 自転車が歩道を通行できる場合 自転車は道路交通法上、車両の一種とされています(6ページ参照)。そのため、「自転車は、歩車道の区別のある道路では、車道を通行しなければならない」(道路交通法第17条第1項)と定義されています。ただし、以下の場合には歩行者優先で車道寄りを徐行し、歩道を通行することができます。 ・「普通自転車歩道通行可」の標識があるとき。 ・自転車の運転者が13歳未満、70歳以上、または車道通行に支障がある身体障害者であるとき。 ・路上駐車や道路工事で車道左端の通行が困難、自動車交通量が多い等、車道通行が危険であるとき。 図 38 では、「普通自転車歩道通行可」の標識を掲載しています。 図 38のあとの、続きには次の文章を入れています。 <参考> 自転車が左側通行の理由(交差点の場合) 自転車の通行区分は「自転車は車道の中央から左側部分の左側端に寄って通行しなければならない」(道路交通法第17条第4項および第18条第1項)と定義されています。路側帯においても同様に左側通行となっています(法第17条の2第1項)。 それでは、なぜ左側通行なのでしょうか。下の図をご覧ください。青色の矢印が左側通行の自転車です。全員左側通行で見通しは良さそうです(A)。しかし、1台の逆走自転車(赤い矢印)があるだけで危なく感じます(B)。 また、右側通行の自転車は自動車からの視角が狭く、視認が難しくなるため事故の原因となります(C)。 歩道通行時に壁側を通行していると、これと同じ理由で交差する自転車や自動車、歩行者と衝突する可能性があります(D)。そのため、歩道通行時は左側通行ではなく、車道寄りを徐行して通行となります。 図 39 では、自転車の左側通行の必要性、AからDを図示しています。 32ページ、33ページ 図 40 では自転車ネットワーク路線を示しています。 自転車ネットワーク路線とは、世田谷区の管理する道路における自転車通行空間の整備携帯の案を示したものです。実際の整備形態は、各路線の整備段階において、交通管理者などの関係機関や地域住民と調整したうえで確定しています。 資料は世田谷区自転車ネットワーク計画、世田谷区、平成27 年3月のものを基に作成しています。 世田谷区が管理する道路は、自転車専用通行帯は未整備12.5キロメートル、整備済み0.9キロメートル、合計13.4キロメートルです。 自転車の安全な通行のため、自動車との構造的な分離が必要な場合は、自転車専用通行帯に代えて、一方通行を原則とする自転車道の選定を検討します。 自転車走行帯は未整備5.2キロメートル、整備済み2.1キロメートル、合計7.3キロメートルです。 自転車走行位置表示は未整備141.7キロメートル、整備済み0.8キロメートル、合計142.5キロメートルです。 利用環境・ルール検討路線は、未整備4.2キロメートル、整備済み0キロメートル、合計4.2キロメートルです。 駅前商店街通りなど、車道を通行する歩行者が著しく多い路線については、自転車通行空間の整備と、歩行者の安全確保の両立が現時点では困難なため、整備形態の選定は行わず、今後対策の検討が必要な路線として位置づけています。 未整備全体は163.6キロメートル、整備済みは3.8キロメートル、合計167.4キロメートルです。 国道と都道の自転車ネットワーク路線は、整備形態は各道路管理者の国と都が定めます。 34ページ、35ページ 図 41では 優先整備路線を示しています。 資料は世田谷区自転車ネットワーク計画、世田谷区、平成27 年3月のものを基に作成しています。 優先整備路線は駅周辺の路線55.3キロメートル、自転車関与事故の多い路線3キロメートル、連続性を確保するための路線14.2キロメートル、合計72.5キロメートルです。 36ページ 4 自転車駐輪環境の整備状況 駅にもよりますが駐輪場の整備は進んでおり、当初目指していた通勤・通学のため駅へアクセスする自転車、朝から夕方まで放置されてしまう自転車への対応については、駐輪場の総整備台数と乗入台数から、量の観点からみると多くの駅において整備が完了しています。また、最近増加傾向にある電動アシスト自転車等の大型自転車、既存の駐輪ラックに入れにくい自転車についても、より使いやすい駐輪場となるよう改善を進めています。なお、新たな駐輪場の整備にあたっては、駅周辺の商業地で用地を確保することが難しいため、民間の駐輪場や商業施設等の建設に合わせた附置義務駐輪場の整備を促進する必要があります。 駅周辺駐輪場の整備・利用状況 区内の駐輪場整備は進んでいるが、駅との位置関係により利用率に差がある 区内の駐輪場については、全体として整備が進んでおり、駅別に整備台数と利用率をみると、整備台数が1,000 台以上、かつ利用率80パーセント以上の駅は千歳烏山駅、千歳船橋駅、喜多見駅、三軒茶屋駅、桜新町駅、用賀駅となっています。 しかし、千歳烏山駅、三軒茶屋駅を例に駐輪場別の整備台数と利用率をみると、概ね駅から離れるほど利用率が低くなっており、駅に対する位置関係により利用されにくい駐輪場がみられます。 また、夕方の駐輪ピーク時に整備台数が対応できていないなど、依然として対策が不充分な駅も存在します。(図42参照) 図 42 では駅別の駐輪場整備台数と利用率を示しています。 資料は駅前放置自転車等の現況と対策、令和元年度調査、東京都のものを基に作成しています。 注1 利用率は乗入台数を整備台数で割ったものです。 注2 この資料は11 時台の乗入状況、令和元年度のものを基に作成しています。 注3 直近のデータである令和2年度の乗入台数は、コロナ禍の影響を受けて大幅に減少しているが、今後の自転車利用の傾向について十分に把握できないことから、従来の傾向と連続性が保たれている令和元年度データに基づく分析としています。 図では、利用率が高い駅として千歳烏山駅、千歳船橋駅、喜多見駅、三軒茶屋駅、桜新町駅、用賀駅を示しています。 37ページ 図43では、千歳烏山駅と三軒茶屋駅の駐輪場配置と利用率を示す図を示しています。 千歳烏山駅では、駅の北側に位置する烏山地下自転車等駐車場が100パーセント以上、駅の南側に位置する烏山中央自転車等駐車場が80パーセント以上の利用率を示しています。 そのほかに、駅の北側に位置する烏山北自転車等駐車場が50パーセント以上、南側に位置する新烏山南自転車等駐車場が50パーセント以上の利用率を示しています。 三軒茶屋駅では、駅の南側に位置する三軒茶屋二丁目自転車等駐車場が100パーセント以上、駅の北側に位置するキャロットタワー駐輪場地下が80パーセント以上、駅の南側に位置する三軒茶屋中央自転車等駐車場が80パーセント以上の利用率を示しています。 そのほかに、駅の北側に位置する三軒茶屋西自転車等駐車場、駅の東側に位置するES21西友三軒茶屋店駐輪場A、三軒茶屋北第二自転車等駐車場、三軒茶屋北自転車等駐車場、三井のリパーク三軒茶屋駅前駐輪場は50パーセント以上の利用率を示しています。 38ページ 大型化への対応状況 既存のラックを撤去して大型自転車に対応した結果、整備台数が減少 チャイルドシート付電動アシスト自転車をはじめ、大型自転車の需要が増加しています。区立駐輪場では既存のラックを撤去して、収まりにくい大型自転車用平置きスペースを確保する等の対応を迫られており、その結果として収容台数が減少しています。 大型自転車に対応した駐輪スペースは、令和元年度時点では全体の約2割となっています。 図 44 大型自転車への対応に伴う収容台数の減少 平成21年から平成30年の区立駐輪場のものを示しています。 平成21年から平成30年にかけて2,451台のラックを撤去し、 大型自転車対応に切り替え817台のラックが減少し、1,634台の大型自転車平置きで収容しました。結果として、33パーセント、ラックが減少しました。 図 45 大型自転車への対応状況 区立駐輪場のものを示しています。 資料は世田谷区資料を基に作成しています。 大型自転車対応として、平置18.5パーセント、大型自転車用ラック5.5パーセント、合計23.9パーセントです。大型自転車非対応は76.1パーセントです。大型自転車に対応した駐輪スペースが、区立駐輪場の全体の約4分の1を占めていることを示しています。 39ページ 参考 これからの駐輪場に求められる運営の工夫 区の自転車施策は、駅前にあふれていた放置自転車の対策から始まりました。最初は放置防止の啓発と撤去のみを行っていましたが、駐輪場所がないことについて多くの苦情が寄せられたこともあり、駐輪場の整備が始まりました。 世田谷区の地価は、令和2年の公示価格をベースにすると、1平方メートル当たり平均63.6 万円です。東京圏の市区の住宅地の平均価格等は国土交通省のものです。自転車1台に必要な面積は1.2 平方メートルであり、100 台分の駐輪場であれば、土地取得にかかる費用も多額となることが想定されます。しかし、駐輪場は基本的に駅の近くに整備するため、実際の土地代はさらに高くなり、ラックなどの設備を設置する費用もかかります。 一方、利用料金は、月ぎめの定期利用の場合で2,000 円程度です。月に20 日間、朝7時から夕方6時までの11 時間の利用とすると、1日当たりの利用料金は100 円となります。駐輪場の料金が安いのは、当初、放置自転車対策として整備が始まったために、利用料金がハードルとなって利用が滞ることのないよう、料金をできるだけ低く抑えたためです。利用料金が高すぎると、駐輪場の利用率が下がってしまうことから、放置自転車を誘発する可能性があり、適正な料金を設定する必要がありますが、初期コストに対する料金設定の難しさが、民間参入の障壁となっている面があります。 スーパーマーケットの駐輪場については、「1時間まで無料」のところが多いですが、これは自転車で買い物に来てもらうための工夫で企業戦略です。自転車を利用するお客様は、徒歩よりも来る範囲が広く、徒歩で来るお客よりも多く買い物をするため、それだけ売り上げが多くなります。このため、駐輪時間が1時間を超えると、料金が高くなるように設定するなど、短時間利用を誘導し、駐輪場の回転を高める設計となっています。 しかし、駐輪対策は、放置自転車対策として、朝から夕方までずっと駐輪している通勤・通学のための駅へアクセスする自転車を対象としていたため、区立駐輪場では、こうした短時間駐輪自転車向けの工夫が不足しています。夕方に放置自転車が増加する実態や収益性を踏まえ、限られた駐輪場のスペースを有効に活用するため、利用率・回転率を高める手法を検討していく必要があります。 運営の工夫を図り、どのように駐輪場を有効活用するか、今後、さらに考えていく必要があります。 40ページ 5 レンタサイクル、シェアサイクルの状況 自転車における「シェア」は、「自転車を所持しなくても、必要なときに利用できる」という自転車利用者のメリットと、「一人ひとりが個別に自転車を利用すると、自転車の総台数が増え、多くの駐輪場が必要になるとともに、放置自転車も増える」という都市側の課題を結び付け、解決するものです。 この考え方により、観光地などでの貸自転車と同様の形態の「レンタサイクル」が導入されました。しかし、料金体系の影響もあり、1日中借り出されている場合が多く、自宅から駅、駅から目的地の双方向で利用するような効果が十分に発揮されてはいない状況です。 その後、ICT※9の発達により、短時間利用を誘導する15 分毎などの短い時間単位で課金する料金体系設定が可能となり、これまでとは別のビジネスモデルである民間シェアサイクルが現れ伸展してきました。 ※9 ICTとは、インフォメーション アンド コミュニケーション テクノロジーで、情報通信技術のことです。 レンタサイクルポートの整備・利用状況 区内の7か所のポートは、回転率が低く、ネットワーク化が完了していない 区が整備したレンタサイクルポートやコミュニティサイクルポート※10は、全部で7か所あります。通勤・通学での利用者が多く、借りた場所で返却するレンタサイクル型の利用がほとんどです。さらに、1回当たりの利用時間が長く、商用・買い物・観光など日中の短時間利用が少ないため、1 台当たりの回転率が低いままにとどまっています。 区は南北方向の交通を補完するコミュニティサイクルポートのネットワーク化を目指してきましたが、現況では、当初計画していたネットワークの一部しか構築できていません。今後、民間シェアサイクルの利用拡大の状況を踏まえ、引き続き南北方向の交通の補完を図る必要があります。 ※10 コミュニティサイクルポートは、借りた場所と異なる場所に返却できるポートのことです。 図 46では 区内のレンタサイクルポートを地図で場所を示しています。 資料は世田谷区資料を基に作成しています。 IHIがやりん桜上水南ポート、経堂駅前ポート、桜新町ポート、等々力ポート、三軒茶屋ポートが相互に連携して区内東側をカバーしていることを示しています。 そのほかに、三軒茶屋北レンタサイクルポート、成城北第2レンタサイクルポートがあることを示しています。 41ページ レンタサイクル、コミュニティサイクルとシェアサイクルについて 料金を支払って一定の時間、自転車を借りて乗ることができるサービスは、「レンタサイクル」「シェアサイクル」「自転車シェアリング」等と呼ばれています。 区では、放置・駐輪対策の一環として平成6年から「レンタサイクル」事業を実施しています。平成19 年には、借りた場所と異なる場所に返却できる「コミュニティサイクル」システム、(愛称「がやりん」)を導入しました。近年、民間事業者によるサービス展開が進み、その多くが「シェアサイクル」と自称しています。 この計画では、区が行っているものは「レンタサイクル、コミュニティサイクル」、民間事業者が行っているものには「シェアサイクル」の語を用いています。 補足 民間シェアサイクルは駅近くのポートに多数の自転車を用意する区のコミュニティサイクルと異なり、駅付近だけでなく鉄道路線間の幹線道路沿いや住宅地にもポートを設置し、自宅から目的地、目的地から自宅などを直接結ぶシステムです。そのため、民間シェアサイクルの展開が進めば、出発地と目的地の間をきめ細かくつなぐ新たなネットワークが形成されることが期待できます。このような特長を持った民間シェアサイクルとの連携を踏まえて、今後のコミュニティサイクルのネットワーク化について検討していきます。 図 47 ではこれまで区が目指してきたコミュニティサイクルのネットワークを示しています。ネットワーク化の完了済みは、桜上水駅、経堂駅、桜新町駅、等々力駅で区中央部の南北交通を結んでいます。ネットワーク化の検討は、千歳烏山、成城学園前駅、二子玉川駅の区西側の南北交通、下北沢駅、三軒茶屋駅、自由が丘駅の区東側の南北交通です。 図 48 ではコミュニティサイクルポートの利用状況を示しています。 資料はレンタサイクルとコミュニティサイクルの貸出記録データ、株式会社IHI、令和元年度のものを基に作成しています。 利用者は1日あたり経堂駅前344人、桜上水南268人、三軒茶屋中央127人、桜新町113人、等々力15人となっています。 他のポートの利用率でみると、等々力21.7パーセント、桜新町17.7パーセント、桜上水南17.3パーセント、経堂駅前16.7パーセント、三軒茶屋中央11パーセントの順に多くなっています。 42ページ 民間シェアサイクルの状況 区では、民間シェアサイクル実証実験を実施 区内では複数の民間シェアサイクル事業者が事業を展開していますが、ポート設置箇所や自転車配置台数は限定的でネットワークの構築には至っていません。 これに対し、令和2年度から民間シェアサイクル事業者1社と協定を結び、実証実験を二子玉川エリアで実施し、公共用地の貸出等の区の支援により、区内の南北交通や区のレンタサイクル、コミュニティサイクルを補完する効果を検証しています。検証期間は令和2年4月1日から令和4年3月31日までです。 図 49 では民間シェアサイクル実証実験のパンフレットを掲載しています。 資料は世田谷区ホームページを基に作成しています。 43ページ 6 放置自転車対策の状況 区では、歩行者、障害者等の安全な通行や、緊急車両の活動を阻害しないよう、放置自転車対策を推進してきました。令和元年の調査時における区内の放置自転車台数は1,311 台で、ピーク時の昭和62 年の33,161 台に対し、約25 分の1に減少しています。 放置自転車台数 放置自転車台数は年々減少していますが、千歳烏山など依然として多い駅が存在 区では、駅周辺の道路等の公共の場所を放置禁止区域に指定し、放置自転車等の撤去を進めてきました。区内の駐輪場の整備台数は年々増大し、令和元年度で約56,000台に達しており、これに伴い、放置自転車も年々減少しています。区内各駅周辺の放置自転車台数の合計では、依然として都内ワースト7位ですが、平日昼間時点においては駅周辺に乗り入れた自転車の合計、駐輪場に停められた自転車と放置自転車の合計で放置自転車を割った、放置率は、3パーセント台と低くなっています。これは乗入台数に対し、十分な量の駐輪場が整備されているためです。各駅でみても、量の観点からは、通勤・通学利用を中心とした自転車利用に対し、多くの駅で駐輪場の台数が足りています(図 51参照) 図 50は放置台数・実駐輪台数・整備台数の推移を示しています。 資料は世田谷区資料を基に作成しています。 実駐輪台数は駐輪場に実際に止まっている自転車の台数、整備台数は駐輪場に収容可能な自転車の台数のことです。 整備台数は平成13年32,625台、令和元年56,207台と着実に整備が進んでいることを示しています。 放置台数は平成13年14,799台、令和元年1,311台と年々減少していることを示しています。 実駐輪台数は平成13年29,098台、42,339台と年々増加していることを示しています。 表 4 では各区の放置自転車台数と放置率(都内ワースト10位)を示しています。 資料は駅前放置自転車等の現況と対策、令和元年度調査、東京都のものを基に作成しています。 この資料は自転車のみです。原動機付自転車と自動二輪車は除外しています。 ワースト10位は 1 位 渋谷区2,551台、33.1パーセント 2 位 千代田区1,994台、 47.9パーセント 3 位 台東区1,782 台、26.3パーセント 4 位 港区1,534台、 23.9パーセント 5位  中央区1,505台、 34.4パーセント 6 位 葛飾区1,275台、 3.8パーセント 7 位 世田谷区1,240 台、3.1パーセント 8 位 品川区1,140台、 10.2パーセント 9 位 江東区984台、 6.0パーセント 10位  大田区955台、 3.3パーセント となります。 44ページ 図 51では区内各駅の乗入台数と駐輪場整備台数の比較を示しています。 出典は駅前放置自転車等の現況と対策、令和元年度調査、東京都のものを基に作成しています。 注1 この資料は自転車、原動機付自転車の合計です。自動二輪車は除外しています。 注2  直近のデータである令和2年度の乗入台数は、コロナ禍の影響を受けて大幅に減少しているが、今後の自転車利用の傾向について十分に把握できないことから、従来の傾向と連続性が保たれている令和元年度データに基づく分析としています。 駐輪場整備台数は、二子玉川駅約7,000台、千歳烏山駅6,500台、成城学園前駅5,000台、経堂駅4,500台の順で多くなっています。 乗入台数は、千歳烏山駅5,500台、二子玉川駅4,500台、成城学園前駅4,000台、経堂駅3,500台の順で多くなっています。 整備台数から乗入台数を引いた利用可能台数は、二子玉川が2,500台、成城学園前駅、経堂駅、上北沢駅が1,000台となっています。 45ページ 参考 駐輪場の配置と駐輪場利用の特性 これまでの経験上、次の二つのことがわかっています。 ア 駐輪場は配置が重要であり、駅からの距離や方角によって利用しやすさが異なり、これにより、利用されにくい駐輪場、ができてしまう。 イ 放置自転車が多いので駐輪場を整備すると、利便性はよいのに駐輪場が利用されず、これまであった放置自転車が別の場所に移動してしまうことがある。また、駐輪場があっても利用しない層も一定程度存在する。 「ア」については、「駅から遠い」ことのほか、主要なアクセス方面に駐輪場がなく、図52のようにいったん駅を通り過ぎて駐輪し、戻ってこなければいけない場合、利用されにくくなってしまいます。 「イ」については、「無料だから自転車を利用するのであって、有料なら利用しない」層が一定程度存在するということになります。これらの層については、駐輪場整備により放置自転車を防止することは難しくなります。これまでの経験上、乗入台数の2から3パーセント程度存在すると想定されます。 図 52 駅へのアクセス方面のイメージを示しています。 自宅から駅の間に駐輪場が整備されていないと、最短距離で駅へ向かうことができず、また駐輪場が駅の反対にしか整備されていないと、駅を通過して駐輪したあと、徒歩で再び戻る必要があることを示しています。 46ページ 駅別の放置自転車台数 商業施設の立地が多いほど、放置自転車が多い傾向 駅別の放置自転車台数と商業施設の立地状況(小規模事業所の従業者数)との関係をみると、商業施設の立地が多いほど、放置自転車が多い傾向が見られます。 放置自転車台数は、令和元年度で千歳烏山駅が250 台で最も多く、次いで三軒茶屋駅(141 台)、下北沢駅(111 台)が多くなっています。 図 53 では小規模事業所の従業者数と放置自転車台数の関係を示しています。 資料は平成28 年経済センサス活動調査、総務省のもの、世田谷区資料を基に作成しています。 この資料は11 時台の放置状況、令和元年度のものです。 この資料は小規模事業所、従業者数30 人未満の従業者数を示しています。 放置自転車台数は、商業施設の立地が多い千歳烏山駅、次いで三軒茶屋駅、下北沢駅の順に多いことを示しています。 自転車等撤去活動 放置自転車等撤去件数は活動日数当たり1日当たり75 台令和元年度、大型自転車も増加 区内の放置自転車等撤去台数は減少傾向にありますが、現在でも活動日数当たり令和元年度は1日当たり75台の撤去件数があります。近年では、大型自転車の撤去割合も増加しています。 図 54 では撤去活動日数当たり撤去台数を示しています。 総撤去台数は、平成26年38,536台、平成27年34,444台、平成28年33,727台、平成29年29,285台、平成30年30,820台、令和元年26,353台と年々減少していることを示しています。 撤去活動日数当たり撤去台数は、平成26年度110台、平成27年度97台、平成28年度96台、平成29年度83台、平成30年度88台、令和元年度75台と減少していることを示しています。 47ページ 駅別の撤去台数をみると、令和元年度は千歳烏山駅が4,663 台で最も多く、次いで三軒茶屋駅4,465 台、下北沢駅2,796 台、駒沢大学駅2,751 台が多くなっています。 図 55 では駅別の年間撤去台数を示しています。 資料は世田谷区資料、令和元年のものを基に作成しています。 各駅の撤去台数は、駅前広場や駅周辺の道路等の「放置禁止区域内」にて撤去した自転車と原動機付自転車の台数です。 千歳烏山駅4,663 台、三軒茶屋駅4,465 台、下北沢駅2,796 台、駒沢大学駅2,751 台、 千歳船橋1,188台、桜新町1,037台、二子玉川984台、経堂883台、用賀847台、梅ヶ丘739台、喜多見584台、池尻大橋517台の順に多くなっています。そのほかの駅については、400台をきっています。放置禁止区域外は1,566台となっています。 48ページ 参考 午前の放置自転車と午後の放置自転車の違い 世田谷区の自転車施策は放置自転車対策から始まっており、このため、区による駐輪場整備は、駅前の放置自転車、すなわち通勤・通学のため大量に駅へアクセスする自転車を収容することを目指して進められました。 都内共通で実施されている放置自転車実態調査では「平日の午前11 時頃」の放置・駐輪自転車台数を計測し、これは主に通勤・通学で駅へアクセスする自転車の台数をカウントするためです。先に見たように、放置自転車の数は大きく減少しており、多くの駅については当初の目的を達成しています。 一方、買い物や用事等のための短時間駐輪自転車については、これまで、十分な対応がなされてきませんでした。駅周辺の乗入自転車台数、放置自転車台数のピークは、平日の午後に発生することが、区の自転車利用実態調査により明らかになっています。放置自転車実態調査による「平日の午前11 時頃」時点の放置自転車台数に、その後発生した買い物等の短時間駐輪の自転車利用分が上乗せされる結果です。このため、撤去された放置自転車に占める、午後に発生した路上放置の割合が近年高くなってきています。 図 56 では駅乗入台数と放置台数の平日11 時台と夕方の比較を示しています。 資料は実態調査結果、令和元年11 月のものを基に作成しています。 乗入台数の平日11 時台と夕方の比較では、千歳烏山5,500台、二子玉川5,000台、三軒茶屋、用賀3,000台、喜多見2,500台の順に、共に多くなっています。 放置台数の平日11 時台と夕方の比較では、千歳烏山は平日11 時台250台、夕方のピーク時は550台と、夕方のピーク時の台数が多くなっています。 三軒茶屋は平日11 時台250台、夕方のピーク時は450台と、夕方のピーク時の台数が多くなっています。 そのほかの駅、二子玉川、用賀、喜多見など、平日11時台よりも、夕方のピーク時の台数が多くなっていることを示しています。 49ページ 図 57では午前・午後の自転車撤去状況を示しています。 資料は世田谷区資料を基に作成しています。 集計期間は2019年1月4日から2019年12月28日です。 自転車の撤去割合は、 三軒茶屋 午前25.9パーセント、午後74.1パーセント 千歳烏山 午前38.3パーセント、午後61.7パーセント 下北沢 午前21.1パーセント、午後78.9パーセント 経堂 午前24.1パーセント、午後75.9パーセント 千歳船橋 午前18.3パーセント、午後81.7パーセント 駒沢大学 午前32.1パーセント、午後67.9パーセント 桜新町 午前31.1パーセント、午後68.9パーセント 用賀 午前37.4パーセント、午後62.6パーセント 二子玉川 午前25.2パーセント、午後74.8パーセント と、午後に発生した路上放置の割合が高いことを示しています。 50ページ 7 区民の自転車に対する意識 交通施策全体の中でも、自転車走行空間環境の整備に対する要望が最も多い 令和元年度の世田谷区民意識調査によると、これから区が力を入れるべき交通施策として、「自転車走行空間環境の整備」が1位、「放置自転車対策」が9位となっています。 なお、平成30 年度の区政モニターアンケートでは、「自転車走行空間環境の整備」は1位、「放置自転車対策」は4位でした。区民誰もが快適に自転車を利用できる環境を目指し、自転車通行空間の整備、放置自転車の防止等を計画的に進めていきます。 図 58では、これから力を入れるべき区の交通施策、令和元年度のものを示しています。 資料は世田谷区民意識調査2019、世田谷区、令和元年度実施のものを基に作成しています。 自転車走行空間環境の整備 自転車専用道路の整備などが29.2パーセントで1位、放置自転車対策 駐輪場の整備、レンタサイクル、コミュニティサイクルの充実などが15.8パーセントと9位となっています。そのほかに、高齢者・障害者・子育て世帯のための交通政策 移動の支援などが26.8パーセント、鉄道の改善 移動時間の短縮、混雑の緩和などが26.5パーセント、歩行者空間の整備 歩道整備、歩道拡幅、歩道段差解消、電柱の地中化促進など25.4パーセント、開かずの踏切解消 道路と鉄道の立体化など25.2パーセントとなっています。 図 59 ではこれから力を入れるべき区の交通施策、平成30 年度のものを示しています。 資料は平成30 年度区政モニターアンケート、世田谷区、平成30 年度実施のものを基に作成しています。 自転車走行空間環境の整備 自転車専用道路の整備などが32.9パーセントで1位、開かずの踏切解消 道路と鉄道の立体化など26.8パーセント、歩行者空間の整備26.2パーセント、放置自転車対策 駐輪場の整備、レンタサイクル、コミュニティサイクルの充実などが24.4パーセントで4位、バス交通の改善 新規路線導入、走行環境の整備など20.1パーセントとなっています。 51ページ 区民の6割以上が、歩行時に自転車と接触または接触しそうになった経験がある。 区民意識調査平成30年のものによると、「歩行時に自転車とぶつかった、あるいは、ぶつかりそうになったことがある」方は6割を超えています。 調査結果を踏まえ、歩行者と自転車が共に安全に通行できるよう、まちづくりと連携した取組みを進めます。 図 60 では歩行時の自転車との接触有無を示しています。 資料は世田谷区民意識調査2018、世田谷区、平成30年度実施のものを基に作成しています。 歩行所との接触有り61.0パーセント、接触なし35.2パーセント、わからない1.8パーセント、無回答2.1パーセントとなっています。歩行者との接触が6割を超えることを示しています。 52ページ 2.3 総合計画におけるこれまでの成果と評価・検証 総合計画(これまでの計画)の計画期間中(平成23 年度から)の取組み内容と課題を整理しました。 基本方針1は、安全な自転車利用を展開する世田谷の風土づくりです 個別方針は、自転車交通ルール・マナー遵守の啓発促進です。 主な取組み内容は、小中学校や地域における交通安全教室、自転車安全講習の実施、自転車事故の多い20歳から40 歳代への重点的取組み、自転車安全利用推進員の育成・支援、啓発資料の作成・配布、啓発イベントやキャンペーンの地域との協働による実施等です。 課題は、講習に参加しない、参加しにくい層への対応、取組みの進んでいない事業者向け対応の充実、「自転車安全利用推進」等、区民主体の自転車安全利用啓発の推進、交通事故データの活用等による、さらにわかりやすい地域への働きかけです。歩道を通行することの多い買い物や子どもの送迎の自転車への重点的啓発は、短時間駐輪自転車に関わる課題です。 個別方針は、放置自転車ゼロへの取組み推進です。 主な取組み内容は、クリーンキャンペーン等の啓発、整理誘導員の配置、放置禁止区域の指定・見直し、民間委託による放置自転車撤去の計画的実施、放置自転車対策の効率化等です。 課題は、駅ごとの放置状況や原因分析に基づく放置自転車対策の効果的・効率的実施です。特に、買い物等の短時間駐輪自転車による路上放置への対応の充実は短時間駐輪自転車に関わる課題です。 基本方針2は、日常生活を支援する安全で快適な自転車利用の場づくりです。 個別方針は、安全で快適な自転車利用環境の整備です。 主な取組み内容は、道路の新設・拡幅にあわせた自転車通行空間の整備、既存道路も対象とした自転車走行位置表示等の整備等です。 課題は、自転車通行空間の計画的整備とネットワーク化、 令和6年度までの優先整備路線の整備完了を目指すものです。歩道を通行することの多い買い物や子どもの送迎の自転車に向けた自転車通行空間の認知度向上は短時間駐輪自転車に関わる課題です。 個別方針は、環境や利便性に配慮した自転車等駐車場の整備です。 主な取組み内容は、駅周辺の駐輪需要を踏まえた区立駐輪場の計画的整備、ニーズの変化に合わせた大型自転車用駐輪スペースの確保等です。 課題は、新たな駐輪場の確保です。「子育て自転車」をはじめ、自転車の大型化・多様化に対応した駐輪場の整備・改修、買い物等の自転車の短時間駐輪への対応の充実は短時間駐輪自転車に関わる課題です。 基本方針3は、地域交通を支える自転車利用環境のしくみづくりです。 個別方針は、地域の交通を支え低炭素社会の実現に貢献する自転車利用のしくみづくりです。 主な取組み内容は、レンタサイクル・コミュニティサイクルの充実、民間シェアサイクル実証実験、新設駐輪場での交通系ICカード対応精算機導入等です。 課題は、民間シェアサイクルの普及促進、区レンタサイクルの将来像の検討です。買い物等の短時間・短距離移動への民間シェアサイクルによる対応促進は短時間駐輪自転車に関わる課題です。 個別方針は、安全で快適な自転車利用を促進するしくみづくりです。 主な取組み内容は、「世田谷区民自転車利用憲章」の普及浸透、二子玉川「たまチャリルール」づくりと他地域への普及、条例改正内容の駐輪場・レンタサイクルポート・自転車店等との連携によるPR等です。 課題は、買い物の歩行者・自転車で混雑する商店街での自転車ルールづくりは短時間駐輪自転車に関わる課題です。自転車情報発信の充実です。 53ページ 2.4 自転車に関わる法制度や上位関連計画の動向 自転車安全利用に向けた動き 自転車利用の増加、「自転車が危ない」との世論を踏まえ、平成23 年の警察庁通達に端を発し、「自転車は原則車道を通行。歩道は例外。」が改めて徹底され、自転車利用に関し、路側帯の左側通行の徹底、危険行為に対する自転車運転者講習の受講義務付け等、道路交通法がより厳しく改正されました。こうした流れの下、国により「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」が平成24年4月に示され、また、自転車利用に関する行政・事業者・利用者等の責務を定めた「東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」が平成25年7月に制定されました。 その後、安全な自転車通行空間の整備をさらに進めるため、「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」が平成28年7月に改定されるとともに、自転車利用者、保護者、自転車使用事業者及び自転車貸付業者による自転車損害賠償責任保険等への加入の義務化等を盛り込んだ、「東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」改正条例が令和2年4月に施行されました。 自転車の多様な利用に注目した動き 通勤・通学時の駅利用のための鉄道駅周辺の駐輪場の整備が進んだことを受け、国により平成24年11月に策定された、「自転車等駐車場の整備のあり方に関するガイドライン」では、買い物等の短時間駐輪への対応を求め、多様な主体による整備のあり方が示されました。 平成29年5月、「自転車活用推進法」に基づき国により平成30年6月に策定された、「自転車活用推進計画」では、自転車交通の役割拡大による良好な都市環境の形成、サイクルスポーツの振興等による活力ある健康長寿社会の実現、サイクルツーリズムの推進による観光立国の実現、自転車事故のない安全で安心な社会の実現、の4つの目標を掲げています。 区における自転車利用に関連する動き 区の基本構想、基本計画、新実施計画等で子育て支援や環境への配慮、地域のネットワークづくり等が重点化され、また、新たに改定された都市整備方針、交通まちづくり基本計画(中間見直し)等により、公共交通環境の充実が目指され、自転車利用のあり方が改めて注目されることになりました。 これらを踏まえ、区では自転車条例の改正が令和2年4月に一部施行され、10 月にも施行されました。施行により、13 歳未満の子どもの自転車ヘルメット着用の義務化、自転車点検整備の努力義務化、「ながらスマホ」等の「ながら運転」の禁止の明文化等により、自転車安全利用啓発をさらに進めるとともに、二子玉川駅周辺で民間シェアサイクルの実証実験を行う等、まちの特性や将来像に適合した、安全・安心・快適な自転車利用環境の整備に取組んでいます。自転車に関わる法制度や上位関連計画の動向を次ページに示します。 54ページ 図 61 では自転車に関わる法制度や上位関連計画の動向を示しています。 平成23年度は、警察庁より「自転車は原則車道を通行。歩道は例外」の徹底。と通達がありました。 平成24年度は国土交通省と警察庁より、安全で快適な自転車利用環境創出ガイドラインとして自転車通行空間の整備について示されました。 同じく平成24年度、国土交通省より、自転車等駐車場の整備のあり方に関するガイドラインが示されました。通勤、通学だけでなく、買い物等の短時間駐輪への対応、多様な主体による整備が示されました。 平成25年度は東京都より、東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例が制定されました。ヘルメット着用義務化・点検整備の努力義務化について示されました。 平成28年度は世田谷区では世田谷区自転車等の利用に関する総合計画の中間見直しが施行されました。 同じく平成28年度は国土交通省と警察庁より、平成24年度に示された、安全で快適な自転車利用環境創出ガイドラインが改定されました。 平成29年度は国土交通省より自転車活用推進法が施行され、自転車の活用を総合的・計画的に推進することが示されました。 平成30年度は国土交通省より、自転車活用推進計画、東京都より、東京都自転車活用推進計画が示されました。国土交通省の自転車活用推進計画では、「自転車交通の役割拡大による良好な都市環境の形成」、「自転車事故のない安全で安心な社会の実現」等、目標が示されました。 令和2年度は東京都より自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例が改正され、自転車賠償保険加入の義務化が示されました。 同じく令和2年度は、世田谷区では、世田谷区自転車条例が改正され、13歳未満の子どものヘルメット着用の保護者の義務化となりました。 同じく令和2年度は、世田谷区自転車活用推進計画及び自転車等の利用に関する総合計画について、策定作業を進めています。 55ページ 参考  自転車に関わる法制度や上位関連計画の概要 世田谷区の動向 1 平成30年3月 「世田谷区新実施計画(後期)」が策定されました。 ・自転車関連施設に関する取組みとして、「コミュニティサイクルシステムのネットワーク拡充の検討に基づく取組み」、「三軒茶屋北レンタサイクルポートのあり方検討」、「自転車等駐車場の3か所の開設」について記載 2 令和2年3月 「世田谷区交通まちづくり基本計画 中間見直し」が策定されました ・施策として「自転車利用環境の整備」が提示され、その取組みとして「自転車ネットワーク形成に向けた自転車通行空間の整備」、「自転車等駐車場、公共施設・商業施設の自転車等駐車場スペースの確保」、「自転車の放置対策の推進」について記載 3 令和2年4月、令和2年10月 「世田谷区自転車条例」の一部が改正されました。 令和2年4月 施行 ・スマホ等の「ながら運転」禁止の明文化等 令和2年10月 施行 ・13 歳未満の子どものヘルメット着用義務化 東京都の動向 1 平成29年2月、令和2年4月 「東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」改正条例が施行されました。 平成29年2月 施行 ・自転車小売業者等による販売時等の安全利用啓発の義務化、自転車貸付業者による貸付時等における啓発の実施等 令和2年4月 施行 ・自転車利用者、保護者、自転車使用事業者及び自転車貸付業者による自転車損害賠償責任保険等への加入を義務化等 2 平成29年3月 「利用者の視点に立った 東京の交通戦略推進会議のとりまとめ」が行われました。 ・ターミナル駅の利便性向上、歩行者空間の創出、自転車施策の推進、舟運の活性化について、2020 年に向けた具体の取組みを提示 ・自転車施策については、「自転車利用のルール・マナーの周知徹底」、「自転車利用者の安全確保」、「自転車走行空間の整備」、「自転車シェアリング」について記載 3 平成31年3月 「東京都自転車活用推進計画」が策定されました。 ・東京都の自転車の活用の推進を図るための基本的な方針や具体的な施策を明記 ・目指すべき将来像に向け18 の施策を提示し、「環境形成」、「健康増進」、「観光振興」、「安全・安心」の4種類に区分 56ページ 国(国土交通省、警察庁)の動向 1 平成27年6月 14 項目の危険行為が施行されました。 2 平成28年7月 国土交通省・警察庁 「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」が改定されました。 ・現行ガイドライン、平成24年11月のもののうち、「1自転車通行空間の計画」、「2自転車通行空間の設計」について改定 ・段階的な計画策定方法の導入、暫定形態の積極的な活用、路面表示の仕様の標準化、自転車道は一方通行を基本とする考え方の導入等について記載 3 平成29年5月 「自転車活用推進法」が施行されました。 ・基本理念を定め、国の責務等を明らかにし、施策の基本となる事項を定めるとともに、自転車活用推進本部を設置することにより、自転車の活用を総合的かつ計画的に推進 ・都道府県、市区町村は、区域の実情に応じた自転車活用推進計画を定めるよう努めることが明記 4 平成30年6月 「自転車活用推進計画」が閣議決定されました。 ・自転車活用推進法に基づき自転車の活用の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本計画 ・「自転車交通の役割拡大による良好な都市環境の形成」、「サイクルスポーツの振興等による活力ある健康長寿社会の実現」、「サイクルツーリズムの推進による観光立国の実現」、「自転車事故のない安全で安心な社会の実現」の4つの目標を提示 5 平成30年8月 「地方版自転車活用推進計画 策定の手引き(案)」の公開 ・「地方版自転車活用推進計画」の策定を促進するため、計画を検討する際の手順や策定手法等を整理 6 令和元年5月 自転車活用推進官民連携協議会「自転車通勤導入に関する手引き」が策定されました。 ・自転車活用推進計画に基づき、事業者活動における自転車通勤や業務利用の拡大を推進 ・これから自転車通勤制度を導入に向け検討をする際や、すでにある自転車通勤制度を見直す際の参考書 7 平成31年4月 「道路構造令」の一部が改正されました ・自転車を安全かつ円滑に通行させるため設けられる帯状の車道の部分として「自転車通行帯」に関する規定を新設 ・新たに整備する道路における自転車通行帯の設置を推進 8 平成29年3月、令和元年12月、令和2年6月 「道路交通法」が改正されました。 平成29年3月 改正 ・高齢者による交通事故を防止するため、認知症などに対する対策を強化 ・「臨時認知機能検査・臨時高齢者講習の新設」、「臨時適性検査制度の見直し」、「高齢者講習の合理化・高度化」について規定 令和元年12月 改正 ・携帯電話使用等(ながらスマホ)に関する罰則を強化 ・同違反に係る基礎点数および反則金の額を引き上げ 57ページ 令和2年6月 改正 ・高齢運転者対策の強化  (高齢者技能検査の受検、安全運転サポート車への限定など条件付き免許証の発行) ・自転車運転者講習の対象となる危険行為※11に妨害運転、あおり運転が追加 計15 項目として追加されました。 危険行為15 類型 @信号無視、道交法第8条 A通行禁止違反、道交法第8条第1項 B歩行者用道路における車両の義務違反、徐行違反、道交法第9条 C通行区分違反、道交法第17 条第1項、第4項又は第6項 D路側帯通行時の歩行者の通行妨害、道交法第17 条の2第2項 E遮断踏切立入り、道交法第33 条第2項 F交差点安全進行義務違反等、道交法第36 条 G交差点優先車妨害等、道交法第37 条 H環状交差点安全進行義務違反等、道交法第37 条の2 I指定場所一時不停止等、道交法第43 条 J歩道通行時の通行方法違反、道交法第63 条の4第2項 K制動装置ブレーキ不良自転車運転、道交法第63 条の9第1項 L酒酔い運転、道交法第65 条第1項 M安全運転義務違反、道交法第70 条 N妨害運転交通の危険のおそれ、著しい交通の危険、道交法第117 条の2の2第11 号、第117 条の2第6号 ※11 危険行為は自転車の交通ルール遵守を徹底するため、自転車の運転に関し上記の違反行為である危険行為を3年以内に2回以上行った者に対し、都道府県公安委員会が自転車の運転による交通の危険を防止するための自転車運転者講習の受講が命じられます。 58ページ 2.5 自転車を取り巻く社会情勢の変化 1 社会情勢の変化の概況 自転車を取り巻く社会環境の変化・課題として、次のようなことが挙げられます。 ・自転車利用に対する地球温暖化対策や渋滞対策からの関心の高まり ・自転車利用に対する健康志向からの関心の高まり ・自転車関連事故の下げ止まりと自転車対歩行者事故の問題化 ・地域を支える移動手段のひとつとして自転車への期待の増大 ・子育て世代や高齢者の足としての普及浸透 ・大型自転車や電動アシスト自転車の増加など自転車の多様化 ・民間のシェアサイクルの普及 これらを踏まえ、特に近年の区内の自転車利用への影響が大きい「電動アシスト自転車の増加など自転車の多様化」、「民間のシェアサイクルの普及」について示します。 2 大型自転車や電動アシスト自転車の増加など自転車の多様化 自転車車両の大型化が急速に増大しており、駐輪場における対応等が必要 近年、電動アシスト車の普及、道路交通法、平成21 年7月1日、東京都道路交通規則の改正に伴う幼児2人同乗自転車の普及等により、駐輪ラックに収まらない車体の大きな大型自転車の比率が高まっています。 自転車の大型化に対応できていない駐輪場においては、大型自転車の駐輪需要に見合った供給が確保されていません。そのため、質的な面も含めた需給バランスの検討が必要です。また、一般の自転車と比較して速さや重さが異なることから、区では、子育て自転車の選び方&乗り方の冊子を発行する等して、安全運転を呼び掛けていますが、併せて区民交通傷害保険への加入促進等、対策を進める必要があります。 図 62では車種による速さ、重さの関係を示しています。 資料は日本工業規格ジス D9111 201、幼児2人同乗用自転車の開発に係る既存モデルの強度・剛性試験、財団法人自転車産業振興協会技術研究所の資料を基に作成しています。 スポーツ車はスピードが一番速く、車重12キロまでの車体です。 その次に、電動アシスト車が速く、車重15から30キロの車体です。 その次に、軽快車が速く、車重10から20キロの車体です。 最後に、幼児同乗用自転車が速く、車重20から27キロの車体です。 図 63 では小冊子「子育て自転車の選び方&乗り方」の表紙を再掲しています。 59ページ 図 64 では電動アシスト車購入のきっかけを示しています。 資料は株式会社コズレによる親子の自転車乗車に関するアンケートを基に作成しています。 アンケート実施期間は2016 年5 月17 日から5 月19 日です。 有効回答数は200、質問方法はウェブアンケートです。 保育園・幼稚園の送迎のため33パーセント、出産を機に17パーセント、兄弟・姉妹が増えたため7パーセントと子育てのために購入する人が全体の約半分いることを示しています。 その他に、買い物で使用したかったため18パーセント、移動距離が長く必要と感じて16パーセント、そのほか9パーセントとなっています。 図 65 では電動アシスト自転車の世帯当たりの普及率を示しています。 資料は平成26 年全国消費実態調査、総務省のものを基に作成しています。 地域別世帯当たり主要耐久消費財の所有数量及び普及率、二人以上の世帯のものです。 全国9.2パーセント、人口5万人以上の都市10パーセント、東京都18.5パーセント、東京都区部20パーセントとなっており、東京都区部の普及率が高いことを示しています。 図 66 では自転車生産台数と電動アシスト自転車の割合の推移を示しています。 資料は生産動態統計、年報、機械統計編、経済産業省の平成15 年から令和元年のものを基に作成しています。 電動アシスト車の割合は、 平成15年自転車生産台数252万台のうち、電動アシスト車21万台、電動アシスト車の割合8.3パーセント。 平成20年自転車生産台数109万台のうち、電動アシスト車27万台、電動アシスト車の割合は25.1パーセント。 平成25年は自転車生産台数97万台のうち、電動アシスト車44万台、電動アシスト車の割合は45.9パーセント。 平成30年自転車生産台数86万台のうち、電動アシスト自車55万台、電動アシスト車の割合は64.2パーセント。 令和元年自転車生産台数88万台のうち、電動アシスト車57万台、電動アシスト車の割合は65パーセントと年々割合が高くなっています。 平成26年には、電動アシスト車と一般車の生産台数が逆転しています。 60ページ 3 民間シェアサイクルの普及進展 民間シェアサイクルが普及しつつあり、区との役割分担のあり方等の検討が必要 近年、民間事業者によるシェアサイクル(41ページ解説参照)が伸展しており、多様な事業者がサービスを提供しています。これらのサービスは地域の新たな交通手段として期待される一方で、今後は継続可能な事業展開が求められます。 民間シェアサイクルは、電動アシスト自転車を用いたものも多く、スマートフォンの専用アプリで利用登録から決済まで行うサービスも増えており、自転車の二次元コードをスキャンすることで貸出し、返却を行うものもある等、ICTを活用したキャッシュレス方式が主流となっています。 都内では、主にNTTドコモ系列の「ドコモ・バイクシェア」、ソフトバンク系列の「ハローサイクリング」等が事業を拡大しています。両社とも自転車にGPS搭載の機器が取付けられており、ポートもラックを含めた置き型になっているなど工夫され、駐輪場整備のような大掛かりな工事等は不要です。「ドコモ・バイクシェア」は、都心部で「東京自転車シェアリング」を実施し、区境を越えた広域相互利用に取り組んでいます。一方、「ハローサイクリング」は、同じシステムを採用していれば運営事業者が異なっていても広域相互利用が可能です。コンビニや地元企業などと提携し、23 区内や市部を中心に小規模なポートを多数配置することで、利便性の向上を図っています。 また、近年実証実験が進められているマース※12では、移動手段の一つとしてシェアサイクルが組み込まれており、「ドコモ・バイクシェア」、「ハローサイクリング」も関係事業者者と提携し、マースを推進しています。 このように、民間シェアサイクルは、電動アシスト自転車の使用、マースも含めたICTの活用等、これまでの「貸自転車」とは異なる特徴を有しています。区内においても、現在、実証実験を行っている「ハローサイクリング」のポートが多数分布していることから、今後の事業継続、拡大動向、並びにシェアサイクルとレンタサイクルの利用特性等を分析し、区のレンタサイクル、コミュニティサイクルシステムとの役割分担のあり方等を検討する必要があります。 図 67では ハローサイクリングの写真を掲載しています。 61ページ 参考  マースとは マース モビリティ アズ ア サービスとは、地域住民や旅行者一人一人のトリップ※1 3単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスであり、観光や医療等の目的地における交通以外のサービス等との連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にも資する重要な手段となるものです。 図 68 ではマースのイメージを示しています。 資料は国土交通省ホームページのものです。 ※13 トリップとはある目的、例えば、出勤や買い物などを持って、起点から終点へ移動する際の、一方向の移動を表すものです。 62ページ 2.6 計画の見直しの方向性 1これまでの計画の基本理念、基本方針への評価 これまでの平成28 年4月、世田谷区自転車等の利用に関する総合計画(中間見直し)では、[ 自転車利用を機軸とした世田谷の都市交通社会の実現」を基本理念とし、この実現に向け、次の3つの視点から、自転車の利用に関する施策を総合的かつ計画的に推進するとしています。 @放置自転車ゼロ A安全で快適な自転車利用環境の整備 B低炭素社会の実現に貢献する自転車利用への転換 さらに次の基本方針1〜3を掲げ、それまでの本計画以前の駐輪場の整備を含む放置自転車対策中心の取組みから、自転車安全利用啓発、自転車通行空間整備、レンタサイクル等の活用等を含めた、より総合的な自転車利用環境整備へと大きく舵を切りました。 基本方針1:安全な自転車利用を展開する世田谷の"風土"づくり 基本方針2:日常生活を支援する安全で快適な自転車利用の"場"づくり 基本方針3:地域交通を支える自転車利用環境の"しくみ"づくり 本計画においては、今回策定した自転車活用推進計画と自転車等の利用に関する総合計画を一体的に策定したことから、駐輪場整備を含む放置自転車対策中心の取組みだけでなく、自転車安全利用啓発、自転車通行空間整備、レンタサイクル等の活用等を含めた、より総合的な自転車利用環境整備を引き続き目指すものとしました。 2 近年の社会動向への対応 自転車利用の多様化 子育て自転車であるチャイルドシート付電動アシスト自転車が急速に普及し、区内においては子育ての「必需品」化していることをはじめ、スポーツ車の増加、極太タイヤ装着自転車の増加など、自転車の車体の多様化が進んでいます。そのため、これらに対応できる駐輪環境整備が必要です。 電動アシスト自転車の子育て自転車への普及に加え、高齢者への普及により、通勤・通学のための駅へアクセスする自転車利用以外の、買い物や子どもの送迎等の利用がさらに一層増加することが想定されます。こうした多様な用途で利用され、身近な地域での生活を支える自転車利用に対し、適切に対応できる自転車利用環境整備が必要です。 民間シェアサイクルの発展 民間シェアサイクルについては、当初、区のレンタサイクルとの差別化が進んでいませんでしたが、最近、利用形態が絞り込まれる中から、表 5 に示すように、民間シェアサイクルならではの特性を活かした、従来とは異なる新たな利用モデルが出てきています。 63ページ 表 5 ではレンタサイクルとシェアサイクル(新たな利用モデル)を示しています。 レンタサイクルは ポート配置は駅近辺に少数あります。 ポート規模は中から大 です。 料金体系は1日24時間等の長時間単位定額制です。 利用時間は通勤・通学や営業等の長時間利用 です。 利用経路は自宅と駅の往復、自宅への持ち帰りありのもの、営業先の巡回等です。 シェアサイクルは ポート配置は駅だけでなく住宅地にも多数あります。 ポート規模は小から中です。 料金体系は15 分等の短時間単位の従量制です。 利用時間は近所の買い物のための移動等の短時間利用です。 利用経路はポートからポートへ、自宅最寄りポートから目的地最寄りポートまでです。 「ポートからポート」への「短距離・短時間」の移動を特質とする、民間のシェアサイクルは、買い物・用事等での自転車利用と相性がよく、これらの用途に適しています。そのため、日常の自転車利用をシェアサイクルへ利用転換することにより、駐輪場利用台数の減少が期待できます。また、ポートからポートへの移動が定着することにより、店舗前の路上放置の減少が期待できます。区レンタサイクルとの役割分担をはじめ、民間シェアサイクルの特質を活かしつつ、有効に活用していく必要があります。 新型コロナウイルス感染拡大の影響 新型コロナウイルスの感染拡大の影響から、自転車による宅配サービスの利用急増、自転車通勤の増加など、様々な社会変化が起きています。今後、この新たな生活様式や新たな働き方が定着するのか、以前の生活に戻っていくのか、それとも更に別の社会変化が生じていくのか、今後の先行きが不透明な状況であることを踏まえる必要があります。 3 自転車に関わる法制度や上位関連計画の動向への対応 平成29 年5月の自転車活用推進法の施行、平成30 年6月の国による自転車活用推進計画の策定を踏まえ、「すでに自転車利用が普及・浸透している世田谷区で自転車を活用するとはどういうことか」という原点に立ち返り、これまでの放置自転車対策に発する計画から、区民の移動ネットワーク整備に向けた自転車利用環境の整備へと、新たな一歩を踏み出す計画とする必要があります。 4 現行計画の進捗状況を踏まえた対応 区の自転車利用 区内の自転車利用は世界的に見ても高い水準で、自転車が既に十分活用されている状況といえます。自転車は基本的な移動手段である徒歩と公共交通利用を補完し、区民の生活を身近なところで支えており、モータリゼーションがもたらす様々な弊害の「防波堤」の役割も果たしています。 区の駐輪場整備、放置自転車対策 区立および民営の駐輪場の整備や、ルール・マナーに関する普及啓発、放置自転車の撤去を積み重ねたことにより、駅周辺の放置台数はピーク時と比較し、大きく減少しており、区内の駐輪場の整備、放置自転車対策については、多くの駅において、成果がみられます。 しかし、買い物等のための短時間駐輪については、十分な駐輪場対応が行われていないため、 64ページ 路上への放置が問題になっています。区民の地域における生活を支えているのは、むしろ、こうした短時間駐輪であり、これまで駐輪場整備の対象としていた長時間駐輪(通勤・通学のための駅へアクセスする自転車)だけでなく、それとは行動特性の異なる短時間駐輪に、適切に対応していく必要があります。 自転車の安全利用 子育て自転車の普及、電動アシスト自転車の高齢者への普及等により、自転車の利用がさらに進むことで自転車事故の危険性が増加することも懸念されます。自転車通行空間の整備を進めるとともに、その周知・啓発を含め、自転車安全利用啓発を進める必要があります。また、啓発にあたっては、自転車保険の加入、13 歳未満の子どものヘルメット着用等、都・区の条例改正により、新たに義務化されたルールを含め、区民・事業者・区の協働をはじめ、自転車店、駐輪場、シェアサイクル事業者等とも連携しながら、様々な機会をとらえ効果的・効率的に進める必要があります。 5 新たな計画の策定の方向性 これまでの計画の基本理念の継続 これまでの計画の基本理念を継続し、引き続き「世田谷の安全・安心・快適な交通社会の実現」を目指します。 自転車活用推進法・同推進計画の基本理念を踏まえ、身近な生活を支える自転車への注目 自転車利用が既に普及・浸透している世田谷区の立場から、自転車の活用を進めます。ついては、通勤・通学利用のため駅へアクセスする自転車だけではなく、様々な経路、また、買い物、子どもの送迎等の多様な用途で、区民の身近な生活を支えている自転車にも注目し、誰もが自転車を安全に利用しやすい環境(「世田谷の自転車のミライ」)の整備を目指します。 自転車利用環境の総合的整備の継続 「自転車活用推進法」に基づく「世田谷区自転車活用推進計画」と、「自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律」に基づく「世田谷区自転車等の利用に関する総合計画」を一体的に策定することから、自転車活用推進計画の項目には挙げられていない放置自転車対策にも、駐輪対策の一環として取組みます。また、これまでの計画同様、放置自転車対策中心ではなく、総合的な自転車利用環境の整備を引き続き目指します。この中でこれまでの計画の進捗状況・課題や先行した区条例の改正についても対応・継承を図ります。 新型コロナウイルスの影響への配慮 これまでの計画(中間見直し)策定後の社会動向で最も予見できなかったものが、新型コロナウイルスによる自転車利用への影響です。新型コロナウイルスとの共存、あるいはその後の社会における、自転車利用への様々な影響を考慮します。 自転車の役割に注目した施策体系 走る、とまるなど、自転車の役割に注目した施策体系とします。これにより、自転車を計画の「主役」とし、区民の日々の生活をきめ細かく支える自転車の「場面」に注目しながら、自転 65ページ 車利用者の「意識」を高めることを目指します。なお、これは、自転車をより速く走らせる等、自転車の機能を最大限に発揮させることを狙いとするものではありません。 計画の進捗状況及び課題状況のモニタリングと施策・計画へのフィードバック 先に述べた新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、私たちの生活様式自体が不安定なものとなっています。自転車の利用やそれを取り巻く状況も当然変わりやすく、計画策定時には想定していなかった事態に直面することもあり得ます。 計画の進捗に関し、定期的に「世田谷区自転車等駐車対策協議会」に報告し、意見・助言を踏まえてPDCAサイクルにより、中間時点の5年目で計画の中間見直しを行うことに加え、社会状況の変化、法令の改正、施策や事業に関わる課題等を注意深くモニタリングし、事態の変化に合わせて適切に施策・計画を見直していきます。 策定の方向性フロー・イメージは、これまでの計画の基本理念・基本方針・施策について、これまでの計画の進捗状況・課題、計画策定後の社会動向、先行した区条例改正の継承、自転車に関わる法制度や上位関連計画の動向を踏まえ、策定していきます。 方向性は、これまでの計画を踏まえ、自転車活用推進計画と総合計画を一体的に策定・改定をします。多角的な視点から、自転車交通の質を高めることを目指します。各施策・事業の見直しについては主に、取組み内容・体制の充実、取組みの重点化等を見直します。施策・事業は庁内連携、区民・事業者、関係機関との協働を積極的に進めます。