座れる場づくりガイドライン もくじ 0 はじめに 1 座れる場づくりガイドラインについて ガイドラインの対象 ガイドラインの位置付け ガイドラインの活用方法 2 様々な場面における座れる場 公共施設の前面空間 (来訪者を歓迎する) 公園等のゆったり空間(くつろぎを演出する) 花壇の縁の休息空間 (ひと休みを提供する その1) 安全安心の歩行空間 (ひと休みを提供する その2) 待ち時間の快適空間 (ひと休みを提供する その3) 3 座れる空間の質を高める方法 4 ベンチに関する整備の基準 5 ベンチ等の参考集 参考集1(公共施設の前面空間) 参考集2(公園等のゆったり空間) 参考集3(花壇の縁の休息空間) 参考集4(安全安心の歩行空間) 参考集5(待ち時間の快適空間) 1ページ はじめに 近年、高齢化の進展等によって要介護者が増加するとともに、長期・連続的な歩行が困難になる「ロコモティブシンドローム」という症状を持つ人も多く見受けられるようになりました。また、歩行や移動に障害がある人、妊婦や子どもをかかえた人など長時間連続して歩くことが困難な人もいます。外出中に“ひと休み”できる場がいろいろな所にあることで、多くの人が安心してまちを移動することができます。  歩くことや移動することは、健康に寄与することとなります。他にも、座って風景を眺めたり、友人と語らうなど “ひと休み” の場がまちの憩いの場となります。まちなかのベンチ等の設置が促進され、快適に外出できる環境が整うことで、より多くの人が自由にさまざまな活動に参画できる地域社会の実現につながります。  本ガイドラインは、歩行空間やそこに近接する空間におけるベンチ等の設置に関する基本的な考え方やアイデアをまとめています。ガイドラインに沿ってベンチ等の設置を促進し、ユニバーサルデザインによる環境整備を進めましょう。 平成30年3月 世田谷区 2ページ 1 座れる場づくりガイドラインについて ガイドラインの対象  本ガイドラインは、公共建築物の外構や公園、緑道、道路などの公共空間を対象としています。 ガイドラインの位置付け  本ガイドラインは、「世田谷区ユニバーサルデザイン推進条例」に基づく「世田谷区ユニバーサルデザイン推進計画 (第2期)」の施策・事業の1つである「だれでも使えるトイレとベンチ等の休憩施設のネットワーク整備」におけるベンチ等を設置する場合の具体的な手引きとするものです。  また「施設整備マニュアル」の道路・公園・公共交通施設のベンチ等における整備基準を補完するためのものです。 ガイドラインの活用方法  本ガイドラインは、公共施設等の整備にあたって、構想・計画段階で座れる場をイメージするだけでなく、そのイメージを設計段階で具体化するために活用するものです。空間特性ごとに座れる場づくりを進めるための考え方と例示もまとめてあります。  また、大規模な建築行為に伴い環境空地が設置される場合においても、事業者へ案内し活用するものとします。 構想・計画段階 座れる場をイメージするために、 P3〜P7を参考にして、座れる場の空間の確保を検討します。※環境空地が設置される場合、 P3〜P7を参考に座れる場の空間を検討いただくよう事業者へ案内するなど活用してください。 設計段階 P8〜P10を参考に、座れる場が整備できるか確認します。 P11〜P15を参考に、座る場を具体化します。 施工段階 施工者との打合せ等で、本ガイドラインのイラストなどを参考に設置の詳細を確認します。 3ページ 2 様々な場面における座れる場 シーン1 公共施設の前面空間(来訪者を歓迎する)  公共施設の入口は、来訪者を歓迎し、人と人との出会いが生まれる場でもあります。複数人が座れるベンチなど、ちょっとした語らいができるしつらえがあると空間が魅力的になっていきます。可動式のベンチやテーブルを日中に置くことも良い取組みです。 対象となる場所 建築物の外構 整備のポイント 広場や玄関前など溜まり空間において積極的なベンチの設置を行う。 公園 整備のポイント 公園の出入口付近にも来園者用のベンチを配置する。 4ページ シーン2  公園等のゆったり空間 (くつろぎを演出する)  公園や公共施設の中庭などは、心を落ち着かせて季節の移ろいを感じたりすることのできる場です。少人数でゆったり座れるベンチがあると空間の魅力をじっくり味わうことができます。長い時間の使用を前提に、ベンチの形状だけでなく近くの植栽にも配慮し木陰や陽だまりを作るようにします。 建築物の外構 整備のポイント 広場など溜まり空間に積極的にベンチを設置する。また、ベンチ設置の周辺に樹木の木陰や植栽を配置し、座れる場の質を向上させる。 公園・緑道 整備のポイント ベンチの配置計画において、樹木の木陰や周辺に植栽を配置し、座れる場の質を向上させる。 5ページ シーン3  花壇の縁の休息空間(ひと休みを提供する その1)  公園や道路際などにある花壇はちょっとした工夫で座れる場へと変わります。植物を育み、道行く人の目を楽しませるだけでなく、ひと休みをして心身ともに気持ちよくなれる場所へと変えていきましょう。花壇の高さや奥行き、植栽方法のちょっとした工夫が大切です。 建築物の外構・公園・緑道 整備のポイント 植栽桝の立ち上がった縁や擁壁等の外構を座れる形態にし、連続的な歩行の一助とする。 道路 整備のポイント 主に植栽桝の縁を座れる形態にして、連続的な歩行の一助とする。 6ページ シーン4  安全安心の歩行空間 (ひと休みを提供する その2)  様々な形状のベンチ等が歩道上にありますが、他にも活用できるモノが何気なくあります。自転車止め、修景用の石、アート作品など・・・ 高さや設置場所を工夫することで、まちを安全に、そして歩きやすく安心な場にすることができます。一石二鳥です。 建築物の外構・公園・緑道 整備のポイント 修景用の石、アート作品、屋外のファニチャー等の上部を座れる形態とする。 道路 整備のポイント 広幅員の歩道の場合、歩行者の動線に配慮した位置とする。 7ページ シーン5 待ち時間の快適空間 (ひと休みを提供する その3)  座れる場所があることで、バスなどを待つ時間が快適になります。道路上だけでなく、隣接する公園や環境空地などにもベンチの設置が望まれます。空間が十分に確保できない場合は、軽く腰掛けられるサポータータイプのものでも十分です。 建築物の外構 整備のポイント 公共施設がバス停に面している場合、敷地内にベンチ等を設置する。また、環境空地がバス停に隣接している場合は、当該環境空地内にベンチ等を設置するよう誘導する。 公園 整備のポイント 公園がバス停に隣接している場合、公園内にベンチ等を設置する。 緑道 整備のポイント 緑道がバス停に隣接している場合、緑道内にベンチ等を設置する。 道路 整備のポイント 歩道上のバス停周辺において、歩行者の動線に配慮して、ベンチ等を設置する。 8ページ 3 座れる空間の質を高める方法  公共空間にベンチ等が設置されていても、あまり座られていないことがあります。日々のメンテナンスに加えて、ベンチ等の設置時のしつらえや周辺環境の工夫によって、座った際の快適さや座ろうとする意識も向上します。下記事項に配慮し、座りたくなる空間を計画しましょう。 ・座れる場所の背面に壁や植栽などがあると人は落ちつきます。 ・座れる場所の周辺に日陰、木陰があると快適さが向上します。 ・手すり付きのベンチであれば高齢者や妊婦の方も立上りが楽になります。 ・周辺に植栽があると座った際の快適さが向上します。 ・座面の色は周辺と明度差をつけることで、視認能力が低下した方も見つけやすくなります。 ・ベンチを除いた歩行幅は、原則2m以上確保しよう。 ※設置の際は、近隣の理解を得ることが必要です。利用者の視線の先に、周辺住宅の窓や玄関などが来ないよう配慮します。また、住宅の窓の近くを避けて設置を検討しましょう。 9ページ 4 ベンチに関する整備の基本事項  建築物や道路、公園等を整備する際には、安全安心な施設整備となるよう各種法令等によって整備の基準が定められています。ここでは、主に世田谷区ユニバーサルデザイン推進条例・東京都福祉のまちづくり条例に規定のある、道路や公園等における休憩施設(ベンチ等)の基準とその解説を抜粋して紹介しています。 道路の休憩施設(ベンチ等) 基準  すべての歩行者が歩行中に休憩又は交流をすることができるように、必要に応じベンチ等を設けること。ただし、通行の円滑な流動に支障を及ぼす恐れのある場合は、この限りではない。 設置箇所  ベンチ、上屋等の休憩施設を設置する箇所は、以下の通りとする。 (1)すべての歩行者の通行と、一般交通及び近隣住民に支障とならない箇所。 (2)病院や福祉施設等の周辺において、特に高齢者、障害者等の休憩、又はたまり機能を確保する必要がある箇所。 (3)散歩など単なる移動を目的としない歩行者等のため、通行動線に配慮しつつ主な経路上の使いやすい箇所。 設置方法等 1 ベンチを設置する場合は、以下の通りとする。 (1)歩道の有効幅員を確保しながら、歩行者の通行に支障とならないようにする。   ※歩道幅員の考え方 ベンチを設置する場合は、原則として、ベンチに人が座った状態の幅1.0mと、車いす使用者同士がすれ違える幅2.0m以上を確保すること。 (2)ベンチの形状・寸法等は、以下の通りとする。   ・腰掛板の標準の高さは40~45cm程度とする。   ・ベンチの下及び前面は、舗装(ダスト舗装も可)等をし、ぬかるみ等に配慮する。 2 上屋を設置する場合は以下の通りとする。 (1)上屋の高さは、建築限界の基準(2.5m)以上とする。 (2)上屋の下には、ベンチのほか、車いす使用者が滞留できるスペースを設けることが望ましい。 その他  ベンチの設置間隔は、100m〜300mが望ましいとも言われていますが、設置可能な箇所を見つけだしていく姿勢が肝要です。国土交通省で策定している「道路の移動等円滑化整備ガイドライン」の休憩施設の記述も参考となります。 10ページ 4 ベンチに関する整備の基本事項 公園の休憩施設(ベンチ・野外卓等) 基準  1 ベンチは、高齢者、障害者等の休憩及び鑑賞等にふさわしい場所に利用しやすい構造    のものを設置すること。  2 野外卓は、次に掲げる構造とすること。   ア 車いす使用者が使用することができるように1.5m以上の平坦な部分を設けること。   イ 車いす使用者のひざが入るように、卓の下部に高さ65cm以上、奥行き45cm以上     の空間を設けること。  3 売店又は飲食施設と一体として設ける野外卓は、前号に掲げるもののほか、いす又は    ベンチを可動式とする等、車いす使用者が利用しやすい構造とすること。 ベンチの構造 (1)腰掛板の標準の高さは40〜45cmとする。 (2)ベンチの下及び前面は、舗装(ダスト舗装も可)等をし、ぬかるみ等に配慮する。 望ましい整備(ベンチ) (1)ベンチには背もたれをつけ、両側には、手すり兼用となるような、大きめのひじ掛けを設ける。 (2)ベンチに隣接して車いす使用者が利用できる1.5m×1.5m以上の平たん部分(水勾配程度まで可)を確保する。 野外卓の構造 (1)野外卓の周辺には、車いす使用者が近接できるよう座る方向に1.5m以上の平たん部分(水勾配程度まで可)を設ける。それが難しい場合でも、車いす使用者が近接できる平たん部分(水勾配程度まで可)を少なくも1箇所設ける。 (2)卓の下部に、高さ65cm以上、奥行き45cm以上のスペースを設ける。この部分には、足つなぎの平たん棒は設けない。 (3)売店または飲食施設と一体として設ける場合などは、車いす使用者、ベビーカー使用者等のためにいすを置かない場所を設ける。 望ましい整備(野外卓) (1)複数の車いす使用者が同時に利用する場合にも、車いす使用者が卓間を移動できるように考慮する。 (2)雨天時の利用を考慮し、屋根付きの野外卓を設置する。 11ページ 5 ベンチ等の参考集 参考集1 (公共施設の前面空間)  様々な人の出会いが生まれる場でもあるため、複数人が座れ、可動や可変式のタイプが適しています。  設置箇所が屋外のため、耐久性のある素材とし、座った際に温かみのある素材だと座り心地が良いです。  高齢者等の立ち上がり時に配慮し、ベンチには手すりがあることが望ましいです。また、車いす使用者等が横から座れることも想定されるため、用途に合わせて手すりの設置位置を検討します。 12ページ 参考集2 (公園等のゆったり空間)  季節の移ろいを感じたり、友人と語らうなど、長時間ゆったりと座れるベンチの形状(背もたれ付きなど)が適しています。また、設置箇所が屋外のため、風雨に対する耐久性のある素材とし、座った際に温かみのある素材が望ましいです。 13ページ 参考集3 (花壇の縁の休息空間)  植栽桝の縁に座れる座面を設置することで、ひと休みできる空間ができます。  座面の寸法は、高さが400〜500o程度、奥行きが300o程度で、座面は温かみのある素材が望ましいです。また、植栽は座る場に干渉しない計画とします。  植栽桝の躯体自体を座れる形態とし、色や素材の変化によって着座の意識を向上させることも効果的です。 14ページ 参考集4 (安全安心の歩行空間)  景観を向上させる修景用の石なども、座面の高さ300o〜500o程度、奥行き250o以上があれば座れます。街のファニチャーを選定する際は、座れる形状のものを検討します。  上面の平たい進入防止施設を採用することで、歩行時のひと休みの場としての活用の可能性があります。なお、設置の際は、車道に近接した場所は避けます。 15ページ  参考集5 (待ち時間の快適空間)  道路上だけでなく、道路に隣接する公園や環境空地など、場所によって設置できるベンチの形態が異なります。ベンチは奥行きのとれた座面のものが望ましいですが、利用時間や設置箇所に応じて、軽く腰掛られるサポータータイプも効果的です。 奥付  座れる場づくりガイドライン  平成30年(2018年)3月 発行  編 集・発 行   世田谷区都市整備政策部都市デザイン課  〒154-8504 世田谷区世田谷4-21-27  電 話 03-5432-2038  ファクシミリ 03-5432-3084  広報印刷物登録番号 No.1605