3から6ページ 1 ガイドラインについて 1の1 作成の背景とねらい  世田谷区では、区民や来訪者へ向けてわかりやすい情報を提供できるように、平成4(1992)年に やさしいまちづくりデザインノート 公共サイン編、平成5(1993)年に やさしいまちづくりデザインノート 建築編、平成18(2006)年に 世田谷区視覚情報のユニバーサルデザインガイドライン を作成してきました。  平成28(2016)年には情報技術の進展や多様化、障害者差別解消法の施行等を踏まえ、情報アクセシビリティの向上などの記載を加えた 情報のユニバーサルデザインガイドライン を作成しました。この度、その後のピクトグラムのJIS規格(日本産業規格)の更新を機に改訂を行いました。  このガイドラインは、印刷物やサイン等を作成する区職員向けに作成していますが、区民や事業者の方々がユニバーサルデザインによる情報発信のための参考資料としても活用できるように、1章から4章は主に考え方をまとめ、具体的な仕様などは5章に視覚障害者の案内・誘導、6章に聴覚障害者の情報のユニバーサルデザイン対応、7章に実践するにあたってとしてまとめています。 ガイドラインの位置づけ  本ガイドラインは、世田谷区ユニバーサルデザイン推進計画(第2期)後期の、ナンバー21 情報のユニバーサルデザインガイドラインの普及に基づき、できるだけ多くの人にとってわかりやすいデザインとその考え方の普及、情報全般について多様な人が受け取りやすい配慮の普及に取り組むため、区職員のほか、広く一般の方々への普及を図るものです。 ガイドライン関連事業年譜 リレーイベント  やさしいまちって何だろう 平成元年度から平成6年度の施策 計画  世田谷区福祉的環境整備推進計画バリアフリー世田谷プラン21 平成11年度策定 計画期間10年間  世田谷区ユニバーサルデザイン推進計画 平成21年度策定 計画期間6年間  世田谷区ユニバーサルデザイン推進計画(第2期) 平成27年度策定 計画期間10年間 ガイドラインなど やさしいまちづくりデザインノート 平成3年度から平成7年度作成 世田谷区視覚情報のユニバーサルデザインガイドライン 平成18年度作成 世田谷区情報のユニバーサルデザインガイドライン 平成28年度作成 1の2 ユニバーサルデザインの考え方  世田谷区ユニバーサルデザイン推進条例では、 ユニバーサルデザインとは、年齢、性別、国籍、能力などにかかわらず、できるだけ多くの人が利用しやすいように生活環境を構築する考え方 と定めています。  アメリカのノースカロライナ州立大学のロナルド・メイス氏を中心とするグループが提唱した7原則が、ユニバーサルデザインの考え方をよく表しています。 ユニバーサルデザインの7原則 1 だれにも公平に利用できること 公平性の原則 2 利用者に応じた使い方ができること 柔軟性の原則 3 使い方が簡単ですぐわかること 単純性と直感性の原則 4 使い方を間違えても、重大な結果にならないこと 安全性の原則 5 必要な情報がすぐ理解できること 認知性の原則 6 無理な姿勢をとることなく、少ない力でも楽に使えること 効率性の原則 7 利用者に応じたアクセスのしやすさと十分な空間が確保されていること 快適性の原則  情報のユニバーサルデザインにおいても、この7原則をもとに下記のポイントに注意して、様々な人にとってわかりやすい工夫をするように作成します。 標記言語 日本語だけで良いか。外国語やひらがなは必要ないか。 適切な視認距離と文字の大きさ 読む位置から考えて、読みやすいか。文字の大きさは適切か。 図記号の活用 ひと目でわかるか。標記言語が読めなくても意味が伝わるか。 色使い 色だけで情報を伝えていないか。色を多用し過ぎていないか。色の選び方・組み合わせは適切か。 適切な文章表現・用語の選択 長い文章で主旨が不明確になってないか。わかりやすい表現を使用しているか。 視覚情報以外での伝達 必要に応じて、視覚情報だけでなく音による案内などに対応しているか。 1の3 だれもが同じ情報を取得できるように  だれもが心を通わせ、温かな住みやすい地域社会をつくるために、そして、災害時などの非常時にもだれもが安心して生活を送ることができるために、円滑な意思疎通や十分な情報の取得が必要です。情報を取得する手段はだれもが自ら選択できるよう、情報発信者側の対応が求められます。  視覚障害者、色覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、発達障害者、子ども、日本語を母語としない人、高齢者、車いす使用者などの多様なニーズを理解し、工夫を凝らして情報発信をすることで、だれもが入手しやすい情報になります。 視覚障害者  全盲の人だけでなく、視力や視野の障害で見えにくい、まぶしい、見える範囲が狭い、などの特性のある、ロービジョン(弱視等)の人がいます。  ロービジョン(弱視等)の人は、見やすいサインの位置、読みやすい文字の選択、判読しやすい図形などを必要としています。 色覚障害者  日本人では色の見え方に特性のある人が男性の約20人に1人、女性の約500人に1人いると言われています。  このような見え方の人は緑と赤が見分けにくい、濃い赤が黒に見えるなどの特性があるため、色の違いのみに頼らない表現や、色を組み合わせるときは見分けやすい色の組み合わせなどを必要としています。 聴覚障害者  音が全く聞こえないろう者と、聞こえにくい難聴者がいます。  手話、筆談、文字や図記号などの視覚で表すとわかりやすくなります。  話す相手の口の動きを読み取ることで、言葉の内容を把握することもあります。 知的障害者  複雑な表現や難しい漢字を理解することや計算が苦手な人がいます。  話し言葉に近い口語体を使うこと、適切にルビをふる、ひらがな表記にするなどわかりやすい表現が大切です。例えば、 施錠する ではなく、鍵をかける と表現するとわかりやすくなります。  説明は始まりと終わりがわかりやすいことが大切です。 発達障害者  自閉症スペクトラムの人など感情のコントロールが難しい人や学習障害(LD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の人などが含まれます。  地と図が見分けやすい色の組み合わせ、読みやすい文字の大きさ、短い表現、図記号などがあると理解しやすいです。また、縦書きと横書きが混在しないことも大切です。 子ども  まだ習得していない単語や漢字、外国語などを理解することは困難です。  理解しやすい文章、イラストを用いたり、ひらがなを併記するなどの工夫をするとわかりやすくなります。  案内サインなどは、子どもの目線の高さにあわせて設置します。 日本語を母語としない人  日本語を母語としない人も暮らしています。やさしい日本語にするとわかりやすくなります。(資料編参照)  多言語による併記や図記号(ピクトグラム)による表現も有効です。 高齢者  加齢とともに様々な身体機能が低下していきます。視覚や聴覚機能の低下に配慮し、見やすいサインの位置、読みやすい文字の大きさ、盤面と文字や図の色の明確なコントラストなどにするとわかりやすくなります。  記憶力や判断力の低下などのために、抽象的な表現を避け、具体的な例を挙げること、やるべきこと、やってはいけないことの明確な指示、はい、いいえで答えられるたずね方など、わかりやすい表現にします。例えば、感染症の対策 ではなく、会場に入る時はマスクを着けてください や、少々お待ちください ではなく、10分ほどお待ちください などです。 車いす使用者  車いすに座った状態で見える高さは、立っている人と異なり低い位置になります。低い位置からも見やすい案内サインの高さとし、サインなどに接近でき、接近した時に車いすのフットサポートが案内サイン本体などに当たらないようにします。