世田谷区 ユニバーサルデザイン推進計画(第2期) だれもがユニバーサルデザインの視点と心でまちづくり はじめに  世田谷区では、区民、事業者の皆さんとともに、様々なまちづくりの活動を通して身近な生活環境の整備に取り組んできました。昭和57年には「世田谷区福祉のまちづくりのための施設整備要綱」を定め、平成7年には「世田谷区福祉のいえ・まち推進条例」を制定し、施設のバリアフリー化や推進地区の指定による面的な整備等を進めてまいりました。  こうした取組みを更に推進し、だれもが安全で安心して住み続けられるまちを実現するため、「世田谷区福祉のいえ・まち推進条例」を発展、充実させ、ユニバーサルデザインの考え方を基本とした「世田谷区ユニバーサルデザイン推進条例」を平成19年に制定しました。そして、この条例に基づき平成21年に「世田谷区ユニバーサルデザイン推進計画」を策定し、生活環境の整備に関する施策を総合的に推進してまいりました。  この度、平成26年度まで運用してきました「世田谷区ユニバーサルデザイン推進計画」の次期の計画として、平成27年度から36年度までの10年間を計画期間とする第2期計画を策定いたしました。  本計画は、年齢、性別、国籍、能力等にかかわらず、高齢の方や障害のある方等できるだけ多くの人が利用しやすい生活環境を構築していくという、ユニバーサルデザインの考え方をもとに、区民、事業者、関係団体と区が協働して取組みを推進していくための具体的な計画です。  平成25年度に策定した世田谷区基本構想では9つの将来ビジョンのひとつとして「より住みやすく歩いて楽しいまちにする」を掲げております。区は、今後もユニバーサルデザインのまちづくりを推進し、このビジョンを実現させてまいります。  最後に、本計画の策定にあたり、貴重なご意見をお寄せいただきました皆様、熱心にご審議いただきました世田谷区ユニバーサルデザイン環境整備審議会の委員の方々に、心より御礼申し上げます。 平成27年3月 世田谷区長 保坂 展人 目次 第1章 ユニバーサルデザイン推進計画の趣旨 1 策定の背景 2 目的 3 位置づけと期間 第2章 ユニバーサルデザイン施策の歩み 1 スパイラルアップ(点検・評価・改善)の取組み 2 整備の進展 3 推進計画(平成21年度から26年度)における特徴的な取組み 第3章 ユニバーサルデザインに係わる 1 社会の変化 2 見直しの課題 第4章 社会の変化と課題 1 計画の目標 〜新たな目標の設定〜 2 基本方針 〜区民参加と質の向上を導く新たな方針の設定〜 3 施策・事業 〜推進計画(第2期)の重点的な事業〜 4 28の施策・事業の体系 5 個別の施策内容    第5章 ユニバーサルデザインの推進の仕組み 1 施策の継続的な点検・評価・改善 2 ユニバーサルデザイン環境整備審議会と庁内推進体制との連携による施策の展開 3 新たな施策・事業による展開 資料編 第1章 ユニバーサルデザイン推進計画の趣旨 第1章の1。策定の背景  世田谷区は、昭和 57 年より区民、事業者、関係団体と協働して、社会の様々な障壁(バリア)をなくす施策を進め、平成 7 年に「世田谷区福祉のいえ・まち推進条例」(以下「いえ・まち推進条例」という。)を制定しました。  その後、少子高齢社会、人口減少社会を迎えたことで、これまでの歩みをより強く確実なものにし、更に年齢、性別、国籍、能力等にかかわらず、すべての区民が可能な限り公平に社会参加し、自立できる生活環境の実現が求められるようになりました。  こうした状況の中、社会における様々なバリアをなくすにとどまらず、すべての区民の基本的人権が尊重され、自らの意思で行動し、あらゆる分野の活動に参加することができる社会を築くための「ユニバーサルデザイン※1」(次ページ解説)の考え方に基づく取組みを推進するために、平成 19 年に「いえ・まち推進条例」の理念を継承して発展させ、新たに「世田谷区ユニバーサルデザイン推進条例」(以下「ユニバーサルデザイン条例」という。)を制定しました。  ユニバーサルデザイン条例の制定後、その理念を具現化するために、平成 21 年に「世田谷区ユニバーサルデザイン推進計画」(以下「推進計画」という。)を策定して目標、基本方針のもとに各施策・事業を実施する 6 年間の計画を運用してきました。  推進計画においては毎年度、各施策・事業の状況を点検し、評価と改善を行うスパイラルアップの仕組みを取入れ、ユニバーサルデザインの取組みを着実に進めてきました。  現在、子育て世代等多様な人が街に出る環境づくりが進められ、より様々なニーズに応え、施策・事業を更にスパイラルアップさせていくことが求められています。平成 32 年には東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されることになり、ユニバーサルデザインに対する関心が更に高まるとともに、今まで以上に生活環境整備の質の向上や、整備されてきた社会資源の活用が必要となってきています。  このような社会的背景やスパイラルアップでの積み重ねを踏まえ、平成 21 年に策定した「推進計画」の内容を見直し、「推進計画」の第 2 期として本計画を策定しました。 第1章の2。目的  推進計画は、すべての区民が個人として尊重され、共に支えあいながら、将来にわたって活力に満ちた世田谷をつくりあげていくことができるように、区と区民、事業者及び関係団体が協働しながら、だれにとっても利用しやすい生活環境の整備を推進していくための具体的な計画です。 ユニバーサルデザイン  ユニバーサルデザインとは、年齢、性別、国籍、能力等にかかわらず、できるだけ多くの人が利用しやすい生活環境にする考え方です。 これまでのバリアフリーの取組みは、高齢者や障害者等が生活を営む上での様々なバリア(物理的、制度、文化・情報、意識等)のすべてを取り除くことを目的としていました。  バリアフリーの取組みを更に一歩進め、あらかじめ多様なニーズを想像し、「バリアを最初から作らない」、「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインに基づいて、区では公共的施設及び住宅の構造、設備等並びに情報及びサービスの提供について適切な措置をとり、生活環境の整備を進めていきます。 第1章の3。位置づけと期間 3-1 計画の位置づけ  推進計画は、ユニバーサルデザイン条例第 7 条第 1 項を根拠とし、区の基本構想・基本計画を踏まえ、各種計画と連携していきます。世田谷区基本計画の9つのビジョンにある「より住みやすく歩いて楽しいまちにする」の分野別政策「魅力ある街づくり」の取組み事業として「ユニバーサルデザインのまちづくり」が位置づけられています。  推進計画は、ハード、ソフトの両面から、生活環境の整備に関する施策を総合的かつ計画的に推進していくための計画です。 3-2 計画に定める事項 (1)ユニバーサルデザイン条例に定められた事項  推進計画に定める事項はユニバーサルデザイン条例第 7 条で次のように定められています。  生活環境の整備に関する目標  生活環境の整備に関する重点施策  その他生活環境の整備に関する重要事項 (2) 推進計画の構成  推進計画ではこれらの内容を分かりやすく、「目標」「基本方針」「施策・事業」にまとめています。 3-3 計画の期間  平成 27 年度から平成 36 年度までの 10 年間の計画とします。なお、前期4ヶ年(平成 27 年度から平成 30 年度)、後期4ヶ年(平成 31 年度から平成 34 年度)、調整期間2ヶ年(平成 35 年度から平成 36 年度)ごとに、中間見直しを行い推進します。今回の推進計画(第2期)では、第 4 章の施策・事業については前期計画の内容を示しています。 第2章 ユニバーサルデザイン施策の歩み 第2章の1。スパイラルアップ(点検・評価・改善)の取組み  推進計画(平成 21 年度から 26 年度)では、毎年度それぞれの施策・事業を関係する所管が点検し、その点検結果に対して、ユニバーサルデザイン環境整備審議会が講評や提案を行っています。また、点検結果は区民へ公表され、区民からの意見を募集し、各施策や事業の改善に取り組んでいます。  この取組みは、着実に施策や事業を進めていくとともに、事業の展開にあたってより良い方向へ柔軟に改善していくための仕組みです。 第2章の2。整備の進展 2-1 区立施設の整備  平成 21 年度から 25 年度における区立施設の新規の建設においては、仮設建築物を除き、すべての施設においてユニバーサルデザイン推進条例に基づく整備基準を満たし、適合証を取得しています。  また、既存の区立施設のバリアフリー改修を進めてきており、平成 19 年度より 9 ヶ年の計画で、多機能トイレの整備、視覚障害者誘導用ブロックの整備等を行ってきています。整備の件数は平成 21 年度から 25 年度の累積で 147 件(平成 19 年度当初からの累積は 224 件)となっています。 2-2 民間の建築物等の整備  平成21年10月にユニバーサルデザイン推進条例に基づく届出の基準の強化と建築物の対象を広げました。  毎年度の民間建築物の届出件数は300件近くとなってきており、民間建築物のユニバーサルデザインの整備が着実に進んできています。  特に集合住宅や小規模な店舗においても届出制度を実施していることで、きめ細やかなユニバーサルデザインの生活環境の整備が着実に進んできています。 2-3 公共交通の整備  公共交通の施設や車両のバリアフリー化は平成 12 年の交通バリアフリー法の制定から大きく進展し、平成 18 年のバリアフリー法制定により改善が図られてきました。世田谷区の鉄道・軌道においては、平成 25 年に世田谷区内のすべての駅舎においてエレベーターやスロープの設置等による段差解消が達成され、移動のバリアフリー化が大きく進みました。一方、バス交通における車両整備も進み、ノンステップバスの導入が進みました。  車いす使用者やベビーカー使用者等、様々なスタイルに応じた公共交通施設の利用の幅が広がり、公共交通のユニバーサルデザインは進んできています。こうした中、「公共交通機関等におけるベビーカー利用に関する協議会」(国土交通省設置)では平成 26 年 3 月にベビーカーマークを定め、電車やバスの車内にベビーカーを折りたたまずに乗車することができる等の利用ルールの周知についてまとめました。今後も幅広く多様なニーズに対応した公共交通施設の整備が求められてきています。 2-4 道路及び自転車利用環境の整備  世田谷区では、だれもが安全に通行できる道路とするため、歩道整備や視覚障害者誘導用ブロックの整備を推進しています。新設道路の整備においては、ユニバーサルデザイン条例の整備基準に基づいた整備を行い、段差のない歩きやすい道路づくりを着実に進めています。  平成 21 年度から 25 年度までの5ヶ年では、歩道整備を 1,942 m(道路幅員 7.5m以上を対象)実施しました。視覚障害者誘導用ブロックの新設や改修も進めてきています。  また、自転車利用環境の整備については、駐輪場や自転車通行環境の整備とともに、ソフト面の施策として、警察や交通安全協会、PTA 等との協働により小・中学校や地域で交通安全教室を開催する等、自転車安全利用の啓発を進めてきました。平成 24 年4月には、自転車を利用する際の心構えとして「世田谷区民自転車利用憲章」を制定し、普及を図っています。また、平成 26 年7月から、区民が自主的に啓発に取り組む「自転車安全利用推進員」の育成・支援を進めています。 2-5 公園・緑地の整備  区民の憩いの場となる公園や緑地は、設置されている場所ごとに敷地の特性や多様な利用のニーズがあり、その特性をいかした整備を行うとともに、近隣との関係づくりも施設運営上欠かせないものです。  従って、公園や緑地の新規整備や改修においては利用者の意見をその整備に反映できるようにワークショップ等の開催を行い、区民意見を踏まえ、その場所の特徴を活かした整備を進めてきています。  また、ユニバーサルデザイン条例に基づいた整備を進め、多様な人が利用しやすい公園や緑地となるように工夫した整備を行ってきています。平成 21 年度から 25 年度までの公園整備でワークショップ等を開催した実績は、合わせて 24 件です。 第2章の3 推進計画(平成 21 年度から 26 年度)における   特徴的な取組み 3-1 専門家を交えた建物の設計・施工《代田区民センター》 (1)取組み内容  代田区民センターは、耐震上の理由から建替えられ、区民センター、児童館、図書館の複合施設として平成 26 年 4 月に開設しました。  敷地は、京王井の頭線新代田駅に近接し、前面の環状 7 号線にはバス停もある等、利便性の高い施設となっています。  この施設の設計 ・ 施工にあたっては、多様な利用者を想定した施設としてユニバーサルデザインの専門家が関わり、検討が行われました。 (2)建物の概要  場  所:世田谷区代田六丁目 34 番 13 号  延床面積:3663.56u  構  造:SRC 造一部 RC 造             地下 2 階地上 6 階建  用  途:区民センター、図書館、児童館 (3)専門家の関わり  ユニバーサルデザインの視点からさらに利用しやすい施設にするために専門家を交えた検討会を、設計段階で 2 回(平成 22 年度)、施工段階で 2 回(平成 25年度)開催しました。  その際に、ロービジョン(弱視)の方にも参加していただき、当事者の意見を加えながら検討を行いました。 (4)検討の成果  @設計段階  多機能トイレ内の便座や手すりの位置、ベビーベッドの向きを実際の使い方を想定しながら、当初の設計図から再検討しました。  視覚障害者誘導用ブロックの設置位置を当初の設計図から再検討し、入り口、受付からトイレまで連続して設置するとともに、音声案内を設置しました。  和室の出入り口をスロープとして、段差を解消しました。  A施工段階  案内サインのデザインについて、ロービジョンの利用者にも分かりやすくするため、黒盤面に白文字とすることとしました。  床と壁、壁とドアはコントラストをつけた色彩とし、見分けやすくしました。  エレベーター前の各階の案内表示は、現在の位置の階数を大きく表示し、現在地を分かりやすくしました。  サイン表示の施設名称間に記載する予定だったスラッシュ「/」は、文字との識別が分かりにくいので表示せず、空白としました。 3-2 多様な当事者の意見を反映した日本庭園《二子玉川公園》 (1)取組み内容  平成 25 年に開設した二子玉川公園は、ビジターセンターや世田谷いのちの森、みどりの遊び場等子どもから大人まで楽しめる公園です。この公園の中にある日本庭園(帰真園)は、ユニバーサルデザインの観点から、様々な当事者の方々の参加により整備課題の検討を行い、設計 ・ 施工に反映しました。 (2)公園の概要    場  所:世田谷区玉川一丁目 16 番 1 号    敷地面積:公園全体 約6. 3ha           日本庭園部分 約 0.58 ha (3)検討の概要  多摩川や富士山、国分寺崖線を主題とした日本庭園ですが、ユニバーサルデザインを基調とし、だれもが日本の文化を楽しめる新しいタイプの庭園づくりをめざしました。  ユニバーサルデザインアドバイザーのコーディネートにより、障害のある当事者のニーズと、日本庭園の設計者の意見の調整、その背景や理由の確認や、論点の整理や合意形成、代替案を検討しながら、ユニバーサルデザインの日本庭園づくりをめざしました。 (4)検討の成果  @移動のバリアフリー  園路の勾配や舗装面の仕上げや周辺との連続性の確保、多機能トイレの案内表示等の工夫をしました。  A視覚障害者が楽しめる配慮  風や香り、音、歩く感触等の効果を工夫しました。  B聴覚障害者への配慮  案内サインや説明板の読みやすさの工夫を行いました。  C池の周囲  視覚障害者が転落防止柵を設置しなくても池の位置が分かるように、白杖で認識できるような池のふちの立ち上がりを設けるとともに、ベビーカーや子どもがつまずかないように幅広い立ち上がりを設置しました。 D自然石の石組み  石組みの階段に、自然に手をおきたくなる場所を選んで、手すりの代わりとなる「手つき石」を自然石の中に組み合わせました。 3-3 啓発から広がる地区の街づくり《千歳烏山駅周辺身近な推進地区》 (1)取組み内容  「千歳烏山駅周辺推進地区・身近な推進地区」は平成 22 年度から 24 年度において、障害のある当事者や地域の方々の参加を得て、案内サイン、道路整備等のハード整備の検討や啓発イベント等のソフト面の事業に取り組んできました。 (2)地区の概要  千歳烏山駅を中心とした半径約 500 m   約 0.5 ku  駅、バス停留所、商業施設、官公庁施設のある  業務地区  推進地区指定年月日:平成 23 年 3 月 (3)検討の概要  烏山地域の福祉的環境を考える区民活動の場「烏山ネット・わぁ〜く・ショップ」と協働してワークショップを開催し、障害のある当事者を含む区民、事業者、区が様々な連携をしながら検討を重ね、事業を進めてきました。 (4)検討の成果  @案内サイン  ロービジョンの方にも見やすい盤面デザインとするとともに、サインの種類や、掲載内容を設置場所ごとに検討しました。  A音声サイン  現場検証を行いながら、アナウンスする内容や音質、音量、無感知時間を設定する等の工夫をしました。  B視覚障害者誘導用ブロック  駅からバス停、主要施設まで連続して設置しました。  C駅前商店街通り整備  歩道の幅を広げ、側溝には車いす等が円滑に移動しやすい「世田谷型ブロック」を使用し段差を解消しました。  D京王線千歳烏山駅西側地下通路整備  路面を2色に分けて、一方通行のルールをつくり円滑な利用を推進しました。  E啓発イベント  小学生が参加しユニバーサルデザインを学べる「ユニバーサルデザイン体験隊スタンプラリー」の開催や、道行く人にも参加を呼びかける「あおぞらワークショップ」を開催しました。  F商店街ユニバーサルデザイン接遇研修  店舗での接遇のポイントや工夫についての研修を実施しました。 第3章 ユニバーサルデザインに係わる社会の変化と課題 第3章の1 社会の変化 1-1 ニーズが多様化した  多様な人の社会参加が増えました。その結果、新たなユニバーサルデザインのニーズも生まれてきました。  ベビーカー利用について、電車やバスの車内にベビーカーを折りたたまずに乗車することができること等の周知がされるようになりました。  音サインの普及に合わせ「公共空間に設置する移動支援用案内」についての JIS 規格が、平成 26年 5 月に制定されました。 1-2 通信手段が多様化した  新たな情報通信機器やソフトの開発が進み、情報が得やすくなりました。  タブレット型端末やスマートフォンを使用したコミュニケーションが普及してきました。 1-3 ハード整備が進んだ  ユニバーサルデザインの公共的施設及び住宅の環境整備が進んできました。  公共交通の区内の駅すべてにエレベーター等が設置され、ノンステップバスの導入、多機能トイレの整備も進みました。 1-4 防災への意識が高まった  東日本大震災が発生し、関東での大地震による発災が現実味を帯びて認識され、コミュニティや日頃からの訓練・備えの重要性が再認識され、区内各地区で避難訓練を実施しています。 1-5 差別禁止の法体系が整備された  「障害者差別解消法」が平成 25 年 6 月に制定され、障害者の差別禁止とともに事業者等による合理的配慮の提供が定められました。  政府は、国連の「障害者権利条約」の批准をめざして、障害者制度改革推進に取り組み、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(略称:障害者差別解消法)」を平成 25 年6月に制定しました。  「障害者差別解消法」では、障害者の差別を禁止するとともに、公平に対応することを行政機関や事業者に求め、そのための合理的配慮の提供を定めました。  同法には、障害を理由に障害者でない者と不当な差別的扱いに対して、障害者からの申し出があった場合、過重な負担にならない限り、申し出た障害者に対して、合理的配慮を行うことが定められています。  なお、合理的配慮は、個人個人の申し出に対応するもので、画一的に定めてはいません。合理的配慮の典型例としては、乗り物への乗車に当たっての職員等による手助けや、筆談・読上げ等の障害特性に応じたコミュニケーション手段による対応等が考えられます。 (平成 25 年 9 月 30 日 内閣府からの都道府県・政令指定都市に対する法律説明会資料「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律について」より要約) 第3章の2 見直しの課題 2- 1  だれもがユニバーサルデザインに配慮し区民参加でまちづくりを進める!     区民・事業者・区のだれもがユニバーサルデザインに配慮し、参加と協働によりまちづくりを進める必要があります。 世田谷区では、30 年間に及ぶユニバーサルデザイン対応の整備が、社会資産として蓄積されていますので、その資産を最大限有効に使える時期を迎えています。この資産を有効に使いこなすために、多様な人々がいることを考え、互いを思いやり、理解する心を広げていくことが期待されています。 2- 2 ユニバーサルデザインの質を高める!  多様化するニーズに対応するため、生活環境のユニバーサルデザインの質を高める必要があります。  ユニバーサルデザインの社会的な資産が増えてきたことで、今まで以上に多様な人がまちに出やすくなりました。 “様々なニーズを持った人々” がユニバーサルデザインの生活環境を利用する機会が増え、ますます意欲的な社会参加が増えることが期待されています。  例えば、子育て世代のニーズ等、今後ますます多様化するニーズにこたえ、更なるユニバーサルデザイン対応の整備が期待されています。 2- 3 更なるバリアの解消に取り組む!   更なるバリアの解消の取組みと工夫を進める必要があります。  既存施設、小規模施設のバリアは依然として残っており、今までの課題や実績を活かして、より実効性の高いユニバーサルデザイン改善が期待されています。  新規の公共的事業におけるユニバーサルデザイン整備の進展を踏まえつつ、より身近な生活環境でのユニバーサルデザインに近づける整備を促します。  今まで取り組んできた成果を検証し、普及啓発を図るとともに残されたバリアの解消に取り組み、身近な生活環境の質を高めていきます。 第4章 計画の目標、基本方針、施策 ・ 事業 第4章の1 計画の目標 〜新たな目標の設定〜  推進計画(平成 21 年度から 26 年度)では、【目標1 公平な社会づくり】、【目標2 ユニバーサルデザインのまちづくり】の2点を挙げていましたが、第 2 期の計画では、【目標3 区民参加でまちづくり】の目標を新たに加えます。これは、見直しの課題において多様化するニーズに対応し、生活環境の質、ユニバーサルデザインの質を高めるために、区民参加(利用者・当事者参加)を進める必要があることがクローズアップされてきたからです。  すべての人が社会参画や自己実現ができる地域社会をめざし、だれもが利用しやすいユニバーサルデザインに基づいたまちづくりを、区民参加の機会や支援する仕組み等を充実させ、区民・事業者・区の “みんな” で、様々な取組みにより進めていきます。 目標1 公平な社会づくり すべての人の人格と個性が尊重され、社会のあらゆる活動に参画し、自己実現できる地域社会をめざす 目標2 ユニバーサルデザインのまちづくり だれもが利用しやすい生活環境の整備を推進し、安全で安心して快適に住み続けることができる“まち”をめざす 目標3 区民参加でまちづくり 区民、とりわけ利用者・当事者と共に検討して、有効なユニバーサルデザインの実現をめざす これらの目標を分かりやすく表現するために、次の標語を掲げます。 「だれもがユニバーサルデザインの視点と心でまちづくり」 「だれもがユニバーサルデザインの視点と心でまちづくり」 第4章の2 基本方針 〜区民参加と質の向上を導く新たな方針の設定〜  目標を達成するために、より具体的にめざすべき方向を明らかにする、6つの方 針を定めます。  T みんなで取組み、進める  1 すべての人が、ユニバーサルデザインに考慮して取り組む       区民、事業者、区が、職場や身近な生活の中でできることを見つけ、自らユニバーサルデザインに取り組んでいける環境をつくります。  2 気づきと思いやりの心を広げる       区民の交流・活動の場や学習の機会をつくり、区民、区職員の意識啓発に取り組みます。  3 ユニバーサルデザインの検討に、区民参加のプロセスを導入し、区民の声を反映する       ユニバーサルデザインでは、すべての人を前提とした「相互理解」、実践と継続のための「仕組み」及び「人を育てること」が重要であり、そのための区民参加のプログラムを構築します。 U ユニバーサルデザインのまちをつくる  4 公共的施設のユニバーサルデザイン整備の質を高める       多様なニーズに対応でき、だれもが自由な移動や利用によって負担なく社会活動に参画できるよう、目標を定め生活環境の整備を推進します。  5 だれもが安全で、楽しく快適に暮らせる地域を実現する       ユニバーサルデザインのまちづくりを実現するにあたって、「推進地区」は、身近な地域で継続的に取り組む場として重要な役割を担っており、関係所管との連携により積極的に生活環境の整備を推進します。 V ユニバーサルデザインによる情報と   サービスを広げる  6 ユニバーサルデザインによる情報とサービスを通して、    お互いのコミュニケーションを広げる       だれもが平等に情報を受けられるように、情報伝達の手法の多様化を進めるとともに、だれもが平等にサービスを受けられるような仕組みづくりと、意識向上のための取組みを進めます。 第4章の3 施策・事業    〜推進計画 ( 第 2 期 ) の重点的な事業〜 3- 1 世田谷のユニバーサルデザインの生活スタイルの普及     年齢、性別、国籍、能力等にかかわらず、できるだけ多くの人がユニバーサルデザインのまちの良さに気づき、快適に利用できるための工夫や配慮について広めていくことが必要です。  そこで日常の生活環境や接客、区民サービスの中にあるユニバーサルデザインにつながる工夫を冊子等に分かりやすく編集して情報発信することで、多くの人が気持ちよく公共空間を利用できるよう啓発します。更に東京オリンピック・パラリンピック競技大会で訪日する海外の観光客が快適に日本のまちを楽しめる工夫 を広めていきます。  世田谷のユニバーサルデザインの生活スタイルといった先進的な事例を紹介する取組みを続け、より多くの人のユニバーサルデザインへの関心を生み出すようにしていきます。 3−2 ユニバーサルデザインに係わる人が活躍できる仕組みをつくり、区民参加を推進   利用者や当事者のニーズを適切に捉え、ユニバーサルデザインの質を高めるために、施設整備や情報提供、サービスの提供を進める区民参加の仕組みが、これからは一層求められます。  そのためには、専門家としての「ユニバーサルデザインアドバイザー」だけでなく、「ニーズを伝える利用者・当事者」や「ユニバーサルデザインの普及・推進に携わる区民」が、ユニバーサルデザインを推進する事業に参加し、施設整備や普及啓発の施策をみんなで取り組み、ユニバーサルデザインのまちづくりを広げることが必要です。  小学校での出張講座等の次世代へ向けた啓発、ユニバーサルデザインに係わる団体等の活躍によるユニバーサルデザインの普及等、区民や事業者等が自ら普及啓発を行うことで、よりユニバーサルデザインが身近なものとなっていきます。区はそのような活動を広げ、区民等の活躍の場をつくり出すようにして普及啓発の推進を行います。  具体的には、区が行う公共的施設の整備において、ユニバーサルデザインアドバイザーや当事者等が関わりながら、だれもが使いやすい整備を進めていきます。また、設計段階からユニバーサルデザインの視点で検討を行い、施工段階でも細部の工夫や読みやすいサインの検討等行い、具体の設計や設備部品の選定、色彩計画等についても、ユニバーサルデザインの視点で整備を行っていきます。 3−3 ユニバーサルデザインの情報を共有する仕組みとして「ライブラリー」を構築  ユニバーサルデザインの質を高めるためには、整備の実績を共有し、その情報を活用することが必要です。  ユニバーサルデザイン整備の実績を「収集」「蓄積」し、データを整理することで、区民や事業者のだれもが情報を活用できるようになります。既存施設の改善をはじめとする今後の施設整備にユニバーサルデザインの工夫を取り入れやすくし、各種施設整備の質の向上をはかります。  特に、公共的施設にユニバーサルデザインアドバイザーや当事者等が関わってできた施設の成果は、ユニバーサルデザインのライブラリーに蓄積して、個々の工夫を紹介できるようにし、ハード整備に係わる事業者や区の職員等が活用できるようにしていきます。 第4章の4 28 の施策・事業の体系 だれもがユニバーサルデザインの視点と心でまちづくり ユニバーサルデザインの生活環境を実現する目標 目標1 公平な社会づくり  すべての人の人格と個性が尊重され、社会のあらゆる活動に参画し、自己実現できる地域社会をめざす 目標2 ユニバーサルデザインのまちづくり  だれもが利用しやすい生活環境の整備を推進し、安全で安心して快適に住み続けることができる“まち”をめざす 目標3 区民参加でまちづくり  区民、とりわけ利用者・当事者と共に検討して、有効なユニバーサルデザインの実現をめざす 基本方針  みんなで取り組み、進める 1 すべての人が、ユニバーサルデザインに考慮して取り組む 2 気づきと思いやりの心を広げる 3 ユニバーサルデザインの検討に区民参加のプロセスを導入し、区民の声を反映する  ユニバーサルデザインのまちをつくる 4 公共的施設のユニバーサルデザイン整備の質を高める 5 だれもが安全で、楽しく快適に暮らせる地域を実現する  ユニバーサルデザインによる情報とサービスを広げる 6 ユニバーサルデザインによる情報とサービスを通して、お互いのコミュニケーションを広げる 施策 ・ 事業名称 1ユニバーサルデザインの生活スタイルの普及 2普及啓発イベント 3ユニバーサルデザイン普及講座 4ユニバーサルデザインハンドブックの活用 5ユニバーサルデザインに取り組むアドバイザー等の人々の活躍の場を広げ、多くの人が参加できる取組みの推進 6ユニバーサルデザイン推進事業のスパイラルアップの実践 7ユニバーサルデザインライブラリーの活用 8区立施設のユニバーサルデザインによる整備の推進 9学校施設のユニバーサルデザインによる整備の推進 10サイン整備の推進 11小規模店舗等におけるユニバーサルデザインの推進  12「住まいサポートセンター」における住宅のユニバーサルデザインの普及 13公営住宅のユニバーサルデザインに基づく改修の推進 14高齢者・障害者の住宅改修支援 15公共交通等のサービスの充実 16安全な歩道づくり 17自転車の安全な利用の啓発 18自転車通行空間の整備 19放置自転車等をなくす取組み 20規模や特性に応じた公園緑地等の整備 21推進地区のユニバーサルデザインの取組み推進 22だれでも使えるトイレとベンチ等の休憩施設のネットワーク整備 23災害時に使えるトイレの整備推進 24情報のユニバーサルデザインガイドラインの普及 25多様な情報媒体の普及・活用の推進 26災害に備えた区民参加による取組み 27ユニバーサルデザインによる接客・接遇の向上 28職員のユニバーサルデザインに関する研修の推進