第2章 ユニバーサルデザイン施策に係る現状と課題 の目次(文字量はやや多目です) 1  区と区民、事業者及び関係団体の役割 2 気づきと思いやりの心を育てる環境づくり 3  区民の声を反映する計画策定プロセス 4 だれもが利用しやすい施設整備 5 地域のま ちづくり 6 ユニバーサルデザインによる情報とサービスの提供  第2章  ユニバー サルデザイン施策に係る現状と課題区は、平成11年に、世田谷区福祉的環境整備推進計 画「バリアフリー世田谷プラン21」を定め、計画の目標として「みんなでつくるバリアフ リーの“いえとまち”」「みんなが“歩ける・入れる・乗れる”まち」「心のバリアをなくし、 みんながやさしくなれるまち」を掲げ、様々な施策や事業に取り組んできました。策定か ら9年が経過し、どのようなバリアフリー整備が進んだのか、または不足しているのかを 分野ごとに検証し、ユニバーサルデザインの視点から求められる課題を整理しました。こ の検証作業は、関係分野の職員が携わると共に、特に課題抽出では、区民参加のワークシ ョップにおいても多様な意見をいただきました。 1  区と区民、事業者及び関係団体の 役割                    【現状】ユニバーサルデザインは人々の生 活のあらゆる場面で関わりがあります。安全で快適な生活を実現していくためには、一人 ひとりが身近な生活の中でユニバーサルデザインに取り組むことが求められます。行政だ けでなく、区民や事業者、関係団体などがそれぞれの役割を果たすことが不可欠です。区 は、平成11年に、総合支所ごとに、福祉的環境整備推進地区(以下、推進地区という。) を指定し、区と区民、関係団体等による協働の取り組みを進めてきました。事業者との協 力では、駅舎のエレベーターや車いす使用者対応トイレ等の設置、新たに7路線のコミュ ニティバスの運行などを進めています。既存の民間施設への支援策としては、小規模店舗 等のバリアフリー化助成制度があります。しかし、十分に活用されているとは言えず、よ り積極的な情報提供が必要となっています。 【施策の課題】(1)ユニバーサルデザイン の理解促進・新しい考え方であるユニバーサルデザインの理解と普及の促進。・区民、事業 者及び関係団体の各々が取り組むべき目的や意義、具体的な役割についての分かりやすい 情報提供と、意識啓発や普及の促進。 (2)区民の取り組みへの支援・区民が、ユニバー サルデザインの活動を進める際の人的・技術的な支援。 (3)交流・協働の場づくり・ユ ニバーサルデザインの普及・活動を身近な地域で実践できる協働の場づくり。 2  気づ きと思いやりの心を育てる環境づくり                  【現状】 平 成19年2月に実施した区政モニター110名のアンケート調査では、ソフト面で重要なこと として「ユニバーサルデザインの考え方を広めること(53.0%)」が半数以上を占めていま す。また、考え方を広めるために重要なこととして「区が様々な事業で率先してユニバー サルデザインを推進すること(43.6%)」が多く、実践を通じた行政の取り組みへの期待が 大きいことが分かります。庁内の情報・サービスに関する取り組みとしては、(1)児童館で 新任教諭の研修を行い児童の声を聞く、(2)災害時避難等マニュアル作成のために各障害者 施設と懇談会を実施、(3)区職員が地域の社会福祉施設(特別養護老人ホーム等)と交流す ることなどが挙げられました。意識啓発面では、(1)児童館での手話教室の実施、(2)区民へ の手話や要約筆記の講習会の実施、(3)区職員の採用時研修で、障害のある方を講師に招き 福祉体験(やさしいまちづくり)研修を実施、(4)朝・終礼のミーティング時に、接遇に関 してスタッフ同士で確認、(5)区職員や委託事業者社員が参加した手話講習会を実施するこ となどが挙げられました。 【施策の課題】(1)ユニバーサルデザイン教育の実践・他者 に対する気づきと思いやりの心を育むために、生涯学習や小・中学校の教育活動等でユニ バーサルデザインを学習する機会を増やすカリキュラムの構築や教材の充実。 (2)区職 員の研修強化・区職員が自らユニバーサルデザインを理解し、普及ができる研修の充実。 (3)多様な機会を利用した啓発の実施・区民へのユニバーサルデザインの普及について、 全区的な運動として継続的なイベントの開催や多様な学びの機会としての出張講座の実施 など。 3  区民の声を反映する計画策定プロセス                   【現状】ユニバーサルデザインは、できる限り多くの利用者の声を聞き、それを次の整備 や改修・改善に反映させていく過程がきわめて大切です。まちづくりの取り組みとしては 「推進地区」で、区民の積極的な参加により成果をあげています(世田谷地域、北沢地域、 烏山地域)。    公園・緑道整備では、ワークショップ等を行い、区民の参加を得て整 備を進めるとともに、公園等管理協定制度を推進し、現在156箇所で管理協定を締結して 住民による管理を行うなど、区民参加による管理運営を進め、評価を得ています。     一方で、施設整備後の評価においては、行政内部での点検にとどまり、区民や事業者から の評価を次の整備に反映させる仕組みの構築には至っていません。 【施策の課題】(1) 利用者等の声を次の整備や改修・改善に反映させる仕組みや体制の確立・計画段階から評 価・検証まで多くの区民の意見を継続的に把握し、次の計画に反映する手法の検討、仕組 みや体制。 (2)利用者等の声を聞くための多様な手法の確立・積極的にワークショップ に参加したり自ら意見を発信したりすることが困難な利用者のため、多様な手法を用意し 「声なき声」にも耳を傾け、情報を収集し、共有、活用すること。 (3)継続的に利用者 等の声を事業に反映できる組織づくり・区民参加の過程を、区の各事業に適切に取り込む ため、全庁的に事業の進行管理を統括していく組織・体制の検討。 4  だれもが利用し やすい施設整備                4-1 区立施設の整備【現状】平成7年 に制定した、いえ・まち推進条例に基づいて、学校施設絵尾含む区立施設については、新 築・改築はもとより大規模改修時に、条例の整備基準に適合させることで改善を図り、ユ ニバーサルデザインの整備を進めてきました。整備内容は、当時の法令・条例に定められ た基準以上となっていました。しかし、法令・条例の改正に伴う新たな整備基準により、 施設によっては、整備内容が不適合の部分も生じてきています。既存施設の改善について は、平成18年度に実施した施設アンケート調査をもとに、費用対効果等を勘案し、施設 を短期、中期及び長期に振り分け、平成19年度から計画的に改善工事を進めています。 【施策の課題】(1)ユニバーサルデザインの視点による整備の推進・施設管理者がユニバ ーサルデザインを十分に理解した上での施設整備。 (2)学校施設のユニバーサルデザイ ン・既存の体育館など災害時の施設利用としての役割も考慮に入れた検討。 4-2 民間施 設の整備【現状】 平成15年からバリアフリーに関する法令、条例の整備が進んだこと で、バリアフリー化の整備は一定の成果を上げています。区は、平成18年度に国や都の 法令、条例で定められた適用範囲を拡大し、特定建築物に関して基準の義務化を実施しま した。また、社会の要請や状況の変化に伴って、既存建築物のバリアフリー化整備や、自 発的にユニバーサルデザインを踏まえた店舗等の改修も見られるようになりました。しか し、整備基準の適合件数については、増えているとはいえず、ユニバーサルデザインに対 する意識向上の施策が求められます。また、小規模店舗等の既存建築物のバリアフリー化 を推進するため、出入口やトイレ改善工事の助成制度を設けましたが、周知が不十分なた め、活用がされていません。 【施策の課題】(1)義務化の対象建築物の規模と用途の検 討・建築物のバリアフリー化の実効性を確保することや、生活を楽しむ施設(娯楽・遊技 施設等)も義務化の対象とするなど、対象建築物の規模と用途の検討。 (2)建築主、事 業者等の生活環境の整備に関する意識向上・新築・増築または既存建築物で、整備基準に 適合した施設の増加。 (3)小規模店舗の改修促進・小規模店舗等の既存建築物の改修促 進について、助成制度の周知や意識啓発。 4-3 住宅の整備【現状】少子・高齢社会の進 展の中で、長く使い続けられる住宅の整備が国の重要な施策となってきました。区は、区 営の既存住宅についてバリアフリー化を進めてきました。併せて、独立行政法人都市再生 機構、都住宅供給公社が所有する団地や都営住宅の建替え時に、建物のバリアフリー化と 高齢者・障害者用住宅の設置を要請し、平成13年度以降の7団地の建替えで整備の回答 を得ています。民間住宅のバリアフリー化については、条例による指導・誘導のほか、平 成16年の制度改正により、1,000u以上の集合住宅へ整備基準が適用され、条例の適合に ついても一定の水準に達するようになりました。高齢者住宅については、住宅の改善相談 を総合福祉センターで実施し、住宅改修支援等の助成では、平成13年度から16年度の 実績として320件の活用があり、高齢者人口の増加と在宅生活重視の傾向から、今後の需 要も増えると予測されます。平成19年度には、住宅・住環境問題への対処、専門家や事 業者の交流、住まいづくりや居住支援を支えるネットワークの拠点として、住まいサポー トセンターの運営を開始しました。 【施策の課題】(1)公営住宅のユニバーサルデザイ ン推進・現在1階部分のみ対象にしている住戸内のバリアフリー改修を、全ての階の住戸 内におけるバリアフリー改修への検討。 (2)民間住宅内部のユニバーサルデザイン推進・ 高齢者や障害者等の個人の状況に応じた住宅内部の整備や、予防型の改造についての対策 推進。 (3)相談体制の充実・区民が実施するバリアフリー工事の計画、発注や工事内容 等について、区の相談体制の充実。・住宅のバリアフリー情報の普及啓発や講座の開催など、 住宅改造に関する情報提供。 4-4 公共交通施設の整備【現状】交通バリアフリー法等に より、平成20年4月現在、区内41駅中、36駅(88%)でエレベーター等による上 下の移動が出来るようになりました。残り5駅中2駅では、改善に着手しており、残りの 3駅についてはエレベーターの早期設置を働きかけています。駅の整備は大きく進展しま したが、車いす使用者が駅舎の出入口からホームまで移動できない駅も存在します。公共 交通不便地域(鉄道駅から半径500m以上及び、バス停留所から半径200m以上の区域)の 解消については、バス事業者への働きかけや、走行環境・走行空間支援により平成19年 4月までに7路線のコミュニティバスの運行を実現しました。運行にあたっては、ノンス テップ等の車両を導入しました。バス停環境の整備では、平成16〜18年にベンチの設 置や上屋設置の補助事業を実施し、バリアフリー化を進めました。移動困難者の支援につ いては、平成18年度に、福祉移動サービス(公共交通機関の利用が困難な方が外出する際、 車いすでも対応可能な車両などを活用し、移動を手伝うサービス)の予約や相談等を行う「世 田谷区福祉移動支援センター」を開設しました。また区内で、福祉移動サービスを実施し ているNPOは11団体あり、年間19,000件(19年度)を超える運行を実施しています。 差込写真コミュニティーバス 祖師谷・成城地域循環 せたがやくるりん (平成17年12 月運行開始)【施策の課題】(1)公共交通施設等における整備の推進・鉄道駅のエレベー ターやエスカレーターの設置を進めるとともに、他の交通機関への乗り換え経路やバス停、 その周辺の道路や歩道、車両等における段差解消、情報サインの充実等、ユニバーサルデ ザインによる整備の継続的な推進。 (2)公共交通不便地域への取り組み・公共交通不便 地域などにおけるコミュニティバスの導入など、多様な交通手段の確保。 (3)移動困難 者のための交通手段の確保・高齢者や障害者が自立して移動でき、社会活動に参画できる 福祉移動サービスの充実。 4-5 道路・自転車対策【現状】 「世田谷区民意識調査」で は、「だれもがまちに足を運びたくなる安全・便利な歩行空間の整備」の要望が上位に挙げ られ、道路整備について、区民が高い関心を寄せています。歩道の段差解消については、 平成17年度から3年間の改善計画をまとめ、すでに整備を完了し、視覚障害者誘導用ブ ロックの改善は、平成17年度から5年間の改善計画をまとめ、約80%の整備を完了し ています。歩道の有効幅員の改善や歩車道の分離では、バリアフリーの歩道の新設・改良 に努め、幅員7.5m以上の道路において、平成12〜18年度で延長約7,300mの歩道を新 設しました。現在は、歩道と車道との段差が少ないセミフラット方式やスムーズ段差世田 谷型を標準構造とし、車いすでも通行しやすい歩道を整備しています。自転車による事故 件数は、年々増加する傾向にあり、特に歩行者と自転車の事故が大幅に増加しています。 限られた道路幅員での安全な自転車走行環境の実現をめざし、平成19年度に自転車走行環 境創出の社会実験を実施しました。また、駅周辺の放置自転車車両数は、昭和62年には ピーク時で約33,000台でしたが、平成18年には約6,600台に減少しました。しかし、い まだに駅周辺や商店街に放置自転車があふれている地域があります。 【施策の課題】(1) 安全で快適な歩行者空間の形成・人が中心の生活環境の整備に向けて、歩道の確保、歩車 道の分離、歩車共存の道路整備など道路状況にあわせた安全な歩行者空間の整備。 (2) 歩行者空間のユニバーサルデザイン化の推進・歩道のバリアフリー整備、無電柱化の推進 等の計画的な整備。 (3)自転車走行環境の整備・歩行者と自転車利用者が安全に移動で きるように、自転車の走行空間・環境の整備。 (4)放置自転車・バイク対策の充実・区 民、鉄道事業者、商店街・会、警察、区が協力して取り組む、自転車等駐車場の整備、安 全な自転車利用の普及・啓発、放置自転車・バイク等の対策の充実。 4-6 公園、水辺の 整備【現状】 公園等の中には老朽化したり、区民のニーズに合わなくなったりするなど、 改修の時期にきているものもあります。この機会を捉えて公園の新設・改修時における出 入口の段差解消、園路等の改善を実施しました。公園・身近な広場にあるトイレ棟(207棟) のうち、車いす使用者対応トイレは平成12年度当時10%強でしたが、現在は約23%(49 棟)に増えました。さらにベビーベッドは19箇所・ベビーチェアは9箇所、出入り口の 段差解消・手摺設置等のバリアフリー化は211箇所になりました。しかし、区内には、国 分寺崖線や等々力渓谷等の自然環境を活用した公園があり、すべての施設をバリアフリー 化することは困難です。また、地域の身近な河川を憩いの場として、あるいは快適な環境 を演出する場として、整備することが求められています。 【施策の課題】(1)地形や地 域特性に応じた公園整備・一人でも多くの人が楽しめる公園整備。 (2)だれもが楽しめ るきめ細やかな公園づくり・草花など各人が各様に体感できる体験型の公園などの整備。 (3)区民の参加による公園整備と管理・区民の参加を得て、だれもが利用しやすい公園 づくりや管理運営の体制整備。 (4)水辺のユニバーサルデザイン・人々に潤いや安らぎ をもたらす憩いの場として、子どもから高齢者、障害者等のだれもが楽しめるふれあえる 水辺の整備。 5  地域のまちづくり                   5-1 推 進地区【現状】総合支所ごとに取り組んできた推進地区は、区民と事業者及び関係団体、 区との協働により、一定の成果を上げてきました。(1)区役所周辺地区   区民、地元 大学、商店街、NPO、行政が協働して「やさしいまちづくり連絡調整会議」をつくり、 区役所周辺地区においてバリアフリーの推進を図ってきました。平成16年には、都のユニ バーサルデザイン福祉の街づくり推進モデル事業に選定されたことを受けて、松陰神社通 りを中央排水型の道路を整備し、沿道の店舗と道路の段差を解消しました。また、AMラ ジオ放送を使った音声案内などにも取り組み、やさしいまちづくりを推進しています。(2) 梅ヶ丘駅〜豪徳寺駅・山下駅周辺地区梅ヶ丘駅周辺地区は昭和57年の「梅ヶ丘ふれあい のあるまちづくり(モデル事業)」から公共施設のバリアフリー化を進め、豪徳寺駅周辺まで 拡大してきました。リーディングライン(通常の幅の半分程度に狭くした、視覚障害者誘 導用ブロックのことです。世田谷区で独自に開発し、北沢川緑道の一部、松陰神社通りな どに敷設しています。)、ワークショップによる駅前サインの整備、商店街と協働のやさし いまちづくりを推進しています。(3)深沢1〜4丁目周辺地区「ねたきりゼロをめざす会」 が中心となり、『できることから始めよう』との掛け声で道路等の段差の改善等を進めると ともに、区と住民との協働で呑川緑道の整備について検討し、竣工させました。(4)成城 学園前駅周辺地区住民組織「バリアフリーの街 成城を考える会」が中心となり、インスタ ントシニア体験、中学生とバリアについて話し合うなどの活動のほかに、駅施設のバリア フリー点検の実施や、商店街の店舗・通学路のバリアフリーマップを作成しました。また、 区と協働で成城学園前駅駅施設等のバリアの改善等を行い、駅周辺の商店街のバリアフリ ー化に取り組んでいます。(5)千歳烏山駅〜芦花ホーム周辺地区住民、事業者、行政の協 働の場「烏山ネット・わぁ〜く・ショップ」を中心として、区と区民が協働で『できるこ とから実現しよう』を合い言葉に、駒大グランド前バス停の改善、リーディングラインの 整備などバリアフリー整備を実現してきました。推進地区内に、更に自主的に「先行整備 地区」を設定し、身近なバリアフリーの範囲を広げました。住民参加の輪も広がり、平成 16年には都から「福祉のまちづくり功労者感謝状」を受けました。 【施策の課題】(1) 推進地区を協働で推進するための取り組みの構築・ユニバーサルデザインのまちづくりを 実現していくために、推進地区の取り組みの一つとして、身近な地域での推進地区の検討。 (2)推進地区の検証と新たな展開・優先的に整備する地区として、面的整備を効果的に 推進するため、事業間の連携や支援策、他の制度の活用。 (3)地域で参加のまちづくり を実現する協働の場づくり・推進地区及びユニバーサルデザインを区民、事業者や関係団 体と区の協働により発展・継続させていく場、また、地域のきずなを大事にする場づくり。 5-2 トイレ・ベンチ等 【現状】区は、バス停へのベンチ設置整備を推進しています。 平成14年には、推進地区の千歳烏山駅〜芦花ホーム周辺地区において地域住民が参加し、 駒澤大学野球グラウンドを無償で借り受け、停留所にベンチを設置するなどの改善を行い ました。北沢地域では、『健康きたざわプラン』に基づいて、だれもが安心して外出できる ために、街や商店街の中などに座れる場所やトイレを貸してもらえるよう、ステッカーの 掲示や主旨を普及する取り組みを推進しています。さらに、NPOが主体となり、トイレ やベンチを街の中に設置する取り組みをしている事例があります。また、商店街が「ステ ーション」を設置して、トイレや休憩所を提供する試みも行われ、買い物に訪れる方に喜 ばれています。さらに、商店街の生活支援拠点づくり(世田谷区産業ビジョンに規定され ている。区民の誰もが安心して地域に住み続けられるように、商店街を中心に区民生活を 支える機能(身近な買い物の場、憩い・くつろぎ・にぎわいの場など)を充実することで す。)の取り組みとして、トイレやベンチを設置する検討も進めています。トイレの設置に 関しては、平成19年度に小規模店舗等へのバリアフリー化助成要綱を見直し、トイレの 改善を助成対象としましたが、活用はまだ不充分です。 【施策の課題】(1)街(まち) 中でのトイレの充実・都の「とうきょうトイレ整備事業」の活用も視野に入れた設置。 (2) トイレやベンチの情報提供・トイレやベンチの設置個所の情報についての区民周知。 6   ユニバーサルデザインによる情報とサービスの提供           6-1 情報の 提供【現状】 平成14年にはホームページに音声読み上げサービスを開始するとともに、 平成17年に区ホームページの使いやすさ(ウェブページのアクセシビリティ配慮手順) の実証実験を行い、電子政府世田谷推進計画の一環としてガイドラインを作成しました。 また、平成18年度には、災害時区民行動マニュアルの点字版・音声版を作成しました。 さらに「視覚情報のユニバーサルデザインガイドライン」を作成し、印刷物、情報誌、ホ ームページ、サイン整備の際の手引きとしました。情報に係る業務上の配慮としては、(1) 広報物に必ずファクシミリ番号を記載、(2)封筒の差出人表記に点字を入れた印刷、冊子の 点字化、外国語での案内の作成、(3)児童館のお知らせでは、子どもたちや外国人にも分か るようにひらがなのルビ付けを実施、(4)聴覚障害の方に対して区への来庁の際に、手話通 訳の活用、(5)英語版の広報を用意して、外国人の来館者があった際に手渡しをして、区の 事業等を案内している。等が挙げられます。しかし、高齢者、障害者、子どもや外国人等 への情報伝達について、受け手に合わせた情報の提供が十分とは言えません。 【施策の課 題】(1)様々なニーズに対応した情報の提供方法の検討・窓口でのコミュニケーションな ど様々なニーズへの対応。・「視覚情報のユニバーサルデザインガイドライン」の見直しを 進め、新たな情報の提供やサイン設置等の検討。・視覚障害者が情報を入手するために有効 な機器類の普及。・多様な情報媒体(ホームページ、音声案内、文字案内、メール配信など) をいつでも提供できる環境整備。 (2)災害時の情報提供の検討・災害時における、区民 への緊急情報の周知、伝達のあり方。 6-2 サービスの提供【現状】 区の窓口などにお ける来庁者への取り組みとして、 (1)福祉部門の窓口で、手話通訳者を待機させ、窓口案内 や手続きに同行し、通訳するサービスを実施、 (2)ローカウンターの設置、 (3)マグネット ボードの設置により、席を外す人や聴覚障害者や高齢者に利便性を提供、 (4)手話通訳者の 配置や積極的な「声かけ」による来庁の用件を把握、託児サービスの実施、 (5)機器改善に よる手続き等のサービス提供など、各担当所管で工夫を進めている。等が挙げられました。 【施策の課題】(1)できることからすぐに取り組む・身近に経験した様々な情報や気づい たことなどを、職場内などで共有し、実践すること。・事業者や区職員のサービス向上を目 的とした、サービスのガイドラインの作成。 (2)きめ細やかなサービス提供・ユニバー サルデザインによるサービス(施設や物の障壁(バリア)をなくすといったハード面の整 備だけでなく、それらに加えて人的なサービスや、やさしさや思いやり、目配り・気配りな どの配慮といったユニバーサルデザインの心を持ったサービス、情報提供やコミュニケー ションなどを、年齢、性別、国籍、能力等にかかわらずすべての人に提供することです。) の考え方を全庁的に実践する仕組みづくりの検討。 (3)区民、事業者、区職員の意識向 上の促進・ユニバーサルデザインによるサービスを実現するために、区職員の積極的な意 識向上と、区民や事業者への働きかけ。