【1ページ】 せたがや風景PRESS - 風景づくり通信第49号 平成26年3月25日発行 3/1に「風景づくりフォーラム2014」を開催しました。 この通信は、世田谷区風景づくり条例に基づき、世田谷らしい風景づくりの推進を目的に、風景づくりに関するその時々の話題をお伝えします。 第3回地域風景資産が選定されました。 【2、3ページ】 風景づくり百話第48話 風景づくりフォーラム2014 映画×風景 今年度の風景づくりフォーラムは、過去最大の150名の区民の皆さんが参加される中、開催いたしました。第1部は世田谷区在住の映画監督による「映画と風景」の講演&ワークショップ、第2部は、1月26日の公開選定会にて選定された、第3回地域風景資産20箇所のお披露目を行いました。 第1部①講演「映画からみるせたがやの風景」 映画監督の月野木隆さんをお招きし、映画監督という仕事のご紹介や映画づくりの舞台裏、そして映画と風景の関係などについてご講演いただきました。 月野木 隆さん(映画監督) 今村昌平監督に師事し今村作品の助監督、北野武監督「その男、凶暴につき」等の助監督を務める。 2002年に「白い犬とワルツを」で映画監督デビュー。最新作は「Father 手を伸ばせば」。世田谷区在住。 映画監督は制作過程全てを見る 皆さんは、映画監督はメガホンを持って「ヨーイスタート」と言っているだけの印象があるかも知れませんが、実際は脚本から全てに関わります。映画の準備段階でまず必要なのが脚本。脚本家が書いた物をただ受け取るのではなく、意見交換や、時に対立しながら、何度も書き直した上で完成させることが多いです。キャスティングも重要です。その際、私の場合は知っている俳優を使うと演出がやり易くなります。そしてロケーションハンティング(ロケハン=場所探し)、地方の話や特殊な話などに取り組む場合は、綿密な情報収集も行います。監督にとっても演出する上で必要な知識なので、自ら調べます。このような過程を経てできる台本は約120ページ。1ページ1分の配分で、感覚的にわりやすい配慮がなされています。 監督は極端な話、映る物全てをチェックします。ロケ地、登場人物の衣装持ち物、ヘアメイク、小道具なども。俳優に芝居をつけるのはもちろん、その画をどう撮るかもカメラマンにお任せではなくサイズ、ポジション等も指示します。撮影後の編集時、挿入する音楽や効果音についても担当と意見交換し、最終的な決定は監督が出さなければなりません。とはいえ、撮影現場ではトップでも、プロデューサーという存在もあり好き勝手に出来るわけではありません。監督というのは常に「これでいいのか?」と悩みながら、時間とも戦わなければならない職業です。スタッフもキャストも、もう限界という状況でNGが出た時「もう一回!」と言えるか、難しい判断を迫られます。いい作品を作るためには非情になることも必要です。 映画のイメージを伝える為に風景がある 映画を作る上でイメージを伝えることはとても重要で、その手段として風景を使うことが多くあります。その際、あるがままの景色(実景)の他「情景」と言って、人工的に雨を降らせたり、朝を表現する為ランドセルを背負った小学生を走らせたりします。東京の設定であっても、イメージに合う場所があれば、例えば筑波で撮ることもあります。ロケでは景色は良くても、工事中の場所が近くにあれば工事を止めてもらったり、犬が吠えているとなだめに行くなど音の苦労もあります。 また、映画では物語上の架空の地図を作ります。ここの角を曲がったらどこに出るか、場面と場面を繋いだものです。時間や空間を繋いでしまう、映画ならではのマジックです。このように、単純に風景を映し出すのではなく、映画としてのリアリティを作り出し、工夫をするのが、映画制作というものです。 イメージ作りについて、今村監督の映画「楢山節考」の助監督をした際のエピソードを紹介します。この映画では「生きて行くには過酷」と思わせる雪深い場所で撮影していたのですが、カンヌ映画祭に間に合うよう3月中に撮影を終了させなければならないことになりました。それにはどうしても雪解けのシーンの撮影が必要で、そこで助監督の私が除雪リーダーとなり、ヘリで重機を搬入、大規模な除雪作業を行いました。このように映画撮影では、風景に大胆に手を加える場合もあるのです。 第1部②ワークショップ「ショートムービーを完成させよう」 主人公の視点から世田谷の風景を探す 講演後、月野木監督がこの日の為に制作した約5分のショートムービー「春近し」を上映しました。監督自ら世田谷中を自転車で走り回りロケハンした、バレンタインデーをテーマにした心温まる映像。ここからはグループに分かれ、この映像の中で空白になっている箇所に、[①主人公(女性)がほっとするまち(3枚)、②2人(恋人同士)で行きたいところ(1枚)]の計4枚の写真を、予め用意した世田谷区内46箇所の特徴的な風景写真から選び、ショートムービーを完成させるワークショップを行いました。 発表を通して見えたこと(月野木監督の講評) 今回のワークショップは、映画の空白を埋めることだけでなく、主人公の視点から最適な場面を探す、監督の仕事の一部を体験してもらうことが狙いでした。全5グループの発表では、①、②共に、等々力渓谷や多摩川、砧公園といった、区内有数の風景スポットが主に挙がっていました。一方、グループでの話し合いで、それぞれが思い入れのある風景を選んでいたのも、興味深い結果でした。同じお題であっても、世田谷には見る人によって思い浮かぶ風景が幾通りもあります。ぜひ今回の体験を、世田谷の街を色んな角度から見るきっかけにしてください。 【4、5ページ】 第2部「第3回地域風景資産のお披露目」 第3回地域風景資産が20箇所選定されました! 約2年をかけてじっくりと進められてきた、第3回地域風景資産の選定。平成26年1月26日の公開選定会の場で、地域で大切な風景を守り育てていきたい!そしてもっと良くしていきたい!という想いがそれぞれの推薦人によって大いに語られ、第3回地域風景資産が20箇所選定されました。第1回、第2回の地域風景資産と合わせて86箇所。せたがやの風景づくりの輪は今後ますます広がりを見せてくれそうです。 風景づくりフォーラムの第2部では、選定された新たな地域風景資産の推薦人の皆さんに選定証の交付を行い、選定された喜びや、活動に対する抱負などを語っていただきました。フォーラム後の懇親会では、風景づくりの関係者同士、色々な語らいが生まれていました。選定された今が風景づくりのスタートラインであり、選定は風景づくり活動に取り組む「きっかけ」です。これまで共に活動してきた仲間はもちろん、選定活動の中で出会った風景づくり活動グループやサポーター、選定人の方々など、せたがやの風景づくりの関係者同士手を取り合うことで、より良い風景や活動になっていくことを期待しています。 第3回地域風景資産・一挙公開! 20箇所の第3回地域風景資産を一挙ご紹介します。春の暖かな日差しを受けながら、新たな地域風景資産を探しに、世田谷区内を散策してみてはいかがですか。 【6ページ】 世田谷区の都市デザインを巡る vol.3 人に優しい広々した歩道“区道”けやき広場 馬事公苑と世田谷通りを結ぶけやき広場は、世田谷区のほぼ中央に位置する、区道を“広場化”した歩道です。大きく幅員を取った歩道部分を中央に、狭い車道を西側に配置することで、広場としての機能を持たせる工夫がなされました。 昭和10年ごろに造成されたこの道路は、昭和15年に東京オリンピック(戦争のため開催権を返上)が計画された際、道幅を区道の中では最も広い35mに拡幅されるとともに、ケヤキが植えられました。 昭和59年には馬事公苑と共に「せたがや百景」に選ばれるなど、すぐれた景観が評価されましたが、自動車やバイクが常時駐車されてしまい、環境の良さを活かしきれていませんでした。この状況を改善する為、歩行者の利用を優先した道づくり整備により、歩道でありながら広場として活用できる空間として、昭和61年に新たに「けやき広場」として整備され、現在に至っています。 路面の舗装は100、200年先を考え自然石を使用し、街路灯やベンチも新設され、まさに憩いの広場としての機能が充実しました。 「広場」としての活用は現在も続いており、「せたがやふるさと区民まつり」など多くの来訪者が楽しめるイベントなどが開催されています。 【7ページ】 自転車で風景を探そう!世田谷ちょっと深景(たんけい) 世田谷区内には、各電車駅から歩いていくには少々遠い風景が少なくありません。世田谷の風景をより身近に感じるため、自転車を使って出かけてみませんか?世田谷区のコミュニティサイクル「がやリン」を利用した、オススメコースを紹介します。 第3回は桜上水から経堂へ [移動距離]約6.0km  [所要時間] 約1時間25分 厳しい冬が過ぎ去り、風が気持ちいい季節。軽やかなペダリングで、春の風景を探しました。 IHIがやリン桜新町ポートを出発し、深沢の杜緑地、呑川親水公園、園芸高校の並木や等々力駅近くの寺社かいわいをめぐり、IHIがやリン等々力ポートまでのコースを紹介しています。 コミュニティサイクルがやリンとは世田谷区内にある4か所のポート(桜上水南・経堂駅前・桜新町・等々力)で、どこでも借りられどこへでも返却ができるコミュニティサイクルシステムです。(1回200円、保証金500円) ※定期利用等、詳細は「世田谷区 がやリン」で検索。 【8ページ】 風景づくり info & column 第3回地域風景資産目録の公開 世田谷区風景づくり条例第13条第2項に基づき、第3回地域風景資産の目録を作成し、公開しています。検索サイトで「第3回地域風景資産の目録」と検索していただくと、該当ページをご確認いただけます。 なお、第1・2回地域風景資産の目録についても、書式を整え次第、順次ホームページで公開させていただきます。 平成26年度風景づくり検討会 風景づくり検討会では世田谷の風景づくりを広めていくため、区民の皆さんと協働で、風景づくり活動の推進について、検討を行っています。 平成25年度は地域風景資産での風景づくり活動のフォローアップについて具体的な検討を進め、方向性が固まってきました。 平成26年度はフォローアップの検討を継続して行うとともに、地域風景資産の普及・啓発についても検討していきます。 平成26年度第1回風景づくり検討会の日時・場所については後日、区ホームページにてお知らせいたします。 いつかの風景 ここはどこ? 空が大きく見える広い敷地に巨大な2つのガスタンク、落成当時、円形タイプはここにしかなかったとか。昭和30年代の風景です。 この場所はどこでしょうか? せたがや珍百景 その3 門柱の先は...フェンスで通れない? 茶沢通りから北沢川緑道に入って間もない場所に、代沢小学校の裏門かな~...と思ったら何か変。2本の門柱の先は学校のフェンスで囲われていて通れません。実はこれ、坂口安吾氏の文学碑。彼が代沢小学校の教員だったことから、大田区にあった彼の旧居の門柱を移築したそう。勘違いするほど自然にあります。 せたがやの隠れた風景 10 川の交差点、築樋橋(つきどいばし) 粕谷3丁目32番付近の、芦花公園から京王線千歳烏山駅に向かう道と千歳通りが交差する場所は、築樋橋と呼ばれています。この周辺はかつて多くの農地が広がっていた場所で、写真の場所は農業用水としての品川用水と、烏山川支流の水無川が交差する場所でもありました。 築樋とは、水路を交差させるための土木工法のことで、昔は水無川の上を品川用水が流れていたとのことです。品川用水は埋め立てられ、千歳通りになり、水無川は暗渠化して、緑道・歩道として区民に親しまれています。 現在、立体に交差していた様子をうかがうことはできませんが、千歳通りに向かってゆるやかなスロープ状になっています。水の要所であった原風景を思い浮かべながら、春の散策を楽しんでみてはいかがでしょうか。 風景づくりについてのお問い合わせは… 世田谷区都市整備部都市デザイン課 電話:5432ー2039 FAX:5432ー3023 バックナンバーは「世田谷区 風景づくり通信」で検索