時間を旅する風景街歩きシリーズ 風景PRESS07 住宅地 引き継がれてきた住宅地の風景 深沢・桜新町 成城 表面の写真1:桜新町のサクラ並木と成城のイチョウ並木の風景 豆知識1 住宅地の開発 江戸の近郊農村であった世田谷の地に、大正から昭和初期の鉄道の開通などをきっかけに、沿線に住宅地がつくられました。 玉川電気鉄道の沿線に大規模で計画的な住宅地が開発された新町住宅地をはじめ、目蒲線(現目黒線)の開通により多くの海軍士官たちが住居を構えた奥沢の海軍村、桜並木を中心にハの字に肋骨のように広がる道路(通称「肋骨通り」)が印象的な上北沢分譲地、鉄道開通前に成城学園の学園町として開発された住宅地など、いくつもの住宅地が形成され、今も当時の面影を見ることができます。 今回はこの中から、旧・新町住宅地を含む深沢・桜新町の住宅地と成城の住宅地をご紹介します。 豆知識2 新町住宅地 新町住宅地の分譲 大正2年(1913年)、東京信託(株)は新町住宅地の分譲を開始しました。開発時の計画の特徴は、「深沢・桜新町100年史」に以下の通りにまとめられています。 計画の特徴 中面マップ参照 ・段階的な道路構成 新町停留所から真南に伸ばした引き込み道路(中央通り又は中通り)→突きあたりのY字交差点(三叉路)→ループ状の東・南・西の大通り→大通りからアプローチする支線道路という段階的な構成がされていました。領域性を明確にもった近代住宅地計画の新しい考え方を取り入れているといえます。 ・コミュニティ施設 Y字交差点に面して販売事務所及び住民のための倶楽部(新町倶楽部)が設けられました。その敷地内には遊園地と池があり、Y字交差点の空間と合わせて公共的利用がされたようです。倶楽部は、後に町会の事務所となり、その後、桜新町区民集会所になりコミュニティの拠点として引き継がれています。 ・桜並木ーまちのシンボル シンボルとなる桜(ソメイヨシノ)が中央・東・南・西の大通りに植えられました。中央通りと東大通りの一部では失われたものの100年後まで引き継がれています。 ・Y字交差点(住宅地の入口) まちのセンター 三叉路で見通しがよく人々が集まる「まちのセンター」として格好の場所でした。 パンフレットに書かれていた、みどりやみずの保全、交通利便性の確保、東京市内と同等の施設・設備水準の実現に加えて、上記の特徴をもつ新町住宅地の計画は、当時の人々には新鮮で「都市生活の利便に浴すると共に田園の趣味を失わせない」(パンフレットより)優れた計画だったと考えられます。 計画の特徴は、こちらの冊子から引用しました。 『深沢・桜新町100年史 新町住宅地の分譲開始から100年 私たちのまちは、こうして形づくられました 1913〜2013』 風景づくりの活動をしている「深沢・桜新町さくらフォーラム」によって、開発前の状況から現在までのまちの歴史がまとめられています。 表面の写真2:パンフレット表紙『深沢・桜新町100年史 新町住宅地の分譲開始から100年 私たちのまちは、こうして形づくられました 1913〜2013』 豆知識3 成城の住宅地 学園都市づくり 成城学園は自然豊かな環境の中での教育をめざし、大正14年(1925年)に新宿区から世田谷区成城に移転しました。移転の際、学園都市に相応しい住宅地にすることを考え、宅地開発時に塀のデザインなどについて地元関係者と申し合わせをしました。 ●板塀やレンガ塀はつくらない、大谷石の上は樹木を植えるか生垣にする。 ●和風の家にはマツを活かし、洋風の家はヒマラヤスギを3本植える。 ●サクラやイチョウを街路に植える など。 表面の写真3:3本のヒマラヤスギ 成城憲章 昭和40〜50年代は世代交代の時期となり、これまでの街並みが変わり始めました。「このままではいけない」と危機感を感じた方々が成城の環境を守る活動に取り組み、平成14年に法人格成城自治会が「成城憲章」としてまとめました。 緑の保全と創出を基本とする成城らしい街並みを維持するためのルールが定められています。 [主な内容] ●低層住宅地の保全(建物の高さ10m以下) ●敷地の細分化の制限(敷地面積250u以上) ●生垣や樹木など、敷地内の緑の保全(既存樹の保全と地上部で敷地の20%以上の緑の確保) ●建築物の隣地境界線からの後退(敷地境界線から1m以上、最低でも50cm以上)など 豆知識4 風景を守り育てる活動 旧・新町住宅地を含む深沢・桜新町の住宅地や成城の住宅地では、大切な風景を守り育てるため、お住まいの方々によりまち歩きや落葉掃きなどの活動が行われています。また「地域風景資産」に選定されている場所が複数あり、後世へと引き継いでいこうと取り組まれています。 表面の写真4:パンフレット表紙『成城憲章』 STUDY 学ぶ・深める 地域風景資産とは 生活や文化が感じられる街並みや、人々が行き交う商店街の賑わいなど、そこに暮らす人々に共有され、みんなが誇りと愛着を持っている大切な風景を「守り、育て、つくる」ことを目的とし、世田谷区風景づくり条例に基づき選定されたものです。 ご報告 親子で風景なぞときまちあるき 〜ご参加ありがとうございました〜 令和元年10月26日(土)に「親子で風景なぞときまちあるき」を開催しました。当日は、池尻稲荷神社から三軒茶屋駅までのエリアにひそむなぞを解きながら、風景を楽しみ、歩いていただきました。たくさんの方にご参加いただきありがとうございました。 表面の写真5,6:風景なぞときまちあるきの様子 なぞときに挑戦したい方へ  区ホームページに今回の「なぞとき」を掲載しています。ぜひ「親子で風景なぞときまちあるき」にお出かけしてみませんか? 検索:世田谷区 風景なぞとき 挑戦  表面の写真7:なぞときまちあるきの資料 中面 成城の住宅地 成城学園前駅近くの東西南北に延びる道には、大きく育ったサクラやイチョウの並木が続き、時代の経過を感じられます。多様な生垣、マツや三本のヒマラヤスギなどを見つけたり、今も残る国分寺崖線の豊かな緑を眺めたりしながら歩くのがオススメです。 中面の写真1:成城学園前駅を中心とした成城学園、仙川、野川周辺のまちの地図と、同じ範囲の昭和4年の古地図 地域風景資産やせたがや百景、その他の風景ポイントをご紹介します。 また地図には、樹木(プラタナス、イチョウ、サクラ)や、河川、公園緑地が示されています。 地域風景資産1 成城の桜並木といちょう並木 開発当時に植えられたイチョウとサクラです。秋には地域で落葉掃きをします。 中面の写真2,3:イチョウとサクラ並木の風景 地域風景資産2 成城3丁目の国分寺崖線の樹林 地域風景資産3 成城三丁目桜と紅葉の並木 土の道に沿って並木があります。 中面の写真4:土の道と並木の風景 地域風景資産4 成城三丁目緑地 住民参加による里山の再生活動が行われており、隣接する明正小学校の児童も参加しています。 中面の写真5:湧水の上にかかる橋の上を歩く子どもたち せたがや百景1 成城学園の池 せたがや百景2 成城学園の入口 開発前から今に残るマツがひときわ目をひきます。 中面の写真6:背の高い二本の松の木 せたがや百景3 成城の桜並木 せたがや百景4 成城五丁目猪股庭園  近代建築や庭園、周辺の住宅とつながりを感じられる生垣が美しいです。 成城5-12-19 開園時間:9:30〜16:30 休園日:毎週月曜日(但し、月曜が祝日の場合は次の平日)と年末年始(12月29日〜1月3日) 入場無料 冬には庭園に雪吊りが施されている様子がみられます。 中面の写真7:猪俣邸周辺に続く生け垣 中面の写真8:雪吊りされた樹木 せたがや百景5 成城の富士見橋と不動橋 せたがや百景6 成城3・4丁目の崖線 せたがや百景7 野川と小田急線ロマンスカー せたがや百景8 成城3丁目桜ともみじの並木 その他の風景ポイント1 成城みつ池緑地・旧山田邸 その他の風景ポイント2 成城みつ池緑地 絶滅危惧種の動植物が数多く残っています。年数回の観察会実施時のみ公開しています。 その他の風景ポイント3 成城三丁目こもれびの庭市民緑地 成城3-6-20 開園時間:9:00〜17:00 (11月〜3月は16:00まで) 休園日:年末年始(12月29日〜1月3日) 入場無料 三本のヒマラヤスギが今も残っています。 中面の写真9:背の高い三本のヒマラヤスギ 【風景を守り育てる活動】 法人格 成城自治会 「成城憲章」の啓発活動や、子どもたちと一緒に落葉掃き、里山づくりなどに取り組んでいます。 深沢・桜新町の住宅地 桜新町駅からサザエさん通りを南下すると、Y字に道路が分かれ、その分岐点に交番と桜新町区民集会所があります。ここが旧・新町住宅地の入口です。住宅地の庭園跡の二つの緑地を訪れ、緩やかに変化する地形を感じながら桜並木を歩くのがオススメです。 中面の写真10:桜新町駅からサザエさん通りを南下した先にある旧・新町住宅地周辺のまちの地図と、同じ範囲の昭和4年の古地図 地域風景資産5 旧・新町住宅地の桜並木 分譲当初に植えられた桜並木は一部失われたものの、今も引き継がれています。 中面の写真10:住宅地のサクラ並木の風景 地域風景資産6 呑川親水公園 呑川沿いに桜並木が続きます。 中面の写真11:呑川沿いのサクラ並木の風景 地域風景資産7 清明邸 都立深沢高校内に残る、近代和風建築です。わかもと製薬社長の邸宅の離れとして造られました。通常は非公開です。 中面の写真12:清明邸 せたがや百景9 桜並木の呑川と緑道 その他の風景ポイント4 桜新町区民集会所 Y字交差点、旧・新町住宅地の入口に位置します。分譲当初からコミュニティの拠点でした。道路際には、「信託住宅発祥地」の石標があります。 中面の写真13:石標 その他の風景ポイント5 長谷川町子美術館・記念館 美術館には、主にマンガ「サザエさん」の作者長谷川町子さんが集めた美術品が展示されています。 道路向かいにある記念館には、長谷川町子さんの作品の資料などが展示されています。 中面の写真14:美術館外観 その他の風景ポイント6 深沢八丁目無原罪特別保護区 カトリック無原罪聖母宣教女会の中にある回遊式庭園。春と秋の決められた日に公開しており、通常は非公開です。 中面の写真15:池とみどりの風景 写真提供:(一財)世田谷トラストまちづくり その他の風景ポイント7 深沢の杜緑地 その他の風景ポイント8 桜新町一丁目緑地 【風景を守り育てる活動】 深沢・桜新町さくらフォーラム 地域風景資産に選定された、旧・新町住宅地(深沢七、八丁目・桜新町一丁目)の桜並木を核にした風景づくりの活動を行っています。 発行 世田谷区都市整備政策部都市デザイン課 〒154-8504 世田谷区世田谷4-21-27 電話 03-5432-2039 ファクシミリ 03-5432-3084 ホームページ風景プレス 検索 時間を旅する風景街歩きシリーズ 風景PRESS 07 平成2020年4月(第62号)