表1 時間を旅する風景街歩きシリーズ 風景PRESS 03  東急世田谷線 世田谷線のある風景 写真掲載:キャロットビルを背景にして走る世田谷線 表2 世田谷線アテンダントさんの車窓風景 世田谷線の電車内で働いている人は、毎日どんな車窓風景を見ているのでしょうか。 アテンダントとして勤務4年目の松下初美さんに、イチオシの風景 を教えてもらいました。 写真掲載:松下さんの顔写真 イチオシA 電車に手を振るこどもたち 一番好きなのは、沿線にある西太子堂公園や赤松公園などの公園から、小さいお子さんが電車に手を振ってくれる風景です。 電車に「頑張って!」と声をかけるように、一生懸命に手を振ってくれるので、私も手を振り返しています。 ゆったりとした速度で走る世田谷線ならではの風景です。 写真掲載:電車に手を振る親子 イチオシB ダイナミックさを感じる環7 世田谷線で環7を渡る時の風景は、とてもダイナミックです。遮断機もないのに、トラックなどの大型車も含め、たくさんの車に待ってもらう中を渡っていきます。 スピードを落として注意深く渡るため、通りの風景をよく見ることができます。 イチオシC パンの香りで幸せ気分になる朝 松陰神社前駅の近くには、数軒のパン屋さんがあります。朝のラッシュが落ち着いた9時頃、電車が駅についてドアが開いた瞬間、焼きたてパンの香りがします。いい香りで、幸せな気分になります。香りで感じる朝の風景です。 世田谷線のイロハ イ 世田谷線とは 正式名称は、東京急行電鉄世田谷線。起点の三軒茶屋駅から終点の下高井戸駅までを結ぶ、約5kmの軌道です。軌道は、道路上を運行する併用軌道が原則ですが、世田谷線は、道路を走らない専用軌道となっています。駅(停留場)数は10で、うち7駅は無人駅です。全線の所要時間は約20分で、すべて各駅停車。その名のとおり、世田谷区内を時速40km/h以下で穏やかに走ります。車両は、カラフルな300系車両(2両編成)が10編成あり、期間限定のラッピング車両も登場しています。 写真掲載:猫のラッピング車。キャプション 幸福の招き猫電車は平成30年3月31日まで ロ 世田谷線の歴史 明治40年(1907)に開業した「玉川電気鉄道」(通称:玉電)の一部として、大正14年(1925)に開通。地元の誘致により誕生した路線で、三軒茶屋から上町を経て西に向かう計画は実現せず、京王電気軌道の下高井戸駅を終点としました。開通当時は、12駅ありました。 昭和44年(1969)、道路混雑の激化により玉川線本線は廃止されましたが、専用軌道の三軒茶屋?下高井戸間は存続し、「世田谷線」となりました。 写真掲載:昭和2?4年頃の線路図。キャプション「出典:地図でみる世田谷(区立郷土資料館発行)」 ハ 古くてナウい鉄道遺産 2017年、玉電開通から110周年を迎え、世田谷線も開通から90年以上経過しました。かつて都内を縦横無尽に走った軌道も、世田谷線と都電荒川線を残すのみ。身近なだけに忘れがちですが、貴重な「動く鉄道遺産」といえます。 一方、近年軌道が世界的に見直されています。都心への自動車乗入れを制限し、新たに「ライトレール」という軌道を導入する国が相次いでいます。国内でも、富山市に併用軌道が新設されるなど、その価値が再認識されています。世田谷線も、ライトレール導入に向けた大切な財産になる、かもしれません。 みんなで参加しよう! せたがや地域風景資産 クイズラリー2018 世田谷区内の地域風景資産を巡るクイズラリーを開催します。出題クイズは、昨年度実施した「地域風景資産クイズコンテスト」にて、区民の皆さんからご応募いただいたものです。クイズラリーブックを持って、身近な風景を楽しみましょう。 開催期間 2018年3月1日(木)〜5月31日(木) 配布   クイズラリーブックは、図書館、まちづくりセンターなどで配布します。 写真掲載:クイズラリーブック表紙 大正14年製造の車両を改修 みんなの「玉電」を復活させよう! 世田谷線宮の坂駅前の広場にある旧玉電車両は、コンペにより設置され、多くの方々に親しまれてきました。しかし、現在車両の劣化が著しいため、補修整備と車両を活かしたイベントの開催に向けて、皆さまからの寄附を募集しています。 募集 2018年6月29日(金)まで 詳細 宮坂区民センター展示車両 検索 お問合せ 世田谷総合支所地域振興課 電話03-5432-2835 写真掲載:宮の坂駅前の広場にある旧玉電車両 中面 世田谷線は、なぜ愛される風景なのか 10駅の合計乗降客数が1日平均5万人を超え、朝夕はラッシュアワーもある世田谷線。しかし、交通手段として利用しているだけではなく、世田谷線のある風景に、親しみや癒しを感じている人は多いはず。その理由を探ってみましょう。 まちの中の「広い空」 まっすぐな線路が続く「松原-下高井戸間」では、広い空を眺めることができます。線路と道路で広い空間があること、沿道に高い建物がないことで、空の広がる風景がつくられています。 これだけ広い空が見られたら、散歩も楽しくなります! 写真掲載:青空の下を走る世田谷線。キャプション「空の広がる風景は、世田谷線のおかげ」地図番号1 模式図:線路と沿道が約20mあり、沿道に高い建物がなく空が広く開けている図。 比べてみよう 幅員の広い道路沿道には高い建物があることが多く、空は狭められている。 写真掲載:広い道路の沿線に、高い建物がある。 模式図:道路幅が約20mあり、沿道に高い建物があり、空が狭めらている図。 高い建物はないが、道路幅が狭いと、空の広がりは感じられない。 写真掲載:狭い道路は、沿道に高い建物がないが、空の広がりはない。 模式図:道路幅が約6mだと、沿道に高い建物がなくても、空に広がりはない。 カラフルな10色 世田谷線の車両は全部色が違います。このカラフルな色も、人気の秘訣! 今走っている電車の色は、上町駅の改札脇に掲示されている手作りの看板でも知ることができます。 写真掲載:走っている電車の色がわかる看板。キャプション「走行車両一覧」地図番号3 青 で発進! 信号には「若林踏切」とありますが、遮断機はありません。道路信号が赤になると、世田谷線が環7を横切ります。 1966年までは、昇降式遮断機がありましたが、環7の交通量が増えたため信号になりました。 写真掲載:キャプション「環7を渡る世田谷線」地図番号6 地域と企業でフラワリング 「世田谷駅」「山下駅」近くの花壇では、地域※と東急電鉄の方々とで、定期的に花壇の手入れをする「フラワリング」を行っており、季節毎の草花を楽しむことができます。 ※地域風景資産活動団体の「世田谷線とせたがやを良くする会」は、フラワリングをはじめ世田谷線界隈がホッとやすらぐ場所になるよう、様々な活動に取り組んでいます。 写真掲載:地域の人と東急電鉄の方で花壇の整備。地図番号2 世田谷線写真館 朝から夜までさまざまな顔を見せる世田谷線を写真でご紹介します 写真掲載:キャプション「夕暮れほっとする灯火」。 ホームの背後に夕焼けが広がる(地図番号4) 夕暮れに明るく輝くホーム(地図番号5) 光る世田谷線のヘッドライト(地図番号5) 家々の間を通ります 住宅地の間を走っていることも、親しみやすさを感じる理由のひとつかもしれません。 上から見てみよう! 写真掲載:キャプション「キャロットタワー26階展望ロビーからの眺め」地図番号7 模式図:三軒周辺の世田谷線と世田谷通りの違いを示した用途地域模式図 用途地域で街を見てみると、世田谷通り沿いは商業系、世田谷線は住居系の用途地域であることがわかります。延焼防止のために高い建物が立ち並ぶ世田谷通りに比べ、世田谷線の走る地域には住宅地が広がっていることがわかります。 STUDY 学ぶ・深める 都市計画がつくる風景 世田谷区には、大きく「住居系」「商業系」「工業系」の3つに分けられる10種類の用途地域が指定されています。 用途地域ごとに定められた、建物の用途や規模のルールが風景の骨格をつくっています。 地図掲載:世田谷線周辺の地図には、掲載写真とアテンダントさんのオススメ、地域風景資産のポイントが示されています。 地域風景資産リスト 地域風景資産1:歩いて楽しい北沢川緑道(豪徳寺1丁目) 地域風景資産2:ほっとやすらぐ世田谷線界隈の情景 地域風景資産3:古道・滝坂道 地域風景資産4:豪徳寺参道の松並木 地域風景資産5:せたがやボロ市が開催される大山道 地域風景資産6:世田谷区庁舎のケヤキ並木が作る広場の風景 地域風景資産7:元気でやさしい松陰神社通り 地域風景資産8:若林3丁目緑の小道 地域風景資産9:太子堂八幡神社と森 地域風景資産とは 地域風景資産マーク掲載 生活や文化が感じられる街並みや、人々が行き交う商店街の賑わいなど、そこに暮らす人々に共有され、みんなが誇りと愛着を持っている大切な風景を、「守り、育て、つくる」ことを目的とし、世田谷区風景づくり条例に基づき選定されたものです。 発行 世田谷区都市整備政策部都市デザイン課 〒154-8504 世田谷区世田谷4-21-27 電話 03-5432-2039 ファクシミリ 03-5432-3084 ホームページ風景press 検索 時間を旅する風景街歩きシリーズ 風景PRESS 03 平成30(2018)年3月(第58号)