表1 時間を旅する風景街歩きシリーズ 風景PRESS 02  喜多見駅?次大夫堀公園 歴史・文化に触れながら辿る世田谷の原風景「農のある暮らし」 表2 次大夫堀公園民家園で農の原風景を学ぼう! 中面でご紹介しているまち歩きコースは、今でも農の風景が残る場所のひとつです。しかし、昔のままの風景が見られるわけではありません。  そこで、江戸後期から明治初期にかけて、かつて世田谷にあった農村風景を再現している「次大夫堀公園民家園」を訪ね、世田谷区の文化財資料調査員、今田洋行さんに「世田谷の農の原風景」について教えていただきました。 写真掲載:今田さん人物写真(キャプション)「今田さんに聞く」 図掲載:「次大夫堀公園民家園」のイラストの上に説明を書いています。 竹山 筍の生産のため、竹が植えられました。また建築や生活用具(カゴ)としても使われました。 兼業農家 半農半商の家もあり、家の造りも商売ができるようになっていました。 屋敷南側の木々 多摩川からの強い風や、夏の強い日差しを防ぐため、家の南側にカシなどの高木を植えました。 茶垣 屋敷や畑の境に茶の生垣をつくり、家で1年間飲むお茶を栽培していました。 広い前庭 主屋の前の広い庭は、棒うちなどの農作業を行う重要な場であったため、常に掃き清められていました。庭には納屋などもあり、作業が機能的に行われていました。 せとみち 家々の裏口を結ぶ道を、背戸道と呼びました。 雑木林 屋敷の周辺には、燃料の薪や堆肥用の落葉をとる雑木林がありました。 生垣 ヒイラギ、サンゴジュなどが植えられました。 農業用水 多摩川から分水した次大夫堀が、付近の水田を潤しました。 ・図掲載:棒うち 「くるり棒」と呼ばれる道具で、稲、麦、豆などを打ち、脱穀していました。 STUDY学ぶ・深める 農家のまわりに植えられた樹木 農家の屋敷は、屋敷林や生垣などを外部との境としていました。また、植えられる樹木は、右欄にあるように、生活と深い関わりがありました。 欅・杉・松などの高木 防風や堆肥、また家屋の建築材 柿・梅・茶 食用 竹 食用、建築材、生活用具 次大夫掘公園民家園 開園時間 9:30-16:30(元旦は10:00-15:30) 休園日 毎週月曜日(月曜日が祝・休日の時は、その翌平日が休園日)年末年始(12/28-31、1/2-4) 所在地 世田谷区喜多見5-27-14 アクセス 小田急・東急バス 成城学園前駅ー二子玉川駅 「次大夫堀公園前」または「砧中学校下」下車 徒歩2分 徒歩 成城学園前駅より15分 みんなで参加しよう! ご報告 せたがや地域風景資産クイズコンテスト たくさんのご応募、ありがとうございました!  2017年3月15日〜5月31日に開催した「せたがや地域風景資産クイズコンテスト」には、合計242通のご応募をいただきました!お寄せいただいたクイズは、以下の4つの視点で審査し、84資産のクイズが決定しました。 審査の視点 1現地に行くと答えがわかる 2多世代が理解できる 3資産との関連性が高い 4ユーモア・オリジナリティがある  2018年3月から、決定したクイズによるクイズラリーを開催する予定です。詳細は、本紙や区のお知らせ等でご案内します。お楽しみに! 予 告 まち歩き「地形を感じる世田谷めぐり」 風景PRESS 01(2017年3月発行)でご紹介した、等々力渓谷と国分寺崖線の高低差を感じられるルートで、まち歩きを開催します! 概要(予定) 日時:2017年11月12日(日) 午前 ルート:等々力駅〜九品仏駅 講師:東京スリバチ学会 会長皆川典久さん 募集:2017年10月15日〜抽選30名 まち歩き内容や募集方法等の詳細は、10月15日から区のお知らせ・ホームページ等でご案内します。みなさまのご参加をお待ちしております! 図掲載:「風景PRESS 01 地形を感じる世田谷めぐり」表紙掲載 中面 農のある暮らしを辿(たど)ろう。 「農の風景」は、近郊農村であった世田谷の原風景といえます。都市化により農地は減りましたが、喜多見には「農」を感じることができる懐かしい風景がたくさん残り、東京都の「農の風景育成地区※」にも指定されています。 今回は、かつて大名の拠点でもあった喜多見の歴史・文化に触れながら、「農の風景」の面影をめぐるコースをご紹介します。 ※「農の風景育成地区」 都市の貴重な農地を保全し、農のある風景を維持していくために東京都が創設した制度です。農を活かしたまちづくりなどの取り組みを進めています。 喜多見を知る 地域の個性を思い浮かべて歩けば、何気ない風景も深みが増して見えます。 まずは、特有の歴史・文化を受け継ぐ喜多見の基礎知識をご紹介します。 喜多見氏  喜多見はかつて、大名のお膝元でした。喜多見氏は、江戸を拠点とした武家の名門・江戸氏の末裔(まつえい)で、室町時代に喜多見に移りました。世田谷吉良氏と後北条氏に仕え、豊臣秀吉の小田原攻めで敗戦した後は、江戸に入った徳川家康から500石を拝領し、姓を江戸から喜多見に改めました。須賀神社付近に屋敷を構え、喜多見氏3代重政は将軍綱吉の側用人を務め、2万石の大名まで登りつめましたが、3年後に御家断絶(おいえだんぜつ)となり、家臣の多くは喜多見で帰農(きのう)しました。 六郷用水(次大夫堀)  六郷領(現在の大田区)の灌漑(かんがい)を目的として多摩川から分水した人工水路で、慶長2年(1597)に着工し、同16年に完成しました。工事を指揮した代官・小泉次大夫にちなみ、「次大夫堀」とも呼ばれます。狛江から世田谷領の喜多見、大蔵、等々力などを経て、六郷領へと至りました。現在は、大蔵より下流は丸子川として姿を留め、喜多見地区内では一部が緑道として整備されています。 喜多見の暮らし  台地の多い世田谷では、農業の中心は畑作でしたが、水路に恵まれた喜多見では、昭和30年代まで水田も見られました。近年、宅地化が進みましたが、世田谷の他地域と比べ多くの農地が維持されてきたことは、喜多見氏以来の歴史と伝統を重んじる地域柄が一因といえます。地域ぐるみで継承する伝統行事も多く、氷川神社の節分行事、慶元寺の双盤念仏行事、須賀神社の湯花神事が区の無形民俗文化財に指定され、御嶽講(みだけこう)や天神講(てんじんこう)など、近世から続く集団信仰も今に伝えています。 コース紹介 喜多見駅〜次大夫堀公園 2時間コース 地図掲載:「喜多見駅〜次大夫堀公園」の地図上に説明を書いています。 地域風景資産:成城3丁目の国分寺崖線の樹木 地域風景資産:成城3丁目桜と紅葉の並木 地域風景資産:成城三丁目緑地 地域風景資産:喜多見大橋から見た野川上流の眺め 地域風景資産:喜多見五丁目竹山市民緑地の竹林と垣根 地域風景資産:畑の間の土の道 地域風景資産:慶元寺三重塔の見える風景 古墳からの畑と慶元寺の眺め時代を超えた農の風景が堪能できます 地域風景資産:須賀神社とムクノキ 地域風景資産:畑の間の土の道 地域風景資産:喜多見・歴史の道?慶元寺・氷川神社界わい 白壁に沿ってシラカシの並木が続きます 地域風景資産:畑の間の土の道 旧加藤家があった場所(次大夫堀公園に移築) 新しい住宅、農地や農家の趣を残す緑が混在しています 名木百選のイチョウが目印 喜多見クリーンファーム手前を右に曲がる 水耕栽培で野菜を育てている工房オレンジ色のドーム屋根が目印 旧城田家があった場所(次大夫堀公園に移築) 地図についてのコメントあり 1 昭和30年代の風景 世田谷通り付近から小田急線を望む。昭和40年代に開削された野川はまだ無く、田んぼが広がっています。 写真掲載 提供 区立郷土資料館 2 旧にごりや かつて造り酒屋「にごりや」があったところにあるケヤキ並木。昔の農家は、屋敷境にケヤキを列べて植えました。 写真掲載 3 念仏車(ねんぶつぐるま) 古道の交差部にある地蔵尊。脇にある「念仏車」は、一回まわすとお経を一巻読んだのと同じ功徳があると言われています。 写真掲載 4 氷川神社 澄んだ空気を感じられる参道には、喜多見氏が寄進した石鳥居があります。 2月には、「節分行事」(区無形民俗文化財)が行われます。 写真掲載 5 昭和30年代の風景 喜多見4ー18付近より北東を見る。野菜の取り入れをしている奥には、収穫前の麦が見えます。 写真掲載 提供 区立郷土資料館 6 慶元寺 喜多見氏の墓所があります(区史跡)。 11月には「双盤念仏行事(区無形民俗文化財)」をが行われます。 写真掲載 7 喜多見農業公園 野菜の育つ様子を間近に見たり、農業体験ができたりする公園です。 開園時間: 3?10月 9:00-17:00 11?2月 9:00-16:30 写真掲載2枚 8 須賀神社 ムクの巨木がある、地域で継承する神社。夏祭りには、湯花神事(ゆばなしんじ)(区無形民俗文化財)が行われます。 地元では「この境内で遊ぶ子はケガをしない」と言われ、今でも子ども達の恰好の遊び場となっています。 9 喜多見五丁目竹山市民緑地 市民ボランティアが管理をしているモウソウチクの林。竹林の中を歩くこともでき、竹細工やタケノコ堀りのイベントもあります。(竹林保護のため4?5月は休園) 写真掲載2枚 地図掲載:上記ポイントが含まれる範囲の地図にルートとポイントが掲載。 地域風景資産とは 地域風景資産マーク掲載 生活や文化が感じられる街並みや、人々が行き交う商店街の賑わいなど、そこに暮らす人々に共有され、みんなが誇りと愛着を持っている大切な風景を、「守り、育て、つくる」ことを目的とし、世田谷区風景づくり条例に基づき選定されたものです。 発行 世田谷区都市整備政策部都市デザイン課 〒154-8504 世田谷区世田谷4-21-27 電話 03-5432-2039 ファクシミリ 03-5432-3084 ホームページ風景プレス 検索 時間を旅する風景街歩きシリーズ 風景PRESS 02 平成29(2017)年9月(第57号)