安全なまちづくりへ向けて 第3章 擁壁 宮城沖地震では、ブロック塀の倒壊と並んで傾斜地での擁壁の崩壊が目立ちました。 これらの被害例は、装飾的なものでしかない構造のものもありましたが、特に宅地造成地における盛土の崩壊が多かったようです。 締固め不十分でゆるく、盛られているだけで平常時の大雨の際にも亀裂を生じていたようなところだったからです。 これでは地震がきたら、ひとたまりもありません。 この章では、東京都建築安全条例の基準を引用し、がけと擁壁について説明します。 第1 がけ 1 がけ高とは がけ高とは、がけ下端を過ぎる二分の一勾配の斜線をこえる部分について、がけ下端よりその最高部までの高さとしています。 2 がけ地と建物 高さが2mを超えるがけに近接して建物を建築する場合、または建築敷地を造成する場合は、次の規定が適用されます。 (1) がけ地よりがけ高の2倍を超える距離に建築する場合 がけ地よりがけ高の2倍を越える距離に建物を建築する場合は、擁壁を設けなくても建物は可能です。 しかしこれは、がけ地が安全ということではなく、がけが万が一崩れても建物は安全であると想定しています。 がけ地の傾斜をゆるくするか、擁壁を造るなど、がけを安全なものにしてください。 (2)がけ地の上の建物を建築する場合 がけまたは既設の擁壁が、現状の土圧等に対して支障がないと認められる場合には、擁壁に新たな荷重・土圧等を及ぼさない範囲に建物の基礎を設置すれば建物を建築することは可能です。 なお、擁壁を築造する時に建物の重さ等を見込んで、設計されていることが明らかな場合は、上記によらないことができます。 (3)がけ地の下に建物を建築する場合 がけ等の下で、がけの高さの2倍以内の距離に建物を建築する場合には、鉄筋コンクリート造の建物にするなど、がけ等の崩壊に対して安全に考慮する必要があります。 第2 擁壁の基準 1 一般規定 建築物を建築し、又は建築敷地を造成する場合に、がけの高さが2mを超えるときは、高さ2mを超える擁壁を設けるように定められています。 この場合、建築基準法により、擁壁は工作物として確認申請をし、確認済証の交付後に着工しなければなりません。 確認申請において、安全性を確認することになります。 簡単にいうと、壊れない、倒れない、すべらない、沈まないの4点を構造計算等により確かめることになります。 また、擁壁を設ける場合には、都市計画法による開発行為の許可や宅地造成等規制法の許可が必要な場合があります。 開発行為や宅地造成工事規制区域内で宅地造成や建築をお考えの方は、事前にご相談ください。 なお、これらの許可が必要な擁壁は、工作物の確認申請が不要です。 このほか、風致地区条例による許可、地区計画による届出等が、確認申請等の前に必要な場合があります。 開発行為の許可や宅地造成等規制法の許可のお問い合わせは、以下のところまで。 都市整備政策部 市街地整備課 開発許可担当 電話 03-6432-7156、7157 (1)一般構造 鉄筋コンクリート造、石造等の腐らない材料を用いた構造。 擁壁の裏面で水抜穴の周辺等には砂利等の透水性の層を設けること。 擁壁には、耐水材料の水抜穴を壁面面積3平方メートルごとに1か所以上設けること。 (2)排水処理等 がけ上の建築敷地面には、排水設備を設けて、雨水をがけ際にしみこませないようにする必要があります。 また、排水枡に集めた雨水は、がけの反対側に導く方法など考慮してください。 斜面は植栽等で保護し、安定した法面としなければなりません。 擁壁の所有者の方は、擁壁が常時安全であるように維持管理に努めてください。 2 練り石積み造の擁壁 練り石積みには、間知石練積み造、間知ブロック練り積み等があります。 これらの擁壁を造るときの原則を次に示します。 なお、間知ブロック練り積み擁壁を計画する場合は、別に細かい基準が設けられています。 (1)擁壁の勾配による高さの限度 石造、れんが造、無筋コンクリートの擁壁の高さは2mを超えてはいけません。 ただし、土質等の条件により、その勾配が75度以下の場合は3mまで、70度以下の場合は4mまで、65度以下の場合は5mの高さまで築造することができます。 この場合も、計算等による安全の確認は必要です。 (2)裏込めコンクリート 石材、その他の組積材を用いた場合には、擁壁の背面に裏込めコンクリートを用いて石材等を相互に充分結合させることが必要です。 なお、盛土、切土時の裏込め材、裏込めコンクリートの厚さについては宅地造成等規制法による規定を参考にしてください。                 この章に関するお問い合わせは、以下のところまで。 都市整備政策部 建築審査課 構造審査担当 電話 03-6432-7169