第4章街づくりを実現するための方策 T.区民主体の街づくり 区民主体の街づくりを実現するため、区民と事業者と区の責務を明確化するとともに、区民・事業者・区の協働の街づくりを進めます。 また、子ども・若者を含むすべての区民が街づくりに関心を持ち、一人ひとりが街づくりの担い手となる区民主体の街づくりを実現します。 1.協働の街づくりを進める ○区民生活の多様化が一層進む中、街づくりの課題に取り組むためには、区民一人ひとりが身近にできることにしっかり取り組み、さらに地域が協力しあい、 区が適切に役割分担を果たす協働の取り組みが重要です。このため、多様な主体が共に理解し合い、知恵を出し合い、協力しながら、 災害時にも対応しうる自助・共助・公助の視点を持った協働の街づくりを進めます。 ○世田谷区街づくり条例(用語解説あり)では、街づくりにおける各主体の責務として、区民・事業者は、安全で住みやすい快適な環境の街づくりに自ら努めるとともに、 区と協力して街づくりの推進に努めるべきこと、区は基本的かつ総合的な施策を策定し、区民および事業者の理解と協力を得て、 区民の意見を十分に反映するよう努めなければならないことなどを定めています。 これらを踏まえ、街づくりの様々な場面ごとに、街づくりを担う区民・事業者・区の責務を明確化し、パートナーシップを確立します。 ○広域生活・文化拠点などにおいては、にぎわいや魅力、良好な市街地環境を維持し、地域活力の増進と地域の発展を図るため、区民・事業者等が、 道路・公園等の公共施設も含めたまちの維持・管理・運営などについても担う、新しい総合的な街づくりの取り組みを進めます。 ○街づくりにおいては、防災や地球温暖化対策など、これまで以上に専門的な知識や実効性につながる知恵が重要となる課題が増えています。 また、これまでの区民参加の街づくりを一層進めるために参加の輪を広げていく必要があります。 このため、大学や研究機関等の知的資源の活用や学生との協働を進めます。 2.区民主体の街づくりを進める ○区民主体の街づくりを進めるためには、第一に、区民の一人ひとりがまちの特性や課題、街づくりに関する知識を身につけることが必要です。 このため、区は街づくりに関する情報について様々な機会を設けて提供し、区民や事業者との共有に努めます。 ○街づくりの検討や実践などに関する参加の場を増やし、区民相互の意見交換を通じて主体性を高める取り組みを進めます。 ○区民主体の街づくりを進めるためには、まちに関する理解や関心を養い、区民参加の街づくりの大切さや街づくりへの関わり方などに触れ、学ぶことが重要です。 子どもや若者をはじめ、様々な人々が街づくりを学ぶ機会を増やし、将来の街づくりの担い手を育てます。 ○これまでの街づくりへの住民参加の実績と成果を踏まえ、街づくりのリーダー・組織への支援、身近な地区の区民主体の街づくり、 さらに個々の宅地でもできる区民一人ひとりが行う街づくりを支援していくことを、本区の都市整備行政における区民参加の基本とします。  例えば、 ・個々の宅地に木を1本ずつ植えると区の木は16万本増えます。 ・個々の宅地300リットルの雨水タンク(用語解説あり)を設置すると、区全体で47,800リッポウメートルの雨水貯留ができます。 ○世田谷区街づくり条例(用語解説あり)では、区民は自己に関係する街づくりに参加する権利と責任を有すると定めており、地区街づくり計画(用語解説あり)の原案の提案や 区民街づくり協定の届出などの制度を活用し、区民主体の街づくりを進めます。 ○身近な地区を単位とし、世田谷区街づくり条例で定められている地区街づくり計画制度などを活用し、地区の特性および多様な地域住民の意見を踏まえ、区民相互、 区民と区の合意形成をめざす街づくりを進めます。また、都市計画提案制度(用語解説あり)などを活用します。 ○区は施策の策定や事業の実施にあたっては、計画や事業の性格や段階に応じ、区民および事業者の理解と協力を得るよう適切に対応します。 また、身近な地区の街づくりでは、区民一人ひとりが街づくりの担い手となるよう、より早い段階での区民参加を進めるとともに、地域や全区レベルの施策・方針などにおいても 区民の参加の機会を増やします。(参考:区内宅地数159,490。平成23 年度世田谷区土地利用現況調査(用語解説あり)より) 3.事業者と適切に連携する ○都市整備方針の内容を実現していくためには、事業者も主体的に街づくりに協力するとともに、その活力を適切に活用していくよう連携していくことが重要です。 このため、区は事業者に街づくりに関する方針等を伝え、理解を促します。 ○事業者は、区民に適切に建築構想等の情報を提供し、十分な説明や区民との合意形成に努めるなど、良好な街づくりに向けたパートナーシップの形成を進めます。 U.総合的な街づくり行政の推進 街づくりを実現するためには、総合的な街づくり行政を進めることが必要です。本区は以下に示す4つの取り組みを大きな柱とします。 1.戦略的かつ効果的に進める ○都市基盤の整備にあたっては、限られた都市財政のなかで、経営的な観点から事業や手法の選択、集中的な投資および関連するソフトな施策・事業の実施などにより、 効率的かつ効果的に進めます。 ○都市施設(用語解説あり)の維持管理にあたっては、環境負荷軽減への配慮や長寿命化(用語解説あり)修繕計画の策定などによるライフサイクルコスト(用語解説あり) の軽減を図るとともに、従来の対処療法型の維持管理から計画的な予防保全型の維持管理へ転換します。 ○今後の高齢者の増加などにより利用者のニーズが変わっていくと考えられ、区民等の意見を取り入れ施設の複合化、日常利用と災害時活用などの二重化により、 長期的に区民のニーズに対応した利用ができる柔軟で戦略的な施設整備に努めます。 2.執行能力を高める ○協働の街づくりを進めるためには、熱意と知識を持った区職員等の存在が不可欠です。 このため、意識の啓発や、計画づくりや様々な施策・事業に関する研修・実践体験の一層の充実など、区職員等の計画的な育成と配置を行います。 ○区民の生活像を重視したテーマ別方針を実現するため、都市整備領域内の各所管が連携し、横断的・総合的に対応する体制を充実させます。 ○国・東京都はもとより、隣接区市および警察署、消防署など関係機関との連携を一層強化します。 また、事務処理の迅速化、事務の一元化などによる街づくり行政の効率化や、本区独自の個性を活かした街づくりの一層の推進のため、 都市計画権限の区へのさらなる委譲に努めます。 分野別整備方針 3.様々な領域との連携を図る ○街づくりには、道路や公園の整備や建築物の建築、土地利用の誘導などに加えて、区民主体の防災・防犯街づくり、環境や健康への配慮、産業振興など、都市整備領域だけでは解決で きない広範な内容が含まれます。また、国分寺崖線※などの自然資源の継続的な保全のためには教育などを通じた区民の認識と理解も必要です。 このように、ますます多様化する区民ニーズに的確に応えていくため、領域を超えてソフトとハードの一体化の視点から、防災や防犯、環境、産業、福祉、教育など 横断的・総合的施策に取り組む必要があります。 ○特に以下の施策には積極的に取り組みます。 (1)地域力を高める ○災害対策はもとより、高齢社会への対応、子育て支援などは地域や地区で支えあう地域力を高めることが重要です。 このため、町会・自治会や街づくり協議会、防災・防犯その他の課題に関わるまちづくり活動団体の支援など地域のコミュニティ形成を進めます。 ○復旧・復興に際しての地域の力を高めるため、総合支所や出張所・まちづくりセンターが連携し、避難所運営訓練や都市復興プログラム(用語解説あり)実践訓練の共同開催等により、 地域の防災力の強化を進めます。 (2)低炭素社会(用語解説あり)をつくる ○環境に配慮した住まいづくりに取り組むため、長期優良住宅(用語解説あり)の建設など住宅の省エネルギー化、再生可能エネルギー(用語解説あり)の利用促進、 既存住宅の環境配慮型リノベーション(用語解説あり)の推進、敷地内の緑化や雨水タンク(用語解説あり)の設置誘導などに加え、環境に配慮した住宅の建設を進めます。 ○自動車に過度に依存しないまちへの転換を図るため、公共交通の整備や自転車利用の促進、歩きやすい歩道の整備などを進めます。 ○みどりの保全・創出を推進するため、公園・緑地の整備、民有樹林地の保全などを進めます。 (3)地域福祉を支えるまちをつくる 世田谷区地域保健医療福祉総合計画と連携し、区の地域福祉を支えるまちをつくります。 ○高齢者、障害者をはじめとして、すべての人が、それぞれの暮らし方に対応できるよう、多様な住まいを確保します。 ○今後、増加を続ける高齢者人口や当面の年少人口の増加予測を踏まえ、大規模集合住宅の建設や住宅団地建て替えの際は、福祉施設や保育所などの設置を誘導します。 ○気軽に集える地域活動の拠点として、公共施設、空き家等の社会資源を活用します。 ○すべての人が社会の様々な活動に参加でき、安心して暮らせるようユニバーサルデザイン(用語解説あり)推進計画に基づき、誰もが利用しやすい社会環境を構築します。 ○高齢者をはじめとするすべての人が健康に暮らせるよう、歩きやすい歩道、健康づくりに配慮した緑道や公園の整備、自転車走行レーンの整備などを進めます。 ○地域包括ケアシステム(用語解説あり)を推進する身近な地区の視点を踏まえ、街づくりとの連携に努めます。 (4)文化を身近に感じることができるまちをつくる ○世田谷区文化・芸術振興計画に基づく取り組みを踏まえ、歴史的資産や古道を大切にする、文化的資源などを活かした風景づくりを進めるなど、文化を身近に感じることのできるまちを つくります。 4.施策の進行を管理する ○都市整備方針において目標とするまちの姿を実現するため、本方針の各施策の進行状況を管理し、「地域整備方針」については、社会情勢の変化や概ね10年を経過した時点の施策 の進捗状況を踏まえて評価を行い、必要に応じてその後の10 年間を見据えて見直しを行います。 評価にあたっては、区民参加や区民意見の反映を一層進めるとともに、費用面や施策の影響と効果についても検討を行います。