第1章世田谷区の現状と街づくりの課題 T.世田谷区の概況 1.位置 ○本区は、東京23区中の西南部に位置し、都心(東京駅)まで約9〜18km、副都心(新宿・渋谷)まで約1〜10kmの距離にあります。 ○東は目黒区・渋谷区、北は杉並区・三鷹市、西は狛江市・調布市、南は大田区とそれぞれ接し、さらに多摩川をはさんで神奈川県川崎市と向かい合っています。 世田谷区の位置 2.面積 ○本区の区域の形は、東西約9km・南北約8kmのほぼ平行四辺形をしており、面積は約58.08kuです。東京23区の総面積の約1割を占め大田区に次ぐ広さです。 3.人口・世帯 〇本区の人口・世帯は平成25 年1月現在で、約86 万人・約45 万世帯で、平均世帯人員は1.92人/世帯です(外国人居住者を含む)。 人口は平成8年に増加に転じ、その後は一貫して増加しています。 ○一人または二人など、世帯人員の少ない小規模世帯の推移をみると、一般世帯に占める割合は増加を続け、平成22年は約73%となっています。 4.土地利用現況 ○本区の土地利用は、住宅都市としての特性を反映して、多くを専用住宅(用語解説あり)と集合住宅が占めており、両者で約49%を占めます。 ○土地利用を用途地域(用語解説あり)別にみると、住居系用途地域(用語解説あり)が全体の約91%を占め、このうち第一・二種低層住居専用地域で約52%を占めます。 5.地勢 ○本区の地形は、台地(標高30〜50m)と低地(標高10〜25m)からなっています。成城・大蔵・瀬田・野毛に至るまでの急な崖の連なり(国分寺崖線(用語解説あり))があり、 これより北東側は台地(洪積層)、南西側は低地(沖積層)となっています。 ○武蔵野台地の一部である台地部は、多くの河川によって樹枝状に浸食され、丘や谷の起伏ができています。 6.みどりとみず ○本区には、世田谷区のみどりの生命線とも言われる国分寺崖線(用語解説あり)を骨格として、樹林地や農地、屋敷林など多様なみどりがあります。 また、多摩川や中小河川、それに注ぎ込む湧水があり、様々な生物を育んでいます。 7.道路・交通 ○環状7号線や環状8号線、甲州街道、世田谷通り、玉川通り、目黒通りなどの幹線道路(用語解説あり)等のほかに、中央自動車道や東名高速道路、 首都高速道路などが整備されています。 ○区内には、京王線、小田急線、井の頭線、世田谷線、田園都市線、大井町線、目黒線、東横線の各鉄道があり、三軒茶屋駅や下北沢駅、二子玉川駅などの駅があります。 8.市街地形成の沿革 ○本区が住宅地の様相を呈するようになるのは大正〜昭和初期であり、鉄道の開通と大正12 年に発生した関東大震災とその復興と関係があります。震災で被害を受けた東京下町の 人々が、交通の便のよい近郊へ移住し、本区も急激に人口が増え、鉄道沿線は住宅地に変わ っていきました。 ○大正後期から区画整理等による面的な都市基盤整備が進み、東京オリンピック開催を機に幹線道路(用語解説あり)等の整備が一挙に進みました。 ○昭和50年代以降、全国的に地区レベルの街づくりの重要性が高まり、本区はこれまで市街化区域(用語解説あり)面積の約25%にあたる約1,440haについて 地区計画(用語解説あり)を策定しました。 世田谷区の市街地形成の沿革 明治40(1907)年 玉川電車(現田園都市線)が渋谷〜二子玉川間で開通 大正4(1915)年 京王電車(現京王線)が新宿〜調布間で開通 大正14(1925)年 玉川全円耕地整理事業(用語解説あり)組合が設立認可され、昭和29年の事業完了まで、現在の区内で約1,050haを対象に事業が推進 大正後期〜昭和初期 区画整理が約1,000haで実施 昭和7(1932)年 世田谷町、駒沢町、玉川村、松沢村が合併して世田谷区が誕生 昭和8(1933)年 井の頭線が開通。これまでに世田谷線、小田急線、目蒲線(現目黒線)、東横線、大井町線が開通し、ほぼ今日の区内の鉄道網がこの年に形成 昭和11(1936)年 千歳村、砧村が世田谷区に編入。現在の世田谷区の区域となる 昭和23(1948)年 緑地と農地保全を目的とした緑地地域(用語解説あり)が決定される 昭和39(1964)年 東京オリンピック開催。区内では駒沢公園、馬事公苑が会場となり、その関連事業として玉川通りや環状7号線、世田谷通りがアクセス道路として整備 昭和44(1969)年 緑地地域が廃止され、かわって土地区画整理事業を施行すべき区域(用語解説あり)が決定される 昭和56(1981)年 地区計画制度が施行。区内では昭和62年から現在に至るまでに、約1,440haで決定される 昭和57(1982)年 全国に先駆けて、区民の街づくりに参加する権利と責任を明記した「世田谷区街づくり条例(用語解説あり)」を制定 平成8(1996)年 平成5年の都市計画法(用語解説あり)および建築基準法の改正を踏まえ、工業地域と工業専用地域を除く10種類に細分化された用途地域(用語解説あり)を決定 平成16(2004)年 第一・二種低層住居専用地域を除く住居系用途地域(用語解説あり)に、最高高さを決定。第一・二種低層住居専用地域に、敷地面積の最低限度(用語解説あり)を決定 U.世田谷区をとりまく状況 1.少子高齢化・人口減少時代への突入 ○日本全体としては少子高齢化と世帯の小規模化が進む社会となり、平成17年に日本の人口が初めて自然減に転じ(厚生労働省の人口動態統計による)、人口減少時代に突入しました。 ○東京23 区の人口のピークは平成27 年で、その後減少すると予測されています。(国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計結果による) 2.安全・安心への関心の高まり ○平成23年3月の東日本大震災をはじめとする近年の大規模自然災害の発生を受けて、東京都は、平成24 年4月に「首都直下地震等による東京の被害想定(用語解説あり)」を公表しました。 また福島第一原子力発電所の事故を受けて、エネルギーの安定供給が問題となりました。 ○加えて局所的な豪雨による都市型水害(用語解説あり)の頻発や犯罪に対する不安など、日常生活における安全・安心への関心が高まっています。 ○安全・安心への関心は本区においても高く、毎年実施されている区民意識調査では、本区が積極的に取り組むべき事業として災害対策や防犯が上位を占めています。 3.地球環境問題への関心の高まり ○地球温暖化・海面上昇・凍土融解、生物多様性(用語解説あり)の減退・生態系の破壊、オゾン層破壊、酸性雨など環境面での問題が地球規模で発生しています。東京の年平均気温は、過去100 年の間で約3度上昇しました。 ○国や東京都における温室効果ガス(用語解説あり)排出規制策の強化や、生物多様性に関する国の新たな戦略の推進など、地球環境問題への関心が高まっています。 4.都市の成熟化・意識の多様化 ○全国的には都市化の進行は落ち着きを示しており、地方都市においては集約型都市への再編の動きが見られます。一方、都心周辺区などでは農地の宅地化が依然として続いています。 ○個人の意識や価値観は成熟化・多様化し、自然との調和や生活の質や潤い、安全・安心を求める地域の中での人とのかかわりあいや心の豊かさへの関心が高まっています。 5.地域・住民が主体となる街づくり ○街づくりの進め方については、規制緩和や地方分権の進展などにより、全国一律の基準から地域の実情にあわせた規制の強化または緩和を行うことができるようになり、 街づくりが区民に近い存在となりました。 ○平成25 年に、我が国経済を再生させ、成長を持続的なものとするためには、全員参加のもと自助・共助・公助のバランスのとれた政策を検討していく必要があるとして、 共助社会づくりの重要性が国から示されました。そして、人々が主体的に支え合う活動を進め、活力ある社会にしていくことが必要であることも示されました。 6.都市財政の逼迫 ○戦後、高度成長を遂げた日本は都市基盤の整備も進み、成熟型社会へと移行しています。今後はこれまでのような経済成長が見込めない中で、 福祉部門の支出や公共施設の維持・管理・更新のための支出が増えると想定されています。 V.世田谷区の特性 1.環境に恵まれた住宅地 〇本区は、都心および副都心に近く、交通の便利な都市でありながら、みどりとみずの豊かな住宅地が広がっています。 主に専用住宅(用語解説あり)からなる静かで落ち着いた住宅地、専用住宅と集合住宅からなる住宅地、まとまった集合住宅からなる住宅団地など、 大都市東京における「住宅都市」として様々な顔を持ちます。 2.個性ある拠点 〇三軒茶屋、下北沢、二子玉川では独自の文化やファッションなどを発信する魅力と活気あふれるまちが形成されているとともに、複合商業施設などがにぎわいの風景をつくり出し、 広域からの集客も多い拠点となっています。 ○伝統のある良好な住環境と景観をもつ成城学園前、歴史ある商店街が駅を中心に広がる千歳烏山、周辺に教育施設の多い経堂、 世田谷ビジネススクエアを代表とするオフィスのまち用賀、お洒落な雰囲気のある自由が丘周辺なども、個性ある拠点として発展してきました。 ○幹線道路(用語解説あり)等の沿道は、自動車対応型の事務所・店舗・サービス施設等が立地し、都心部あるいは郊外地域とは違い、 みどりなどの自然環境が残る中で活力ある産業活動がみられます。 3.多様な地域資源 ○国分寺崖線(用語解説あり)をはじめ環状8号線以西を中心に残された緑地や農地は、本区が誇る貴重な自然資源を構成しています。 また、環状8号線以東においては、世田谷の地形の特徴である多くの河川や水路等は大部分が暗渠化されたとはいえ、 市街地の中の貴重な水辺・緑地・オープンスペースとして活用されています。 ○空き家・空き室・空き部屋(以下「空き家等」という)、都市計画道路や連続立体交差事業(用語解説あり)などの都市基盤整備に伴い生み出される敷地などは“資源”ととらえ、 有効に利用することもできます。 ○景観重要公共施設(用語解説あり)や樹林地、文化財、古道など貴重な資源が地域に散在しています。 4.土地・建物利用の変化 土地・建物利用、公園率・みどり率(用語解説あり)、道路率について原則平成3年から平成23年までの変化を示します。 (出典:1〜3は世田谷区土地利用現況調査(用語解説あり)、4は世田谷区道路整備白書(用語解説あり)等) (1)土地利用面積の変化 ○公共系・住居系・商業系・工業系・農業系をあわせた、建築物の敷地として利用されている宅地が約4%増加しました。 ○土地利用ごとの主な変化は、住居系が約8%、交通系(道路、鉄道等)が約6%増加し、農地系が約57%、工業系が約49%減少しました。 (2)建物利用の変化 ○建築物棟数は、10%増加しました。このうち最も多くを占める専用住宅(用語解説あり)は13%増加しました。 ○建築物の利用建ぺい率(用語解説あり)の平均は34%から46%に増加し、利用容積率(用語解説あり)の平均は80%から127%に増加していることから、建て詰まり傾向が進行しています。 ○専用住宅の平均敷地面積は201uから158uに減少し、また、100u未満の敷地数は約21,800 敷地から約37,600 敷地に増加し、宅地の細分化傾向が進行しています。 また、集合住宅の棟数は約28,700 棟から約33,400 棟に増加し、中高層化率(用語解説あり)は3.6%から5.2%に増加しており、比較的規模の大きな集合住宅が増加する傾向にあります。 ○建築物の耐火率(用語解説あり)の平均は46%から60%に増加し、減災・防災に向けて不燃化が向上しています。 (3)公園率・みどり率の変化 ○公園率は、平成18 年の4.20%から平成23 年の4.36%と増加しましたが、都市計画公園・緑地の整備率は53%、区民一人あたりの公園面積は2.79u(目標6u)と、 区内の公園整備は十分ではありません。 ○みどり率は、平成18年は25.6%、平成23年は24.6%であり、直近5年では減少しています。 みどり率や緑被率の変化 (4)道路率の変化 ○道路率は13.2%から14.1%に増加しました。東京23 区中19 位と低い状況にあり、特に区の西側での低さが顕著です。(出典:特別区土木関係現況調書) ○都市計画道路の整備率は約5 割であり、東京23 区中19 位と低く、特に区北西部で南北方向の地区幹線道路(用語解説あり)の整備が遅れています。 なお都市計画道路の計画延長は約144kmであり、このうち整備済みは約68kmです。(出典:国土交通省都市計画年報、世田谷区道路整備白書(用語解説あり)) W.街づくりの主な課題と対応 本区の街づくりのための将来都市像や基本的施策を定めるため、本章の前段で示した「世田谷区の概況」と「世田谷区をとりまく状況」と「世田谷区の特性」を踏まえ、 「街づくりの主な課題と対応」を示します。 上位計画や本区をとりまく状況、区民の意見などを総合的に踏まえ、「新たな都市整備方針に求められる視点」として整理し、「街づくりの主な課題と対応」を示します。 1.人口構造の変化への対応 世田谷区将来人口の推計《速報版》によると、本区の総人口は今後概ね10年間は増加し、その後も増加傾向が続く見込みとなっています。 世代別では、年少人口の推計期間中は増加傾向にあり少子化は進みませんが、その後減少に転じる見込みです。生産年齢人口は概ね現状規模で推移します。 また、高齢者人口は一貫して増加が進みます。地域別では、北沢地域が減少しそのほかの地域は増加します。 【高齢者人口や年少人口増加、小規模世帯増加への対応】 ○高齢者人口や年少人口の増加、小規模世帯の増加など人口構造の変化に対応した土地利用の誘導や住環境の整備が必要です。 ○高齢者人口の増加に伴い、街づくりの観点からの健康維持への対策も必要です。 2.災害への備えと安全・安心な暮らしの確保 本区はこれまで、一時集合所※や避難所、広域避難場所(用語解説あり)の整備等を進めてきました。東京都の防災都市づくり推進計画(用語解説あり)において 重点整備地域(用語解説あり)に位置づけられている世田谷区役所周辺・三宿・太子堂地区(約228ha)の不燃領域率(用語解説あり)は、 平成8年度の46%から平成18年度は55%に上昇しました。さらに新たな防火規制区域(用語解説あり)を10地区指定しました。 平成20年度より都市復興プログラム(用語解説あり)に基づき実践訓練を開催しています。 頻発する局所的集中豪雨による都市型水害(用語解説あり)の軽減を図るため、河川改修や下水道整備のほか、区管理施設において雨水の浸透・貯留施設(用語解説あり) の整備を進めるとともに、その他の公共機関や民間施設にも協力を求めました。 【防災・減災街づくりの一層の推進と復興街づくりの取り組み】 ○全国的に安全・安心への関心が高まる中、区民アンケート調査結果では災害や火災に関する項目が上位に挙がっています。 延焼遮断帯(用語解説あり)にあたる都市計画道路の整備率は低い状況にあります(主要延焼遮断帯(用語解説あり)で49.8%、一般延焼遮断帯(用語解説あり)で28.1%)。 また、世田谷区役所周辺・三宿・太子堂地区においては、防火規制の導入などにより地区全体の不燃領域率は向上しましたが、一部の区域では依然として細街路が残り、 接道不良等により建替えが困難な状況にあります。以上のようなことから、防災生活圏(用語解説あり)の形成や新たな防火規制区域の指定、避難場所へのアクセス確保など 防災・減災街づくりの一層の推進が必要です。また、首都直下型の地震の切迫性が指摘されていることから、震災後すみやかに復旧・復興できるよう仮設市街地(用語解説あり) 整備に関する方針をつくるなど事前の取り組みが必要です。 ○区民アンケート調査結果によると、今後の重要度の高い項目として「水害への対策」や「防犯面での対策」が上位に挙がっています。 雨水浸透施設(用語解説あり)等の整備については、区内全域で時間5mm降雨相当量とした平成29年度の目標対策量に対して、約6割の達成状況となっています。 野川・仙川・谷沢川・丸子川において、時間50mm 相当の整備が完成しておらず、また、下水道は、合流式下水道※区域の整備はほぼ完成しているものの、 区面積の約4割を占める分流式下水道(用語解説あり)区域における雨水管の整備率は、約2割にとどまっています。 以上のようなことから、集中豪雨への対応や、防犯に配慮した道路や公園整備の工夫などが必要です。 【道路・公園等の都市基盤の整備と計画的な維持・更新】 ○全国的に都市財政が逼迫する中、道路・橋梁・公園等の都市基盤の整備とともに、計画的な維持・更新や、日常利用と災害時活用のできる二重化の視点をもつことなどが必要です。 3.良好な住環境の維持・向上 平成7年度以降、平成24年度までに地区街づくり計画(用語解説あり)を89地区(1,662.6ha)策定、地区計画(用語解説あり)を38地区(514.0ha)決定し、 地区特性にふさわしい土地利用の誘導を進めてきました。 平成16年に用途地域(用語解説あり)等の見直しを行い、あわせて第一種・第二種低層住居専用地域を対象に敷地面積の最低限度(用語解説あり)を追加し、 その他の住居系用途地域(用語解説あり)の一部と準工業地域(用語解説あり)を対象に高度地区(用語解説あり)として30mおよび45mの最高限度を追加しました。 「土地区画整理事業を施行すべき区域(用語解説あり)」内での土地区画整理事業(用語解説あり)は、平成7年度以降58.0ha(すべき区域の4.3%)について完成または事業中です。 また、公的団地の建て替えに際しては、平成7年度以降、芦花公園駅前、桜上水、成城、久我山、池尻を対象に一団地の住宅施設(用語解説あり)を廃止し、 地区の特性などに応じた地区計画を策定しました。 【質の高い住環境の維持・向上】 ○集合住宅の棟数はこの20年間で約16%増加しました。また、専用住宅(用語解説あり)の平均敷地面積は約21%減少し、100u未満の敷地数は約72%増加し、 宅地の細分化傾向が進行しています。このようなことから日照や風通し、眺望などの住環境において変化がみられるようになりました。 一方で全国的に成熟型社会への移行の中、自然との調和や生活の質や潤いが求められています。 このため、住宅地においては住環境の悪化を防止し質の高い住環境を維持・向上することが必要です。 【住み続けられる多様な住まいの確保と居住支援】 ○成熟型社会における住宅政策は、住宅を建築する場合の品質や、既存の優良な住宅の活用などが重視され、加えてユニバーサルデザイン(用語解説あり)の視点から子育て世帯や 高齢者、障害者、外国人などへのニーズに対応することが求められています。このため、住み続けられる多様な住まいの確保と居住支援が必要です。 【地区の特性や生活像を大切にした街づくりの推進】 ○より住みやすい住環境を確保するため、都市基盤の整備が十分でない区域では道路事業や土地区画整理事業(用語解説あり)、地区計画(用語解説あり)などによって 都市基盤の整備を進めるとともに、地区計画および地区街づくり計画(用語解説あり)の活用による地区の特性を大切にした街づくりを進めることが必要です。 また、日常の生活行動を踏まえた諸機能の配置が望ましく、生活像を大切にした街づくりも必要です。 4.みどりとみずの保全・創出と環境との共生 平成7年度以降、平成24年度までに、保存樹林地3地区・保存樹木234本が増加し、緑地協定(用語解説あり)9か所を締結しました。 また、区立の都市公園は182箇所、面積で26.7ha増加しました。 平成21年10月に世田谷区農地保全方針を策定し、農地保全重点地区(用語解説あり)として7地区を指定しました。 平成22年10月に、都市緑地法(用語解説あり)に基づく緑化地域制度(用語解説あり)を市街化区域(用語解説あり)全域に導入し、建築時に敷地の一定割合を緑化することを 義務づけました。また、世田谷区水辺の再生計画に基づき、水辺の再生事業を実施してきました。 【「世田谷みどり33(用語解説あり)」の推進、質の高いみどりの保全・創出】 ○本区のみどり率(用語解説あり)は、平成18年から平成23年にかけて1ポイント減少し、農地面積は平成3年から23年にかけて約143ha(57%)減少しました。 また、区民一人あたりの公園面積は約3uと区内の公園整備は十分ではありません。 このため、平成20年3月に策定したみどりとみずの基本計画における「世田谷みどり33」の達成に向けさらに取り組む必要があります。 公園・緑地、樹林地、農地、水辺などのネットワーク化を図り、多様な生物が生息できる空間の創出や、公共施設や民有地の接道部における生垣や壁面緑化などの推進を通じ、 目に触れるみどりや身近に感じられるみどりを増やすことなど、みどりの量とともに質の向上をめざすことが重要で、区民・事業者・区が連携しながら質の高い みどりの保全・創出を進めることが必要です。 ○これまでも生産緑地地区(用語解説あり)の指定などにより農地保全を図ってきましたが、相続によって生産緑地が宅地に転用されるなど農地の減少が依然として続いている 現状に鑑み、引き続き農地保全の取り組みを進めることが必要です。 【環境と共生した低炭素都市づくり(用語解説あり)への対応】 ○本区のCO2排出量は、京都議定書(用語解説あり)の基準年である平成2年と平成20年を比較すると、総量は18.8%増加しました。 特に増加した部門は民生家庭部門(用語解説あり)(36%増)と、民生業務部門(用語解説あり)(61%増)です。民生家庭部門の増加は、 世帯数の増加や1世帯あたりの人員数の減少が主な要因と考えられます。地球環境問題への関心が高まる中、本区は平成22年5月に環境基本計画(調整計画)を策定し 本区がめざすべき環境像を明らかにしました。そしてこの環境像を実現するための街づくりには、生物多様性(用語解説あり)の確保にも寄与するみどりとみずの保全・創出、 省エネルギーや再生可能エネルギー(用語解説あり)に配慮した住まいづくり、公共交通や徒歩・自転車の重視などがあり、環境と共生した低炭素都市づくりへの対応が必要です。 5.区民がいきいきと活動・交流する場づくり 駅周辺の活性化や利便性向上などのため、三軒茶屋駅や二子玉川駅、祖師ヶ谷大蔵駅周辺では市街地再開発事業(用語解説あり)を実施し、三軒茶屋駅や経堂駅、梅ヶ丘駅、 成城学園前駅周辺などでは駅前広場等の整備を進めてきました。 商店街などの商業地のにぎわいを誘導し安全性を確保するため、三軒茶屋駅や下北沢駅、二子玉川駅、経堂駅、明大前駅、自由が丘駅、尾山台駅、成城学園前駅、祖師ヶ谷大蔵駅、 千歳烏山駅周辺に、地区計画(用語解説あり)および地区街づくり計画(用語解説あり)を策定しました。 【拠点となる駅周辺でのにぎわいや活気の誘導、回遊性の向上】 ○区民アンケート調査結果によると、主要な駅周辺のめざすべきイメージは「にぎわい」、「美しい」、「おしゃれ」が多く挙がっています。 また、主要な駅周辺で現在不足している施設や活性化するために重要な施設として「商業・業務施設」、「文化施設」、「医療・福祉サービス施設」などが多く挙がっています。 本区の従業者数は平成12年から22年にかけて、卸・小売業は44%、不動産・サービス業は13%それぞれ減少しました。 このため、拠点となる主要な駅周辺は安全性を確保しつつ様々な機能を充実させ、にぎわいや活気を誘導することが必要です。 ○京王線の連続立体交差事業(用語解説あり)にあわせ、拠点となる主要な駅周辺の整備として、交通結節機能の向上や防災機能の強化、安全で快適な歩行空間による 回遊性の向上により、さらなるにぎわいの形成、良好な市街地の形成へとつなげていく効果的な整備が必要です。 ○区民アンケート調査結果によると、最寄りの駅周辺を身近な交流の場として活性化すべきという意向が多くあり、また今後本区は高齢者人口が増加し世帯は小規模化すると 予想されます。このため、商店街や空き家等を有効活用するなど区民の身近なところに活動・交流できる場をつくることが必要です。 6.世田谷らしい風景・都市の魅力づくり 国分寺崖線(用語解説あり)保全のため、国分寺崖線保全整備地区(用語解説あり)の指定を行い、建築物の構造に係る制限など総合的な取り組みを進めてきました。 平成11年3月に世田谷区風景づくり条例(用語解説あり)を制定し、地域風景資産(用語解説あり)選定(86箇所)や界わい宣言(用語解説あり)(4件)などを進めてきました。 また、平成19年12月に本区は景観法(用語解説あり)に規定する景観行政団体(用語解説あり)となり、景観重要公共施設(用語解説あり)の指定(3施設)や一定規模以上の 建設行為の届出制度などを進めてきました。 【都市の景観形成・魅力づくりへの取り組み】 ○国分寺崖線およびその周辺には樹林や湧水などが多く残り、生物にとって重要な生息空間となっています。多摩川も含め本区が誇る自然資源として魅力を高めることが必要です。 ○農地、屋敷林・社寺林、緑道、歴史的建造物および古道などは、自然や歴史に培われた特性を踏まえた保全や風景づくりなどの有効活用が必要です。 ○日常生活に身近な自然資源としてのみどりとみずを守り育て、風景づくりや魅力づくりを進めるためには、地域コミュニティ単位だけではなく個々の宅地や世帯でできる取り組みが 必要です。 7.誰もが移動しやすい道路・交通ネットワークの充実 道路整備にあわせた自転車歩行者道(用語解説あり)や自転車専用通行帯(自転車レーン)(用語解説あり)などの設置、7箇所のレンタサイクルポート、 8路線のコミュニティバス(用語解説あり)路線などの整備を進めてきました。また、自転車等駐車場の整備などを進めたことにより、放置自転車が激減しました。 平成7年度以降、地区幹線道路(用語解説あり)を約3.5km(世田谷区施行分)整備しました。また、「地先道路(用語解説あり)整備方針」を策定し地域の特性や地域レベルでの 課題に応じた事業を進めてきました。区役所周辺地区や三軒茶屋駅周辺地区などで、面的なバリアフリー整備を進めてきました。 また、世田谷区ユニバーサルデザイン推進条例(用語解説あり)により、特に生活環境の整備を推進する必要がある道路などをはじめとした公共的施設を整備する場合の届出を義務づけました。 【誰もが移動しやすい交通環境の整備、ユニバーサルデザイン(用語解説あり)の推進】 ○地球環境問題への関心が高まりつつあり、今後も本区は高齢者が増加することが予測されています。一方、区民アンケート調査結果によると、道路・交通に関する関心が高く、 本区の将来都市のイメージ像として「自動車や、鉄道・バス、自転車、徒歩などの移動手段に応じた道路・交通ネットワークの充実したまち」が上位に挙がっており、 課題としては「自転車利用環境の向上」や「狭あい道路(用語解説あり)の拡幅整備や行き止まりの解消」が上位に挙がっています。 このような状況の中、本区の都市計画道路整備率は約5割で、特に区北西部で南北方向の地区幹線道路整備が遅れています。また、延焼遮断帯(用語解説あり)形成の遅れ、 住宅地内への通り抜け車両の流入、公共交通が不便な地域の存在など、道路整備水準が低いことにより防災、住環境、高齢社会への対応など様々な面で課題があります。 放置自転車に関しては、自転車等駐車場の整備や放置禁止区域の指定などに伴い、大幅に減少していますが、歩行者と自転車双方の安全を確保するための自転車走行環境の整備は 十分ではありません。 以上のようなことから、公共交通や徒歩・自転車利用を重視した誰もが移動しやすい交通環境の整備と、駅やバス停、道路などのユニバーサルデザイン(用語解説あり)による 整備の推進が必要です。また、南北方向の交通を確保する道路や、各拠点や施設をつなぐ道路、防災上重要な道路などの整備が必要です。 ○連続立体交差事業(用語解説あり)にあわせ、駅周辺では駅前広場や都市計画道路等の整備を一体的に進めることが必要です。 8.様々な領域と連携した総合的な街づくりの推進 世田谷区環境基本計画(調整計画)および世田谷区地球温暖化対策地域推進計画により、みどりとみずの環境共生都市をめざし、住まいの省エネルギー化や環境に優しい都市交通の 実現などを進めてきました。また、公営の住宅団地の建て替えの際に、福祉施設や保育所などの設置を誘導してきました。 【保健福祉や教育など様々な領域と連携した施策の推進】 ○都市整備方針は都市整備領域に関わる方針ですが、対象とする街づくりは広範であり領域を跨いで進められる場面が多くあります。 このため、保健福祉や教育など様々な領域と連携した施策の推進が必要です。 9.区民主体の街づくりの充実 本区では区民の参加と協力のもとに街づくりを進めていくための独自のルールとして、昭和57 年7月に世田谷区街づくり条例(用語解説あり)を策定しました。 その後、平成3年の地域行政制度(用語解説あり)の発足、平成6年の基本構想の改定などを受け、各地区の特性に応じた街づくりや世田谷まちづくりセンター (現在の世田谷トラストまちづくり)・世田谷まちづくりファンドの設置等へ対応するため、平成7年に条例を改正しました。 平成22年9月に世田谷区街づくり条例を改正し、区民主体の街づくりを進めるため、区民街づくり協定制度(用語解説あり)を創設するとともに、地区街づくり協議会(用語解説あり) への支援などを拡充しました。また、大規模な土地取引や建築を行う場合には一定の手続きが必要となり、取引後の適正な土地利用や建築計画を誘導することができるようになりました。 【区民主体の街づくりの充実】 ○人々が主体的に支え合う活動を進め、活力ある社会にしていくことが求められており、区民が街づくりに主体的に関わり、区民一人ひとりがまちをつくる気運を醸成していくなど、 区民主体の街づくりを支援し、更に充実させることが必要です。