1. 都市計画 (1) 地区計画 ●地区計画とは 地区計画とは、都市計画法に基づく制度です。地区の将来像に基づき、建築物の用途や形態、道路、公園等、法律の範囲内で街づくりのルールを定め、安全で住み良い街を実現することを目的としています。 用途地域等が区内ほぼ全域にかかる制限であるのに対し、地区計画等は身近な地区を対象とした計画です。また、地区計画は私権を制限することもあるので、地区住民の意見を十分反映しながら策定します。 ●策定するまで 区は、地区計画等を定める必要があると判断したときに地区計画等の原案をつくります。その後、住民の意見を聞き、必要に応じて修正し、地区計画等の案をつくります。再度、広く住民の意見を聞き、区の都市計画審議会の審議を経て都市計画決定をします。 区では、区民参加で街の将来像を幅広く考える区独自の街づくりの手法として、街づくり条例に基づく地区街づくり計画の策定も行っています。 (2) 土地区画整理事業を施行すべき区域(計画決定) ●土地区画整理事業の課題 土地区画整理事業を施行すべき区域は、1965年に緑地地域だった場所の指定解除に替わるものとして、旧都市計画法で決定された都市計画のひとつですが、現行の都市計画法第12条第1項第1号の「土地区画整理事業」に引き継がれています。世田谷北部、世田谷南部、世田谷多摩川付近の3地域(区面積の約23%にあたる1,348ヘクタール)が都市計画に定められていますが、これら3地域内の約1割程度しか整備が完了していない状況となっています。このままでは、現在の経済などの社会情勢からみても、土地区画整理事業を展開していくことは困難と考えられています。 区では、良好な市街地形成を推進していくため、地域特性を活かした地区計画を導入するなど、土地区画整理事業に限定しない多様な手法を展開してきました。また、まちづくり目標の実現に向けた総合的な取組みの推進を図るため、「世田谷区土地区画整理事業を施行すべき区域の市街地整備方針」を平成17年に策定し、平成30年から令和3年度までの5年間で7地区、60.7ヘクタールに対して地区計画が策定されています。 (3) 高さ制限・最低敷地面積の見直し ●新たな高さ制限 区では2004年6月24日に、住居系用途地域及び準工業地域において突出した高さの建築を抑制するために、高度地区の区域に絶対高さ制限を導入しました。その後、2015年4月に改定した「世田谷区都市整備方針」において、区のめざすべきまちの姿のひとつに「みどりとやすらぎがあり、住みたくなるまち」を掲げ、これを実現する取組みとして「建築物の高さと敷地面積に関するルールの見直しの基本的考え方」をまとめました。これに基づき、2019年4月1日には「高度地区に定める絶対高さ制限」と「用途地域に定める敷地面積の最低限度の制限」の都市計画変更をしました。 ●最低敷地面積の見直し 敷地面積の最低限度は、敷地が細分化されることで、日照、通風、防災などにおける環境の悪化を防止し、市街地の良好な環境の保全を図るための措置であり、第1種及び第2種低層住居地域を除く住居系用途地域と準工業地域について見直しました。 (4) 不燃化特区の指定 ●不燃化特区とは 東京には、JR山手線外周部を中心に木造住宅密集地域が広範に分布しており、首都直下地震が発生した場合に大きな被害が生じることが想定されています。 「不燃化特区」とは、平成25年度に東京都が開始した制度で、木造住宅密集地域のうち、特に重点的・集中的に改善を図る地区を「不燃化特区」として指定し、都と区が連携して「燃え広がらない・燃えない」まちづくりを進めています。なお、事業期間は、令和7年度までとなっています。 区では、密集事業や地区計画等によって、木造住宅密集地域の防災性向上に取り組んできた地区について、不燃化特区制度における支援策の活用により、防災性向上の更なるスピードアップを図るため、本制度を導入しました。 平成26年度には太子堂・三宿地区、区役所周辺地区、北沢三・四丁目地区が、平成27年度には太子堂・若林地区、北沢五丁目・大原一丁目地区が指定されており、老朽建築物の除却費用や建替え費用の助成、建築士等の専門家による建替え相談を実施し、防災街づくりを推進しています。 不燃化特区では、延焼による焼失率がほぼゼロとなる不燃領域率70%の達成を目標に掲げています。太子堂・三宿地区においては、平成29年度末に不燃領域率70%を達成しました。他の地区についても、着実に不燃領域率が向上しており、まちの不燃化が進んでいます。 なお、目標である不燃領域率70%を達成した4地区においては、不燃化特区制度による助成等の支援を終了しています。 (5) 小田急線地下区間(代々木上原駅〜梅ヶ丘駅間)上部のまちづくり ●連続立体交差事業等に伴う施設整備 北沢地域における小田急線沿線では、下北沢駅を中心とした周辺の急速な商業化、宅地化により道路が狭くなっており、消防・救急活動に支障をきたしていました。また、地域におけるみどりの不足や、鉄道の踏切遮断による交通渋滞の発生、線路による街の分断、駅間の人の移動が不便、幼児・児童向けの遊び場の不足といった課題がありました。2004年に着手した小田急電鉄小田原線(代々木上原駅〜梅ヶ丘駅間)連続立体交差事業及び複々線化事業を契機に、鉄道地下化に伴い生じた線路跡地(東北沢、下北沢、世田谷代田の3駅間)の一部を公共施設として活用するため、区では2013年に施設配置(ゾーニング構想)を公表し、2015年には「世田谷区小田急線(代々木上原駅〜梅ヶ丘駅間)上部利用計画」を策定し、「防災・減災・みどり」の機能が充実した施設整備を進めてきました。 ●デザインの統一 上部利用計画では、駅間を結ぶ通路や憩いの空間となる緑地広場、交通結節点となる駅前広場などの公共施設を位置付けています。また、この計画を進めるにあたり、地域の個性を活かしながら秩序をもった統一感のあるデザインコンセプトのもとに整備が進められるよう、デザインの方針や具体的な方策を、2015年に「北沢デザインガイド」にまとめました。このガイドは区の施設だけではなく、鉄道事業者が保有する施設や周辺施設に対して、区施設とのデザインイメージの調整や共有する場合にも活用されました。また、上部利用計画は小田急電鉄と一緒に進められており、通路沿いやその周辺には、商業施設や学生寮、保育園などの多岐にわたる魅力的な施設が小田急電鉄により建築されました。なお、本ガイドは京王井の頭線の高架下利用にも適用されています。 ●区民の参加と協働 小田急線の上部利用など、小田急線沿線の街づくりの取組みについて、ニュースやオープンハウス・ワークショップの機会を通じて、区民から様々な意見をいただいてきました。また、誰もが自由に参加できる情報共有・意見交換の場として、2014年から「北沢デザイン会議」を開催し、区の取組みを紹介するだけでなく、鉄道事業者の取組みの紹介もしてきました。 他にも、小田急の上部施設の活用や周辺部を含む「まちの魅力」を高める取組みを地域住民が検討し、実践する場として、2016年から「シモキタリングまちづくり会議(旧北沢PR戦略会議)」を開催しています。 世田谷区オフィシャルチャンネル(Youtube)で、小田急線上部利用施設の紹介動画をご覧いただけます。 https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/kusei/005/002/d00199489.html 世田谷区は、「小田急線上部利用施設等のグリーンインフラの取組み」について 第3回グリーンインフラ大賞「生活空間部門」の「国土交通大臣賞」を受賞しました。 (6) 三軒茶屋駅周辺のまちづくり ●ソフトとハードが一体となったまちづくりの推進 三軒茶屋駅周辺は、親しみやすく庶民的雰囲気をもつ拠点として、訪れる面白さと住むための快適さを備えているまちです。 一方、まちのシンボルであるキャロットタワーの竣工以降、まちの大規模な改修や更新は行われておらず、まちの回遊性、滞在性、防災性の向上などに課題があります。 こうした課題の解決には、行政主体のまちづくりでは限界があり、公民の持つ公共的な空間を一体的に捉えてデザインし、柔軟な活用に結びつけていく必要があります。そのためには、三軒茶屋に関わる多くの人がまちづくりに参加し、まちの利活用の幅や可能性を広げていくことが不可欠です。 区では、三軒茶屋に関わる様々な主体が連携しながらソフトとハードが一体となったまちづくりを推進することを目的に、2022年3月に「三茶のミライ(三軒茶屋駅周辺まちづくり基本計画)」を策定しました。 ●みんなの計画 「三茶のミライ」の策定にあたっては、三軒茶屋に関わる様々な人の声を広く反映するため、まちづくり会議やシンポジウムを開催し、参加者から意見をいただきました。そのうえで、合計947枚の付せんによる意見を整理し、文化や商業、防災といったまちづくりのテーマから9つのまちの未来像と、それを実現するための取組みを導き出して作成しています。三軒茶屋に関わるみんなで思い描いた未来像を示す三茶のミライは、まさに「みんなの計画」といえます。 ●小さな取組みを積み重ねる 「三茶のミライ」では三軒茶屋交差点を中心としたおおむね半径300m以内の範囲を対象とし、まちづくりに取り組んでいます。三茶のミライで掲げる未来像実現のための取組みには、すぐに始められるものがある一方で、都市基盤に関する新しい空間の創出や、今ある空間の利活用などの長期の検討を要するものがあります。これらのまちの空間デザインに関する取組みとして、地域の大学や企業と連携し、まちの課題の一つである滞在性の向上を図る社会実験を定期的に実施し、効果の検証を行うなど、小さな取組みを積み重ねて、未来像実現に向けて取り組んでいます。 今後も「三茶のミライ」をもとに、まちづくり会議や社会実験を中心に様々な人が取組みに参加できる仕組みを整え、みんながまちづくりに関わることで9つの未来像実現に向けて取り組んでいきます。