14.各地域の土地建物利用現況 (1) 世田谷地域 ●地域の位置と成り立ち 区の東部に位置し、東側は渋谷区と目黒区に隣接しています。南東部に東急田園都市線、北西部に小田急線が通り、それらをつなぐ東急世田谷線が地域の中心部を通っています。面積は、1,233.1ヘクタールで、5地域中3番目の広さです。 地域には東に向かって流れる烏山川の河谷底と標高20メートル以上の武蔵野台地とからなり、特に地域西部は一段高い下末吉面に属するため、区内でも最も標高の高い(標高50メートル)地域のひとつとなっています。 現在の世田谷区役所付近は、中世には世田谷城下の中心でした。江戸時代には井伊家の領地となり、当時の代官屋敷が残っています。 明治時代に入ると、1891年に騎兵第一大隊が池尻から目黒区駒場にかけて移転してきたのをはじめ、多くの軍事施設が世田谷地域に進出しました。戦後、これらの軍事施設の跡地の多くは、学校や公営住宅、公園などの公営施設として利用されています。 ●地域データの特徴と変化 2021年現在、世田谷地域には約26万人、約14万世帯が住んでおり、いずれも全地域中で最多となっています。一方で、専用住宅の平均宅地面積は123.6平方メートルで、こちらは全地域中最小となっています。2016年からの変化に注目すると、旧耐震木構造棟数が12,372棟から10,449棟へ約1,900棟減少しており、古い木造住宅の建替えが進んでいることがわかります。世田谷地域は比較的旧耐震木構造棟数が多く、その棟数密度も高いことから、防災上の課題を抱える市街地が多く分布している地域とされてきましたが、改善が進みつつあることがうかがえます。 ●土地利用の構成と変化 用途別の土地利用構成では、2021年には住居系が55.0%を占めています。また、公共系の土地利用は10.6%で、区役所や大学等の教育文化施設が多く立地していることから、比較的高い面積割合を占めています。2016年からの傾向としては、公共系や住居系の割合が増える一方で、商業系や空地系などの割合が減少しています。 また、この5年間の土地建物利用の主な変化としては、都市計画道路補助128号線(桜木トンネル)の開通、若林小学校の新校舎建設、東邦大学医療センター大橋病院の移転新築工事完了、こどものひろばの改修などがあげられます。 (2) 北沢地域 ●地域の位置と成り立ち 区の北東部に位置し、東側は渋谷区、目黒区、北側は杉並区に接しています。面積は865.7ヘクタールと、5地域の中では烏山に次いで面積が小さい地域です。 地域北部は区内でも標高が比較的高く、北沢川から深く切れ込んだ谷が起伏のある地形を形成しています。また、史跡や歴史的建造物には、14世紀後半に吉良氏が居住したのが始まりといわれる世田谷城址や、井伊家の菩提寺である豪徳寺をはじめとする寺社があります。 この地域は、明治時代末期までは農村地帯でしたが、1913(大正2)年に京王線の開通を最初に、東急世田谷線、小田急線、京王井の頭線といった私鉄線が開通し、鉄道駅を中心とした住宅地開発が行われました。現在では、主要な鉄道駅の周辺には商業地域が発達しています。 ●地域データの特徴と変化 2021年現在、北沢地域には約16万人、約9万世帯が住んでいます。地域の特徴としては、建物棟数密度が1ヘクタールあたり54.2棟、細街路率が42.1%と全地域の中で最も高くなっていることから、密集した市街地を有しているといえます。このほか、みどり率が17.34%と、全地域中で最も低くなっています。 2016年からの変化に注目すると高齢化率が20.5%から19.5%へと1ポイント減少しており、居住年齢層に大きな変化が生じていることがわかります。また、旧耐震木造棟数密度は、1ヘクタールあたり10.2棟から1ヘクタールあたり8.5棟まで減少しており、古い建物の建て替えが進んでいます。このことから、北沢地域においても、世田谷地域と同様に密集市街地の防災上の改善が進みつつあることがうかがえます。 ●土地利用の構成と変化 用途別の土地利用構成では、2021年には住居系が59.4%を占めており、全地域の中で最も高くなっています。一方で、公園系は全地域の中で最も低い2.4%となっていますが、この地域では羽根木公園のほかに大規模な都市公園がないことが影響しているものと考えられます。また、2016年からの傾向としては、住居系の割合が増える一方で、商業系や空地系、交通系などの割合が減少しています。 また、この5年間の土地建物利用の主な変化としては、小田急線の一部地下化に伴う上部利用のまちづくり、下北沢小学校の開校、うめとぴあ世田谷区立保健医療福祉総合プラザのオープンなどがあげられます。 (3) 玉川地域 ●地域の位置と成り立ち 区の南東部に位置し、東側は目黒区と大田区に、南側は多摩川を挟んで神奈川県川崎市と接しています。面積は1,579.6ヘクタールで、5地域の中で最大の面積を有しています。 地域の多くは標高30〜40メートル前後の武蔵野台地に属し、九品仏川や呑川が浅い谷を形成しています。地域の南縁部は多摩川低地に属し、武蔵野台地との境には標高差20メートル程度の急斜面の国分寺崖線が形成されています。この地域の多摩川周辺の標高はおおむね5〜6メートルで、区内で最も標高が低いエリアとなっています。 この地域では、東西に大山道が通っており、江戸時代には大山詣をする人々でにぎわいました。近代に入り大正期になると、二子玉川に玉川遊園地が開園し、国分寺崖線上に別荘や邸宅が多く建てられるなど、多摩川沿いの地域は都心に住む人々の行楽地や別荘地として発展しました。その後、大正時代末期には約1,100ヘクタールにおよぶ玉川全円耕地整理事業が実施されました。1936(昭和11)年には東京市に編入されたこともあり、別荘地は次第に高級住宅地へと姿を変えました。 国分寺崖線沿いはみどりの多い地域でもあります。等々力渓谷などの緑地の保全や、多摩川玉川公園や二子玉川公園、駒沢公園などの大規模な公園の整備が行われています。 ●地域データの特徴と変化 2021年現在、玉川地域には約23万人、約11万世帯が住んでいます。地域の特徴としては、非宅地面積が549.4ヘクタールと全地区の中でも最も大きいことがあげられ、住宅以外の様々な土地利用が広く行われていることがうかがえます。また、細街路率が22.0%と全地域で最も低いことには、先に述べた耕地整理事業や土地区画整理事業の成果が表れています。このほか、火災による燃えにくさを示す不燃領域率は70.3%と全地域で最も高いことから、比較的延焼に強い街並みが形成されているといえます。 2016年からの変化に注目すると、みどり率が27.35%から25.81%へと、約1.5ポイント減少しています。 ●土地利用の構成と変化 用途別の土地利用構成では、2021年は住居系が48.1%を占めています。これは、世田谷地域や北沢地域に比べると低い割合ですが、一方で商業系の7.0%や公園系の5.2%は、これらの地域よりも高い割合となっています。二子玉川駅周辺に商業施設が集積していることや、玉川の河川敷をはじめとした大規模な公園があることから、商業系や公園系の割合が高くなっていると考えられます。 2016年からの傾向としては、空地系が5.6%から5.2%へ減少し、公共系が8.8%から9.1%へ増加したほかは、わずかな増減にとどまっています。 また、この5年間の土地建物利用の主な変化としては、本庁舎等整備工事に伴う二子玉川分庁舎を仮庁舎とした業務開始、玉川総合支所の解体・改築による新庁舎オープンなどがあげられます。 (4) 砧地域 ●地域の位置と成り立ち 区の西部に位置し、西側は狛江市と調布市、南側は多摩川を挟んで神奈川県川崎市に接しています。面積は1,354.4ヘクタールで、玉川地域に次いで大きい地域となっています。 この地域の地形は多摩川低地と武蔵野台地とに大きく分けられ、このうち武蔵野台地は野川、仙川および谷戸川に浸食され、谷が形成されています。野川の左岸側には国分寺崖線が延びており、標高差20メートルを超える急傾斜地になっています。現在では区内の多くの小河川が地下水路となっていますが、そうした中でこの地域では地下化されていない河川が数多く存在しています。 1923年に発生した関東大震災において、区の被害は比較的小さなものでした。そのため、震災後には区内への移住者や区内へ移転する施設が増え、新たな街が形成されました。成城学園もそのひとつで、土地区画整理事業が進められ、学園町が形成されました。 新たな街が形成された一方で、現在にいたるまで農地も比較的多く残されてきましたが、基盤が未整備のまま市街化されていきました。そのうち、建築制限が定められた「緑地地域(1969年指定解除)」に指定されていたエリアが広く存在するためです。 ●地域データの特徴と変化 2021年現在、砧地域には約17万人、約8万世帯が住んでいます。地域の特徴としては、平均宅地面積が273.4平方メートルと全地区の中で最も広いことがあげられます。また、緑地系面積は219.28ヘクタール、みどり率は32.98%で、これらも全地区中最も高い値となっており、良好な居住環境が形成されていることがうかがえます。また、火災での燃えにくさを示す不燃領域率は69.6%と玉川地域に次いで高く、燃え広がりやすさを示す木防建ぺい率は15.6%と全地域で最も低いことから、火災に比較的強い街並みが形成されているといえます。 2016年からの変化に注目すると、専用宅地の平均宅地面積が171.2平方メートルから163.3平方メートルへと、約7.9平方メートル減少しています。 ●土地利用の構成と変化 用途別の土地利用構成では、2021年には住居系が44.4%を占めています。これは、全地域の中で最も低い割合ですが、一方で空地系の6.4%や公園系の9.9%は最も高い割合となっており、比較的ゆとりのある土地利用がなされていることがわかります。 2016年からの傾向としては、住居系が43.8%から44.4%へと増え、一方で空地系が6.5%から6.4%へと減少していることから、空地での住宅開発が進められていることがうかがえます。 また、この5年間の土地建物利用の主な変化としては、大蔵総合運動場の都市計画公園決定、都市計画道路補助216号線の着手、東名ジャンクション事業の着手、船橋まちづくりセンターの改築、希望丘地域体育館のオープン、岡本いこいの森緑地の拡張や岡本の丘緑地の整備などがあげられます。 (5) 烏山地域 ●地域の位置と成り立ち 区の北西部に位置し、西側は三鷹市と調布市、北側は杉並区と接しています。面積は772.0ヘクタールで、5地域の中では最も小さい地域です。 武蔵野台地上に位置し、地域のほとんどが標高40メートル以上、北西端では50メートルを超える高台となっています。 1915年、甲州街道沿いに京王線が開通し、駅を中心とした郊外住宅地の開発が始まりました。北烏山では、1923年に関東大震災が発生した際には、被災した東京下町の寺院が集団移転し、寺町を形成しました。現在では26の寺院があります。 公園などの整備も早くから行われてきました。1924年には都立薦花恒春園が開園したほか、1975年には都立祖師谷公園が開園しました。祖師谷公園では園内に仙川が流れており、みずとみどりのある環境が維持されています。 現在では、京王線沿線は店舗や住宅が建ち並んでいますが、沿線から離れると農地が多く残っており、そこに武蔵野らしい街並みを見出すことができます。 ●地域データの特徴と変化 2021年現在、烏山地域には約13万人、約6万世帯が住んでおり、いずれも全地域中で最少となっています。地域の特徴としては、中高層建物棟数が970棟で全地区の中で最も少なく、中高層化率が4.5%で砧地域に次いで低いことから、低層の建物が建ち並ぶ宅地が多く存在することがうかがえます。 2016年からの変化については、他の地域と比較した場合、総じて大きな変化は見られませんでした。 ●土地利用の構成と変化 用途別の土地利用構成では、2021年は住居系が48.3%を占めています。これは、玉川地域とほぼ同程度で、比較的住宅の割合が高い地域であるといえます。また、公共系はll.5%で、全地域中で最も高い割合を占めています。このほか、商業系は5.3%であり、総じて住生活に必要な用途が高い割合を占めています。 2016年からの傾向としては、交通系が17.2%から18.0%へと増加していることから、基盤整備が進められていることがうかがえます。 また、この5年間の土地建物利用の主な変化としては、都営住宅粕谷二丁目アパートや都営八幡山アパートの建て替え、第一生命グラウンドを活用したまちづくりなどがあげられます。