13. 各用途地域の土地建物利用現況 (1) 第一種低層住居専用地域 都市計画法の定義 低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域 2〜3階建ての低層住宅地として居住環境を守る地域で、高さの制限は10メートルです。また、敷地面積の最低限度が定められています。住宅以外の用途は限られていますが、小中学校や診療所、住居を兼ねれば小さな店舗は建てることができます。区内の住宅地の主要用途であり、幹線道路や駅の周辺などを除いた広い地域が指定されています。 区内のおよそ半分がこの用途地域に属します。各所に分布しており、2階建ての低層住宅が建ち並ぶ、世田谷らしい街並み形成に寄与しています。 宅地の土地利用面積、建築面積、建物棟数、延床面積のいずれにおいても、専用住宅が卓越して多く利用されており、戸建中心の地域といえます。建物棟数の階数別割合では2階建ての建物が約8割を占めていますが、平屋や3階建てにも一定の割合がみられます。建築面積の構造別割合では、防火・耐火構造になっていない木造が3%程度みられるのみで、おおむね火災に備えた構造の建物となっています。 (2) 第二種低層住居専用地域 都市計画法の定義 主として低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域 低層住宅地の環境を守りながら、小さな店舗も建てられる利便性のある地域です。高さの制限は12メートルであり、階高を3メートルとすると4階建てまで建てることができます。床面積150平方メートル以内ならばコンビニエンスストアも建てることができます。なお、敷地面積の最低限度も定められています。 区内に占める割合は1.5%で、用賀駅南西の玉川台や、多摩川近くの宇奈根などにみられます。 宅地の土地利用面積、建築面積、建物棟数、延床面積については、第一種低層住居専用地域に比べ、集合住宅や商業系の割合が高くなっています。建物棟数の階数別割合では、2階建て建物が6割強、3階建ての建物が3割弱で、第一種低層住居専用地域よりも高層の建物の割合が高くなっています。建築面積の構造別割合では、建物が耐火造、準耐火造、防火造でそのほとんどを占めており、これらの構造になっていない木造は3%程度です。 (3) 第一種中高層住居専用地域 都市計画法の定義 中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域 中高層住宅地としての環境を守り、中規模店舗などの立地を許容していく地域で、高さの制限が30メートルや45メートルとなり、敷地の広さによっては10〜15階建ての建物を建てることが可能となります。店舗の床面積が500平方メートルまでとなり、大学や病院、飲食店も建てられるようになります。区内では、第一種低層住居専用地域に次いで、二番目に広い面積が指定されています。 区内のおよそ1/4がこの用途地域に属します。第一種低層住居専用地域と同様に区内各地で指定されており、集合住宅を中心とした街並み形成に寄与しています。 第一種・第二種低層住居専用地域と比較して、公共系の土地・建物の割合が高い地域であり、宅地の土地利用面積や建築面積、建物棟数の用途別割合、延床面積にその傾向が表れています。一方で、建物棟数の階数別割合は第二種低層住居専用地域とあまり大きな差はなく、低層の住居も少ないことがうかがえます。構造別割合は、中高層住宅は非木造であることが多いことから、耐火造の割合が高くなっています。 (4) 第二種中高層住居専用地域 都市計画法の定義 主として中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域 主に中高層住宅地としての環境を守る地域で、床面積1,500平方メートル以下であれば店舗や事務所が建てられる住宅地です。比較的大きな建物の建築を想定して、道路や公園など公共施設がある程度整備されたようなところに指定されます。区内では高速道路沿いや馬事公苑周辺などが指定されています。 区内に占める割合は2.4%で、区のほぼ中心に位置する上用賀のほか、区西部を走る都道11号(多摩堤通り)沿いや区北部を走る中央自動車道沿いなどにみられます。 土地や建物の傾向はおおむね第一種中高層住居専用地域と同じですが、土地利用面積、建築面積、建物棟数の用途別割合、延床面積については、集合住宅の割合が比較的高く、その分専用住宅の割合が低くなっています。建物棟数の階層別割合や構造別割合には大きな差はみられません。 (5) 第一種住居地域 都市計画法の定義 住居の環境を保護するため定める地域 大規模な店舗・事務所などを制限しながら住環境を守る地域で、店舗や事務所などは、床面積3,000平方メートル以下であれば、ボウリング場やゴルフ場も建てることができます。住居と商業地域や事務所とが混在する地域です。区内では商業地域や近隣商業地域を取り巻くように指定されています。 区内の1割がこの用途地域にあたります。主に鉄道駅周辺に設定されており、区内に点在しています。 土地利用や建築物の傾向としては、いずれのグラフにおいても第一種・第二種中高層住居専用地域と似た傾向を示しています。 第一種住居地域は、第二種中高層住居専用地域よりも店舗や事務所の面積や用途の制限が緩和されていますが、世田谷区においては商業系や公共系の割合が土地利用面積、建物面積、延床面積において低くなっています。道路沿いを中心とする第二種中高層住居専用地域に比べ、広く設定されている第一種住居地域においては、住宅としての利用も多くなされていることがうかがえます。 (6) 第二種住居地域 都市計画法の定義 主として住居の環境を保護するため定める地域 主要幹線道路の沿道や、一定の利便施設の立地を許容する地域で、主に住環境を保全する地域です。店舗や事務所などは床面積3,000平方メートルを超えるものも建てられるようになります。カラオケボックスやパチンコ店も建てることができます。区内では、区役所周辺の公共施設が多い地区や、環八沿いなどが指定されています。 区内に占める割合は2.0%で、区役所のある世田谷(町丁目)や、小田急小田原線以北〜京王線以南の都道311号(環状八号)沿いなどにみられます。 第一種住居地域よりも幹線道路沿いなどに設定地域が絞られていることもあり、土地利用、建築面積、建物棟数、延床面積のいずれにおいても、比較的商業系の割合が高くなっています。また、延床面積の用途別割合において、専用住宅の割合が10%を切っている(2021年)ことや、階数別割合では4階以上、構造別割合では耐火造の割合が比較的高いことから、非木造の中高層建築が建ち並ぶ、典型的な幹線道路沿いの街並みが形成されていることがうかがえます。 (7) 準住居地域 都市計画法の定義 道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するため定める地域 交通量の多い沿道などで一定の商業施設や自動車関連施設などを許容する地域で、床面積150平方メートル未満の自動車修理工場、床面積200平方メートル未満の映画館や劇場も建てることができます。区内では環七、環八、世田谷通りなどの主要幹線沿いの一部が指定されています。 区内に占める割合は1.2%で、区北部を走る国道20号(甲州街道)沿いや、区中西部の国道246号(玉川通り)沿い、小田急小田原線以南〜東名高速道路以北の都道311号(環状八号)沿いなど、主に幹線道路に沿って設定されています。 土地利用や建築物の傾向としては、いずれのグラフにおいても、同じく幹線道路沿いを中心に設定されている第二種住居地域と似た傾向を示しています。ただし、建物棟数の用途別割合において、商業系の割合が10%ほど高く、専用住宅の割合が15%ほど低いなど、より店舗・事務所エリアとしての色合いが濃くなっています。 (8) 近隣商業地域 都市計画法の定義 近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するため定める地域 住宅地に近接した駅前商店街などで、近隣住宅地の住民が不便なく買い物ができるようにするための地域です。小規模の工場も建てることができます。鉄道駅周辺や幹線道路沿いに指定されており、区の東側に指定地域が多くなっています。 区内に占める割合は6.1%で、主に鉄道駅付近や商店街のある道路沿いに設定されています。 準住居地域と比較して、さらに店舗・事務所エリアとしての性格が強くなっています。宅地の土地利用面積の用途別割合、建築面積の用途別割合、建物棟数の用途別割合、延べ床面積の用途別割合においては、いずれも商業系が4割以上を占めています(2021年)。また、建物階数は過半数が3階以上、建物構造は7割近くが耐火造となっていることから、中小規模のオフィスビルやテナントビルがある程度存在することが想定されます。 (9) 商業地域 都市計画法の定義 主として商業その他の業務の利便を増進するため定める地域 店舗、事務所、住宅が混在する地域です。三軒茶屋、二子玉川、下北沢などの駅周辺や幹線道路の一部に指定され、環境に悪影響を及ぼすなど危険度が高い工場以外の、ほとんどのものを建てることができます。 区内に占める割合は1.7%で、下北沢、明大前、下高井戸、千歳烏山、三軒茶屋、経堂、二子玉川といった、区内でも比較的乗降客数の多い鉄道駅付近や、区東部の国道246号(玉川通り)沿いなどに設定されています。 近隣商業地域と比較して、店舗・事務所エリアとしての性格は一層強まります。宅地の土地利用面積の用途別割合、建築面積の用途別割合、建物棟数の用途別割合、延床面積の用途別割合においては、いずれも商業系が過半を占めています(2021年)。また、建物階数は半数近くが4階以上、建物構造は8割以上が耐火造となっていることから、区内では比較的大規模なオフィスビルやテナントビルが存在することが想定されます。 (10) 準工業地域 都市計画法の定義 主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するため定める地域 住宅と工場が共存する地域です。周辺環境を著しく悪化させるおそれがある工場のほかは、ほとんどのものを建てることができます。区内では大蔵一丁目や桜新町、経堂五丁目などで指定されています。 区内に占める割合は1.0%で、世田谷区における用途地域別の面積割合は最も低くなっています。都道311号(環状八号)沿いの大蔵(清掃工場、卸売市場)や区西部の喜多見(電車基地)のように、特定の施設に対して設定されている地域もあれば、区東部の池尻、区中部の桜新町のように、住居と工場・事業所が混在する地域もあります。 「準工業地域」という名前にあるとおり、工業系としての利用割合が、宅地の土地利用面積の用途別割合、建築面積の用途別割合、建物棟数、延床面積において他の用途地域よりも高くなっています。一方で、清掃工場などの大規模な公共施設も立地しているため、公共系の割合も高くなっています。階数別割合、構造別割合は、おおむね近隣商業地域と似た傾向にあります。 (11) 用途地域別の主要指標