9. 緑地等 (1) 緑被率・みどり率・自然面率 ●みどり率は24.38% 区の緑被率は22.56%、みどり率は24.38%、自然面率は25.62%です。区は、「世田谷区みどりの基本計画」において、みどりの量の豊かさを測る指標として、区制100周年である2032年に、みどり率33%の達成を目指しています。 緑被とは、緑が地表を被う部分のこと。 地域全体に占める割合を緑被率という。 みどり面とは、緑被面に水面と公園内の緑に被われていない部分を加えた部分のこと。 地域全体に占める割合をみどり率という。 自然面とは、緑被面に水面と裸地を加えた部分のこと。 地域全体に占める割合を自然面率という。 ※樹木地(樹木・竹林)、草地、農地、屋上緑地を航空写真から判読 ●西高東低のみどり分布 世田谷区は、市街化された住宅の街ですが、多摩川や国分寺崖線、大小様々な公園緑地、農地、住宅地の緑など、多様で良好なみどりが残っています。 地域別にみると、南西の砧地域や玉川地域の一部は、多摩川や国分寺崖線のほか、砧公園や大蔵運動公園などの大規模公園、住宅地、大規模団地などのみどりと多くの農地が残っています。主に烏山地域や玉川地域、砧地域の一部は、住宅地の中に社寺林や農地が点在し、駒沢公園や祖師谷公園などの大規模公園、病院や学校、企業グラウンドなどにみどりが多く残っています。北東の世田谷地域や北沢地域は、世田谷公園や羽根木公園などの中規模公園があるものの、市街化が進み比較的みどりが少なくなっています。 ●緑被率、みどり率、自然面率は2016年より減少 区のみどり率は24.38%で、区の南西ほど高い傾向になっています。特に多摩川と国分寺崖線に沿った地域で30%を超えている町丁目が連続しています。一方、環七や環八の東側では10%未満の町丁目もみられます。 緑被率、自然面率はともに1997年までは低下傾向にありましたが、2000年に指標化されたみどり率も含め、2006年以降は微増・微減を繰り返して、ほぼ横ばいで推移しています。 また、公園率は、1981年の調査開始以降、一度も減少することなく増加しています。 ●民有地より公共用地の緑被率が高い 公民別緑被率をみると、公共用地は民有地より4.4ポイント高くなっています。 公共用地は、区の緑被の中核を担う公園や街路樹のある道路などを含んでいます。そのため、一般的に都市部では民有地より緑被率が高い傾向がありますが、区では民有地の緑被率も比較的高いという点が特徴的です。これは、農地のほとんどが民有地であることや、区の約半分を占める住宅用地のほとんどが民有地であり、それらの住宅用地に小規模ながらも緑被があることなどが要因と考えられます。 ●敷地面積が大きいほど緑被率が高い傾向 一般に、敷地面積が大きくなるに伴い、緑被率も上昇する傾向がありますが、用途によっては傾向が異なっています。 公園や公的集合住宅では、面積が小さくても比較的高い緑被率となっています。なお、公的集合住宅は敷地面積が増加しても緑被率はあまり上昇しません。また、工場は面積が増加しても緑被率は10%程度と、あまり変化しません。 宅地面積の増加に伴って緑被率が上昇する傾向が最も顕著なのは戸建住宅で、150平方メートル未満では約10%ですが、5,000平方メートル以上では80%を超えています。 なお、社寺では面積が小さくても大木を中心に樹林が保存されているため、小規模な敷地でも緑被率が高いものと考えられます。 ●区の緑被率は23区内で第2位 緑被率の23区平均は17.5%で、世田谷区の緑被率22.6%は23区内では千代田区に次いで同率2位となっており、23区の中では緑の豊かな区といえます。 また、みどり面の区全体面積に対する割合であるみどり率は、データのある22区の中では9位となっています。なお、緑被率で9位の江東区がみどり率で1位なのは、みどり面に水面が含まれているからです。 (2) 都市公園等 ●都市公園等は増加傾向 都市公園等(都立・区立の公園、身近な広場(条例別表))は、2021年4月の時点で区内に559箇所あります。箇所数、面積はともに増加傾向にあり、1981年から2021年の間には341箇所、約89ヘクタール増加しました。 (3) 接道部緑化 ●接道部緑化延長の減少 区の接道部延長の38.34%に緑化が行われており、12.44%に塀が設置されています。 2021年の接道部緑化率は2016年と比較すると0.82ポイントの減少でした。区全体の接道部緑化延長と、塀の延長それぞれ減少していることから、敷地接道部に緑化や塀を設置しない敷地が増えていることが分かります。 土地利用区分別の推移では、戸建住宅の接道部緑化率及び塀設置率の減少が最も大きい状況です。戸建住宅は小規模な敷地数が増大しており、小規模な戸建住宅の接道部は緑化や塀が設置されていない場合が多いためと考えられます。 ●接道部緑化率の高い砧地域 地域別では砧地域で接道部緑化率が最も高く、塀設置率が最も低くなっています。接道部緑化区分のうち、植込・高木、生垣、高木の割合が高く、道路から見えるみどりが多いことが分かります。 一方、世田谷地域や北沢地域で接道部緑化率が低く、塀設置率が高くなっています。 ただし、接道部緑化区分をみると、植込・高木に次いで塀上の緑化3メートル以上の割合が高く、他地域と比べてもその割合は高くなっており、接道部緑化率が低くても比較的接道部のみどりが豊かに感じられることが分かります。 (4) 緑化指導効果の分析 ●様々な取り組みにより豊かなみどりが保全創出されている 多摩川風致地区では、自然的景観を維持するため地区内の行為を制限していることから、緑被率は34.41%、接道部緑化率は40.28%と、区全体緑被率や接道部緑化率よりも高くなっています。 緑地協定とは、都市緑地法に基づく制度で、市街地の良好な環境を確保するため、土地所有者等の合意により、住民自身による自主的な緑地の保全や緑化に関する協定を締結する制度です。そのため、区全体の値よりも緑被率で12.59ポイント、接道部緑化率で22.97ポイント高くなっており、また、2016年調査より緑被率、接道部緑化率ともに増加しています。 地区計画策定区域では、地区の特性によった変化がみられます。敷地の細分化を伴う住宅建設によって緑被率が減少した地区もありますが、樹木の成長によって緑被率が増加した地区もあります。 今後、区制100周年を迎える2032年にみどり率を33%とすることを目指す「世田谷みどり33」を進めるため、樹林地や農地の計画的な保全を進めるとともに、土地利用の転換時に良好な緑地の創出を確実に図っていくことが重要です。 10. 生物 ●環境に応じて多様な生物が生育・生息 5つの行政区域より異なるみどりの特性を持つ各1地区を選定し、植物、哺乳類、爬虫類、両生類、鳥類、昆虫類、魚類、底生動物について生物調査を行いました。市街地で一般的にみられる種が多く確認されましたが、近年の開発等による減少が指摘されている重要種も複数確認されました。一方で、従来の生態系への悪影響を与えることが懸念されている特定外来生物も確認されました。 ●都立砧公園 みどりの連続性が高い地域にある都立砧公園は、樹木が敷地の7割を占め、草地等を含めた自然面率は94.5%と高い値を示しています。植物477種、鳥類32種、昆虫類は283種が確認されています。 ●等々力渓谷公園 みどりの連続性が高い地域にある等々力渓谷公園は、樹木が敷地の9割を占め、草地等を含めた自然面率は93.8%と高い値を示しています。植物299種、鳥類19種、昆虫類は172種が確認されています。 ●給田四丁目緑地とその周辺 住宅地の中に中・小規模緑地が点在する地域にある給田四丁目緑地とその周辺は、樹木が敷地の2割弱を占め、草地等を含めた自然面率は29.1%となっています。植物480種、鳥類18種、昆虫類は210種が確認されています。 ●烏山川緑道 住宅地の中に中・小規模緑地が点在する地域にある烏山川緑道は、樹木が敷地の8割を占め、草地等を含めた自然面率は84.4%となっています。植物371種、鳥類17種、昆虫類は201種が確認されています。 ●大原一丁目柳澤の杜市民緑地とその周辺 市街化が進み比較的みどりが少ない地域にある大原一丁目柳澤の杜市民緑地とその周辺は、樹木が敷地の1割を占め、草地等を含めた自然面率は14.1%となっています。植物391種、鳥類12種、昆虫類は122種が確認されています。 コラム 生物多様性に配慮した緑化を進めるために(みどりは量も質も大事) 私たちの周りには、鳥や小さな昆虫、魚、微生物に至るまで、様々な個性を持った多くの生きものが、直接または間接的に支えあって生きています。地球上に存在する様々な種類の生物の多様さを「生物多様性」といいます。 植物は虫の餌となり、虫は鳥の餌となり、鳥はより大きな鳥や動物の餌となります。動物のフンや死骸は、地面の微生物により分解され、やがて植物の栄養になります。こうした生きもののつながり・循環を食物連鎖といい、食物連鎖と生きものが生きる自然環境(太陽の光、大気、水、土など)を合わせて生態系といいます。 生態系は命を支えるきれいな空気や水、生活を支える食事や医療など、私たちが生きていく上で欠かせないものを提供してくれています。私たち人間は、生物多様性を基盤とする生態系から多くの恩恵を受けています。 しかし、生態系の基盤である生物多様性は、私たちの活動による自然環境の悪化や外来種の持ち込みにより急速に失われ、危機的な状況となっています。 こうした中、区では、2032(令和14)年に「みどり率」を33%とする長期目標「世田谷みどり33」を掲げ、みどりの「量」を確保する取組みに加え、生物多様性の保全など、みどりの「質」を高める取組みを推進しているところです。これは、みどりの量を単純に増やすだけではなく、生物多様性に配慮した緑化が求められているといえます。 区では、この生物多様性に配慮した緑化を「生きもの緑化」と呼んで推進しており、生きものの住む環境の保全等を通して、みどりの恵みを実感することのできる世田谷の実現を目指しています。 生きもの緑化は、周辺の生きものや生態系に配慮した緑化で、その場所にそれまでにない植物を持ち込むのではなく、その土地の在来種を活用した緑化を行う必要があります。また、特定の生きものばかりを増やさない配慮も必要です。 区民の皆さまには「世田谷生きもの緑化ガイドブック」を参考に、身近なところから生きもの緑化を始めてもらうことで、みどりのネットワークが形成され、生きものの住みやすい環境づくりにつながることを期待します。 「世田谷生きもの緑化ガイドブック」は区ホームページから閲覧できます https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/sumai/010/004/001/d00159152.html 11. 農地 (1) 農地の状況 ●生産緑地地区以外の農地は特に減少 農地は2021年の時点で79.06ヘクタールあり、農地率(全区面積に対する農地の割合)は1.45%となっています。1975年以降、農地は毎年数ヘクタールずつ減少しており、農家戸数についても、1975年から2021年までの間に914戸だった農家戸数は300戸にまで減少しています。 農地のうち生産緑地地区は、1991年の生産緑地法の改正に伴い、1992年以降急増しましたが、その後は減少傾向にあります。生産緑地地区は指定後、基本的に30年間営農が義務付けられるため、減少の度合いは全農地に比べ小さくなっています。1992年には86.13ヘクタールあった生産緑地地区に指定されていない農地は2021年にはなくなり、区内に残された農地のほぼすべてが生産緑地地区に指定されています。 現在、都市農地は、防災機能や良好な都市環境の形成などの多様な機能が期待されており、様々な施策による一層の農地の保全・活用が求められています。 (2) 農地の転用件数 ●転用件数は年間60件前後、転用面積は3.0ヘクタール前後で推移 農地から宅地など農地以外へ転用された面積は、2007年に7.85ヘクタールと大きくなっていましたが、それ以外は、ほぼ3.0ヘクタール前後で推移しています。件数は90件前後と多い年もありましたが、ほとんどは60件前後で推移しています。 (3) 農地の転用目的 ●主な転用目的は住宅敷地拡張と共同住宅分譲地造成 2021年の転用目的のトップは共同住宅・分譲地造成でした。農地の転用面積や転用目的は年によって変化が大きいですが、住居系の目的に転用される面積が大きいという傾向は変わっていません。 (4) 農地の規模分布・推移の状況 ●農地は区の西側に多く分布している 1,000〜3,000平方メートルの農地の面積が最も多く、次いで1,000平方メートル以下の小規模な農地の面積が多くなっています。区の西半分に多く分布し、砧地域の低地や烏山地域に農地が多くみられます。 規模別に推移をみると、2011年からの10年間で、3,000平方メートル未満の農地の約3割、3,000平方メートル以上の農地の4割が他用途に転用されました。最近5年では農地の減少傾向は鈍化しており、特に3,000平方メートル未満の農地で顕著になっています。 区では、農地の多くを占める生産緑地地区の一団の面積要件を300平方メートルに引き下げており、今後は小規模な農地の減少に歯止めがかかることを期待しています。 (5) 生産緑地地区の状況 ●区全体では30年間で約4割減少 農地の中でも、生産緑地地区は比較的継続性がありますが、1991年からの30年間で指定解除された生産緑地地区(分布図中灰色)も多くみられます。 一方、この30年間で新たに指定された生産緑地地区(同うぐいす色)もあり、結果として区全体では62.1ヘクタール減少しました。 喜多見や宇奈根では、指定解除された生産緑地地区が多くみられます。砧地域は生産緑地地区が最も多い地域ですが、30年間の減少面積も24.9ヘクタールと最も大きくなっています。 12. 用途地域指定の状況 (1) 用途地域指定の状況 ●住居系が9割を占める 用途地域指定では、住居系が9割の面積を占めています(下図)。住居系の中でも、「絶対高さ制限」のある第一種低層住居専用地域と第二種低層住居専用地域で全用途地域のおよそ半分を占めており、これらの地域では、区内で多くみられる2階建てや3階建ての住宅による街並みが形成されています。一方、商業系は、全体の7.8%を占めており、そのうち8割が近隣商業地域で、住宅地に暮らす人々の生活圏の中心を担っています。 なお、区では工業系用地の割合が極端に少なく、全体のわずか1.0%にとどまります。 (2) 他区との比較 ●23区の中では住居系の割合が最も高く、工業系は3番目に低い 世田谷区は、東京23区のなかでも特に住居系用途地域の割合が高い区です(右図)。同時に、商業系用途地域の割合は全区中で最も低く、工業系の割合も千代田区、台東区に次いで3番目に低くなっています。住宅の街としての世田谷区は、歴史的経緯だけでなく、用途地域指定をはじめとした都市計画によっても形成されてきたといえます。