7. 道路 (1) 道路の状況 ●4メートル以上6メートル未満の区道が1/3を占める 区内には、国道約13キロメートル、都道約67キロメートル、区道約1,095キロメートルと、合計約1,200キロメートルにおよぶ道路が整備されています(右図)。最も多いのは、4メートル以上6メートル未満の区道で419.4キロメートルとなっており、約1/3を占めています。 次いで、6メートル以上10メートル未満の区道が304.7キロメートルと約1/4を占めています。幅員別道路現況図(下図)をみると、区西部の成城付近や中央部の用賀付近など、耕地整理や土地区画整理などの都市基盤整備事業が行われたエリアで街の骨格を形成していることがわかります。 一方で、4メートル未満の区道が290.0キロメートルあり、約1/4が幅員の狭い細街路といわれる道路となっています。こうした細街路は入り組んだ形状をしており、区の北半分の都市基盤整備が遅れている地域、および東南端の奥沢付近に多く分布しています。 (2) 地域別道路幅員・延長 ●総延長に差はあるが、細街路は3割程度 5地域ごとの道路延長は、玉川地域が約295.9キロメートルと最も長く、最も短い烏山地域の133.8キロメートルに対し2倍強の延長を有しています。一方で、幅員4メートル未満の道路(細街路)延長は、玉川地域が最も短く42.5キロメートルとなっています。このことから、玉川地域は比較的道路整備が進んだ地域であるといえます。なお、細街路について、延長が最も長いのは砧地域の72.3キロメートル、割合が最も高いのは北沢地域の33.8%となっています。 (3) 道路率 ●区平均の道路率は17.3% 道路率とは、対象区域の全面積における道路面積の割合のことです。市街化の程度を示す指標として用いられ、土地区画整理事業を実施した地域では、道路率は20%前後になることが多いとされています。 町丁目別の道路率をみると、環七、環八沿道や玉川通りに面したエリアでは20%を超えていますが、区平均は17.3%となっており、10%未満の地域も残っています。 (4) 細街路率 ●都心周辺の他、一部路線の鉄道駅付近でも高い傾向 細街路率は区全体で31.9%となっており、2016年の34.3%から2.4ポイント減少しました。5地域別にみると(右図)、北沢地域が41.6%と高く、玉川地域が21.7%と低くなっています。 町丁目別にみると、大原や北沢、太子堂など、都心に近いエリアで高い傾向にあります。また、小田急小田原線や京王線の駅周辺においても、やや高い傾向となっています。これらのエリアでは、古くからの道路が未整備のまま宅地化が進行したものと考えられます。 (5) 接道幅員4メートル未満の宅地の分布状況 ●該当する宅地は区全域で減少 建築基準法では、宅地で新たに建築を行う際だけでなく、増改築を行う場合においても、宅地が幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接する必要があります。この条件を満たさない場合、その敷地では原則として建築を行うことができません。 世田谷区では、こうした宅地は減少しています。5地域別にみると(右図)、2016年から2021年にかけて、いずれの地域でも減少がみられましたが、町丁目別にみると(下図)、羽根木や太子堂など、区東部に未だ多く分布していることがわかります。なお、土地区画整理事業を行った地域では、接道幅員4メートル未満の宅地は見受けられません。 8. 防災 (1) 燃え広がりにくさの指標【耐火率】 ●区中央部で一様に高い、上昇幅は東部で大きい 燃え広がりにくさを示す耐火率は、すべての建築面積に対する耐火・準耐火建築物の建築面積によって表されます。2021年の区全体の耐火率は64.3%で、2016年の63.3%から1.0ポイント増加しました。 町丁目別の耐火率をみると、上用賀や弦巻など、世田谷通り、玉川通り、環状八号線で囲まれたすべての箇所において60%以上を保っており、その周辺においてもおおむね60%以上のエリアが広がっています。一方で、代田や代沢、赤堤などの区北東部ではおおむね40〜60%、上祖師谷や喜多見、北烏山などの北西部においては40%未満の地域が散見されます。 2016年からの増減については、都心に近い東部で増加していますが、上用賀や岡本では減少している箇所がみられます。 (2) 建物用途別の耐火率 ●人の出入りが多い建物用途で高い 公共系と専用商業の耐火率は、90%以上と特に高くなっています。これは、不特定多数の人が利用する施設に対する各種規制によるものと考えられます。 耐火率の増減については、専用商業と農業系以外の建物において、2011年以降の増加傾向が続いており、少しずつ建物が耐火構造や準耐火構造に建て替わっていることがうかがえます。 (3) 用途地域別の耐火率 ●商業のほか、工業や中高層建築のある地域で高い 用途地域別の耐火率をみると、準住居地域や商業地域で高くなっています。これらの地域には比較的大規模な商業施設が多いことから、耐火性能の高い鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造が多く立地しています。準工業地域においては、工場の操業内容にもよりますが、火災に備えた構造を要求されるため、一定の耐火率を有しています。 住居系用途地域では、第一種低層住居専用地域から第二種中高層住居専用地域の順で、耐火率が高くなる傾向がうかがえます。これは、マンション等の中高層建築物の多くが、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造であることによるものと考えられます。 コラム 耐火構造とは 建築基準法では、「通常の火災が終了するまでの間当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために当該建築物の部分に必要とされる性能」を耐火構造、「通常の火災による延焼を抑制するために当該建築物の部分に必要とされる性能」を準耐火構造としてそれぞれ定義しています。 耐火構造においては、主要部分のそれぞれについて、火災に耐えるべき時間が定められています。具体的には、右表に掲げる各階について、記載された時間の火熱が加えられた場合に、構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないことが求められます。 (4) 燃えにくさの指標【不燃領域率】 ●一部地域で向上しているが、40%未満の箇所が残存 燃えにくさを示す不燃領域率は、ある区域における空地面積の割合(空地率)と、耐火・準耐火建物の建築面積の割合(不燃化率)から算出されます。これは、空地と燃えにくい建物が占めている割合によって、その区域の燃えにくさを示すものとされています。一般に、不燃領域率が30%以下であると延焼しやすく、火災による焼失域の割合(焼失率)が8割を超えるといわれています。また、40%以上の場合は焼失率が急激に低下し、70%を超えていると延焼の危険はほとんどないとされています(「改訂 都市防災実務ハンドブック」ぎょうせい)。 区全体の不燃領域率は67.8%で、2016年の67.1%から0.7ポイント上昇しました。町丁目別にみると、おおむね幹線道路沿いに70%以上の箇所がみられる一方、祖師谷と東玉川の一部では40%を下回っている箇所があります。不燃領域率の増減については、防災街づくりを推進している区役所付近の梅丘や若林などのエリアで上昇しています。 (5) 燃え広がりやすさの指標【木防建ぺい率】 ●低下している箇所もあるが、なお30%以上の地域が残存 宅地面積に占める木造および防火造(いわゆる木構造)建物の建築面積の割合を木防建ぺい率といい、30%を下回れば燃え広がりにくいとされています(『改定 都市防災実務ハンドブック』ぎょうせい)。 2021年の木防建ぺい率は区全体で17.1%で、2016年の17.4%から0.3ポイント低下しました。町丁目別にみると、上祖師谷3丁目で30%以上となっているほか、梅丘、代田などの区北東部で20%以上の箇所が多くみられます。一方で、粕谷や千歳台、大蔵など、環状八号沿線において10%未満の箇所が散見されます。 木防建ぺい率の増減については、不燃領域率と同様に、区役所付近の梅丘や若林などで減少がみられます。 (6) 木構造集合住宅の分布状況 ●区全域に多い木構造集合住宅 木構造(木造プラス防火造)の集合住宅は区内で13,598棟あり、2016年の13,742棟から144棟減少しました。5地域別にみると(右図)、玉川地域のみ増加しているものの、他の地域はいずれも減少しています。特に世田谷地域では、2016年に新たな防火規制区域が2地区で指定されたことから、棟数、建築面積ともに大きく減少しています。 区内の分布状況をみると(下図)、北沢や大原、羽根木などの北東部に集中していることが特徴的ですが、船橋や喜多見など他のエリアでも広範囲にみられます。 (7) 震災時における建物倒壊・火災延焼の危険性 ●倒壊リスクは総じて低下しているものの、延焼リスクが高い地域が残る 1981年以前に建てられた建物(旧耐震建築物)は、それ以降に建てられた建物に比べて耐震性能が低い状態にあり、特に木造建築物においては、震災時の倒壊リスクが鉄筋コンクリート造などに比べて相対的に高いといえます。また、震災の二次災害として位置付けられる火災についても、木造住宅密集地域などでは延焼リスクが高いといえます。以上から、旧耐震基準の木構造建物は、震災時の被害発生やその拡大が生じやすい地域であるといえます。 2021年における旧耐震木構造建物の棟数密度は、区平均で1ヘクタール当たり6.4棟となっており、2016年の1ヘクタール当たり7.6棟から、1.2棟減少しました。町丁目別にみても、ほぼ全域で減少しており、特に太子堂や若林、三軒茶屋など、防災街づくりが進められている地区では、この棟数密度が1ヘクタール当たり3棟以上減少と、その幅が大きくなっています。 総じて震災による建物倒壊に関するリスクは低下していると考えられますが、町丁目単位では地区ごとの特性が平均化されて示されるため、火災延焼リスクについてはより細かな街区単位で検討する必要があります。