4. 平均宅地面積 (1) 宅地規模別の宅地数の動向 ●宅地の細分化が進む一方、大規模開発による区画の統合も進む 区の宅地面積をその規模帯ごとに集計すると、最も多いのは50〜100平方メートル(宅地数:約5.0万)で、次いで100〜150平方メートル(宅地数:約4.6万)となっています。両者は2011年以降一貫して増加しており、一方でこれより広い150〜200平方メートルや200〜300平方メートルでは減少が続いています。50平方メートル未満の宅地も、数が少ないながらも微増しています。以上から、世田谷区では宅地の細分化が進んでいることがわかります。 なお、2,000平方メートル以上の宅地は微増していることから、公共系や商業系、あるいはこれらを複合した集合住宅など、大規模施設の開発において区画の統合が進んだことがうかがえます。 ●専用住宅では土地の分譲が進む 宅地のうち、商業系や公共系、集合住宅を除いた専用住宅の宅地のみに注目すると、全宅地の場合と同様の傾向がみられます。ただし、大規模開発等は含まないため2,000平方メートル以上の宅地はなく、150〜200平方メートル以上の規模において宅地数は一貫して減少傾向にあります。このことから、専用住宅においては、宅地の分譲や細分化が進んでいることがうかがえます。 (2) 平均宅地面積 ●平均宅地面積は区南西部を中心として全体的に減少 2021年の区平均宅地面積は230.4平方メートルで、2016年の236.0平方メートルから5.6平方メートル減少しました。 町丁目別にみると、平均宅地面積は大蔵や玉川などの区南西部で比較的広く、北沢や若林、松原などの東部で狭いことから、都心へのアクセスのしやすい場所で宅地が狭くなる傾向にあることがうかがえます。 増減については、区内のほぼ全域で平均宅地面積が減少しています。特に、代田や若林の一部など、平均宅地面積が200平方メートル未満の箇所では4ポイント以上減少している一方、粕谷や大蔵の一部など、平均宅地面積が500平方メートル以上の箇所の中には4ポイント以上増加している箇所があります。狭い宅地が多いエリアではより狭くなり、広い宅地が多いエリアでも狭くなる傾向がある一方、広い宅地が多いエリアではより広くなるという異なる傾向を示す箇所もあらわれています。 (3) 専用住宅の平均宅地面積 ●全域で細分化が進展 平均宅地面積(34ページ)について、対象を専用住宅のみに限定すると、2021年の平均宅地面積は143.6平方メートルで、2016年の150.4平方メートルから6.8平方メートル減少しました。 町丁目別にみると、区北部から東部にかけては、150平方メートル未満の箇所が多くみられる一方で、上野毛、尾山台などの区南東部で広い傾向があります。また、成城においては、200〜300平方メートルの町丁目が連なっており、大規模な宅地が広がっていることがうかがえます。 2016年からの増減については、区全体で一様に減少しており、専用住宅の宅地の細分化が進んでいると考えられます。特に、船橋や千歳台の一部などで10ポイント以上の大幅な減少がみられ、急速に細分化が進んだことがうかがえます。 (4) 規模別の専用住宅宅地分布状況 ●都心から遠いほど広くなるが、区中央部は様々な規模の宅地が混在 専用住宅の宅地規模別の分布をみると、300平方メートル以上の広い宅地は区南西部に多くみられることがわかります。これはおおむね国分寺崖線保全整備地区の区域と一致しており、敷地にゆとりのある住宅環境が形成されていることがうかがえます。このほか、専用住宅の平均宅地面積が大きい成城(35ページ)においても、300平方メートル以上の宅地が多くみられます。 一方、宅地面積が100平方メートル未満の専用住宅は三軒茶屋とその周辺に多くみられます。この付近は世田谷区内でも特に早くから開発が進んだ地域で、地価も比較的高いことから、敷地が狭くなる傾向にあります。 (5) 規模別専用住宅の地域別宅地数 ●宅地数は同じでも広さが異なる 宅地規模を5地域ごとに比較すると、同程度の宅地数でもその内訳が異なる傾向があります。例えば、玉川地域と世田谷地域では、2021年の専用住宅宅地数がいずれも3万程度ですが、100平方メートル未満の宅地に注目すると、玉川地域の宅地数が約1万であるのに対し、世田谷地域ではその1.5倍以上もあることがわかります。なお、宅地数自体はいずれの地域においても2011年以降一貫して増加しています。 (6) 建物用途別の平均宅地面積 ●公共系が突出して大きいが減少傾向にある 建物用途別の平均宅地面積をみると、公共系が突出して大きいことがわかります。公共施設は一定の規模を有する場合が多いため、敷地も大きい傾向にあるといえます。この他、専用商業や農業系など、比較的大きな土地や建物を有することの多い用途において、面積が大きい傾向があります。 2011年以降の増減については、公共系が減少傾向にあり、土地の払い下げや民間施設のスペース活用などによって、公共用地が減少しているものと推察されます。 (7) 用途地域別の平均宅地面積 ●各用途地域で建築可能な建物に最低限必要な敷地規模に左右される 用途地域別の宅地面積をみると、第二種中高層住居専用地域、第二種住居地域、準住居地域、準工業地域で比較的大きいことがわかります。これらの用途地域ではマンションや工場などの比較的大きな敷地を要する建物が多いことから、一定の宅地面積が維持されているものと思われます。これに対し、近隣商業地域や商業地域には、大規模な商業施設のほかに住商併用の小規模店舗も立地しており、専用住宅と同様に必ずしも広い敷地を要さない場合が少なくないため、宅地面積の小さな敷地が多いものと考えられます。 5. 階数 (1) 建物階数の状況 ●2階建てがほとんどだが地域特性に応じたメリハリのある街並みを形成 区では、公園や河川敷等を除き、そのほとんどの土地に建物があり、その多くが2階建ての建物です。区の大半の地域は第一種低層住居専用地域である(68ページ)ことから、これらの多くは2階建ての住宅として利用されています。3〜5階の建物も区内各所に分散してみられますが、6階以上となると、鉄道駅周辺や幹線道路沿い、大学や病院、大規模な住宅団地などが立地する場所に限定されるほか、16階以上の建物はほとんどみられません。 (2) 階数別棟数と動向 ●2階建てが最多だが3階以上が増加 区内における建物の平均階数は2021年に2.35階で、2016年の2.32階からわずかに増加しました。階数別にみると、2階建てが約11.7万棟と最も多く、そこから階層が増えるにしたがって棟数は減少します。ただし、10階を超える建物においては棟数の差はあまりみられません。 3階建て以上の建物は、2011年以降増加傾向にあります。2階建ては横ばいで、1階建ては減少していることから、農地などが開発され宅地化されてきた過去の傾向に対し、開発余地が少なくなったことから、建物の中高層化が徐々に進んでいるともいえます。 (3) 建物用途別平均階数 ●マンションや商業施設等を含む用途において高い傾向 建物用途別では、住商併用や集合住宅で平均階数が高くなっています。これらにはマンションが含まれており、また、専用住宅から集合住宅への転換が進んでいる(21ページ)こともあり、これらの用途区分においては平均階数が年々増加傾向にあります。 これらに次いで平均階数が高いのは専用商業です。商業を中心とする地域では指定容積率が高く設定されていることが多く、専用商業建物は高層化しやすいといえます。工業系については、工場は階高を高くして広いスペースを確保することが多いため、平均階数は低くなっています。  増減については、専用商業以外では2011年以降一貫して増加傾向にあります。 (4) 中高層化の状況 ●鉄道沿線で高く上昇傾向、交通利便性による二極化強まる 全建物棟数に占める4階建て以上の建物の棟数(中高層化率)は、区全体で5.6%と、2011年の5.4%から0.2ポイント増加しました。 町丁目別にみると、玉川や用賀、駒沢、三軒茶屋など、鉄道沿線において、一貫して高い傾向があります。これらの地域では、中高層化率が総じて高く、2016年から4ポイント以上増加した箇所が多数みられます。一方で上祖師谷や宇奈根などの区西部や、鉄道沿線から離れたエリアでは中高層化率は低く、2016年よりも低下している箇所もみられます。 (5) 3階建て専用住宅の分布状況 ●敷地面積や指定容積率が影響か 3階建ての専用住宅は2021年時点で区内に27,900棟あり、2016年の24,437棟から3,463棟増加しています(右図)。5地域別にみると、特に世田谷地域での増加が著しく、2011年以降は5年毎に約1,500棟のペースで増加しています。 3階建ての専用住宅の分布状況をみると(下図)、経堂、弦巻、駒沢辺りを境に、区の東側に3階建て専用住宅が多く存在しています。都心に近い地域では専用住宅の宅地面積が狭いことや(36ページ)、指定容積率が高い(30ページ)ことから、住宅を3階建てとすることで限られた敷地で延床面積を確保していることがうかがえます。 6. 構造 (1) 建物構造の状況 ●耐火造とそれ以外で分布が明瞭に分かれる 建物の構造は、火災に対して燃えにくいほうから、耐火構造に分類される耐火造と準耐火造、木構造に分類される防火造と木造の4種類に分けられます。 分布状況をみると、比較的大きな建物が集まるエリアで耐火造が多いことがわかります。これらの場所では建物間の間隔が比較的広いこともあり、延焼しにくい空間になっています。一方で、幹線道路や鉄道駅からややから離れた場所を中心に、防火造や木造の建物がみられます。これらの場所では、小規模な建物が密集しており、延焼リスクが比較的高い状況にあるといえます。 耐火構造 燃えにくい順に、耐火造、準耐火造、防火造、木造。 木構の建築物にも防火造や耐火造や準耐火造のものがある。 (2) 構造別棟数と動向 ●耐火造・準耐火造への置き換えが進むが、防火造の割合は減少せず 区内には2021年に約18万棟の建物があり、このうち16.6%が耐火造、26.2%が準耐火造です。これらの割合は2011年、2016年といずれも一貫して増加傾向にあり、耐火構造への建て替えが進んでいることがわかります。これとは対照的に、木造の割合は2011年以降一貫して減少しています。 区内では14の地区が東京都建築安全条例に基づく新たな防火規制区域に指定されています。(令和5年1月現在。当初13地区であったが、2022年10月31日に船橋一丁目地区が新たに指定された。)これらの地区では防火・耐火に関する基準を満たさない木造の新築が禁止されているため、木造の割合は今後さらに減少していくことが想定されます。 (3) 建物用途別の構造別棟数分類 ●住居系建物の防火造棟数が最も多い 建物構造については、木造と鉄筋コンクリート造とを比べると、建材が異なることによって確保可能な床面積に影響することから、建物用途ごとに構造の割合は異なります。 建物用途別の構造別建物構成をみると、公共系や専用商業、住商併用で耐火造の建物割合が高い傾向となっています。公共系や専用商業の建物は比較的大規模であるため鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造が多くなっており、耐火造の割合がさらに増える傾向となっています。 これに対し、比較的規模が小さく、新築でも木構造が多い専用住宅では、耐火造の割合は低い状況ですが、耐火構造の割合は増えています。また、農業系については、納屋や温室などには簡素な構造の建物が多いことから、木造の割合が高くなっています。 一方で、集合住宅には、木構造のアパートと、鉄筋コンクリート造のマンションの両方が含まれているため、専用商業や公共系ほど耐火造の割合は高くありませんが、耐火構造の割合は年々増えています。 工業系については、様々な工場の規模や操業内容があることから、それぞれの構造が比較的均等にみられますが、耐火構造の割合は年々高くなっています。