せたがや農業通信 令和5年度 世田谷の農業の概要 世田谷区の農業の概要をまとめた冊子です。 問い合わせ先 世田谷区 経済産業部 都市農業課 電話 03−3411−6658   FAX 03−3411−6635 2ページ 世田谷の農業  世田谷区では、江戸時代より、大消費都市近郊の農村として、様々な農産物を供給してきました。農地面積や農家戸数は年々減少しているものの、現在でも東京23区内では、農地面積は練馬区に次ぐ2番目の規模で、生産される農産物は旬の野菜や果実、季節の花など多岐にわたっています。  都市の農業・農地は新鮮な農産物の供給をはじめ、農業体験などによる地域コミュニティの形成や地域に潤いのある景観をもたらし、農地・農産物を利用した食育・教育、災害時には地域住民の一時的な避難場所としての機能が期待されるなど、多面的機能を有しています。 3ページ まちの畑は役に立つ 農業・農地の多面的機能の紹介 新鮮で安心な農産物の供給  区内で生産される新鮮で安心な農産物は、農家の庭先やJAの共同直売所などで販売されたり、地域の飲食店などで利用されたりするなど、地産地消の実現に役立っています。 やすらぎや潤いをもたらす景観  農地は、住宅が密集する都市部の中で貴重な緑地空間として良好な景観を保持するとともに、人々の心を和ませ、四季折々の季節感を伝えます。 レクリエーションの提供  農地は、区民農園や体験農園などを通じて、農業や自然と触れあうなどレクリエーションの場を提供し、農家と区民との交流の場にもなっています。 食育の場  農業・農地が身近に存在することで、子どもたちが土に触れる機会が増し、農業への理解が深まることで食や農の大切さを学ぶ場になっています。 災害時の防災空間  農地は、災害時の延焼を防止する空間となり、万が一の震災などの際には地域の避難場所、仮設住宅建設用地など防災空間としての役割を果たします。 環境保全  農地は、都市部における緑地空間として、ヒートアイランド現象の緩和、雨水などに含まれる養分の分解による水質浄化など、自然環境を保全しています。 4〜5ページ 世田谷農業の変遷 野菜 江戸〜明治期  江戸時代以降、世田谷区一帯は江戸・東京近郊の農村として発達してきました。米、麦、大豆などの穀物、大根やナス、キュウリなどの野菜、柿や栗などの果実、薪炭などを供給する一方で、江戸まで下肥を汲み取りに出かけ、田畑で用いる肥料にするなど、都市と農村の間に資源循環のシステムが構築されていました。  明治時代の後半に入ると、東京市の急激な市街地化と人口の激増により、膨大な量の食料が必要となりましたが、当時は交通網が充分発達していなかったことから、傷みが早く遠距離輸送に耐えられない野菜や果実の供給は、近郊の農村に依存しなければならない状況でした。  一方、農家側も地租改正以来の税負担が増え、自給自足の経営から現金増収を迫られ、野菜の生産に力を入れるようになりました。加えて、軍施設が世田谷へ移転してきたことにより、膨大な量の野菜の需要が生じ、区内農家は共同体制で出荷することで、多大な利益を収めるようになりました。こうして、世田谷の農業は野菜栽培に主力が移り、二毛作・三毛作が行われ、農業の集約化が始まり、大消費都市近郊の有利性を最大限に活かした野菜の供給地として発展していきました。 大正期  大正時代末期になると、交通機関が発達し、遠隔地の農村でも野菜を出荷できるようになり、地の利だけでは野菜の供給を独占できなくなりました。そこで、区内の軍施設から大量に供出されるボロ(馬糞や敷藁)を利用し、温床による野菜の促成栽培に取り組むようになりましたが、高値で取引され利益の大きいトマトやナス、キュウリ、イチゴなどの促成栽培は、高知県・愛知県など暖地園芸の産地拡大により大規模に生産されたものが東京の市場に参入し、不振となっていきました。さらに、関東大震災(大正12年)後の急激な人口の増加は、東京近郊をも市街地化し、食料の消費も増大させました。  このため、全国各地の農産物が東京の卸売市場に集中し、従来の野菜や穀物の生産だけでは世田谷で農業を経営していけなくなり、離農して自給分だけ耕作する区内農家も数多くいました。 昭和初期  昭和に入ると、時代は戦時体制下へと移り、兵役の召集や軍需産業への動員により労働力は不足し、肥料や農機具の生産も停滞し、農業生産は目立って低下していきました。  また、戦時中から終戦直後は極度の食料難で、生産の主体だった野菜の作付けが統制され、主穀作物(米麦やイモ類)の供出を割り当てられた時期もありました。 戦後  戦後は、昭和22年から25年にかけて行われた農地改革によって、小作農家は自作地を得ることができましたが、反面、面積が小規模で経済的に不安定な自作農家が多数創出されました。  このため、人口増加と地価高騰のなかで農地を売却またはアパート等に転用するなど、農家の兼業や離農が急速に進み、昭和30年を過ぎると、兼業農家が専業農家を上回るようになりました。  世田谷区の代表的な作物としては、一年を通じて栽培できる小松菜などの軟弱野菜、他県の輸送荷と東京近郊の地場荷が出荷される前の端境期に出荷する早採りのキュウリなど果菜類が挙げられます。  この早採りの促成栽培に貢献したのは、昭和20年代末頃から普及したビニール利用によるトンネル栽培でしたが、その後の早期出荷競争の激化や都市化による農地の減少で、集約的な栽培が必要となり、トンネル栽培はビニールハウス栽培へと発展していきました。 現在  農家の多くは面積30アール未満の小規模経営のため、区民ニーズに合わせた様々な種類の野菜を主に露地栽培で生産し、収穫した野菜は農家自身の畑の横などに設置した直売所や、JAの共同直売所などで販売しています。  最近は、地元で採れた野菜を使用する飲食店なども出てきており、また、区立小・中学校の給食にも地元で採れた野菜を使用する機会も増えるなど、地産地消の役割にも貢献しています。  なお、世田谷ゆかりの野菜としては、大蔵大根、下山千歳白菜、城南小松菜などが挙げられます。 果樹  世田谷区一帯では、柿、栗、梅などが古くから栽培されていましたが、昭和30年頃に区内でブドウの栽培が始まり、その後はキウイ、リンゴ、梨、ブルーベリーなども栽培されるようになりました。  区のふれあい果樹園では、ブルーベリー、梨、リンゴ、ブドウ、プルーン、栗、みかんなどの収穫が体験できます。 稲作と水田  世田谷区一帯の地形は、水利の便のよくない台地が大部分を占めていたので、水田は少なく、農地のほとんどは畑でした。江戸時代に玉川上水から分水した農業用水が整備され、用水路周辺には豊かな田園風景が広がっていましたが、昭和30年以降の急激な都市化で農業用水が汚染され、水田の用水として使用できなくなりました。区内の水田は畑地や学校・公園用地、宅地化となり、農業としての水田・稲作は50年代に幕を閉じました。  現在、区内に残っている水田は、次大夫堀公園内にある教育田のみとなっています。 畜産業  世田谷区は23区内の近郊農業地帯の中でも、比較的古くから養豚や養鶏、酪農などの畜産業が行われていました。昭和40年代を境に住宅の増加に伴い減少し、現在はほとんど行われていません。 花き・園芸  世田谷区の花きは、都市近郊の利点を活かし、近代花き園芸の先駆的役割を果たしてきました。  明治33年に当時の荏原郡駒澤町でシクラメン栽培が始まり、大正時代に入ると、世田谷区玉堤から大田区田園調布の多摩川沿岸にガラス温室群が建設され、カーネーションの集団施設栽培が始まりました。  この温室群は玉川温室村と呼ばれ、昭和13〜14年の最盛期には、経営者35名、温室面積4万3千u余、カーネーションを中心にシクラメン、ユリの切り花、洋ラン、観葉植物を生産し、先駆的な栽培技術や農業経営は、全国から注目を集めました。  戦時中の食糧増産に伴う生産統制、兵役召集による労働力不足、資材の制限、温室に使われていた鉄材やガラス等の供出、一部の温室の取り壊し等により、玉川温室村は衰退しました。  戦後は、周辺の宅地化による生産環境の悪化、政府の構造改善事業で、大型温室団地を導入した花き生産が全国各地で行われるようになり、経営者も他県へ移転するなど次第に離散し、玉川温室村は姿を消しました。現在は、温室村があった地のバス停にその名を残しています。  この他、烏山、八幡山を主に昭和35年頃までダリアが、宇奈根では平成初期まで温室バラが栽培されていました。  また、戦前・戦後を通して、盆栽や菊の栽培も盛んに行われていました。  現在は、パンジーやビオラなどのポット苗や花鉢物、トルコ桔梗やユリなどの切り花、枝物、植木等が生産され、市場出荷、農家の個人・JAの共同直売所で販売されています。 6ページ 農業イベント  区では、区内農家が丹精を込めて栽培した花や野菜などを一堂に集め、農家の研鑽と都市農業をPRするための農業イベントを開催しています。イベント期間中は農産物の品評展示会や展示品の即売などの催しがあります。 令和4年度の農業イベントは新型コロナウイルス感染拡大防止のため、一部縮小もしくは中止となりました。 世田谷の花展覧会  4月中旬と11月上旬の年2回、花き園芸農家が丹精を込めて栽培した花(鉢物・花壇苗・切り花・盆栽・アレンジなど)の展覧会を開催しています。  園芸相談や園芸教室、園芸即売市、チャリティー園芸せり市のほか、最終日には展示品の即売が行われます。11月は世田谷区農業祭と同時開催です。 世田谷区夏季農産物品評会  6月中旬に、農家が丹精を込めて栽培した夏野菜(トマト・ナス・キュウリ・玉ねぎ・ジャガイモなど)や果樹(梅・ブルーベリーなど)、花き類の品評会を開催しています。  品評展示会の後には、展示された農産物の即売が行われます。また、農家による新鮮な夏野菜の即売市や園芸即売市などが行われます。 世田谷区農業祭  11月上旬に、農家が丹精を込めて栽培した秋野菜(大蔵大根やその他の大根・ブロッコリー・キャベツ・里いも・小松菜など)や果樹(ユズ・柿など)の品評会を開催しています。  品評展示会の後には、展示された農産物の即売が行われます。また、農家による新鮮な秋野菜の即売会や大蔵大根の即売、区内農産物を使用した宝船の展示や宝船で使用した農産物の即売(宝分け)などが行われます。世田谷の花展覧会と同時開催です。 7ページ 農業体験  区では、区民農園や農業体験農園など、区内にいながら農業体験を楽しむことができます。各事業の詳細は、区のおしらせ「せたがや」または区のホームページをご確認ください。 区民農園  区民の方が土に触れ、自由に花や野菜づくりを楽しむ場として、令和5年4月1日現在、世帯単位で利用する「ファミリー農園」を21園開園しています。農園内には水道、農機具等(クワ・スコップ等)が備えられています。  ファミリー農園の利用期間は、3月から2年後の1月末までの1年11か月です。  募集は例年11月頃、空き区画があった場合のみ行います。 農業体験農園  農業体験農園は、区内の農家が開設し、管理・運営を行う農園です。種や苗、農機具等は園主が用意します。入園者は、園主の作付け計画に従って、指導を受けながら種まきから収穫までの一連の農作業を行うため、初心者でも安心で、高品質の野菜を作ることができます。  利用期間は3月〜翌年1月までの11ヶ月で、募集は例年11月頃、各園に空き区画があった場合のみ行います。 羽根木体験農園 世田谷区代田4-32 13区画 千歳台体験農園 世田谷区千歳台4-4 42区画 桜丘体験農園 世田谷区桜丘5-2 30区画 アグリこうや 世田谷区宇奈根3-8 11区画 上用賀体験農園 世田谷区上用賀3-4 15区画 農作業体験塾  区内農家の指導により、花や野菜の種まきから収穫・出荷までの一連の農作業を体験することができます。体験期間は約3ヶ月で、週1回、2〜3時間程度の農作業を行います。  年2回、3月頃に春(4月〜6月)、8月頃に秋(9月〜11月)の参加者を募集します。 次大夫堀自然体験農園  次大夫堀公園内にある自然体験農園(喜多見5-26)では、農家の指導により農作業を体験し、一定の技術を習得して農業サポーターとして活動できる方を育成する講習会を実施しています。講習会は4月から翌年2月まで、毎月2回程度の開催で、畝作りから種まき、収穫までの一連の作業を体験します。  参加資格は18歳以上の区民で、例年2月頃に募集を行います。 農業サポーター  農業サポーターとは、区内農家が高齢・病気などの理由で営農が一時的に困難となった場合に、農作業を支援するボランティア。 8ページ ふれあい農園  区内の農園で、野菜や果樹の収穫や花の寄せ植えづくり体験を行っています。当日現地にて先着のものや、事前応募が必要なものなど参加方法が異なりますので、詳細は区のおしらせ「せたがや」または区のホームページをご確認ください。  また、前年度の開園状況等をもとに、「ふれあい農園マップ」を作成しています。都市農業課、出張所、まちづくりセンター、図書館等で配布していますので、ご利用ください。 野菜・果樹収穫体験  区内の生産者が栽培した季節の野菜や果樹の収穫を楽しむことができます。とれたての瑞々しさを味わってみてください。 花の寄せ植えづくり体験  区内で花苗や鉢物を生産している農家の圃場で寄せ植え体験をします。  花き生産農家が講師となり、季節の花苗を使った本格的な寄せ植えをつくることができます。 ふれあい農園早見カレンダー いちご狩り 1月上旬〜6月中旬 たけのこ掘り 4月上旬〜中旬 いちごつみとり 5月上旬〜下旬 梅のもぎとり 5月中旬〜下旬 たまねぎの収穫  5月中旬〜下旬 じゃがいも掘り 6月中旬〜7月中旬 親子で夏野菜の収穫 6月下旬〜7月上旬 えだまめの収穫 6月上旬〜7月下旬 夏野菜の収穫 6月下旬〜8月下旬 ブルーベリーつみとり 7月上旬〜8月下旬 ブドウもぎとり 8月中旬〜9月中旬 プルーンつみとり 8月中旬〜下旬 ナシもぎとり 8月上旬〜下旬 リンゴもぎとり 9月上旬〜11月中旬 栗ひろい 9月上旬〜下旬 いも掘り 10月上旬〜12月上旬 落花生の収穫 10月中旬 みかん狩り 11月中旬〜12月上旬 大根の引っこ抜き 11月中旬 親子で秋野菜の収穫 11月下旬 冬野菜の収穫 11月下旬〜12月下旬 花の寄せ植えづくり 11月・1月中旬 トマトの収穫  未定  野菜・果樹の収穫体験等は、生育状況等により実施時期を変更・中止する場合がありますので、ご了承ください。 せたがやそだち使用店  世田谷区では“せたがやそだち”の魅力を発信し、地産地消を推進していくために、メニューに区内農産物を使用している飲食店や販売店等の登録制度を始めました。  制度の詳細や登録店、納品している農家の一覧等は世田谷区ホームページでご覧いただけます。 9ページ 直売所  区内産農産物「せたがやそだち」は、農家の個人直売所やJAの共同直売所、約260ヶ所で購入することができます。  このうち、掲載の了解を得た約120ヶ所の直売所情報を紹介した「世田谷農産物直売所マップ」を発行しています。都市農業課、出張所、まちづくりセンター、図書館等で配布していますので、ご利用ください。 JA東京中央 ファーマーズマーケット千歳烏山 定休日:木曜日 午前10時〜午後6時 世田谷区南烏山6丁目28番1号旧甲州街道沿い 電話番号03-5313-7711 JA東京中央 ファーマーズマーケット二子玉川 定休日:月曜日 午前9時〜午後4時30分 世田谷区鎌田3丁目18 番8号 電話番号03-3708-1187 JA世田谷目黒 農業生産部即売会 開催日:6月・7月・11月・12月の毎週火曜 開催時間午前9時から正午(予定) 世田谷区桜新町2丁目29番1号ファーマーズセンター せたがやそだちのロゴマーク  世田谷区では、区内産農産物のイメージアップとPRを図るため、区内で生産された野菜や果実、花に表示するロゴマーク「せたがやそだち」を、平成11年12月に作成しました。  直売所ののぼり旗や袋、野菜を束ねるテープなどにロゴマークを表示していますので、新鮮で安全な世田谷産農産物の目印にしてください。  キャッチフレーズ「せたがやそだち」と大地に生える双葉をモチーフにしたロゴマーク  商標登録番号5483670号 東京都エコ農産物  東京都エコ農産物は、たい肥等による土づくりの技術を取り入れ、化学合成農薬と化学肥料を都が定めた一般的な使用基準から削減して栽培されます。削減割合に応じて都が認証します。  令和5年1月現在、世田谷区で24農家が認証を受けています。  制度の詳細は、東京都農林水産部のホームページをご確認ください。 世田谷の地場野菜「大蔵大根」  大蔵大根は、江戸時代に豊多摩郡(現在の杉並区あたり)の源内 という農民が作り出した「源内つまり大根」が原種と言われ、後に世田谷の大蔵原に伝わり改良を重ねて「大蔵大根」となりました。円筒形で先端が丸くつまっているのが特徴で、世田谷の各地で栽培されていましたが、青首大根の普及により少しずつ姿を消していきました。  しかし、平成9年に地元ゆかりの野菜を作ろうと区内農家が栽培を再開し、今ではせたがやそだちの野菜の一つとして人気を得ています。大蔵大根は11月中旬〜12月中にJAの共同直売所や農家の庭先販売などで買うことができます。 10〜11ページ 「世田谷の農業」現状レポート 世田谷農業を取り巻く最近の状況  令和4年の農家基本調査(調査対象は経営農地面積10アール以上の区内農家、調査日、令和4年8月1日現在)によれば、区内の農地は77.28ヘクタールで、生産されている農産物は、大根、ジャガイモ、キャベツ、ブロッコリー、トマトなどの野菜、ブドウ、みかん、柿などの果実、パンジー、ビオラなどのポット苗や花鉢物、ユリやガーベラなどの切り花、植木や盆栽等と多岐にわたっています。  江戸時代から続いてきた世田谷区の農業は、昭和21年に制定された自作農創設特別措置法、昭和30年以降の急激な都市化、地価の高騰に伴う高額な税金の負担、他県の大型産地化等により大幅に縮小しました。現在の農地面積は、東京23区内では練馬区に次ぐ規模となっていますが、固定資産税や相続税などの負担、周辺の宅地化で農作業に気を使う、収益が上げにくい、後継者の確保が難しい、農業従事者の高齢化などの理由で農地や農家は年々減っています。  区内農家の60%以上は30アール未満の小規模経営であるため、他県の産地のように特定の農産物を大量生産し、市場へ出荷するのではなく、多品目の農産物を少量生産し、農家の個人直売所やJAの共同直売所などで販売する、都市農業の利点を活かした地産地消(地元で生産した農産物を地元で消費する)が農業経営の主流になっています。 区の取り組み  現在、区では、区内の農業振興と農地保全を図るため、世田谷区農業振興計画に基づき、国の認定農業者制度や区独自の認証農業者制度の導入など、新たな農業振興施策の展開に取り組んでいます。  農地や農家の減少を食い止めるため、特定生産緑地制度や都市農地貸借円滑化法の活用及び税法など諸制度の改正を図る必要があります。これらを進めていくためには、都市部に農地が存在することや都市農業に対して幅広く区民の方々の理解を醸成し、応援団となっていただくことが必要です。そのため「顔の見える農業」の推進に加え、多くの区民に対し、農業者とJA、区の3者が協働して、世田谷農業のPRに積極的に取り組んでいます。  JAとは農業協同組合、世田谷区内のJAは、JA東京中央とJA世田谷目黒です。 農業振興・農地保全に向けて 減少を続ける農地を次世代に残していくために、令和2年2月12日に世田谷区は区内を管轄とするJA世田谷目黒、JA東京中央とそれぞれ都市農地の保全に関する連携協定を締結しています。 また区役所内でも各部門が連携して農地保全ならびに農業振興に取り組んでいく体制を構築し、検討を進めています。 「世田谷区農業振興計画」  区では、世田谷農業が継続的に発展していくためには、長期的・総合的な視点から農業振興施策を推進していくことが必要であると考え、将来に向けた区の農業振興・農地保全の基本方針を明らかにする新しい「世田谷区農業振興計画」を平成31年3月に策定しました。  この計画をもとに区は農業振興と農地保全に積極的に取り組んでいきます。  また、本計画は「都市農業振興基本法」における、世田谷区の地方計画を兼ねるとともに、農業経営基盤強化促進法に基づく「農業経営基盤の強化の促進に関する基本的な構想」として位置づけています。 世田谷区農業振興計画の概要  理念(キャッチフレーズ)  農と住が調和した魅力あふれる世田谷農業  〜未来につなぐ「せたがやそだち」〜  基本方針  1 多様な農業者への支援  2 せたがやそだちの流通促進  3 農業生産・経営の安定化  4 農のある暮らしの充実  5 農地を守るまちづくりの推進 農業者への支援 認定・認証農業者制度  認定農業者制度は、農業経営基盤強化促進法に基づく制度です。農業経営の改善目標(年間農業所得目標が300万円以上)を掲げた農業経営改善計画を農業者自らが作成し、区が世田谷区農業振興計画に照らして認定した農業者を認定農業者といいます。  また、認証農業者制度は、認定農業者制度と基本的な内容はほぼ同様ですが、農業所得の目標額に区独自の認定基準(年間農業所得目標が200万円以上300万円未満)を設けている点で異なります。  令和5年4月1日現在、認定農業者57経営体89名、認証農業者35経営体50名を認定・認証しています。  区では、認定農業者及び認証農業者を今後の世田谷農業の牽引役となる農業者として位置づけるとともに、区内の農業を振興するため、各種施策により積極的に支援しています。 せたがや農業塾  せたがや農業塾は、区内の農業後継者が地域で育まれた農業技術を実践で習得するとともに、農業経営者と後継者、後継者同士の交流を深め、協力関係を築いていくことを目的に、区と区内JAにより平成3年9月より実施している事業です。  1期3年間の講習期間中に、先輩農家を講師に迎え、10種類程度の野菜や花き類について、土壌づくりから播種、収穫までを実践で学んでいきます。  この他、土壌診断・病害虫防除・農薬の使用方法等の講習会の実施、区外の先進的農業団体・優良農家の視察なども行い、農業の基礎的技術及び農業経営の基礎的知識を習得することにより、総合的な農業技術の習得を目指します。  令和5年4月までに、第1 期生から第10期生の138名がせたがや農業塾を卒塾し、現在第11期生が受講しています。 12〜13ページ 都市農地保全の取り組み  都市農業・農地の多面的な機能や環境への有用性が再評価される一方で、都市農地は、高地価という地域特性を有しており、相続に伴う宅地などへの転用により減少に歯止めがかかっていません。  このため、その対応が喫緊の課題となっており、区では農地保全に向けた活動に積極的に取り組んでいます。 都市農地保全推進自治体協議会  世田谷区を含む都内38自治体にて構成される「都市農地保全推進自治体協議会」は、都市農業振興や都市農地保全を推進するため、各種PR活動を行うとともに、国に対して農地関係法・都市計画関係法、関係税法等の改正を要望するなどの取り組みを行っています。 特定生産緑地制度への移行促進  生産緑地として指定されている土地は、税制面でのメリットがある一方で、適正管理義務と農業用施設以外への転用ができないといった制限があります。令和4年に都内にある生産緑地の8割以上が指定解除となる30年目を迎えるため、  宅地への転売等が多く発生し、都市部での農地減少が危惧されていました。平成30年4月に特定生産緑地制度が施されました。この制度は生産緑地の指定を10年間延長できるというもので、税制面での優遇も引き続き適用されるというものです。  世田谷区では、指定から30年を迎える生産緑地の約9割が、特定生産緑地制度に移行する見込みです。今後もこの制度への移行に向けて区内JAとも連携を図りながら取り組んでいきます。 世田谷区農福連携事業  区では区内の農地保全と生涯のある方の就労促進、工賃向上を図るため、令和3年度より農福連携事業に取り組んでおります。令和4年度には、事業拠点とするため、粕谷2丁目の農地3,400平米を取得しました 本事業では障害のある方とともに農園管理を行い、障害のある方を対象とした農作業体験会の実施や、収穫した農産物の販売、加工を実施します。今後農園を通じた地域の方々との交流・連携や地域の事業者・団体との連携を進めていき、農地の保全や障害理解の促進、ひいては地域社会の活性化を目指いしていきます。 農の風景育成地区  農の風景育成地区は、都市の貴重な農地を保全し、農のある風景を維持していくために、東京都が平成23年に創設した制度です。  農地や屋敷林が比較的まとまって残る地区を区市町村の申請により東京都が指定し、双方が協力して、地域のまちづくりと連携しながら農のある風景を保全し、育成していくこととしています。  区では、「農地保全方針」に基づき、農地保全重点地区の中で、農地や樹林地の割合が高く、農の風景育成地区制度の趣旨に最もかなっている「喜多見4・5丁目地区」について、平成25年5月に都第1号の指定を受けました。  現在、都内で5ヶ所が農の風景育成地区に指定されています。 世田谷区農地保全方針  区では、農地の減少傾向を少しでも食い止めるため、現行制度の枠組みの中で、できる限りの方策をとるという基本的な考えに立ち、平成21年10月に「世田谷区農地保全方針」を策定しました。  生産緑地及び宅地化農地、屋敷林等が比較的多く、一団で存在する7地区を選び、農地保全重点地区として指定し、農地等保全の取り組みと農地を活用したまちづくりを進めることとしました。 農地保全重点地区の取り組み  農地保全重点地区では、生産緑地地区制度により農地を保全するとともに、地区ごとの特性に応じた農地や屋敷林等の保全策を講じたうえで、農業振興等拠点の整備を図ることとしています。  農地等の保全策  @宅地化農地を生産緑地に追加指定する  A宅地化農地を区民農園、苗圃等として活用する  B屋敷林を市民緑地、保存樹林地等に重点的に指定する  C保存樹林地の支援を拡充させていく 農業振興等拠点の整備・活用  農業振興等拠点とは、各農地保全重点地区に1ヶ所以上、一群で1ヘクタール以上の規模の農地等を農業公園として都市計画公園・緑地に指定し、農地を活かしたまちづくりを行う拠点として活用していくものです。  農業公園用地については、所有者が相続等によって農地等を手放さざるを得なくなったときに、区が取得し整備することを検討します。  令和4年度末現在、地区の重点7地区で、8ヶ所、約11.4ヘクタールの面積について、農業公園としての都市計画公園・緑地としての手続きを終えています。  農地等の取得後は、区民参加型農園や教育・福祉農園などへの活用を検討していきます。 都市農業振興基本法と都市農業振興基本計画  平成27年4月、都市農業振興基本法が成立し、翌年5月には都市農業振興基本計画が策定されました。  基本法では、都市農業の振興に関する基本理念を明らかにするとともに、政府に対し、必要な法制上、財政上、税制上、金融上の措置を講じるよう求めています。  この基本法第9条に基づき、都市農業の振興に関する基本的な計画として、これからの都市農業の持続的な振興を図るための施策の総合的かつ計画的な推進を図るために、都市農業振興基本計画が策定されました。  現在、この基本計画に沿って、都市農地に関する法改正等が進められています。 14ページ、15ページは 数字でわかる世田谷の農業 令和4年8月1日の調査をもとに作成した、様々なデータのまとめです。 詳細はお問い合わせください。 問い合わせ先 世田谷区 経済産業部 都市農業課 電話 03−3411−6658   FAX 03−3411−6635 令和5年4月 せたがや農業通信の音声コード用の内容は以上です。