世田谷若者総合支援センタ ー メルクマールせたがや 事業 報告 書 令和4年度 年度 月 QR コード 自動的に生成された説明 テキスト 自動的に生成された説明 事業運営 公益社団法人 青少年健康センター【茗荷谷クラブ】 目 次 Ⅰ.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 Ⅱ.事業概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 1.メルクマールせたがやの理念・体制 2.活動内容 3. 世田谷区の若者支援ネットワーク Ⅲ.活動実績 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 6 1.実績数値 2.利用状況 3.相談登録ケースに関する分析 4. ティーンズサポート事業 Ⅳ.支援効果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 1.利用 主体の変化 2. 利用者の社会参加に向けた 変化 3. 利用者の他機関との つながり Ⅴ. 世田谷 ひきこもり相談窓口「リンク」 ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 1. 概要 2. 「リンク」における活動実績 3. メルクマールせたがやから「リンク」登録となったケースの特徴 Ⅵ .事例報告 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54 1. 相談員や居場所など他人と接することで“自分”を取り戻した 10 代の事例 2. 居場所を利用したことで“生活のしづらさ”を理解できるようになった事例 3. 家族 の相談からひきこもり男性への訪問支援に つなが った事例 4. 世田谷ひきこもり相談窓口「リンク」の利用から本人がメルクマール せたがや の居 場所を利用し始めた事例 Ⅶ .メルクマールせたがや利用者の声 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60 1. アンケート結果 2. 本人 の声 3.家族・その 他 の声 Ⅷ .広報・啓発活動 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 8 1.広報・啓発活動 2.視察・見学対応 Ⅸ . 令和元年度~令和 5 年度 支援方針に基づく取組みの進行状況 ・・・・・・・・ 72 1. 令和 4 年度の取組み状況 2. 令和 5 年度の 取組 み Ⅰ はじめに Ⅰ.はじめに メルクマールせたがやは、平成 26 年 9 月の開設以来、世田谷区の生きづらさを抱えた若者の支 援の中心機関として、若者の社会参加の準備に取 り 組んできました。これまでの若者支援の実践は、 個別の相談や登録制の守られた空間での居場所活動を中心に、家族支援やアウトリーチ活動 (p .7 8 用語解説参照 ) にも注力してまいりました。職員は公認心理師、臨床心理士と心理の専門家を中心に 構成されており、利用者の話を丁寧に聴き、 その 情報をもとにアセスメント ( p .7 8 用語解説参照 ) し、 実態把握に努めながら必要な支援の提供を行ってきました。令和 4 年 4 月に、三軒茶屋駅にほど近 い ST K ハイツに移転しました。せたがや若者サポートステーションとぷらっとホーム世田谷とと もに複合施設の 1 機関となり、 2 機関とは日頃から顔の見える地続きの連携をしています。 令和 3 年度までは、若者対象の機関 として 、 39 歳までという年齢上限 を設けておりましたが、 ひきこもり支援が年齢上限によって区分けされる状況 が 課題となっていました。世田谷区は令和 3 年 3 月にひきこもり支援に係る基本方 針 を 策定 し 、令和 4 年 4 月に世田谷ひきこもり相談窓口「リ ンク」 を 開設 し ました。この窓口は、これまで社会的に困窮したり、孤立した当事者を年齢問わず 支援してきたぷらっとホーム世田谷とメルクマールせたがやの 2 機関 が 協力 して運営しています。 利用対象の拡充に伴い、所管課も子ども・若者支援課から生活福祉課に移管されました。ひきこも りに係る相談窓口が明確化されることにより、ひきこもり当事者やその家族だけでなく、地域包括 との連携、特に高齢福祉の支援機関との連携も新たに動き始めました。長年ひきこもる中高年の子 の生活を親が支え、地域から孤立し生活が立ち行かなくなる 、いわゆる 8050 問題においても 、複 合的な課題を抱え、人や社会とのつながりが絶たれた家族の孤立が 顕在 化しています。 内閣府 が発表した 、こども・若者の意識と生活に関する調査 ( 2023 ) によると、 15 歳から 39 歳ま で の若者層のひきこもりは 2.05% 、 40 歳から 64 歳まで の中高年層のひきこもりは 2.02% と、 過去 の 調査よりも割合が 増加しており、コロナ禍での 社会 生活 による 影響 がうかがえます 。ひとりでも 多くの当事者とつながり必要な支援を届けられるように、地域の関係機関と連携を密にして、お互 いの強みを活かしながら、知恵を出し合いながら世帯全体を支援していくことが求められています。 メルクマールせたがやは、これまでの若者支援と 、 令和 4 年度から の 全年齢対象のひきこもり相 談支援が活動の 2 本柱となっています。若者支援の取組みでは、早期支援を目的に平成 28 年度よ りティーンズサポート事業を重点的に取 り 組んできました。令和 4 年度においても、 10 代、 20 代 の新規相談登録の割合が高くなり、早期支援の取組みが実を結 びつつあります。また、居場所を登 録した利用者数が 72 名と、こちらも 開設 以来最も多い人数となりました。個別相談から交流の場 である居場所へと活動が広が っていく 若者の姿に、支援者のひとりとして元気をいただいています。 ひきこもり相談支援 において は、新規相談登録の家庭数が 122 件と開所以来最も多くなりまし た。これは、メルクマールせたがやの若者支援の取組みに加え、「リンク」が開 設 され たことによる 相談者の掘り起こしが増加の一因になっていると感じています。「ひきこもり」が個人の課題では なく社会的課題と認識されるようになり、当事者やその家族が SOS の声をあげる先として、行政 に明確な相談窓口が設置されたことは有意義であったといえるのではないでしょうか。 令和 5 年度は、メルクマールせたがやが開設 10 年目という節目を迎えます。これまでの若者支 援に加え、新たに全年齢対象のひきこもり相談支援が始まりましたが、当事者の声を大切に し、当 事者の尊厳を尊重しながら、伴走型支援に取 り 組んでまいりますので、ご指導ご鞭撻のほど、よろ しくお願い致します。 令和 5 年 5 月 メルクマールせたがや施設長 廣岡武明 Ⅱ 事業概要 1. メルクマールせたがやの理念・体制 2.活動内容 3.世田谷区の若者支援ネットワーク Ⅱ.事業概要 1.メルクマールせたがやの理念・体制 メルクマールせたがやは、ひとりひとりの 相談者を大切にするその理念として、 3 つの CHA を掲げ、ひきこもり などの 様々 な理由から社会との接点が持てず、生きづらさを抱えた方 及び そ の家族に対して、多様な自立や相談者の 望む生き方 をサポートする ことを目的に、相談支援 ( 来 所・訪問 ) 、居場所支援、家族支援 ( 家族会・出張セミナー ) 、他機関連携を実施している。 CHA NCE -きっかけ作り- 不登校やひきこもりなどで生きづらさを抱えた 方 やその家族を対象に、変化に向けた一歩を 踏み出す・動き出すきっかけを作るための支援をします。 CHA LLENGE -挑戦・動き出し- 活動やプログラムを通じて、新たなものに挑戦していくことをサポートします。 また、利用を重ねることで、自信をもって自立に向かえるよう支援します。 CHA NNEL -つながり- 他の支援機関とつながり、連携をします。人とのつながり、関係性が生まれることにより、 メルクマールせたがやを利用された方が再び社会とつながることができるよう支援します。 3 つの CHA -メルクマールせたがやの理念- 【対象】 区内在住の中高生世代以上の方とその家族。 なお令和 3 年度まで、本人 ( p .7 8 用語解説参照 ) が 39 歳まで の方とその家族 を 継続的な支援の 対象としていたが、令和 4 年度から は、①メルクマールせたがや利用者で 40 歳を迎えた方、 ②世田谷ひきこもり相談窓口リンクを経てメルクマールが継続的な相談を行う方、について年 齢上限を撤廃し相談支援を行っている。 相談者が 18 歳未満の場合、利用登 録には保護者の了 承を必要とする。協定大学に在籍する学生は、住所地に関わらず利用できる ( p. 9 ) 。 【開室日・時間 】 月曜日~土曜日 ( 祝日、年末年始は除く ) 10:00 ~ 1 8 :00 【料金】 無料。ただし、本人に精神疾患、発達障害 など の診断があり、医療機関を利用 している 場合は、 居場所利用にあたって主治医の意見書が必要であり 、その費用は自己負担となる。 また、居場 所のプログラムにおいて、材料費の実費負担として参加費を徴収するものもある。 【職員 】 公認心理師・ 臨床心理士・精神保健福祉士 、社会福祉士 の有資格者 もしくは 若者 ・ひきこもり 支援 の専門性を有する者で構成される。 令和 4年度は職員 24 名 ( 常勤 7 名、非常 勤 17 名 ) 、開 室日平均 10 名の人員体制であっ た。 2.活動内容 1 ) 相談支援 相談支援は、来所相談、訪問相談、出張相談を展開している。インテーク ( 初回面接 ) にて相談 者の話を丁寧に聴き、本人 及び 家族の悩みや心配事、要望などの相談内容を把握する。相談を継 続する中で問題・課題の解消に向けた適切な支援を行っている。来所による個別相談は担当制で 実施しており、家族からのみの相談も行う。 寝室の一角にあるソファー 中程度の精度で自動的に生成された説明 カウンターに置かれている部屋 低い精度で自動的に生成された説明 訪問相談は、原則本人 ・家族 の了解を前提とし、家族から 本人の状態、家庭での生活状況 など の情報収集を行い、本人とつながることを目的として実施している。必要に応じて、他機関と 連携して訪問を 検討し、実施する。 出張相談は、メルクマールせたがやの相談員が区内関係機関・公共施設に出張し、区内遠方地 域での相談支援、他機関とのより円滑な連携を目的に行っている。令和 2 年 6 月より区内 5 つの 総合支所の区民相談室を利用し た 出張相談会を各支所隔月 1 回の定例で開始した。 令和 3 年 4 月 から烏山総合支所のみ月 1 回の 定例で実施していたが、令和 4 年 4 月からは区内 5 つの総合支所 全てにおいて、月 1 回の定例実施となった。また希 望丘青少年交流センター「アップス」におけ る出張相談は、平成 31 年 2 月より開始し、毎月第 2 木曜日に実施している。いずれの出張相談 も 1 回 30 分程度の相談を受けている。 ひきこもりなど生きづらさを抱え遠方からの利用を負担 に感じる方にとって、身近で相談できる機会となっている。 ( アップス出張相談会 ) チラシ ) ( 5 総合支所 出張相談会 ) テーブル 中程度の精度で自動的に生成された説明 新聞紙の文字 中程度の精度で自動的に生成された説明 2 ) 居場所 支援 部屋に備えている様々な家具 中程度の精度で自動的に生成された説明 居場所は社会参加のきっかけづくりのために通うことのでき る 交流 の場である。居場所への参加は、グループ登録制として いる。登録制の居場所にすることで、ひきこもりなどの生きづ らさを抱えた 若者 が 安心 ・ 安全 感を持ちながら他者 と の交流体 験を積み重ねていく場となっている。 【対象】 メルクマールせたがや利用者で、居場所登録 をした 39 歳までの 若者 ※ 居場所 登録をせずに参加できるオープンプログラムも 月 8 回程度開催 ( メルサポ 2 回含む ) 【開室日・時間】 月曜日~土曜日 ( 祝日、年末年始は除く ) 午前の回 10:30 ~ 12:30 午後の回 14:00 ~ 16:00 ※イベントの際はこの限りではない 【活動グループ】 グループ名 活動日 説明 Morningグループ 火AM 金PM 人数制限のないグループ。活動日は週1~2回。 Dayグループ 金AM 火PM 人数制限のないグループ。活動日は週1~2回。 First Stepグループ① 水PM(隔週) 定員5名の少人数グループ。活動日は隔週1回。 First Stepグループ② 月PM(隔週) 定員5名の少人数グループ。活動日は隔週1回 令和 4 年度は 4 つのグループで活動した。 利用者は 登録の際にいずれかのグループに所属す る 。 メンバーが固定されている 活動グ ループの他に、グループ 制限 のない フリータイム、イベン トや 居場所 登録者以外でも参加可能なオープンプログラムを実施している。 【 オープンプログラム 】 グループ登録前に参加可能なプログラム。居場所登録を検討しているが居場所の他利用者や雰 囲気のイメージがわからなかったり、どのように過ごしたらいいか不安を抱えていたりする方 向けに簡単な運動や座学形式の講座、近所を散策するプログラムなど 、 不安を抱えた方でも参 加しやすいようプログラム内容を工夫し実施している。 【メルサポ】 若者の中には、「支援」「相談」に対して構えのある 方 もいる。そこで、相談を経ずに 予約もな しで 「気軽にふらっと立ち寄れる居場所」として、 平成 30 年度より世田谷若者総合支援セン ターをともに 担う就労支援機関の せたがや若者サポートステーションと共同で実施している。 毎月 祝日を除いた 第 1 、 4 土曜日に実施 している。主に 2 機関 の利用者が集う場所となり、様々 な段階にいる参加者同士の交流が図られ ている 。 テキスト 中程度の精度で自動的に生成された説明 テキスト が含まれている画像 自動的に生成された説明 ( メルサポチラシ表 ) ( メルサポチラシ 裏 ) 【居場所スケジュール】 イベントやプログラム名を記載した 居場所スケジュールは、毎月作成して利用者に配布・周知 している。 カレンダー 自動的に生成された説明 ( 令和 5 年 3 月号 ) 3 ) 家族支援 ( 家族会 ) 家族会には、講 演会 による「 学び 」、家族同士の「交流」の 2 つの要素がある。特に、家族同士の交流は家 族会 特有の機能であり、家族のピアサポート ( p . 7 8 用語解説参照 ) の 場とな っている。基本的に家族会の前 半が 本人理解や接し方などの 家族セミナー、後半が 同じ悩みを抱える 家族 同士の 交流会で構成される が、令和 4 年度は新型コロナウィルス感染症対策のため 、 令和 3 年度 に引き続き 交流会は休止してい る。 他支援機関と つなが りがなく、悩みながらも個別相談へのハードルが高いと感じて孤立しがちな ご家 族に向けて、聴講で参加できる家族会は支援機関へとつながる入口機能となり、孤立防止と早期 介入を 目的に 行っている。 【対象】 家族会:区内在住の ひきこもりなど 生きづらさを抱え た方 の家族 ( 年齢は問わない ) 【開催日・時間】 毎月第 3 土曜日 10: 3 0 ~ 12: 3 0 ( ※ 8 月を除く ) 【 令和 4 年 度家族 支援 実施内容 】 カレンダー 自動的に生成された説明 4 ) 出張セミナー 出張セミナーは、 メルクマールせたがやがある世田谷地域以外の 4 地域 ( 北沢・玉川・砧・烏山 ) で の 利用者の掘り起こし、若者支援の普及啓発・広報活動を目的としている。平成 28 年度より、世 田谷若者総合 支援センターとしてせたがや若者サ ポートステーションと共同で開催し ており、これま で精神科医やファイナンシャルプランナー など による講演を行うことにより 、 地域の方々に事業を理解 してもらうきっかけ にもなって いる 。 【対象】 対象要件なし 【開催日・時間】 年 4 回 13:30 ~ 16:00 【令和 4 年度出張セミナー実施内容】 第 1 回 令和 4 年 6 月 4 日 祖師谷区民集会所 「自立 するとは?~様々な事例から自立を考える~」講師:栗田明子氏 ( 帝京大学講師 ) 第 2 回 令和 4 年 9 月 3 日 上野毛地区会館大会議室 「子どもをサポートするコツ ~親にしかできないこと、親だからできないこととは?~」 講師:柴田泰臣氏 ( 就労移行支援事業所ビルド神保町施設長 ) 第 3 回 令和 4 年 11 月 26 日 上北沢区民センター多目的室 「ひきこもりのサバイバルプラン~親亡き後を生き抜くために~」 講師:畠中雅子氏 ( ファイナンシャルプランナー ) 第 4 回 令和 5 年 3 月 18 日 梅丘パークホール ( 北沢区民会館別館 ) 「ひきこもりの対話的支援」講師:斎藤環氏 ( 筑波大学教授 ) ※ 来場、オンライン併用開催 5 ) 他機関連携 他機関連携は、 「つながる・つなげる支援」として 社会への自立の一歩、暮らしやすさを支援す る上で必須である。 子ども・若者支援協議会 ( 次項 参照 ) のもとに「不登校・ひきこもり支援部会」 「思春期青年期精神保健部会」 、重層的支援協議会のもとに「 ひきこもり・就労支援部会 」 ( p. 47 ) 、 「 8050 支援部会」が位置付けられている。 区内には就 労、障害、生活などの支援機関が多く存在 し、 各協議会のネットワークおいて、 本人のニーズにあった適切な機関と顔の見える連携を目指 してきた。 また、世田谷区と区内大学とで若者支援に関する協定が結ばれ、平成 27 年度よりひきこもり などの学生支 援、若者の身近な居場所づくりを進めている。令和 4 年度現在、昭和女子大学、日 本大学文理学部の 2 校との連携を実施している。 ダイアグラム 中程度の精度で自動的に生成された説明 ① 個別ケース検討会議 複合的問題を抱える利用者の支援に は、 多機関・多職種が互いの専門性を活かし合うことが 大切となる。機関同士の情報交換や支援状況の共有、支援方針の決定、役割分担などを目的に 開催する。 子ども・若者支援協議会と重層的支援協議会のもとに位置づけられた担当者レベルでの会議 のため、出席者は各機関における実務担当 者を中心に構成される。会議の内容や知り得た情報 に は守秘義務が課せられる。 メルクマールせたがやは、世田谷区の子ども・若者支援指定機関 として、子ども・若者育成支援推進法に基づく個別ケース検討会議を開催することができる。 ②せたがや若者サポートステーションとの連携 せたがや若者サポートステーションとは、世田谷若者総合支援センターを担う機関 として 、 密に連携して若者支援に 取 り 組 んでいる。同じ建物という立地条件を活かし、文字通り 担当者 同士の 「顔の見える連携」ができることで迅速な対応につながっている。 また、世田谷若者総合支援センターとして、 合同での出張 セミナ ー ( p.8 ) 、「メルサポ」 ( p.6 ) や心理教育的なワークショップを中心とした「メルク・サポステ合同プログラム」などの居場 所プログラム を開催し ている。 3.世田谷区の若者支援ネットワーク 世田谷区は、 平成 27 年 2 月 に子ども・ 若者育成 支援 推進法 第 19 条に基づき、主に区内の子ど も・若者支援に関する機関の連携を円滑に進める ことを目的とした 「 世田谷区 子ども・若者支援 協議会」 を 設置 した 。会議体は代表者会議、実務者会議、個別ケース検討会議に区分され る。 機 関同士の情報共有、支援内容の協議 など 関係機関連携を強化することにより、 ひとつの 機関で区 内の若者を支援するのではなく、区全体で総合的かつ継続的な支援を実施 するためのネットワー クが構築されている 。 以下の表は、子ども・若者支援協議会の開催状況である。メルクマールせたがやは、子ども・ 若者育成支援推進法による子ども・若者指定支援機関として、実務者会議となる「不登校・ひき こもり支援部会」と、「ひきこもり・就労支援部会」 ( p. 47 ) の事務局を務めてきたが、「ひきこも り・就労支援部会」は令和 4 年 3 月に設置された世田谷区重層的支援協議会に移管されることと なった。 協議会名年間開催数 世田谷区子ども・若者支援協議会2回 不登校・ひきこもり支援部会3回 思春期青年期精神保健部会2回 協 議 会 関 係 1 ) 不登校・ひきこもり支援部会の主な取組み 不登校・ひきこもり支援部会は主に 10 代の若者に係る支援機関や教育機関で構成される。令 和 4 年度に開催された全 3 回の 内容は表の通りである。不登校・ひきこもり支援部会 で は、 不登 校・ひきこもりや若者支援に係る話題提供を行い 、参加している委員が積極的に意見・発言 を交 わす区内外の支援情報の共有の場となっている。 各機関の顔つなぎの場として機能し、構成機関 同士の連携が強化されている。 また、令和 4 年度は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、第 1 回は参加形式をオンラインと来場から選択できるハイブリッド形式で開催した。第 2 回、 3 回 は、会場での対面開催へと切り替えた。 また、 毎年度各構成機関の支援活動の理解を目的として、構成機関別事業一覧を作成している。 平成 30 年度 からは、 10 代の若者 及び その家族向けに構成機関の情報をまとめた広報紙 を作成し ている 。 第 1 回 5月 26日(木) 第 2 回 10月 27日(木) 第 3 回 2月 16日(木) 【内容】 ・部会説明 ・不登校・ひきこもりに係る今年 度の取組み 各構成機関から 【内容】 ・話題提供 世田谷区世田谷中学 校 不登校特例校分教室「ねい ろ」より ~ねいろ分教室の活動 報告~ 【内容】 ・話題提供 希望丘青少年交流 センター「アップス」、子ども・若 者部児童課、玉川台児童館、 障害保健福祉課より 各施設における 「世田谷区の 居場所/サードプレイスについ て」紹介 意見交換 【不登校・ひきこもり支援部会構成機関】 保健福祉センター健康づくり課世田谷区児童相談所NPO法人東京都自閉症協会 みつけばハウス 保健福祉センター子ども家庭支援課都立世田谷泉高等学校野毛青少年交流センター 保健福祉センター保健福祉課都立中部総合精神保健福祉センター希望丘青少年交流センター アップス 障害保健福祉課都立松沢病院池之上青少年交流センター 生活福祉課世田谷区発達障害相談・療育センター「げんき」男女共同参画センターらぷらす 児童課NPO法人日本子どもソーシャルワーク協会(事務局)メルクマールせたがや 教育相談・特別支援教育課 総合教育相談室特定非営利活動法人 まひろ(エリア・ワン)(事務局)子ども・若者支援課 (オブザーバー)世田谷保健所健康推進課 【世田谷区子ども・若者支援協議会説明図】 ダイアグラム 自動的に生成された説明 Ⅲ 活動実績 1.実績数値 2.利用状況 3.相談登録ケースに関する分析 4.ティーンズサポート事業 Ⅲ .活動実績 1.実績数値 平成 26 年度から 令和 4 年 度までの メルクマールせたがやの実績数値は表の通りである。 メルクマールせたがや【令和 4 年度利用実績】 H26~R元年度 合計 R2年度 合計 R3年度 合計4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月合計累計 ケース登録あり1427931273776291309368333345337375319396302349416414025322 リンク対応件数※1252032345135486057364762507507 ケース登録なし4557181161011161281221241820352038101473431983857332339411383408380435400477356416513485026639H26~R元年度 合計 R2年度 合計 R3年度 合計4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月合計累計 318330338349362361364364376384392394563888312915145751399519122856280607601416451113330446330338349362361364364376384392394410H26~R元年度 合計 R2年度 合計 R3年度 合計4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月合計累計 83381672149492107111132120154152151142139169200166913173H26~R元年度 合計 R2年度 合計 R3年度 合計4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月合計累計 1162322103301020131151764577576665787344494179102083223172734301716312653840252525545443461017132100100120119H26~R元年度 合計 R2年度 合計 R3年度 合計4月5月6月*7月8月9月*10月11月*12月1月2月3月*合計累計 82222925215133015261431171216842731576*:出張セミナー実施月 H28~R元年度 合計 R2年度 合計 R3年度 合計4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月合計累計 69505154616364667276808412831334147322644495024296183523010110000002617550515461636466727680849317294255674744594749476250505257846483369626746779865410791418072591861544356101211610771329H26~R元年度 合計 R2年度 合計 R3年度 合計4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月合計累計 3915231222223222222410135513219591816161722261619201919217899H26~R元年度 合計 R2年度 合計 R3年度 合計4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月合計累計 111111111111111432172534333737※5月はプレ実施   ※2:平成26年度~令和元年度の訪問実施件数は、希望丘青少年交流センターの出張相談を除く件数 ※1:リンク対応件数:「リンク」の相談にメルクマールせたがやの職員が対応した相談件数 1228 延べ居場所利用者数 ティーンズサポート事業 ※平成28年度より開始 先月末日の累計登録ケース数 当月中の新規登録ケース数 当月中に終結したケース数 (20代に達したケースを含む) 当月末日の登録ケース数 訪問相談実施件数※2 出張相談(5支所)実施件数 出張相談(希望丘青少年交流センター アップス)実施件数 延べ相談件数(来所) R2年度までは訪問・出張相談含む 延べ相談件数(訪問/出張相談) 家族会の参加人数 延べ参加者数 延べ参加者数(再掲) 延べ利用者数(延べ人数) メルサポ 当月末日の登録ケース数 活動ルーム(居場所機能)の延べ利用人数 実施回数 延べ参加者数 むすびば 実施回数 アウトリーチ関連数値 個別ケース検討会議の開催数 他機関主催の個別ケース検討会議の出席数 当月中に終結したケース数 登録ケース数の増減について(実ケース数) 先月末日の累計登録ケース数 当月中の新規登録ケース数 延べ相談対応件数(単位:人) 延べ相談対応件数 合計 1 ) 相談 支援 ① 新規 相談登録 件数 N=122 N=83 新規 相談 登録とは、インテーク ( 初回面接 ) を行った後に受理会議を実施し、メルクマールせ たがやで受理したケースのことを指す。 令和 4 年度新規 相談 登録件数は 122 件で、 平均する と 毎月 約 10 件 が 新たに 来所している 。 令和 3 年度新規相談登録 8 3 件と比較すると、令和 4 年度新規相談登録は 39 件 増加 した。月別に 見る と、 3 月が 19 件と最も多かった。 また令和 4 年度は新規相談登録件数 122 件の内、 20 代が 49 % ( 60 件 ) を占め、令和 3 年度の 42 % ( 35 件 ) よりも割合が増加した 。 平成 26 年開所から令和 4 年度まで、新規相談登録ケースの年齢分布の推移について上図に 示す。 20 代は年度毎にばらつきが見られるが、 30 代は 1 割となり開所当初から 減少傾向にあ る。一方 10 代の割合は令和元年度に一度減少しているが、再び増加している。新規相談に関 しては、若年齢化が進んでいるといえる。 ②ひきこもり者数割合 N=122 N=83 次に、ひきこもり者数割合について上図 に 示す。メルクマールせたがやでは、 将来ひきこ もりに移行する 可能性のある 6 ヵ月未満の 準ひきこもりを含めてひきこもりとして定義して いる 。 令和 4 年度新規相談登録件数の内、ひきこもり状態は 55 % ( 67 件 ) だった。平成 26 年 の 開所から令和 2 年まで新規相談登録件数のうち、ひきこもり状態 にある利用者の割合 は約 6 割を維持してきた。令和 3 年度は開所以来初めて、ひきこもり状態ではない「それ以外」が 58 % ( 48 件 ) と上回った。 * ひきこもりの定義 ( 厚生労働省 「 ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン 」 より ) 様々な要因の結果として社会的参加 ( 義務教育を含む就学,非常勤職を含む就労,家庭外での交遊など ) を回避し,原則的には 6 ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態 ( 他者と交わらない形での 外出をしていてもよい ) を指す現象概念。 * 準ひきこもりの定義 ひきこもりの定義のうち、 6 ヵ月という期間にこだわらず、将来的にひきこもりに移行する可能性が高い状態 ③ 終結件数 終結とは、就労や就学、他機関の利用 など 様々な理由でメルクマールせたがやの利用 を 終了 したケースを指す。 令和 4 年度の 全 終結件数は 30 件 で、開所した平成 26 年度を除き最も少な い終結件数となった 。 令和 4 年度は 世田谷 ひきこもり相談窓口「リンク」開設に伴い、メルク マールせたがやにおいても対象年齢上限が 撤廃され、 40 歳を迎える年度を迎えた層の大半が 継続的な利用を希望した。 また、何かあ ればいつでも利用再開できるようにと、メルクマール せたがやの実質の利用は な くとも登録を残しておきたいと希望する利用者も多くいる。これら のことから、令和 4 年度は終結件数が少なかったといえる。 終結理由などに関する詳細は、終結理由内訳 ( p. 29 ) に て述べる。 ④ 延べ相談件数 延べ相談件数は、 来所 相談、 訪問相談、 電話・文書対応などあらゆる方法での相談件数を合 計した数値である。 令和 4 年度は 、 月 平均 約 404 件の相談 対応を行った 。 平成 26 年度開所から令和 4 年度までの延べ相談件数を上図に示す。 平成 29 年度 以降 、延べ 相談件数は年間 3,000 件を超える数値で安定している。 特に令和 4 年度は開所以来最多の相談 件数で、平成 26 ~ 28 年度を合わせた 5000 件に近い数字となった。相談件数の大きな増加の 背景には、 世田谷 ひきこもり相談窓口「リンク」の開設、メルクマールせたがやの移転による 影響があると考えられる。「リンク」が開設 されたことで、若者総合支援センターとしてのメル クマールせたがやを改めて知ってもらう機会と なった と思われる 。また三軒茶屋駅近くに移転 したことで、本人、家族共にメルクマールせたがやへ通いやすくなったという声が聞かれる。 ⑤延べ 訪問相談 ・出張相談 件数 訪問相談件数とは、利用者の自宅への訪問相談と、 こころスペースや 関係機関に出向いての出 張相談、関係機関への同行など、メルクマールせたがや以外の場で相談を実施した延べ件数であ る。 メルクマールせたがやのスタッフが、 世 田谷 ひきこもり相談窓口「リンク」として対応した 訪問や出張相談、関係機関への同行 など の件数も含まれる。 出張相談件数とは、希望丘青少年交流センター「アップス」と世田谷区役所 5 総合支所で相談 を実施した延べ件数である。 令和 4 年度の延べ訪問相談・出張相談件数は 320 件であった。令和 3 年度と比較して 141 件 増加した。なお、令和 4 年度においては、インテーク訪問 ( p.7 8 用語解説参照 ) を行った ケー スは 0 件であった。 出張相談会場別件数については 次 の表の通りである。 【令和 4 年度出張相談会場別相談件数】 会場 利用者 関係機関 合計(件数) 世田谷総合支所 3 8 11 北沢総合支所 5 3 8 玉川総合支所 7 0 7 砧総合支所 12 1 13 烏山総合支所 7 0 7 希望丘青少年交流センター「アップス」 8 1 9 平成 31 年 2 月より、希望丘青少年交流センター 「アップス」 での出張相談を月 1 回定例で 実施して おり、 令和 4 年度の延べ相談 件数 は 9 件 であった 。 令和 2 年 6 月より、区内総合支所 4 か所 ( 世田谷・北沢・玉川・砧 ) での出張相談を隔月 1 回、 令和 3 年度 4 月より 烏山地域のみ 月 1 回 に拡充し 、令和 4 年 4 月より全ての地域で月 1 回実 施 へと 回数を 拡充 している。 出張相談の 相談件数 の合計 は 延べ 4 6 件であった。各 総合 支所での内訳は表のとおりである。 近距離の 世田谷地域 では利用者の相談利用が少ないが 、 関係機関との情報共有の場として活用 されている。 遠方地域からメルクマールせたがやへ来所するには、電車やバスを乗り継ぎ、移動に長い時 間を要する。外出が難しくなっていたり生きづらさを抱えていたり す る方 やその家族 にとって、 電車やバスなど公共交通機関の使用 は、相談につながるハードルを上げてしまう要因のひとつ である。砧地域や烏山地域は、利用者による相談が多 いことから、定期的な出張相談会が利用 のハードルを下げ 、身近な場 での相談につながっている と いえる 。 上図に開所以降の年度別訪問相談実施件数を示す。令和 4 年度は令和 3 年度に比べて 86 件 増加し、開所以来最多の 265 件だった。令和 4 年度の訪問相談件数には 世田谷 ひきこもり相談 窓口「リンク」として対応した訪問相談も含まれる。ひきこもり当事者の背景に 様々 な課題が 複雑に絡み合っている 状況が多く 見ら れる 。当事者や家族の方 など から支援機関へ つなが るこ とが難しい 状況にあることも多いと考えられる。そのため支援や資源を提供するためにこちら から出向く こと が必須である。令和 4 年度の訪問相談の増加は、「リンク」において出向く支 援を実践していることによると言える。 N=29 上図に、令和 3 年 3 月末 までに終結したケース を 除き、令和 4 年度までに実施した 利用者の 自宅 など への 訪問相談 における 地域別実施件数 ( 実ケース数 ) を割合で示す。メルクマールせた がやの所在地である世田谷地域 と、玉川地域が最も多く 34.5% ( 1 0 件 ) だった。出張相談におい て相談件数の多かった砧地域は 7 % ( 2 件 ) 、烏山地域は 1 0 % ( 3 件 ) と、訪問実施地域の割合では 低かった。 2 ) 居場所 支援 ① 延べ 居場所利用者数 令和 4 年度のメルクマールせたがやの居場所登録者数は、年度内に終結したケースを含めて 72 名 だった。延べ 居場所利用者数には、登録制の居場所活動、居場所登録不要のオープンプロ グラム、登録・相談不要のメルサポの利用者数が含まれる。令 和 4 年度 の 居場所延べ利用者数 は 1669 名 だ った。令和 3 年度と比較して 17 5 名の 増加 となった。令和 2 年 度からは 新型コロ ナウィルス感染症の感染拡大防止のため、 プログラムやイベントに 人数制限 を設けるなど、規 模を縮小して居場所を運営し、令和 3 年度から制限を徐々に緩和していった。令和 4 年度では、 飲食を伴うものや一日を通したイベントは実施していないが、人数制限や予約制 など の制限は 設けず運営した。し かし、コロナ禍以前ほどの利用者数には至っていない。 利用者からは、一 日メルクマール せたがや で過ごすことを目標としているために残念であるといった声や、 遠方 への外出 プログラム などの 再開を希望する声が聞かれる。 また令和 4 年度はメルクマールせたがやが移転したことをきっかけに、『利用者とスタッフ で一緒にメルクマールせたがやの居場所をつくる』ことを目的として、令和 4 年 5 月~ 7 月に かけて“いばでこ”を実施した。どのような空間にしたいか、ゆっくり過ごせる空間や使いや すい配置、飾りつけを利用者とスタッフが一緒に考え、居場所 ( “いば”しょ ) を“デコ”レーシ ョンした。移転したばかりの居場所はやや殺風景で圧迫感があったが、利用者たちの積極的な 意見と行動により、季節感溢れる飾りつけがされ、利用者とスタッフが使用する座布団や出入 口の 暖簾 にもワンポイントが付けられ、友人の家のような安心感のある空間が築かれた。 3 ) 家族 支援 家族会 ・出張セミナー 参加者数 ※出張セミナー実施月 6月、9月、11月、3月 開 催 な し 令和 4 年 度の家族会・出張セミナー延べ参加者数は 2 73 名であった。令和 3 年度 252 名と比 較すると 21 名の増加 となっ た。 3 月の出張セミナーでは、斎藤環氏による講演を 、 来場参加とオ ンライン参加のハイブリッド形式で実施した。参加者数は計 71 名で最も多かった。今後も 、 状 況に応じてオンラインを取り入れながら、より多くの方が参加できるセミナーを企画していく。 2.利用状況 1 ) 相談登録者 以下には、令和 4 年度中に相談登録のあった 440 件の利用状況を示す。 ① 年齢分布 N=440 N=394 相談登録における利用者の年齢分布を示す。 20 代が 5 4 % を 占めており、中学生世代が 3 % 、 高校生世代以上 10 代が 19 % 、 30 代が 22 % 、 40 歳以上 が 2 % となっている。全ての世代におい て、令和 3 年度と大きな差はなかった。 ②男女比率 N=440 N=394 相談登録における男女比は男性が 6 4 % 、女性が 3 6 % と、男性の割合が高い。平成 26 年度は 男性 56 % 、女性 44 % だったが、男性の割合 が 増えており、平成 29 年度以降は 6 割以上が男性 となっている。 また令和 3 年度と 4 年度とで同じ割合となった。 ③年代別男女登録者数 N=440 相談登録における年代別の男女登録者数を見ると、 中学生世代 と 40 歳以上 を除き男性が女 性を上回っている。 2 ) 居場所登録者 年代別男女居場所登録者数 N=72 令和 4 年度の居場所登録者においては男女ともに 20 代が多い。また、男女比は 女性 が 47 % と相談登録における比率よりも女性の割合はやや高い。 中学生世代の居場所登録者が開所以来いないことについては、中学校に在籍中であること、 支援機関として教育相談室、ほっとスクールなどの選択肢があり、メルクマールせたがやの居 場所利用のニーズが低いためと考えられる。 10 代の居場所登録は 2 名と令和 3 年度 5 名から 3 名減であった。 10 代の居場所活動については p . 34 で 述べる。 また、令和 4 年度は新規居場所登録者数が 18 名と、令和元年度 12 名、令和 2 年度 8 名、令 和 3 年度 2 名と比べ、多かった。 3.相談登録ケースに関する分析 以下には、 令和 4 年 度中に 相談登録 のあった 440 件 に関するデータ を示す。 1 ) ひきこもり など の背景要因 N=440 相談登録ケースにおける背景要因を示す。 この表は、相談登録 440 件の内、背景要因となる各 項目の割合を示している。 「精神障害」「発達障害」は医師からの診断があるもの、「知的障害」は 愛の手帳を取得しているもの、「精神障害の疑い」「 発達障害の疑い」「知的障害の疑い」について は明確な診断がない、もしくは現在医療機関にかかっていないがそれらの障害が 疑われたことが あるもの としている 。 多いものから、 社会的要因の 「 対人関係のつまずき 」 が 60 % 、 心理的要因の「自己肯定感が低 い」が 56 % となって いる。 また、 生物学的要因では、疑いを含め 「精神障害」が 49% 、「発達障 害」 が 46% であった 。 令和元年度より、ひきこもりなど利用者の抱える生きづらさについて、「生物・心理・社会モデ ル」 ( p .7 8 用語解説参照 ) に 沿って各項目の割合を出している。ひとつの項目や領域に偏ることは なく、 利用者が抱えている 背景 が多様かつ複合的であることが示され た。また、心理的要因の項 目が全体的に割合が高く、公認心理師や臨床心理士といった心理の有資格者による個別相談は背 景要因と合致した支援であると考えら れる。さらに、 社会的要因の「対人関係のつまずき」が半 数以上当てはまる。メルクマールせたがやの居場所活動は、スタッフに見守られながら対人交流 の機会を取り戻し、やり直す場である。生きづらさを抱えた 方 にと って、複合的な背景要因の改 善・解消に向けた取組 みであると いえる 。 2 ) 主訴分類 主訴分類とは、 インテーク時点における申込み用紙への記載や話の内容を基に、 相談員 が主訴 と見なしたもの である 。 令和 4 年度の相談登録 4 40 件の主訴を本人・家族で内容別に集計したところ、 本人 の 一番多い ものは 、就労・就学 ( 例: 「今後の進路 について」 ) であった。次いで対人関係 ( 例:「人と関わる機 会を持ちたい」 ) となっている。家族 の主訴 も本人の主訴と同様に就労・就学の割合が最も高かっ た 。 家族は過年度と比較して、ほぼ同様の傾向が続いている。 【 令和 4 年度主訴分類 】 【令和 3 年度主訴分類】 本人 家族 対人関係 7 0 ( 2 7 % ) 6 0 ( 1 8 % ) 健康面 2 2 ( 9 % ) 7 ( 2 % ) 生活面 5 6 ( 2 2 % ) 3 0 ( 9 % ) 就労・就学 9 6 ( 3 8 % ) 1 00 ( 3 0 % ) 家族関係 9 ( 4 % ) 1 34 ( 4 0 % ) その他 / 不明 2 ( 0 % ) 1 ( 0 % ) 合計 2 55 332 本人 家族 対人関係 72 ( 3 0 % ) 59 ( 20 % ) 健康面 1 9 ( 8 % ) 4 ( 1% ) 生活面 5 7 ( 24 % ) 37 ( 1 3 % ) 就労・就学 79 ( 3 3 % ) 86 ( 30 % ) 家族関係 9 ( 4 % ) 102 ( 35 % ) そのほか / 不明 2 ( 0% ) 1 ( 0% ) 合計 2 38 2 89 3 ) ひきこもり期間 N=266 【参考】内閣府 若者の生活に関する調査 報告書 ( 平成 28 年 ) より 6ヵ月~1年 12.2% 1年~3年 12.2% 3年~5年 28.6% 5年~7年 12.2% 7年以上 34.7% ひきこもり状態になってからの期間 上記のグラフ は 「ひきこもりなし ( N= 1 74 ) 」を除外した 2 66 件におけるインテーク時点でのひ きこもり期間の割合を示している 。割合は「 1 ~ 3 年」が最も多く 29 % 、次いで「 7 年以上」が 18 %、「 6 か月未満」「 6 か月~ 1 年」「 3 年~ 5 年」 が それぞれ 14 % となっている。「不明」とは断 続的にひきこもり期間が見られ、正確なひきこもりの経過を示すことができないものである。 ひきこもり期間が比較的短い 3 年未満の割合は、開所以来徐々に増加しており令和 4 年度は 57% の割合を占めた。参考までに、平成 28 年に実施された内閣府調査のひきこもり期間の割合 と比較すると、 3 年未満の割合は、メルクマールせたがやが 57 % なのに対し、内閣府調査は 24.4 % 、 7 年以上はメルクマールせたがやが 1 8 % なのに対し、内閣府調査は 34.7 % となっている。このこ とから、メルクマールせたがやには、ひきこもり状態が早期の段階で利用につながってきている と考えられる。 4 ) 地域別分布 N=439 相談登録 440 件のうち、区外在住の大学連携ケース ( p. 9 参照 ) 1 件を除く 439 件における居 住地域 一覧を示す。メルクマールせたがや の所在地が世田谷地域であることもあり、世田谷地 域から来所する利用者 が 32% と 最も多く、次いで玉川地域 2 3 % という順になっている。世田谷 区の地域別人口の割合と比較すると、ほぼ同様の割合となっており、区内全域から利用につな がっていると考えられる。 メルクマールせたがやの所在地から遠方にあたる烏山地域は、 11 % と最も利用が低い地域と なっているものの、若者の地域人口比率から考えると一定数利用につながっていると考えられ る。 5 ) 相談のきっか け N=440 相談登録 440 件における相談のきっかけは、 210 件 ( 48% ) が「関係機関」からの紹介となって おり、半数を占める。この傾向は開所以来続いている。 3 番目に多かったのが 世田谷 ひきこもり 相談窓口「リンク」で、 32 件 ( 7% ) だった。「リンク」でのインテーク後、メルクマールせたがや での継続相談が開始されたものや、「リンク」に問い合わせたこと でメルクマールせたがやのこ とを知り、相談に つなが ったケースがこれに当たる。割合は 7 %ではあるものの、令和 4 年 4 月 に開設して既に 3 番目の多さとなっており、窓口開設の影響力の大きさがうかがえる 。 紹介を受けた主な関係機関の内訳は以下に示す。 紹介を受けた関係機関一覧 6 ) 不登校との関連 N=440 N=394 相談登録 440 件 における不登校経験の有無を示す。全体の 62% が 学齢期に 不登校を経験して いることが示された。平成 28 年度 以降、 7 割前後の高い水準で推移している 。 7 ) 終結理由内訳 N=30 N=76 令和 4 年度における終結件数は 30 件で、令和 3 年度の 76 件と比べ 46 件減少した。 減少の理 由は、就労・就学に至った利用者が何かあったときの備えとして利用登録を残していること、他 機関の利用につながったが並行利用者が増加しているこ と ( p. 42 ) や 施設の 移転に伴い音信不通状 態の 終 結を延長したことなどが影響していると考えられる。 終結理由を 6 つに分類し、「就労」はアルバイトを含む就労に就いたもの、「就学」は学校への 進学・復学となったもの、「他機関利用」は、医療機関や別の支援機関などを主な利用先としたも の、「転出」は、区外 へ の転居、「その他」は利用者からの利用終了の申し出や 1 年以上連絡が取 れず音信不通状態で終結したものなどとした。令和 4 年 4 月より年齢上限が撤廃され、年齢 ( 40 歳 ) 到達を理由として利用終結に至ることは な くなった。 終結理由内訳を見ると、「就労」「就学」「他機関利用 ( 医療・その他 ) 」を合わせると全体の 50 % と令和 3 年度と比べ増減はほと んどなかった。その他 ( 申し出など ) は 30 % と令和 3 年度よりも減 少し、「就労」は 30% と増加した。 利用者の多くはアルバイトなどの就労や進学復学をしても、利用終結を選択せず個別相談や居 場所の利用をいつでも再開できるよう、利用頻度が低くとも登録を残しておくことが多い。また 初回相談 ( インテーク ) 後、その時点で継続相談利用の断りがない限り 基本的に利用登録としてい る。しかしながら、利用者によっては初回相談後から連絡がつかないケース、悩み事が解決して 有事再来としていたがその後音信不通になってしまうケースが一定数ある 。これらのことから、 その他の割合 は比較的 高くなる傾向にある。 【終結件数 30 件】 終結理由終結数小計 就労(アルバイト含む)9 就学(復学、転学含む)3 他機関利用(医療)0 他機関利用(その他)3 転出 その他(申し出など) 合計 1233069 【他機関利用先一覧】 茗荷谷クラブ 他自治体精神保健福祉センター 他自治体グループホーム 就学による終結の校種内訳 中学0 高校1 大学2 専門学校0 令和 4 年度終結件数における、利用期間別の割合を以下に示す。 N=30 N=76 終結に至るまでの利用期間は、 25 ヵ月以上が 77 % と最も多かった。 13 ~ 24 ヵ月以上 は 23% で、その他の期間は 0% だった。全てのケースで 1 年以上終結までに要している。 7 ) の終結理由 内訳で触れているとおり、メルクマールせたがやでは利用者の活動状況を終結の基準としてい ないため、利用期間が長期的になりやすい傾向にある。また、音信不通の状態にあっても、最 低 6 ヵ月以上は終結とせず、電話や手紙などでアプローチを試みてから終結としていることか ら、 1 年以上の利用期間の割合が高くなっていると考えられる。 ひきこもりなど生きづらさを抱 え た 方 の 支援は年単位での長期的な期間を見据え て支援にあたる必要があるといえる。 4.ティーンズサポート事業 平成 28 年度より、早期支援・早期介入を目的として 10 代の若者への支援に注力するべく 開始 した ティーンズサポート事業 について示す。令和 4 年度に新規 相談 登録された本人年齢が 10 代 のケース は 50 件 で、令和 3 年度よりも 17 件多かった。 1 ) 10 代新規相談 登録 件数の 内訳 ( インテーク時点 ) N=50 N=33 令 和 4 年度における 10 代新規相談登録 50 件の内訳は、 「 家族 のみ」 が最も多く 74 % となっ ている。令和 3 年度と比較すると、「 家族のみ」が増加した。 また、 10 代新規相談登録 50 件の相談のきっかけは下の表の通りである。令和 4 年度は区内 関係機関 からの紹介が 10 件と最も多かった。児童相談所や子ども家庭支援課を除いた区内保健 福祉や就労に関わる機関がこれに当たる。 次に多かった相談のきっかけは、 世田谷 ひきこもり 相談窓口「リンク」からの紹介 、もしくは 「 リンク 」 でインテークを実施しメルクマールせた がやの相談登録となったもので、 7 件であった。 【令和 4 年度 10 代の新規相談登録の相談のきっかけ】 きっかけ/機関名件数きっかけ/機関名件数 教育相談室5医療機関4 スクールカウンセラー0親・知人2 中学校0ネット6 高校1チラシ・区報3 区内関係機関10ひきこもり相談窓口「リンク」7 児童相談所 子ども家庭支援課 6その他6 2 ) 10 代新規相談 登録 件数 における年齢分布 N=50 N=33 10 代 新規 相談登録における利用者の年齢分布は、高校生世代が 6 0 % と令和 3 年度に比べて減 少した。また中学生世代は令和 3 年度の 12% ( 4 件 ) から 20 % ( 10 件 ) へ増加した 。 毎年度、区内公立中学校全生徒に向けティーンズサポート事業のチラシを配布している。また 平成 30 年度までは全校、令和 4 年度は希望のあった中学校 14 校に訪問しメルクマールせたが やの事業紹介を行った。 さらに、令和 4 年度は切れ目なく支援を引き継ぐことを目指し、世田谷区教育相談室、不登校 支援窓口に訪問し事業説明を行 った。また不登校保護者の つど いにメルクマールせたがやの職員 が参加したり、ほっとスクール希望丘に通う中学生の保護者がメルクマールせたがや へ 見学 に 来 たりと、中学生世代の保護者と 交流の機会を設けることができ た。中学生世代の保護者からは、 中学卒業後 の 相談先が な くなってしまう、高校入学後どのように子どもを見守っていけばいいの か、といった不安や心配の声と同時に、メルクマールせたがやがあると知って安心したという声 も聴かれた。教育相談室での相談を継続しながら、メルクマールせたがやへの個別相談を開始し、 重なり合うような形で支援・相談を引き継いでいった例もある。 義務教育終了が支援の切れ目ではなく、新たな相談先や支援に つなが るタイミングとなるよう、 今後も中学生世代の保護者との つなが り強化、教育機関と の連携強化に努める。 3 ) 平成 28 年度以降 10 代相談登録件数におけるイ ンテーク時在籍内訳 ティーンズサポート事業を開始した平成 28 年度以降の 10 代相談登録件数におけるインテー ク時の在籍内訳を以下に示す。 N=242 N=50 ティーンズサポート事業開始以降、 10 代の相談登録件数 242 件のうち、高校が 33% と最も多 く、通信制高校と合わせると 5 5 % と半数を占めた。 一方、「在籍なし」が 22% おり、学校という 10 代の若者の社会生活の場から所属がなくなった 若者も利用しており、地域における高校生世代への支援と中学校卒業後に所属のない若者が再び 社会とつながるための支援が必要であるといえる。 なお、令和 4 年度は「通信制高校」が 16 %、 「高校」が 36 %で、平成 28 年度以降登録者インテーク時在籍とほぼ同様の割合となった。 N=30 (内訳) 中学校45%(9件) 高校45%(9件) 大学10%(2件) (内訳) 中学校10%(1件) 高校90%(9件) また 、 令和 4 年度 10 代新規相談登録のうち、 所属なし及び通信制高校在籍を除く 30 件の登 校状況は、不登校が 67 % (20 件 ) 、登校が 33%(10 件 ) であった。 不登校の内訳を 見る と、中学校 が 45%(9 件 ) となっており、 中学生世代の不登校に対して、 在籍中から 利用につながるケースが 増えていることがわかる。 4 ) 10 代延べ相談件数・延べ居場所利用者数 ① 10 代延べ相談件数 令和 4 年度 10 代の延べ相談件数は、メルクマールへ来所しての相談、家庭への訪問や出張相 談を合わせて月平均 60 件だった。ティーンズサポート事業を開始した平成 28 年度の月平均 29 件と比べ、約 2 倍の増加となった。 ② 10 代延べ居場所利用者数 令和 4 年度 10 代の居場所延べ利用者数は、 77 名であった。令和 3 年度は 186 名であった のに対し、 109 名 減少 した。 10 代の居場所利用者数は年々減少している。 メルクマールせたがやでは、 10 代の若者だけが参加可能なプログラム「 Teen ’ sTime 」を令 和 3 年度より月に 二回、 定期開催 している 。メルクマールせたがやの居場所は 10 代から 30 代 まであらゆる年代の利用者が集まる、多様性が受け入れられる場である。 10 代の若者がお兄さ んお姉さん世代を頼りに居場所へ馴染んでいく様子も見られ 、頼り頼られるという関係が自然 とできやすい 。 一方 Teen ’ sTime は、同 世代だけという ことから フ ラットな関係が自然と構成されやすい。 あらゆる世代が集まる場とはまた異なる居心地の良さが、 Teen ’ sTime にあると考えられる。 ③年代別利用者内訳 N=440 上図に、令和 4 年度末時点での年代別利用者内訳を示す。 10 代は「本人・家族」と「家族の み」を合わせて 88 % ( 85 件 ) と、家族の利用がある割合は他の年代と比べて最も高かった。 10 代の延べ相談件数は増加している一方、居場所利用者数は減少していることから、 10 代に おいては、家族からの相談ニーズが高いことが分かる。世田谷区の場合、教育相談室など教育支 援機関の対象は中学生までのため、メルクマールせたがやは高校生世代以上の 10 代が相談利用 できる地域資源のひとつになっていると考えられる。また、所属のあるうちに利用につながるこ とで、社会との接点が途切れることがないよう早期支援を開始できているといえる。 メルクマールせたがやを利用する家族からは、「子どもも周りの目を気にするので、親が学校 で相談することは難しい」、「子どもが大きくなってきて、家庭のことをどこで相談したらよいか 分からなかった」といった声が聞かれる。家族が相談し支えられることは、生きづらさを抱える 若者 ( 子ども ) 本人の成長や自立を支えることに つなが る。メルクマールせたがやでは、若者本人 だけでなく家族のサポートも若者支援に重要な側面と考え取 り 組んでいく。 5 ) 10 代の若者に関わる他機関との連携 メルクマールせたがやでは子ども家庭支援課や中学校、 高校など 10 代の若者に関わる機関と の連 携強化に取 り 組んできた。令和 2 年度 4 月 に 世田谷区児童相談所が開設され、 10 代の若者 に係る支援に おいて 、連携 の 強化 を図ってきた 。 令和 4 年度 に 実施した 10 代の利用者に関して個別ケース検討会議を実施した機関一覧を以下 の表に示す。 【個別ケース検討会議を実施した機関】 世田谷区児童相談所 健康づくり課 子ども家庭支援課 高校 保健福祉課 総合教育センター 不登校支援窓口 令和 4 年 度 に 実施した個別ケース検討会議 15 件のうち、 7 件 は 10 代が対象となる会議であ った。 7 件の中には、児童相談所や子ども家庭支援課からメルクマールせたがやへ支援が引き 継がれたケースもある。 18 から 19 歳という年齢は、児童福祉の対象から外れ、高校 を 卒業し 自立を求められる年齢であり、支援の切れ目になりやすいといわれる。年齢により支援が途切 れてしまうことのないよう、メルクマールせたがやが本人や家族のサ ポートを引き継ぐ機能を 担っていると考えられる。 Ⅳ 支援効果 1.利用 主体 の変化 2. 利用者の社会参加に向けた 変化 3. 利用者の他機関との つながり Ⅳ.支援効果 令和 4 年度におけるメルクマールせたがやの支援効果について、検証する。ひきこもり支援の領 域 で は、ひとりひとりが望む形での社会参加が最終的な目標であるが、社会参加に至るまでの道の りは時間がかかる場合が多く、その過程を含めて支援の効果を検証する必要がある。 そこで、① 利用主体 の変化、②利用者の 社会参加に向けた 変化、③ 利用者の他機関との つながり 、 について取り上げ、メルクマールせたがやの支援効果について述べる。 1.利用 主体の 変化 ひきこもり支援において、ひきこもっている本人 自ら 来所や面会など直接的な支援 の場に登場 することは稀である 。 キーパーソンは、ひきこもりの本人に最も身近な存在の家族である。家族 が支援機関の利用につながることがひきこもり支援の第一歩であり、両者が協同して本人のニー ズを把握し汲んでいくことが当初の目標となる 。 本人と支援の場がつながるためにも、その橋渡 しの役目を持つ家族を支えることは大いに意味がある。 1 ) 利用者内訳の変化 N=440 R3 年度登録者 H26~R 元年度登録者 R2 年度登録者 R4 年度登録者 相談登録 440 件において、インテーク時は「家族のみ」の相談 登録 が最も多く 256 件と全体 の 58 % であった。 令和 4 年度での内訳では、 「家族のみ」は 7 2 件 ( 2 8% ) 減少し、「本人のみ」は 8 件 ( 7 % ) 増加、「本人・家族」は 64 件 ( 93% ) 増加した。 登録年度別に見ると、全ての登録年度に おいて、インテーク時よりも令和 4 年度時点の方が「家族のみ」が減少し、「本人のみ」と「本 人・家族」が増加している。 このデータから、 「家族のみ」で利用が始まった利用者の内約 3 割は本人が利用につながっ ていること 、家族のみでの相談から始まり、家族とのやり取りを通して本人とつながり、本人 が利用主体となるといった変化があると考えられる。 厚生労働省「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」を参照す ると、ひきこもり支 援は、家族支援から本人の個人的な心の支援へ、そして個人的支援から居場所のような中間的・ 過渡的な同世代の集団との再会へ、そしてその先に本格的な社会活動へと諸段階を登っていく 過程があり、各段階でどれだけの時間を要するかは各事例によってまったく異なるとされてい る。メルクマールせたがやの支援においても、親の相談による家族支援が、本人へとつながる 直接的な個人支援段階へとステップアップしていると考えられる。 タイムライン が含まれている画像 自動的に生成された説明 ひきこもり支援の諸段階 ( 厚生労働省「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」より ) 2. 利用者の社会参加に向けた変化 動き出し (doing) 土台作り (being) 就労・就学 家族関係の 改善 主体性の 向上 居場所への 参加 交友関係の 広がり 支援機関の 利用 就労・就学の 準備 平成 26 年度の報告書で検討した、社会的自立に向けた 7 段階モデルを上記に示す。 今回はこのモデル図を基に令和 4 年度時点での利用者の状況を示すことで、メルクマール せ たがや における支援によってどのような変化が見られたか検討する。 7 段階モデルでは、「家族関係の改善」「主体性の向上」「居場所への参加」「交友関係の広が り」は、利用者の中で次の動きにつながるまでの“土台作り ( being ) ”の段階とし、「支援機関の 利用」「就労・就学の準備」「就労・就学」を自立へ向けた“動き出し ( doing ) ”の段階とする。 1) ひきこもり期間による土台づくり ( being ) と動き出し ( doing ) の比較 N= 335 N= 105 相談登 録件数に ついて、 ひきこもり期間なし と不明 を含む 3 年未満の「ひきこもり短期群」 ( 335 件 ) とひきこもり期間が 3 年以上の「ひきこもり長期群」 ( 105 件 ) に分け、 7 段階モデルにおける “土台づくり ( being ) ”と“動き出し ( doing ) ”のどの段階にいるかを調査した。 ひきこもり長期群 は 68 % ( 71 件 ) が“土台づくり ( being ) ”の段階にいる。一方、ひきこもり短期群では“土台づくり ( being ) ”の段階にいる 本人の割合 は 3 6 % ( 120 件 ) と、ひきこもり長期群に比べて“土台づくり” の段階にいる 本人の 割合は低い。 2 ) 7 段階モデルにおける変化 N=440 動き出し (doing) 土台づくり ( being) さらに 7 段階モデルのどの段階にいるか細かく見ると、ひきこもり長期群では 3 4 .3 % ( 36 件 ) が 「家族関係の改善」、 28.6 % ( 30 件 ) が「主体性の向上」という、“土台づくり ( being ) ”の中でも特 に初期の段階にいる。一方ひきこもり短期群では、多い順に「就学」 2 7 . 5 % ( 92 件 ) 、「 就労 」 18.8 % ( 63 件 ) となっている。ひきこもり短期群に関しては 7 段階モデルの 中でも“動き出し ( doing ) ”の 段 階 にいる割合が高い 。 一方で「主体性の向上」はひきこもり短期群でも 17. 9 % ( 60 件 ) と、ひきこ もり短期群では 3 番目に割合が多い。ひきこもり期間に関わらず、主体性の向上は課題の一つと なっている。 以上のように、ひきこもり期間によって社会的自立における段階に差が見られた。ひきこも り など 生きづらさを抱える 方 に対し“土台作り ( being ) ”の段階と“動き出し ( doing ) ”のどの段 階にいるかを見極め、ひとりひとりに対して一律ではなく多様な支援の組み立てが必要であ る。また、ひきこもり支援は階段を順番に上っていくのではなく、行きつ戻りつを繰り返しな がら一歩ずつ前に進んでいくものである。 今後も、ひきこもり期間が短い時点で支援へとつなげるための早期発見・早期支援の 取組 み と息の長い伴走型支援を継続していく。 3. 利用者の他機関とのつながり メルクマールせたがやの利用者が、自立へ向け次のステップにどの程度つながってきている かを示すため、インテーク時点と令和 4 年度 末 時点の他機関利用の状況を以下に示す。 1 ) 他機関利用の変化 N=440 N=440 相談登録件数 440 件の他機関利用の変化を見ると、インテーク時点と 令和 4 年度末で 他機関利 用の 有無の 割合 はほぼ同じだった 。 令和 4 年度末は他機関利用ありが 264 件 ( 60% ) 、他機関利用 な しが 17 6 件 ( 40% ) だった。 他機関との並行利用が 6 割と 多いことについては、“背景要因”でも触れたように、利用者が 抱えている問題の多様さ、複雑さが関連していると考えられる。多様かつ複雑な問題を抱える 利用者を支援するためには、メルクマールせたがやだけで利用者を支援するのではなく、各支 援機関と 協同 で支えていくことが必要となる。 2 ) 並行利用している関係機関の内訳 1 ) で示した関係機関の内訳と、具体的な関係機関について以下に示す。 ※重複回答有 N=264 N=427 並行利用している関係機関の内、 医療機関が最も多く 195 件であり、他機関利用 26 4 件の内 約 7 割が医療機関を並行利用している。次いで区内の各総合支所保健福祉 4 課、区内就労支援機関 となっている。保健福祉 4 課 86 件のうち 健康づくり課 は 35 件 で、 担当者レベルで 心身の健康面 を中心に 連携している。就労支援機関の中ではせたがや若者サポートステーションの利用が最も 多く 39 件となっており、 令和 3 年度 と同様の件数であった 。 またぷらっとホーム世田谷の利用 は 18 件であった。ひきこもり相談窓口「リンク」の開設 ( p . 46 ) とともに 、同建物内 に移転したこ ともあり、令和 3 年度の 9 件から 2 倍に増加した。その他 43 件には、青少年交流センターや、 区外就労支援機関などが含まれる。 並行利用している関係機関一覧を見ると、様々な関係機関を利用していることが分かる。世田 谷区には多くの専門支援機関が存在し、それぞれ異なった特色を持っている。メルクマールせた がやでは、各専門支援機関と連携し、利用者が必要とする関係機関とつながることができるよう サポートを行 う。 並行利用している関係機関一覧 Ⅴ 世田谷ひきこもり相談窓口「リンク」 1.概要 2.「リンク」における活動実績 3 . メルクマールせたがやから「リンク」登録と なったケースの特徴 Ⅴ .世田谷ひきこもり相談窓口「リンク」 1.概要 令和 4 年 4 月 5 日に世田谷ひきこもり相談窓口「リンク」が開設された。誰もが自分らしく暮 らすことができるようサポートすることを目的に、メルクマールせたがやとぷらっとホームせた がやが共同運営する窓口である。 平成 26 年 9 月に開所したメルクマールせたがやでは、不登校やひきこもり など 生きづらさを 抱えた若者 とその家族を対象に個別相談、居場所、家族会を運営してきた。ぷらっとホーム世田 谷は、生活困窮者自立支援相談センターとして、経済的困窮をは じめ、あらゆる生活の困りごと を支援してきた。これまで、ひきこもり については、若者はメルクマールせたがや、年齢を問わ ない孤独・孤立などは ぷらっとホーム世田谷が支援してきており、ひきこもり相談窓口「リンク」 は 2 機関がそれぞれ培ったノウハウを活かし、ひきこも り や孤独・孤立状態にある 当事者と当事 者に係る全ての人と共に、その人らしい生活の再構築を目指している。 1 ) 支援の流れ グラフィカル ユーザー インターフェイス, アプリケーション 自動的に生成された説明 上図はひきこもり相談窓口「リンク」における支援の流れを示したものである。最初の相談受 付後、ぷらっとホームせたがやとメルクマールせたがやのスタッフが複数名体制で初回相談 ( イ ンテーク ) を実施する。その後、リンク検討会でぷらっとホームせたがや、メルクマールせたがや、 リンクの所管課である生活福祉課 から なる 10 名以上のスタッフにより 、 全ての 初回 相談内容 や 最初の支援方針について検討を行う。ひきこもりや孤独・孤立の背景には、心理的課題だけでな く、生活面における課題も多く存在する。そのため 、どちらかの機関だけの見立てではなく、 2 機 関それぞれの得意分野を生かし、多職種の視点も加味したうえで、世帯構成員 及び 世帯全体の状 況把握に努めている。このように、多様な視点から課題整理と支援方針を検討し、協働体制で支 援を進めていくこととなる。また、相談内容は多岐にわたることが多く、 「 リンク 」 内にとどまら ず、 区内外の 公的 及び 民間の社会資源や支援を必要 と することが多い。 その場合、 重層 的支援会 議もしくは個別ケース検討会議を開催し、様々な支援機関との協働体制を整える。 2 ) 世田谷区のひきこもり支援ネットワーク ダイアグラム 自動的に生成された説明 上図は「リンク」が連携・協働してひきこもり 、 孤独・孤立 状態にある人をサポートする際の イ メージ図で ある。 「 リンク 」 では、 世帯の抱える課題・問題に対して、多機関が共通の認識をも ち「協働」することを基本としたう えで、それぞれの機関の強みを活かし多方面からアプローチ する「機関連携」を、世帯状況に応じて、時期ごとに柔軟に組み立てていく。 ひきこもり状態に ある人とその家族が抱える多様な困りごとに対し、 当事者とその家族を支援の中心におき、世帯 全体にとってよりよい暮らしのかたちを、支援機関がともに模索していく。 そのため 、 このイメ ージ図は段階的で 一方通行の ものではなく、 必要な支援を複数機関が同時並行的に支援を進める かたちが表されている。 3 ) ひきこもり・就労支援部会の主な取組み ひきこもり・就労支援部会は、主に若者の就労支援に係る機関で構成され、 構成機関による話 題提供 を中心に 令和 4 年度は 年 4 回開催した 。内容は表の通りである。 本部会は、令和 4 年 3 月 に社会福祉法第 106 条に基づき、ひきこもり など 複合化した課題を抱える方 及び その家族に対す る適切な支援を図るために設置された「世田谷区重層的支援協議会」に移管された。若者に限ら ず就労をキーワードとした生きづらさを 抱えた方の支援ネットワークの構築を主な目的として おり、構成機関は令和 3 年度と同様であった。 また、令和 4 年度は、メルクマールせたがやが事 務局を務めた。 新型コロナウイルス感染拡大防止の ため 、 第 1 回は参加形式をオンラインと来場から選択でき るハイブリッド形式で開催した 。 第 2 回以降は、 会場での対面開催へと切り替えた。 第1回 、 4 回は構成機関による話題提供を行い、事例検討会を第 2 回、 3 回に実施し、区内のひきこもり・ 就労に係る問題・情報の共有の場となった。本部会の事例検討では、 各機関における支援困難事 例について、構成機関の委員が専門的な立場から見立てや助言・意見を積極的に交わ している 。 自立を就労に限定せず「その人らしく生きる」ことを重要な視点としている。就労支援機関のみ ならず、精神医療・保健・福祉分野や居場所などの活動支援、障害支援など多岐にわたる支援の 提供を検討することができる。そのため、 事例発表者 と参加者の双方から、事例検討を通して支 援機関同士が互いの機能を理解しあい、支援の役割分担を 考えられる場として、本部会でも定期 的な開催を期待されてきた。 なお、 令和 5 年度よりぷらっとホーム世田谷へ事務局を移行することになっている。今後は、 より幅広い年齢層を対象とした取組みへと発展していく。 第 1 回 6 月 30 日 ( 木 ) 第 2 回 9 月 22 日 ( 木 ) 第 3 回 12 月 22 日 ( 木 ) 第 4 回 3 月 23 日 ( 木 ) 【内容】 ・部会説明 ・各機関の取組み・ひき こもり就労に関わる今 年度の重点事業につい て 【内容】 ・事例検討 2 件 【内容】 ・事例検討 2 件 【内容】 ・令和 4 年度本部会の 総括、 及び 次年度のぷ らっとホーム世田谷へ の 事務局移行、次年度 の部会運営への意見 交換 【ひきこもり・就労支援部会構成機関】 せたがや若者サポートステーション障害者就労支援センターしごとねっと工業・ものづくり・雇用促進課 野毛青少年交流センター障害者就労支援センターすきっぷ就労相談室保健福祉センター健康づくり課 希望丘青少年交流センター障害者就労支援センターゆに(UNI)子ども・若者支援課 池之上青少年交流センター三軒茶屋就労支援センター三茶おしごとカフェ男女共同参画センターらぷらす NPO法人 まひろ(アイ‐キャリア)NPO法人東京都自閉症協会 みつけばハウス(事務局)生活福祉課 生活困窮者自立相談支援センターぷらっとホーム世田谷障害者地域生活課(事務局)メルクマールせたがや ハローワーク渋谷専門援助第二部門障害保健福祉課(オブザーバー)世田谷保健所健康推進課 【重層的支援協議会説明図】 ダイアグラム 自動的に生成された説明 2. 「リンク」における活動実績 「リンク」における支援の流れ (p.46) にあるように、 2 機関でインテーク を実施した後 、リンク 検討会 にて 相談内容や利用者のニーズに応じて①メルクマールせたがやのみ、②ぷらっとホーム 世田谷のみ、③ 2 機関 ( リンク登録 ) の中から継続相談の担当を決めている。 メルクマールせたがやは、 インテーク及び 上記①、③で相談対応を行っているほか、②につい ても専門的なサポートを求められる場面で面談などに同席することがある。 1 ) 「リンク」 として対応したうち、メルクマールせたがや未登録のケース ( 以下、「リン クのみ」対応ケース ) メルクマールせたがやの スタッフが、「リンク」として対応した相談ケースのうち、メルク マールせたがや未登録 ( 初回相談 など 登録前の 対応 ケースも含む ) での 延べ 相談対応件数は 507 件で、メルクマールせたがやの延べ相談 4850 件のうち約 10% を占める。平均すると毎月約 42 件リンク相談を実施している。月別に 見る と、 3 月が 62 件と最も多かった。 2 ) 「リンク」経由 でメルクマールせたがやのみ 相談登録 となった ケースに 関する 分析 「リンク」で実施したインテークの 後 、メルクマールせたがやのみで担当をつけることにな ったケース ( 上記 ① にあたる ) に関する分析を 以下に示す 。 ①年齢分布 N=29 令和 4 年度 「 リンク 」 でインテークを実施し たケースのうち 、メルクマールせたがやの みで 担当をつけることになった新規相談登録 は 29 件であった。 これは、令和 4 年度におけるメルク マールせたがや新規相談登録 122 件のうち約 4 分 の 1 を占める。 年齢分布は、 20 代が最も多く 70 % ( 21 件 ) で、次いで高校生世代以上 10 代が 17 % ( 5 件 ) だった。 「リンク」経由で 29 件の 若者層の 新規相談登録があったことから、“ひきこもり”をキーワ ードとした相談窓口が開設したことで、新たな相談の掘り起こしができていると考えられる。 なお、「リンク」経由でメルクマールせたがやが継続支援を行っている当事者が 40 歳以上の 世帯については、 メルクマールせたがや 単独で 支援 しているケースはなく、 全て ぷらっとホー ム世田谷と協働で 「リンク」としてサポートを行っている 。 ②ひきこもりなどの背景要 因 N=29 背景要因は、心理的要因の該当率が高く、社会的要因では 「家族関係」 「 対人関係の躓き」が高 いなど、メルクマールせたがやの相談登録ケース (p.25) と同様の傾向であった。 「リンク」に申込 みのあった相談の中で、 心理的な支援 のニーズが高いケースがつながってきており、その支援の 役割をメルクマールせたがやが担っているといえる。 3 .メルクマールせたがやから「リンク」登録となったケース の特徴 令和 4 年度は、メルクマールせたがや 利用者のうち 12 名について、新たにぷらっとホーム世 田谷による継続的支援も加え、「リンク」としてサポートしていくことになった。 件数が少なく、 統計的な分析が難しいため、今回はメルクマールせたがやから「リンク」 の 登録となったケース の特徴を抽出し、今後の参考とする。 【リンク登録となったケースの特徴】 リンク登録となったケースの特徴は、以下の表のとおりである。これらの特徴が ひとつではな く、 複数絡み合っている こともリンク登録となったケースの特徴である。 特 徴説  明 経済問題 ・低収入や浪費などにより、家計が逼迫している ・親の退職などにより、家計の見直しが必要となった 家族が区外在住 ・家族や親族が遠方のため本人との接点を持ちづらく、本人の生活状況が つかめない 暴言・暴力 ・家族への暴言・暴力、物の破壊行為がある ・同居継続が困難な状態にある 介護問題 ・本人以外の家族にも障害や介護の問題があり、家族への支援も求められ ている 連携課題 ・本人または家族が複数機関に相談しているが、支援方針が定まらない状 態になっている 医療につながっていな い、医療の中断・拒否 ・治療が必要と思われる状態にもかかわらず、医療受診の機会がない、も しくは医療受診が途切れている 住居問題 ・家族間の不和により、本人がひとり暮らしをする可能性が高まる ・経済状況の悪化により、転居せざるを得ない状況に陥っている 社会保障の活用や高齢 サービスなどの導入 ・本人が働くことが難しく、障害年金の申請を検討している ・世帯支援の切り口として、高齢サービスなどの導入検討が必要 長期化による本人・家 族の高齢化 ・関係機関にもつながっており継続利用しているが、家庭内に変化がみら れず、ひきこもりが長期化し本人及び家族が高齢化している 上記の特徴から言えることは、ひきこもりや孤独・孤立の当事者だけでな く、 家族を含む世帯 全体に困難や生きづらさの要因が複雑に絡み合っているということである。支援が必要な世帯で あっても、当事者やその家族が支援を求めつつも変化に強い不安をもつ場合や、第三者に助けを 求める発想に至れ ず SOS の 発信が難しい場合においては、支援の手が届かず行き詰ってしまう ことがある。「リンク」開設以前は、支援内容が多岐にわたる 世帯の 場合、メルクマールせたがや が他機関と連携を図っても、関わりの手立てがすぐには見当たらず、状況のアセスメントにとど まっている ケース も見受けられた。当事者やその家族と辛うじてつながり続ける中で、支 援者側 も不安や葛藤を抱えながら、変化をもたらすきっかけを待つという状況であった。 「リンク」は、メルクマールせたがやとぷらっとホーム世田谷が協働体制で運営し ている。 2 機関 が 各々 にこれまでの実践や培ってきたノウハウ、連携のネットワークを持っている。世帯全 体が多様で複雑な困難や生きづらさを抱えている場合は、「リンク」として支援にあたることで、 相互 に知恵を出し合い、強みを活かし、地域の関係機関との協働 を円滑に進めることができる。 また、 多 機関による支援を必要とする場合は、個別ケース検討会議 (p.46 参照 ) で分野を横断し た支援や協同のあり方を検討している。その中で、これまで手詰まり感のあった世帯や本人に動 きが見られるなど、 「リンク」開設から 1 年を経過し一定の手ごたえを感じている。このように 複合的課題を抱える世帯への対応事例の蓄積や分野の垣根を 越えた重層的支援を通じ、従来型の 支援や制度の狭間で支援が届きにくかった方々への、より良い支援体制の構築に取り組んでいき たい。 Ⅵ 事例報告 1. 相談員や居場所など他人と接することで“自分”を取り戻した 10 代の 事例 2. 居場所を利用したことで“生活のしづらさ”を理解できるようになった事例 3. 家族の相談からひきこもり男性への訪問支援につながった事例 4. 世田谷ひきこもり相談窓口「 リンク 」 の利用から本人がメルクマール せたがや の居場所を利用し始めた事例 Ⅵ .事例報告 ※ プライバシー保護のため、内容は加工してあります。 1. 相談員や居場所など他人と接することで“自分”を取り戻した 10 代の事例 ・相談者:本人 / 母親 ・性別:男性 ・ひきこもり歴:あり ・年齢: 10 代男性 ・主訴:外出する機会を持ちたい、他人の視線が気にな る 通信制高校に籍はあるもののスクーリングになかなか登校できない本人について、「他人との接 点を持てるようになってほしい」と母親が本人と共に来所した。本人は小学生高学年時に同級生か ら容姿や体型の事でからかわれ、中学進学後も一度も登校できなかった。心配した母親は教育相談 室や思春期外来への通院を促すものの、安定した利用には つなが らなかった。診断名は特に言われ ておらず、服薬処方はされていなかった。メルクマールせたがやへの来所当時、本人はうつむきが ちで、時折相談員の顔を窺うように顔を上げて話していた。本人は「なんで学校にいけなくなった のかよくわからない」と、戸惑いや自信のなさ、傷つきの体験を語った。さらに「他人からの視線 が怖い」「笑い声が聞こえると自分が笑われているような気がして、逃げ出したくなる」と、対人恐 怖と日常的にある漠然とした体調の悪さ、不安を語った。 日々アニメやゲーム実況動画を見て過ごしてい るが、 「特に好きと言えることはない」「なんとな く見ているだけ」と話していた。 相談 では 本人の見ているアニメやゲーム の話題で雑談したり、日々 世間のニュースを見て感じたことを話し合ったりするうちに、顔を上げて相談員の顔を見て話 すよ うになっていった。相談当初は殆ど 相談員 の方か ら話題を振っていたが、本人の方から発言するこ とも増えていった。また居場所利用については誘った当初 は 拒否的 だった 。相談員からは強く推し 進めず、『 興味が出てきたら教えて 』と声をかけていた。しばらく経った頃、 T een’s Time ( 10 代限定 のプログラム ) や ファーストクラフト ( ものづくり中心の ビギナー向けのプログラム ) の 見学 を希望 された 。参加 す ると「思ったより大丈夫だった」「楽しめた」と安堵の表情を浮かべ ていた 。 その後も居場所スタッフ、他利用者とおすすめのアニメを教え合ったり、ボードゲームをしたり 居場所で過ごす時間が徐々に増えていった。本人は相談で 「ストーリーの説明、上手いって言われ た」「自分って結構ボードゲーム得意みたい」と嬉しそうに 報告し、 ささやかな自信となったようだ った。来所 して 1 年経 った頃、定 期的にスクーリングに通うことができるようになっていた。 相談 では進路の話題が中心 と なり、 「 大学進学のために塾に通わなくてはいけないと思うが、塾の講師 と上手く話せるかどうか不安だ 」 と話す 。不安を抱えながらも実際には いくつか見学に行き、雰囲 気がよいと感じた塾を選び、通い始め た 。はじめは集中して長時間勉強を続けることが出来ず自信 を な くすこともあった。しかし、 塾で出会った学生アルバイトの人から 大学の話を聞いているうち に段々と大学に通うイメージが出来てきたよう だった。同時期、 居場所でも「今、大学受験のため に塾 に通って る 。これから少し来れなくなるかもしれない」と 発言していた 。夏期講習に参加する 頃には勉強のペースがつかめてきたのか、勉強時間が段々と増え 、居場所への参加は減っていた 。 相談では 「以前は何をするにしても自信がなかった。自分は好きなものもほんとに好きなのかな って。でも最近は自分が何を好きか、嫌なのかわかるようになってきた。」「多分、不登校になった 時はこんなことで傷ついてたらこれからやっていけないって我慢してて、自分がよくわかんなくな ってたんだと思います」と振り返 っ た。現在、大学受験に向けて、受験勉強を継 続している。相談 員や他者とのふれあいを通し自分が認められる経験を重ねるうちに、自分の感情に気づけるように なり、自信を取り戻していった事例である。 2. 居場所を利用したことで“生活のしづらさ”を理解できるようになった 事例 ・相談者 : 本人 ・ 性別: 女性 ・ひきこもり歴: あり ・年齢 : 20 代後半 ・ 主訴: 卒業後の進路について、日常生活のしづらさについて 本人は通信制大学で学ぶ 20 代後半の女性。双極性障害と診断され、発達障害の検査を受けて 結果待ちである。一見闊達で、笑顔が印象的な女性である。最初の相談では、 1 日にいくつもの 予定を詰め込んでしまい、スケジュール管理が出来ないことに困っている、と本人の口から語ら れた。双極性障害特有の“気分の波”があるために、予定を入れられるときは“本人の感じる調 子の良い時”だった。調子が悪いと、全ての予定をキャンセルするか、だるくても必死で待ち合 わせ場所には行くも途中で帰ってしまうこともあった。しかし、先の予定があると“がんばれる” と本人は言い、彼女なり の病気への向き合い方をしっかりと考えていた。 通信制大学には 6 年在籍しており、今年度の卒業を控えているが、まだ就職活動も進んでおら ず、本人は留年という形を取り新卒採用を受けることを考えていた。相談員としては、本人に“気 分の 波”があること、スケジュール管理の難しさなどから、一般就労よりも福祉的就労も検討し た方が良いのではないか、と思い始めていた。本人ともそのことを話し合い、障 害 者雇用の求人 を探すためハローワークや世田谷区内の就労継続支援の施設なども一緒に訪問した。しかしすぐ には本人にピッタリ合う就労先が見つか らずにいた。また、福祉的就労をすること は 、自身の病 気や障 害 を認める プロセスにつながるが 、その受容がまだ難しいようだった。 就労先を検討することと併せて、毎朝決まった時間に起きられないことやスケジュール管理の 苦手さにつ いても相談の中で話し合った。居場所に参加することでこれらの“生活のしづらさ” について考えるきっかけになるかもしれない、と居場所の利用も担当相談員より提案したが、初 めは全く乗り気ではなかった。相談を始めて 2 年が経とうとしたとき、居場所の活動ルームから 利用者の笑い声が聞こえてきたり、待合スペースで楽しそうに会話する同年代の利用者を目にし たりすることがあり、「見学をしてみようかな」と本人から申し出があった。そして、いくつかの グループを見学してみたが、「あの輪の中に入った自分を想像できない」と、消極的な気持ちが語 ら れ登録までには至らなかった。しかし生活していく中で、本人の困りごとである“生活のしづ らさ”に再度直面し、主治医の勧めもあり居場所登録をすることになった。 実際に居場所に参加して他者と交流し、カードゲームをしたり、 5 〜 6 人のグループの中で会話 をしたりすることで、“自分の苦手なことは何か”について本人自身が徐々に理解するようにな っていった。例えば、大人数の中では会話を聞き取ることが難しいこと、初めて参加するゲーム のルール理解が他の人より難しいことなどである。また、他人に対して過剰に適応してしまい、 次の日は寝込ん でしまうなどのコミュニケーションの取り方をしていること、その時の“気分の 波”によって参加できる時とできない時があることなども分かってきたのである。 居場所に参加して数ヶ月経った現在、「福祉的就労も改めて検討してみたいので一緒に考えて 欲しい」と相談の中で話をするよう になっている。まだどのような働き方が本人に適しているの か分からないが、本人の“リソース” ( 行動力があること、人が好きで話をしたい、気持ちを共有 したいというポジティブな姿勢があること、持ち前の明るさや皆に好かれる人柄であること ) を 活かしながら 、 大学卒 業後の進路について他機関とも連携しながら探していこうと一緒に考えて いる。相談から居場所利用につながり、参加していく中で徐々に本人の得意なことと苦手なこと が分かってきたケースである。 3 . 家族の相談からひきこもり男性への訪問支援につながった事例 ・相談者 : 両親・姉 ・ 本人の 性別: 男性 ・ひきこもり歴: 15 年 ・年齢 : 30 代 ・ 主訴: ひきこもりの息子の相談 30 代のひきこもりの息子の相談で両親が来所。両親と本人、独立した姉の 4 人家族。 本人は中学校から不登校傾向があり、高校でも欠席が多かった。高校卒業後は進学を希望した が、志望校に合格できずに浪人。塾に通いながら大学進学を目指したが、 2 年間浪人をして大学 進学をあきらめた。その後はコンビニやスーパーのアルバイトをする生活を続けたが、 20 代半ば で アルバイトを辞めると自室でオンラインゲームや動画を見る生活となる。両親は本人に就労す るように声かけをするが、本人はそれを無視して避けるようになり、食事も自室で食べるように な った 。それでも両親は本人への声かけを続けていたが、ある時に本人が父親に暴力を振るい警 察が止めに入る 出来事 があり、それをきっかけに両親と本人の会話は少なくなっていった。その 後 は 両親と本人との関わりがほとんど ない状況 が続いたが、本人の姉が両親が亡くなった後の本 人の事を心配し、姉が両親を誘って相談に来所した。 相談には両親揃って来所していた。姉は結婚しており両親と別に住んでいたが、都合の合う時 には相談に参加していた。相談では今の本人の様子を確認しながら、両親の困 っていること や本 人との関わり方について話し合った。両親は 本人が暴力を振るう こと を恐れ、本人に刺激を与え ないように生活していたが、そのような生活に両親も辛 さや負担を感じてい た 。また、本人との 関わりを詳しく聞いていくと、父親と本人とは避けるように生活しており会話もほぼ な い状況だ ったが、母親 に は 時々本人から買い物の要望や父親へのグチ など を一方的に言う こと があった。 また 姉と本人とは SNS でつながっており、不定期にメールでやり取りをする関係性 に ある こと が わかった。 面談 で は、 両親 に 本人 への 関わり方 について助言や調整 を しながら、 両親の負担感 を減ら していった。さらに、 家族が支援 の様子 や担当相談員に対し て 感じていることを姉をとお して 本人に伝えてもらう ことにより 、本人の支援 への ニーズ が 高ま ることや、相談に つ なが る き っかけづくりを試みた。 両親との相談では、 初め は本人がいる生活の負担感や苦労の話題が中心だったが、徐々に両親 間 での本人に対する理解や対応の違い、その違いに対する それぞれ の思いが話題にあがるように なった。また、過去に父親の仕事の多忙さと母親の実家の介護の多忙さが重なった時期があり、 その時期を発端に両親間のすれ違い が生じたこと も話題に上がるようになった。本人には生活の 中で多少の変化 が 見ら れ る時もあったが、特別に目立った変化は見ら れず経過した。その一方で、 両親と本人の関りや両親の負担感には変化が見られ、気持ちに余裕が出てき た 様子が話されるよ うになっていった。 このような面接が 1 年以上続いたある日、 「 姉と一緒なら担当相談員に会ってみたい 」 という メールが届いたと姉から報告 があった。 両親と姉 の面談で 本人の訴えを 話題とし 、姉に本人との 調整の窓口役を担ってもらい、本人の希望や不安を確認しながら、本人とどのように会うかを話 し合っていった。そし て、 訪問相談を 自宅のリビングで姉 が同席し 本人が相談員と会う かたちか ら試みること になった。本人の希望で 、両親には その時間は外出して もらうようにした。訪問を 始めた頃は本人に は 緊張が強い様子が見られたが、徐々に担当相談員と関係ができて くると 、自 分の不安や思いを自然と話せるようになっていった。半年が過ぎた頃、姉が同席せずとも本人だ けで相談員と会えるようになり、定期的 な 訪問相談ができるようになった。 4 . 世田谷ひきこもり相談窓口「 リンク 」 の利用から本人がメルクマール せたがやの 居 場所を利用し始めた事例 ・相談者 : 本人 ・ 父親 ・ 性別: 女 性 ・ひきこもり歴: 約 2 年 ・年齢 : 20 代後半 ・ 主訴: 生活が苦しい 本人がひきこもり相談窓口「リンク」に問い合わせのメールを送り、 「 リンク 」 による支援が開 始された。メールを送ったのは父親と二人暮らしをしている 20 代後半の女性だった。 2 人は数 年前に仕事を探して地方から東京に転居し、それぞれが契約社員の仕事をしながら生計を立てて いたが、コロナ禍で仕事を失った。その後は貯金を切り崩しながら生活をしていたが、お金を使 わないように生活する ため に 2 人ともひきこもりがちの生活になっていた。しかし、 貯金 残高が ほぼ な くなり 生活が立ちゆかなくな った ため 、何か経済的な支援を受ける こと ができないかと 「 リンク 」 に問い合わせのメールを送った こと をきっかけに 支援開始 へとつながった 。 「リンク」 では、 初め にメールでのやり取りを数回行い、その後に本人と父親がそろって相談 に来所した。貯金が底をついて生活費がほとんどない こと とあ わせて、父親の持病 の 悪化 や 飲酒 量 の 増加、本人 の 対人関係 の 苦手意識や就労への不安感が語られた。また、 2 人とも体調 の悪い 日が 続いて 家事が難しくなっており、自宅の中も荒れているという こと がわかっ てきた 。 そこで、生活困窮の支援と生活環境の改善 を目的に 、父親 には 持病の治療とアルコール問題の 改善 に向けた支援 、本人 には 就労支援が開始された。 徐々に状況の改善が見られ、 本人にも就労 に意欲的な発言が増えて いった。 その意欲の高まりとあわせて、対人関係や就労の練習としてメ ルクマールの居場所を利用したいという希望が語られるようになった。それを受けて、メルクマ ールの居場所利用に関する相談を開始する こと になった。 メルクマールの相談では、居場所の利用が本人にとってより良い体験になるよう、過去の友人 関係や職場の人間関係、対人関係の苦手意識や就労への不安感について話し合った。その中で、 過去にいじめや不登校 の 経験があった こと 、正社員で就職をしたが精神的に体調を崩して しまい 離職した こと 、東京では勤務時間を減らしていたが精神的にはつらかった ことなど が語られた。 また、精神科に通院を続けていたが、東京に転居してからは通院をしていない ことが相談を続け ていく中でわかった 。そこで、医療機関 の 再受診と、医師の助言を受けながら居場所を利用し て いく こと を話し合っていった。その後、医療機関の受診に つなが り、医師と の信頼関係を築いて いった。医師からは居場所の利用に問題ない こと 、就労は本人のペースに合わせる ことなど の助 言が得られ、服薬と定期的な通院が継続された。メルクマールせたがやでも相談を継続し、居場 所 の 様々なプログラムを体験しながら本人に合う居場所のグループを話し合っていった。その よ うな中 、生活の安定や父親の病状の改善 と連動するかたちで 、本人の精神 面も徐々に安定してい った。 そして、本人が安心して居場所を利用できそうという手ごたえを感じるようになった こと を確認して、居場所のグループ登録 を進め、 定期的 な 居場所利用 がスタートした 。その後、メル クマール せたがや では居場所の利用と相談 支援 を定期的に利用しながら、対人関係の苦手意識の 軽減や、自分らしい人付き合いの練習に取 り 組んでいる。 Ⅶ メルクマールせたがや利用者の声 1. アンケート結果 2. 本人の声 3.家族・その他の声 Ⅶ . メルクマールせたがや利用者の声 1. アンケート結果 < 回答者内訳 > <回答者年齢内訳 (本人 )> <回答者年齢内訳 (家族・その他 本人年齢 )> < 利用期間 > <総合的満足度> 2. 本人の声 ( 一部 校正 あり ) <メルクマール せたがや を利用して良かったこと、役立ったこと、 変化を 感じたこと> 人と話すことが多少怖くなくなりました。 親切に相談してくれる。 家族以外の人との交流の機会が得ら れた。病院以外での相談場所を得られた。 人に話すことで自分のふわっと思っていたことが言語化されて整理されてより理解できる。 メルク利用者さんとの交流で現在の仕事に就くことができた。 家にずっといるのと違い充実した生活を送れていると感じることができた。 ひきこもりがちでほとんど人と会わなかった時期から抜け出せました 。メルクの仲間に会えてたくさ んのことを学べたし、居場所が出来ました。プロの心理士さんに無料で定期的に 1 時間もお話を聞い てもらえて心のケアをしていただきました。出会えてよかったなぁと思う方がいっぱいいます。 通う前はただ病んで毎日を過ごしているだけのようだった。今はその時と比べて気が楽になってい る。 人と話す機会が増えて考えを整理できた。 悩みに対する力がつ いた。 家から出る理由ができた。 < 今後、改善してほしいこと、今後取 り 組んでほしいこと > ( 居場所の ) 時間を増やしてほしい。 今のまま、 40 歳を超えても心理士さんと面談できるままでいて欲しいです。 < 生きづらさを感じたとき、悩んだときに、支えになったこと > 相談に乗ってくれて希望になった 。 家族や職員に相談 さ せ てもらえる 。 音楽 お医者さん、精神保健福祉士さん、家族、 親戚 など の人間関係。お薬 。 家族や友人の言葉 とりあえず通って面談 をするだけでも自身に 何かしらのきっかけや ヒントが出来た 。 ゲームです 相談できる人が常にいるので、安心して 生きられる。 誰 かに話を聞いてもらえ るという安心感があり、 相談で話を聞いていただ く中で自分の考えを整理 することができた。 < 生 きづらさを感じている人 にかけたい 言葉、 自分が かけられたい (かけられたかった )言葉 > 好きなものはなんですか? ストレートに言葉をかけるのは難しいかもしれない。 一緒に楽 しめる・一緒に笑顔になれるような事を考えたい。 否定はしないで欲しい。生きづらいと感じていることは悪いこと では な いし、そう感じることがあるのはおかしいことでは な いと 思う。だけど、それを否定されると自分という人間を否定された 気がする。あと、根性論とか人と比べるのもやめて欲しい。『君よ り大変だけど頑張っている人もいる』みたいなのは逆効果だと思 う。自分という人間を肯定して欲しい。生きていても良いと思わ せて欲しい。 経験談ですが、メルクのスタッフさんに「あなたが大事」と伝えられました。一生心に残る心温まる お言葉でした。そういう目で見てくださっていた優しいスタッフさんに本当に感謝です。 そのままを認めることも大事だということ 相談できる相 手がいるときっと良くなる 同じく苦しんで い たとき の率直な人生談や頑張っ てること、長所を褒めて くれると嬉しい 。 ファイトとか、頑張れとか 3 .家族 ・その他 の声 ( 一部校正あり ) <メルクマールせたがやを利用して良かったこと、役立ったこと 、変化を感じたこと > 利用者の気持ちに沿った対応をしてくれることが心強かったです 。 他の人には、話せないことも話せてとても楽になりました。これで良いのか悩んでいた事も話せて改 善点やこのままで良いと納得したり大変変わりました。 回復を急がせず、本人のペースを暖かく見守ってくれているところ 月2回の自宅訪問をして貰って い ます。そこから自宅から一緒に外に出て行くことが出来るようにな ってくれることが私 ( 父親 ) の今時点の目標です。 対象者に必要と思われる働きかけ、周囲の対応について大きく間違っていないかどうか など 、心理士 の方など専門家に話を聞いてもらえて意見を聞けることは安心に つなが る。相談できる先は多い方が よいと思う。 親身になって相談してくれるから話しをすると希望が出てくる 。 担当の先生と会話でヒントがある。 いつも寄り添って頂き、大変な時は電話でもご対応して頂き本当に感謝しております。当事者では気 づ かない専門知識に基づいた多方面からのアドバイスのおかげで、救われました。お蔭様で 6 年間か らの ひ き こ もりから脱出して、 4 月から専門学校に入学し頑張って毎日通学 し しています。 まず、状況を理解していただき、気持ちが少し楽になった。 本人が部屋から出ずに食事を少ししか取らなかったり、部屋から出れるようになってからも衝動的な 行動をした時に実際に本人に対してどのような対応をしたら良いか具体的に教えてもらえて良かった です。 お話を聞いて、安心できたことや、自分が思い付かなかったことを教えてもらえたことが良かったで す。 息子に対して、どんな事が必要なのか、どんな事を避けた方がいいか など 、家族会の斎藤環先生のお 話を含めて、方向性が見えたことは有難かったです 。 私自身の事として、自己を振り返る機会ができ た事は、息子に対して私の中に何が足りないか、考える事もできたと思います。 こちらの状況を把握していただけ、適切なアドバイスにいつも感謝です。本人に電話対応していただ く様になり色々な意味でプラスの効果が出てきている感じです。 < 今後、改善してほしいこと、今後取 り 組んでほしいこと > 最初は、オンラインで顔表示なしで居場所に参加できる仕組みが有れば、対人恐怖でも参加できると 思います。 その際、ゲームの対戦などでしたら、参加する気になると思います。 以前の池尻の校舎を利用していた時は広々として気持ち良かったです。今の施設は駅からは近いです が、窮屈な感じがします。もう少し、解放的な施設であると良いように思います。 < 相談対象者のこと、相談対象者との関係について 悩んだときに、支えになったこと > 子 ども からの暴力や暴言、家での破壊行為 など 途方に暮れた時、子どもと 1 対 1 で話して子どもの気 持ちを聞き出しながら、しっかり注意して下さり、息子も素直に自分の非を認められました。それか ら暴力は止まり、破壊行為もかなり減りました。 どうにもならない日々が続いていて途方に暮れつらかった時、忘れられていると思っていましたが、 何気にお電話をいただき、「ひとりではないんだ」と思うことができました。今日まで支えていただい ています。ありがとうございます。 活動費を決まった日に、決まった金額を渡すことにより意欲につなげるとの考え方や、なるべく、「お はよう」「おやすみなさい」など声かけをするように伝えてくださったことなど、具体的で理解がしや すく実行がしやすいアドバイス。息子が安心して休める環境を整えるという考え方 。 トラブル対応の指針をい ただいたこと。 親身にアドバイスを受けたこと。 先生の言葉がヒントになる 。 担当職員 が親身になってくれた 。 適 切なアドバイスしてくれた 。 長く相 談しているけど嫌がらずに付き合っ てくれた 。 私自身が不安になった時に、じっくりと話しを聞いても らえ、本人が今どのような状態であると思われるか、ど のように対応していったら良いかとアドバイスしてもら えたことが支えになりました。 ひ きこもりや自分の将来について、本人がどう考えているのか、気になります。 対象者への愛 家が本人にとって、安心で安全 なところだから働きに出れてる と言ってもらえたことです。 その対応で良い と背中を押して いただいた。 < 相 談対象者のこと、相談対象者との関係について悩んだとき、あればよいもの/もっと広まって ほしいこと > 先が見えなくて不安が大きいので、すでに ひ きこもりから脱出した 人達の情報を知れたら安心だと思います。①特に注意した点、②進 学先 ( どんな選択肢があるのか ) 、③トラブル時の対応方法 メルクマールさんの存在を、知らなかったし、 自分では見つけられなかったかもしれないと思 います ( カウンセラーさんに教えてもらいまし た ) 。沢山の苦しんでいる人が利用出来ると良い と思います。 保健師さんに相談した時、メルクマールの話 はありませんでした。その後チラシを見つけ てそちらに連絡しました。区内でそのような 情報は共有されていないと思いました。 日本において、カウンセリングが恥ずかしい など といった印象ではなく、もっと気軽に利用できるも のとして広まるとよいと思う。 主治医を交えた相談など。 Ⅷ 広報・啓発活動 1. 広報・啓発活動 2. 視察・ 見学対応 Ⅷ . 広報・啓発活動 1. 広報・啓発活動 1 ) ニュースレター メルクマールせたがやでは、毎月居場所のスケジュールとあわせてニュースレターを発行し ている。ニュースレターでは、実施したイベントの様子や居場所プログラムの紹介など、メル クマールせたがやの活動が伝わるように作成している。ニュースレターは、利用者に配布する だけでなく関係機関にも送付している。 テキスト 自動的に生成された説明 ニュースレターの例 ( 令和 5 年 3 月 ) 2 ) ホームページにおけるブログ メルクマールせたがやでは、広報の一環として居場所活動の様子をブログで発信している。 QR コード 自動的に生成された説明 ( https://3cha.tokyo ) ブログでは、ニュースレター同様にイベント・プログラムの内容について写真を掲載しなが ら紹介し ている。ブログの読者に、メルクマールせたがやの取組み や 活動の様子が伝わるよう な内容を意識して作成している。なお、ホームページは居場所 だけでなく 家族会や出張セミナ ーの周知 の場 として も活用している。 3 ) 事業紹介 事業紹介は、具体的な活動内容や利用者の様子などを周知し、地域で若者 支援・ひきこも り 支援に係る 支援者にメルクマールせたがやを知っていただくことを目的としており、地域に理 解者が増えることが、潜在的なニーズの掘り起こしにつながると考えている。 令和 4 年度 も コロナ禍 の影響はあった が、行動制限が緩和され対面の機会が増 えた。一方で オンラインを活用した会議体参加や事業紹介も行った。主な活動は、 4 月にあんしんすこやかセ ンター相談対応マニュアル説明会、 エフエム世田谷「区長の談話室」 、 6 月に施設・里親を巣立 った若者の自立を考え るシンポジウム、 「リンク」開設記念オンラインシンポジウム、 9 月に主 任児童委員部会、 2 月に世田谷区教育委員会が主催する不登校保護者の つど いの他、年 4 回の 出張セミナーにて事業紹介を実施した。 また、令和 4 年 4 月に開室した 世田谷 ひきこもり相談窓口「リンク」について、ぷらっとホ ーム世田谷と生活福祉課 とともに 各地域の地域ケア会議やぽーと連絡会に出席して、 両 機関の 事業紹介 及び ひきこもり相談窓口 「リンク」 の事業周知を行った。 4 ) 情熱せたがや、始めました。 ( 略してねつせた! ) による情報発信 世田谷区では、若者による若者向けのソーシャルネットワークサービスを利用した情報発信 を行っている。長期休暇の時期などにあわせて、メルクマールせたがやの利用を促すメッセー ジを発信した。 5 ) その他 令和 4 年度は行動制限が緩和され、地域のイベントや会合が対面で開催される機会が増え た。若者の地域との交流の機会として、野毛青少年交流センターの「のげ青縁日」、池之上青少 年交流センターの「青年文化祭」にせたがや若者サポートステーションと一緒に世田谷若者総 合支援センターとして子ども向けの出店を行った。「若者と咲かせるネッ トワーク・せたがや」 と子ども・若者支援課が共催の「咲かせるネット交流会」に参加し、若者や関係者と活動の共 有を行った。 2.視察・見学対応 メルクマールせたがやには、毎年区内外を問わず視察や施設見学の申込みがある。特に、居 場所のコンセプトや機関連携など実際の運営について質問を受けることが多い。ひきこもりの 方 がどのようにして利用に至るのか、相談支援と居場所支援の取組みについて意見交換をする ことがあり、メルクマールせたがやとしても、視察を通して他の自治体の取組みを知る貴重な 機会となっている。 1 ) 視察対応 令和 4 年度の主な視察対応は以下の表の通りである。都内自治体からの視察は、子ども・若 者総合相談センターの設置やひきこもり支援に係る内容が多く、都内では先駆的に若者支援 ・ ひきこもり支援 を展開してきた世田谷区の取組みに関心を寄せられている。窓口機能だけでは ない継続的な相談支援や居場所活動の他、協議会の運営や他機関連携について意見交換をする ことが多い。世田谷区は、所管課と運営事業者が日頃から綿密に連絡を取り合い、一体となっ て若者支援 ・ひきこもり支援 に取 り 組んでいる。 また、令和 4 年 4 月に開設した世田谷ひきこもり相談窓口 「リンク」に対して、他の自治体 の福祉関連の部局 から視察の申し入れがあり、所管課とぷらっとホーム世田谷と 3 機関で対応 する機会があった。 「 リンク 」 の視察 は、主にひきこもり支援や重層的支援体制整備事業に係る 内容であった。 【令和 4 年度 視察・見学対応】 4月 大田区青少年健全育成担当課 11月 調布市児童青少年課 5月 墨田区保健福祉部 2月 中野区子ども・若者相談課 6月 大田区ひきこもり支援に係る福祉部局 静岡県社会福祉協議会 7月 町田市福祉総務課 東京都ひきこもりサポートネット 9月 NPO法人育て上げネット 3月 熊本県広域連携 昭和女子大学 Ⅸ 令和元年度~令和 5 年度 支援方針に基づく取組みの進行状況 1.令和 4 年度の取組み状況 2.令和 5 年度の取組み Ⅸ . 令和元年度~令和 5 年度 . 支援方針に基づく取組みの進行状況 平成 30 年度の 事業報告書において 、 これまでの 5 年間の活動から 見えてきた課題 を明らかにし、 令和元年度から令和 5 年度に重点的に取 り 組んでいくことを以下の 3 つの方針としてまとめた。 1.支援を必要とする 若者 の掘り起こし 2.社会参加に向けた動き出しの支援の充実 3.中高生への切れ目のない支援 この方針に基づく取組みの進行状況について報告する。 1.令和 4 年度の取組み 状況 1 ) 支援を必要とする若者の掘り起こし メルクマールせたがやは、開所から令和 5 年 3 月末 まで で 856 家庭の利用があった。令和 4 年 度 は 、新規相談登録件数は 122 件と開所以来最も登録件数が多かった。新規相談登録が増加した 理由は、世田谷ひきこ もり相談窓口「リンク」が開設したこと、移転に伴いアクセスが良くなっ たこと、コロナ禍では あるが 行動 制限が緩和されたことが影響していると考えられる。 ①地域特性に合わせたサテライト整備 ( サテライト: p . 78 用語解説参照 ) 出張相談会は、令和 2 年度より希望丘青少年交流センターに加え、 5 つの総合支所区民相談 室で定例で開催している。令和 4 年度は、 5 地域の総合支所にて毎月 1 回の開催に拡充した。 年間で新規相談登録件数は 6 件、出張相談の延べ相談件数は 55 件と、令和 3 年度と 同程度で あった 。出張相談からメルクマールせたがやへの来所相談へ移行した利用者もいれば、コロナ 禍のため来所相談から出張相談へと相談の場を移した利用者もいる。定例で出張相談会を開催 することで選択肢の幅が広がり、利用者のニーズに合わせて相談の場を提供できるようになっ た。 ②地域に根差した交流 令和 4 年度は 感染対策を徹底し対面で開催されるものが増えてきた。 野毛青少年交流センタ ーの 「のげ青縁日」、池之上青少年交 流センターの「青年文化祭」では、 せたがや若者サポート ステーションとの合同による子ども向けのゲームコーナー ( ワニたたき ) を 出店 した 。 また、令和 3 度に引き続き、メルサポの特別枠という形で株式会社セックによるプログラミ ング体験、 AR 体験のプログラムを企画し、若者と地域の企業との交流の機会が生まれた。令 和 4 年度では、講座の回数を増やしたり、株式会社セックのセミナールームで開催するなど、 プログラミングの内容もより充実しての開催となった。 ③ 独自のホームページ開設 これまでも世田谷区のホームページ内でメルクマールせたがやの情報は提供されていたが、 令和 3 年度からはメルクマールせたがや独自のホ ームページを開設した。若者が より一層 メル クマールせたがやの利用に結びつきやすくなるように情報を発信していく。また、ウ ェブ上か ら問い合わせができるように問い合わせフォームを設置し、若者とその家族が声を発しやすく なることで、新規相 談申込み増加の効果をねらった。令和 4 年度における問い合わせ フォーム から相談利用申込みは 31 件で、そのうち相談登録件数は 16 件であった。問い合わせのあった 方と必ずしも連絡がとれるわけではないが、インターネットという新たな相談申込みの窓口は 利用の入り口として機能している。 なお、これまで居場所 活動の様子などを記事にして広報として活用していたブログは、ホー ムページ内に移行して継続 している 。 人, 屋内, 座る, シャツ が含まれている画像 自動的に生成された説明 QR コード 自動的に生成された説明 ( https://3cha.tokyo ) 令和 3 年 4 月 1 日開設 2 ) 社会参加に向けた動き出しの支援の充実 動き出しの 支援 について は、これまで取 り 組んできた支援活動の振り返りと 更なる 充実を図っ た。 ①個別の専門相談・家族支援の充実 個別相談では、令和元年度に引き続き、家族支援の充実として本人がメルクマールせたがや の来所に至るまでの経緯を大切にし、本人を誘うタイミングを図りつつ家族をエンパワメント ( p. 78 用語解説参照 ) して家族関係の調整を丁寧に行った。令和 4 年度の新規相談登録件数 122 件のうち、家族のみから利用開始となったのは 77 件と 6 割を超える。 ひき こもり支援におい て、本人につながるための家族支援は必須であり、家族のみからでも相談できる場が求められ ている。 相談への敷居が高 い場合は、ひきこもりに悩む家族に限定した家族会や 、参加の対象を問わ ない 出張セミナーへの参加も ひとつの方法 である。出張セミナーは、若者支援・ひきこもり支 援の普及啓発と若者総合支援センターの広報活動が主な目的であり、来場者の多くは家族であ ることから、内容は家族向けに構成している。セミ ナーを受講するという 開かれた 参加の機会 から 利用のきっかけを提供できるよう努めている。令和 4 年度は、令和 5 年 3 月の出 張セミナ ーを来場とオンラインの併用 で 開催し たが 、 その他は 全て 対面で開催した。 本人についても単に居場所や他機関につなぐ という行動上の変化にとらわれず、一人ひとり の利用者にとって “ どんな体験を得られることが望ましいか ”“ どんな支援が 適切か”を相談担当 者を中心にアセスメントし、スタッフ会議で支援方針を立てるようにし た。行動上の変化は急 いてしまうと傷つきの上塗りになってしまうため、本人のペースを尊重しつつも相談担当が時 には調整役となって伴走する必要がある。 ② 安心・安全な居場所 居場所に関しては、基本の感染対策を徹底しながら 、若者がリアルに交流できる居場所とし て活動を維持継続した。現在も飲食を伴うプログラムは休止しているが、交通機関を利用して の遠方への外出イベントは再開することができた。新規の登録者は、令和 4 年度 18 名と順調 に増加した。体験参加できるプログラムの充実と令和 3 年度より始めた「ファーストクラフト」 というペーパークラフトやジグソーパズル、ハーバリウムなどの作業をメインとしたプログラ ムが雑談などのコミュニケーシ ョン に 緊張する方や苦手な方が活動ルームで過ごすことを試 みる機会となっている。 ③アウトリーチ型支援 メルクマールせたがやは、アウトリーチ型支援の一環で利用者の自宅もしくは近隣の公共機 関にて訪問相談を実施している。令和 4 年度は、家族相談から本人アプローチとして訪問を導 入するケース、他機関の訪問相談に同行したケースの他、世田谷ひきこもり相談窓口「リンク」 での訪問相談を行った。延べ訪問相談件数は 265 件と令和 3 年度より 86 件増加した。 また、前述の地域特性に合わせたサテライト整備 ( p. 72 ) にあるように、出張相談会は 5 つの 総合支所は毎月 1 回へと拡充しており、身近な場所での相談機会の提供が整備されつつある。 出張相談会は相談支援だけでなく他機関連携の機会としても機能している。 広義のアウトリーチである他機関連携は、事務局を務める「不登校・ひきこもり支援部会」 と「ひきこもり・就労支援部会」にて、構成機関を中心に連携をテーマに扱っている。令和 4 年度は、両部会 の 第 1 回目を 来場とオンラインの併用開催 にしたが、 2 回目以降は 来場 のみ で 開催した。対面で開催することにより、コロナ禍前の“顔の見える関係づくり”が促進され、 部会終了後に参加者が情報交換する姿が 見ら れた。 ④ せたがや若者サポートステーションとの地続き支援 令和 4 年 4 月に世田谷ものづくり学校から三軒茶屋の STK ハイツに移転 後も 同じ建物内で 引き続き 世田谷若者総合支援センター として日頃から連携している。 せたがや若者サポートス テーションとは、メルサポや合同プログラム 、地域イベントへの出店 など を行っている 。利用 者にとっても身近な存在となったことで、令和 4 年 度においては、並行利用者が 40 名 と就労 支援機関では最も多い人数となった。 令和 2 年度よりメルサポ、メルク・サポステ合同プログラムは両機関の担当スタッフの打合 せの時間を実施前後で取り、プログラムの目的や方向性を共有しながら取 り 組むことを継続し ている。引き続き、若者総合支援センターの運営の充実 のため 、プログラムの目的や計画、並 行利用者の情報交換や役割分担など、より良い 2 機関の連携の在り方を構築していく。 令和 4 年度は令和 3 年度に引き続き、共催のメルサポの特別枠として株式会社セックの協力 のもと、プログラミング体験、 AR 体験のプログラムを開催した。 ⑤青少年交流センターの福祉的就労の取組みとの連携 青少年交流センターは、世田谷区の若者施策である「若者の交流と活動の推進」の中心的機 関である。区内に 3 か所あり、各センターで生きづらさを抱えた若者の就労支援プログラムを 実施している。野毛青少年交流センターでは、「畑プロジェクト」という農業体験を実施してお り、希望丘青少年交流センター「アップス」では、「 P - work 」というカフェを 活用したプログ ラムと「 P - farm 」という農業体験を実施している。令和 4 年度は、 新たに 池之上青少年交流セ ンターでの駄菓子の売店が加わった。 これまで、メルクマールせたがやの利用者が福祉的就労の取組みに参加することはほとんど なかったが、せたがや若者サポートステーションを並行利用している若者が「 P - work 」に参加 した。居場所に参加している利用者同士で話題になるなど、就労体験の機会として認知が広が ってきている。また、青少年交流センターを居場所として利用する若者が増えてきている。各 機関のスタッフ同士は研修会や出張 相談会の開催、子ども・若者支援協議会などを通じて顔の 見える関係が構築されており、双方の取組みの理解は深 まっている。 3 ) 中高生世代への切れ目のない支援 メルクマールせたがやでは、早期支援・早期介入を目的に平 成 28 年度より ティーンズサポー ト事業を重点事業として取 り 組んでいる。 ①中学校との連携 令和 4 年度は公立中学校全校生徒へティーンズサポート事業のチラシを配布した。中学校訪 問は、直接の訪問とオンライン訪問の選択肢を設けて実施した。中学校訪問では、希望する中 学校の教職員を対象にティーンズサポート事業の説明をして事業周知を図るとともに連携の 意見交換を行うというものである。オンライン訪問の希望はなく、直接訪問を希望される学校 は 13 校あり、コロナ禍においても顔の見える連携のニーズは高いと感じた。不登校生徒が激 増している昨今、 教育と福祉の連携の実現に向けて今後も実践を積み重ねていく 。 ② 10 代を対象と する支援機関 との連携の充実 10 代の支援機関との連携では、 15 歳の義務教育課程、 18 歳の児童福祉といった支援や制度 の切れ目があるため、支援機関同士が情報を共有して、支援を必要とする若者が支援や制度の 狭間にこぼれ落ちないよう重なり合うような連携が重要である。 令和 4 年度においても、引き続き区児童相談所との連携が充実するとともに子ども家庭支援 課や教育相談室などと連携し、区内の若者支援機関として切れ目のない支援に取 り 組む。連携 の際には、子ども・若者支援協議会の担当者会議となる個別ケース検討会議を開催して、情報 交換や方針の共有などを行い、利用者が安心してつながれるように支援する。 4 ) 世田谷 ひきこもり相談窓口「リンク」におけるぷらっとホーム世田谷との連携 ・協働 令和 4 年 4 月 、年齢を問わずひきこもり当事者の方や家族を支援する、世田谷ひきこもり相談 窓口「リンク」が開設 され た。メルクマールせたがやは、これまでの若者のひきこもり支援の活 動やノウハウ、公認心理師や臨床心理士、精神保健福祉士 、社会福祉士 などの専門性を活かし、 社会的困窮 や 孤立した 状態にある 当事者を支援してきたぷらっとホーム世 田谷と協力して、 40 歳 以上のひきこもり当事者 も含めた全年齢 支援にあたる。 相談の初期段階から 2 機関が協働するこ とで見立てや対応を検討し、当事者のニーズに沿って支援を行っている。 2.令和 5 年度の取組 み 今後の課題は、大きくまとめると、支援を必 要とする 方 が 利用につながる「入口の支援」と社 会参加に向けて活動を広げていく「出口の支援」 の 2 本柱 といえる。令和元年度からの取組みを 継続するとともに新たな課題解決に向けた取組みを以下に抜粋する。 1 ) 世田谷ひきこもり相談窓口「リンク」におけるぷらっとホーム世田谷との連携 ・協働 世田谷ひきこもり相談窓口「リンク」 開設 から 1 年が経過した。 「 リンク 」 では、メルクマー ルせたがやとぷらっとホーム世田谷からそれぞれ担当者がついて当事者の支援にあたる。 2 機関 が協働することで、見立てや当事者のニーズに合わせて、 2 機関の強みを活かした支援の進め方 ができる。 「 リンク 」 に は、本人や親だけでなく、兄弟や知人などからも相談申込みがある。ま た、高齢福祉や障害福祉の支援機関からの問い合わせや相談も多く寄せられている。引き続き、 あらゆるニーズに応えられるように、支援 の選択肢を増やしていく 。 多 機関連携は、 個別ケース 検討会議で展開していくような、分野を横断した重層的支援のあり方を模 索しながら展開する 。 複合的な課題を抱える世帯への対応事例を蓄積していき、分野の垣根を越えた重層的支援が、区 内で確実に根づいていくことを目指し、従来型の支援や制度の狭間にあり支援が届きづらかった 層への、より良い支援体制の構築に取 り 組む。 「 リンク 」 では、 メルクマールせたがやとぷらっとホーム世田谷が共同で開催する「むすびば」 という居場所活動を行っている。令和 5 年度からは会場を 「リンク」のある建物 とし 、利用者が 参加しやすい場所で 利用者同士が 交流 できる機会の提供に取 り 組む 。 2 ) 早期支援・早期回復を目的とした中高生世代への切れ目のない支援 メルクマールせたがやは、所管課が子ども・若者支援課から生活福祉課に移管されたが、引き 続き区の若者総合相談センターに位置づけられており、 10 代の若者への早期支援であるティー ンズサポート事業を重点 事業とする。令和 4 年度の活動実績は、新規相談登録件数における 10 代の割合が 49 % に増加していることから、状態が 長期化・ 重篤化する前に相談利用につながって きていると考えられる。 また、支援を必要とする若者が制度の狭間にこぼれ落ちないようにするためには、複数 の機関 が重なり合うことで年齢による切れ目をなくし、支援のタスキをつなぐことが重要である。状況 に合わせてオンラインによる 事業周知といった広報活動、 関係機関への訪問 や個別ケース検討会 議の開催 など 接点 を増やしながら、中学校や高校などの教育機関、区児童相談所や子ども家庭支 援課といった児童福祉の機関との連携の実績を重ねていく。特に令和 4 年度 は、① 教育相談室や 不登校相談窓口への訪問、 ② 不登校保護者の つど いの参加 、③ ほっとスクール希望丘 を利用する 児童・生徒 の保護者 、 スタッフ同行 による メルクマールせたがや見学 など、教育との連携に取 り 組んだ。 今後も不登校 支援に携わる職員や、 生徒・保護者と直接つながれる機会 を大切にし、切 れ目のない支援に取 り 組む。 方針 項目 2019年度 中期 2020年 中期 2021年 長期 2022年 長期 2023年 支援を必要 とする若者 の掘り起こ し 地域特性に合わせ たサテライト整備 ・希望丘青少年交流センター「アップス」 での出張相談の実施 ・希望丘を拠点とした他機関連携(ほっ とスクール希望丘等) ・出張相談の効果検証 ・福祉的就労に係る連携強化 ・「リンク」開設に伴い、全年齢対象のひ きこもり相談支援へと拡充 ・アウトリーチ型支援を必要とする地域 の調査・検証 ・5支所における出張相談の 実施による地域別ニーズの 検証 ・サテライト機能の拡充(烏 山地域出張相談実施回数増) ・サテライト機能の拡充(5支所における 出張相談会を月1回の定例実施) 地域に根差した交 流 ・行事参加等による地域と若者の交流 ・民生委員・児童委員、青少年委員等と の連携 社会参加に 向けた動き 出しの支援 の充実 ・個別の専門相談 ・安心・安全な居場 所 ・家族支援の充実 ・アウトリーチ型 支援 ・職員の育成 ・プログラムの効果・検証 ・家族会、家族相談(来所・訪問) ・自宅等への訪問相談及び他機関との顔 の見える関係づくり ・来場とオンラインを併用し た出張セミナーの開催 ・ひきこもり相談窓口「リンク」における ぷらっとホーム世田谷との連携強化と協 働体制の構築 ・せたがや若者サ ポートステーショ ンとの地続き支援 ・メルサポによる利用者同士の交流 ・行事参加等による地域と若者の交流 (再掲) ・メルサポや合同プログラム の効果検証 ・若者総合支援センターとし ての連携強化 ・地域企業との若者向けプロ グラムの実施 中高生世代 への切れ目 のない支援 ・公立中学校との 連携 ・教育支援機関と の連携の充実 ・全校訪問の実施(進路決定の時期とな る10月~11月頃) ・SC、SSW等、不登校支援に関わる支援 者同士の連携 ・事業チラシの改訂 ・生活指導部会等への参加 ・ほっとスクールとの連携 ・世田谷区児童相談所、子ど も家庭支援課との連携 ・オンライン形式による学校 訪問の実施 ・中学校全校訪問の再開 ・教育相談室、不登校相談窓口の訪問 ・不登校保護者の集い、ほっとスクール希 望丘による保護者見学会の実施 【用語解説】 □ アウトリーチ :主に社会福祉の領域で使われる用語で、「支援者側から地域に出向いて支援を 必要とする人に必要な支援と情報を届ける活動」のこと。メルクマールせたがやでは、利用 者の自宅への訪問相談や地域に出向いての出張相談会などを実施している。また、他機関と の連携や支援ネットワーク構築も広義のアウトリーチ活動である。 □ アセスメント :「査定」と訳される用語で、相談者との面接場面でのやり取りの様子や聴取し た情報などを基に、相談者の心理状態や力のある部分といった能力、課題などを見立て、今 後の支援方針を計画すること。相談者を理解し 、適切な支援を提供することを目指す。 □ インテーク訪問 :初回の相談を訪問で実施すること。通常、初回相談はメルクマールせたが やへの来所で実施するが、本人や家族が来所困難な場合は電話での相談希望を受けて訪問に よる初回の相談を実施している。支援を必要とする人へのアウトリーチ支援活動のひとつ。 通常の訪問と同様にインテーク訪問においても、ひきこもりの本人の了承を前提としてお り、本人からの明確な拒否がある場合は実施しない。 □ エンパワメント : 個人や集団が本来持っている潜在能力を引き出し、湧き出させることを意 味 す る用語。利用者が本来の力を発揮できるようになることで、自ら主体的に課題解決に取 り 組めるようになると考え、支援者は利用者の強みや能力を尊重した肯定的な働きかけを行 う。 □ サテライト :ここでは、「拠点」という意味で使用している。メルクマールせたがやは世田谷 区の 三軒茶屋 が本拠 地であるが、世田谷区は区役所機能が 5 地域に分かれており、広域で人 口も多い自治体であることから、区民の身近な場所で支援を届けるためには「拠点」が各地 域に必要と考えており、サテライトとして出張相談会を 5 地域の総合支所や希望丘青少年交 流センター 「アップス」で定期開催している。 □ 生物・心理・社会モデル : 遺伝子や 身体機能 などの生物学的な面、気分や行動といった心理 学的な面、生活する社会 環境 や文化などの社会的な面という 3 つの 側面から 、課題や困難な 状況を 包括的にとらえるという 考え方。精神科医のエンゲルによって提唱されたモデル。 □ ピアサポート :「同じ悩みを抱える仲間同士の支え合い」を意味する用語。メルクマールせた がやにおいては、居場所活動はひきこもりに悩む本人同士のピアサポートの場であり、家族 会はひきこもりに悩む家族同士のピアサポートの場になっている。対等な関係性の中でお互 いに支え合いながら成長し、課題を解決していく。 □ 本人 :ここでは、「ひきこもりなど生きづらさを抱えた 方 」を指す用語として使用している。 メルクマールせたがやは その 方々 の 多様な自立や望む生き方をサポート する機関であり、家 族が利用主体の場合も“家族を通した「本人」への支援”を実施している。 STK ハイツ 5 F タイムライン 自動的に生成された説明 ○ アクセス 【東急田園都市線・世田谷線】 三軒茶屋駅徒歩3分 【東急バス】 三軒茶屋から徒歩1分 世田谷若者総合支援センター 令和 4 年度メルクマールせたがや事業報告書 < 令和 4 年 4 月~令和 5 年 3 月 > 令和 5 年 5 月 発行 編集・発行 世田谷若者総合支援センター メルクマールせたがや 事業運営 公益社団法人 青少年健康センター【茗荷谷クラブ】 〒 154 - 000 4 東京都世田谷区太子堂 4 - 3 - 1 STK ハイツ 5 階 TEL 03 - 3414 - 7867 なやむな FAX 03 - 6453 - 4750 HP https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/kusei/012/008/005/d00134311.html