写し 令和5年11月22日 世田谷区長 保坂 展人 様 世田谷区特別職報酬等審議会 会長 沼尾 波子 特別職報酬額等及び政務活動費の額について(答申) 令和5年8月2日付5世総第259号により諮問のあった標記の件について、別紙のとおり答申します。 世田谷区特別職報酬等審議会委員 会長 沼尾 波子 会長職務代理 外山 公美 委員 朝倉 宏美 委員 小島 和子 委員 鈴木 竹夫      委員 楯香 津美 委員 中村 重美 委員 永山 明  委員 山口 マリカ 答  申 1 はじめに 世田谷区特別職報酬等審議会(以下「審議会」という。)は、令和5年8月2日、世田谷区特別職報酬等審議会条例第2条の規定に基づき、区長から、区議会議員の議員報酬の額、区長、副区長、教育長及び監査委員の給料の額(以下「特別職報酬等」という。)並びに政務活動費の額についての諮問を受けた。 審議会は、第三者機関としての自覚と責任のもと、国及び他の地方公共団体における特別職報酬等の額や一般職の給与改定状況、加えて社会経済情勢等の多面的な要素を考慮し、第三者機関として客観的かつ公正な立場から審議を行った。 2 区長、副区長、教育長、監査委員、区議会議員の職責について 区政の最高責任者である区長は、区の現在のみならず未来を見据えるとともに、複雑多様化する区民要望を的確に捉え、区政の目指すべき将来像を実現していくために、高度な先見性や決断力、指導力が必要とされ、極めて重い職責を担っている。 副区長は、区長を補佐し円滑な区政運営を支える立場にあり、区長の意向を踏まえた領域や部を越えた全庁的な視野での政策判断や、国や都等関係機関との調整の役割を担っていることから、その職責は非常に重要である。 教育長は、教育委員会会議の主宰者であり、委員会の活性化等を図る立場にある。また、具体的な事務執行の責任者、事務局の指揮・監督者として教育行政を進めていくことが求められており、重要な職責を担っている。 監査委員は、区が執行する事務等の監査を通じ、行政の適法性及び妥当性を確保するとともに、地方自治行政の透明化を図ることを目的に設置されていることから、各委員が担う社会的責任は極めて重い。 区議会議員は、区民の代表として区議会を構成し、その活動を通じて区民要望の実現に向けて尽力するほか、執行機関の行財政運営が適正かつ公平、効率的になされているかをチェックする機能を果たすことが求められている。 また、人口減少や少子高齢化に加え、所得格差の拡大や災害対応など、地域を取り巻く行政課題の多様化・複雑化に伴い、自治体に求められる役割は大きくなっており、区の意思決定や行政のチェック、区民要望への対応を行う機関として区議会議員が担う役割と職責についても、その重要性を増している。 3 特別職報酬等の額について (1)基本的考え方及び区の現状 特別職報酬等は、その職務と職責に相応するとともに、他自治体の特別職報酬等の額や一般職の給与改定の状況、その他社会経済情勢及び区の財政状況等を勘案し、区民の理解を得られる適正な額であることが望ましい。 世田谷区における現在の特別職報酬等の月額及び、月額に地域手当及び特別給(期末手当)を加えた年間収入総額と他の地方公共団体(東京23区)との比較は、下表のとおりである(令和5年6月1日現在)。 区分 月額 現行額(円) 東京23区における順位 年収総額 現行額(円) 東京23区における順位 区長 1,050,100 21位 21,865,182 11位 副区長 808,300 23位 16,830,422 21位 教育長 763,300 19位 15,893,432 10位 常勤代表監査委員(*) 660,200 5位 13,746,684 2位 常勤監査委員(*) 640,200 8位 13,330,244 3位 区議会議員 議長 926,900 6位 16,230,019 5位 副議長 784,800 12位 13,741,848 8位 委員長 663,600 5位 11,619,636 4位 副委員長 631,700 9位 11,061,067 5位 議員 614,700 7位 10,763,397 5位 注:「東京23区における順位」は金額の多い順とする。  (*)東京23区において、常勤代表監査委員を選任しているのは9区、常勤監査委員を設置しているのは17区である。(令和5年6月1日現在) なお、世田谷区の場合、特別給(期末手当)の支給月数はすべての区分において、年間3.80月である。 (2)一般職の給与改定の状況 特別区人事委員会は、一般職の給与水準について、特別区内の民間従業員の給与水準と均衡させることを基本とし、毎年、給与に関する報告及び勧告を行っている。その基礎となる「職種別民間給与実態調査」の結果によると、本年は、月例給においては一般職の給与が民間従業員の給与を0.98%下回っており、この公民較差を是正するため、初任給及び若年層に重点を置きつつ、全ての級及び号給について1,000円以上引上げる勧告を行った。 また、特別給については、一般職の特別給(期末手当・勤勉手当)の年間支給月数が民間の特別給(賞与)を0.09月分下回っていることから、0.10月の引上げ勧告を行った。 4 政務活動費の額について 政務活動費は、区議会議員の調査研究その他の活動に資するために必要な経 費の一部として、条例に基づき区議会における会派又は議員個人に対し、交付される費用である。 世田谷区の政務活動費の額は、「世田谷区政務活動費の交付に関する条例」が施行された平成13年以来、月額240,000円で据え置かれている。 5 社会経済情勢及び区の財政状況について 政府は日本経済の状況について、月例経済報告(令和5年10月)で「景気は、緩やかに回復している。」としている。また、先行きについては「雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される」とする一方で、「世界的な金融引き締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念」や、「物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある」と指摘している。 事実、消費者物価指数の令和4年10月から令和5年9月までの平均値は前年同月比で上昇率が3.4パーセント上昇している。また、激化する中東情勢等、景気の先行きは引き続き不透明な情勢にある。 他方、区の財政状況は、令和4年度決算によると、実質収支が151億8,300万円の黒字であり、健全化判断比率からみても財政状況は健全であると言える。 また、特別区債の残高は、平成10年度の1,468億7,200万円をピークとし、令和4年度には555億9,500万円まで減少した。 しかしながら、区の財政見通しにおいても、特別区税について一定の増収を見込むものの、長期化する物価上昇が歳出を押し上げるとともに、地域経済の回復を妨げており、今後の見通しは引き続き不透明な状況にある。 6 結論 (1)改定の適否等について 審議会では、政務活動費の額、及び特別職報酬等の額、特別給について、区政を取り巻く社会経済情勢の動向や特別区人事委員会による勧告の経緯に加え、これまでの改定経過等を十分に考慮したうえで審議し、下記のとおり結論に至った。 ①政務活動費の額については、物価高による影響はあるものの、インターネットを活用し印刷費の経費を削減する等、デジタル化等を進めていくことで費用を抑える工夫の余地はあり、増額とする積極的な意義は認め難いとの意見が出された。 一方で、このような社会情勢から、区民感情としては引下げて欲しいという減額を望む意見も出されたが、新型コロナウイルスの収束に伴う調査活動の再開が見込まれることや、他自治体との比較・過去の推移等を踏まえ、現行の額に据え置くことが適正であるとの結論に至った。 なお、政務活動費の使途の情報公開に当たっては、より区民が分かり易い形となるよう帳簿類に検索機能を追加する等、公開方法のさらなる工夫を求める意見が出された。 ②区長、副区長、教育長、監査委員の給料月額及び議員報酬月額については、初任給及び若年層に重点を置きつつ、全ての級及び号給について1,000円以上引上げを意図した勧告であることに鑑み、特別職においても引上げることが妥当であるとの結論に至った。 ③特別給については、本勧告が公民較差是正のための引上げ勧告であることを尊重し、一般職の給与措置と同程度引上げることが適当であるとの結論に達した。 (2)改定額について ①特別職報酬等の額 審議会では、区長、副区長、教育長、監査委員の給料月額及び区議会議員報酬月額の引上率については、「公民較差である0.98%が妥当」とする意見と「管理職員(部長級)に適用される最低引上率である0.3%が妥当」とする意見に分かれ、統一した結論に至らなかった。そのため、この両意見を審議会の意見とする。 引上率ごとの影響額 表1 0.98%引上げ(100円未満切捨て) 区分 現行額(円) 改定額(円) 引上げ額(円) 区長 1,050,100 1,060,300 10,200 副区長 808,300 816,200 7,900 教育長 763,300 770,700 7,400 常勤代表監査委員 660,200 666,600 6,400 常勤監査委員 640,200 646,400 6,200 区議会議員 議長 926,900 935,900 9,000 副議長 784,800 792,400 7,600 委員長 663,600 670,100 6,500 副委員長 631,700 637,800 6,100 議員 614,700 620,700 6,000 表2 0.3%引上げ(100円未満切捨て) 区分 現行額(円) 改定額(円) 引上げ額(円) 区長 1,050,100 1,053,200 3,100 副区長 808,300 810,700 2,400 教育長 763,300 765,500 2,200 常勤代表監査委員 660,200 662,100 1,900 常勤監査委員 640,200 642,100 1,900 区議会議員 議長 926,900 929,600 2,700 副議長 784,800 787,100 2,300 委員長 663,600 665,500 1,900 副委員長 631,700 633,500 1,800 議員 614,700 616,500 1,800 引上率に対する主な意見 ・勧告の内容は民間の給与水準と非常に関わる。このため、目減りした実質賃金分を補うための引上げを行い、経済を回すという考え方に立てば、勧告を尊重し、公民較差0.98%を引上げる考え方が妥当である。 ・特別職は選挙や議会の同意を得るなどして選ばれることから、その報酬等は職員とは別に考えるべきであり、公民較差0.98%の引上げを行うことが妥当と考える。 ・他区と比較し、決して低い給与水準にあるとは言えないが、引上げの勧告を尊重すべきことに異論はないため、管理職員に適用される最低引上率である0.3%が妥当と考える。 ・勧告の考え方がなかなか生活実感に馴染まないと感じるものの、若年層に重点を置きつつ、全体として公民較差0.98%を引上げる形で差が生じないよう配慮されている。この流れに沿うよう管理職員に適用される最低引上率0.3%とすることが妥当と考える。 ②期末手当 審議会は、区長、副区長、教育長、監査委員及び区議会議員の期末手当について、0.10月引上げることが妥当との結論に至った。 (3)改定の実施時期について 一般職と同時期の改定が望ましい。 7 おわりに 本審議会は、区長の諮問に対し、以上のとおり答申する。 なお、特別職等各位におかれては、昨今の社会情勢下など将来見通しが極めて難しい時代の中でも、区民の信頼と負託に応え、住民福祉の向上のため、一層尽力されることを願うものである。