令和元年度世田谷区各会計歳入歳出決算審査意見書 概要 2世監第34号 令和2年9月4日 世田谷区長 保坂ノブト 様 世田谷区監査委員 萩原賢一 同        阿部ヨシアキ 同        山口ヒロヒサ 同        ツガミヒトシ 令和元年度世田谷区各会計歳入歳出決算及び世田谷区基金運用状況の審査結果について 地方自治法第233条第2項及び第241条第5項の規定により、令和元年度世田谷区各会計歳入歳出決算及び世田谷区基金運用状況を審査したので、別紙のとおり意見を提出します。 第1 審査の概要 1 審査の実施方針 地方自治法第233条第2項の規定に基づく決算審査については、令和2年度世田谷区監査基本計画を踏まえ、各会計歳入歳出決算の計数等が適正であるかを確認するとともに、予算がその目的に従って効率的、経済的、合法的に執行されているかを審査した。 2 審査の対象事項 審査の対象とする事項は、令和元年度各会計歳入歳出決算の状況とした。 3 審査の実施期間 審査は、令和2年6月から令和2年8月までの間に実施した。 4 審査の重点事項 審査の実施にあたっては、次の点に特に留意した。 (1)財政運営が健全かつ合理的になされているか。 (2)予算執行は、適正かつ効率的になされているか。 (3)収入確保の努力が十分なされているか。 5 審査の実施方法 審査は、監査委員と事務局により、次の方法で実施した。 (1) 監査委員による審査 決算関係資料及び事務局からの報告等をもとに各部長等関係職員から事情聴取を行った。 (2) 事務局による審査 決算関係資料に基づき、前年度決算や当初予算との比較及び決算状況の推移等の分析を行い、令和元年度各会計歳入歳出決算の特徴や問題点を検出するとともに、必要に応じて関係職員からの事情聴取等の方法により確認した。 6 審査の対象書類 審査の対象書類は、各会計歳入歳出決算書、各会計歳入歳出決算事項別明細書、実質収支に関する調書、財産に関する調書とした。 第2 審査の結果 1 決算の総括 (1)各会計歳入歳出決算の総額 各会計歳入歳出決算の総額は、次のとおりである。 金額は、千円未満を四捨五入した。 一般会計 歳入額 3295億2826万円 歳出額 3166億2798万1千円 差引額 129億27万8千円 国民健康保険事業会計 歳入額 816億1155万6千円 歳出額 812億4210万3千円 差引額 3億6945万3千円 後期高齢者医療会計 歳入額 219億5278万4千円 歳出額 213億7602万6千円 差引額 5億7675万8千円 介護保険事業会計 歳入額 689億5401万7千円 歳出額 659億8627万8千円 差引額 29億6774万円 学校給食費会計 歳入額 25億2660万9千円 歳出額 24億9234万円 差引額 3426万9千円 合計 歳入額 5045億7322万6千円 歳出額 4877億2472万7千円 差引額 168億4849万9千円 2 審査の結果  (1)様式及び計数の確認について 審査に付された令和元年度の各会計歳入歳出決算、各会計歳入歳出決算事項別明細書及び実質収支に関する調書、財産に関する調書の様式は関係法令に準拠しており、また、計数は証拠書類等と照合した結果、正確であることを確認した。 (2)財政運営について 令和元年度の各会計歳入歳出予算の執行、財政運営及び財産管理の状況は、適正に処理されていると認められた。 (3)意見  @ 社会経済動向と区政運営 令和2年1月20日に閣議決定された「令和2年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」によると、令和元年度の日本経済は、海外経済の減速等を背景に外需が弱いものの、雇用・所得環境の改善等により、内需を中心に緩やかに回復している。今後についても、緩やかな回復が続くことが期待されるものの、消費税率引上げ後の経済動向を引き続き注視するとともに、台風等の被害からの復旧・復興の取組を更に加速し、あわせて米中貿易摩擦など海外発の下方リスクによる悪影響に備える必要がある。また、令和2年度については、雇用・所得環境の改善が続き、経済の好循環が進展する中で、内需を中心とした景気回復が見込まれる、とされた。 こうした経済情勢の中、区では、令和元年度は、基本計画の6年目及び新実施計画(後期)の2年目を迎え、基本計画に掲げる重点政策に基づき子育て・若者支援、高齢者・障害者施策、災害対策の強化、自然エネルギーの活用など、様々な施策を積極的かつ確実に展開し、暮らしの基盤を築く取組みを区民の参加と協働により推進してきた。 ここで、令和元年度の区政運営における各会計の歳入歳出予算を総括し、以下のとおり意見を述べる。 A 財政状況 令和元年度決算額は一般会計及び4つの特別会計で、歳入総額5,045億7,322万6千円、歳出総額4,877億2,472万7千円となり、歳入歳出差引額は168億4,849万9千円であった。 一般会計の決算状況を見ると、歳入総額は3,295億2,826万円で、前年度と比較すると6.5%の増であった。歳出総額は3,166億2,798万1千円で、前年度と比較すると6.2%の増であった。 歳入歳出差引額である形式収支は129億27万8千円で、このガクから翌年度へ繰り越すべき財源である30億8,875万9千円を差し引いた実質収支は98億1,151万9千円となり、前年度と比較すると28.0%の増であった。 実質収支から前年度の実質収支を差し引いた単年度収支は21億4,340万4千円であった。これに財政調整基金への積立額10億7,821万4千円(取崩しはなし)を加えた実質単年度収支は32億2,161万8千円となった。なお、地方債の繰上償還は行わなかった。 次に、普通会計での財政指標であるが、財政力指数(指数が大きいほど財源に余裕があるものとされている)ワ0.71で前年度と比べ0.02減、実質収支比率(概ね3〜5%が適度であるとされている)ワ4.9%で同1.0ポイント増、公債費負担比率(数値が高いほど一般財源等に占める公債費の比率が高く財政構造の硬直化が進んでいるものとされている)ワ2.4%で同0.3ポイント増、経常収支比率(割合が高いほど財政が硬直化しているとされている)ワ81.4%で同2.1ポイント増であった。経常収支比率については、前年度に比べ財政の硬直化傾向がうかがえるものの、財政指標全体としてほぼ適正水準を維持しているといえる。 また、国民健康保険事業会計、後期高齢者医療会計、介護保険事業会計及び学校給食費会計の4特別会計の決算状況を見ると、それぞれの目的に応じた財政運営が行われたものと認められる。   B まとめ 世田谷区の令和元年度当初予算における財政見通しは、歳入の根幹である特別区税について、ふるさと納税を活用した他自治体への寄附額拡大に伴う著しい減収が見込まれつつも、人口増に伴う納税者数の増加等を踏まえ、一定の増収を見込んだ。また、特別区交付金は、財源である固定資産税・市町村民税法人分の増などを見込み、前年度比で増額とした。 一方、景気の緩やかな回復基調が続くと見込まれつつも、ふるさと納税の拡大による特別区税への影響や、地方消費税の算出方法の見直しや消費税率10%への引上げにあわせた地方法人税の国税化の拡大による減収に加え、幼児教育無償化に伴う財政負担の増加など、今後の行政サービスへの影響が危惧され、区財政は予断を許さない状況にあった。 このような状況の中で、区は、基本構想に掲げる九つのビジョンの実現に向け施策を推進するとともに、私立保育園運営費や社会保障関連経費の増加、本庁舎整備や梅ヶ丘拠点施設(保健医療福祉総合プラザ)の整備、学校など老朽化した公共施設の改築・改修などの財政需要に的確に対応する必要があった。このため、事業手法の見直しなど不断の行政経営改革に取り組むとともに、より効果的な施策の実現を目指し、施策の優先順位を見極めながら事業の改善に取り組んだところである。  令和元年度の一般会計歳入歳出決算は、歳入においては、ふるさと納税による約54億円の影響を受けたものの、納税者数の増などにより特別区税は増加した。歳出については、幼児教育無償化への対応、梅ヶ丘拠点施設の整備経費や庁舎等建設等基金積立金、道路用地取得経費の増などにより、民生費、総務費、土木費などが前年度と比べて増加した。一方、財政調整基金積立金の減により、諸支出金が減少した。 以上の結果、決算収支では、実質収支が約98億円となり、前年度と比較した単年度収支は約21億円、実質単年度収支は約32億円となった。また特別区債残高は、玉川野毛町公園の用地取得や梅ヶ丘拠点整備事業などについて新規発行したことにより約698億円となり、積立基金残高については、基金からの繰入金を抑制し、庁舎等建設等基金に約50億円、災害対策基金に約15億円、財政調整基金に約11億円をそれぞれ積み立てたことなどにより、約1,060億円と過去最高となり、引き続き基金残高が特別区債残高を上回ることとなった。 特別会計である国民健康保険事業会計、後期高齢者医療会計、介護保険事業会計及び学校給食費会計の令和元年度各会計においては、概ね適正な財政運営が行われた。なお、国民健康保険事業会計については、被保険者数の減少により、歳入・歳出とも減少した。学校給食費会計は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため令和2年3月からの区立小中学校の休業により、歳入・歳出とも減少した。また、保険料の収入未済額は、滞納繰越分の減により国民健康保険事業会計、後期高齢者医療会計及び介護保険事業会計のいずれも減少となった。さらに、区では、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料及び介護保険料については、平成30年度より延滞金の徴収を行っており、令和元年度も一定の実績をあげている。 今後も、歳入の確保を図るとともに、負担の公平性・公正性について区民の理解を得られるよう、各会計における収入未済額の縮減に向けて、債権管理の重要性を職員が一層認識し、引き続き徴収強化に努められたい。また、納付方法の利便性や納付機会の拡充に努め、区民が納付しやすい環境づくりを工夫することにより、収納率の向上の取組みを着実に進められたい。 令和元年度の財政運営は、総合的に見て、景気が緩やかに回復していたものの、今後の区財政の見通しが不透明な状況にある中、一般会計予算は第4次までの補正を行い、様々な区政課題に積極的に対応しつつ、積立基金からの繰入を抑制するなど、比較的健全な財政運営であったと評価できる。 しかしながら、現在、新型コロナウイルス感染症の影響により、景気は厳しい状況にあり、区においても、今後、特別区交付金や特別区税の大幅な減収が見込まれるなど、区の財政状況は深刻化することが予想される。 こうした状況を踏まえ、区では、切迫する区民ニーズに応えるため、事務事業等の緊急見直しを行い、事業の休止、先送り、規模の縮小等に取り組んでいる。区においては、国や東京都の新型コロナウイルス感染症対策や経済対策を注視しつつ、感染拡大防止はもとより、区内の事業活動や区民生活の安全・安心を守るための対策に最優先で取り組まれたい。 区では、令和元年度から成果とコストを重視した行政評価に取り組んでいる。あらかじめ設定した成果指標や目標の達成状況を踏まえた客観的かつ総合的な評価結果に基づき、更なる事業の改善や事業手法の最適化を推進されたい。 また、日本銀行による金融緩和政策の継続により、市場金利は、今後も極めて低い水準で推移していくものと推測される。今後見込まれる新型コロナウイルス感染症の影響の長期化に対応するため、減収補填債を発行し、必要な経費に活用することも想定される。起債と基金残高の状況に留意し、安全性を第一に考え、効率性にも配慮した資金運用に努められたい。 なお、区は、事務事業の適正の確保とリスクマネジメントの強化を図るため、コンプライアンスの推進に取り組んでいる。しかしながら、依然として窓口での証明書等の誤交付や区民への郵送物の誤記載、誤送付が散見される。区民に信頼される区政を構築するためにも、職員一人ひとりが日常の業務の中でリスクマネジメントを実践するとともに、区民の貴重な税金を1円たりとも無駄にしないという責任感と緊張感を持って、事務処理にあたるよう、徹底されたい。 区においては、震災・風水害対策、児童相談行政の迅速・的確な対応、区民の健康と安全対策の推進など、区民生活に密着した課題が山積している。今後も、新型コロナウイルス感染症への対応を見据えつつ、政策課題の優先順位や社会経済状況を十分踏まえ、着実な事務事業の執行に取り組み、最少の経費で最大の効果をあげられるよう職員一人ひとりが区民の視点やコスト意識を持ち、区民の負託に応える行財政運営を推進することを望むものである。 詳細な内容については、次の担当部署へご連絡ください。 監査事務局 電話 03 5 4 3 2 2 7 6 3 ファクシミリ 03 5 4 3 2 3 0 5 6