平成29年度世田谷区各会計歳入歳出決算審査意見書 概要 30世監第32号 平成30年9月6日 世田谷区長 保坂ノブト 様 世田谷区監査委員 萩原賢一 同        阿部ヨシアキ 同        石川ユキオ 同        福田妙美 平成29年度世田谷区各会計歳入歳出決算及び世田谷区基金運用状況の審査結果について 地方自治法第233条第2項及び第241条第5項の規定により、平成29年度世田谷区各会計歳入歳出決算及び世田谷区基金運用状況を審査したので、別紙のとおり意見を提出します。 第1 審査の概要 1 審査の実施方針 地方自治法第233条第2項の規定に基づく決算審査については、平成30年度監査基本計画を踏まえ、各会計歳入歳出決算の計数等が適正であるかを確認するとともに、予算がその目的に従って効率的、経済的、合法的に執行されているかを審査した。 2 審査の対象事項 審査の対象とする事項は、平成29年度各会計歳入歳出決算の状況とした。 3 審査の実施期間  審査は、平成30年6月から平成30年8月までの間に実施した。 4 審査の重点事項  審査の実施にあたっては、次の点に特に留意した。 (1)財政運営が健全かつ合理的になされているか。 (2)予算執行は、適正かつ効率的になされているか。 (3)収入確保の努力が十分なされているか。 5 審査の実施方法 審査は、監査委員と事務局により、次の方法で実施した。 (1) 監査委員による審査  決算関係資料及び事務局からの報告等をもとに各部長等関係職員から事情聴取を行った。 (2) 事務局による審査  決算関係資料に基づき、前年度決算や当初予算との比較及び決算状況の推移等の分析を行い、平成29年度各会計歳入歳出決算の特徴や問題点を検出するとともに、必要に応じて関係職員からの事情聴取等の方法により確認した。 6 審査の対象書類  審査の対象書類は、各会計歳入歳出決算書、各会計歳入歳出決算事項別明細書、実質収支に関する調書、財産に関する調書とした。 第2 審査の結果 1 決算の総括 (1)各会計歳入歳出決算の総額 各会計歳入歳出決算の総額は、次のとおりである。 金額は、千円未満を四捨五入した。      一般会計 歳入額 3027億6071万1千円 歳出額 2952億7939万1千円 差引額 74億8132万1千円 国民健康保険事業会計 歳入額  935億6635万6千円 歳出額  917億8606万7千円 差引額  17億8028万9千円 後期高齢者医療会計 歳入額  212億1130万9千円 歳出額  204億 426万3千円 差引額  8億 704万6千円 介護保険事業会計 歳入額  633億5673万5千円 歳出額  616億2971万9千円 差引額   17億2701万6千円 学校給食費会計 歳入額  6億6091万1千円 歳出額  6億5474万3千円 差引額    616万8千円 合計 歳入額  4815億5602万2千円 歳出額  4697億5418万2千円 差引額  118億 184万円 2 審査の結果 (1)様式及び計数の確認について  審査に付された平成29年度の各会計歳入歳出決算、各会計歳入歳出決算事項別明細書及び実質収支に関する調書、財産に関する調書の様式は関係法令に準拠しており、また、計数は証拠書類等と照合した結果、正確であることを確認した。 (2)財政運営について  平成29年度の各会計歳入歳出予算の執行、財政運営及び財産管理の状況は、適正に処理されていると認められた。 (3)意見 @ 社会経済動向と区政運営  平成30年1月22日に閣議決定された「平成30年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」によると、平成29年度の日本経済は、雇用・所得環境の改善が続く中で、緩やかに回復している。海外経済が回復するモトで、輸出や生産の持ち直しが続くとともに、個人消費や民間設備投資が持ち直すなど民需が改善し、経済の好循環が実現しつつある。また、平成30年度の日本経済は、海外経済の回復が続くモト、雇用・所得環境の改善が続き、経済の好循環が更に進展する中で、民需を中心とした景気回復が見込まれる、とされた。  こうした経済情勢の中、区では、平成29年度は、基本計画の4年目及び新実施計画(前期)の最終年度を迎え、子育て・若者支援、高齢者・障害者施策、災害対策の強化や自然エネルギーの活用など、基本計画に掲げる重点政策を積極的かつ確実に展開し、参加と協働による世田谷の推進を図ってきた。  ここで、平成29年度の区政運営における各会計の歳入歳出決算審査の結果を総括し、以下のとおり意見を述べる。     A 財政状況  平成29年度決算額は一般会計及び4特別会計で、歳入総額4,815億5,602万2千円、歳出総額4,697億5,418万2千円となり、歳入歳出差引額は118億184万円の黒字であった。  一般会計の決算状況を見ると、歳入総額は3,027億6,071万1千円で、前年度と比較すると1.4%の増であった。歳出総額は2,952億7,939万1千円で、前年度と比較すると2.6%の増であった。  歳入歳出差引額である形式収支は74億8,132万1千円で、このガクから翌年度へ繰り越すべき財源である14億8,428万4千円を差し引いた実質収支は59億9,703万7千円となり、前年度と比較すると30.8%の減であった。  実質収支から前年度の実質収支を差し引いた単年度収支は、26億7,190万4千円の赤字であった。これに財政調整基金への積立て額22億7,680万9千円(取崩しはなし)を加えた実質単年度収支は、3億9,509万6千円の赤字となった。なお、地方債の繰上償還は行わなかった。  次に、普通会計での財政指標であるが、財政力指数(指数が大きいほど財源に余裕があるものとされている)ワ0.74で前年度と比べ0.01増、実質収支比率(概ね3%から5%までが適度であるといわれている)ワ3.3%で同1.4ポイント減、公債費負担比率(数値が高いほど一般財源等に占める公債費の比率が高く、財政構造の硬直化が進んでいるものとされている)ワ3.1%で同0.1ポイント増、経常収支比率(70%から80%までが適正水準といわれている)ワ83.1%で同0.6ポイント増であった。経常収支比率については、引き続き財政の硬直化傾向がうかがえるものの、財政指標全体としてほぼ適正水準を維持しているといえる。  また、国民健康保険事業会計、後期高齢者医療会計、介護保険事業会計及び学校給食費会計の4特別会計の決算状況を見ると、それぞれの目的に応じた財政運営が行われたものと認められる。 B まとめ  世田谷区の平成29年度当初予算における財政見通しは、歳入の根幹である特別区税について、ふるさと納税による大きな減収を見込みつつも、納税者数の増加等を踏まえ、前年度比で微増を見込んだ。また、特別区交付金は、財源である市町村民税法人分が前年度を大きく下回ったものの、平成28年度の交付実績及び基準財政需要額の増を見込み、前年度比で微増とした。  一方、景気の緩やかな回復基調が続くと見込まれつつも、ふるさと納税の拡大による特別区税への影響や、消費税率10%エの引上げにあわせた地方法人課税のさらなる偏在是正措置により、特別区交付金への影響が懸念されるなど、区財政は一段と先行き不透明な状況にあった。  こうした中で、区は、基本構想に掲げる九つのビジョンを実現するべく施策を推進するとともに、社会保障関連経費の増加、梅ヶ丘拠点施設の整備や玉川総合支所改築、学校など老朽化した公共施設の改築・改修経費などの財政需要に的確に対応する必要があった。このため、新たな事業の実施や拡充について、より効果的な施策策定を目指し、創意工夫を重ね積極果敢に事業の組み立てを行った。また、後年度を見通した行政経営と歳出構造の見直しをさらに進めた上で、柔軟な発想による手法の転換や事業の見直しを行うなど対応が図られたところである。   このような中で、平成29年度の一般会計歳入歳出決算は、歳入においては、ふるさと納税による大きな影響を受けたものの、納税者数の増などにより特別区民税は微増となったが、特別区たばこ税の減により特別区税全体では、前年度比で約1億円の減額となった。歳出については、庁舎等建設等基金積立金や小学校改築経費の増などにより、総務費、教育費などが前年度と比べて増加した。一方、公園や道路の用地取得経費の減などにより、土木費が減少した。  以上の結果、決算収支では、実質収支が約60億円となり、前年度と比較した単年度収支は約27億円の赤字、実質単年度収支は約4億円の赤字となった。また特別区債 残高は、小学校改築経費の増などに伴い新規発行額が増加したことにより約593億円となり、積立基金残高については、基金からの繰入金を抑制し、財政調整基金に約23億円、庁舎等建設等基金に約52億円をそれぞれ積み立てたことなどにより、約867億円と過去最高を更新し、引き続き基金残高が特別区債 残高を上回ることとなった。  特別会計である国民健康保険事業会計、後期高齢者医療会計、介護保険事業会計及び学校給食費会計の平成29年度各会計においては、概ね適正な財政運営が行われた。なお、中学校給食費会計は平成29年度から学校給食費会計と名称が変更となり、公会計の対象校が大幅に増加した。また、保険料の収入未済額は、国民健康保険事業会計及び介護保険事業会計は減少したが、後期高齢者医療会計では、若干の増となった。区は、負担の公平性・公正性について区民の理解を得られるよう、今後も、各会計における収入未済額の縮減に向けて、債権管理体制の強化や職員の専門性の向上を図られたい。また、納付方法の利便性をより高め、区民が納付しやすい環境づくりを工夫することにより、収納率の向上の取組みを着実に進められたい。  平成29年度の財政運営は、総合的に見て、景気が緩やかに回復しているものの、今後の区財政の見通しが不透明な状況にある中、一般会計予算は第3次までの補正を行い、様々な区政課題に積極的に対応しつつ、積立基金からの繰入を抑制するなど、比較的健全な財政運営であったと評価できる。  しかしながら、将来の人口推計等を踏まえ、今後の区の財政状況を見通すと、保育需要の増大に伴う私立保育園運営費の増加、高齢化の進展などに伴う社会保障関連経費の増加、公共施設等の更新にかかる経費の増加が見込まれ、平成32年度(2020年度)からは本庁舎等整備の経費負担も見込まれる。その一方で、ふるさと納税の影響による特別区税の減収拡大が行政サービスに及ぼす影響や、地方消費税の配分見直しによる地方消費税交付金の減収に伴う区財政への影響が危惧される。また、平成31年(2019年)10月からの消費税率10%エの引上げにあわせた法人住民税のさらなる国税化による特別区交付金への影響も懸念される。さらに、幼児教育の無償化による経費負担等の動向にも注視する必要がある。  区は、こうした厳しい財政状況等を踏まえつつ、平成30年度から4年間の新実施計画(後期)を着実に推進していくために、持続可能で強固な財政基盤を構築するとともに、さらなる行政経営改革を進められたい。  また、極めて低い金利水準が続く中ではあるが、「世田谷区中期財政見通し(平成30年度から34年度まで)(2018から2022年度まで)」を踏まえ、起債と基金残高とのバランスにより一層留意しながら計画的な資金運用に努めるとともに、新公会計制度の効果的な運用により、資産やコストの見える化を図り、施策の費用対効果について区民への説明責任を果たされるよう要望する。   そして、将来にわたり区民が安心して暮らせる世田谷区をめざして、区民の要望と信託に応えるべく、最少の経費で最大の効果を挙げるよう、効率的で効果的な行財政運営に努められたい。    詳細な内容については、次の担当部署へご連絡ください。  監査事務局  電話 03 5 4 3 2 2 7 6 3  ファクシミリ 03 5 4 3 2 3 0 5 6