令和3年度 定期監査報告書 世田谷区監査委員 3世監第105号 令和4年1月7日 世田谷区議会議長様 世田谷区長様 世田谷区教育委員会様 世田谷区選挙管理委員会様 世田谷区農業委員会様 世田谷区監査委員 田中文子 同 中根秀樹 同 上島義盛 同 河村みどり 令和3年度定期監査の結果について 地方自治法第199条第1項、第2項及び第4項の規定により実施した監査の結果に関する報告を、同条第9項の規定に基づき、次のとおり提出します。 なお、本監査に当たっては、萩原賢一前監査委員は令和3年5月14日まで、山口裕久前監査委員及び津上仁志前監査委員は同月18日まで、田中文子監査委員は同月15日以降、上島義盛監査委員及び河村みどり監査委員は同月19日以降関与しました。 また、同法第199条の2の規定により、田中文子監査委員は、総務部の監査については除斥されました。 地方自治法(昭和22年法律第67号)第199条第1項、第2項及び第4項に基づく令和3年度の定期監査については、世田谷区監査基準(令和2年2月13日監査委員決定)に基づき実施した。 第1 監査の概要 1 対象部局等 (1)総合支所・本庁 領域 総合支所 対象部局 世田谷総合支所、北沢総合支所、玉川総合支所、砧総合支所、烏山総合支所 企画総務領域 対象部局 政策経営部、デジタル改革担当部、交流推進担当部、総務部、庁舎整備担当部、区長室、危機管理部、財務部、施設営繕担当部、会計室、区議会事務局、選挙管理委員会事務局、監査事務局 区民生活領域 対象部局  生活文化政策部、地域行政部、スポーツ推進部、環境政策部、経済産業部、農業委員会、清掃・リサイクル部 保健福祉領域 対象部局  保健福祉政策部、高齢福祉部、障害福祉部、子ども・若者部、児童相談所、保育部、世田谷保健所、住民接種担当部 都市整備領域 対象部局  都市整備政策部、防災街づくり担当部、みどり33推進担当部、道路・交通計画部、土木部 教育領域 対象部局  教育委員会事務局 (2)施設等 施設区分 まちづくりセンター 実施基準 4年 施設数 7施設 施設名 池尻、経堂、梅丘、松原、奥沢、祖師谷、上祖師谷 施設区分 出張所 実施基準 4年 施設数 1施設 施設名 経堂 施設区分 清掃事務所 実施基準 毎年 施設数 3施設 施設名 世田谷、玉川、砧 施設区分 児童館 実施基準 5年 施設数 5施設 施設名 池尻、深沢、船橋、祖師谷、粕谷 施設区分 保育園 実施基準 5年 施設数 10施設 施設名 三宿、三軒茶屋、桜、若竹、奥沢西、深沢、新町、船橋東、八幡山、芦花 施設区分  公園管理事務所 実施基準 隔年 施設数 2施設 施設名 世田谷、烏山 施設区分 土木管理事務所 実施基準 隔年 施設数 2施設 施設名 世田谷、烏山 施設区分 幼稚園 実施基準 5年 施設数 2施設 施設名 中町、砧 施設区分 小学校 実施基準 5年 施設数 11施設 施設名 若林、三宿、駒沢、池之上、深沢、玉川、二子玉川、中町、砧、明正、烏山北 施設区分 中学校 実施基準 5年 施設数 6施設 施設名 太子堂、梅丘、桜木、奥沢、砧、芦花 施設区分 地域図書館 実施基準 4年 施設数 4施設 施設名 梅丘、砧、玉川台、桜丘 施設区分 その他施設 実施基準 3年 施設数 2施設 施設名 民家園、郷土資料館 2 対象事項 監査の対象とする事項は、次のとおりとした。 (1)令和2年度における財務事務及びその他の事務の執行 (2)令和3年度における監査実施日までの財務事務及びその他の事務の執行 3 実施期間 令和3年5月から同年11月までとした。 (1)総合支所・本庁 領域 総合支所 事務局監査 5月6日から5月25日まで 監査委員による監査 世田谷総合支所 6月28日 北沢総合支所 6月29日 玉川総合支所 6月29日 砧総合支所 6月24日 烏山総合支所 6月25日 企画総務領域 事務局監査 5月6日から6月18日まで 監査委員による監査 7月19日 区民生活領域 事務局監査 5月6日から6月18日まで 監査委員による監査 7月20日 保健福祉領域 事務局監査 5月6日から6月18日まで 監査委員による監査 7月21日 都市整備領域 事務局監査 5月6日から6月18日まで 監査委員による監査 7月26日 教育領域 事務局監査 5月6日から6月18日まで 監査委員による監査 7月27日 4 実施方法 監査は、監査委員及び事務局により、次の方法により実施した。 (1)監査委員による監査 監査対象事項について、監査資料等による審査を行うとともに、必要に応じて関係部課長等から事情聴取を行う。 (2)事務局による監査 監査対象事項について、監査資料等による調査、検証を行うとともに、必要に応じて担当者から事情聴取を行う。 5 着眼点 監査の着眼点は以下のとおりとした。 (1)監査対象部局の事務の特性や執行上のリスクを考慮し、リスクの高い事務に着眼して実施した。 (2)監査対象部局の事務事業の執行について、合規性、経済性、効率性、有効性が図られた運営がなされているかに着眼して実施した。 (3)特に、新型コロナウイルス感染症により影響を受けた事務事業の執行について、重点的に検証した。 第2 監査の結果 1 監査結果の概要  監査の着眼点に沿って実施した監査の結果、財務に関する事務について、以下のとおり、是正や改善を求める指摘事項等が認められた。 また、軽微な誤りや検討を要する事項については、是正や訂正を行うよう口頭で注意したので、各所管課においては適正な事務の執行に努められたい。 その他の事務事業については、おおむね適正に執行されていたと認められる。 2 是正や改善を求める事項 監査の結果、次に示すような適正な処理を徹底するために是正や改善を求める事項が認められた。当該所管課はもとより、他の所管課においても事務処理の見直しや改善の参考とされ、適正な事務の執行に努められたい。 契約権限の委任事務を適正に行うべきもの 区立小中学校で執行される学校維持管理に係る委託料は、年度当初に各小中学校へ一律に予算分割されるものではなく、状況に応じて協議を行い、その都度、教育委員会事務局教育環境課から個別に小中学校に予算分割されており、それを受けて各校長は委託契約を締結している。 また、世田谷区契約事務規則(以下「契約事務規則」という。)では、区立小中学校の校長が行うことができる委託契約は、1件予定価格50万円以下の契約とされている。 本年度の施設監査では、新型コロナウイルス感染予防対策として換気のために開けている窓からほこりや砂が舞い込み冷暖房機のフィルター汚れの原因になったこともあり、区立小中学校において冷暖房機薬品洗浄委託契約が多く締結されている状況が目立った。その中で、複数の区立小中学校では、契約期間が複数に分かれた同一事業者との契約が、教育委員会と協議の上でその都度締結されており、それらの合計金額が1校あたり50万円を超えているケースが見受けられた。 教育委員会事務局は、小中学校との協議により学校全体の冷暖房機について薬品洗浄の必要性を認識できる立場にあり、委託業務の内容等を精査した上で、必要に応じて入札手続を進めて教育長契約とするなど、契約権限の受任に関して適切に配慮した経済的な予算執行が可能だったが、各小中学校から申し出される度に、あくまで区立小中学校の校長の契約権限内でできる契約としての予算分割を個別に行っていた。 区立小中学校において、特別な事情もなく業務内容を複数に分け、それぞれ同一事業者と契約している事例については、過去の定期監査報告書の中でも適正な処理の徹底を求めており、教育委員会からも改善措置の報告を受けている。 教育委員会事務局は、こうした点も踏まえ、区立小中学校の老朽化が進むことに伴って今後増加する機器等の保全需要に計画的、経済的に対応し、作業等の規模に応じて契約権限に基づく適切な契約手続きを実施されたい。また、区立小中学校において、経済的、計画的な観点で契約事務を行うよう、指導徹底されたい。   3 意見 地方自治法第199条第10項の規定により、令和2年度を中心とする監査対象期間において、区が実施している財務に関する事務及び事務事業の執行状況について、区の組織及び運営の合理化に資するため、監査の結果に添えて意見を述べる。   (1)財務に関する事務について(適正な処理を徹底すべき事項、全庁的に取り組むべき課題) 指導事項のうちリスクアプローチ(注)による観点から、大きなミスにつながるおそれがあるものや基本的な事項の理解が不足しているものについて記載する。各所管課においては、事務処理の見直しや改善の参考とされ、適正な事務の執行に努められたい。 注 リスクアプローチとは、行財政運営上の様々なリスク(組織目的の達成を阻害する要因)をあらかじめ識別し、そのリスクの量的・質的重要性を評価して監査を行う手法をいう。   @適正な債権管理と事務引継ぎについて 使用料等の歳入の収入において、納入義務者に対して納入の通知をしたのち、納期限までに納入しなかった場合で、法律に特別の定めがない場合は、地方自治法に基づき、期限を指定して督促しなければならないとされている(地方自治法第231条の3第1項、同第240条第2項)。 しかし、総合支所保健福祉センターに属する歳入の徴収に関する事務において、次のような事例が見受けられた。   ・組織改正による事務移管により引き継いだ債権について、証拠書類等が長年不明で、督促等ができずに財務システム上のデータのみとなっていたことから、債権を機械的に繰越し処理していた。 歳入徴収者は、債権の管理状況を十分に把握し、適正な処理を行うよう努めるとともに、今後、本件のようなケースが発生しないよう、特に事務移管等の際は、責任ある事務引継ぎを行い、適切な事務の執行ができるよう留意されたい。 A適正な契約事務について ア 見積書の徴取について 随意契約によろうとするときは、契約事務規則第39条及び第40条に規定に基づき、契約の実務担当者は、あらかじめ、予定価格を定めるとともに、契約条項その他見積もりに必要な事項を示して、なるべく2人以上から見積書を徴さなければならないとされている。見積書は契約行為の根拠となるものであり、契約の申込みを明らかにし、かつ、区の予定価格に照らし合わせて申込み価格の妥当性を判断するためのものである。 しかし、所管課契約において、見積書に見積日の記載がない例のほか、次のような事例が見受けられた。   ・保健福祉領域所管の受水槽用給水管の修繕ほかにおいて、緊急対応として、見積書を1者からしか徴取していない契約を、多数、締結していた。 契約の実務担当者は、見積書の徴取の意義を再確認し、緊急性の度合いを十分に見極めた上で公平に契約の相手方を選定するとともに、経済性に配慮した予算執行に努められたい。   ・基金運用における契約において、事前に事業者から提出された、契約に係る説明資料の内容に誤りがあったことが、契約締結後に発覚し、後に、契約内容を従前に復するに至った。 契約の実務担当者は、行おうとする契約の内容と見積書の内容に疑義がないか、区の示す仕様・契約条件と合致しているかを十分に確認した上で、適正に契約を締結されたい。   イ 請書の徴取について 契約書の作成を省略する場合においては、契約事務規則第45条の規定に基づき、契約の実務担当者は、契約の適正な履行を確保するため請書、公文書その他これに準ずる書面を徴さなければならないとされている。しかし、都市整備領域所管における請書の徴取に際して、次のような事例が見受けられた。   ・改修作業委託の見積書を徴取した際に、見積書の金額が消費税抜きの金額であることを見誤り、見積書の金額を消費税が含まれた額として予定決定を行い、請書を徴取していた。そして、履行終了後、請求に基づき支出した後に契約金額の誤りが発見され、追加で消費税分を支出していた。 契約の実務担当者は、見積書徴取の際には消費税の有無をはじめとする見積書内容の確認を慎重に行った上で請書を徴するなど、適正な執行に努められたい。 ウ 契約権限の委任事務について 契約事務規則第3条第1項は、契約権限の委任について規定しており、別表で所管課長において行うことができる契約は、定期刊行物及び新聞の購読並びに例規類集の追録並びに原則として1件予定価格50万円以下の契約としている。 しかし、区民生活領域所管において、次のような事例が見受けられた。 ・施設の給水管の漏水調査委託において、漏水箇所の特定ができなかったことを理由に、漏水箇所を特定し修繕するための委託契約を、同じ事業者に別契約として続けて3回締結し、総額は所管課長が契約できる予定価格を大きく超えていた。 契約の内容によっては、継続して必要となる作業等の予測をした上で、契約権限の委任の趣旨を踏まえ、契約の実務担当者は、契約方法を検討するなど、計画性・経済性に配慮した事務執行に努められたい。 エ 講師等の派遣依頼を伴う事業の意思決定とそれに係る報償費の支出について 講師等の派遣依頼を伴う事業の実施にあたっては、実施起案等で講師等への依頼内容についての意思決定を行った上で講師等に依頼を行うとともに、支出の際は、支出内容を明らかにした決定文書としての起案文書を添付することとなっている。しかし、複数の所管課において、次のような事例が見受けられた。 ・区民生活領域所管でのオンライン会議の講師謝礼で、講師の決定や講師に依頼する内容を決定した起案文書が作成されていなかった。 ・企画総務領域所管での研修会の講師謝礼で、研修会の実施起案は作成されているが、講師への依頼文書が添付されていなかった。 ・区民生活領域所管での検討委員への謝礼で、事業の実施起案決定後に日時・開催方法等を変更し開催しているが、変更に係る起案が作成されていないため、事業の実施起案と支出起案の内容が相違していた。 報償費を伴う講師等の依頼にあたっては、契約書等の取り交わしがないため、区と講師等との契約関係があいまいになりがちである。講師等を依頼する事業の実施にあたっては、依頼内容を明確にした上で、意思決定を行い、講師等への依頼を行われたい。また、事業内容等を変更する際は、支出命令に疑義が生じないよう、その実施内容の意思決定を確実に行うとともに、講師等への通知等も的確に行われたい。 オ 産業廃棄物処理委託の契約書類について 産業廃棄物の処理に関しては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)及び廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(以下「廃棄物処理法施行令」という。)では、産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、廃棄物処理法及び廃棄物処理法施行令で定める者に委託しなければならないこと、契約書類には受託者に係る運搬業又は処分業の許可証の写しを添付することなど、委託の基準を厳格に定めている。 しかし、受託者の産業廃棄物運搬業又は処分業の許可の確認に関して、次のような事例が見受けられた。   ・区民生活領域所管の看板シート等の撤去業務委託において、請書に受託者の産業廃棄物の収集運搬業及び処分業の許可書の写しが添付されていなかった。 ・総合支所所管の医療関係廃棄物処理委託において、特別管理産業廃棄物処理の許可期間が契約期間中に期限を迎えており、新たな許可証の確認をしていなかった。 廃棄物の処理を伴う委託契約を締結する際は、契約の実務担当者は、産業廃棄物の排出事業者として、廃棄物処理法等の関係法令を必ず確認し、適正な事務の執行に努められたい。 B支出事務について 支出命令書を発行しようとするときは、世田谷区会計事務規則第49条の規定に基づき、収支命令者は、所属年度、支出科目、支出金額、債権者名及び印鑑の正誤並びに支出内容が法令又は契約に違反する事実がないかどうかを調査しなければならない。しかし、保健福祉領域所管における支出命令書の発行に際して、次のような事例が見受けられた。 ・車椅子の点検・整備委託(単価契約)契約で、1回に11台以上実施した場合には、1台当たりの点検・整備代の他に出張料を上乗せして支払うと定めているにもかかわらず、1回に15台実施した際の支払いで、5台分の出張料を含めずに支払いを行っていた。 この出張料分については、後日、契約者に追加で支出されているものの、支出事務を行うに当たっては、収支命令者は、支払いの根拠となる契約書(請書)を必ず確認し、適正な執行に努められたい。     C補助金の事務執行について 補助金は、公益上の必要がある場合に限り支出できるものであり(地方自治法第232条の2)、公正かつ有効に使用されることが求められている(世田谷区補助金交付規則第3条)。そのためには、補助対象事業において、補助金の交付申請から清算にいたる手続きその他の事務の執行が適正に行われていることが必要である。併せて、区が東京都などから歳入する補助金事務に関しても、適正な事務執行が求められる。しかし、補助金の事務執行に際して、次のような事例が見受けられた。   ・都市整備領域所管において、補助金交付要綱では様式に請求日の記載を定めているが、請求日の記載のない請求書で支払いを行っていた。 ・教育領域所管において、要綱では、支給額について「100円未満の端数が生じた場合は、これを切り捨てるものとする。」と定めているが、切り捨てを行わずに支給していた。なお、過払い分については、翌年度、監査の指摘を受けて返納手続きを行い、返納されている。 ・教育領域所管において、補助金の決算額に1,139,806円の補助対象外経費が含まれている補助事業実績報告書を収受していた。なお、翌年度、監査の指摘を受けて、補助事業実績報告書を再提出させ、対象外経費分の交付決定の取消しを行い、当該補助金は返還されている。 ・企画総務領域所管において、出納整理期間中に東京都の区市町村補助金の調定処理を行う際に、旧年度とするところを誤って新年度として調定し、収入されていた。 教育領域所管の2件については、当該補助金が区に返納・返還されているものの、補助金事務を行うに当たっては、補助金事務担当者は、補助事業等の目的及び内容の適正など補助金の交付申請に対する調査はもとより、交付対象経費の使途等実績報告書の審査を徹底するなど、今後も、補助金の交付並びに歳入に係る適正な事務処理の確保に努められたい。     D指定供用物品の管理について 世田谷区物品管理規則第35条の規定に基づき、会計管理者が特に指定した供用物品については、指定物品受払簿又はそれに代わるもの(以下「受払簿」という。)を備え、供用状況を明らかにしておかなければならない。この規定に基づき、世田谷区物品管理要綱第15条では、郵券、ごみ処理券、その他の有価証券などが指定されている(以下「指定供用物品」という。)。 しかし、総合支所所管の指定供用物品の管理について、次のような事例が見受けられた。   ・郵券を払い出す際に、数日分の郵券をまとめて払い出し、その間の使用状況を受払簿に記載せず、その郵券は、金庫に別保管していた。また、別保管中の郵券に関しては、枚数の管理をしていなかった。 受払簿への記載は、指定供用物品の現物確認に欠くことができないものである。物品管理者は、指定供用物品の管理に当たっては、受払簿への適正かつ正確な記載に努められたい。   (2)各領域の事務事業について @企画総務領域 区は、令和2年度に、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策として実施された特別定額給付金事業において、短期間に迅速かつ的確な事務の執行が求められ、マイナンバーカードによる電子申請の推奨など、国の方針と実務の現状との間で苦労しながらも、都内最大の92万区民への給付事業を完遂するため、専管組織を設置し庁内横断的に事業に取り組んだ。いままで経験のない規模の新規事業に取り組んだ今回の実績を次につなげるため、業務の進行管理や個人情報管理、配慮が必要な区民への対応などの多くの課題について、様々な面から検証や振り返りを行い、今後の事業執行に生かされたい。 区は、24時間安全安心パトロール事業を平成16年度から継続して実施しており、区民の自主的な防犯活動や警察との連携を図ることで、刑法犯認知件数が減少するという一定の成果を挙げている。パトロールの内容では、特殊詐欺に関する該当エリアでのスポット広報や行方不明事案発生時の不明者捜索支援、新型コロナウイルスの感染予防啓発広報など、パトロールカーの機動力を最大限に活用した区民の安全安心に直結するパトロール活動を臨機応変に展開している。一方で、区民の期待に応えた的確な運用を継続するためには、事業従事者の適正勤務の促進や情報共有の徹底、事案ごとの指揮系統の整理統一など、更なる体制強化を図る必要があるとして、令和4年度からの契約を行うための準備を進めている。今後も、機動力と広報力を最大限に発揮できる体制を整え、警察との連携を十分に図りながら、区民の期待と信頼に応える実効ある運用に努められたい。 公共施設の整備においては、工事におけるコストの削減の観点のみならず、中長期的な保守管理、工事の質や安全性の確保が重要であり、工事価格を適正に定めることは、円滑な契約や工事の質、安全性の確保につながる。区は、設計図書の精度を上げ、それぞれの工事内容に応じた予定価格を適正に設定するため、実勢価格を積算価格に適切に反映するよう、区の積算標準単価を適時更新している。更に工事に関する諸条件を過不足なく反映させるため、「現場調査チェックリスト」、「実施設計図面チェックリスト」を活用し、設計内容に漏れが出ないよう工夫をしている。また、平成30年7月から一定規模の設計に対し積算の専門家である建築積算士の活用を開始し、より設計精度を上げる取組みも行っている。建築資材の価格変化等を適切にとらえるとともに、積算における項目の漏れなど過不足がないようにされたい。また、建築業界の動向や国による働き方改革の状況なども注視しつつ、受注者側の適正な利潤確保による技術向上にも繋がるよう、更なる予定価格の適正な設定に取り組まれたい。 A区民生活領域 区では、「(仮称)世田谷区地域行政推進条例」の策定に向け、論点の整理や区民への周知などを行っている。保健福祉や防災・防犯、更には街づくりなど、地域や地区の様々な課題を解決していくには、地域コミュニティの活性化に向けた適切な情報共有、住民参加の機会づくり、地域人材の交流などをバランス良く進めていく必要がある。総合支所においては、それぞれの地域特性を踏まえた地域・地区での取組みや意見が条例の策定に反映されるよう、積極的に働きかけるとともに、住民に身近なまちづくりセンター等の現場の声を十分に反映させた上で、地域行政の推進に努められたい。 区は、新型コロナウイルス感染症対策として在宅勤務が進むなど、家庭内における環境の変化を見越して、女性の悩みごとやDV(ドメスティック・バイオレンス)についての相談体制を令和2年度から強化している。また、特別定額給付金を受け取るために、DV被害者等から相談が寄せられた際には、総合支所の子ども家庭支援センターと連携して対応し、新規の相談ケースとして、DV被害者等を子ども家庭支援センターの窓口につないでいる。これらは、DV被害者等を守るために有効であり、コロナ禍において、継続した支援が必要である。引き続き、関係機関と連携しながら、配偶者暴力相談支援センター機能を活用し、DV被害者等への支援策への取組み強化に努められたい。 区は、「世田谷区地球温暖化対策地域推進計画(2018年度〜2030年度)」において、温室効果ガス排出量を2013年度比で2030年度に26.3%削減、2050年度80%削減等の目標を定め取組みを進めている。令和2年10月16日には、区民の生命と財産を守り持続可能な社会の実現に向けて「世田谷区気候非常事態宣言」を行い、2050年までに区内の二酸化炭素排出量実質ゼロを目指すことを表明したが、計画をより一層推進するため、現在、計画見直しに向けた検討に着手している。また、区民や事業者に地球環境問題への関心と理解を深めてもらうための取組みの一環として実施した令和2年度の「環境エネルギー・ラボ2020inせたがや」では、コロナ禍であったことから、オンラインによる開催など工夫を凝らしながら実施している。引き続き、区民一人ひとりの行動変容につながる温室効果ガス排出量の削減目標を達成する取組みを推進されたい。 区は、新型コロナウイルス感染症の拡大により区内経済に大きな影響が生じる中、区内中小・小規模事業者の経営安定を図るための経済対策を実施している。具体的には、中小企業の資金繰りを支援する「緊急融資」、事業の多角化や業態転換を図る事業者の支援、プレミアム付区内共通商品券や「せたがやPay」による消費喚起策等を実施している。コロナ禍においては、テレワークやDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進、非接触型サービスの展開等、事業を取り巻く環境は著しく変化していることから、常に実施した事業の効果を測るとともに、事業者のニーズを見極めながら事業を展開することが非常に大切である。引き続き、事業者のニーズに見合った支援策の取組みに努められたい。   B保健福祉領域 区は、平成26年度から「メルクマールせたがや」で、生きづらさを抱えた若者の社会参加や社会的自立に向けた支援を行っている。令和2 年度は相談機能の拡充として、従来から行っていた希望丘青少年交流センターでの出張相談会に加え、新たに5地域の総合支所内で出張相談会を開始した。これにより、コロナ禍で公共交通機関の利用を躊躇していた「メルクマールせたがや」の利用者が近隣の支所で相談を継続できるなどの効果が見られた。また、区が令和3年3月に策定した「世田谷区ひきこもり支援に係る基本方針」では、令和4年4月より年齢を問わず相談ができる「(仮称)ひきこもり相談窓口」の開設を打ち出し、相談窓口を明確化することとしている。今後も、「メルクマールせたがや」の専門性や、他の専門機関とのネットワーク等を生かし、生きづらさを抱えた若者が適切な支援につながれるよう取り組まれたい。 区では、令和2年度の児童相談所の開設に伴い、虐待通告窓口を児童相談所に一本化し、児童相談所が初期対応を判断するとともに、子ども家庭支援センターとアセスメントシートやマニュアルを共通化した。これにより、一時保護等の介入が必要な事例は法的権限と専門性を持った児童相談所が、子育てサービス等の利用が必要な事例は子ども家庭支援センターが対応するなど、役割分担と迅速な対応が可能となった。更に、世田谷区要保護児童支援協議会における関係機関の情報共有に加え、各保健福祉センター内では、4課を横断的につなぐ連携会議が新たに機能整備され、組織的に日常的な情報共有と連携を行うことで、迅速かつ効果的な対応に取り組む状況がうかがわれた。年々、養育困難相談件数や児童虐待の受理件数が増加している中で、児童虐待の予防・早期発見には、行政の関係所管をはじめ、地域とのネットワークが大切である。今後も、人材育成や地域とのネットワークづくりに留意し、児童相談所と子ども家庭支援センターの連携体制を更に強固にして、児童虐待の予防と早期発見に取り組まれたい。 区では、新型コロナウイルス感染症患者の増加に対応するため、令和2年9月に、地域保健課の新設と各総合支所健康づくり課保健相談係の保健師を指揮命令系統に置いたほか、全庁職員の応援体制により保健所機能を強化した。また、発熱相談センター相談業務等への民間看護師の活用や、患者データ入力等の民間委託など様々な手法により順次人員体制の強化を図ってきた。これらにより柔軟な業務体制を整備するとともに、各種業務フローの可視化、保健所各課の役割分担の明確化も加え、保健所全体として負担軽減を図り、組織的に業務を継続する環境を整備した。加えて、患者数の急増に伴い増加した自宅療養者に対し、区独自策として架電による健康観察及び医療相談、委託事業者によるオンライン診療、訪問診療、薬剤配送等を実施したほか、中等症患者への酸素濃縮器の運搬も開始した。区は今後も医療機関や関係所管等との連携を密にしながら、適時適切な情報提供や集団発生の防止に取組みを継続するとしており、体制強化の取組みを柔軟に組み合わせるなど、対応する職員の健康にも留意しつつ、区民の健康を守るため引き続き取り組まれたい。 区では、今年度から新型コロナワクチンの住民接種を開始し、当初は予約が殺到し混乱が相次いだが、コールセンターの回線数の増加や予約システムの入替により、つながりにくさはほぼ解消されている。また、区以外で実施の職域接種や国・都の大規模接種センター等様々な実施機関での接種記録も国の接種記録システム(VRS)により一元的に管理、把握できる仕組みとなっている。3回目の接種についてワクチンの確保や医療従事者の確保などの課題は残るが、今まで培ってきた実績や経験を活かし、希望する区民ができる限り早期に接種を受けられるよう、取り組まれたい。   C都市整備領域 千歳烏山駅周辺では、京王線連続立体交差事業をはじめ、駅前広場、都市計画道路補助216号線の都市計画事業が進んでいる。こうした機会を捉え、駅周辺の更なる発展を目指し、地元の街づくり協議会からの地区街づくり計画原案を受け、区では、令和3年6月に、「千歳烏山駅周辺地区地区計画」及び「千歳烏山駅周辺地域地区街づくり計画」の決定を行った。本地区計画等では、街並み誘導型を導入し、良好な街並みの形成と買い物空間の確保を図るとともに、建物の1階部分の用途を制限し、商業・業務系とすることで商店街の賑わいを創出する計画としている。また、駅南北商業地の均衡を図るため、用途地域を商業地域に変更し、同時に地区計画による敷地面積の最低限度を定め、建物の共同化を誘導する計画となっている。防災面では、地区計画の策定と同時に行った用途地域の変更に併せて防火地域を拡大するとともに、都市計画道路補助216号線沿道においては、耐火建築物等を誘導するなど、防災性の向上を図る計画としている。今後は、これらの計画を有効に活用し、主要な地域生活拠点にふさわしい駅周辺街づくりの実現に取り組まれたい。 区では、木造住宅密集地域の解消に向けて、国や東京都の補助金等を活用した道路や公園等の公共施設の整備や、東京都の不燃化特区制度を活用した老朽建築物の建替えなどを促進してきた。令和7年度まで延長された新たな不燃化特区制度では、対象地区の不燃領域率が70%に到達するとその年度をもって助成金の支援は終了となるとされたほか、対象となる老朽建築物の建替えを更に促進するための要件の見直し、無接道敷地等対策コーディネーター派遣制度の創設などの変更が行われた。区は、相談会の開催など、これまでの取組みを継続・拡充しながら、不燃領域率70%の早期実現と更なる防災性向上に取り組んでいる。また、無接道敷地等対策コーディネーター派遣支援制度を活用した無接道敷地対策に取り組むため、対象地区の洗い出しを実施した。今後も、不燃化特区制度や国の社会資本整備総合交付金を活用し、本庁と支所が連携して、不燃領域率の早期の目標達成と地域の防災性の向上に努められたい。 令和2年10月18日、調布市内の東京外かく環状道路工事現場付近において、道路の地表面が陥没する事象が発生した。区は、陥没が発生した直後の10月20日に、外環事業者から状況の説明を受け、原因究明の調査や掘進完了箇所の安全性の確認等について要請書を提出した。また、この事象の中立的な立場での確認、検討を目的として設置された「東京外環トンネル施工等検討委員会 有識者委員会」が12月18日に調査状況の中間報告を公表したことから、区は、説明会による区民への説明や再発防止策や安全対策等について、2回目の要請書を提出した。外環事業者は、再発防止策として掘進箇所の地盤の再確認、掘進時の管理基準値の見直し、振動・騒音の緩和対策、地表面変状の確認や巡回監視の強化、工事状況等の地域住民への情報提供などを見直すとしている。区としても、引き続き外環事業者に対して適切な対応や情報提供を求めるとともに、区民への丁寧な説明と対応を求められたい。 区では、令和元年台風第19号に伴う浸水被害の状況を踏まえ、「世田谷区令和元年台風第19号に伴う浸水被害検証委員会」を設置し、浸水被害発生のメカニズム等の検証を進めてきた。令和2年10月には、同検証委員会の検討結果をもとに、区は最終報告を公表した。この報告では、河川や下水道の排水施設、台風当日の気象・河川水位等の状況を整理し、水防活動として、樋門(ひもん)・樋管(ひかん)といった水門の操作や多摩川の洪水に関する避難勧告等発令の状況等をまとめた上で、コンピュータシミュレーションにより、台風第19号通過時の浸水発生状況の再現を行い、浸水要因を確認し、水門操作の的確性を検証している。また、浸水の発生要因を解消した場合のシミュレーションも行った。これらを踏まえて、区は水防態勢をこれまで以上に強固にするとともに、土のうステーションの増設、排水ポンプ車の配備により水防資機材を充実させた。今後も、このような浸水被害軽減策に取り組むとともに、土のうステーションの増設、雨水貯留浸透施設の整備など流域対策を推進し、国、東京都、隣接自治体等と相互に連携を図り、継続的に浸水対策に取り組まれたい。   D教育領域 児童・生徒数の増に加え、小学校の35人学級が実施となり、区立小中学校においては、改築して間もなく教室が不足するような状況も生じている。普通教室確保に対応するため、短期間で特別教室等を転用改修する「改修設計・工事」や「増築の設計・工事」が困難なことから、「増築棟リース」を採用した事例もあった。今後も学校ごとの施設状況を踏まえながら、効率的かつ効果的な施設整備手法を検討されたい。一方、施設監査で訪れた学校では、建物の老朽化に伴う設備関係の不具合の改善を求める声が多く聞かれた。児童・生徒等の安全を第一とする観点から、適時適切な対応を図られたい。 区は、令和3年12月に教育総合センターを開設した。教育総合センターの機能の一つとして乳幼児教育支援センターがあり、乳幼児期の教育・保育の推進拠点としての役割を担っていく。区は、これまでも、令和元年度から本格実施している世田谷版アプローチ・スタートカリキュラムを踏まえた、乳幼児期の教育・保育と小学校以降の教育との円滑な接続の実現や、乳幼児期の教育・保育現場へのアドバイザー派遣による助言や支援の充実を図ってきた。保育者の資質や専門性の向上に向けた、幼稚園・保育園共通の研修の体制・体系を構築するとともに、引き続き、公私立、幼稚園・保育所等の施設の種別を問わない形での連携や幼稚園・保育所等と区立小中学校との連携の促進を図るため、「学び舎」の仕組みの活用も含め、教育委員会の各所管はもちろん、保育部、子ども・若者部などの関係各所管と連携しながら、取組みを進められたい。 区は、国のGIGAスクール構想に基づいて、児童・生徒への1人1台のタブレット端末配備と校内通信ネットワークの整備を行っている。令和3年度から高速大容量のインターネット接続が可能となったことで、タブレット端末を同一時間帯に複数の学級で使用してもスムーズに授業を進められるようになり、動画教材等の大容量ファイルも授業に活用できる環境が整った。また、令和3年度からは新たな学校緊急連絡情報配信サービスが導入され、お知らせの電子化によるペーパーレス化や効率化の推進、保護者とのコミュニケーションの活性化、子どもたちの安全に関わる情報の迅速な配信に効果を上げており、こうしたICTを活用した取組みについては評価できる。しかし、学校現場では、教員のスキルの向上や教室授業とオンライン授業の両立、子どもたちへのネットリテラシーの啓発など、様々な課題を抱えていた。ICTを活用した教育の定着については、今後の区の取組みにかかっていることを念頭にソフトの充実を図られたい。 区においては、特別支援教育や、いじめ、不登校に関する相談件数が年々増加し、内容も複雑化しており、また、学校としても、第三者による専門的かつ客観的な観点からの、継続した支援・助言を望む声が広がっていることを背景に、専門チームを設置している。専門家による支援グループは「特別支援教育巡回グループ」のほか、「教育支援グループ」があり、いじめなどの様々な学校課題に関する専門的な支援なども行っている。また、令和4年度からは不登校の困難事例への対応を支援する「不登校支援グループ」を新たに設置する予定である。グループ間では、障害、不登校、いじめといった多様で複合的な事案に対し、各専門グループに所属する教育、心理、福祉などの専門職種が、ケース会議での情報共有などを通じて、相互に連携が図られる。それぞれの専門性を発揮して支援に取り組み、子ども、保護者、学校の包括的な支援につながるよう期待している。 教育委員会では、利用者満足度や貸出者数、予約受付数、コストその他の指標の総合的・客観的な分析・検証を委託し、その成果物を、世田谷区立図書館運営体制あり方検討委員会において資料として活用してい    る。同検討委員会からの報告を受け、区では魅力ある図書館づくりに向け、中央図書館のマネジメント機能の強化、民間活用、(仮称)図書館運営協議会の設置の3つを柱とする取組みをまとめている。令和4年度から5年度までの「第2次世田谷区立図書館ビジョン・第3期行動計画」の中で、具体化に向けた検討を進められたい。また、コロナ禍を受けて、予約確保済み図書の貸出宅配サービスの実施や、電子書籍サービスの運用開始などに取り組んでいる。こうした非来館型サービスの充実は評価できるが、一方で、施設監査で訪れた地域図書館の中には、雨漏りへの対応に苦慮している図書館が複数あり、梅丘図書館においては、正面入り口のコンクリートの壁に激しい破損が見られるなど、誰もが安心して利用できる図書館とはいえないという状況が危惧された。ソフト面での充実と合わせて、建物の保守・保全の重要性に目を向け、利用環境の改善を図られたい。 終わりに 以上、令和2年度を中心とする財務事務の執行状況や事務事業等について意見を述べてきた。 財務事務については、例年と同様、適正な契約事務の執行に係る問題が多く認められる。事業実施にあたっては、どのような契約が必要となるのかを検討し、関係法令等を確認の上で、適切な仕様書等の作成及び適正な積算や見積書の徴取等を行う必要がある。更に、契約権限を踏まえた契約方法を選択し、また必要な場合には契約変更を行い、最終的な検査行為と支出行為に至ることとなる。管理監督者は、これら一連の流れの中で個々の事務手続きがどのような意味を持ち、また当該事務手続きにおいていかなるリスクがあるのかを職員に理解させるなど、組織的にリスク管理を行う体制を構築するよう、指導・管理を徹底する必要がある。 また、事業実施にあたっての歳入・歳出手続きにおける事務上のミスだけではなく、区民等への通知その他の事務でのミスなども散見された。コロナ禍により区政を取り巻く環境が大きく変化している今だからこそ、いま一度基本に立ち返り、法令等を十分に確認して事務を適正に執行することが求められている。区では、令和2年度から「世田谷区コンプライアンス基本方針」に基づくリスクマネジメントの取組みを開始しているが、各管理監督者においては、本報告書に記載の事項について、自所属でも起こりうるリスクとして認識し、組織的なリスクマネジメントの強化を図られたい。 なお、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、世田谷保健所の感染症対策業務やワクチン接種業務においては、庁内全ての部及びその職員の協力のもとに、区一丸となって円滑な業務実施に努めていることに対し、その努力を評価する。今後とも、庁内連携の上で、緊急的な課題への対応に努められたい。 更に、令和2年度においては、新型コロナウイルス感染症の事務事業への影響が多大であり、実施手法の効率性など、区民の目がこれまで以上に区政に向けられることともなった。試行錯誤の中での事業実施となった部分も多いが、これらの事業の評価、検証を進め、この間の経験や実績を今後の事業実施に活かすとともに、行政需要の優先順位や継続性を十分に見極めた重点的な取組みを心掛けられたい。 感染症対策は引き続き大きな課題であるが、自粛期間の長期化で大きな影響を受けた区内経済の活性化や地域コミュニティの醸成、コロナ禍において取組みが進んだDXの更なる推進、地域資源と連携したSDGsの取組みなど、パンデミック後の区民福祉の向上につながる取組みがあわせて求められている。 区では、令和4年度から令和5年度の2年間を計画期間とする「(仮称)世田谷区未来つながるプラン(実施計画)」を策定中であり、この計画は、これまでの計画の継続ではなく、コロナ禍により大きく変化する社会状況を踏まえ、次期基本計画策定につながる計画としていく必要があるとしている。DXや行政経営改革の取組み等を併せて推進していく中で、社会状況の変化にも適切に対応しつつ、事業の進行管理と実績の評価・検証を着実に実施されたい。 新型コロナウイルス感染症の感染状況や地域経済の動向等、今後の見通しが不透明な中、行政経営改革の徹底とともに、DXの観点を踏まえた抜本的な業務プロセスの見直しを図る必要がある。優先すべき事務事業の選択、財源の確保などに全力で取り組み、真に必要な区民サービスの維持・向上をめざして、最少の経費で最大の効果を生み出す施策に着実に取り組み、区民から信頼される区政運営に努められたい。