タイトル 令和5年度公金運用計画 (計画期間 令和5年6月から令和6年5月まで) 令和5年6月策定 作成所属 世田谷区会計室 目次 1.区を取り巻く経済・金融動向と公金運用計画の考え方 2.歳計現金等 (1)資金収支の見通し (2)歳計現金等の管理・運用 3.積立基金 (1)積立基金残高 (2)積立基金の管理・運用 (3)積立基金運用実績 内容 1.区を取り巻く経済・金融動向と公金運用計画の考え方 令和5年6月に発表された月例経済報告では、我が国の経済の基調判断を「景気は、緩やかに回復している」としている。 先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があるとしている。 また、金融情勢をみると、令和5年4月に公表された「経済・物価情勢の展望」では、日本銀行は、2%の物価安定の目標を持続的・安定的に実現させるため、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続していくこととし、令和5年6月の政策委員会・金融政策決定会合でも、この金融政策は維持され、短期金利に対するマイナス金利の適用の継続に加え、長期金利(10 年)も引き続きゼロ%程度で操作していくこととしている。 このため、金利については、現在の水準またはそれを下回る水準で推移することが想定されている。 財務省出典の資料を参考に、平成25年4月から令和5年6月までの金利状況(各月初日の数値)を折れ線グラフに表わしている。 一方、区の財政状況は、歳入の根幹である特別区税、特別区交付金ともに前年度から増収を見込んだものの、ふるさと納税の影響や世界的な景気後退への懸念など、予断を許さない状況が継続している。 過去と比較しても極めて低い金利水準など公金運用には困難な状況が続く中、区を取り巻く経済・金融動向等を注視しながら、世田谷区公金管理方針に基づく安全性(元本の保全)を重視して、流動性(現金化の容易度)に万全の注意を払いながら、効率性(収益の向上)を目指していく。 2.歳計現金等 歳計現金等とは、一般会計、国民健康保険事業会計、後期高齢者医療会計、介護保険事業会計、学校給食費会計、保管金等歳入歳出外現金、高額療養費等資金貸付基金、美術品、文学資料等取得基金、以上の総額をいう。 (1)資金収支の見通し 令和5年度の資金収支の状況は、例年同様に特別区税や国民健康保険料を収納する時期の関係から、年度当初から6月にかけて一時的に支払準備資金に余裕がない状況が予想される。 しかし、その後は令和5年度賦課分の納期がはじまることから、基本的には収入超の状況が続き、年度を通じても収入が支出を上回ると予想される。 (2)歳計現金等の管理・運用 支払準備資金を指定金融機関の普通預金で管理する。 支払準備資金が不足する場合は、金額と期間を踏まえた上で、繰替運用を行う。 繰替運用とは、資金不足に対応するために、基金に属する現金を歳計現金等へ一時的に繰り替えて使用することをいう。 歳計現金等は、地方自治法第235 条の4 で、「最も確実かつ有利な方法によりこれを保管しなければならない」と定められている。 各所属からの毎月ごとの大口収支計画の報告等をもとに、支払いに支障をきたすことのないように継続的な注意を払った上で、日々の支払いに備えるための支払準備資金は、指定金融機関の普通預金で管理する。 歳計現金等全体で支払準備資金が不足することが見込まれる場合は、金額と期間を踏まえた上で、積立基金からの繰替運用を行う。 繰替運用での対応も困難な場合には、起債の時期を前倒しするなど、臨機応変に対応していく。 3.積立基金 (1)積立基金残高 令和4年度末における積立基金残高は、約1,465 億円と見込んでいる。 表1 積立基金の残高推移については、次のとおりである。     財政調整基金の令和4年度末見込みの残高は418億3千百万円、3年度末現在高は388億3千8百万円、2年度末現在高は381億2千百万円、元年度末現在高は330億3千9百万円である。 減債基金の令和4年度末見込みの残高は64億7千7百万円、3年度末現在高は64億6千6百万円、2年度末現在高は64億5千4百万円、元年度末現在高は64億4千百万円である。義務教育施設整備基金の令和4年度末見込みの残高は303億8千3百万円、3年度末現在高は186億4千5百万円、2年度末現在高は146億9百万円、元年度末現在高は145億7千6百万円である。 庁舎等建設等基金の令和4年度末見込みの残高は318億7千3百万円、3年度末現在高は351億3千9百万円、2年度末現在高は300億6千5百万円、元年度末現在高は293億4千6百万円である。 都市整備基金の令和4年度末見込みの残高は123億4千8百万円、3年度末現在高は102億6千9百万円、2年度末現在高は81億1千9百万円、元年度末現在高は80億6千5百万円である。 地域保健福祉等推進基金の令和4年度末見込みの残高は8億6千8百万円、3年度末現在高は8億7千万円、2年度末現在高は8億8千2百万円、元年度末現在高は9億千2百万円である。 みどりのトラスト基金の令和4年度末見込みの残高は122億千6百万円、3年度末現在高は101億6千2百万円、2年度末現在高は81億4千5百万円、元年度末現在高は81億千9百万円である。 国際平和交流基金の令和4年度末見込みの残高は3億4千8百万円、3年度末現在高は3億6千百万円、2年度末現在高は3億5千3百万円、元年度末現在高は3億5千3百万円である。 住宅基金の令和4年度末見込みの残高は16億円、3年度末現在高は13億円、2年度末現在高は13億7千3百万円、元年度末現在高は15億5千百万円である。 文化振興基金の令和4年度末見込みの残高は3千8百万円、3年度末現在高は3千5百万円、2年度末現在高は3千3百万円、元年度末現在高は6千2百万円である。 子ども基金の令和4年度末見込みの残高は1億6千5百万円、3年度末現在高は1億6千7百万円、2年度末現在高は1億7千4百万円、元年度末現在高は1億7千7百万円である。 災害対策基金の令和4年度末見込みの残高は25億9千7百万円、3年度末現在高は25億8千8百万円、2年度末現在高は25億8千百万円、元年度末現在高は25億5千4百万円である。 児童養護施設退所者等奨学基金の令和4年度末見込みの残高は2億4千5百万円、3年度末現在高は2億3千百万円、2年度末現在高は1億8千8百万円、元年度末現在高は1億3千7百万円である。 スポーツ推進基金の令和4年度末見込みの残高は50億8千7百万円、3年度末現在高は29億円、2年度末現在高は7億4千百万円、元年度末現在高は6億6千9百万円である。 世田谷遊びと学びの教育基金の令和4年度末見込みの残高は2千3百万円、3年度末現在高は2千2百万円、2年度末現在高は2千3百万円、元年度末現在高は2千百万円である。 医療的ケア児の笑顔を支える基金の令和4年度末見込みの残高は千5百万円、3年度末現在高は2千百万円である。 気候危機対策基金の令和4年度末見込みの残高は3億8千9百万円である。 令和4年度末見込みの積立基金総額は1465億4百万円、3年度末現在高は1280億千4百万円、2年度末現在高は1118億6千百万円、元年度末現在高は1060億2千3百万円である。なお、計数については、百万円未満を四捨五入しているため、合計等と一致しない場合がある。 (2)積立基金の管理・運用 積立基金は、基金全体で一括して運用する。 資金の流動性を確保した「短期的な運用」と、安全性を重視しつつ比較的高い利回りを確保できる「長期的な運用」を組み合わせた資金配分を行う。 世田谷区中期財政見通し(令和5〜9年度)による基金の繰入や取り崩しの見通しを踏まえ、効率性・収益性を高める運用を目指す。 1 これまでの基金運用の経過 かつて、区の積立基金の運用は、世田谷区中期財政見通しの期間内(5年未満)を満期とする債券を基本に、基金全体の50%〜70%程度を債券運用に充ててきた。 その後、平成20 年のリーマンショックの際に、区税収入の複数年にわたる大幅減とそれを補うための基金の大幅な取り崩しが想定されたことを契機に、段階的に債券による運用を流動性に優れる預金にシフトさせてきた。 現在、債券については、低金利の中でも比較的高い利回りが確保できる10 年債や20年債の比率を高めるとともに(令和4年度:20 年債が債券全体の半分以上を占める)、流動性を両立する観点から、債券30%程度、預金70%程度を目安として運用を行うに至っている。 2 令和5年度の考え方 (1)基金の運用にあたっては、世田谷区公金管理方針及び世田谷区公金管理方針実施要領に基づき、効率性等の観点から、基金全体で一括運用していく。 (2)運用方法としては、資金の流動性(現金化の容易度)を確保した短期的な運用 (1年以内)と、安全性を重視しつつ、比較的高い利回りを確保できる長期的な運用(1年超)を組み合わせた資金配分を行う。 短期的な運用とは、世田谷区公金管理方針に基づく、普通預金、定期預金などをいう。 長期的な運用とは、世田谷区公金管理方針に基づく、国債、政府保証債、地方債、財投機関債などをいう。 なお、地方自治体の基金は、地方自治法及び同施行令の規定により、「最も確実かつ有利な方法により保管しなければならない」とされていることを踏まえ、元本保証がない株券による運用は適切でないと判断している。 (3)具体的な資金配分にあたっては、各基金の設置目的と世田谷区中期財政見通し(令和5〜9年度)による基金の繰入や取崩しの見通しを踏まえ、効率性・収益性を高める運用を目指す。 @ 財政調整基金、災害対策基金については、有事に備えた基金であることから債券運用の対象とはせず、流動性の高い預金による保管とする。 A 義務教育施設整備基金とスポーツ推進基金については、今後の学校改築やスポーツ施設整備に係る基金活用について、公共施設等総合管理計画の改定とあわせて検討中であることから、令和7年度末までの活用見込額を除き、従来保有の債券に加え、3年程度の債券による運用を行う。 B その他の基金については、令和9年度末までの活用見込額を除き、従来保有の債券に加え、5年程度の債券による運用を行う。 以上を踏まえ、表2のとおり、追加で運用可能な額を約360 億円と算出し、債券運用を行う。 また、環境改善や社会貢献等を資金使途とする債券(いわゆるESG 債)については、安全性・流動性・効率性を考慮した上で購入についても検討する。 表2 運用可能額の試算について、令和4年度末の基金総額見込みは1465億4百万円(A)である。 預金で保管する必要がある額は767億4千3百万円(B)である。 内訳は、財政調整基金と災害対策基金の令和9年度末残高見込みが444億2千8百万円、義務教育施設整備基金とスポーツ推進基金の活用見込額が令和7年度末までに34億千7百万円、その他の基金の活用見込額が令和9年度末までに288億9千8百万円である。 令和4年度末の債券運用額は337億円(C)である。 債券運用の追加可能額はAからBとCを引いた360億6千百万円である。 この債券運用の追加により、年間の基金利子収入額は約3,500 万円の増収と試算している。令和5年度においては、下半期の約1,750 万円の増収分を含め、基金利子収入額の目標等を、表3のとおりとする。 表3 積立基金利子収入について、5年度目標額は2億8千万円である。なお、4年度実績額は2億5千2百万円、3年度実績額は2億4千4百万円である。 (3)積立基金運用実績 令和4年度の利子収入額は、基金残高の増加に伴い運用資金が増加したこと、定期性預金の金利の低下が微減だったことなどにより、預金運用の利子収入額、債券運用の利子収入額はともに増加し、表4のとおり令和3年度を上回る2億5200万円台を確保した。 表4 積立基金の運用実績 基金運用全体の4年度の平均利回りは0.19%で、3年度の0.20%と比べると、0.01ポイント減少した。 基金運用全体の4年度の利子収入額は252,460,008円で、3年度の244,147,276円と比べると、8,312,732円増加した。 内訳として、債券運用の4年度の平均運用割合は24.73%で、3年度の25.80%と比べると1.07ポイント減少、4年度の平均利回りは0.69%で、3年度の0.70%と比べると0.01ポイント減少した。 債券運用の4年度の利子収入は229,868,424円で、3年度の223,182,546円と比べると、6,685,878円増加した。 預金運用の4年度の平均運用割合は75.27%で、3年度の74.06%と比べると1.21ポイント増加、 4年度の平均利回りは0.02%で、3年度の0.02%と比べると増減なしだった。 預金運用の4年度の利子収入は22,591,584円で、2年度の20,961,169円と比べると、1,630,415円増加した。 繰替運用の4年度の利子収入は0円で、3年度の3,561円と比べると、繰替運用の実施が令和4年度はなかったことにより3,561円減少した。