世田谷区の新たな公会計制度 平成29年3月 世田谷区 目次 T 世田谷区の新公会計制度への取組みについて 1.区の取組みについて U 世田谷区が導入する新公会計制度について 1.新公会計制度について 2.新公会計制度導入の考え方 3.導入スケジュール V 新公会計制度の内容について 1.会計基準等の規程整備について 2.財務諸表について 3.固定資産台帳について 4.財務会計システムについて 5.人材育成について W 新公会計制度の活用について 1.活用の基本方針 2.活用の工程 1 T 世田谷区の新公会計制度への取組みについて 1.区の取組みについて (1)これまでの取組み 世田谷区ではこれまでも企業会計手法を取り入れたさまざまな取組みを進めてきました。平成11年度決算において、はじめて企業会計手法によるバランスシートを作成し、その後行政コスト計算書、キャッシュ・フロー計算書、正味資産変動計算書や連結財務諸表などを順次作成・公表するなど、現行の自治体会計を補完するものとして、企業会計手法による財政状況の分析に取り組んできました。固定資産に関しては、特に公共施設について平成17年度にはじめて「公共施設整備方針」を策定しました。その後、関係データを集積して、施設別行政コスト計算、「公共施設白書」作成などの取組みも行ってきました。財務諸表については、決算統計の組み換えの手法により作成する、総務省改訂モデルに準拠した方法で作成しており、固定資産台帳も段階的な整備を進めるなど、内容の充実と精度の向上に取組んできたところです。 (2)区を取り巻く状況 国は、平成26年4月に、地方公会計の更なる整備促進のため、固定資産台帳の整備と複式簿記の導入を前提とした財務諸表の作成に関する統一的な基準を示しました。また、平成27年1月には、この新しい基準による地方公会計マニュアルを取りまとめるとともに、原則として平成30年3月までに、全ての地方自治体に、この基準による財務諸表等の作成を要請しています。 <国の検討経緯等> 平成25年8月30日 今後の地方公会計の推進に関する研究会中間取りまとめ 平成26年4月30日 今後の地方公会計の推進に関する研究会報告書 平成27年1月23日 統一的な基準による地方公会計マニュアル 平成27年1月23日 統一的な基準による地方公会計の整備促進について (総務大臣通知) (3)新たな取組みの着手 @ 区では、これまでの取組みと国の要請を踏まえ、平成27年1月、日々の会計処理に複式簿記仕訳を導入し、あわせて固定資産台帳を整備し、これまでの取組みを充実させた新公会計制度を平成30年度から導入することを決定しました。 A この制度の導入により、職員が日々の会計処理の段階から、財務会計システムで、自治体会計の処理に併せて複式簿記・発生主義による仕訳(以下、日々仕訳という。)を行い必要なデータを蓄積します。それらの仕訳データや、新たに整備する固定資産台帳の資産データを基に、財務会計システムで財務諸表を作成することにしました。 U 世田谷区が導入する新公会計制度について 1.新公会計制度について (1)新公会計制度とは 新公会計制度とは、企業会計手法を自治体に取り入れ、複式簿記・発生主義会計による財務諸表の作成、固定資産台帳の整備を行い、行政経営などに活用するものです。 区が新公会計制度に取り組む背景には、区の行政活動が地域社会に対しどのような効用を与えたのかを住民に理解してもらうための説明責任を果たす取組みであるとともに、資産やコストといった財務情報を活用し、今後の施策に活かしていくことは、社会的な要請に応えることにもつながるものと考えています。 (2)自治体と民間企業の会計 @ 民間企業の複式簿記・発生主義会計に対し、自治体では現金の収支のみを記録する、単式簿記・現金主義会計が採用されています。 A この自治体会計については、議会の民主的統制化に置くことにより、予算の適正・確実な執行を図ることが重要な目的として、運用されています。 <自治体会計と民間企業会計の違い> 自治体会計は、単式簿記・現金主義であり、目的は現金収支の管理・開示、記録の対象は現金、計上の基準は現金の収支で、出納整理期間があります。 民間企業会計は、複式簿記・発生主義であり、 目的は財政状態・経営成績の管理・開示、記録の対象はすべての経済資源・事象、計上の基準は経済資源の変動・事象の発生で、出納整理期間はありません。 (3)新公会計の必要性 単式簿記・現金主義会計である自治体会計は、現金の収支のみを記録するため、予算の執行状況を管理するしくみとしては有用ですが、一方で次のような課題があります。 これらの課題に対応するために、複式簿記・発生主義会計である企業会計の考え方を取り入れた新公会計制度を充実させる必要があります。 ・建物等の資産や地方債等の負債などのストック情報がない。 ・減価償却費など、現金支出を伴わないコスト(フルコスト)がない。 ・説明責任(アカウンタビリティ)の不足。 ・マネジメントにおける財務情報の不足。 ◇複式簿記導入により、ストック(資産・負債)の把握が可能 ◇発生主義会計により、減価償却費などのコスト把握が可能 2.新公会計制度導入の考え方 (1)制度導入と活用の考え方 @ 自治体会計で不足している財務情報を補完するために、新公会計制度を導入し、複式簿記・発生主義会計の考え方を取り入れ、区の資産や負債の情報、フルコストなどを把握できるようにします。さらにそれらの財務情報を行政経営マネジメントへ活用し、より効率的・効果的な区政運営の実現につなげていくとともに、区民への説明責任を充実させ、区政のより一層の透明性を確保していきます。 A 新公会計制度は、自治体会計を補完するものであり、総務大臣通知(「統一的な基準による地方公会計の整備促進について」平成26年5月)で導入時期や基準等が示され、全国の自治体は具体的な取組みが求められたものです。現下の社会状況において、区の財務や固定資産データを企業会計の手法(複式簿記・発生主義)で整理しておくことは、行政として基本的な事項ともいえます。さらに制度目的や活用効果等に照らし、このしくみを充分に活用することが、区の行政経営に有効な結果をもたらすことにつながります。このため、区では、制度の導入にあたり、活用効果が最大限に得られるよう検討し、これまでの経験や蓄積を活かしたしくみを構築するとともに、制度導入後はさらに充実強化した取組みを進めます。 (2)活用の目標 新公会計制度について、次の 3 点を活用の目標とします。 @ 財務分析の精緻化・多面化 A 行政経営への応用拡大 B 区民への説明責任の充実、透明性の確保 (3)世田谷区の主な特色 @ 東京都方式の採用 区は、「税収は行政サービスを提供するための財源」と定義づける「東京都方式」を採用します。 東京都方式は、総務省の統一基準と基本的な構造は同じですが、税収の扱い(「収入」/「出資」)以外にも、固定資産の一部(昭和59年以前に取得した資産)の評価方法など、取扱いにいくつかの違いがあります。区では、これまでも「世田谷区の財政状況」では、税収を収入と位置づけて財務諸表を作成し、行政コスト計算書において、収支バランスを明らかにする取組みを進めてきました。この考え方を踏襲することや、「活用の目標」がより一層有効に機能し得る方式を採用することにします。 <東京都方式と国の統一的な基準の違い> 東京都方式 ・税収は、行政サービスを提供するための財源となる収入であると考え、「行政コスト計算書」に計上する。「当期の行政サービス提供の費用が当期の税収等で賄われたかどうかなど、収支のバランスを一見して明らかにすることができる。 ・日々仕訳による複式簿記の作成を行う。 ・事業の積み上げによって財務諸表が作成される方式で、事業別財務諸表の作成が前提のため、コストの見える化などのマネジメントへの幅広い活用が可能である。 国の統一的な基準 ・税収は、明確な定義はしていないが、表示上は、「財源」(収益に該当しない純資産の増加要因)として、純資産変動計算書に計上するとしている。 ・日々仕訳が望ましいとしているが、事業別や施設別等のより細かい単位での分析が可能なものであれば、期末一括仕訳によることも差し支えないとしている。 A 事業を中心とした構成 財務諸表については、自治体財政の健全性などを総合的に分析するとともに、事業執行や組織運営を資産や人件費等を含めたコストで分析するなど、行政経営の視点で活用を図ります。このため会計別、事業別、施設別を財務諸表の作成単位とします。 会計データの基本管理単位は、「予算事業」とする方式を採用します。現行の款項の予算体系は大きく変更せずに、予算事業を軸にして会計データの蓄積を行います。その予算事業を組み合わせることで、政策別、施策別などの必要な単位での財務諸表の作成を行います。 3.導入スケジュール (1)導入準備 平成29年度は、財務会計システム(新公会計機能)の構築、検証作業、必要な規程の整備、職員研修等を行い、導入準備を順次進めます。 (2)導入とそれ以降 @ 平成30年度に、財務書類作成に必要なデータのセットアップを行い、財務会計システムと連動させて、会計データの仕訳をシステム上で日々行い、データを蓄積していきます。 A 平成31年度に、自治体会計の決算作業(出納整理期間以降)と並行して、新公会計制度による決算処理と財務諸表作成を行います。財務諸表は「決算参考書」として議会への提出、区民への公表を予定して取組みを進めます。 なお、平成30、31年度は制度の離陸(テイクオフ)期間と位置づけるとともに、各年度内に必要な検証と修正等を行い、平成32年度以降の制度充実に活用していきます。 <導入スケジュール表> 平成28年度、平成29年度 財務会計システム詳細設計・改修、業務上の情報提供などの東京都からの支援、職員研修の充実 平成29年度 統一的な基準による財務諸表を国へ提出 平成30年度 新公会計・新財務会計システム稼動 平成31年度 新公会計・新財務会計システムによる財務諸表の作成 平成32年度〜 活用・充実 V 新公会計制度の内容について 1.会計基準等の規程整備について (1)各種規程の整備 新公会計制度の取組みに必要な規程の改正、新設等を行います。 財務諸表の位置づけについて、自治体会計決算の参考資料(「決算参考書」)として位置づけるため、会計事務規則の一部改正を行うなど、必要な規程の整備を行います。 (2)会計基準について 財務諸表の作成基準や作成単位、作成基準日、資産や負債の計上項目、また税収の扱い、資産の計上の仕方などの基本的なルールを会計基準として定めます。 <会計基準 イメージ> 序章 第1章 総則 1 基本的な考え方 2 財務諸表の体系 3 基本的作成方法 4 作成基準日 5 計数の単位 第2章 貸借対照表 1 作成目的等 2 作成基準 3 資産項目 4 負債項目 5 正味資産 6 標準的な様式 第3章 行政コスト計算書 1 作成目的等 2 作成基準 3 計上する項目 4 標準的な様式 第4章 キャッシュ・フロー計算書 1 作成目的等 2 作成基準 3 計上する項目 4 標準的な様式 第5章 正味資産変動計算書 1 作成目的等 2 作成基準 3 計上する項目 4 標準的な様式 第6章 注記 1 重要な会計方針 2 重要な会計方針の変更 3 重要な後発事象 4 偶発債務 5 追加情報 6 その他 第7章 附属明細書 2.財務諸表について (1)作成する財務諸表 財務諸表は、「貸借対照表」「行政コスト計算書」「キャッシュ・フロー計算書」「正味資産変動計算書」の4表を作成します。 また、一般会計に特別会計を合算した「全体財務諸表」、外郭団体等を合算した「連結財務諸表」を作成します。 会計データは予算事業を単位に入力しますので、予算事業の会計データをもとに、事業別、施設別に合算等を行うことで、必要な財務諸表を作成します。 (2)各財務諸表について @ 貸借対照表(BS) 年度末において、区が保有する建物・土地等の「資産」、地方債等の「負債」、資産と負債の差額である「正味資産」の状況を総括的に計上したもので、過去から蓄積された資産・負債等を示すものです。 A 行政コスト計算書(PL) 民間企業における損益計算書に該当しますが、行政は利益にあたる概念がありませんので、行政サービス提供のために使われたコスト(資源の消費)と財源の関係を示します。 B キャッシュ・フロー計算書(CF) 当期の現金がどのような要因で増減したかを明らかにするものです。現金の流れを、「行政サービス活動」、「社会資本整備等投資活動」、「財務活動」の3つに区分してそれぞれの収支を示し、収支の合計に繰越金を加えた額を形式収支として計上します。 C 正味資産変動計算書(NW) 貸借対照表の正味資産の部の一会計期間における変動要因を示したもので、変動要因の内訳を区分して計上します。 D 財務諸表の関係 作成する財務4表には、次のような相関関係があります。 財務4表の相関関係図 E 財務諸表の作成単位と4表作成の関係 事業別の財務諸表を作成する際、資産や負債を持たない事業が多くあります。そのような事業においては、「貸借対照表」は作成せずに、「行政コスト計算書」のみを作成してコスト分析を行います。そうしたことから作成単位と事業の性質等にあわせて、最適な財務諸表を作成していきます。 3.固定資産台帳について (1)固定資産台帳の整備充実について 固定資産情報を管理する固定資産台帳は、財務諸表作成のための基礎資料であるだけでなく、将来の施設更新必要額の推計や施設別のコスト分析などの公共施設等マネジメントへの活用が求められています。また、国からは、公共施設等総合管理計画と固定資産台帳整備は一連の取組みとして認識され、固定資産台帳での資産状況の公表、資産の用途や売却可能区分を含めた公表検討にも留意することが要請されているところです。 一方、区では、平成17年度に「公共施設整備方針」の策定、また財務会計データだけでなく利用状況等のデータを集積し、施設別行政コスト計算や「公共施設白書」の作成と公表など、主体的に固定資産情報を活用した取組みを進めてきました。また、現在策定中の「世田谷区公共施設等総合管理計画」(平成29年度〜)では、対象を建物だけでなく都市基盤施設(道路、公園等)にまで広げ、より踏み込んだ公共施設マネジメント方針を策定するものとし、将来的な財政見通しに基づいて、公共施設を適切に管理、保全、更新するための計画とすることとしています。 今後とも固定資産台帳の整備充実を図るとともに、公共施設等マネジメントの取組みに活かしていきます。 (2)固定資産台帳について @ 固定資産台帳は、固定資産の取得から除却処分に至るまでを管理する台帳です。取得価額などの資産の金額情報、耐用年数、減価償却等のデータを網羅的に記載したものです。財務諸表作成の基礎となる補助簿の役割を果たします。 A 固定資産台帳は、地方自治法で規定される公有財産、道路や橋梁などのインフラ資産のほか、物品(重要物品)、債権などを対象とします。また、ソフトウェアやリース資産についても資産計上する基準を定め、該当するものを固定資産として扱います。 B 固定資産台帳には、国が「資産評価及び固定資産台帳整備の手引き」(平成27年1月)で示す基本項目/50 項目の「固定資産台帳の記載項目の例」に基づき、必要な項目を記載します。 C 固定資産の計上基準(資産計上か費用計上かなど)や資産に計上する支出の範囲(付随費用の取扱いなど)、減価償却の基準等については、固定資産の取扱基準を定め、正確性、信頼性を確保します。 D 固定資産台帳は、それぞれの資産の所管課で管理している個別台帳等が基本データとなります。橋梁については、新たに橋梁台帳の情報などを基に固定資産台帳を整備し資産額を計上します。また、道路については、「年度単位での計上」(道路現況調査における年度別の道路用地面積・延長×年度別の基準値価格)で着手するとともに、精度の向上に努めていきます。また、道路舗装等の資産は「取替法」(減価償却を行わず維持補修経費を取替(更新)費用として行政コスト計算書に計上する方法)を採用します。 4.財務会計システムについて (1)財務会計システムについて 財務会計システム上に、新公会計機能を構築します。日々の自治体会計の会計事務を財務会計システムで処理すると同時に、財務諸表作成に必要となる複式簿記仕訳等を新公会計機能で行い、システム内にデータを蓄積します。財務諸表の作成、固定資産台帳や減価償却計算なども、新公会計機能での処理となります。 (2)会計事務処理の流れ(日々の会計事務処理) 職員は、財務会計システムでの日々の自治体会計処理時(支出命令、調定など)に、同時に複式簿記の仕訳処理も行います。 二つの会計処理を同時に行うことになりますので、事務の非効率化、仕訳等の誤りを招かないよう、複式簿記の仕訳処理は、財務会計システムでできるだけ自動的に行うしくみとします。 5.人材育成について (1)人材育成の目標 新公会計事務は、これまでの自治体会計事務と同様に、全職員の基礎的な事務として、その知識習得が図れるように体系的な研修を実施し、計画的・継続的な人材育成に取組みます。 その中で、正確な財務諸表を作成するための正しい会計処理ができる職員、財務諸表を分析し業務改善、組織・事業マネジメントに活用できる職員の育成を図ります。 また同時に、経営感覚を持った行政運営、事業実施における成果志向、不断のコスト意識の醸成など、すべての職員の意識向上を図ります。 (2)計画的・継続的な人材育成 @ 区の年間研修スケジュール(研修担当課作成)に、毎年、新公会計事務の研修を組み込みます。 A 実務担当職員向けの会計や資産に関する研修、職層別での財務諸表活用やケーススタディ研修、他自治体や研究者による講演など、様々な機会をとらえて、知識習得の機会を提供します。 B 基礎とステップアップなど、段階を踏んで知識のレベルアップが図れる体系的なしくみとします。また、自ら会計事務(簿記等)を習得したい職員に対しては通信教育講座支援(研修担当課)の活用を進めます。 C 財政、会計、資産管理等に係る所属職員のスキルアップを図る実践的な研修や検討会を開催します。 D 研修講師は、外部の専門家や専門団体(公認会計士、公認会計士協会など)の支援、協力を仰ぎ、より高い専門性を確保できるしくみとするとともに、区職員の養成も図ります。 (3)財務諸表の活用に連動した研修 財務諸表の活用にあたり、これまでの事業分析(実施結果や成果の定量的、定性的な分析、評価)の方法に加えて、財務諸表(財務会計データ)から事業を読み解くことが求められます。また、区民への的確な説明も必要となります。 行政評価などへの幅広い財務諸表の活用にあたり、特に管理職層、監督職層に対して、ミクロとマクロ、理論と実践から事業を分析する研修に取組みます。 W 新公会計制度の活用について 1.活用の基本方針 (1)基本方針 新公会計制度は、自治体会計を補完するしくみですが、自治体財政の健全化判断などにとどまらず、行政経営の観点から、資産を含めた行政コストの見える化、施設の建設や運営などの総合管理等に関して有効な手法です。また、それらの区民への情報提供は、区政運営のより一層の透明性を確保することになります。 財務諸表については、自治体会計決算の「参考資料」の位置づけとして議会に提出し、説明責任の強化を図ります。 さらに財務諸表は、区の財政状況を総合的に分析するだけでなく、行政経営のマネジメントに活用していくことが求められています。行政のPDCAサイクルに合わせて、その場面ごとに幅広く、的確な活用を図ることを基本方針とします。 (2)留意事項 新公会計制度は、自治体会計になかったしくみを新たに導入することであり、導入後も持続可能なしくみとすることが必要です。このため職員にとっても無理のないスムーズな導入を図り、その後更なる活用の拡大と一層の充実が求められます。このため、自治体事業の特性や、職員の習熟度合いなどの状況を踏まえて、制度導入時からの活用と、導入後の活用拡大など、職員の意識向上も含め、段階的な活用を図ります。 @ 特定課題の分析 財務諸表に様々な情報・成果等を組み合わせて分析を行います。なお、区の事業は複数の予算事業で構成されているため、政策・施策以外の区の特定課題についても、予算事業をまとめることで個別に分析を行い、マネジメントへの活用を図ります。 A PDCAサイクルによる活用 財務諸表の活用拡大については、PDCAサイクルの中で、具体的に取組むこととします。 2.活用の工程 (1)平成31年度からの取組み 平成31年度から、「決算参考書」(自治体会計決算の参考資料)、「世田谷区の財政状況」の改定版を作成します。 @ 「決算参考書」の作成 (毎年9月) 区議会での決算認定においては、自治体会計での「歳入歳出決算書」「主要施策の成果」「審査意見書」の提出が定められていますが、平成30年度決算からは、新たに主要施策の成果の別冊を作成し、「主要事業の説明」を別冊に移すとともに、決算参考書としての個別の財務諸表を掲載することとします。 A 「決算概要」、「世田谷区の財政状況」 これまで発行してきた「決算概要」(毎年8月)は引き続き作成し、「世田谷区の財政状況」(毎年11月)は、トピックスとして掲載してきた特定事業(例:保育園・図書館等)の充実、施設別の財務諸表の掲載など、財務諸表を用いた財務分析に特化した内容に見直し、行政のより一層の透明性の確保を図ります。 (2)平成32年度以降の取組み 平成32年度以降は、経年比較等の検証を行い、PDCAサイクルの中で計画的、段階的に活用を図っていきます。