世田谷区の新たな公会計制度の検討状況について(中間報告) 平成28年8月 はじめに この報告(中間報告)は、平成28年2月の報告書(「世田谷区の新たな公会計制度の検討状況について」)以降、庁内に設置した「新公会計制度導入・財務会計システム更新推進会議」(平成 28 年 4 月より「新公会計制度導入推進会議」から改組)で、さらに具体的な検討を進めてきた状況をまとめたものです。 新公会計制度は、地方公会計の更なる整備促進のため、国からの固定資産台帳の整備と複式簿記の導入を前提とした財務書類の作成の要請(平成26年4月)に端を発します。区では、平成30年度に制度導入を図る予定で取組みを進めてきました。平成30年度の会計データから複式簿記・発生主義会計によるデータ仕訳を財務会計 システムで行い、平成31年度に行う平成30年度決算から各種財務諸表を作成していきます。この取組みは、国の要請に基づき、財務諸表を作成するためのしっかりとした仕組み(基準やシステム)を構築するとともに、これまでの自治体会計を基にした区の財政健全性分析や事業評価等に加えて、新公会計制度による財務諸表による多面的な分析を加え、行政経営に活用すること、それらを区民に公表し、行政のより一層の透明性を確保することが目的です。 現在、会計基準や必要な規定の検討、並行して会計データを処理する財務会計システムの改修を進めています。また、活用方策についても庁内の検討を進めています。詳細な基準整備、システム整備は平成 29 年度を予定しておりますので、今年度は制度の骨格を定めてまいります。この報告は、現時点での検討状況をお示しするものです。今後、さらに庁内で検討を進め、最終報告書にまとめる予定です。 目次 T 世田谷区のこれまでの取組みと取り巻く状況、新たな取組み ……1 U 新公会計制度とは…………………………………………………3 1.自治体と民間企業の違い 2.現行の自治体会計の課題と新公会計制度の必要性について V 新公会計制度の構築について……………………………………5 1.会計基準について 2.財務諸表について 3.固定資産台帳について 4.財務会計システムについて 5.会計処理について 6.人材育成について W 新公会計制度の活用について…………………………………27 1.活用の考え方 2.具体的な活用方法について(例示) X 今後の主なスケジュール………………………………………38 資料−新公会計制度の基礎知識等…………………………………39 - 1 - T 世田谷区のこれまでの取組みと取り巻く状況、新たな取組み 世田谷区ではこれまでも企業会計手法を取り入れたさまざまな取組みを進めてきましたが、取り巻く状況の変化等を踏まえて、新たな取組みに着手することにしました。 (1)これまでの取組み 世田谷区では、平成11年度決算において、はじめて企業会計手法によるバランスシートを作成し、その後行政コスト計算書、キャッシュ・フロー計算書、正味資産変動計算書や連結財務諸表などを順次作成・公表するなど、現行の自治体会計を補完するものとして、企業会計手法による財政状況の分析に取り組んできました。 この間、財務諸表は決算統計の組み換えの手法により作成する、総務省改訂モデルに準拠した方法で作成してきましたが、固定資産台帳の段階的整備を進めるなど、内容の一層の充実と精度の向上を進めてきました。 (2)区を取り巻く状況 国は、平成26年4月に、地方公会計の更なる整備促進のため、固定資産台帳の整備と複式簿記の導入を前提とした財務書類の作成に関する統一的な基準を示しました。平成27年1月には、この新しい基準による地方公会計マニュアルを取りまとめるとともに、原則として平成30年3月までに、全ての地方自治体において、この基準による財務書類等を作成することなどを要請しました。 (国の検討経緯等) 平成25年8月30日 今後の地方公会計の推進に関する研究会中間取りまとめ 平成26年4月30日 今後の地方公会計の推進に関する研究会報告書 平成27年1月23日 統一的な基準による地方公会計マニュアル 平成27年1月23日 統一的な基準による地方公会計の整備促進について (総務大臣通知) - 2 - (3)新たな区の取組み 区ではこれまでの取組みと国の要請を踏まえ、財務諸表を活用した決算資料の公表・活用充実などを目的として、平成27年1月に新たな公会計制度導入に向けて、次のように取り組むことを決定しました。 @固定資産台帳の整備 各部が管理している資産データ(土地、建物、工作物、道路等)について取りまとめた固定資産台帳を整備します。 A日々の会計処理に複式簿記仕訳を導入 国が示す日程及び統一的な基準に基づき、財務書類等を作成します。 財務会計システムに、日々の会計処理時に複式簿記仕訳を行う仕組みを構築します。新たな仕組みの導入時期は、現行の財務会計システムの更新(平成29年度末に現行の財務会計システムの保守期限が到来)にあわせ、平成27年度に具体的な検討等を行い、平成28年度〜29年度に改修を実施し、円滑なシステム移行を図ります。統一的な基準による財務書類の作成については、システムの整備が整うまでの間、期末一括仕訳に準じた方法により行います。 B財務書類の活用の充実等 財務4表等を活用し、区民への情報提供を行うとともに、必要に応じて行政評価や事業見直しなどへの活用を図ります。 C人材の育成 新たな公会計制度を活用できる人材を計画的に育成します。 (4)これまでの検討経緯 新たな公会計制度の導入に向け、平成27年4月に設置した「新公会計制度導入推進会議」を中心に、分野ごとに検討を重ねてきました。その中で、考え方の基本となる会計基準について、東京都方式を採用する等、決定してきました。また、現行の財務会計システム全体の更新にあわせて新たな公会計制度を導入するため、平成28年4月には検討組織を「新公会計制度導入・財務会計システム更新推進会議」と改組し、制度の詳細設計について検討を進めています。 - 3 - U 新公会計制度とは 区が取り組む新公会計制度の必要性や新公会計制度における事務処理については、以下のとおりです。 1.自治体と民間企業の違い 新公会計制度を考えるにあたり、まず、自治体と民間企業との違いについて整理します。自治体と民間企業には、次のような会計上の違いがあります。 @資金提供者の主体性の違い 資金提供者である住民等には、納税義務が課されている。資金提供者である株主は、自発的に出資を行っている。 A 事業目的の違い 自治体は、利益の獲得を目的とするものではなく、公共サービスを提供する存在で、市民サービスに資するが利益の獲得が見込めない事業も実施する。民間企業継続して社会的役割を果たすべく存続し続けるために、利益を獲得することを目的とした存在であ る。 B 予算の意義の違い 自治体は、「一会計年度における一切の収入および支出は、すべてこれを歳入歳出予算に編入しなければならない(自治法第 210 条)」とされる「総計予算主義」の下、予算どおりに執行しなければならないことが法律上定められている。 予算はその年の決算を法的に拘束することになる。一方民間企業では、目標値を表すものにすぎず、業務執行上の法的拘束力はない。 そのため、企業会計では予算に係る会計原則は定めておらず開示義務もない。 C 決算の意義の違い 自治体では、決算とは、予算によって執行権を与えられた自治体の執行機関が、予算の内容に従って支出を行っているかなどを明らかにすること。 民間企業では、決算とは1年間の収入・支出を計算し、利益や損失を計算すること。 ※決算書とは、企業の営業・財務内容が把握できる書類。 あずさ監査法人「新地方公会計の実務と活用」(平成23年,同文舘出版)を引用して作成 - 4 - このような違いから、民間企業の複式簿記・発生主義会計に対し、自治体では単式簿記・現金主義会計が採用されています。単式簿記・現金主義会計と複式簿記・発生主義会計の違いについては、次のとおりです。 単式簿記・現金主義(自治体)の目的は現金収支の管理・開示、記録の対象は現金、計上の基準は現金の収支、また、出納整理期間があります。 複式簿記・発生主義(民間企業)の目的は財政状態・経営成績の管理・開示、記録の対象はすべての経済資源・事象(資産、負債、純資産、収益、費用)、計上の基準は 経済資源の変動・事象の発生、また、出納整理期間はありません。 2.現行の自治体会計の課題と新公会計制度の必要性について 単式簿記・現金主義会計である自治体会計は、現金の収支のみを記録するため、予算の執行状況を管理する仕組みとしては有用でありますが、一方で次のような課題があります。 資産や負債などのストック情報がない。減価償却費など、現金支出を伴わないコスト(フルコスト)がない。説明責任(アカウンタビリティ)の不足。マネジメントにおける財務情報の不足。 これらの課題に対応するために、複式簿記・発生主義会計の考え方を取り入れた新公会計制度を充実させる必要があります。 - 5 - V 新公会計制度の構築について 新公会計制度については、地方自治法の規定に基づく自治体会計と並行した制度です。このため、日々の会計処理をできるだけ簡便に行う中で、かつ行政経営への活用、区民への説明責任(アカウンタビリティ)の充実が図れる仕組みを構築する必要があります。 制度を支える会計処理の基本的な仕組みについて、現時点での方向性、検討状況は次のとおりです。 1.会計基準について (1)会計基準の作成 財務諸表の作成基準や作成単位、作成基準日、資産や負債の計上項目、また税収の扱い、資産の計上の仕方など、制度を支える基本的なルールを定める必要があります。これを「会計基準」と言い、財務会計システムの改修、職員の研修、また制度導入以降の財務事務処理等は、この基準に則して進めることになります。また、財務諸表等の公表にあたり、区民への情報提供の重要な項目として、この基準を公表する前提で取組みを進めていきます。 <世田谷区会計基準(イメージ)> 1.総則 (1)基本的な考え方 (2)財務諸表の体系 (3)作成方法 (4)作成基準日 (5)計数の単位 2.バランスシート (1)作成目的 (2)作成基準 (3)資産の計上項目 (4)負債の計上項目 (5)正味資産の計上項目 3.行政コスト計算書 (1)作成目的 (2)作成基準 (3)計上項目 4.キャッシュ・フロー計算書 (1)作成目的 (2)作成基準 (3)計上項目 5.正味資産変動計算書 (1)作成目的 (2)作成基準 (3)計上項目 6.注記 7.附属明細書 8.様式 - 6 - (2)会計基準等の体系 会計基準の下に、資産の計上方法や具体的な作業手順など、実務に即したより詳細なルールを体系的に整理します。 <財務諸表作成の基準となるルール> ○世田谷区会計基準 <個別の具体的なルール> ○財務諸表作成細目 決算整理における人件費の各事業への割り当て方法や引当金の計上方法など、会計基準に定めたルールの細目について整理したもの。 ○固定資産の取扱基準 固定資産の計上基準(資産計上か費用計上かなど)や資産に計上する支出の範囲(付随費用の取扱いなど)、減価償却の基準等について整理したもの。 ○資産の耐用年数基準 公有財産や重要物品に関して、減価償却にかかる耐用年数の基準等について整理したもの。 ※その他、必要に応じて個別のルール等について整理する。 例)○リース資産・リース負債の計上について ○ソフトウェアの資産計上について ○有価証券や出資金の減損処理について など <具体的な作業手順> ○財務諸表作成手順 資産計上の具体的な判断例や複式簿記の仕訳基準、仕訳内容・勘定残高の確認方法など、必要な具体的な手順について整理したもの。 - 7 - (3)会計基準における主な取扱い ア)税収の取扱い 区では、東京都方式を用いて、これまでも企業会計手法による財政状況の分析の取組みを進めてきました。「会計基準」もこの方式を用いて作成をしていきます。その中で、税収の扱いについては、国基準と異なり、「税収は行政サービスを提供するための財源」ととらえます。このことにより、税収と行政コストのバランスを「行政コスト計算書」として一表で明らかにすることができます。 <参考‐国の統一的な基準と東京都の会計基準の税収の取扱いの違い> 国基準は、税収には行政サービスとの直接の対価性がないため、コストに対する収入とはせず、住民からの出資にあたるもの(=民間企業における資本金)と考え、行政コスト計算書ではなく「純資産(正味資産)変動計算書」に計上する。 都基準は、税収は行政サービスを提供するための財源となる収入であると考え、収支のバランスを一見して明らかにするため、「行政コスト計算書」に計上する。 イ)人件費の取扱い 人件費は、「職員費」に一括して計上し執行を行っていますが、各事業の人件費を行政コストとして適切に把握するため、決算整理業務において、各所属の事務分担割合や平均給与等の情報をもとに割り当てる方法とします。そして、割り当てた人件費を「行政コスト計算書」に計上します。 ウ)引当金の取扱い 引当金とは、将来発生すると予測される費用または損失について、合理的に見積もった金額をあらかじめ費用、損失に計上しておく金額のことです。将来支払うべき退職金を計上する退職給与引当金や、収入未済のうち、将来に不納欠損となると見込まれる金額を計上する不納欠損引当金などがあります。 - 8 - エ)固定資産の資産計上の取扱い 固定資産は資産として計上しますが、当該資産の取得に係る直接的な対価のほか、資産取得に関連して発生する付随費用を含めて計上します。どのような付随費用を資産計上していくかについては、今後、その基準を定めていきます。 また、資産に対して修繕等を行った場合、その修繕により資産の耐久性を増すなど、当該資産の資産価値を高める場合(建物に避難階段を新たに取り付けた場合など)は、その修繕に係る費用を資本的支出として、資産に計上します。 なお、固定資産の減価償却の方法については、原則的に資産の耐用年数にわたって均等に償却する「定額法」を用いることにします。 - 9 - 2.財務諸表について (1)作成する財務諸表 「バランスシート」「行政コスト計算書」「キャッシュ・フロー計算書」「正味資産変動計算書」の財務 4 表を作成します。財務諸表の作成は、原則として、会計、事業、施設を作成単位とします。ただし、会計データの入力単位は予算事業を単位として、決算時に決算数値の確定、人件費の割り当て等のデータ整理を行います。その後、施策・政策や施設類型など分析等の対象ごとに、予算事業の会計データを合算等して、活用に有効な財務諸表を作成します。一般会計に特別会計2を合算した「全体財務諸表」、外郭団体3、一部事務組合・広域連合4も合算した「連結財務諸表」を作成します。連結財務諸表の表示科目は、一般会計の表示区分に併せて設定します。 - 10 - @バランスシート(BS) バランスシートとは、年度末において、区が保有する建物・土地等の「資産」、地方債等の「負債」、資産と負債の差額である「正味資産」の状況を総括的に表示したもので、過去から蓄積された資産・負債等を明示するものです。 資産の部 資産については、現金預金、収入未済、有形固定資産、無形固定資産、重要物品、投資その他の資産等を計上する。 負債の部 地方債を流動負債と固定負債に分けて計上する。その他に賞与引当金、退職手当引当金を計上する。 正味資産の部 正味資産の金額及び当期の増減額を示すものとし、正味資産の変動については、別途、正味資産変動計算書で表示する。 - 11 - A行政コスト計算書(PL) 行税コスト計算書は、民間企業における損益計算書に該当するものであり、当期に属す「費用」と「収入」を計上し、その差額を明らかにするものです。 行政収支 主たる行政サービス活動に係る費用とその財源である税収等 金融収支 受取利息や支払利息等 特別収支 固定資産の売却等 - 12 - Bキャッシュ・フロー計算書(CF) キャッシュ・フロー計算書は、当期の現金がどのような要因で増減したかを明らかにするものです。現金の流れを、「行政サービス活動」、「社会資本整備等投資活動」、「財務活動」の3つに区分してそれぞれの収支を明らかにし、収支の合計に繰越金を加えた額を形式収支として表示します。 行政サービス活動 税や使用料等の収入、人件費や扶助費の支出を計上する。 社会資本整備等投資活動 建物や土地等の固定資産収得のための支出、基金の積立、取崩しに係る収入・支出等を計上する。 財務活動 地方債や借入金等、将来的に返済義務を負う資金調達による収入及びその償還・返済の支出を計上する。 - 13 - C正味資産変動計算書(NW) 正味資産変動計算書は、貸借対照表の正味資産の部の一会計期間における変動要因を明らかにします。変動要因の内訳を区分して示します。 開始残高相当 開始時の資産と負債の差額を計上 国・都支出金 国・都支出金のうち資産形成に寄与する支出に充当されるもの 受贈財産受入額 無償で受入れた資産の評価額 資産再評価額 資産の評価替えによる資産の貸借対照表計上額の増減額 - 14 - これらの財務4表には、次のような相関関係があります。 @バランスシートの「正味資産」は、正味資産変動計算書の「当期末残高」と一致します。 Aバランスシートの「歳計現金」は、キャッシュ・フロー計算書の「現金及び現金同等物の期末残高」と一致します。 B行政コスト計算書の「差引(剰余金)」は、正味資産変動計算書の「剰余金」と一致します。 - 15 - (2)財務諸表の作成と活用 新公会計制度による財務諸表により、行政サービスのフルコストが分かるようになります。当該年度の区の行政サービスが、その年度の税収等で賄えているのか、負担の将来の先送り等があるのかなど、分かりやすく可視化されることとなります。また、事業別のサービスコストが分かることにより、サービスが効率的に提供されているか、あるいは、サービスの受益と負担の関係(利用者負担と区の税金負担)が適当かどうかなどの評価が可能になります。このように、財務諸表の分析により、区の財政健全性の把握、行政サービスの財務バランスなどを示す資料となります。 @財務諸表による財政健全性の把握 財務諸表 4 表と連結財務諸表の作成により、会計別だけでなく、外郭団体等までを含んだ区の財政健全性の把握が可能となります。さらに他団体との比較、経年比較等をつうじて、より精緻な分析を行うことが期待されています。 A財務諸表の行政経営ツールとしての活用 財務諸表は、各所管の組織・事業マネジメントの強化や、事前、事後の事業評価、改善、見直し等を行うためのツールの一つとしての活用が期待されています。 行政コスト計算書は、コストを把握し、経年比較や官民比較、他自治体との比較などのコスト分析を行うことで、効率性の検証などの活用が考えられます。また、バランスシートは資産の状況と、その資産取得に係る税金等の投入額と今後負担する負債額の把握が可能となり、施設マネジメント等のための有益な財務情報の提供が可能となります。 そのほか、事業別・施設別の行政コスト計算書やバランスシート、キャッシュ・フロー計算書を使った事業や施設の評価も可能となります。このように、公共施設整備に関係する事業、利用者負担が存在する事業、債権管理が絡む事業など、財務諸表による分析がより馴染む事業があります。その活用にあたっては、予算執行上で適切な分類となっている従前の予算体系のもと、予算事業を単位に会計データを入力したうえで、財務分析に有効な事業を選定して財務諸表を作成していきます。そのために、あらかじめ予算事業を類型化し、分析に適合する財務諸表を特定、整理するなどの工夫を図り、活用します。 - 16 - B連結財務諸表について 会計別の財務諸表や、一般会計に特別会計を加えた、全体財務諸表を作成します。また、全体財務諸表に、区の外郭団体等の財務情報を加えた連結財務諸表も作成します。連結財務諸表を作成することにより、区の外郭団体等を一体的にとらえて資産や負債を把握することが出来るため、財政の健全性などを総合的に判断していくことも可能になります。 - 17 - 3.固定資産台帳について (1)固定資産台帳の作成 固定資産台帳は、固定資産の取得から除売却処分に至るまで管理する台帳で、取得価額などの資産の金額情報、耐用年数、減価償却等のデータを網羅的に記載した財務諸表作成の基礎となる補助簿の役割も果たします。固定資産は、区の財産の大きな割合を占めるため、区の財政状況の分析のためには、固定資産台帳を作成して、正確な資産情報を把握する必要があります。対象となる資産は、それぞれの資産の所管課で、台帳等によりデータを管理しています。その各データとの連携を図り、財務会計システムに財務諸表を作成する上で必要となるデータを「固定資産台帳」として集積する仕組みを整備します。なお、「固定資産台帳」は財務諸表を作成するために必要なデータの集積であり、各資産の詳細な状況等については、各所管で管理する台帳等を用いることとします。 (2)対象の固定資産について 地方自治法上の公有財産、道路や橋梁などのインフラ資産のほか、物品(重要物品)、債権などを対象とします。また、ソフトウェアやリース資産についても、資産計上する基準を別途整理して、該当するものを固定資産として扱います。 ※対象とする固定資産 公有財産(インフラ資産除く)は土地、建物、工作物、地上権、商標権、出資金、有価証券等。 インフラ資産は、道路、橋梁。 物品は、重要物品(100 万円以上)、美術品(100 万円以上)。 その他、ソフトウェア、リース資産、貸付金など。 *「公園」は、公有財産の「土地、建物、工作物」に含まれる。 - 18 - (3)固定資産台帳の整備の対応 固定資産台帳の整備にあたっては、資産評価の精度の向上を図ることを基本的な考え方として取り組みます。その具体的な対応については次のとおりです。 @道路(舗装等の工作物を含む)の取得価額の算定 東京都の報告書等でも示されている「年度単位での計上」(道路現況調査における年度別の道路用地面積・延長×年度別の基準値価格)で着手するとともに、精度の向上への対応に努めていきます。 A道路の減価償却 道路舗装などの資産は、個別の資産というよりは、道路全体を1つとして構成する資産です。このような同種のものが多数集まって1つの全体を構成し、部分的な取替えを繰り返していく資産は、適切な維持補修が行われている限り、個々の資産を償却する減価償却の考え方は馴染みません。減価償却の計上は行わず、償却された部分を取替(更新)するのにかかる金額を費用として行政コスト計算書に計上する「取替法」を採用します。 B橋梁の取扱い 現状、作成している財務諸表においては、台帳未整備であることから、「橋梁を除く」と表示しているが、橋梁台帳の情報などを基に固定資産台帳を整備して、台帳上の資産額を財務諸表に計上していきます。 C工作物の取扱い 国の報告書等でも示されている、一式計上として記載することで着手するとともに、精度の向上への対応に努めていきます。 - 19 - 4.財務会計システムについて (1)財務会計システム構築の基本的な考え方 @現行「自治体会計」と「新公会計」の共存 現行の「自治体会計」と「新公会計」とは、共存した運用となります。このため、財務会計システムでは、現行の自治体会計処理と同時に、自動的に複式簿記・発生主義会計による仕訳の処理を行える仕組みとします。なお、事業費の予算科目、節・細節の分類など、あらかじめ技術的な分類整理を行っておくことにより、よりスムーズな仕訳処理を目指します。 A財務会計システム全体の更新 現行の財務会計システムの保守期限が平成 29 年度末に到来するため、予算や契約システム等を含めた財務会計システム全体の更新にあわせて、新公会計制度に対応する機能を追加します。 (2)新たな公会計制度に対応した機能構築について @複式簿記仕訳機能の構築 現行の自治体会計の処理である「支出命令」や「調定」を行う際に、日々仕訳に対応した複式簿記仕訳の機能を構築します。 A固定資産台帳機能の構築 すべての固定資産について、原則として「1単位」ごとに管理する固定資産台帳の機能を構築し、所管課が管理する固定資産関連データとの連携等を図ります。 B財務諸表作成機能の構築 複式簿記による仕訳情報や固定資産台帳に基づく減価償却費の情報などを基に、財務 4 表などを作成する機能を構築します。 C関連システムとの連携 効率的なシステムの運用や効果的な各所管の組織・事業のマネジメントへの活用を図るため、行政評価システムや施設経営情報システムなど、関連システムとの連携等を図ります。 - 20 - 5.会計処理について (1)新公会計における事務処理 法令で定める自治体会計の処理と並行して、新公会計における複式簿記仕訳の処理などを行います。仕訳とは、資産・負債・正味資産・収入・費用の5つの要素に区分することです。この区分を行わないと、財務諸表の作成ができません。 支出命令の処理時には、自治体会計における予算科目や支出金額などの入力を行うと同時に、新公会計による仕訳入力も行うイメージとなります。 - 21 - また、日々の会計処理時に行う仕訳の処理のほか、財務諸表を作成するための決算整理という月次や年次での事務処理なども行う必要があります。新公会計制度で日次、月次、年次で行う主な業務は次のとおりです。 新公会計制度の主な業務<例示> @ 日次業務 支出命令や調定時に仕訳区分を選択(日々仕訳)、仕訳の訂正登録、非現金取引など必要に応じて仕訳登録など。 A 決算整理業務 仕訳内容の確認(月次、年次)、勘定残高の確認、照合(月次、年次)、人件費等の割り当て(年次)、引当金の計上(年次)、財務諸表の作成(年次)など - 22 - (2)日々の仕訳処理と財務諸表の作成のイメージ 日々の仕訳処理において、資産・負債・正味資産・収入・費用の5つの要素に区分する仕訳の入力を行い、その入力された区分を基に、財務諸表を作成していきます。 仕訳の入力は、仕訳の誤りを防止し、職員の事務の負担軽減を図るため、予算科目に対応する仕訳区分を自動的に表示し、選択する方法とします。そして、歳出・歳入ともに、官庁会計の予算科目をシステムに入力すれば、ほぼ自動的に仕訳区分を表示・選択できる方法を構築します。 @ほぼ自動的に仕訳ができるケース 消耗品費の支出や証明発行手数料の収入など、その予算区分に対応する仕訳区分が 1 通りしかない場合には、ほぼ自動的に仕訳を行うことが出来ます。 【消耗品を 1 万円で購入した場合の支出の例】 ⇒支出命令時に予算科目(需用費/一般需用費/消耗品費)を入力することで、仕訳区分がほぼ自動的に表示・選択され、下記の複式簿記仕訳が行われます。 支出命令時に、負債(未払金)の増 10,000 円(貸方)、費用(物件費)の増 10,000 円(借方)という仕訳を行う。 支出執行時に、負債(未払金)の減 10,000 円(借方)、資産(現金)の減 10,000 円(貸方)という仕訳を行う。 - 23 - 【証明発行手数料 2 万円を収入する場合の例】 ⇒調定時に歳入科目(手数料)を入力することで、仕訳区分がほぼ自動的に表示・選択され、下記の複式簿記仕訳が行われます。 調定時に、資産(未収金)の増 20,000 円(借方)、収入(使用料及び手数料)の増 20,000 円(貸方)という仕訳を行う。 収入(公金化)時に、資産(未収金)の減 20,000 円(貸方)、資産(現金)の増 20,000 円(借方)という仕訳を行う。 - 24 - A仕訳区分を選択するケース 支出における委託料など、ほぼ自動的に仕訳区分を表示・選択できない予算科目については、仕訳区分を選択して入力します。 ※現行の自治体会計と、複式簿記・発生主義会計との二つの会計処理を行わなければなりません。事務の非効率化及び仕訳等の誤りを招き易いため、複式簿記の仕訳は、ほぼ自動的に行われる仕組み(全体の 9 割以上)を構築していきます。 - 25 - (3)非現金取引の仕訳処理のイメージ 固定資産を購入により取得した場合は、その支出命令時に仕訳を行いますが、現金収支の伴わない取引により、資産を取得する場合もあります。その場合の仕訳については、台帳等に資産の取得を記載した内容と連携し、自動的に仕訳を行う仕組みを構築していきます。 そのほか発生主義では、引当金など現金の出入りを伴わない取引があります。それらの取引や、仕訳の訂正などは、仕訳を直接入力する方法で記録します。 - 26 - 6.人材育成について (1)基本的な考え方 正確な財務諸表を作成するための正しい会計処理が出来るとともに、財務諸表に基づく分析や業務改善など、各所管の組織・事業のマネジメントに活用できる職員を計画的、継続的に育成していきます。 (2)体系的な人材育成 職層に合わせ、制度の目的、内容を理解するための複式簿記・発生主義会計の基礎的な知識を習得する意識啓発研修と、複式簿記・発生主義会計の実務を学ぶ実務研修、財務諸表の活用の分析研修の実施、またそれぞれレベルアップを図れるような体系的な研修を組み立てます。 (3)具体的な研修体系 毎年、職層や担当実務に適した研修を計画的、継続的に実施していきます。 ※東京都や東京都方式を活用している先進自治体職員による実践的研修の実施、また新公会計制度に取り組んでいる公認会計士協会等からの支援協力も視野に、導入スケジュールにあわせて、具体的な研修を計画していきます。 - 27 - W 新公会計制度の活用について 新たな公会計制度の導入により、資産や負債などのストック情報や減価償却費などのフルコスト情報などの新たな会計データを使った分析や、毎年財務諸表を作成することによる経年比較や他自治体との比較など、これまで以上に財務分析の精緻化・多面化を図ることが可能です。また、この財務分析の結果を、実績や成果などの事業データによる分析と組み合わせて検証することで、行政経営への応用拡大を図ることができ、新公会計の会計データを事業展開の新たな判断材料の一つとするなど、幅広く事業改 善・予算編成等に活用していきます。以上の取組みによって、より効率的・効果的な区政運営の実現につなげていくとともに、区民への説明責任(アカウンタビリティ)を充実させ、区政のより一層の透明性を確保していきます。 1.活用の考え方 (1)活用にあたって 活用にあたっては、行政運営の PDCA サイクルの中で、財務諸表を活用するととともに、具体的な作成資料(アウトプット)を想定するという視点から、考え方を整理していきます。それにあたり、PDCA サイクルを以下の表のように区分し、それぞれの場面ごとに有効な分析を加えられように取組んでいきます。また、作成資料については、既にそれぞれの場面ごとに作成しているもの(例えば決算や予算資料等)があります。このため、その資料に新たに情報を追加する形で、分かりやすく情報を整理し提供するような検討を進めていきます。また、具体的に財務諸表を活用する中で、コスト意識の醸成等を含めた、職員の意識改革を図っていきます。 - 28 - (2)具体的な活用内容 ア)財務分析の精緻化・多面化 @自治体の財政運営の健全性については、決算統計による「財政力指数」「経常収支比率」「公債費負担比率」、また財政健全化法による「実質赤字比率」「連結実質赤字比率」「実質公債費比率」等の指標を用いた分析の実施と公表が義務づけられています。これらの分析に加えて、財務諸表での分析を行い、その結果をあわせて区民に公表します。 イ)行政経営への応用拡大 @財務分析の結果を、行政経営における PDCA サイクルの向上に生かしていくことが活用の充実につながりますが、自治体事業の特性によって、より事業改善等に役立つケースとあまり馴染まないケースがあると考えられます。そのため、事業を類型化し、より有用なケースを見極めることが重要となります。経年比較や官民比較等の財務分析のほか、資産や負債などのストック情報や減価償却費などのフルコスト情報が分かるようになる新公会計制度のメリットを踏まえると、新規施設の建設・改築計画、「公共施設等総合管理計画」の推進、利用者負担の検討など、施設マネジメントに活用していくことが有用となります。 A事業を類型化し、その類型に見合った視点での財務分析の実施や、財務分析の手法を取り入れた評価など、財務分析を行政経営に生かします。 <事業類型例(イメージ)> ○公共施設整備型【事業例:公共施設、インフラなど】 分析の視点等⇒将来の施設更新にかかる負担や、財源が借入金などの負債か自己財源か など ○利用者負担型【事業例:区民利用施設(使用料あり)、保育園など】 分析の視点等⇒利用者負担の割合や、管理運営経費に対する利用者負担の割合 など ○債権管理型【事業例:徴税事務、貸付金など】 分析の視点等⇒不納欠損(貸し倒れ)のリスク など - 29 - ウ)区民への説明責任(アカウンタビリティ)の充実、透明性の確保 @行政経営における各種の資料に関して、財務諸表による分析結果も加え、より分かりやすく区民に説明します。 Aインフラを含めた資産等のストック情報、減価償却費などのフルコスト情報、事業における負債などの後年度負担など、現金主義の自治体会計では提供しきれない情報を区民に提供します。 - 30 - (3)活用の充実について 新公会計制度は、自治体会計になかった仕組みを新たに導入するため、職員にとっても無理のないスムーズな導入を図り、その後更なる活用の拡大と、毎年の充実が求められます。このため、まずは行政運営の PDCA サイクルに当てはめた基本的な活用を図ります。その後、自治体事業の特性や、職員の習熟度合いなどの状況も踏まえ、さらに検討を進め、活用拡大を図っていく方法が、他自治体事例等をみても現実的と考えられます。制度導入時での活用、導入後5 年程度を目途とする活用拡大など、段階的な活用を図っていきます。 @職員の習熟度に関して これまで区の職員は、現金主義による自治体会計による事業執行を行ってきているため、新公会計の考え方に対する認識を向上させていくことが求められます。制度導入後、複式簿記・発生主義会計の知識の習得から始め、その後の適切な行政経営を行うための財務分析のスキル向上などにあわせて、職員のコスト意識向上などを図っていきます。体系的な人材育成、研修を実施する中で、職員の習熟度も勘案しながら、行政経営への活用を進める必要があります。 A自治体の特性に関して 新公会計制度は企業会計手法による考え方を採り入れたものです。民間企業は利益の獲得が目的であるのに対して、自治体は公共サービスの提供が目的であり、事業の収支だけでは評価ができません。また、民間企業のように資金提供者である株主に対して、配当金の分配を行うような対応は発生しませんが、地方公共団体の長の予算の調製と議会の議決など、地方自治法に定められた諸対応が求められます。これらの自治体の事業特性に沿って、PDCA サイクルの各場面における新公会計の今後の活用について検討していく必要があります。 B説明責任(アカウンタビリティ)の充実に関して 新公会計制度では、説明責任(アカウンタビリティ)の充実のため、企業会計に準じた財務諸表を使って区の財政状況を説明していきます。自治体事業の特性も踏まえて、新公会計による区の財政状況を、多くの区民により分かりやすく伝えていくために、これまでの資料だけでなく、説明手法なども、さらに検討していく必要があります。 - 31 - 2.具体的な活用方法について(例示) PDCAサイクルにあてはめた活用について、期待する効果と想定される活用例(イメージ)を以下に示します。 <具体的な活用例(イメージ)> 事例 (1)財政分析の精緻化・多面化 (2)使用料改定の検討資料 (3)施設マネジメントの検討資料 (4)行政評価の充実 (5)区民への情報提供 想定される活用例 ・施設建設、改築 ・使用料改定 ・各計画策定 ・資金管理の状況確認 ・事業の見直し、改善 ・予算の見直し、検討 ※施設関連事業が有効 ※事業執行状況把握の場合には、会計データだけでなく、事業データが必要※財政健全性の指標、区民公表の充実、他自治体との比較 ※内部マネジメントに活用 期待する効果 ・将来を見据えた、より的確な政策決定、施策判断 ・執行状況のリアルタイムな把握 ・財政健全性のより総合的な判断 ・評価のより一層の充実 ・職員の意識改革の促進 ・より適正な予算の検討 ・各所属のマネジメントのより一層の強化 - 32 - (1)財政分析の精緻化・多面化 各種の財務指標を使って分析します。 ☆世田谷区の行政コストの収支差額の推移 ※行政コスト計算書の収支差額(差引)が黒字であることで、世代間負担の公平性が維持されていることが分かる。 単位:億円 - 33 - (2)使用料改定の検討資料 施設別行政コストから利用者負担割合を算出し、使用料改定や施設運営の効率性の改善等に活用します。 ※施設別行政コスト計算は施設経営情報システムで行っており、現行の方法を踏襲した方が効率的であるため、今後も継続して行う。財務会計システムとのデータ連携方法については、引き続き検討を行っていく。 (3)改築か長寿命化改修か等の施設マネジメントの検討資料 @活用の基本的な考え方 施設の改築か長寿命化かの検討や施設の統廃合、新規施設の建設の際に、行政コスト計算のほか、バランスシートなども活用して、それぞれのケースにおける、維持管理コストも含めた将来分析を計画策定時等に行います。 A具体的なイメージ ☆施設(築 30 年)の用途転換時における改築か長寿命化かの検討を行う。 今後、60 年間の使用を想定して、その 60 年間における年平均額のコスト比較を行います。⇒政策判断・予算編成等へ活用 《長寿命化の場合》※長寿命化後 45 年使用、その後、建て替えて 15 年目を想定 《改築の場合》※改築後 60 年使用することを想定 - 35 - (4)行政評価の充実 従前においては、予算執行率と人件費を使っての評価であったが、減価償却費等を含めた財務情報を使って、事業の効率性・有効性を評価することにより、事業の見直し・改善を行い、行政経営改革へと結び付けていきます。 ※これまでの「行政評価」を行った後に、新公会計制度による財務情報を用いて、新たに「財務分析」を実施することで、行政評価の充実・向上を図り、マネジメントの強化とアカウンタビリティの充実につなげていく仕組を検討していく。さらには、非財務的指標についても、ロジック・モデル5やプロセス評価を加えるなど、行政評価の充実に向けた検討を進める。 - 36 - (5)区民等への情報提供 @活用の基本的な考え方 毎年公表している「世田谷区の財政状況」において、財務諸表等を使って区の財政状況を説明するとともに、区民に関心の高い事業・施設等を個別にトピックスとして取り上げ、会計以外の事業のデータも加えて、より分かりやすい説明・情報発信を行います。 A具体的なイメージ ○トピックスとして、保育園を取り上げた場合、保育サービスの実施とそれに対する区民負担に関する、次のような情報の公表・説明ができる。 <保育園の行政コストに対する財源構成(平成 26 年度)> ※区立保育園の運営にかかる経費は保育料と一般財源でまかなっていますが、保育料による負担割合は15%、区の負担割合は84%となっています。 一方、私立保育園の運営経費は、保育料と一般財源のほか、国や都の支出金でもまかなっており、区の負担割合は54%と、区立保育園に比べて低い割合となっていることが説明できます。 ※そのほか、行政コストや行政コスト収支差額を、保育園に在籍している園児数で割ることで、園児一人あたりの行政コスト等を示すことも可能となります。 - 37 - ○毎年、いくつかの事業・施設を「世田谷区の財政状況」の中で、トピックスとして取り上げていきますが、そのトピックスの選定については、主に次のような考え方で取り組んでいきます。 トピックスの選定について(例示) 1)何年かに亘って取り上げていく事業・施設 区民に関心の高い事業・施設については、経年比較のため、何年かに亘って取り上げていきます。(例示:保育園、区民利用施設など) 2)事業類型別の典型的な事業 事業類型に分類した場合の、それぞれの類型における典型的な事業を、年替わりで取り上げていきます。 3)その年の象徴的な事業・施設(下記の事由等からピックアップする) 新規事業・改修施設・新たに民間委託した事業・システム更新のあった事業、利用料金改定のあった事業や施設、単位あたりコストが高い(または低い)事業 等 - 38 - X 今後の主なスケジュール 導入後も見据えた人材育成やシステムの詳細設計・改修などに取り組んでいますが、今後のスケジュールは次のとおりです。 平成28年度、平成29年度 財務会計システム詳細設計・改修、業務上の情報提供などの東京都からの支援、職員研修の充実 平成29年度 統一的な基準による財務諸表を国へ提出 平成30年度 新公会計・新財務会計システム稼動 平成31年度 新公会計・新財務会計システムによる財務諸表の作成 平成32年度〜 活用・充実 - 39 - 資料−新公会計制度の基礎知識等 新公会計制度の理解に必要な基礎知識等について、資料としてまとめます。 1.複式簿記の基礎知識 (1)複式簿記とは 取引を原因と結果の両面から二面的に記録する方法を複式簿記といいます。 (2)発生主義とは 現金の収支にかかわらず、取引発生の事実に基づいて記録する考え方を「発生主義」といいます。 (3)勘定科目とは 複式簿記では取引を「資産」「負債」「純資産(正味資産)」「収益(収入)」「費用」の5つの要素に分類します。この5つの要素をさらに細分化した単位の名称を「勘定科目」といいます。 - 40 - (4)取引とは 「資産」「負債」「純資産(正味資産)」「収益(収入)」「費用」の複式簿記の5つの要素に対して増減をもたらす経済的事象を「取引」といいます。一般的な取引は、商品の売買や金銭の貸し借りなどをいいますが、複式簿記・発生主義会計上の取引はこれらに限定されず、「重要物品の紛失」や「建物の焼失」も経済的事象となり、複式簿記上の取引に該当します。 (5)仕訳とは 取引を勘定科目を用いて借方、貸方に分けて記録することを「仕訳」といいます。 【仕訳の具体例】 *2種類の勘定科目で記録する。 *仕訳のパターンに従い、取引の内容を借方、貸方に記録する。 *借方、貸方の金額は必ず一致する。 ☆備品を100万円で購入した場合 借方 重要物品 100万円 (資産の増加を記録) 貸方 現金 100万円(資産の減少を記録) *自治体会計(単式簿記・現金主義)では、100万円の支出のみを記録 - 41 - 2.固定資産台帳の基礎知識 (1)固定資産台帳とは すべての固定資産について、その取得から除売却処分に至るまで、1単位ごとに管理する台帳で、取得価額などの資産の金額情報、耐用年数、減価償却等のデータを網羅的に記載した、財務諸表作成の基礎となる補助簿の役割も果たす帳簿です。 (2)減価償却について 固定資産の取得に要した費用を、その資産が使用できる期間にわたって、固定資産の価値の減少分として費用に計上する減価償却の処理を行います。この資産の使用できる期間のことを耐用年数といい、資産ごとに定めます。また、資産の減価償却の方法は、耐用年数にわたって、均等に償却する定額法で行います。なお、土地や美術品など、時間の経過による価値の減少がないと考えられる資産については、減価償却を行いません。 - 42 - (3)建設仮勘定について 建設中の建物など、完成前の有形固定資産への支出額を計上するための勘定科目です。完成した建物等は資産として計上されますが、完成前であっても何らかの支出をした場合には、その支出額を資産計上する必要があるため、支出累計額を「建設仮勘定」として計上しておき、当該資産の完成後に建設仮勘定の金額を当該資産科目に振替えて計上します。 建設仮勘定に計上される資産は、未完成(未使用)のため、減価償却は行いません。