世田谷区の新公会計制度活用計画 平成31年度(2019年度)から平成33年度(2021年度) 平成31年3月 世田谷区 目 次 T 新公会計活用計画策定にあたっての考え方 U 平成30年度から導入した新公会計制度について 1.制度導入までの経緯 2.新公会計制度について 3.財務諸表について 4.固定資産台帳について V 新公会計制度の活用について 1の1 財務諸表の決算への活用及びこれに基づく対応 1の2 新公会計制度導入を踏まえた財務情報の充実 1の3 固定資産台帳の整備充実・公表 2の1 行政評価の再構築 2の2 公共施設等総合管理計画に基づく取組み 2の3 区民負担等の適切な見直し 3の1 新公会計制度活用に向けた人材育成 T 新公会計活用計画策定にあたっての考え方 自治体の財政運営及び財務会計処理に関する基本的事項は、地方自治法に規定されており、民間企業の複式簿記・発生主義会計に対し、現金の収支のみを記録する、単式簿記・現金主義会計が採用されています。 しかしながら、区民への説明責任(アカウンタビリティ)の充実・透明性のより一層の確保を図るには、減価償却費など現金支出を伴わないコスト(フルコスト)や建物等の資産や地方債等の負債などのストック情報を明らかにしていく必要があります。 このため、世田谷区では複式簿記・発生主義会計である企業会計の考え方を取り入れた新公会計制度を平成30年度から導入しました。 近年はAIやICTをはじめとする技術の進化、様々な価値観や文化を内包する多様性社会への変遷など、社会状況は急激に変化しています。このような状況のもとで、高齢者人口の増加や都市インフラの老朽化など増大する公共サービス需要に対し、的確に対応していくには、必要な事業の見直しに取組むとともに、民間資源の活用をはじめとした創意工夫を重ねた効果的な施策の実現に努めていかなければなりません。 このため、新公会計制度を活用した事業の分析や、成果の達成状況、参加と協働や横断的連携の観点を加えた総合的な評価に基づく、事業の改善、見直しを行っていく必要があります。 事業の見直しにあたっては、財政状況と経営成績を収益や金銭という単一の指標で図ることができる企業とは異なり、自治体の主たる存立目的が住民福祉の向上であることが前提となります。 円滑で効率的な公共サービスを目指しつつも、法令等に基づくセーフティーネットとなっている事業や区民生活を守るために質の確保が求められる事業、組織横断的なマッチングにより相乗効果をあげている事業など、費用対効果のみでは評価できない企業とは異なる自治体特有の事情も考慮していく必要があります。 以上のような状況及び考え方を踏まえた上で、新公会計制度を有効に活用して行政経営改革への取組みを推進し、財政の持続可能性を確保していくため、新公会計制度活用計画を策定します。 なお、計画の対象期間については、世田谷区新実施計画(後期)と連動させるため、平成31(2019)年度〜平成33(2021)年度とします。 また、年度ごとに、事業の進行状況の把握、評価を行い、取組みの見直し等計画内容の調整を図ってまいります。 U 平成30年度から導入した新公会計制度について 1.制度導入までの経緯 (1)これまでの取組み 世田谷区ではこれまでも企業会計手法を取り入れたさまざまな取組みを進めてきました。平成11年度決算において、はじめて企業会計手法によるバランスシートを作成し、その後行政コスト計算書、キャッシュ・フロー計算書、正味資産変動計算書や連結財務諸表などを順次作成・公表するなど、現行の自治体会計を補完するものとして、企業会計手法による財政状況の分析に取り組んできました。固定資産に関しては、特に公共施設について平成17年度にはじめて公共施設整備方針を策定しました。その後、関係データを集積して、施設別行政コスト計算、公共施設白書作成などの取組みも行ってきました。 財務諸表については、決算統計の組み換えの手法により作成する、総務省改訂モデルに準拠した方法で作成しており、固定資産台帳も段階的な整備を進めるなど、内容の充実と精度の向上に取組んできたところです。 (2) 区を取り巻く状況 国は、平成26年4月に、地方公会計の更なる整備促進のため、固定資産台帳の整備と複式簿記の導入を前提とした財務諸表の作成に関する統一的な基準を示しました。 また、平成27年1月には、この新しい基準による地方公会計マニュアルを取りまとめるとともに、原則として平成30年3月までに、全ての地方自治体に、この基準による財務諸表等の作成を要請しています。 国の検討経緯等 平成25年8月30日 今後の地方公会計の推進に関する研究会中間取りまとめ 平成26年4月30日 今後の地方公会計の推進に関する研究会報告書 平成27年1月23日 統一的な基準による地方公会計マニュアル 平成27年1月23日 統一的な基準による地方公会計の整備促進について (総務大臣通知) (3)新公会計制度の導入 @ 区では、これまでの取組みと国の要請を踏まえ、平成27年1月、日々の会計処理に複式簿記仕訳を導入し、あわせて固定資産台帳を整備し、これまでの取組みを充実させた新公会計制度を導入することを決定し、平成30年度から、この新たな制度を導入しました。 A この制度の導入により、職員が日々の会計処理の段階から、財務会計システムで、自治体会計の処理に併せて複式簿記・発生主義による仕訳を行い必要なデータを蓄積します。それらの仕訳データや、固定資産台帳の資産データを基に、財務会計システムで財務諸表を作成します。 ? 2.新公会計制度について (1)新公会計制度とは 新公会計制度とは、企業会計手法を自治体に取り入れ、複式簿記・発生主義会計による財務諸表の作成、固定資産台帳の整備を行い、行政経営などに活用するものです。 区が新公会計制度に取り組む背景としては、区の行政活動が地域社会に対し、どのような効用を与えたのかを住民に理解してもらうための説明責任(アカウンタビリティ)が求められており、資産やコストといった財務情報を活用し、今後の施策に活かしていくことが、社会的な要請に応えることにつながるものと考えています。 (2)自治体と民間企業の会計 @ 民間企業の複式簿記・発生主義会計に対し、自治体では現金の収支のみを記録する、単式簿記・現金主義会計が採用されています。 A この自治体会計については、議会の民主的な統制の下に置くことにより、予算の適正・確実な執行を図ることを目的として、運用されています。 (3)新公会計の必要性 単式簿記・現金主義会計である自治体会計は、現金の収支のみを記録するため、予算の執行状況を管理するしくみとしては有用ですが、一方で次のような課題があります。 これらの課題に対応するために、複式簿記・発生主義会計である企業会計の 考え方を取り入れた新公会計制度を充実させる必要があります。 3.財務諸表について (1) 世田谷区会計基準 世田谷区は東京都方式により財務諸表を作成します。 財務諸表の作成基準や作成単位、作成基準日、資産や負債の計上項目、 また税収を行政コスト計算書に計上すること、資産の計上の仕方などを会計基準として定め、このルールに則った財務諸表を作成します。 (2)作成する財務諸表 財務諸表は、貸借対照表、行政コスト計算書、キャッシュ・フロー計算書、正味資産変動計算書の4表を作成します。 また、会計別の財務諸表のほか、一般会計に特別会計を合算した全体財務諸表、外郭団体等を合算した連結財務諸表を作成します。 会計データは予算事業を単位に入力しますので、予算事業の会計データをもとに、事業別、施設別に合算等を行うことで、必要な財務諸表を作成します。 ? (3)各財務諸表について @ 貸借対照表(BS) 年度末において、区が保有する建物・土地等の資産、地方債等の負債、資産と負債の差額である正味資産の状況を総括的に計上したもので、過去から蓄積された資産・負債等を示すものです。 A 行政コスト計算書(PL) 民間企業における損益計算書に該当しますが、行政は利益にあたる概念がありませんので、行政サービス提供のために使われたコスト(資源の消費)と財源の関係を示します。 ? B キャッシュ・フロー計算書(CF) 当期の現金がどのような要因で増減したかを明らかにするものです。現金の流れを、行政サービス活動、社会資本整備等投資活動、財務活動の3つに区分してそれぞれの収支を示し、収支の合計に繰越金を加えた額を形式収支として計上します。 ? C 正味資産変動計算書(NW) 貸借対照表の正味資産の部の一会計期間における変動要因を示したもので、変動要因の内訳を区分して計上します。 ? D 財務諸表の関係   作成する財務4表には相関関係があります。 (4)固定資産台帳について 固定資産台帳は、固定資産の取得から除却処分に至るまでを管理する台帳で、取得価額などの資産の金額情報、耐用年数、減価償却等のデータを網羅的に記載したものです。財務諸表作成の基礎となる補助簿の役割を果たします。 固定資産台帳は、地方自治法で規定される公有財産、道路や橋梁などのインフラ資産、物品(重要物品)などを対象とします。ソフトウェアやリース資産についても、世田谷区会計基準において資産計上する基準を定め、該当するものを固定資産として台帳に計上します。 ? V 新公会計制度の活用について 平成30年度から導入した新公会計制度に基づいた決算について、複式簿記・発生主義会計による財務諸表を、平成31年度から財務会計システムにより作成し、行政経営改革の取組み等に活用していきます。 1 財政の見える化への活用 現行の自治体会計では不足している情報を補完する観点から、説明責任(アカウンタビリティ)の充実や区政の透明性の確保も踏まえて、財務諸表や整備した固定資産台帳を使って、財政の見える化を、一層進めていきます。 2 行政経営マネジメントへの活用 減価償却費も含めたフルコスト情報と事業目的や成果といった非財務情報を交えた分析を行うことにより、事業の改善・見直しを進めるなど、行政経営マネジメントへの活用を図っていきます。 3 活用に向けた人材育成 上記1、2の活用の着実な実現に向けて、職員研修の実施をはじめとした人材育成の取組みを進め、職員の意識改革を促していきます。 個別の活用計画 1.財政の見える化への活用 1の@ 財務諸表の決算への活用及びこれに基づく対応 1のA 新公会計制度導入を踏まえた財務情報の充実 1のB 固定資産台帳の整備充実・公表 2.行政経営マネジメントへの活用 2の@ 行政評価の再構築 2のA 公共施設等総合管理計画に基づく取組み 2のB 区民負担等の適切な見直し 3.活用に向けた人材育成 3の@ 新公会計制度活用に向けた人材育成 ? 1の@財務諸表の決算への活用及びこれに基づく対応(会計室、政策経営部) 1 目的   区の説明責任(アカウンタビリティ)を一層果たしていくことを目指して取り組みます。 2 現状と課題   現在の自治体会計の決算については、地方自治法等の法令が手続きを規定しています。具体的には、会計管理者は、出納が閉鎖された5月31日から3ヶ月以内に、決算を調製し、決算及びその他政令で定める書類等を当該自治体の長に提出します。長は、それらを監査委員の審査に付したうえ、決算を議会の認定に付します。その際、決算に対する監査委員の意見、主要な施策の成果を示す書類及びその他政令で定める書類を併せて提出します(地方自治法第233条)となっています。   一方、区が作成する財務諸表については、地方自治法等の法令が手続きを規定していないため、自治体独自の判断が求められています。 3 取組みの方向性   決算の認定にあたって、決算の参考資料として、財務諸表を取り入れます。 4 取組み内容 (1)会計別及び各会計合算財務諸表の提出 会計別及び各会計を合算した財務4表を世田谷区会計事務規則において決算参考書に規定し、議会に報告します。また、財務諸表をわかりやすく解説した、財務諸表の概要版を作成します。 (2)主要施策の成果への財務諸表(行政コスト計算書)の掲載 主要な施策の成果を説明する書類として議会に提出している主要施策の成果の主要事業の説明に、行政コスト計算書を掲載します。 実現に向けた取組み (1)会計別及び各会計合算財務諸表の提出 (2)主要施策の成果への財務諸表(行政コスト計算書)の掲載 1のA新公会計制度導入を踏まえた財務情報の充実(政策経営部、会計室、各部) 1 目的 企業会計手法からみた財政状況をよりわかりやすく分析して公表することを目指して取り組みます。 2 現状と課題 区では、公会計の情報に加え、保有資産の状況や減価償却費などを加えたフルコストによる正確な費用を把握し、財政状況をよりわかりやすく分析するため、企業会計手法による会計別の財務諸表や、施設別行政コスト、トピックスとして、特定事業(区立保育園・新BOP・図書館)の行政コスト情報を作成し、世田谷区の財政状況で公表しています。今後も、区の財政状況を区民がより理解しやすいものとなるよう、財務情報に内容を充実し精度向上を図ることは重要な課題です。 3 取組みの方向性 公表する財務情報の一層の内容充実と精度向上に向けた取組みを進めていきます。 4 取組み内容 (1)区民にわかりやすい財務情報の作成、公表 新公会計制度の導入を踏まえ、財務情報の内容充実と精度向上を図るとともに、施設別財務諸表や、施設別行政コスト、トピックスとしての特定事業における財務諸表の掲載充実、自治体間比較など、より区民にわかりやすい財務情報の作成と公表に取り組みます。 実現に向けた取組み (1)区民にわかりやすい財務情報の作成、公表 ? 1のB 固定資産台帳の整備充実・公表(財務部) 1 目的   財務諸表を作成するために不可欠な補助簿である固定資産台帳をよりわかりやすく整備するとともに、情報公開のさらなる推進を目指して取り組みます。 2 現状と課題 固定資産台帳は財務諸表の作成に必要な情報を備えた補助簿であるため、適切な整備・管理・更新を進めていくことが必要不可欠です。 また、国からは、公共施設等総合管理計画と固定資産台帳整備は一連の取組みとして、民間事業者によるPPP/PFI事業への参入促進につなげる目的で、固定資産台帳での資産状況の公表、資産の用途や売却可能区分を含めた公表検討にも留意することが要請されています。 しかし、現状の固定資産台帳のデータは、土地、建物等の資産情報が羅列されたもので、施設単位で一覧化されていないため、区民に見やすい形式で公表するための検討が必要です。 3 取組みの方向性   財務諸表作成の基礎となる補助簿の役割を十分確保するとともに、財務諸表の公表にあわせ、平成31年度から固定資産台帳の公表を行っていきます。 4 取組み内容 (1)固定資産台帳の整備充実・公表 平成30年度より運用を開始した新公会計制度において、固定資産台帳の整備を図り、適宜適切な管理・更新等を行っていきます。 固定資産として計上すべき項目の精査を行った上で、公表する内容及び手法を検討し、平成31年度中に固定資産台帳を公表します。 実現に向けた取組み (1)固定資産台帳の整備充実・公表 2の@行政評価の再構築(政策経営部、各部) 1 目的   行政評価を再構築し、企業会計を活用したフルコストの把握に基づく分析、評価を行い、客観的な指標に基づく事業の改善、見直しを進めます。 2 現状と課題 行政需要が多様化、複雑化し、区民ニーズや政策目的が事業間で相互に関連しあっており、事業の見直しは、かつてよりも難しい状況の中にありますが、今後、高齢者人口や公共施設更新需要が確実に増加することから、現在の行政サービス水準を維持するためには、不断の事業の見直し、経営改革が求められています。しかし、現行の行政評価システムは実績の評価が中心となっており、目標達成に要したコストの分析や目標の達成状況(事業の成果)の評価は十分に行われていません。 3 取組みの方向性   新実施計画(後期)の策定、新公会計制度の導入(平成30年度)、外部評価委員会の提言(平成28年度)を受け、行政評価をこれまでの実績管理に重点を置いた評価から、成果とコストを重視した評価へとあり方を転換し、客観的な指標に基づく事業の改善・見直しを進められるよう再構築を図ります。 将来的には、事業の達成度、投入したコストなどにより決算時に客観的に評価され、事業の改善・見直しを各部が主体的に進め、予算提示額の枠内については、各部の主体的な判断を優先させた予算編成となるよう、決算を重視した行政経営を目指します。 4 取組み内容 (1)主要施策の成果(政策評価、施策評価) 主要施策の成果に、財務諸表(行政コスト計算書)を掲載し、フルコストを示します。また、新実施計画においてあらかじめ設定した成果指標や行動量の実績等、目標の達成状況を踏まえた評価や行動量の単位あたりコスト分析による客観的な評価等を行うことができるようにします。 (2)事業手法の見直し、業務改善(事務事業評価) あらかじめ設定した成果指標や行動量、目標の達成状況を踏まえた評 価、行動量の単位あたりによるコスト分析による客観的な評価を行うとともに、事業を取り巻く社会背景や他の施策、事業の関わりを踏まえた事業固有の視点から総合的な評価を行うことができるようにします。評価結果に基づき、事業の改善や手法の最適化等の取組みについて、新実施計画の行政経営改革の取組みに追加し、計画的に推進します。また、翌年度以降の予算編成において活用し、取組みの進捗状況を反映させていきます。 実現に向けた取組み (1)主要施策の成果(政策評価、施策評価) (2)事業手法の見直し、業務改善(事務事業評価) 2のA公共施設等総合管理計画に基づく取組み  運営改善等の取組み (政策経営部、施設営繕担当部、各部) 1 目的   将来的な財政見通しに基づいて、公共施設を適切に管理・保全・更新し、健全な財政を確保することを目指して取り組みます。 2 現状と課題   公共施設の総合的なマネジメント計画 公共施設等総合管理計画を平成29年3月に策定しました。施設の計画的な維持管理や更新を行うことで、今後30年間の年平均経費629億円を、年平均550億円程度(建物370億円程度、都市基盤施設180億円程度)に抑制することを目標に掲げています。 ただし、目標達成には計画に掲げた長寿命化や施設規模抑制などの取組みだけでは十分ではないため、更に新たな手法を検討し、取組みを拡大する必要があります。 3 取組みの方向性   新公会計制度を用いて施設運営コスト等の分析を行い、運営改善や整備手法の選択等に活用します。 4 取組み内容 (1)施設の財務データ等の分析 財務会計システムから施設情報を一元管理している施設経営情報システムにデータを取り込み、u単位や利用者一人当たりのコストなどについて見える化を図ります。総合的な分析を行い、維持管理経費の抑制や運営改善に活用します。 (2)施設整備や再編に向けた分析データとしての活用 施設の改築・改修などの検討の際には、区が保有する施設の適正な総量や施設種別を見極め、必要かつ合理的な施設整備、再編の分析データのひとつとして活用します。   (3)施設コストに対する理解促進    施設別行政コストを公共施設白書の基礎データとして、ホームページ等に掲載するとともに、公共施設等総合管理計画等の改定の際にはコストデータを数字だけでなくグラフ等により見える化したデータも含め公共施設白書として発行し、職員や区民の施設コストに対する理解促進を図ります。 実現に向けた取組み (1)施設の財務データ等の分析 (2)施設整備や再編に向けた分析データとしての活用 (3) 施設コストに対する理解促進               2のB区民負担等の適切な見直し(政策経営部) 1 目的 施設の管理運営経費の把握や利用状況分析に加えて、区民生活を取り巻く社会状況の変化も幅広く捉えた検証を行い、使用料・利用料の見直しの要否を総合的に判断し、区民負担等を適切に見直すことを目指して取り組みます。 2 現状と課題   持続可能な財政基盤を築くため、平成22年度に適正な利用者負担の導入指針を策定し、全庁を挙げて財源の確保を図ってきました。 区民利用施設について、施設の管理運営経費は、利用者が負担する使用料と区が負担する税金で賄っており、今後、社会保障関連経費や公共施設の更新経費が増加し、厳しい財政状況が見込まれる中、施設利用者に対して適正な利用者負担を求め、財源の確保を図る必要があります。 現在も活用している施設別行政コスト計算書は、使用料の見直しの基礎資料としていますが、新公会計制度の導入により、これまで作成していなかった施設情報も把握できることから、行政コストを踏まえたうえで、区民負担等の適切な見直しについて検討する必要があります。 また、施設使用料の改定にあたっては、利用者負担率にとどまらず、今後の社会状況の変化も幅広く捉えた検証を行い、使用料見直しの要否を総合的に判断する必要があることから、現在、新たな施設使用料見直しに関する指針について検討を進めています。使用料算定の対象経費(原価)には、減価償却費を含め試算することが望ましいが、減価償却費を含めることにより、従来より使用料算定の対象経費(原価)が増加することから、今後、新公会計制度によりコストが算出できる平成31年度以降、利用者負担割合等への影響について検証する必要があります。 3 取組みの方向性   行政コスト分析を行い、効率的な施設運営を行いながら、区民負担等の見直しの基礎資料として活用していきます。 4 取組み内容 (1) 施設別行政コスト計算書の活用 3の@新公会計制度活用に向けた人材育成(会計室・総務部) 1 目的 財務諸表を作成するための正しい会計処理ができる職員、財務諸表を分析し、業務改善などに活用できる職員の育成を目指して取り組みます。 2 現状と課題 世田谷区新実施計画(後期)の執行体制の整備と人材育成の取組みでは、最適な予算執行ができる経営感覚を持ち、民間や区民との連携、協働により公的サービスを生み出す、折衝力や調整力を持った職員の育成が急務としています。 新公会計制度活用に向けては、これまで現金主義、単式簿記の会計制度に基づいて区政の現場を担ってきた職員の意識改革が必要不可欠です。 新公会計ではこれまでの自治体会計では見えなかった減価償却費や人件費等含めたフルコスト情報や、資産・負債のストック情報を、事業見直しや受益と負担の見直しの判断材料に活用することができます。しかしながら、職員には複式簿記・発生主義の企業会計手法の知識や経験は十分ではありません。 そのため、人件費や減価償却費などを含めたフルコストによる費用の把握や分析を行う必要性・意義等への意識改革が不可欠な課題であり、費用対効果のみでは評価できない自治体特有の事情も考慮して対応していく必要があります。 さらに、新公会計制度は発足間もない制度であることから、他自治体との比較という観点も踏まえて、他自治体との情報共有・合同検討の場に関与していくことや、専門家を活用しての検証等も重要な課題です。 3 取組みの方向性   自治体事業の特性や職員の習熟度合いの状況を踏まえつつ、他自治体との交流・連携等も図りながら、計画的・段階的に取り組んでいきます。 4 取組み内容 (1)職員研修    研修項目 自治体会計を学ぶ 新公会計制度活用の前提となる自治体会計の知識の習得 複式簿記・発生主義会計入門 複式簿記についての知識の体得、基礎的問題演習等(予備校等講師による研修の実施) 事業評価ケーススタディ研修 人件費や減価償却費などを含めたフルコストの把握やコスト分析、各種指標の活用方法等の体得 財務分析(管理監督者研修) 管理監督者として必要となる新公会計の活用方法、説明手法等の体得 (2)他自治体との交流・連携 新公会計制度普及促進連絡会議に参加し、先行実施している町田市や江戸川区など、他自治体との情報共有や合同で検討を行います。 (3)財務諸表の検証および職員のスキル向上(専門家の活用)   専門家による財務諸表の検証を行い正確性の向上に努めるとともに、財務諸表を作成する職員のスキル向上を図ります。 実現に向けた取組み (1)職員研修 (2)他自治体との交流・連携 (3)財務諸表の検証および職員のスキル向上