平成30年度世田谷区財務諸表 概要と解説 コンテンツ 1 新公会計制度と世田谷区の財務諸表の概要 新公会計制度の導入について 財務諸表の基礎知識 平成30年度 世田谷区財務諸表の概要 2 平成30年度世田谷区財務諸表の要約 1 貸借対照表 2 行政コスト計算書 3 キャッシュ・フロー計算書 4 正味資産変動計算書 5 1 有形固定資産及び無形固定資産附属明細書 2 引当金明細書 財務諸表からわかる指標 注 本書の計数について 各項目とも、表示単位未満を四捨五入しています。 端数の調整をしていないので、内訳と合計が一致しない場合があります。 1 新公会計制度と世田谷区の財務諸表の概要 新公会計制度の導入について 1 概要 世田谷区では、平成30年度から新公会計制度を導入し、自治体会計によるこれまでの決算書に加えて、新たに複式簿記・発生主義会計による財務諸表を作成しました。 新公会計制度とは、企業会計手法を自治体に取り入れ、複式簿記・発生主義会計による財務諸表の作成、固定資産台帳の整備を行い、行政経営などに活用するものです。 区が新公会計制度に取り組む背景には、区の行政活動が地域社会に対しどのような効用を与えたのかを区民のみなさまに理解してもらうための説明責任を果たす取組であるとともに、資産やコストといった財務情報を活用し、今後の施策に活かしていくことは、社会的な要請に応えることにもつながるものと考えています。 2 複式簿記・発生主義会計とは 従来の自治体会計は、単式簿記・現金主義会計を採用しています。これは、一つの取引について、現金の収支だけに着目して記録するもので、一会計期間の現金の流れを把握するのに適しています。 しかし、自治体の財政状況を的確に把握するためには、これまでの資産の形成状況や今後償還すべき負債等の情報(ストック)が必要不可欠です。 新公会計制度による複式簿記・発生主義会計では、一つの取引について、原因と結果の両面をとらえて記録します。現金の収入・支出に関わらず、発生した時点での収入や費用も記録します。 このことにより、以下のようなメリットがあります。 資産・負債といった世田谷区全体のストック情報の把握 減価償却費などを含む正確なコスト情報の把握 行政運営の結果に関する区民のみなさまへの説明責任の充実 財務情報の行政経営マネジメントへの活用 3 財務諸表作成の手続き 区の収入や支払の手続きは今までと変わりませんが、収入や支払の都度、複式簿記・発生主義による仕訳を行います。これを日々仕訳と呼んでいます。 その収入や支出が、財務諸表の資産にあたるのか、負債にあたるのか、または収入や費用なのか等を仕訳してシステムに登録します。 この仕訳情報をもとに、財務諸表を作成します。 4 財務諸表からわかること 民間企業において、財務諸表は決算書として 会社の財政状況、会社の経営成績を表し、これを外部報告することを目的として作成されています。 一方、区は財務諸表を作成することにより、財政状況、財務業績がわかります。企業会計の見方と異なり、財務諸表から、世代間負担の状況、財政の持続可能性、現世代の負担と行政サービス受取の状況がわかります。 このように、今までにない新たな視点から分析することにより、より効率的な行政運営を行うことができるようになります。分析の手法としては、資産形成度を計る歳入額対資産比率など、様々な指標による分析があります。 今年度は財務諸表の作成初年度であり、前年度との比較など、年度ごとの変化を見ることができないため、今年度の財務諸表からわかることは現時点での状況の把握に留まります。 また、自治体間比較を行うにあたっても、他の自治体の財務諸表が公表されてからとなるため、財務諸表公表時には間に合わないという実情があります。 財務諸表の基礎知識 財務諸表の構成と目的 財務諸表は、次の4種類の表で構成されています。 財務4表 貸借対照表 決算日時点における資産、負債及び正味資産の状態を明らかにします。 行政コスト計算書 1年間の行政活動に伴う費用と、その財源としての収入及び収支差額を表示し、区民等の負担と受益の関係を明らかにします。 キャッシュ・フロー計算書 1年間の活動区分ごとの資金収支状況を表示し、現金がどのように増減したかを明らかにします。 正味資産変動計算書 貸借対照表における正味資産の1年間の変動状況を明らかにします。 附属明細書 有形固定資産及び無形固定資産附属明細書 固定資産の増減について事由ごとに示したものです。 引当金明細書 各種引当金の増減について事由ごとに示したものです。 平成30年度 世田谷区財務諸表の概要 表のため省略 2 平成30年度世田谷区財務諸表の要約 1 貸借対照表 本冊子では一般会計の数値を元に解説しています。 流動資産 502億円 固定資産 1兆6748億円 資産の部合計 1兆7250億円 流動負債 71億円 固定負債 946億円 負債の部合計 1017億円 正味資産 1兆6233億円 参考 区民一人あたりの資産と負債の状況 資産 189万円 負債 11万円 正味資産 178万円  資産の内訳 インフラ資産 57% 9803億円 公有財産 34% 5933億円 建設中の資産、重要物品、ソフトウェア 2% 279億円 現金預金等の金融資産 7% 1234億円 負債の内訳 特別区債 64% 647億円 退職給与引当金・賞与引当金 36% 369億円 資産 昨年度より337億円増 主な内訳 上用賀公園用地取得(拡張区域) 115億円 希望丘青少年交流センター建設 23億円 九品仏複合施設建設 4億円 負債 昨年度より39億円増 主な内訳 特別区債 +54億円 退職給与引当金 マイナス13億円 賞与引当金 マイナス2億円 平成30年度の貸借対照表からは、負債額が少ない(借金の比率が低い)ことがわかります。 2 行政コスト計算書 行政収入 2839億円 行政費用 2618億円 金融収入 3億円 金融費用 4億円 通常収支差額 219億円 特別収入 1億円 特別費用 7億円 当期収支差額 214億円 参考 区民一人あたりの収入と費用の状況 費用 29万円 収入31万円 収支差額 2万円 収入の内訳 地方税等 50% 1435億円 財政調整交付金 21% 587億円 国庫・都支出金 22% 632億円 その他 3% 80億円 使用料・手数料等 2% 56億円 負担金等 2% 52億円 収入総額 2842億円 費用の内訳 扶助費・補助費 38% 1011億円 物件費21% 553億円 人件費 18% 471億円 繰出金 9% 241億円 投資的経費 9% 230億円 減価償却費等 4% 110億円 その他 0.4% 11億円 費用総額 2629億円 平成30年度の行政コスト計算書からは、収支差額が黒字であり、1年間のコストをその年の収入でまかなえていることがわかります。 3 キャッシュ・フロー計算書 行政サービス活動 収入 2843億円 支出 2572億円 収支差額 271億円 社会資本整備等投資活動 収入 78億円 支出 365億円 収支差額 マイナス287億円 財政活動 収入 98億円 支出 44億円 収支差額 54億円 収支差額合計 38億円 前年度からの繰越金 75億円 形式収支(期末時点の現金残高)113億円 参考 区民一人あたりの収入と支出の状況 行政サービス活動収入 31万円 行政サービス活動支出 28万円 行政サービス活動収支差額 3万円 社会資本整備等投資活動収入 1万円 社会資本整備等投資活動支出 4万円 社会資本整備等投資活動収支差額 マイナス3万円 財務活動収入 1万円 財務活動支出 0万円 財務活動収支差額 1万円 平成30年度のキャッシュ・フロー計算書からは、計画的な記載を活用していることがわかります。 3 各表の詳細な補足説明 1 貸借対照表 貸借対照表は、区が行政サービスを提供するために保有している財産(資産)と、その資産をどのような財源(負債・正味資産)でまかなったかを総括的に示したものです。 2 行政コスト計算書 行政コスト計算書は、行政活動に伴って発生した収入と費用とを対応させたものです。 収入には、当年度に収入することが決まった金額のほか、固定資産売却益等、現金収入とは異なる金額のものも含まれています。 費用には、減価償却費や引当金繰入額など、現金支出が生じない非現金コストも含まれます。 3 キャッシュ・フロー計算書 キャッシュ・フロー計算書は、現金収支を3つの活動区分に分けて表示したものです。現金収支を活動区分ごとに明らかにするという役割は、企業会計のキャッシュ・フロー計算書と同じです。 4 正味資産変動計算書 正味資産変動計算書は、貸借対照表の正味資産の部の増減を要因ごとに表示したものです。正味資産がどのような要因で増減しているのかを明らかにしています。 5 附属明細書 附属明細書は財務諸表の内容を補足するもので、当年度の増減の内訳を示しています。 財務諸表からわかる指標 1 有形固定資産減価償却率 60% 貸借対照表に計上された有形固定資産のうち、償却資産の取得価額に対する減価償却累計額を計算することにより、耐用年数に比して減価償却累計額の割合を計算することにより、耐用年数に比して償却資産の取得からどの程度経過しているのかを全体として把握することができます。 この数字が大きいほど、減価償却(老朽化)が進んでいます。 2 歳入額対資産比率 558% 社会資本として形成された固定資産や積み立てられた基金などの資産の総額が何年分の歳入に相当するかを表したものです。この比率が高いほど社会資本の整備が進んでいるといえます。 3 純資産比率 94% 区は、特別区債の発行を通じて、将来世代と現世代の負担の配分を行います。したがって、純資産(正味資産)の変動は、将来世代と現世代との間で負担の割合が変動したことを意味します。 4 住民一人あたり行政コスト 287449円 行政コスト計算書に計上される行政コストを人口で割ることで、住民一人あたりの行政コストを求めることができます。経年比較や類似団体との比較を行うことによって、自治体の行政活動の効率性の測定に役立てることができます。 指標は、年度ごとの比較をすることでさらに詳しく分析ができるようになります。また、同規模の他の区や市などの自治体と比較することも分析を行う上では重要です。 ただし、財務諸表は自治体によって作成の考え方が異なる部分があるため、単純に比較をするのではなく、作成の前提条件をよく確認して比較する必要があります。 今後は財務諸表を活用してこのような分析を進め、より効率的な行政運営を進めていくための取組みを実施していきます。 また、新公会計制度自体、全国でも始まってからまだ日も浅く、活用については研究途上の段階です。指標を算出する計算式についても、より実態に即した指標となるよう国の研究会で議論しているところです。どういった計算式を用いるかで数値が変わってくるので、検証結果を参考にしながら、世田谷区でも指標の活用を進めていきます。 平成30年度 世田谷区の財務諸表 概要と解説 世田谷区会計室 東京都世田谷区世田谷4丁目21番27号 電話番号 03-5432-2638 ファクシミリ 03-5432-3053