総務大臣 野田 聖子 様 地方消費税の清算基準の見直しに関する共同要請 平成30年度税制改正に向け、国において地方消費税の清算基準の見直しに関する議論が行われる中、都市部のシェアが比較的高い指標である「統計」や「従業者数」の比率を引き下げ又は廃止する一方、統計で把握できない部分を補う指標である「人口」の比率を大幅に引き上げるといった案も取り沙汰されている。これは東京をはじめとする大都市から税収を収奪することを意図した不合理なものと言わざるを得ない。 もとより、地方消費税は、地方自治体の運営を支える安定的な自主財源として必要不可欠であり、その税収の帰属を決定する清算基準は、地方消費税に対する信頼を維持・確保する上で極めて重要なものである。 税収を最終消費地に帰属させるという清算基準の制度本来の趣旨を踏まえれば、可能な限り、統計という客観的な指標を用いて、消費の状況を反映した精緻なものとする方向で清算基準を見直すべきである。 しかしながら、消費税の社会保障財源化等を理由に、基準に占める統計の比率を下げ、安易に人口の比率を高めるといった牽強付会とも言うべき案は、本来あるべき見直しの方向性とはかけ離れ、清算基準の趣旨を歪めるばかりでなく、地方の自主財源である地方消費税を譲与税化することにほかならず、地方分権の流れに大きく逆行するものである。 仮に、このような見直しが断行されれば、東京に本来帰属すべき税収が失われ、待機児童の解消や高齢者対策の推進、首都直下地震への備え、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた準備など、東京が取り組むべき喫緊の課題への対応の妨げとなるとともに、日本のエンジンたる東京の活力が削がれ、ひいては日本全体の成長の足かせにもなりかねない。 こうした状況に鑑み、東京都、特別区長会、東京都市長会及び東京都町村会は連名で、次のとおり国に強く求める。 1 清算基準について、税収の偏在是正を目的とせず、最終消費地と税収の最終的な帰属地を一致させるという制度本来の趣旨を踏まえ、基準の精緻化に向けて、統計で把握できる範囲と統計の比率を併せて高めていくこと。 2 見直しに当たっては、地方自治体の意見を踏まえつつ、可能な限り統計によって消費の状況を反映させていく観点から、丁寧かつ十分な議論を行うとともに、仮に見直しを行う際には、その決定過程、理由、根拠等について広く明らかにすること。 3 消費代替指標である人口の比率を清算基準の本来の趣旨に反して殊更に引き上げることは、地方分権の流れにも逆行するものであり、行わないこと。 4 消費代替指標である従業者数は、勤務地等における消費活動を反映させる指標として必要不可欠であり、清算基準において引き続き用いること。 平成29年11月14日 東京都知事 小池百合子 特別区長会会長 西川太一郎 東京都市長会会長 長友貴樹 東京都町村会会長 河村文夫