1.本庁舎等整備の背景 現庁舎等の課題と整備の必要性 @災害対策拠点としての機能強化 東日本大震災後、第3庁舎を応急整備し、第1庁舎から災害対策本部長室等の移転を行い ましたが、89万区民の災害対策の中枢管理機能を果たすには、未だ十分な状態ではありま せん。また、熊本地震においては、業務不能となった庁舎の事例も見られ、本庁舎の耐震性 能の重要性が改めて注目されています。本庁舎のすべてのフロアにおいて、災害直後でも業 務継続が可能な庁舎へと機能強化を図る必要があります。 A区民サービスの充実、効率的事務執行を実現するスペースの拡充 庁舎の狭あい化により、窓口や事務スペースが不足するとともに、多くの建物に庁舎機能 が分散されているため、事務の非効率化を招き、来庁者や事業者にとって分かりづらく、利 用しにくい庁舎となっています。分散した庁舎を集約するとともに、必要最低限のスペース を拡充する必要があります。 B施設や設備の環境性能等の機能強化 第1庁舎が昭和35年、世田谷区民会館が昭和34年に建設され、築50年以上経過して います。そのため、躯体や外装・内装の劣化が進むとともに、省エネルギーやバリアフリー 化等への対応を考える必要がある状況です。省エネルギー技術を積極的に導入して環境性能 を向上させるとともに、誰もが利用しやすい庁舎とするため、ユニバーサルデザインの実現 に向けた機能を強化する必要があります。 C区民交流・区民参加の機能を高めるスペースの拡充 多くの区民活動団体の情報共有、交流の場、区政への参画の場としての機能が本庁舎に求 められていますが、区民同士が交流し、区民と区が協働して事業を進めていくためのスペー スが不足しています。区民自治の拠点として、区民が交流し、情報を交換、共有でき、区民 協働を実現するためのスペースを拡充する必要があります。 主な検討経緯 平成16年度から19年度庁舎整備に関する基礎的な調査研究を実施 平成20年度本庁舎等整備審議会開催 平成21年度本庁舎等整備審議会から答申書の提出 平成25年度「本庁舎等整備方針」策定 平成26年度「本庁舎等整備基本構想(中間まとめ)」策定 平成27年度「本庁舎等整備(検討素材)」として論点の整理 平成28年度本庁舎等整備基本構想検討委員会開催 本庁舎等整備基本構想検討委員会報告書の提出 基本構想の位置づけ 平成28年4月から、区民や学識経験者からなる「世田谷区本庁舎等整備基本構想検討委員会」 において、6回にわたり活発な議論をいただき、8月に報告書を提出していただきました。 これまでの検討経緯や検討委員会の報告書を踏まえ、「世田谷区本庁舎等整備基本構想(素案)」 をまとめ、平成28年9月には、素案について、区内5地域で区民説明・意見交換会を実施する とともに、パブリックコメントを実施し、区民の方から多くのご意見をいただきました。 これらの結果を踏まえ、区は、「世田谷区本庁舎等整備基本構想(案)」を策定しました。 基本構想においては、本庁舎等整備の基本的な考え方、機能、規模や配置など、設計の際の与 条件として整理しています。今後、この基本構想に基づき、設計者選定を実施し、事業を進めて いきます。 2.本庁舎等整備の理念 基本理念 21世紀半ばを長期にわたり区政を支える拠点となる世田谷らしい本庁舎像とするため、次の 3つを本庁舎等整備における基本理念とします。 基本理念1 地域内分権と住民自治を確立し、「参加と協働・交流」の区政を推進するための拠点 としての庁舎 基本理念2 みどりに恵まれ、歴史に育まれた空間の広がりの中で環境と調和し、環境性能が高 く災害に強い庁舎 基本理念3 都内最大の人口を有する身近な基礎自治体として自治権を拡充するとともに、主体 的で独自性のある政策展開を支える庁舎 3.本庁舎等整備の基本的方針 基本的方針 本庁舎等は、以下の5つを基本的方針として整備していきます。 基本的方針1区民自治と協働・交流の拠点としての庁舎 区民自治の拠点として、行政サービスの提供に留まらず、幅広い区民がふれあい、交流 することのできる場所として、区民が気軽に立ち寄れ、多様な情報の共有や憩うことので きる区民に親しまれる庁舎を目指します。また、区民自治・交流を育んできた現庁舎等の 空間特質を継承していきます。 基本的方針2区民の安全・安心を支える防災拠点となる庁舎 高い耐震性を確保し、災害時も十分に機能が発揮される建物とするとともに、災害対策 本部として、区民の生命や財産を守るための機能を強化していきます。また、セキュリテ ィの確保にも配慮し、安全・安心な庁舎を目指します。 基本的方針3すべての人に分かりやすく、利用しやすい、人にやさしい庁舎 窓口サービスの利便性を高め、区民ニーズにあった便利で利用しやすい庁舎とするとと もに、ユニバーサルデザインの考え方に基づき、高齢者や障害者、子ども連れの方や外国 人など、利用される方の立場に立ったきめ細やかな配慮によって、すべての人にやさしい 庁舎を目指します。 基本的方針4機能的・効率的で柔軟性の高い庁舎 本庁機能の集約を図り、華美にならず、適正な執務空間を確保します。また、今後の行 政需要の多様化、社会情勢の変化、情報技術の高度化など、様々な変化に対応できる、機 能的・効率的で柔軟性の高い庁舎を目指すとともに、職員の働き方の改革に取組んでいき ます。 基本的方針5環境と調和し環境負荷の少ない持続可能な庁舎 建物のライフサイクルを通じた CO 2の削減に向け、省エネルギー化を図るとともに、 自然の恵みの積極的利用とエネルギーの有効活用、施設緑化など環境負荷低減策を可能な 限り導入し、環境にやさしい庁舎を目指します。また、維持管理しやすい構造や材料の導 入などにより、施設の長寿命化とライフサイクルコストの低減を目指します。 4.個別機能(整備課題)ごとの整備方針 個別機能(整備課題)ごとの整備方針 基本的方針ごとに個別機能(整備課題)を以下のように設定し、各機能の整備に向けた方針を定 めました。 基本的方針1区民自治と協働・交流の拠点としての庁舎 (1)区政への区民の参加と協働を推進する機能 ・区民等と行政が協働して政策形成していくワークスペースとなるよう工夫します。 ・会議室等について、夜間や閉庁時にも区民が利用できるよう検討します。 ・ロビー、エントランスは明るく開放的な空間となるよう配慮し、多目的に使用できるよう 整備します。 ・イベント会場や区民の憩いの場として利用できる広場を整備します。 ・様々な情報を集約して提供する情報コーナーを設置します。また、区民からの情報発信に も対応できるギャラリー機能をもたせます。 (2)区民自治・交流を育んできた現庁舎等の空間特質の継承 本庁舎、区民会館、広場等の空間特質をできるだけ継承し、区民自治・交流の拠点として 区民に愛される庁舎を目指していきます。 基本的方針2区民の安全・安心を支える防災拠点となる庁舎 (1)災害対策機能 ・国土交通省が定めた基準の最高水準の耐震性を確保します。 ・災害対策本部は、免震構造を基本とします。 ・災害対策活動に必要な諸室等について、平時には会議室などとしてフレキシブルに活用す ることを前提に、発災時にどのように機能するのか想定し、具体的に平面図を描くなどし ながら検討していきます。 ・発災直後には避難者の一時集合所等となり、復旧復興期には緊急・復旧車両の駐車並びに 物資の荷捌きスペースとなる広場を整備します。 ・本庁舎等が孤立した要塞にならないように、特定緊急輸送道路などとの関係を踏まえ、周 辺とのネットワークや周辺のまちづくりも視野に入れた整備を進めていきます。 (2)セキュリティ対策 ・行政情報、個人情報の保護や防犯上の観点などから、庁舎内のゾーニングを明確化し、動 線に配慮しながら、それぞれのエリアに応じたセキュリティ対策を講じます。 ・ ICカードや生体認証システムなどによる入退室管理、防犯カメラの設置、中央監視室や機 械警備の設置について検討します。 基本的方針3すべての人に分かりやすく、利用しやすい、人にやさしい庁舎 (1)窓口サービス 今後の地域行政の展開や(仮称)総合窓口の設置、マイナンバー制度の動向を踏まえ、本 庁舎及び世田谷総合支所の窓口機能の充実を図ります。 ・入口近くに総合案内を設けるとともに、分かりやすい組織配置とします。 ・外国人の方の手続の案内等にも対応できる窓口を設置します。 ・窓口機能を低層階に集め、関連性の高い窓口はできるだけ同一フロアに配置します。 ・業務内容に応じたカウンターの適切な配置、仕切りのあるカウンターなどプライバシーへ の配慮、また、記載台についても、記載しやすいよう形状や高さに配慮します。 ・高齢者や障害者、子ども連れの方も快適に過ごせる待合空間を整備するとともに、利用者 に分かりやすく効率的な窓口サービスシステムを導入します。 (2)ユニバーサルデザイン ・利用者の立場に立った、きめ細かな配慮によって、高齢者や障害者、外国人など、すべて の人が利用しやすい庁舎を目指していきます。 ・駐車場、駐輪場から総合案内カウンターまでの移動距離を短くし、動線も工夫します。 ・平常時の出入口と夜間などの時間外出入口の場所が大きく異なることのないよう、施設計 画を工夫します。 基本的方針4機能的・効率的で柔軟性の高い庁舎 (1)執務環境 執務環境の整備にあたっては、第2章で述べた将来を見据えた行政組織改革のあり方を踏 まえ、基礎的自治体の事業展開にふさわしい、機能的・効率的で柔軟性の高い計画とします。 同時に、新たな時代に適した職員の働き方の改革にもあわせて取り組んでいきます。 ・部署間の連携を考慮した配置とし、同一部に属する課をできるだけ同一階に配置し、相互 関連性の強い部署は、できるだけ近接した階・エリアに配置するなど職員の動線を短くし、 効率的・効果的に業務が行えるよう配慮します。 ・部、課の間に間仕切りを設けないオープンフロアを基本とし、職員間のコミュニケーショ ンが図りやすい機能的・効率的な空間とします。 ・フリーアクセスフロア、ユニバーサルレイアウトなどの導入を検討します。 ・職員の会議・打合せスペースとしてだけでなく、区民等と協働で政策形成していく場とし てのスペースを整備していきます。 ・ペーパーレス化への取り組みを推進し、文書の徹底した電子化により文書保管量のスリム 化を図り、必要な文書保管スペースを確保します。 (2)議会機能 ・議会の独立性を確保する観点から、行政機能のエリアと明確に区分けした配置とします。 ・議会活動の一層の充実を図るため、議場等のICT設備の導入等を検討します。 ・区民が親しみやすい議会となるよう、外部から分かりやすく、ユニバーサルデザインに配 慮し、アクセスしやすい配置とします。 ・議場や委員会室の傍聴スペースを十分確保し、傍聴者の利便性や安全性に配慮します。 ・陳情や要望などで来庁する区民や団体との応接スペースを確保します。 基本的方針5環境と調和し環境負荷の少ない持続可能な庁舎 (1)環境性能 ・ 2050年 CO 2排出量 80%削減、 21世紀末における脱炭素の達成に向け、省エネルギー化 を図るとともに、自然の恵みの積極的利用とエネルギーの有効活用を図ります。 ・ CO 2の削減を図るため、照明・空調等によるエネルギー負荷の抑制と建築物の断熱や熱負荷 軽減等を図る方策を活用します。 ・コージェネレーションシステム、水素燃料電池などの環境性能が高い分散型エネルギーにつ いて、災害時の有用性も踏まえ、平時の活用も念頭に置き、導入に向け検討します。 ・区役所一帯はみどりの拠点であることから、若林公園や烏山川緑道などとの緑のネットワー クを形成するよう、施設緑化と広場・緑地の植栽を一体的に計画・整備します。 ・現在のケヤキ並木については、既存樹木をできるだけ保全活用していきます。 (2)持続可能性 ・庁舎の設計、施工、維持管理・運営、改修など、イニシャルコスト、ランニングコスト、そ して危機対応コストも含めた、ライフサイクルコストの低減に向けて取り組みます。 ・維持管理に優れた構造・材料の採用など、維持管理のしやすさ、維持管理費用の抑制にも配 慮し、長期的に期待される性能を発揮できる経済性に優れた庁舎とします。 ・将来の行政ニーズや行政組織の変更に対応し、可能な限り長期間にわたり使用できる庁舎と なるよう、スケルトン・インフィルの考え方などを参考にした設計や工法等の採用を検討し ます。 5.世田谷区民会館の整備方針 基本的な考え方 区民自治を進めるためには、大規模集会機能は欠かすことができません。区民会館は各総合支所 管内に1箇所ずつ設置され、区民の文化、コミュニティの場として幅広く利用されています。加え て、世田谷区民会館は、世田谷地域の集会施設であるとともに、世田谷区の全区的集会機能も併せ 持っています。一方、世田谷区地域防災計画においては、世田谷地域の災害時における食料等の調 達物資の集積地及び配送拠点に指定されています。 これまでの世田谷区民会館の利用状況を踏まえ、区民自治と協働・交流の拠点となるよう、講演 会や式典等のほか、音楽や演劇等のイベントなど、多様な区民活動に対応できるとともに、大規模 災害が発生した際には、世田谷地域の物資等の集積場所などとしても対応可能な施設として整備し ます。 施設計画 ホール機能 多様な区民活動に対応できる多目的ホールとします。 ・プロセニアム形式の舞台とし、音楽利用に配慮した可動式の音響反射板の設置を検討します。 ・各種吊物機構や照明など、適正な設備を設置します。 ・舞台に隣接した楽器庫や舞台備品倉庫などを整備するとともに、大型車両による搬出入に対応 し、荷捌きが可能な搬入口を設けます。 ・現在の世田谷区民会館の利用状況を踏まえ、 800席から 1,000席程度を想定し、舞台までの 距離や見やすさに配慮した配置、積層計画を検討するとともに、各種舞台調整室や親子室など の設置を検討します。 ・客席は固定式を基本としますが、災害時の物資等の集積場所として活用する場合は、音響効果 への影響やコストなども踏まえ、一部可動する機能についても検討します。 ・公演の練習やリハーサルを行えるよう、音楽、ダンス、演劇などそれぞれの目的にあった機能 を備えるとともに、様々な用途に活用できる練習室を整備します。 交流機能 ・会議や研修、講演会等の利用に対応した集会室を整備します。利用者ニーズに応じて、部屋の 広さを変更できるよう、可動間仕切りの設置も検討します。 ・文化活動の情報交換の場として、区民が気軽に訪れ、ホールを利用しない区民も立ち寄り、交 流することができるレストランやカフェを設置します。 その他施設計画における留意点 ・災害時における世田谷地域の物資等の集積場所として、集会室、楽屋、練習室、ホワイエ、ホ ールも含め、最低700u程度のフラットなスペースを確保するものとします。 ・ユニバーサルデザインの考え方に基づき、運営者も観客もすべての人が利用しやすい施設とし ます。 ・施設の位置づけや機能などの検討を踏まえて、適切な管理運営方法を選択していきます。 ・区民会館の整備費は、庁舎などの事務所建設よりも、コスト高になるのが一般的であるため、 維持管理の容易性や費用対効果を十分に検証しながら、できる限り事業費の抑制に努めます。 6.本庁舎等の規模 基本条件 ・人口については、現在の人口規模 89万人を前提とします。 ・現在、本庁舎敷地外にある本庁舎関連施設について、原則、本庁舎へ集約することとし、平成28年度当初の職員数 2,831名を基本とします。職員数については、常勤職員に加え、本庁舎及 び集約する関連施設内に執務スペースを必要とする非常勤職員を含めることとします。 ・世田谷総合支所は、現在の本庁敷地内に整備することとします。整備にあたっては、世田谷総合 支所機能の独立性や支所としての一体性に十分配慮します。 ・議員数については、区条例により規定している定数50名を基本とします。 本庁舎等の規模(延床面積) 【本庁舎と区民会館の規模】 行政機能約 48,250u 内訳:行政機能約 47,300u、災害対策機能(専用で想定している部分のみ)約 950u 議会機能約 3,400u 内訳:議会機能約 3,400u 区民機能約 4,450u 内訳:区民交流機能(専用で想定している部分のみ)約 1,350u、区民会館(ホール)機能約 3,100u 合計約 56,100u <本庁舎規模> 約 53,000u 非常勤職員を含めた職員一人あたり面積は、約 18.7u( 23区平均は約 23.5u) 【駐車場・駐輪場等の規模】 駐車場・駐輪場等(地下部分のみ)約 12,500u 【広場の規模】 広場機能最低約 2,000〜 2,400u ※実際の床面積が、このとおりになるわけではありません。詳細な内訳については、今後、設 計段階で精査していきます。 行政機能について 地方債基準を参考に算定すると、約 58,400uとなりますが、世田谷区の実態を踏まえ、基準 を補正して算定しています。また、災害時に必要な機能については、個別に算定しています。 議会機能について 地方債基準を参考に、政令市規模の基準である議員一人あたり 50u及び共用部を加えた面積 として約 3,400u(議会事務局を除く)を想定します。 区民機能について 区民交流機能について、区民や行政による講演会や講座、シンポジウムなどが開催できるスペ ースや区民が容易に区政に関する情報が得られる場について、個別に算定しています。また、区 民会館(ホール)機能については、現在不足しているバックヤード機能等の充実を図り、現在と 同程度の規模の約 3,100u程度としています。 7.本庁舎等の配置と構成 本庁舎の場所、敷地条件 本庁舎の場所については、平成21年の本庁舎等整備審議会答申を受けて、さらに、移転の可 能性について、交通の利便性、周辺環境との調和、災害対策本部としての適性等の観点から検討 してきましたが、用地取得や用途地域等の関係で、現在地以外に望ましい場所を見出すことはで きませんでした。 そのため、平成26年3月に策定した本庁舎等整備方針において、本庁舎の場所は現在地とす ることとしました。 ■敷地面積:21,707u(東側敷地: 11,342u、西側敷地: 10,365u) ■用途地域等:第二種住居地域準防火地域第三種高度地区( 45m) ■建ぺい率・容積率:建ぺい率60%・容積率300% ■日影規制:5時間・3時間/H =4m ■接道条件:東側(世区街 5): 11m北側 (主 113): 10m(西側区間)、 11m(東側区間) 西側(補助 154号線): 15m南側:東敷地南側約 4.5m、西敷地南側 8m 敷地中央区道: 8m(北側区間)、 10m(南側区間) ■その他・地形等:・東側敷地は概ね平坦であるが、西側敷地の西から南西方向に向けては4m程度下がる形で高低差を有している。 ・敷地が中央の区道により分断されている。 ○現庁舎の敷地は、都市整備方針の土地利用方針の中で、「災害対策拠点」に位置づけるとと もに、「地域生活拠点」及び「みどりの拠点」にも位置づけられています。また、世田谷区 役所周辺地区防災街区整備地区計画を策定し、災害に強いまちづくりを進めています。 配置と構成に関する基本的考え方 行政機能、災害対策機能、区民機能、議会機能の各機能が十分にその機能を発揮するとともに、 広場機能を含め、それぞれの機能の関係性を考慮した合理的な配置を基本とします。 《区役所本庁舎等の機能相互関連イメージ図あり》 (1)建物計画について ■周辺の建物の高さを踏まえ、周辺環境との調和や圧迫感に配慮 した高さや配置とします。 ■地下には駐車場のほか、庁舎機能の一部(機械室、倉庫、会議 室等)の配置も見込みます。 (2)広場・緑地について ■広場は最低 2,000〜 2,400u確保し、このうち、災害時に物 資等の集積場所となる区民会館に隣接する位置に搬出入に配慮 した 1,600u程度のまとまった広場を確保します ■災害時の地域内輸送拠点となる国士舘大学の広場等との連続性・一体性、役割分担や連携を見 据えます。 ■「世田谷みどり 33」の趣旨を踏まえた緑化を行います。また、みどりの配置については、周 辺の住環境を考慮するとともに、区役所周辺一帯につながる ”みどりのネットワーク ”にも配 慮します。 (3)その他の敷地利用等について ■敷地中央の区道は廃道が困難である場合には、歩行者自転車専用にするなど、東西敷地を一体 的に利用できるようにします。 ■現在の路線と同数の降車場 1、乗車場 3の大型バス 4台分のバスベイを東側道路に沿って配 置します。また、現在と同数の 3台分程度のタクシー乗り場をバスベイと隣接して配置します。 (4)建設手順について ■近隣住民、施設利用者、職員への影響を最小限に抑えるためにも、可能な限り2期工事(5年 程度)で終わるよう、民間の技術も活用しながら、工期短縮に向け様々な手法を検討します。 ■災害対策本部は工事期間中も継続して現在の敷地内に設置します。 (5)現庁舎等の空間特質について ■50年以上区民に親しまれてきた本庁舎、区民会館、広場等の空間特質をできるだけ継承する 計画とします。さらに、本庁舎等の課題を踏まえ、求められる機能、規模の確保と最も合理的 な事業計画(コスト削減、工期短縮等)が可能であれば、現庁舎等の活用も考慮します。 8.事業計画 事業方式と設計者・施工者選定方式について 事業方式 設計段階から実践的な施工計画を踏まえた高度な技術力を求めるとともに、透明性や公開性を確 保すること、区や区民の意見等を十分に反映させることを条件として、従来から採用している「設 計・施工分離発注方式」によることを基本とします。 設計者選定方式 区が示す設計業務遂行上の条件や課題を理解し、設計に反映することのできる能力を有する設計 者を選定する方式として「プロポーザル方式」を採用します。 なお、本事業のプロポーザルでは、発注者側の意図に柔軟に対応することが可能で、区民の意見 等を十分に反映させるための区民協働の考えを取り入れた対応の提案を重視するとともに、施工面 の難易度が高いことも考慮して、施工計画や工程計画等の対応能力・方策も重点評価項目とし、透 明性、公開性に配慮したプロポーザルの企画検討を行うこととします。 施工者選定方式 施工者選定方式については、施工能力を確保することを前提に、今後、適切な選定方式の採用に 向け、さらに検討していきます。 財政計画 必要床面積を含む諸条件の実現可能性を検証するために示した配置イメージ(参考資料)を参考 に、仮設庁舎等の活用を前提としないものの中で最も概算事業費が高い約 410億円に基づき、財 政計画を立てることとします。 《概算事業費》 建設工事費約 385億円 解体工事費約 15億円 移転・引越費約 3億円 調査・設計費約 8億円 合計約 410億円 ※他自治体の庁舎及びホール建設事例を参考 に、平成 27年 4月時点の単価で算定し、消 費税については 10%で算定しています。 ※基本構想段階での事業費であるため、建物仕 様、外構計画など、不確定要素が多い中での 概算として算定しています。 《財源内訳》 各種補助金等未定 庁舎等建設等基金約210億円 起債約148億円 一般財源約52億円 合計約 410億円 ※基金と起債をバランスよく活用することで、一般 財源の負担を軽減する財政計画を組み立ててい く必要があり、今後、さらに精査していきます。 ※また、各種補助金や寄附の活用、税外収入など区 の収入確保が可能な仕組みについても検討して いきます。 事業スケジュール 2020年度(平成 32年度)に着工できるよう取り組んでいきます。なお、民間の技術も活用し ながら、工期短縮に向けて様々な手法を検討していきます。 今後の進め方 本庁舎等整備の課題について 今後、本庁舎等を整備する敷地の確定や仮設庁舎・用地などの設計の与条件を整理していきま す。 設計者の選定 設計者はプロポーザルにより選定しますが、選定にあたって以下の点に留意します。 ■災害対策や環境性能などの求められる機能・規模、事業費の抑制、工期の短縮、現庁舎等の 空間特質の継承などに対する提案を総合的に評価します。 ■本事業は、多角的で高次な諸要求が織り込まれた基本構想を具体化すべく行う難易度の高い 工事となるため、設計者選定にあたっては、施工計画や工程計画の対応能力・方策について も評価項目としていきます。また、その提案の実現性などを評価できる体制を構築します。 ■本庁舎等の整備にあたっては、広場も含め、周辺の公園・広場等とのネットワークや、風景 の連続性、生態系の視点を持って計画する必要があることから、建物だけではなく、広場空 間などのランドスケープについての能力を持つ設計者、あるいはそうした能力のある者と連 携できる設計者を選定できるよう工夫していきます。 ■本庁舎等は何時も揺るぎない防災拠点(災害対応指令基地)として機能するよう、工事期間 中に大規模災害が発生する可能性も想定した工期・工程を計画していきます。また、広場を 含め、平常時と災害時のそれぞれで、誰がどのように利用するのかを意識した計画としてい きます。 ■区民の意見等を十分に反映させるための区民協働の考えを取り入れた対応の提案を重視する とともに、選定の公開性を確保していきます。 区民参加 本庁舎等は区民共有の財産であることから、本庁舎等の整備のプロセスそのものが区民の参加 と協働によるものとなるよう、工夫を重ねていきます。 基本構想、設計者選定、基本設計、実施設計、工事、そして利用が始まってからも、すべての 段階での区民参加、さらに将来利用する子どもなど若い世代の参加を含めて進めていきます。 総事業費について 財政計画で仮に示した事業費は、あくまでこれまでの検討過程で最も事業費が高くなる案をも とに試算した概算事業費です。 緩やかな景気回復基調の中で、平成28年度の予算編成においては、歳入増を見込んだところ ですが、現在の世界経済の動向や国の税制改正の動きなどを踏まえると、区財政の先行きは決し て楽観できる状況にはありません。本庁舎等整備は、多額の財政負担を伴う事業であり、区の将 来の財政運営への影響を見据え、総事業費に最も大きな影響を与える本庁舎等の規模や工期など について十分な検討を行い、総事業費の抑制に努めます。 工事中の安全性の確保と周辺環境への配慮 長期にわたる工事となるため、工期短縮に向けて様々な手法を検討していくとともに、工事は 安全を最優先として、騒音、振動、粉じん等に最大限配慮した計画、工法とします。 また、本庁舎敷地周辺は住宅地であり、整備後の建物規模が現状よりも大きくなることから、 建物高さや日影の影響、圧迫感、さらには施設に起因する風害、光害、騒音・振動、電波障害等 の極力の防止を図るよう、周辺環境に十分配慮した計画としていきます。