世田谷区本庁舎等整備基本構想(素案) 平成28年8月 世田谷区 目次 第1章.本庁舎等整備の背景 1.本庁舎等整備検討の経緯 2.本庁舎等の位置づけ 3.現庁舎等の評価・課題と整備の必要性 第2章.本庁舎等整備の理念 1.基本理念 2.将来を見据えた行政組織改革と本庁舎 3.理念を実現するための踏まえるべき視点 第3章.本庁舎等整備の基本的方針 1.基本的方針 2.基本的方針に対応する個別機能(整備課題) 第4章.個別機能(整備課題)ごとの整備方針 基本的方針1.区民自治と協働・交流の拠点としての庁舎 基本的方針2.区民の安全・安心を支える防災拠点となる庁舎 基本的方針3.すべての人に分かりやすく、利用しやすい、人にやさしい庁舎 基本的方針4.機能的・効率的で柔軟性の高い庁舎 基本的方針5.環境と調和し環境負荷の少ない持続可能な庁舎 第5章.世田谷区民会館の整備方針 1.基本的な考え方 2.施設計画 第6章.本庁舎等の規模 1.基本的考え方 2.基本条件 3.本庁舎等の規模(延床面積) 第7章.本庁舎等の配置と構成 1.本庁舎の場所 2.敷地条件 3.配置と構成に関する基本的な考え方 4.具体的な配置について 第8章.事業計画 1.事業方式と設計者・施工者選定方式について 2.財政計画 3.事業スケジュール 4.今後の進め方 資料編については、主に表のため、詳細は庁舎計画担当課までお問い合わせください。 第1章.本庁舎等整備の背景 1.本庁舎等整備検討の経緯 (1)これまでの主な経緯 世田谷区では、平成 16年度から 4ヵ年にわたって、庁舎整備に関する調査研究を実施し た結果、築 50年近くを経過した本庁舎等(本庁舎、世田谷区民会館等(以下「本庁舎等」 という。))について区民サービス面や災害対策面、環境対応面などで様々な課題や問題点 が明らかとなった。 平成 20年 5月には、27出張所等地区で報告会を開催し、翌 6月には区民意識調査を実 施するなど、本庁舎等が抱える課題や問題点について、区民の方に周知するとともにご意 見等の把握に努めてきた。 これらの結果を踏まえ、世田谷区は、平成 20年 9月に、区役所本庁舎等について、改築 の方向で検討に取組むこととした。 平成 20年 10月に学識経験者、地域団体の代表、公募区民等で構成される「世田谷区本 庁舎等整備審議会」を設置し、全 10回にわたる審議を経て、平成 21年 8月に審議会から 「@現庁舎の課題や問題点を抜本的に解決するためには、本庁舎等の一部または全部を取 り壊し、改築することが必要である。」、「A場所については、歴史的な経緯等から現在の敷 地が望ましい。しかし、交通の利便性等から移転の可能性について、今後、検討が必要で ある。」、「B厳しい社会・経済状況の中で、その経費が区民の負担によってまかなわれるこ とを考慮し、区民の理解を得ながら進められたい。」旨の答申をいただいた。しかし、リー マンショックの影響などから区の検討は進まず、方針を決定するに至らなかった。 また、区議会においては、平成 13年から平成 23年まで、「地方分権・庁舎問題等対策特 別委員会」が設置され、庁舎問題について議論が行われた。 その後、平成 23年 3月の東日本大震災の発生や社会状況の変化、施設整備には多年を要 することなどから、平成 25年 3月には、当面の対策として災害対策本部機能を強化するた めの非常用電源等を整備した。一方、本庁舎等整備の課題は避けられないとして、庁内で の検討を進めるプロジェクトチームを設置し、準備を再開した。 平成 25年 9月からは、専管組織(庁舎計画担当課)を設置するとともに、副区長をトッ プとする庁舎計画推進委員会を立ち上げた。その検討部会において、有識者アドバイザー の方から東日本大震災を踏まえた本庁舎の役割など、本庁舎のあり方や、区民サービス、 環境対策、庁舎整備を進める上での技術的な点など、多角的かつ専門的な助言・ご意見を いただいた。また、同年 11月には無作為抽出による区民ワークショップを開催し、区民の 方からもご意見をいただいた(いただいた意見の詳細については、資料編参照)。 これらの検討結果を踏まえ、区は平成 26年 3月に「世田谷区本庁舎等整備方針」(以下 「整備方針」という。)を策定し、「@本庁舎の場所は、審議会答申を受けて、さらに、移 転の可能性について、交通の利便性、周辺環境との調和、災害対策本部としての適性等の 観点から検討してきたが、用地取得や用途地域等の関係で、本庁舎の現在地以外に望まし い場所を見出すことはできず、現在地とする。」、「A本庁舎の規模は、最低で約45,000uとする。」、「B本庁舎等の一部又は全部を取り壊し、10年後を目途に改築する。」こ とを基本として、検討を進めることとした。 平成 26年度からは、本庁舎等整備基本構想に着手し、庁内で連携して世田谷区民会館や 世田谷総合支所の場所を検討するとともに、本庁舎等配置の複数パターンのシミュレーシ ョンを行い、本庁舎等の一部改築か全部改築かについて、仮設庁舎の要否や解体建設手順、 総事業費等を比較・検討してきた。また、平成 26年 5月には本庁舎等整備シンポジウムを 行い、整備方針を説明するとともに、区民や有識者の方からご意見や提言をいただいた(い ただいた意見の詳細については、資料編参照)。 また、平成 27年 2月に、区のおしらせで本庁舎等整備に向けた検討経過をお知らせする とともに、本庁舎等整備報告会を開催し、区民の方へ周知するとともに意見を伺った(い ただいた意見の詳細については、資料編参照)。 これらの結果を踏まえ、区は平成 27年 3月に「本庁舎等整備基本構想(中間まとめ)」 (以下「中間まとめ」という。)を策定し、「@本庁舎等の整備手法については、引き続き、 区民サービスや機能性の向上、災害対策機能の強化、総事業費の抑制、また、現在の本庁 舎等の特徴である庁舎と区民会館と低層棟が中庭を囲む景観の継承に向けて検討を進め る。」、「A世田谷区民会館については、現在と同規模(1,200人規模)で、現在地で整備す る。」、「B世田谷総合支所の場所については、三軒茶屋を候補として交通至便地域への移転 を検討していくが、一定の窓口機能を本庁に残す必要や災害対策・区民交流スペース等の 必要性を考慮し、引き続き最低 45,000uとして検討する。」ことを基本として、概ね 2024 年度(平成 36年度)の竣工を目指し、整備・改築に取り組むこととした。 27年 9月には、現在の本庁舎等の特徴である中庭を囲む開放的な配置(庁舎と区民会館 とそれらをつなぐ低層棟のピロティが中庭を囲む空間)を継承することとして、区議会第 3回、第4回定例会でご議論いただいたところだが、景観や現庁舎の保存にこだわらず、 機能やコスト、工事期間の短縮を優先すべきとのご意見が多く出され、改めて議論を深め ることとした。 本庁舎等の整備は、現在の世田谷区基本構想の 20年間を超え、21世紀半ばを長期にわ たり世田谷区政を支える拠点の整備である。これからの区政展開の方向性を見据えながら、 区民、区議会とともに創る本庁舎等の基本構想とする必要がある。このため、これまでの 取組みを踏まえながらも、28年度前半に、区民、学識経験者の参画を得て、幅広くオープ ンな議論を行い、区民の皆さんにも広く周知し、参加と協働により、平成 28年 8月に素案、 平成 28年 11月に基本構想(案)としてとりまとめることとした。 平成 28年 4月からは、区民 13名、学識経験者 7名により構成される、本庁舎等整備基 本構想検討委員会を設置し、6回の検討委員会と 1回の報告会を開催し、本庁舎等整備基 本構想の策定に向け、幅広い議論を行った。 平成 28年 8月には、検討委員会より「本庁舎等整備基本構想検討委員会報告書」が区長 に提出された。 これまでの検討経緯や検討委員会から提出された報告書を踏まえ、区は、「本庁舎等整備 基本構想(素案)」を策定した。 2.本庁舎等の位置づけ (1)地域行政制度と本庁舎等 世田谷区は、平成3年度より、全国に先駆けて地方分権の先取りとなる独自の地域行政 制度を創設し、地域住民に密着した地域行政を推進してきた。 地域行政の基本理念は、「都市としての一体性を保ちながら、住民自治の実をあげるため、 区内を適正な地域に区分して地域の行政拠点を設置し、これを中核として地域の実態に即 したまちづくりを展開するとともに、区政への区民参加の促進を図り、住民自治の確立を 目指す。」としている。(昭和56年報告書) この基本理念のもと、区は、地域行政を推進する仕組みとして、区の区域を「地区―地 域―全区」に分け、区民に最も身近な行政施設として出張所・まちづくりセンター、地域 の行政拠点として総合支所、全区的な統括を担う機能を本庁とする三層構造による地域行 政制度を推進している。 平成3年に5つの総合支所を設置し、地域行政制度を発足させて以降、平成9年には保 健所と福祉事務所を統合して5地域に保健福祉センターを設置、平成11年には総合支所 を区民部、保健福祉センター、街づくり部の3部制に移行するといった歩みを進める一方、 建築審査や用地買収など専門性の高い事務の再集中化、出張所改革を経て、平成18年に は街づくり課を除く都市整備部門を本庁に再編するなど、効率化に向けた取り組みも実施 してきた。さらに、平成28年7月には、地域包括ケアを全27地区で展開し、地区の機 能を強化する取り組みを開始したところである。こうした取り組みの結果、地域行政制度 開始前の平成2年、人口77万人に対し、本庁職員1,924人、出張所を含めた総合支 所職員718人の体制に対し、平成28年、人口89万人に対し、本庁職員1,867人、 総合支所職員1,020人の体制となっている。 本庁は、三層構造において、区としての政策方針、計画など全区的な統括を基本に、専 門性の高い事務や集中化によるメリットのある事務等、行政サービスの実施機関としての 役割も担っている。 こうした地域行政制度の中にあって、本庁舎は本庁機能を支え、世田谷区民会館は全区 的な区民交流、イベントの場としての役割を果たすことが求められており、さらに、世田 谷総合支所としての機能も併せ持っている。 (2)災害対策と本庁舎等 世田谷区の区域内において、災害が発生し、または発生するおそれがある場合、区は、 災害対策基本法に基づき、災害対策本部を設置し、災害の状況に応じ必要な態勢を指令し、 職員を配備して災害応急対策活動を行うこととしている。 災害対策本部は、本部長、副本部長を中心とした災対各部と5つの総合支所に設置する 災対地域本部、27まちづくりセンターに設置する拠点隊で構成される。 本庁には、災対統括部をはじめ、災対総務部、災対財政・広報部、災対物資管理部、災 対区民支援部、災対清掃・環境部、災対保健福祉部、災対医療衛生部、災対都市整備部、 災対道路・土木担当部、災対教育部の各部が設置され、本部長、副本部長の指令のもと、 東京都災害対策本部、自衛隊、警察・消防、ライフライン各社などと連携しながら担任の 事務をとり、災対地域本部、拠点隊から連絡される様々な情報を整理・分析し、適確に災 対地域本部、拠点隊に指令を出すとともに、各地区の被害状況に応じた支援を行いながら、 災害応急対策活動を行うこととなる。 5総合支所に設置する地域本部は、各拠点隊への指示、支援、罹災証明等の発行、災害 状況の情報収集、救援物資等の輸送、配布、物資集積場の管理等、地域における広範な事 務を担い、27まちづくりセンターに設置する拠点隊は、医療救護所の支援、地区に開設 される避難所の支援、災害状況の情報収集などの事務を担うこととなる。 災害時には、本庁舎は本部長を中心とした、災対地域本部を除く災対各部の活動場所と して、揺るぎなく機能する災害対応指令基地であることが求められている。また、世田谷 区民会館は、世田谷地域の物資集積所として機能する必要がある。 ※従来、出張所7箇所及びまちづくりセンター20箇所に拠点隊が設置されることになっていたが、平成28 年7月1日付組織改正で、出張所7箇所にまちづくりセンターが新設されたことにより、拠点隊についてはす べてまちづくりセンターに設置されることとなった。 3.現庁舎等の評価・課題と整備の必要性 (1)現庁舎等設計の意図と評価 現世田谷区民会館及び区役所第1庁舎は、1957年(昭和 32年)に実施された区民会 館設計競技(コンペ)において、前川國男建築設計事務所(現:前川建築設計事務所) が設計者として選定された。コンペの時代背景には、戦前においては武蔵野の自然と田 園地帯だった世田谷に、部分的に文化人などが居住する住宅地なども開発されてきてお り、戦後には、広範なエリアが住宅地として開発され、人口が急増している状況があっ た。 コンペで要求された施設内容は、ホール(公会堂)のほかに図書館、集会室、展示場、 結婚式場などの複合施設(公民館)であり、同一敷地に建設される区役所庁舎について は、コンペ段階ではその概略の配置のみを提案するものとされた。 設計者は配置計画について、「市民の生活の場に連なる空間を主体として考え、その空 間を創り出すものとして区民会館と区庁舎がおかれたといってもよいと思う。」と述べて いる。(※) 今年、近代建築三大巨匠とされるル・コルビュジエ設計の建築群が世界遺産として登 録されることとなり、日本では上野にある国立西洋美術館が、今回世界遺産登録される こととなった。ル・コルビュジエの弟子である前川國男は、国立西洋美術館新館の設計 も行っており、モダニズム建築家として戦後の日本の建築界を牽引し、国内外からの評 価が高い建築家である。 前川國男は、国内で多くの庁舎や公共ホール等公共施設を設計している。世田谷区民 会館と第1庁舎、そしてそれらをつなぐ低層棟のピロティから中庭にいたる「広場」を 中心にした施設構成は、世田谷区の多様な文化活動を受け入れることに成功し、また世 田谷区民もこの広場を有効活用し親しんできた。また、第1庁舎と世田谷区民会館につ いては、DOCOMOMOJapan(近代建築の記録と保存を目的とする国際組織の日本支部)によ り、「日本におけるモダン・ムーブメントの建築 174選」に選定されている。 なお、現在の本庁舎敷地については、区民より一部土地の寄贈を受けて整備されたも のである。 その後人口増や行政事務の拡大から、第2庁舎、第3庁舎と建設され、さらに周辺の 施設へと分散化した。また、地域行政制度に基づく総合支所の創設により、区役所本庁 舎と区民との関係も変わってきている。また、区民会館においては、当初の結婚式場が 廃止され、図書館も移転しており、当初想定されたコミュニティ施設としての意味合い は変容してきているが、区民会館は全区的な発表・表現の場であることは変わっていな い。 建設当時、敷地内に植樹されたケヤキは大きく成長し、庁舎と一体となり、落ち着い た佇まいを構成し、緑あふれる空間となり、多くの区民に親しまれている(平成 25年度 に、世田谷区風景づくり条例に基づく地域風景資産として、「世田谷区庁舎のケヤキ並木 が作る広場の風景」が選定)。 また、庁舎と区民会館と低層棟のピロティに囲まれた中庭については、子どもから老 人まで日頃から区民が憩う場としてのみならず、新年のつどい、新年子どもまつり、新 成人のつどい(成人式)、産業フェスタ、ふれあいフェスタなど、区民会館と一体となっ たイベントの場、バザーなどの場として利用されるとともに、ケヤキ並木など、緑と調 和した環境となっており、50年以上にわたって区民に親しまれてきた。このような区 民の自由な広場は、23区あるいは他の庁舎でもあまり見られない貴重な空間である。 さらに、レストランけやきの前面のサンクンガーデン(池)や、ケヤキ並木と調和し た噴水など、竣工当時にはなかったものも、区役所庁舎の景観として今や欠かせない要 素となっている。 (※)雑誌「建築文化」1961年 6月号 (2)現庁舎等の課題と整備の必要性 現庁舎には区政を支える拠点として、災害対策機能をはじめとして改善すべき諸課題 があり、現在の敷地を活用しながら、庁舎機能の向上、拡充を図る必要がある。 @災害対策の拠点としての機能強化 平成24年6月から平成25年3月にかけて、災害対策本部の中枢となる本部長室 等及び非常用の電源や水の確保に係る諸設備の強化を図るため、第1庁舎と比べて耐 震性の優れた第3庁舎を応急整備し、第1庁舎から本部長室等の移転を行った。しか しながら、89万区民の災害対策の中枢管理機能を果たすには未だ十分な状態ではな い。熊本地震においては、業務継続が不能となった庁舎の事例も見られ、本庁舎の耐 震性能の重要性が改めて注目されるところとなっている。本庁舎のすべてのフロアに おいて、大規模災害直後でも業務継続が可能な庁舎へと機能強化を図る必要がある。 A区民サービスの充実、効率的事務執行を実現するスペースの拡充 庁舎の狭あい化により、窓口や待合スペース、事務スペース、会議・打合せスペー ス等が不足しており、区民サービスの提供や効率的な事務執行に支障をきたすだけで なく、窓口におけるプライバシーの確保等も課題となっている。さらに、庁舎が多く の建物に分散されているため、関係部署間の連絡などの面で行政事務機能の非効率化 を招くとともに、来庁する区民や事業者等にとって分かりづらく、利用しにくい庁舎 となっている。借り上げ庁舎等に分散した庁舎を集約するとともに、地域行政の推進 等、行政組織の将来を見据えつつ、必要最低限のスペースを拡充し、快適、効率的に サービスを受けられる環境を整備する必要がある。 B施設や設備の環境性能等の機能強化 本庁舎は、第1庁舎が昭和35年、第2庁舎が昭和44年、世田谷区民会館が昭和 34年に建設され、第1庁舎、世田谷区民会館は築50年以上経過している。そのた め、躯体や外装・内装の劣化が進むとともに、省エネルギーやバリアフリー化等への 対応を考える必要がある状況となっている。 本庁舎は、環境共生都市せたがやとして、21世紀末における脱炭素の達成など、 先導的な役割を果たすべく、施設、設備の熱効率向上や省エネルギー技術を積極的に 導入して環境性能を向上させるとともに、誰もが利用しやすい庁舎とするため、ユニ バーサルデザインの実現に向けて、機能の強化を図る必要がある。 C区民交流・区民参加の機能を高めるスペースの拡充 町会・自治会や、NPO、自主活動グループなど、区民による主体的な活動が区内 の様々な場所で展開されている。こうした多くの区民活動団体の情報共有、交流の場、 そして区政への参画の場としての機能が本庁舎に求められるが、人口の増加や東京都 からの事務移管、区の業務の多様化等により、庁舎の狭あい化が進み、区民同士が交 流し、区民と区が協働して事業を進めていくための多目的に利用できるパブリックス ペース、会議・打ち合わせスペース、ワークスペース等が不足している。区民自治の 拠点として、区民が交流し、情報を交換、共有でき、区民協働を実現するためのスペ ースを拡充する必要がある。 第2章.本庁舎等整備の理念 1.基本理念 世田谷区の最上位計画となる「世田谷区基本計画(平成 26年度から平成 35年度)(副題: 子どもが輝く参加と協働のまちせたがや)」では、次のような基本方針を示している。 ○住民自治の確立−参加と社会的包摂○ 環境と調和した地域社会の実現 ○自治権の拡充と持続可能な自治体経営の推進 これらを踏まえ、21世紀半ばを長期にわたり区政を支える拠点となる世田谷らしい本庁 舎像とするため、次の 3つを本庁舎等整備における基本理念とする。 《基本理念1》 地域内分権と住民自治を確立し、「参加と協働・交流」の区政を推進するため の拠点としての庁舎 《基本理念2》 みどりに恵まれ、歴史に育まれた空間の広がりの中で環境と調和し、環境性 能が高く災害に強い庁舎 《基本理念3》 都内最大の人口を有する身近な基礎自治体として自治権を拡充するととも に、主体的で独自性ある政策展開を支える庁舎 2.将来を見据えた行政組織改革と本庁舎 本庁舎等を整備するにあたっては、世田谷区の将来を見据え、行政組織改革の推進を念 頭に進める。 (1)県レベルの大自治体でありながら、フラットな組織と透明性の確保 (2)縦割りから横つなぎへ、マッチングの推進 (3)地域・地区を重視した地域行政制度の推進、本庁と地域・地区の役割分担の見直し (4)児童相談所の移管をはじめとした都区制度改革と自治権の拡充の推進 3.基本理念を実現するための踏まえるべき視点 本庁舎等の基本理念を実現していくうえでは、以下に掲げる視点を踏まえることとする。 (1)区民自治と協働・交流の拠点としての本庁舎 (2)災害時の拠点としての本庁舎 (3)これからの基礎自治体のあり方と本庁舎 (4)これからの区民サービスのあり方と本庁舎 (5)執務環境の優れた創造的空間のあり方と本庁舎 (6)環境負荷を抑えた本庁舎 (7)フレキシブルで長寿命・持続可能な本庁舎 (8)歴史に育まれた地域の環境と調和した本庁舎 (9)経済性とのバランスの取れた本庁舎 第3章.本庁舎等整備の基本的方針 1.基本的方針 第2章で設定した本庁舎等整備の理念の実現に向け、以下の5つを基本的方針として、 本庁舎等整備に取り組むこととする。 【基本的方針1】区民自治と協働・交流の拠点としての庁舎 区民自治の拠点として、行政サービスの提供に留まらず、幅広い区民がふれあい、交 流することのできる場所として、区民が気軽に立ち寄れ、多様な情報の共有や憩うこと のできる区民に親しまれる庁舎を目指す。また、区民自治・交流を育んできた現庁舎等 の空間特質を継承していく。 【基本的方針2】区民の安全・安心を支える防災拠点となる庁舎 高い耐震性を確保し、災害時も十分に機能が発揮される建物とするとともに、災害対 策本部として、区民の生命や財産を守るための機能を強化していく。また、セキュリテ ィの確保にも配慮し、安全・安心な庁舎を目指す。 【基本的方針3】すべての人に分かりやすく、利用しやすい、人にやさしい庁舎 窓口サービスの利便性を高め、区民ニーズにあった便利で利用しやすい庁舎とすると ともに、ユニバーサルデザインの考え方に基づき、高齢者や障害者、子ども連れの方や 外国人など、利用される方の立場に立ったきめ細やかな配慮によって、すべての人にや さしい庁舎を目指す。 【基本的方針4】機能的・効率的で柔軟性の高い庁舎 本庁機能の集約を図り、華美にならず、適正な執務空間を確保する。また、今後の行 政需要の多様化、社会情勢の変化、情報技術の高度化など、様々な変化に対応できる、 機能的・効率的で柔軟性の高い庁舎を目指すとともに、職員の働き方の改革に取組んで いく。 【基本的方針5】環境と調和し環境負荷の少ない持続可能な庁舎 建物のライフサイクルを通じたCO 2の削減に向け、省エネルギー化を図るとともに、 自然の恵みの積極的利用とエネルギーの有効活用、施設緑化など環境負荷低減策を可能 な限り導入し、環境にやさしい庁舎を目指す。また、維持管理しやすい構造や材料の導 入などにより、施設の長寿命化とライフサイクルコストの低減を目指す。 2.基本的方針に対応する個別機能(整備課題) 1.で設定した5つの基本的方針の実現に向けて、基本的方針ごとに個別機能(整備課 題)を以下のように設定し、その機能の整備に向けた方針を定めていくこととする。 《個別機能(整備課題)》 【基本的方針1】 区民自治と協働・交流の拠点としての庁舎・区政への区民の参加と協働を推進する機能 ・区民自治・交流を育んできた現庁舎等の空間特質の継承 【基本的方針2】 区民の安全・安心を支える防災拠点となる庁舎 ・災害対策機能能 ・セキュリティ対策 【基本的方針3】 すべての人に分かりやすく、利用しやすい、人にやさしい庁舎 ・窓口サービス ・ユニバーサルデザイン 【基本的方針4】 機能的・効率的で柔軟性の高い庁舎 ・執務環境 ・議会機能 【基本的方針5】 環境と調和し環境負荷の少な い持続可能な庁舎 ・環環境境性性能能 ・持続可能性 第4章.個別機能(整備課題)ごとの整備方針 第3章で示した基本的方針ごとの個別機能(整備課題)について、以下のように整備を 進める。 【基本的方針1】区民自治と協働・交流の拠点としての庁舎 (1)区政への区民の参加と協働を推進する機能 本庁舎、総合支所、出張所・まちづくりセンターの三層構造を踏まえ、全区的な区 民自治と協働・交流の拠点としての機能を果たすため、本庁舎及び世田谷区民会館を 整備していく。 ア参加と協働の機能 ・区民、区民団体、事業者、NPO等と行政が協働して政策形成していくワークスペ ースとなるよう、執務室、会議室を含め、工夫していく。 ・会議室等については、夜間や閉庁時にも区民が利用できるよう、動線、管理方法な どについて検討する。 ・子供連れの方でも、シンポジウムなどの様々なイベントに参加しやすいよう、ひと とき保育が可能なスペースを確保していく。 イ交流機能 ・区民同士の交流、国際交流、国内交流の場として、様々な利用に対応できる空間の 整備を検討する。整備にあたっては、同じ敷地内に区民会館があることに留意し、 効果的・効率的な施設計画とする。 ・災害時には、災害対策活動にも活用が可能な空間として整備する。 ・ロビー、エントランスは、来庁者が快適に過ごせるよう、明るく開放的な空間とな るよう配慮するとともに、様々な区民活動の成果物の発表、展示スペース、ミニコ ンサートなど、多目的に使用できるよう整備する。 ・閉庁時にも、適切な管理のもとでイベント開催などに利用可能な空間として整備す ることも検討する。 ウ広場機能 ・現在の中庭が、「新年のつどい」や「新年子どもまつり」、「新成人のつどい」など、 長い間区民に親しまれ、区民会館と一体的に利用されてきたことを踏まえ、イベン ト会場や区民の憩いの場として利用できる広場を整備する。 エ情報発信機能 ・区政情報や区の文化・歴史等に関する資料やパンフレットなど、様々な情報を集約 して提供する情報コーナーを設置する。 ・行政からの情報発信だけでなく、区民からの情報発信にも対応できるギャラリー機 能をもたせる。 ・掲示板、展示スペースや区議会放送用のテレビを設置するとともに、コピーサービ ス等を充実させる。 オ利用者サービス ・食堂(レストラン)や喫茶店(カフェ)の設置を検討する。 ・区内障害者施設の生産品の販売等を行うスペースを整備する。 ・来庁者の利便性向上を図るため、金融機関ATMの設置や売店などの民間利便施設 の導入を検討する。 ・来庁者に開放する Wi-Fiアクセスポイントを整備する。また、Wi-Fiの活用方法に ついては、区民の利便性や区から提供するサービスとの連携、災害時の活用などに 配慮する。 ・デジタルサイネージなどを活用した区民への情報提供の充実についても検討を進め ていく。 (2)区民自治・交流を育んできた現庁舎等の空間特質の継承 世田谷区民会館、区役所第1庁舎及び第2庁舎は、近代建築の代表的建築家の一人で ある前川國男氏の設計によるものであり、50年以上区民に親しまれ、庁舎と区民会館 と低層棟のピロティに囲まれた広場については、子どもから老人まで日頃から区民が憩 う場としてのみならず、新年のつどい、新年こどもまつり、新成人のつどい(成人式)、 産業フェスタ、ふれあいフェスタなど、区民会館と一体となったイベントの場、バザー などの場として利用され、区民自治・交流を育んできた。こうしたことを踏まえ、本庁 舎、区民会館、広場等の空間特質をできるだけ継承し、これからも区民自治・交流の拠 点として区民に愛される庁舎を目指していく。 【基本的方針2】区民の安全・安心を支える防災拠点となる庁舎 (1)災害対策機能 区には、区民の生命、身体及び財産を災害から保護するという重大な責務が課せられ ており、災害時には、世田谷区地域防災計画に基づき、本庁舎に災害対策本部を設置し、 災対地域本部となる総合支所、拠点隊となるまちづくりセンターと連携を図り、防災関 係機関及び区民等の協力を得て、全力を挙げて災害応急対策に努めることとしている。 そのため、災害対策本部として、区の災害対策の中枢管理機能を果たすための必要な 機能を備えた、災害に強い庁舎を目指し、本庁舎等を整備していく必要がある。 ア高い耐震性の確保 ・本庁舎は、災害対策本部として、国土交通省が定めた「官庁施設の総合耐震・対津 波計画基準」の最高水準である「構造体T類、非構造部材A類、建築設備甲類」を 確保することを基本とする。また、熊本地震に対する今後の国や都の動向を踏まえ、 首都直下地震などに対応できる最新の知見に基づく安全性の検証を行う。 《耐震安全性の分類表》 耐震安全性の分類耐震安全性の目標 構造体 T類 大地震動後、構造体の補修をすることなく建築物を使用できることを目 標とし、人命の安全確保に加えて十分な機能確保が図られている。 U類 大地震動後、構造体の大きな補修をすることなく建築物を使用できるこ とを目標とし、人命の安全確保に加えて機能確保が図られている。 V類 大地震動により構造体の部分的な損傷は生じるが、建築物全体の耐力 の低下は著しくないことを目標とし、人命の安全確保が図られている。 建築非構造部材 A類 大地震動後、災害応急対策活動や被災者の受け入れの円滑な実施、 又は危険物の管理のうえで、支障となる建築非構造部材の損傷、移動 等が発生しないことを目標とし、人命の安全確保に加えて十分な機能 確保が図られている。 B類 大地震動により、建築非構造部材の損傷、移動等が発生する場合で も、人命の安全確保と二次災害の防止が図られている。 建築設備 甲類 大地震動後の人命の安全確保及び二次災害の防止が図られていると 共に、大きな補修をすることなく、必要な設備機能を相当期間継続でき る。 乙類 大地震動後の人命の安全確保及び二次災害の防止が図られている。 ・災害対策本部は、大規模地震発生直後から速やかに機能する必要があるため、免震 構造を基本とする。 イ災害対策本部機能の強化 ○災害対策本部室 ・迅速かつ的確な意思決定ができるように災害対策本部の中枢機能(災害対策本部長 室、災対統括部、災対総務部、災対財政・広報部、区長室、副区長室、防災無線室 など)をできる限り同一フロアに配置することが望ましい。また、停電によるエレ ベーターの停止などに備えて、災害対策本部室は中層階(3階以下)への配置を検 討する。 ・災害対策本部室は、平時は庁議室などとして有効に活用できるよう工夫する。 ・災害対策本部室に近接して、災害時の対応について具体的な作業を行う室の整備が 必要である。平時は会議室の使用を前提に、災害対策本部室との一体的な整備につ いて検討していく。 ○必要な諸室等 地域防災計画との整合性、必要な規模、財政面などを考慮し、災害対策活動に必要 な以下の諸室等を検討していく。なお、専用の室を設けるのではなく、平時には会議 室などとしてフレキシブルに活用することを前提として、平時のみならず、発災時に 諸室がどのように機能するのか想定し、具体的に平面図を描くなどしながら検討する。 ・警察、消防、自衛隊など防災関係機関の活動・待機場所 ・ライフラインの確保や復旧を担う民間事業者の活動・待機場所 ・他自治体支援職員の活動・待機場所 ・報道機関等への情報提供、記者の取材・待機場所 ・職員の仮眠室やシャワー室 ・エフエム世田谷などを活用した情報発信の場所 ・ヘリポート ○広場空間 災害時には、発災直後には避難者の一時集合所等となり、復旧・復興期には緊急・ 復旧車両の駐車並びに物資の荷捌きスペースとなる広場が必要となる。物資の搬出入 を考慮し、物資の集積地である区民会館に隣接する位置に広場を設けるとともに、災 害時には地域内輸送拠点となる国士舘大学の広場等との連続性・一体性、役割分担や 連携についても見据えた計画とする。 ウ行政機能の継続性の確保 ○ライフラインのバックアップ機能 ライフラインが遮断された場合に備えて、ライフラインが復旧されるまでの一定期 間(最低 72時間以上)、業務を継続できるよう、バックアップ機能を整備する。なお、 検討にあたっては、地震のみならず、豪雨や雷、雪など、様々な災害を想定していく。 ・電力の供給途絶時への対応として、72時間以上連続運転可能な非常用発電設備及び 燃料備蓄設備や、自然エネルギー(太陽光発電)、コージェネレーションシステム、 水素燃料電池などにより電源を多重化し、業務の継続能力を高めるよう検討してい く。 ・水道供給の途絶に備え、飲料水やトイレ等に使用可能な貯水槽の設置、井戸の整備 による井戸水の活用などについて、現在ある設備の活用も含め検討していく。また、 汚水についても放流不能の事態を想定して、非常用の汚水槽の整備を検討していく。 ○備蓄スペース 災害発生から数日間は、支援物資等が供給されない事態が想定されるため、必要な 資機材や食料、飲料水、簡易トイレ等を保管する備蓄スペースを確保する。また、保 管する物品の種類や量、搬入経路などについても、検討していく。 ○情報通信機能 ・本庁舎等の整備にあたっては、システム、ネットワークの維持運用の観点から、サ ーバーの仮想化やクラウド化により、必要なスペースは減少傾向にあることも踏ま え、災害時のバックアップ機能を果たすためのサーバー室などを、事務センターと は別に本庁舎内に設ける。 ・災害時の情報収集や情報発信に活用できるシステム等について、他自治体における 先進事例なども参考に、様々な可能性について検討していく。 ○周辺とのネットワーク ・本庁舎等が孤立した要塞にならないように、特定緊急輸送道路などとの関係を踏ま え、周辺とのネットワークや周辺の街づくりも視野に入れた整備を進めていく。 ・地域本部となる総合支所、拠点隊となるまちづくりセンターとの連携を強化し、防 災ネットワークの強靭化を図っていく。 ○工期・工程 本庁舎等が何時も揺るぎない防災拠点(災害対応指令基地)として機能するよう、 工事期間中に大規模災害が発生する可能性も想定し、工程・工期などを検討してい く。 (2)セキュリティ対策 本庁舎には、様々な行政情報や個人情報があり、それらを保護する責務がある。また、 防犯対策の重要度も増してきているため、災害だけでなく、防犯上の安全性を確保して いく必要がある。 アエリアに応じたセキュリティ対策 行政情報・個人情報の保護や防犯上の観点などから、庁舎内のゾーニングを明確化し、 区民及び職員の動線に配慮しながら、それぞれのエリアに応じたセキュリティ対策を検 討する。 《エリア区分イメージ》 @誰でも利用できる 開庁時間は誰もが自由に利用できるエリア(ロビー、待合スペース、エレベーター、 廊下など) A来庁者と職員のみ利用できる 相談や届出等を行う人が利用するエリア(窓口カウンター、打合せスペースなど) B職員のみ利用できる 職員のみが入室可能なエリア(執務スペース、更衣室など) C特定の職員のみ利用できる 限られた職員のみが入室可能なエリア(サーバー室など) イ設備等 ・サーバー室など重要諸室について、ICカードや生体認証システムなどの導入による 入退室管理を検討する。 ・本庁舎における個人情報の漏洩や不正アクセスに対する情報セキュリティについて は、引き続き、総務省が示す自治体情報セキュリティ対策の抜本的強化モデルに準 拠した対策を実施していく。 ・窓口カウンターからパソコンの画面が見えないようにするなど、情報保護に十分配 慮した配置・空間構成とする。 ・個人情報や機密性の高い書類の保管のために、施錠可能な保管庫を確保する。 ・庁舎出入口付近や庁舎内の適切な場所への防犯カメラの設置を検討する。 ・中央監視室や機械警備の設置について検討する。 ・時間外の出入口については、休日・夜間など閉庁時の来庁者に対して、利用しやす い場所に設置するとともに、防犯性を考慮する。 ・地域の防犯性を高めるために、死角のない空間や周辺への明るさの提供に配慮する。 【基本的方針3】すべての人に分かりやすく、利用しやすい、人にやさしい庁舎 (1)窓口サービス 本庁舎の窓口のあり方に大きな影響を与える地域行政の展開に関する検討や総合窓口 の設置、マイナンバー制度の動向を踏まえ、窓口機能の充実を図る。 ア案内機能の充実 ○総合案内等 ・入口近くに総合案内を設けるとともに、見通しが良く、分かりやすい組織配置とす ることで、区民がスムーズに目的の窓口に行くことができるようにする。 ・初めて手続に訪れた区民が、スムーズに手続ができるよう、申請書類等の記載補助 も行うフロアマネージャーを配置する。 ・外国人の方の手続の案内、情報提供、各種相談にも対応できる窓口を設置する。 ○案内表示(サイン)等 ・案内表示は、分かりやすく、組織改正にも対応できるフレキシブルな形式とする。 ・誰もが分かりやすい案内表示となるよう、窓口の動線構成を工夫するとともに、手 続の名称や目的別の表示をすることなどを検討する。 イ窓口機能の整備 ○利便性の向上 ・区民の移動距離を短くし、分かりやすく便利な窓口とするため、窓口機能をできる 限り低層階に集め、利用者ニーズや手続等の関連性が高い窓口はできるだけ同一フ ロアに配置する。 ○業務に応じた窓口カウンター ・各部署の業務内容に応じた、ローカウンター、ハイカウンターを適切に配置する。 ・仕切りのあるカウンターを設けるなど、プライバシーに配慮し、誰もが安心して利 用できる窓口環境となるよう整備する。 ・記載台についても、利用者が申請書類等を記載しやすいよう、形状や高さに配慮す る。 ウ相談機能の充実 ・利用頻度や相談内容に応じて、カウンター併設の相談ブースや共用または専用の個 室形式の相談室を適切に配置する。 ・相談室は、個人情報やプライバシー保護のため、遮音性に配慮する。 エ待合い空間の充実 ・高齢者や障害者の方でも快適に過ごせる待合い空間を整備するとともに、子ども連 れの方も安心して利用できるように、キッズスペースや授乳室などを設置する。 ・電光掲示板や大型モニター等の設置により、利用者に分かりやすく効率的な窓口サ ービスシステムを導入する。 (2)ユニバーサルデザイン アすべての人にやさしい庁舎 ・「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方 を踏まえ、「世田谷区高齢者、障害者等が安全で安心して利用しやすい建築物に関す る条例(通称:バリアフリー建築条例)」、「世田谷区ユニバーサルデザイン推進条例」 に基づき、利用者の立場に立った、きめ細かな配慮によって、高齢者や障害者、外 国人など、すべての人が利用しやすい庁舎を目指していく。 ・具体的なユニバーサルデザインの検討にあたっては、ユニバーサルデザインに取り 組むアドバイザー等の人々の活用も検討していく。 イ利用しやすい移動空間の整備 ・誰もが歩きやすいよう、段差のない動線や車椅子での移動や避難スペースの確保、 手すりなどを設置する。 ・エレベーターは、すべての人にとって使いやすく、安全を考慮し、配置や大きさ、 案内情報などの設備等について配慮する。 ・音声案内等の設置により、障害者へ配慮した移動空間を整備する。 ・各種表示等に、外国語やひらがなを併記するなど、外国人など多様な来庁者を想定 する。 ・駐車場、駐輪場から総合案内カウンターまでの移動距離をできるだけ短くするとと もに、動線も工夫し、区民の利便性向上に配慮する。 ・平常時の出入口と夜間などの時間外出入口の場所が大きく異なることのないよう、 施設計画を工夫する。 ウ利用しやすい設備の整備 ・誰もが利用しやすい環境を整備するため、多機能トイレやオストメイト対応設備を 適正に配置する。その他一般トイレについても、高齢者や障害者、乳幼児の利用に 配慮した計画とする。 ・筆談用ボードの窓口への配備、補聴システムの整備など、障害者に配慮した設備の 導入ついて検討する。 【基本的方針4】機能的・効率的で柔軟性の高い庁舎 (1)執務環境 執務環境の整備にあたっては、職員の働き方の改革に取り組み、機能的・効率的で柔 軟性の高いものとしていく。 ア執務空間の整備 ・部・課の間に間仕切りを設けないオープンフロアを基本とし、各課や職員間のコミ ュニケーションが図りやすい機能的・効率的な空間とする。 ・インターネット、庁内 LAN環境の整備など、情報通信技術(ICT)を積極的に活用し ていくとともに、今後のさらなる技術進展にも対応可能となるよう、必要な設備・ 機器等を設置するスペースについても検討していく。 ・組織改正に伴うレイアウト変更にも柔軟に対応できるよう、床下に一定の配線空間 を設けたフリーアクセスフロアの導入などについて検討する。 ・執務室の机や椅子・配置を統一化し、組織改正や異動の際には人だけが動く、ユニ バーサルレイアウトの導入を検討する。 ・部署間の連携を考慮した配置とし、同一部に属する課をできるだけ同一階に配置し、 相互関連性の強い部署は、できるだけ近接した階・エリアに配置するなど動線を短 くし、効率的に業務が行えるよう配慮する。 イ会議室等の整備 ○会議室 ・職員の会議・打合せスペースとしてだけでなく、区民、区民団体、事業者、NPO などが参画し、協働で政策形成していく場としてのスペースを整備・確保していく。 ・利用頻度や利用状況を考慮し、大・中・小会議室を配置する。 ・会議室は可動間仕切り等を採用するなど、必要に応じて規模を変更できる仕様の採 用も検討する。 ・会議室内には、電源コンセント、ネットワーク配線、スクリーン等を配置し、ICT 機器の利用に配慮した仕様を検討する。 ・会議室の集約配置か、各フロアへの分散配置かについて、検討していく。 ・情報保護の観点から、遮音性に配慮するとともに、利用目的に応じ、プライバシー に配慮した動線の確保などについても検討する。 ○打合せ・作業スペース ・日常的な打合せや作業、OA機器が設置できる共用スペースを、各部署の特性に応じ て、執務室内や各フロアに確保する。 ウ書庫・倉庫の整備 ・文書管理システムを引き続き運用するとともに、文書の徹底した電子化により文書 保管量のスリム化を図ったうえで、必要な文書保管スペースを確保する。保管にあ たっては、本庁舎内に保管すべき文書を精査していく。 ・視認性や開放性に配慮しつつ、ローキャビネットや天井までの壁面収納を使い分け、 効率的な収納スペースとする。 ・集密書架の採用やファイリング方式の共通化などによる省スペース化を図る。 ・各種イベント等の物品や作業道具などを保管できる倉庫を適切に配置する。 ・棚やキャビネットなどは、災害時に倒れてこないよう固定するなど、安全性に配慮 する。 エ職場環境の整備 ・更衣室や休養室などは、職員数を考慮し、男女別に適切に配置する。 ・区民の利用も可能な職員用食堂を設けるとともに、食事などにも利用できる休憩ス ペースの設置も検討する。 ・健康増進法の趣旨を踏まえ、受動喫煙のリスクをなくすよう対策をとる。 (2)議会機能 ア議会機能の充実 ・議会の独立性を確保する観点から、行政機能のエリアと明確に区分けした配置とす る。 ・議会活動の一層の充実を図るため、議場や委員会室等のICT設備の導入等を検討 する。 ・不審者の侵入防止などの観点からセキュリティ対策を図る。 ・議員数の増減に柔軟に対応できるように、議員控室は移動可能な間仕切壁を設置す るなど工夫をする。 イ区民に開かれた議会 ・区民が親しみやすい議会となるよう、外部からわかりやすく、ユニバーサルデザイ ンに配慮しアクセスしやすい配置とする。 ・議場や委員会室の傍聴スペースを十分確保し、傍聴する区民の利便性や安全性に配 慮する。 ・陳情や要望などで来庁する区民や団体との応接スペースを確保する。 ・傍聴者、陳情者や見学者の待合のほか、区議会広報紙などの展示ができるロビーを 確保する。 ・来庁者に対する議会情報の提供を充実するため、議員登庁ランプ(出退表示板)を 設置するとともに、「本日の会議予定」などを表示するデジタルサイネージ等の設置 も検討していく。 ウ必要な諸室及び機能等 ○議場 議会中継に配慮した音響、照明等設備の充実を図る。また、議会の活性化に資する 座席配置とし、十分なスペースを確保するとともに、傍聴席には車椅子席を設ける など、ユニバーサルデザインに配慮する。 ○委員会室 委員会室は、5つの常任委員会が同時開催できるように5室を設置するほか議会運 営委員会室を設ける。また、十分な傍聴スペースを確保するとともに、審査過程等 の公開性を高めるためのレイアウトの工夫や設備の充実を図る。 ○会議室 予算・決算特別委員会の中継に配慮した会議室を設置するほか、理事会・幹事長会 室を設ける。 ○正副議長室 応接スペースを備えた正副議長室を設置する。 ○議員控室 レイアウト変更に備え可動式間仕切り等で区分できる構造にするとともに、遮音性 を考慮する。 ○議会図書室 議員の調査研究に資するため、議会図書室を設置する。 ○理事者控室 会議に出席する理事者のための控室を設置する。 ○応接室 区民からの陳情や面会時のほか、他議会からの視察対応時などにも利用可能な応接 室を設置する。 ○区民ロビー 傍聴者、陳情者や見学者の待合スペースのほか、区議会広報紙などの設置スペース を確保する。 ○議会事務局 議事堂の効率的な管理及び、セキュリティ確保の観点から、議会事務局を議事堂の 入口部分に配置する。 【基本的方針5】環境と調和し環境負荷の少ない持続可能な庁舎 (1)環境性能 ア高い環境性能を備えた庁舎 ・「自然の力と人の暮らしが豊かな未来をつくる〜環境共生都市せたがや〜」の実現に 向け、本庁舎等はその先導的役割を果たすため、2050年CO 2排出量の 80%削減、21 世紀末における脱炭素の達成に向け、省エネルギー化を図るとともに、自然の恵み の積極的利用とエネルギーの有効活用を図る。 ・近隣との調和に配慮しつつ、良好な地域環境の創出に向け、施設緑化等の環境への 配慮を積極的に講じていく。また、環境配慮の取り組みを区民が学習する機能を設 けることも併せて検討する。 ・環境に配慮した資材を活用するとともに、建設による環境負荷の低減にも配慮し、 総合的に環境品質の高い庁舎とするため、国土交通省が定めた「官庁施設の環境保 全性基準」を踏まえた整備を行うとともに、建築環境総合性能評価システム(CASBEE) に基づくSランクの達成を視野に入れた設計を行う。 イ CO2削減及び省エネルギーの推進 ・CO 2の削減を図るため、照明・空調等によるエネルギー負荷の抑制と建築物の断熱 や熱負荷軽減等を図る方策を活用する。 ・現状のエネルギー消費量の大幅な削減、使用するエネルギーの脱炭素化を目指すこ ととし、エネルギー使用と維持管理の最適化を図るため、エネルギーの使用状況と 設備の運転効率に係るマネジメントシステムの導入を検討していく。 ・ポンプの搬送エネルギーの削減や災害時の強靭性強化に貢献するよう、庁舎内の衛 生設備などは積極的に節水型のものを導入するほか、中水などの活用も検討する。 ・本庁舎等整備にあわせ、ワークスタイルの改革に取り組み、紙文書の削減等に積極 的に取り組む。 ウ自然の恵みとエネルギーの有効活用 ・太陽光、地中熱、自然通風などの自然エネルギーや、雨水、地下水などの自然の恵 みを極力活用する。建物がセットバックされる場合は、テラス部分に中高木を含む 植栽を導入することによって、景観への寄与はもとより、建物の断熱性を高め、ま た外被の蓄熱性を低めて積極的に冷房負荷を減じるよう努める。 ・コージェネレーションシステム、水素燃料電池などの環境性能が高い分散型エネル ギーについて、災害時における高い有用性も踏まえ、平時の活用も念頭に置き、導 入に向け積極的に検討する。 エ施設緑化等環境への配慮 ・区役所一帯はみどりの拠点となっていることから、若林公園や烏山川緑道などとの みどりのネットワークを形成するよう、建物の壁面・屋上などの施設緑化と広場・ 緑地の植栽を一体的に計画・整備する。また、生物多様性に配慮した在来種による 緑化や、多層的なみどりの空間や配置を検討する。 ・都市部におけるヒートアイランド現象の抑制に配慮した舗装材の活用など、環境に 配慮した庁舎となるよう検討していく。 ・再生材など安全で環境負荷低減に配慮した資材を使用するとともに、建設副産物の 抑制とリサイクルを進め、建設に伴う環境負荷の低減を図る。 ・既存建物の解体に伴うCO2発生に対しては、みどりの環境の回復・保全に努める。 ・「世田谷区風景づくり条例」に基づく地域風景資産として、「世田谷区庁舎のケヤキ 並木が作る広場の風景」が選定されていることにも配慮していく必要がある。その ため、現在のケヤキ並木については、既存樹木をできるだけ保全活用していく(樹 木医による調査を踏まえる)。 オ周辺環境との調和、配慮 ・本庁舎敷地周辺は住宅地であり、整備にあたっては、周辺環境との調和のみならず、 周辺環境に寄与できるよう配慮する。また、整備後の建物規模が現状よりも大きく なることから、建物の高さや日影の影響、圧迫感、さらには施設に起因する風害、 光害、騒音・振動、電波障害等、周辺環境に十分配慮する。また、長期にわたる工 事となるため、工事は安全を最優先として、騒音、振動、粉じん等に最大限配慮し た計画や工法などを採用する。 (2)持続可能性 アライフサイクルコストの低減 ・庁舎の設計、施工、維持管理・運営、改修など、イニシャルコスト、ランニングコ スト、そして危機対応コストも含めた、総費用(ライフサイクルコスト)の低減に 向けて取り組む。 ・維持管理に優れた構造・材料の採用など、維持管理のしやすさ、維持管理費用の抑 制にも配慮し、長期的に期待される性能を発揮できる経済性に優れた庁舎とする。 イ将来の変化への柔軟な対応 ・将来の行政ニーズや行政組織の変更に対応し、可能な限り長期間にわたり使用でき る庁舎となるよう、スケルトン・インフィル(躯体と内部を分離し、内部の変更に 柔軟に対応できる方法)の考え方などを参考にした設計や工法などの採用を検討す る。 第5章.世田谷区民会館の整備方針 1.基本的な考え方 区民自治を進めるためには、大規模集会機能は欠かすことができない。区民会館は各総 合支所管内に1箇所ずつ設置され、区民の文化、コミュニティの場として幅広く利用され ている。また、地域防災計画において災害時における食料及び生活必需品等の集積地に指 定されている。なかでも、世田谷区民会館は、世田谷地域の集会施設であるとともに、世 田谷区の全区的集会機能も併せ持っている。 これまでの世田谷区民会館の利用状況を踏まえ、区民自治と協働・交流の拠点となるよ う、講演会や式典等のほか、音楽や演劇等のイベントなど、多様な区民活動に対応できる とともに、大規模災害が発生した際には物資の集積場所等としても対応可能な多目的ホー ルとして整備する。 2.施設計画 (1)ホール機能 @舞台 ・プロセニアム形式の舞台とし、音楽利用に配慮した可動式の音響反射板の設置を検討 する。 ・各種吊物機構や照明など、適正な設備の設置について検討する。 ・舞台に隣接した楽器庫や舞台備品倉庫などの整備を検討するとともに、大型車両によ る搬出入に対応し、荷捌きが可能な搬入口を検討する。 A客席 ・現在の世田谷区民会館の利用状況を踏まえ、800席から 1,000席程度を想定し、舞台 までの距離や見やすさに配慮した配置、積層計画を検討するとともに、各種舞台調整 室や親子室などの設置を検討する。 ・客席椅子の形状や材質、横幅や列の前後の間隔に配慮し、客席の快適性を確保する。 ・固定席を基本としつつ、災害時にも活用できるよう、一部可動する機能についても検 討する。 B楽屋 ・適切な設備を備えた楽屋を整備するとともに、隣接して給湯室やトイレ、シャワーな どを整備する。 (2)多目的機能 @集会室 ・会議や研修、講演会等の利用に対応した集会室を整備する。利用者ニーズに応じて、 部屋の広さを変更できるよう、可動間仕切りの設置も検討する。 A練習室 ・公演の練習やリハーサルを行えるよう、音楽、ダンス、演劇などそれぞれの目的にあ った機能を備えるとともに、楽屋、展示、懇親会会場など、様々な用途に活用できる 練習室を整備する。 (3)交流機能 @ホワイエ ・開演前や幕間などに交流・休憩するための空間を計画し、多機能トイレを含め、男女 それぞれ適切な数のトイレを計画する。 Aレストラン・カフェ ・文化活動の情報交換の場として、区民が気軽に訪れ、ホールを利用しない区民も立ち 寄り、交流することができる場として、レストランやカフェなどの設置を検討する。 また、設置する場合には、配置や席から見える風景など、収益性を高めるための工夫 をする。 (4)その他施設計画における留意点 ・ユニバーサルデザインの考え方に基づき、運営者も観客もすべての人が利用しやすい 施設とする。 ・施設の位置づけや機能などの検討を踏まえて、適切な管理運営方法(直営、業務委託、 指定管理)を選択していく。 ・工事期間中、区民会館を使用することができない期間が生じることから、今後、休館 期間の短縮等について検討するとともに、休館期間中の代替手法についても検討して いく。 ・区民会館の整備費は、庁舎などの事務所建設よりも、コスト高になるのが一般的であ るため、維持管理の容易性や費用対効果を十分に検証しながら、できる限り事業費の 抑制に努める。 第6章.本庁舎等の規模 1.基本的考え方 世田谷区は、福祉やまちづくりなど、他都市に先駆けて様々な先進的な取り組みを進め てきた。特に、大都市でありながら、地域内分権を推し進めている世田谷区独自の地域行 政制度は、区民に身近な地区・地域において、区民主体のまちづくりを展開しており、今 後とも、なお一層、事務事業については、地区・地域が担うことを基本に、地域行政の理 念の実現を目指していく。 一方、本庁舎等には、住民票や戸籍等の交付、子育てや介護関係の相談や都市整備関係 の相談や手続きなどに多くの区民や事業者が訪れるが、現時点では、待合スペースや各業 務を処理するバックヤードスペースの不足から、混雑や長い待ち時間など、区民サービス の提供に支障をきたしている。 さらに、世田谷区は、区民福祉の一層の向上を目指し、児童相談所の移管をはじめとし て、区の自治権の拡充に取り組んでいく。今後、前例のない高齢者の増加に伴う地域生活 支援、認知症対策、切れ目のない子育て支援を進める等、新たな政策課題に積極的に取り 組んでいかなければならない。このためには、これまでの行政手法をこえ、区民、事業者、 NPO、大学等との多様な協働の仕組みを導入していくことが求められており、これらに 対応するためのスペースの確保が急務になっている。 また、阪神淡路大震災、東日本大震災、さらに、今般の熊本地震を経験した今、区民生 活に責任を持つ地方自治体として、災害時に揺るぎのない拠点としての庁舎のあり方につ いても万全の配慮が必要である。 こうしたことから、世田谷区は、引き続き、地区・地域の機能を充実させるとともに、 本庁機能についても、災害時対応を含め、将来に向け様々な責務に確実に対応できる体制 を確保していかなければならない。 これらのことを基本に、本庁舎等の規模を想定する。 2.基本条件 (1)人口 本庁舎等の規模を考えるうえで、区の将来人口は重要な条件になるが、平成28年3 月に策定した世田谷区総合戦略の人口ビジョンでは、推計した3つのパターンのうち、 2つのパターンで平成62年に世田谷区の人口が100万人を超えるとする一方、若年 層の転入超過が維持できない場合には77万人に減少するとしている。いずれのパター ンでも生産年齢人口の急減と高齢人口の急増が見込まれるところだが、庁舎の規模を構 想するにあたっては、現在の人口規模89万人を前提とすることとする。 (2)本庁舎へ集約する施設 現在、本庁舎敷地外にある本庁舎関連施設について、原則、本庁舎へ集約することと する。 @本庁舎への集約 現在、本庁舎敷地外にある以下の本庁舎関連施設について、本庁舎へ集約する。 施設名住所 所有 形態 ※延床面積(現在) ノバビル世田谷 4-22-11借上900u 城山分庁舎世田谷 4-24-1区1,248u 美松堂若林 4-31-7借上区使用部分 171u プレハブ会議室世田谷 4-19-10区162u 東京日産太子堂ビル太子堂 3-25-9借上373u A本庁舎への一部機能の集約 現在、本庁舎敷地外にある以下の本庁舎関連施設の一部機能(延床面積の一部のみ) について、本庁舎へ集約する。 施設名住所 所有 形態 ※延床面積(現在) 三軒茶屋分庁舎 (御幸ビル) 太子堂 2-16-7借上区使用部分 4,592u (※ 1) 厚生会館豪徳寺 2-28-3区2,205u (※ 2) 事務センター弦巻 2-23-1区2,588u (※ 3) ※1このうち、産業政策部は本庁舎に集約することを想定するが、産業振興公社やそ の他機能については、引き続き検討を要する。 ※2このうち、政策研究・調査課のみ本庁舎に集約し、研修担当課は引き続き研修会 場と同じ建物に配置する。 ※3このうち、災害時のバックアップ機能を果たすための最低限のスペースのみ本庁 舎内に確保する ※延床面積はあくまで現在の各施設の面積であり、本庁舎で整備する必要面積ではない。 なお、MKアースビル及び船橋公文書庫については、業務や施設の特殊性を踏まえ、 現時点では、本庁舎への集約は想定しない。 (3)世田谷総合支所について 世田谷総合支所については、区民の利便性向上の観点から、交通至便な三軒茶屋を候 補地として、移転整備に向けて、適地を有する事業者と協議を重ねてきたが、その実現 には、コストや人員面で課題が大きいことから、三軒茶屋においては、世田谷総合支所 における窓口機能の充実や帰宅困難者支援機能、さらに、産業振興、雇用施策機能等を 合わせて整備することとし、世田谷総合支所は、現在の本庁敷地内に整備することとす る。なお、整備にあたっては、配置計画などにおいて、世田谷総合支所の独立性や支所 としての一体性に十分配慮する。 (4)職員数(資料編参照) 本庁舎等の規模を考える上で、ひとつの基準となる職員数については、1.基本的考 え方で述べたとおり、地域行政を一層展開する観点(減要素)と、新たな政策展開、自 治権拡充の観点(増要素)を総合的に考慮し、平成28年度当初の本庁舎及び関連施設 に配置されている職員数2,831名を基本とする。 なお、職員数について、中間まとめにおいては、非常勤職員を含まずに最低で約 45,000uとして算定していたが、本検討においては、本庁舎及び関連施設に配置されている常 勤職員に加え、本庁舎及び関連施設内に執務スペースを必要とする非常勤職員(産休や 育休対応の非常勤職員を除く)を含めることとする。 (5)議員数 議員数については、区条例により規定している定数50名を基本とする。 3.本庁舎等の規模(延床面積) 本庁舎等の規模について、以下のとおり想定する。 【本庁舎と区民会館の規模】 行政機能、議会機能、区民機能の3つに分類し、それぞれの機能について、以下のと おり施設規模を想定することとする。 行政機能約47,300u 災害対策機能(専用で想定している部分のみ)約950u 議会機能約3,400u 区民交流機能(専用で想定している部分のみ)約1,350u 区民会館(ホール)機能約3,100u 合計約56,100u 【駐車場・駐輪場等の規模】 駐車場・駐輪場等(地下部分のみ)約12,500u 【広場の規模】 広場機能最低約2,000〜2,400u ※屋外の駐輪場については含んでいない。 ※あくまで全体規模を算定したものであり、実際の床面積が、この表に記載されている とおりの面積となるわけではない。今後、具体的な内訳について設計段階で精査し、 さらに縮減の可能性についても引き続き検討していく。 ※ホールなどの天井高の高くなるものについては、吹き抜け部分の想定も別途必要であ る。 ※現状の面積との比較については、資料編参照。 《参考》他区との比較 非常勤職員を含めた職員一人あたり面積を他区の事例と比較した(詳細は資料編参照) なお、他区と条件を同一にするため、区民会館(ホール)機能を除く約53,000uをもとに、職員一人あたり約18.7uとして比較している。 (23区平均は職員一人あたり約23.5u(26年度調)) (1)行政機能について @行政機能 2.基本条件(4)の職員数をもとに、総務省の旧地方債事業費算定基準(以下「地 方債基準」という。)を参考に行政機能の規模を算定すると、約58,400uとなる が、世田谷区の実態を踏まえ、基準を補正して算定することにより、約47,300uを規模とする(詳細は資料編のとおり)。今後も地域行政の推進、職員の働き方の改 革に取り組み、自治権の拡充等新たな行政需要にも対応できるよう、想定する規模の なかで窓口・執務空間を確保していくこととする。 なお、この面積の中には、災害時に災害対策機能に転用できる会議室や、区民との 協働のための会議室や打合せスペース、展示スペースなどとして活用可能なロビー・ エントランスなどを含むものとする。 A災害対策機能(専用で想定している部分のみ)<約950u> 災害時に揺るぎのない司令塔とするべく、@の行政機能に含まれていない面積とし て、以下の災害対策機能について、個別に算定する。なお、災害対策本部室や作業室、 その他諸室などについては、平時は会議室などとして活用することを前提とするため、 @の行政機能に含まれているものとし、個別に算定はしない。 ・バックアップシステムサーバー室:200u ・無線室:70u ・警戒待機室:20u ・FMスタジオ:20u ・防災備蓄倉庫:300u ・非常用電源、給排水設備等:100u ⇒計 700uに共用部 35%を加え、約 950uを想定する。 (2)議会機能について 議会機能については、現状約2,650uであり、地方債基準を参考に、政令市規模 の基準である議員一人あたり50u及び共用部を加えた面積として約3,400u(議 会事務局を除く)を想定する。必要な諸室及び機能等の面積の算定や災害時の活用につ いては、今後、区議会地方分権・本庁舎整備対策等特別委員会等の議論を踏まえ、具体 的に決定していく。 (3)区民機能について @区民交流機能(専用で想定している部分のみ)<約1,350u> (1)@の行政機能に含まれていない面積として、区民や行政による講演会や講座、 シンポジウムなどが開催できるスペースや区民が容易に区政に関する情報が得られる 場について、個別に算定する。なお、協働のためのワークスペース、展示スペースな どは、会議室や共用部分の活用を想定し、(1)@の行政機能に含まれているものとし、 個別に算定はしない。 ・多目的室(集会室):300u ・情報コーナー:200u ・レストラン、カフェ:400u ・金融機関ATM,売店:100u ⇒計 1,000uに共用部 35%を加え、1,350uを想定する。 A区民会館(ホール)機能 前述のとおり、800席から1,000席規模の多目的ホールを想定し、現在不足 しているバックヤード機能やトイレ、バリアフリー機能の充実を図り、全体で、現在 と同程度の規模の約3,100u程度(共用部含む)とする。 現在の利用状況は資料編のとおり。 (4)駐車場・駐輪場等について @駐車場 来庁者用80台、公用車用170台程度の駐車場を整備する。(現状、来庁者用53台、公用車用174台) なお、公用車の台数については、管理方法含めさらに縮減の方向で検討を進める。 想定面積(地下):250台×42u=10,500u A駐輪場 来庁者用300台、職員用650台、公用50台程度の駐輪場を整備する。(現状、 来庁者用約230台、職員用は通勤使用者約650名、公用の貸出用50台) 想定面積(地上屋外):300台×1.2u=360u 想定面積(地下):700台×2u=1,400u ※地上屋外の駐輪場360uについては、延床面積には算入しない。 Bバイク(原付含む)駐車場 来庁者用、職員用、公用で合計150台程度のバイク駐車場を整備する。(現状、来 庁者用の専用スペースは設定されていない、職員用は通勤使用者約100名、公用の 貸出用11台) 想定面積(地下):150台×4u=600u (5)広場機能について 通常時は区民の憩いの場として、また、イベント等では区民交流の場の他に区民会館 の利用者用の臨時の駐輪場や駐車スペース(健診車や大型バス等)として利用し、発災 時には、避難者の一時集合所等(区役所を一時集合所としている町会の区域には、5箇 所の一時集合所があり、一時的に避難する住民と他の区域から避難される住民を合わせ 2,000名ほどを想定。)、また、復旧・復興時には、物資運搬、緊急・復旧車両の駐車並 びに物資の荷捌き場となる広場を整備する。 発災時の避難者の一時滞留:2,000人×1u=2,000u 復旧・復興時の緊急・復旧車両概ね 56台の駐車並びに荷捌き場:2,400u 上記の利用を想定し、最低 2,000〜2,400uを確保する。 (参考:現状の中庭の広さは約 1,600u) 第7章.本庁舎等の配置と構成 1.本庁舎の場所 本庁舎の場所は、これまでの歴史的経緯や他の公有地等の関係から、前述のとおり整備 方針において、現在地とすることとした。 区の中心部に立地しており、最寄駅である松陰神社前駅からは徒歩5分で、路線バスも 整備されており、アクセスも良好である。北側には広域避難場所となる国士舘大学、周辺 には緑豊かな若林公園や松陰神社が配置されており、また、世田谷税務署、都税事務所、 世田谷図書館などの公共施設も集積されている。 なお、区役所西側の補助154号線も開通し、周辺の道路環境も改善され、さらに、東 京都が進める「木密地域不燃化10年プロジェクト」として、補助52号線の整備に取り 組んでいる。 2.敷地条件 (1)敷地の概要 @敷地面積:21,707u(東側敷地:11,342u、西側敷地:10,365u) A用途地域等:第二種住居地域準防火地域第三種高度地区(45m) B建ぺい率・容積率:建ぺい率60%・容積率300% C日影規制:5時間・3時間/H=4m D接道条件:東側(世区街5):11m(※注) 北側(主 113):10m(西側区間)、11m(東側区間) 西側(補助 154号線):15m 南側:東敷地南側約 4.5m、西敷地南側 8m 敷地中央区道:8m(北側区間)、10m(南側区間) Eその他・地形等:・東側敷地は概ね平坦であるが、西側敷地の西から 南西方向に向けては4m程度下がる形で高低差を有している。 ・敷地が中央の区道により分断されている。 ※注:都市計画道路世区街5号の道路線形が、第1庁舎の東側のバルコニー(鉄筋コンクリート) と重なって設定されている。新庁舎建設時には、その部分までセットバックが必要となる。 (2)都市計画の上位方針・計画 @世田谷区都市整備方針 現庁舎の敷地は、世田谷区の都市整備・街づくりに関する総合基本方針である都 市整備方針(都市計画マスタープラン)の土地利用方針の中で、「災害対策拠点」に位 置づけ、庁舎等の災害対策機能の強化や防災および災害対策を踏まえた街づくりを 進めることとし、「地域生活拠点」および「みどりの拠点」としても位置づけられて いる。 A世田谷区役所周辺地区防災街区整備地区計画 区役所本庁敷地周辺には世田谷区役所周辺地区防災街区整備地区計画が定められ ている(世田谷区都市計画決定)。地区計画の目標としては、「東京都の防災都市づ くり推進計画<基本計画>で重点整備地域とされた本地区において、「逃げないですむ 防災街づくり」を目指す。広域避難場所地区の文教的土地利用を積極的に誘導し、 十分な安全性を確保する。また、避難場所周辺市街地の不燃化と避難路の整備を進 め、道路及び建築物により、災害に強い市街地を形成していく。」ことが定められて いる。 区役所敷地は、この地区計画において、広域避難場所外周C地区に指定されてお り、土地利用に関する基本方針として、「広域避難場所への輻射熱を低減させ、かつ 災害に強い市街地形成と良好な住宅地の保全、及び地区内避難路を確保する。また、 用途地域の特性に応じた土地利用を誘導する。」ことが定められている。 また、災害時には避難路や延焼を防ぐ道路として、日常では安心して往来できる 道路として、敷地中央の区道が地区防災施設 6号、南側の道路が同 7号に指定され ている。 (3)その他関連法令等 @関係法令:本庁舎整備に関係する法規・条例等の主なものを以下に示す。 .都市計画法 .建築基準法 .消防法 .駐車場法 .高齢者、障害者等の移動等の円滑化に関する法 律(バリアフリー法) .エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネル ギー法) .景観法 .都市緑地法ほか .東京都建築安全条例 .東京都駐車場条例 .東京都環境基本条例 .都民の健康と安全を確保する環境に関する条例 .東京都景観条例 .世田谷区環境基本条例 .世田谷区都市計画法に基づく開発許可の基準に関する条例 .世田谷区ユニバーサルデザイン推進条例 .世田谷区高齢者、障害者等が安全で安心して利用しやすい建築物に関する条例 .世田谷区中高層建築物等の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例 .世田谷区みどりの基本条例 .世田谷区風景づくり条例ほか A既存不適格について 現在の区役所本庁舎施設建築物においては、第 1庁舎が国士舘大学敷地に対する 日影規制に抵触しており、区民会館(ホール棟)が中央の区道を挟んで本庁舎西側 敷地に対する日影規制に抵触している。これらの建物は日影規制が施行される前の 建設であることから、「違法建築」ではないが「既存不適格」の状態とされ、建替え や増改築等を行う場合には、原則として不適格状態の解消が求められる。 3.配置と構成に関する基本的な考え方 第6章で示した、行政機能、議会機能、区民機能、広場機能について、それぞれの相互 の関連性について、以下のとおり整理した。 《区役所本庁舎等の機能相互関連イメージ図》 (1)建物計画について ・建物は、行政機能、災害対策機能、区民機能、議会機能の各機能が十分にその役割 を発揮できるものとするとともに、広場機能を含め、それぞれの機能の関係性を考 慮した合理的な配置を基本とする。また、トータルコストの最適化などに配慮し、 現本庁舎敷地を最大限効果的に活用する配置、構成とする。 ・計画する建物の高さは、周辺の建物の高さも踏まえ、周辺環境との調和に配慮した ものとする。なお、圧迫感などに配慮した配置にするとともに、中高層部のセット バックによる圧迫感の抑制などの工夫を施す。 なお、この地区の絶対高さ制限(高度地区の制限)は45mで、さらに、日影規制 や斜線規制(高度・隣地・道路)による制限も受けることにより、概ね東側敷地の 南側で11階(約45m)、北側で4階(約17m)、西側敷地の南側で5階(約21m)、 北側で4階までが限度となる。 主な周辺の建物の高さは、国士舘大学図書館棟(西側)約 30.8m、国士舘大学体育 館棟(東側)約 33.0m、世田谷合同庁舎約 29.3mとなっている。 ・東側敷地は概ね平坦であるが、西側敷地の西側約三分の一は建物1階分(約4m)低 い敷地であり、この高低差を活用することができる。 ・地下部分は駐車場等のほか、庁舎機能の一部(機械室、倉庫、会議室、更衣室等) の配置も見込む。なお、執務室を地下に設置する場合は、外気に面するなど室内環 境に配慮する。また、地下の規模、階数は建設コスト抑制や工期短縮を考慮する。 (2)広場・緑地について ○広場について 以下の機能・規模を備えた広場を配置する。 ・通常時は区民の憩いの場として、また、イベント等では区民交流の場の他に区民会 館の利用者用の臨時の駐輪場や駐車スペース(大型バス等)として利用する。 ・災害時には、発災直後は、避難者の一時集合所等となり、復旧・復興時には、物資 運搬、緊急・復旧車両の駐車並びに物資の荷捌き場となる。 ・規模は、前述のとおり最低 2,000〜2,400uを確保し、このうち、区民会館に隣接す る位置に災害時の物資の搬入出を配慮した 1,600u程度のまとまった利用のできる 空間を確保する。 ・災害時の地域内輸送拠点となる国士舘大学の広場等との連続性・一体性、役割分担 や連携を見据える。 ○緑地について ・『世田谷区みどりの基本条例等』に定められた緑化率28%(約 6,000u)以上を確 保する。出来る限り地上部緑化に努めつつ、屋上緑化や壁面緑化などについても適 宜配置し、「世田谷みどり33」の趣旨を踏まえた緑化を行う。 《参考:現状の緑化率は東側 24.1%、西側 10.9%、両敷地で 18.2%》 ・既存のケヤキのある風景は、既存樹木を保全活用しできるだけ継承する。(既存ケヤ キの樹木医の調査を踏まえる。) ・みどりの配置については、周囲の住環境を考慮し、敷地内に広場と緑地を合わせて バランスよく配置する。また、区役所周辺一帯につながる、烏山川緑道を中心とし た豪徳寺、世田谷城阯公園から国士舘大学・若林公園の“みどりのネットワーク” にも配慮したみどりの拠点とする。 (3)その他の敷地利用等について ○道路について ・東側道路は、都市計画道路の計画線で整備する。その他周辺道路は現状を維持する。 なお、敷地中央の区道は廃道が困難である場合には、歩行者自転車専用にする等に より東側敷地と西側敷地を一体的に利用できるものとする。 ○交通アクセスについて ・本庁舎周辺の交通量調査結果から、本庁舎等整備後の開発交通量による交通環境へ の影響はないと考えられるが、路線バスやタクシーへの対応や、歩行者、自転車を 含めた総合的な交通環境により検討する。 ・路線バスについては、現在の本庁舎敷地の南東角に3路線の起終点となる折返し所 において、誘導員による後進(バック)入庫の形であるため、歩行者との錯綜等が 課題となっており、本庁舎等整備にあたっては、現在の路線と同数である降車場1、 乗車場3の計4台分のバスベイを東側道路に沿って配置することとする。 ・タクシーについても、現在と同数の3台分のタクシー乗り場をバスベイと隣接して 配置する。 ・自転車アクセスの状況から駐輪場台数の検証や、各種車両交通と歩行者交通の関係、 駅やバス・タクシーからの動線、それらを踏まえたメインアプローチ(正面玄関) の位置等について総合的に検討し、整備計画に反映していく。 ・将来を見据えて、新しい交通手段(電気自動車、燃料電池自動車、カーシェアリン グ等)の開発も視野に入れながら、検討を進めていく。 ○駐車場等について ・駐車場は、原則、地下階に配置し自走式平置型駐車場を基本とする。 ・駐車場の出入口は、庁舎等を利用する車両の動線を精査し、安全を最優先として、 近隣地に配慮した計画とする。 ・来庁者用駐車場については、庁舎へのアプローチが分かりやすく、なるべく短くな るように配置や利用者動線に配慮する。 ・駐車場、駐輪場及びバイク置き場は、公用車用、来庁者用及び職員用それぞれの用 途に対応した適切な位置に専用に配置する。なお、来庁者用の駐輪場は、地上部に 配置する。 ・健診車、観光バス、運搬車両などの特殊な駐車スペースは、その目的に応じた場所 とスペースを確保するが、常時使用ではないことに配慮した計画とする。 ○その他 ・補助154号線の整備により、区民の動線も新たな視点から検討することが可能に なっている。現在の西側敷地と補助154号線のアクセスについては、敷地の拡張 も視野に入れながら検討していく。 (4)建設手順について ○工期について 近隣住民への影響、施設利用者への影響、職員への影響を最小限に抑えるためにも、 工期は短縮していく必要がある。可能な限り2期工事(5年程度)で終わるよう、民 間の技術も活用しながら、工期短縮に向けて様々な手法を検討していく。 ○仮設庁舎について 外部にまとまった仮設庁舎を確保できれば、効率的な工事が可能になり、工期短縮 なども見込むことができるが、現時点では、適地を見出せていないため、外部に仮設 庁舎の確保が不要な案を選択する必要がある。しかしながら、工期短縮は大きな課題 であるため、今後、引き続き仮設庁舎の確保の可能性について検討していく。 ○災害対策本部室について 庁舎機能は安全・安心を最優先とし、工事期間中も継続させることを原則とする。 特に災害対策本部室等の災害関連機能については、工事期間中も現敷地内に継続させ なければならない。(工事第一段階は現状西側敷地の第三庁舎とし、第一段階の建設 建物が利用可能となればそちらに移転とする。) ○世田谷区民会館について 工事期間中、区民会館を使用することができない期間が生じることから、今後、休 館期間の短縮及び、休館期間中の代替手法についても検討していく。 (5)現庁舎等の空間特質について 50年以上区民に親しまれてきた本庁舎、区民会館、広場等の空間特質をできるだけ 継承する計画とする。さらに、本庁舎等の課題を踏まえ、求められる機能、規模の確保 と最も合理的な事業計画(コスト削減、工期短縮等)が可能であれば、現庁舎等の活用 も考慮する。 例えば、来庁者に圧迫感を与えない建物の形状や、建物に表情を与える屋外テラス、 また、利用者の動線に配慮したピロティや区民の憩いと交流の場となっている広場、さ らにケヤキ並木と建物が創り出す風景などの特徴が空間特質として挙げられる。 2.具体的な配置について 資料編で示した配置イメージについては、本庁舎等整備基本構想検討委員会において、 必要床面積を含む諸条件の実現可能性を検証するために示した参考資料であり、具体的 な計画案や設計案ではない。 具体的な配置や構成については、基本構想において示された条件に基づき、設計者か らの提案を受けて、最終的に決定することとする。 第8章.事業計画 1.事業方式と設計者・施工者選定方式について (1)事業手法を検討するにあたっての本事業の特徴 ・本事業は、本庁舎等の機能を工事期間中も継続させ、限られた敷地の条件下で、工事 を数工区に分割し、長期にわたり安全を確保しつつ、円滑に工事を進めなければならな い。このような観点から、本事業では、設計段階から実践的な施工計画や工程計画を踏 まえた技術力や経験が求められる。 ・設計者は、現庁舎や広場の持つ特徴的な空間や周辺とのみどりや風景などとの関連性を 十分に理解し、区が要求する庁舎機能等を適切に設計に反映するとともに、それを実現 するための技術力と総合的な調整能力が求められる。 ・施工者は、施工が長期にわたり、かつ、玉突き工事となる難易度の高い施工の中、来庁 者、職員及び周辺住民の安全を確保し、騒音、振動、交通制限などの影響を確実に低減 させるとともに、環境配慮、経済性、効率性、工期短縮等を実現する高度な技術力が求 められる。 (2)事業方式及び設計者・施工者選定方式について 施設の整備を進めるためには設計、施工そして施設の運営といった事業の経緯を踏む ことになる。この場合、設計、工事、運営をどのように業者に委託し、連携した事業に していくかということが事業方式になる。事業方式、また、設計者・施工者の選定方式 については、いくつかの方式があり、業務の透明性、公開性を確保しながら、本事業に とって最も適切な事業方式、設計者・施工者選定方式を採用しなければならない。(詳細 は資料編のとおり) (3)本事業にあたっての基本的な考え方 世田谷区が発注する公共事業では、事業方式として、設計と施工を分離発注する方式 を採用してきた。これにより、設計者が作成した設計図書に基づき価格競争入札で施工 者選定を行い、設計の妥当性の検証・品質確保・コスト管理を図ってきた。 一方、近年では、設計段階で施工者の持つ技術的ノウハウを取り入れる事業方式とし て、「デザインビルド(DB)方式」や「ECI方式」が注目されている。この方式は、施工者 の実践的な新技術などを活用することにより、コスト縮減や工期短縮などが図れるなど のメリットがある一方、設計と施工が同時進行するため、各段階でのチェック機能が働 きにくく、また、設計段階での発注者要望や区民意見の反映等など柔軟な対応がしにく いなどの課題がある。 また、公共事業に民間事業者を活用する一手法の「PFI事業方式」は、PFI法等に基づ き、設計から施設運営までを民間事業者が主体となり進める方式であるが、民間の資金、 経営能力及び技術的能力を活用することにより、区としてメリットを得られる可能性が ある一方、民間事業者にとって事業採算性があることが前提となり、また、所定の手続 きやステップを踏む必要があることから、事業期間を要するなど、スケジュール上の課 題がある。 また、「官民共同事業(PPP)方式」を採用した渋谷区や豊島区の庁舎整備の事業敷地は、 高度利用が図れる商業系の地域であり、余剰容積(床面積)を期待できたことに対し、住 宅地域内の世田谷区役所の立地条件では、同様の事業採算性を期待することは難しく、 「官民共同事業(PPP)方式」を採用する可能性は低いといわざるをえない。 さらに「PFI事業方式」等は、事業実施段階でほぼ全てを民間に委ねることとなるた め、事業プロセスの公開性、区や区民の意見を反映する柔軟性に欠けるといった課題も ある。 以上により、本事業での事業者の選定にあたっては、設計段階から実践的な施工計画 を踏まえた高度な技術力を求めるとともに、透明性や公開性を確保すること、区や区民 の意見等を十分に反映させることを条件として、従来から採用している「設計・施工分 離発注方式」によることを基本とする。 また、設計者の発注にあたっては、区が示す設計業務遂行上の条件や課題を理解し、 設計に反映することのできる能力を有する設計者を選定する方式として、「プロポーザル 方式」を採用する。さらに、施工者選定方式については、施工能力を確保することを前 提に、今後、適切な選定方式の採用に向け、さらに検討していく。 なお、本事業のプロポーザルでは、発注者側の意図に柔軟に対応することが可能で、 区民の意見等を十分に反映させるための区民協働の考えを取り入れた対応の提案を重視 するとともに、施工面の難易度が高いことも考慮して、施工計画や工程計画等の対応能 力・方策も重点評価項目とし、透明性、公開性に配慮したプロポーザルの企画検討を行 うこととする。 2.財政計画 (1)概算事業費 本庁舎等の配置や構成、規模、事業手法により、事業費は大きく変動することになる。 本検討段階では、第6章で示した本庁舎の規模 53,000u、区民会館 3,100u、駐車場 12,500uをもとに、本庁舎等の概算事業費を算定することとする。また、配置や構成に ついては、設計段階で確定することになるが、現段階では、資料編で示した配置イメー ジ案を参考に算定することとする。 各配置イメージ案における概算事業費は、約401億円〜419億円と算定されるが、 延床面積や地上・地下の面積比率を同じ条件としているため、それぞれの金額の差は、 工期や仮設庁舎によるものとなっている。 仮設庁舎は、現段階では適地を見出せていないため、仮設庁舎の活用を前提としない ものの中で最も概算事業費が高い約410億円に基づき、財政計画を立てることとする。 なお、今後、工期の短縮を図るため仮設庁舎が必要になる場合、既存の公共施設等の 活用も図り、本庁舎等整備事業費の縮減に努める。 項目金額(億円) 建設工事費385 解体工事費15 移転・引越費3 調査・設計費(基本設計、実施設計、工事監理費等)8 合計410 ※建設単価については、平成 28年時点においては、物価の変動がほとんど生じていな いため、他自治体の新庁舎及びホール建設事例を参考にした、平成 27年 4月 1日時 点での単価で算定した。また、消費税については、増税が予定されていることを踏ま え、10%で算定している。 ※基本構想段階での事業費であるため、建物仕様、外構計画など、不確定要素が多い中 での概算として算定している。 (2)整備にあたっての財源の考え方 本庁舎等整備については、多額の財政負担を伴う事業であり、整備にあたっては、財 政負担の平準化のため、基金や起債の活用が不可欠である。 庁舎等建設等基金については、27年度の補正予算にて総額約 59億円の積み立てによ り、残高が約 150億円となる見込みであるが、今後の梅ヶ丘拠点整備や玉川総合支所の 改築(約 50億円活用予定)において、その一部の活用を見込んでいる。それら大型事業 へ適切に対応していくためには、さらなる残高の確保が必要であり、28年度当初予算 では 10億円を積み立てを行った。本庁舎等整備開始年度までの各年度においても、当初 予算及び補正予算にて約100億円の積み立てをし、210億円に向けた基金の確保を 行っていく。 起債については、財政負担の平準化及び世代間負担の公平化を図る上で有効な手段で あるが、後年度負担が過度なものとならないよう留意する必要がある。基金と起債をバ ランスよく活用することで、一般財源の負担を軽減する財政計画を組み立てていく必要 があり、今後、事業手法と事業費の確定にあわせて、さらに精査していく。 また、例えば先導的な環境対策を行う場合等に給付される国庫補助金をはじめとした 各種補助金や寄附の活用など、活用可能な財源がないか引き続き研究するとともに、本 庁舎等におけるレストラン、売店、駐車場など、民間のノウハウを活用することが可能 な施設等については、さらなる区民サービスの向上を図るとともに、税外収入など区の 収入確保が可能な仕組みについても検討していく。 《財源内訳(想定)》 項目金額(億円) 各種補助金等未定 庁舎等建設等基金210 起債148 一般財源52 合計410 ※起債には、別途利子が上乗せされる。また、民間資金の活用になるため、借 入制度(5年・10年満期一括償還または定時償還)を十分活用していく。 《年度別財源内訳(想定)》 表あり ※今回参考とした配置イメージの工事期間約6年(年度としては7年)に基づき計画し ている。 ※平成28年6月現在の民間資金(5年満期一括償還)の利率(年0.1%)を、当初 借入時から借換をおこなって最長30年間適用した場合の利子の総支払い額は、約2 億7,000万円となる。 ただし、利率は借入(または借換)時の利率を適用するので、実際の利子の総支払い 額も変動する。 (3)整備に伴う公債費・起債残高および基金残高の見通し 整備にかかる財源として起債の活用を予定しており、予算全体に対する償還にかかる 公債費負担の影響は慎重に見通しをたてていく必要がある。 本庁舎等整備にかかる起債及び基金のうち、起債については、上記財源内訳にあると おり総額約148億円、単年度あたり約21億円の見込みである。民間資金の活用によ り5年ごとに借り換え(元金を償還しながら、その一部を再度借り入れること)が必要 になるが、本庁舎等整備以外の投資的事業(学校改築事業など)にも起債を活用してい くことになるので、単年度あたりの公債費(償還経費)をできるだけ抑えていく必要が ある。基金については、財源内訳において示しているように、本庁舎等整備のための基 金を整備開始年度までに210億円の残高とすることを目指し、当初予算または補正予 算にて積み立てを行っていく。 一方で、区全体の予算への影響をみると、本庁舎等整備を含めた投資的事業に充当し た起債の毎年度の公債費(償還経費)の見通しとしては、予算全体規模に対し約100 億円(約3.5%)で推移する見込みだが、他の財政需要を圧迫しない水準を確保する ため、その一部は借り換えを行う。それにより、借り換え分の起債を除いた実質の償還 経費は約50億円(約1.7%)となる見込みである。借り換えについては毎年度の収 支状況を踏まえ、最小限に留めるなど公債費負担や起債残高の抑制に向けた運用が必要 となる。また基金についても、繰り入れ(取り崩し)は全体の収支状況を踏まえながら 必要最小限に留めるなど、残高の確保に努めていく。 3.事業スケジュール 本庁舎等の配置や構成、事業手法、2020年の東京オリンピック・パラリンピックへ のインフラ整備をはじめとする社会・経済状況の変化等による影響も考えられるが、現段 階では、2020年度(平成32年度)に着工できるよう取り組んでいく。なお、民間の 技術も活用しながら、工期短縮に向けて様々な手法を検討していく。 4.今後の進め方 (1)本庁舎等整備の課題について 今後、本庁舎等を整備する敷地の確定や仮設庁舎・用地などの設計の与条件を整理し ていく。 (2)設計者の選定 設計者はプロポーザルにより選定するが、選定にあたって以下の点に留意する。 @総合的評価 災害対策や環境性能などの求められる機能・規模、事業費の抑制、工期の短縮、現 庁舎等の空間特質の継承などに対する提案を総合的に評価する。 A施工計画・工程計画を踏まえた技術力 本事業は、多角的で高次な諸要求が織り込まれた基本構想を具体化すべく行う難易 度の高い工事となるため、設計者選定にあたっては、施工計画や工程計画の対応能力・ 方策についても評価項目としていく。また、その提案の実現性などを評価できる体制 を構築する。 B建物と広場の関係 本庁舎等の整備にあたっては、広場も含め、周辺の公園・広場等とのネットワーク や、風景の連続性、生態系の視点を持って計画する必要があることから、建物だけで はなく、広場空間などのランドスケープについての能力を持つ設計者、あるいはそう した能力のある者と連携できる設計者を選定できるよう工夫していく。 C災害時の計画 本庁舎等は何時も揺るぎない防災拠点(災害対応指令基地)として機能するよう、 工事期間中に大規模災害が発生する可能性も想定した工期・工程を計画していく。ま た、広場を含め、平常時と災害時のそれぞれで、誰がどのように利用するのかを意識 した計画としていく。 D区民意見への柔軟な対応と選定の公開性 区民の意見等を十分に反映させるための区民協働の考えを取り入れた対応の提案を 重視するとともに、選定過程に区民も参加できるよう工夫していく。 (3)区民参加 本庁舎等は区民共有の財産であることから、本庁舎等の整備のプロセスそのものが区 民の参加と協働によるものとなるよう、工夫を重ねていく。 基本構想、設計者選定、基本設計、実施設計、工事、そして利用が始まってからも、 すべての段階での区民参加、さらに将来利用する子どもなど若い世代の参加を含めて進 めていく。 (4)総事業費について 2.財政計画で仮に示した事業費は、あくまでこれまでの検討過程で最も事業費が高 くなる案をもとに試算した概算事業費である。 緩やかな景気回復基調の中で、平成28年度の予算編成においては、歳入増を見込ん だところだが、現在の世界経済の動向や国の税制改正の動きなどを踏まえると、区財政 の先行きは決して楽観できる状況にはない。本庁舎整備は、多額の財政負担を伴う事業 であり、区の将来の財政運営への影響を見据え、総事業費に最も大きな影響を与える本 庁舎等の規模や工期などについて十分な検討を行い、総事業費の抑制に努める。 (5)工事中の安全性の確保と周辺環境への配慮 長期にわたる工事となるため、工期短縮に向けて様々な手法を検討していくとともに、 工事は安全を最優先として、騒音、振動、粉じん等に最大限配慮した計画、工法とする。 また、本庁舎敷地周辺は住宅地であり、整備後の建物規模が現状よりも大きくなるこ とから、建物高さや日影の影響、圧迫感、さらには施設に起因する風害、光害、騒音・ 振動、電波障害等の極力の防止を図るよう、周辺環境に十分配慮した計画としていく。 以下資料編については、主に表のため省略。詳細は庁舎計画担当課へお問い合わせください。