せたがや自治政策研究所 Newsletter 2023年4月号No.50 SETAKEN NEWS せた研写真ニュース 3月24日(金) 教育総合センター研修室「たいよう」で「せたアカFPS報告会」を実施しました。詳細は、次号にて報告します。 区内の外国人人口が増えている! 研究員 大石 奈実 世田谷区の各月人口の推移から、コロナ禍より人口総数および日本人人口が減少傾向にあるのに対し、外国人人口は令和4年(2022年)4月から増加傾向にあり、コロナ禍以前の水準まで戻っているように見えます。 外国人人口の推移を男女別にみると、男女ともに令和4年(2022年)4月以降増加傾向にありますが、特に男性の方が大きく増加しています。 在留資格別に増加数を見ると、「留学」、「技術・人文知識・国際業務」、「永住者」で大きく増加していることがわかります。 「留学」はコロナ禍の影響により減少していましたが、水際対策の緩和により令和4年(2022年)4月以降、増加傾向に転じています。しかし、コロナ禍前(2019年)の値までは戻っていないため、今後も引き続き増加する可能性があります。 「留学」と同様に、令和4年(2022年)4月以降、増加傾向にあります。コロナ禍の影響により減少していた「留学」とは傾向が異なり、「技術・人文知識・国際業務」はコロナ禍中の令和2年(2020年)6月をピークに、その後減少しています。 永住者は、コロナ禍の時期を含めて、一貫して増加を続けています。 永住者の人数が多い上位4か国(中国、韓国、フィリピン、米国)を見てみると、中国・韓国・アメリカでは平成31年(2019年)4月〜増加傾向が続いていますが、フィリピンでは減少しており、コロナ禍中の令和2年(2020年)5月から増加傾向となっています。その結果、直近の人数はコロナ禍以前と比較して大きく増えていません。また、永住者の上位4か国合計とその他の国の合計の推移を見ると、どちらも増加傾向があるため、上位4か国以外でも永住者が増えている国があることがわかります。 外国人の人口総数だけを見るのではなく、在留資格別や国別など細かく見ていくことで、新たな発見があるかもしれません。今後も外国人の増加は続く可能性があるため、引き続き注目していきたいと思います。 せたがや版データアカデミー Case Review Forum 第3シーズンご報告   主任研究員 田中 陽子 せたがや自治政策研究所はEBPMマインドの醸成を目的に令和4年度より「せたがや版データアカデミー(以下、せたアカ)」では組織の直面する課題をテーマに、個別のケースについてみんなで考える場として「せたアカCase Review Forum」を実施しています。第3シーズンでは新事業の提案ではなく都市公園をテーマに今世田谷区で実施していることを新たな視点で見つめなおす、という取組みを行いました。公園緑地課の高橋係長が報告者となり、全3回を実施しましたので報告します。 Stage1 政策について掘り下げる @公園の役割は明治以降、時代に合わせて変化している 今後、区の公園に求められる管理運営にあり方とは A政策アイデアの前に国の示す内容を整理 休息やレクリエーションのための場だけでなく ・環境基盤(みどり)とオープンスペースの確保の役割も ・ポストコロナに加えられる新たな役割とは…? Stage1終了後、報告者が「政策のアイデア」をブラッシュアップして、「政策の仮説」を作ります。 Stage2 政策の仮説を磨く  @ウェルビーイングな社会の実現に公園整備や運営がどうかかわるか、という点から議論を行いました。 Aお招きした東京都市大学の坂井先生にはZoomでご参加いただきました。区民の発意をもとに整備を行い、管理を地域団体で実施している「ねこじゃらし公園」などは、国の検討会で提言されていた「柔軟な管理運営」よりも1歩進んでいること、世田谷区らしい公園管理を考えていくことが大切であることなどのアドバイスをいただきました。また区民にわかりやすく伝える手段として、英国で実際に使われている「インフォグラフィック」についてもご教示いただきました。 Stage3 政策の試作品を磨く 報告者の高橋係長からは生物多様性やみどりなどの自然を生かす公園、子どもや若者・高齢者のThird Placeとなる公園、地域地縁活動の場や災害の備えの場としての公園などをつくることで、持続可能なウェルビーイングを感じられる社会になっていく、との提案がありました。Stage2でお話を伺った坂井先生と大杉所長からは講評、CRF参加メンバーからは応援の言葉が贈られました! 次年度もCase Review Forumは継続して実施予定です。 『都市社会研究2023』 第15号を刊行しました                                     せたがや自治政策研究所では、2008年度より学術機関誌『都市社会研究』を刊行しています。このたび、「都市社会研究2023」第15号を刊行しました。 本号では、今年度より始まっている区の次期基本計画策定に合わせ、「EBPPMと自治体計画」を特集テーマとし、有識者および当研究所田中主任研究員による論文を掲載しております。また、公募論文として、投稿いただいた都市社会等の分野における論文および研究上の問題提起や自治体の政策に関する研究ノートを査読のうえ掲載しております。 区ホームページで公開しています。ぜひご覧ください。 特集論文テーマ 「EBPMと自治体計画」 ・計画と評価−目標管理型評価とEBPM− 朝日ちさと(東京都立大学都市環境学部教授) ・EBPMは自治体計画にどのように役立つのか? 小泉秀樹(東京大学先端科学技術研究センター教授) ・社会調査は自治体計画とどうともにあり得るか 平井太郎(弘前大学大学院地域社会研究科教授) ・福祉計画におけるEBPMの推進に向けたデータ活用の現状と課題  大夛賀政昭(国立保健医療科学院主任研究官) ・協働時代のみどりの政策・施策とEBPM 赤澤宏樹(兵庫県立大学自然・環境科学研究所教授) ・世田谷区の次期基本計画検討に向けたEBPMの取組み 田中陽子(せたがや自治政策研究所主任研究員) <論文> ・JAあさか野地域における労働力からみた都市農業の持続可能性 児玉恵理 ・条例による事務処理特例制度の権限移譲の適法性に係る一試論 鈴木洋昌   ―提案募集方式における府省の見解をめぐって―   <研究ノート> ・地方創生における地方移住促進の正当化理論と課題 伊藤将人 ・「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」(COC+)の結果、地域内就職者割合は増加したのか 小山治                         ・世田谷まちづくりファンド30年の軌跡 男鹿芳則、岩渕博英、風間委文子 大杉所長のコラム チャイムの響き 所長 大杉覚 読む・書く・話すのバランスを心がけるようにと、学生時代に先輩からアドバイスを受けたことがあります。その後、大学院に進学し、研究者を目指してから、そして、今でも心がけているアドバイスの一つです。 筆者の場合、大学教授として「職業としての学問」=教育・研究に携わることから、読むとは、研究論文や専門書を読むこと、書くとは、研究活動の成果を論文にまとめること、話すとは、研究発表をしたり、講義を行ったりすること、に比重が置かれます。これらは有機的に繋がってもいますので、だからこそバランスが重要だということでもあります。 こう書くと、研究者だから、などと特別なことのように思われるかもしれません。でも実際のところ、それぞれの立場で従事する活動や生業に即したかたちで、読む・書く・話すは重要な意味を持つはずです。特に筆者が行政学を専門として、国・地方の公務員と接する機会が多いことから強く感じるのですが、公務員の方々こそもっと意識して読む・書く・話すを実践してほしいと考えています。 なかでも強く望まれるのは、書く、です。携わった業務や活動を文章にまとめてみる。公文書は別として、備忘録のような業務日誌やいざというときに証拠になるようなメモ程度のものは誰もが書いているでしょうが、広く人に読んでもらえるようにしっかりとした文章に組み立ててまとめてみることが肝要です。振り返りや今後のための気づきのよい機会になるのはもちろん、職務そのものへの思いや考えを深める効果があるはずです(いわゆるワーク・エンゲージメントの醸成)。 文章を読んだ人からアドバイスをもらうこともあるかもしれません。あるいは、後輩や後任者をはじめ、同じような業務についている人からアドバイスを請われる機会を得ることになるかもしれません。そうすると、自身でもさらにより深く掘り下げて考えたいと思うようになるものです。最近では自治体職員で職務の傍ら大学院に入り論文をまとめる方々が増えてきました。正式な引き継ぎ書以外は、離任とともに業務の記憶・記録は立ち消えになりがちですが、文章としてまとめて公表されるならば、自ら従事した仕事が「歴史」として蓄積されます。その文章をまとめた人の「世界」も広がることでしょう。 幸いにも、世田谷区には、せた研が発行する学術機関誌『都市社会研究』という絶好の場があります。論文・研究ノートに投稿して腕試しをしていただくのもよし、活動報告としてまとめていただくのもよし。残念ながら職員からの投稿は多くありません。せっかくですので、区職員には大いに活用してほしいと切望しているところです。 そこで、これまで同誌に投稿・掲載された経験のあるお二人の区職員をお招きした、オープンゼミを企画しています。職員が文章をまとめてみることの意義やその極意などを対談を通じて深掘りしたいと考えています。参加者からの相談などにも応じたいと思います。オープンゼミへのご参加、ぜひよろしくお願いします。 ※オープンゼミは区職員向けのイベントです。