せたがや自治政策研究所 Newsletter 2022年12月号No.46 SETAKEN NEWS せた研写真ニュース 11月22日(火)15時から、タマリバタケおよび二子玉川分庁舎大会議室で第3回庁内オープンゼミ「タマリバタケ×●● ―タマリバタケから地域交流を考える―」を実施しました。実際にタマリバタケを見学した後、NPO法人neomuraの新井さんと武井さんから、NPO法人neomuraの活動についてお話を伺いました。 プロジェクトC データの整備と活用中間報告政策形成にもっとデータ利活用を!! 主任研究員 田中 陽子 せたがや自治政策研究所では令和3年度よりプロジェクトの一つの柱にデータの整備と活用を掲げ、調査研究を行っています。政策形成にどうしたらデータ利活用したくなるのか、という視点から理論(C-1)と実践(C-2、C-3)として活動を行っています。 令和3年度はC-1「政策形成能力の向上とデータ利活用の推進」では世田谷区でEBPMを進めるためにどうしたらよいかを研究し、まずは体制整備と人材育成、使いやすいデータの整備ではないか、との結論になりました。同時にC-2「せたがや版データアカデミー」で人材育成の手法として主に計画担当を対象としたせたがや版データアカデミー(せたアカ)を行い、C-3「将来人口推計」で先の読めないコロナ禍における将来人口推計と現在の人口動向について研究したことで、次期基本計画に向けた下地づくりを行いました。 令和4年度は次期基本計画検討の開始に合わせて、C-1ではEBPMマインドのさらなる醸成、C-2では進化した2つのせたがや版データアカデミー、C-3では次期基本計画に向けた将来人口推計を行うとともに、現在の人口構成の分析に取り組んでいます。これらの活動のベースとしてプロジェクトCのプロジェクトリーダー2名で、今後研究所で取り組んでいく「定点観測統計データ」を整備しています。 C-1では「もう一度オープンデータを考える」をテーマに、庁内オープン・ゼミを実施したり、統計情報館の見直し支援などを行っています。 C-2では次期基本計画の実行を担い、今後の区行政の中心となっていく若手職員が、基本計画策定に関わるための仕掛けとして、若手職員を対象とした政策形成演習「せたアカFuture Policy Seminar」を実施しています。理想の未来からバックキャスティングで課題を設定し政策を考える「EBPM」のフレームワークとユーザーに寄り添ったプロダクトを考える「デザイン思考」を組み合わせて「共感される政策」を考えています。メンバーの皆さんがとっても素敵な「創り出したい未来のせたがや」を考えたので、第2回基本計画審議会の資料として提出いたしました(資料2)。このような未来をどう実現する政策を考えるか、ここからが本当の政策形成演習となります。3月24日の報告会で共有いたしますので、ご予定ください。 もう一つのデータアカデミーとして組織が直面する課題をテーマに政策を考える「Case Review Forum」も実施しています。こちらは主に主任や係長級の職員を対象に、フラットに政策について話し合える場として実施しています。本年度は3人の係長が報告者となり、参加者との意見交換、有識者からのアドバイス、上長からのフィードバックにより「政策アイデア」を「政策の試作品」に作り上げていく政策形成演習を行っています。現在は高齢者の健康寿命の延伸をテーマに第2シーズンを開催中です。 C-3はプロジェクトリーダーの大石さんからご報告します。 プロジェクトC-3 地区別人口ピラミッドの比較からわかったこと 研究員 大石 奈実 プロジェクトCでは、28地区別の人口のデータを整備し、区ホームページにて公開することで、区職員だけでなく区民が自ら居住する地区をデータで見てこれからの世田谷区を考えることができる状態を目指しています。 現在、統計情報館のデータから以下の3つのデータの整備を検討しています。 @全区・5地域・28地区別の総人口および男女別人口の時系列データ(年次) A全区・5地域・28地区別の総人口および男女別人口の時系列データ(月次) B全区・5地域・28地区別の2022年1月1日時点の人口ピラミッド 今回は、地区別の人口ピラミッドからわかったことをご紹介します。 まず、地区別に人口ピラミッドを見ると、世田谷地域や北沢地域で木のような形になる地区がいくつかあることがわかりました。 これらの人口ピラミッドの地区は、20代〜30代が多く、年少人口と高齢者人口が少ないことから、@単身世帯が多く、A持ち家率が低い地区なのではないか、と推測しました。 この推測が正しいかを調べるために、2020年の国勢調査の結果を見てみます。 @単身割合 図表1は、国勢調査の「第4表 世田谷区の世帯の家族類型(6区分)別一般世帯数」より、単独世帯の割合を計算し、地図上に示したものです。色が濃いほど、単身の割合が高いです。この図表から、上記に示した人口ピラミッドの地域が濃くなっており、単身の割合が高いことがわかります。 A持ち家割合 図表2は、国勢調査の「第5表 世田谷区の住居の種類・住宅の所有の関係(6区分)別一般世帯数」より、持ち家の割合を計算し、地図上に示したものです。色が濃いほど、持ち家の割合が高いです。この図表から、上記に示した人口ピラミッドの地域は薄く、持ち家の割合が低いことがわかります。 @単身割合とA持ち家割合から、今回の推測をデータで裏付けることができました。 人口ピラミッドの形は、地区ごとに大きく異なっています。人口ピラミッドを見ることで、その地区の人口構成を見ることができ、居住者の特徴を推測できます。別のデータを使ってその推測を裏付けることができれば、説得力のある根拠になります。 今年度の後半では、地区別人口の時系列データや地区別の将来人口推計も併せて、それぞれの地区の特徴や動きを分析していきたいと思います。 第2回庁内オープンゼミを実施しました テーマ:「もう一度オープンデータを考える」 【実施概要】 ・日時  令和4年10月26日(水)13:30〜17:00 ・会場  教育総合センター2階 研修室「にじ」 ・講師  一般社団法人リンクデータ代表理事 下山 紗代子 氏 オープンデータを先輩から更新するよう言われているけど、何のためにやってるんだろう、と思っている方、ぜひこの動画をご覧ください。何に使われるかわからないと、更新面倒だな、という気持ちになってしまうかもしれません。実は公的に集めたデータなんだから誰かのためだけに使うのはむしろ不公平、公開することこそが公平、という考え方に基づいています。とはいえ使われないとモチベーションが上がらないので、使いやすいデータを提供するためにはどうするとよいのか、というのをCode For Yokohamaでも活躍中のオープンデータ伝道師、下山先生に教えていただきました。 今回のオープンゼミでは前半に「なぜオープンデータが必要か」という講義を聞いた後で、機械判読可能なデータ=グッドデータ、視認性は高いが機械判読やデータの分析がしにくいデータ=バッドデータについて学びました。その後、実際にエクセルを使った演習では「グッドデータだと使いやすいけど、バッドデータだと難しい」ということを実感することができました。 世田谷区は早いうちからオープンデータに取り組んでいたため、公開されているデータの多くが、後から決まった「自治体標準データセット」に準拠しておらず、結果として利活用しづらい=バッドデータになってしまっているのが現状です。せっかく公開するならグッドデータで公開したほうが利活用の機会も増えて、更新のモチベーションも上がるのではないでしょうか。 研究にちょっと行き詰ったので大杉所長に聞いてみました 先月せたけんで実施した第2回庁内オープンゼミ(P5参照)では、オープンデータの重要性がよくわかりました。 せたけんで作成した将来人口推計は講師よりバットデータの例に挙げられてしまい少し落ち込みました・・・が、今回、地区人口の時系列データをグッドデータで作成を試みています。でも、このデータがどのように使われるのかあまりイメージができず、今後の更新作業にモチベーションがあがりません・・・ 例としては地域カルテ作りがあげられますが、いきなりそういってもあまり関心は持ってもらえないでしょう。身近なテーマである防災、高齢化の問題、子どもの見守りなどを切り口に考えるときに、何もデータがないと自分たちの地域がどうなっていくかを客観的に見ていくのは把握しづらいでしょう。その時に、実際にその通りになるかは別として、将来の人口はどうなっていくのか、どういう人口構成になっていくのかを、他の地区と見比べてどうかを見ていただくのは住民にとってもインパクトがあります。職員の方も、なんとなくこの地域はこうだ、というのはわかっていても、将来どうなっていくかはわからないでしょう。地区の人口データは地域の方々と一緒に考えていく時の情報のベースかな、と思います。 確かに、今回、地区別の人口ピラミッドを作成したら、形が全く異なっていて驚きました! そうでしょう。そういうことを知ることも重要です。一定規模の人口規模の自治体であれば、どの地域も均一ということはないでしょう。 データは数量のデータだけではありません。質的なデータもあります。机の上で考えるだけでなく、自らの足で確認することも重要です。区内でまち歩き活動をしている方や、街づくりに詳しい人、人口に興味がある人、福祉や教育を語れる人など、様々な人が互いに連携をとれるあり方がそれぞれの地域で芽生えるといいですね。