タイトル  世田谷区データブック1 ―世田谷の社会的特性(地域と人口)―  せたがや自治政策研究所では、さまざまなデータに基づいて世田谷区の将来を展望するため、平成19年の設立当初から継続的に「世田谷の地域特性の析出」の政策研究を進めて参りました。このたび、本研究を通じて蓄積された分析結果を整理し、今後の世田谷区の政策立案等に役立ててもらうことを目的に、「世田谷区データブック1―世田谷の社会的特性(地域と人口)―」としてまとめました。社会的特性は、人口的特性(人口密度、年齢別人口等)、家族的特性(世帯構成等)、社会経済的特性(職業等)の3つで構成されています。今回は、地域の社会的特性のうち、人口や家族について着目しました。  近年、蓄積された膨大なデータの中から、的確に情報を読み取り、意思決定につなげていくことの重要性が高まっています。本書では、国勢調査(〜平成22年)および住民基本台帳等のデータから、今後の世田谷区を取り巻く情勢を捉えていくポイントになっていくものを選んで掲載しました。  作成にあたり、2つの公共的なデータベース及びシステムを活用しています。具体的には、総務省統計局の政府統計総合窓口e-Stat(http://www.e-stat.go.jp)、特別区協議会の「統計情報システム」(http://www.research.tokyo-23city.or.jp/toukei.html)、社会地図の作成では、総務省及び独立行政法人統計センターの「地図による小地域分析jSTAT MAP」(https://jstatmap.e-stat.go.jp/gis/nstac/index.html)を使用しました。 目次 第1章 世田谷区の人口・世帯を見てみよう  1.1 世田谷区の人口は増えている  1.2 世帯数は増え、1世帯当たり人員は減っている  1.3 人口が多く人口密度も高いのは都心に近いエリア 第2章 年齢別人口構成と世帯類型を見てみよう  2.1 世田谷区は全国と比べて生産年齢の比率が高い  2.2 世田谷区は団塊ジュニア(1971年〜1974年生まれ)の割合が高い  2.3 核家族世帯数は横ばい、単身世帯数は増加が続く  2.4 世帯構成は東京23区とほぼ同じ  2.5 北沢地域は単身世帯率が約6割、持ち家世帯率は約4割  2.6 核家族世帯率は南西部で高く、単身世帯率は北東部で高い 第3章 世田谷区の自然増減と社会増減を詳しく見てみよう  3.1 世田谷区の自然増は23区でトップクラス1  3.2 出生数の中心を担っているのは30代  3.3 東京23区では約20年前まで社会減が続いた  3.4 世田谷区では近年、社会増が続いている  3.5 世田谷区の社会増は毎年3〜5千人  3.6 世田谷区民のうち転入してきた人たちは7割  3.7 転入者の前住地は首都圏が約8割  3.8 近くの自治体へ転出し、近くの自治体から転入する人が多い 第4章 もっと詳しく社会増減を見てみよう  4.1 転出者の居住年数は5年未満が約6割  4.2 転入者・転出者ともに20代〜30代が多い  4.3 砧地域では区内外からの流入で人口が増えている  4.4 転居は同じ地域内が約7割 第5章 東京23区最大級の団地建替えのインパクト  5.1 大規模な団地建替え後に地区の人口が2倍に  5.2 大規模団地建替え後は地区の年少人口が1.8倍に  5.3 近隣でも大規模マンションが人口構成を変化させている 図表 1 人口推移(世田谷区) 図表 2 人口推移(全国) 図表 3 世帯数及び世帯の1世帯当たり人員の推移(世田谷区) 図表 4 世帯数及び世帯の1世帯当たり人員の推移(全国) 図表 5 社会地図 世田谷区と周辺自治体 図表 6 世田谷区の5つの総合支所 図表 7 地域別人口の特徴 図表 8 社会地図 人口総数 図表 9 社会地図 世帯総数 図表 10 年少人口・生産年齢人口・老年人口構成比の推移(世田谷区) 図表 11 年少人口・生産年齢人口・老年人口構成比の推移(全国) 図表 12 地域別年少・老年人口率と人口増加率 図表 13 人口ピラミッド 世田谷区と全国との比較 図表 14 世田谷区の団塊世代(1947年生のみ)推移と東京23区の転出入 図表 15 人口ピラミッド(世田谷区) 図表 16 世帯構成の推移(世田谷区) 図表 17 世帯構成の推移(東京23区) 図表 18 世帯構成の推移 うち核家族の内訳(世田谷区) 図表 19 世帯構成の推移 うち核家族の内訳(東京23区) 図表 20 世帯構成の比較(全国・東京23区・世田谷区) 図表 21 地域別の単身世帯率と持ち家世帯率 図表 22 社会地図 単身世帯率 図表 23 社会地図 核家族世帯率 図表 24 社会地図 持ち家世帯率 図表 25 社会地図 高齢単身世帯数 図表 26 東京23区の人口増減比較 図表 27 東京23区の自然増減比較 図表 28 合計特殊出生率と出生数の推移比較(世田谷区、東京都、全国) 図表 29 母親の年齢別出生数推移(世田谷区) 図表 30 世田谷区における0歳人口と女性人口推移 図表 31 東京23区における人口移動推移 図表 32 世田谷区の人口増減 図表 33 東京23区の人口増減 図表 34 世田谷区の人口増減・社会増減・自然増減 図表 35 世田谷区民の構成(転入経験の有無) 図表 36 転入経験のある世帯のうち30代・40代の占める割合 図表 37 世田谷区の年齢別転入経験の有無 図表 38 世田谷区へ転入してきた人たちの転入元住所(都道府県別) 図表 39 世田谷区へ転入してきた人たちの転入元住所(市区町村別) 図表 40 1年間の転入者の転入元住所(市区町村別) 図表 41 1年間の転出者の転出先住所(都道府県別) 図表 42 1年間の転出者の転出先住所(市区町村別) 図表 43 転出者の世帯と居住年数の関係 図表 44 居住年数に関する円グラフ 図表 45 居住年数(5年未満・以上)の年代別内訳 図表 46 転出入者の年齢別比較(1年間) 図表 47 月別の転出入者数・転居者数 図表 48 月別の社会増減数 図表 49 地域別の社会増減(1年間) 図表 50 地域別の転居状況 図表 51 大規模な団地建替えが行われた地区の人口推移 図表 52 大規模な団地建替えが行われた地区の世帯数推移 図表 53 大規模な団地建替えが行われた地区の人口構成 図表 54 社会地図 大規模マンション完成前 0〜4歳人口 図表 55 社会地図 大規模マンション完成後 0〜4歳人口 図表 56 社会地図 大規模マンション完成前 共同住宅6階建〜10階建の世帯 図表 57 社会地図 大規模マンション完成後 共同住宅6階建〜10階建の世帯 図表 58 社会地図 大規模マンション完成前 共同住宅11階建以上の世帯 図表 59 社会地図 大規模マンション完成後 共同住宅11階建以上の世帯 図表 60 社会地図 大規模マンション完成前 35〜39歳 図表 61 社会地図 大規模マンション完成後 35〜39歳 図表 62 社会地図 大規模マンション完成前 40〜44歳 図表 63 社会地図 大規模マンション完成後 40〜44歳 図表の内容については次の担当部署へお問い合わせください。。 政策経営部政策研究・調査課 電話 03−3425−6124 ファクシミリ 03−3425−6895 本文 第1章 世田谷区の人口・世帯を見てみよう 1.1 世田谷区の人口は増えている  世田谷区の人口推移について見てみよう。 図表 1 人口推移(世田谷区) 図表 2 人口推移(全国)  世田谷区の人口は、平成7年ごろから上昇傾向あり平成22年には約88万人となっている。一方、国の人口は平成17年ごろからほぼ横ばいとなっている。この間、なぜ世田谷区の人口が増えたのだろうか。詳しくは、第3章で述べる。 1.2 世帯数は増え、1世帯当たり人員は減っている 図表 3 世帯数及び世帯の1世帯当たり人員の推移(世田谷区) 図表 4 世帯数及び世帯の1世帯当たり人員の推移(全国)  世帯数は、世田谷区と全国ともに世帯数が増える一方で1世帯当たり人員が減っている。世田谷区では単身世帯の増加などの影響をうけ、1世帯当たり人員が2人を下回っている。 1.3 人口が多く人口密度も高いのは都心に近いエリア  人口や世帯のデータを空間に投影して捉えるために、社会地図にして表してみよう。 図表 5 社会地図 世田谷区と周辺自治体  世田谷区は、東京23区中の西南部に位置し、都心(東京駅)からは約9km〜18km、副都心(新宿・渋谷)から約1 km〜10kmの距離にある。東は目黒区、渋谷区、北は杉並区・三鷹市、西は狛江市・調布市、南は大田区とそれぞれ接し、さらに多摩川をはさんで神奈川県川崎市と向かい合っている。  区は、ほぼ平行四辺形の形状をしていて、面積は約58km^2、東京都区部総面積の約1割を占め、大田区に次ぐ広さとなっている 。  区は、世田谷、北沢、玉川、砧、烏山の5つの総合支所に分かれている。 図表 6 世田谷区の5つの総合支所 この5地域では、人口と面積に関する特徴が図表7のとおり見られる。世田谷地域は、世帯数、人口総数とも最も多く、人口密度が最も高い。北沢地域は、人口密度が世田谷地域に次いで高い。砧地域は、人口密度が最も低い。 図表 7 地域別人口の特徴  世田谷区は277丁目に分かれるが、区の周辺自治体も含めて、丁目ごとに人口と世帯について更に詳しく見てみよう。 図表 8 社会地図 人口総数 図表 9 社会地図 世帯総数  図表8は町丁目ごとの人口総数、図表9は世帯総数を示している。2つの地図は、ほぼ同じ分布になることが見える。都心に近い世田谷地域、北沢地域で単身世帯が集住していることが推測できる。玉川地域の大田区に隣接するエリアの一部では、人口総数と世帯総数のともに多い丁目があることが見える。 第2章 年齢別人口構成と世帯類型を見てみよう 2.1 世田谷区は全国と比べて生産年齢の比率が高い  年少人口(0歳〜14歳)、生産年齢人口(15歳〜64歳)、老年人口(65歳以上)の3区分について、本区と全国を比較してみよう。 図表 10 年少人口・生産年齢人口・老年人口構成比の推移(世田谷区) 図表 11 年少人口・生産年齢人口・老年人口構成比の推移(全国)  本区の年齢別人口構成は、平成22年で年少人口が11%、生産年齢人口が71%、老年人口が18%となっており、全国よりも年少人口が2ポイント低く、少子化の進行をうかがわせる。一方、老年人口は18%と全国よりも5ポイント低い。昭和45年からの推移を見ると、高齢化は国よりも緩やかといえる。また、生産年齢人口比率を見ると、世田谷区は一貫して全国よりも高く、平成22年では7ポイントも高くなっている。  次に5地域で年少人口比率と老年人口比率を比較するとともに、人口増減との関連についても併せて検討してみよう。年少人口比率が高く、老年人口比率が低い地域で人口が増えている可能性が高いと一般的には推定されるが世田谷区はどうだろうか 。 図表 12 地域別年少・老年人口率と人口増加率  図表12では縦軸に老年人口比率、横軸に年少人口比率を置いて、円の面積を人口増加率(平成24年と平成27年を人口を比較)として座標に示した。図表からは、5地域それぞれの特徴が分かる。年少人口比率の最も高い砧地域では、老年人口比率がそれほど高くない。一方、老年人口比率が最高の烏山地域では年少人口が真ん中で、人口増加率が最も高い。このことから、本区では、単純に年少人口が多い地域で人口が増えているという訳ではないといえる。 2.2 世田谷区は団塊ジュニア(1971年〜1974年生まれ)の割合が高い  年齢別構成を人口ピラミッドに示してみよう。図表13は、5歳階級別に人口に占める割合を横軸にして本区を棒グラフ、全国を線にしたものである。 図表 13 人口ピラミッド 世田谷区と全国との比較  平成22年における、区と国を比較すると次のことが分かる。世田谷区は人口構成のピークが「35歳〜39歳」の団塊ジュニア世代(1971[昭和46]〜1974[昭和49]年生) にあたっている。それに比べて、「60歳〜64歳」にあたる団塊世代(1947[昭和22]〜49[昭和24]年生)である60代前半が全国に比べて大きな割合を占めていない。全国では団塊の世代と団塊ジュニア世代と同じようなピークを形成しており、2つの大きな山がある特徴がある。  なぜ、全国は2つのピークがあるのに対して、世田谷区はなぜ団塊世代が少ないのだろうか。そこで、この団塊世代に含まれる1947年生まれの人たちに着目して、その人口推移を示したい。  下図は、右軸目盛りに世田谷区における団塊世代(1947年生のみ)の人口 を、左軸には東京23区と他道府県間の転出入及び社会増減の推移を示している。 図表 14 世田谷区の団塊世代(1947年生のみ)推移と東京23区の転出入  本区における団塊世代で1947年生の人たちは、昭和41年(1966年)から急速に増加して昭和43年(1968年)にピーク(27,018人)を迎えた。昭和43年以降は減少を続け、平成26年にはピークの4割(11,485人)にまで減少している。背景に、昭和40年代後半〜平成元年(1970年代〜90年代前半)頃にかけ、東京23区では若者層(団塊世代)が新しい住居等を求めて郊外へと移動したことがあげられる 。このことが、本区の団塊世代が少ない理由の一つとなっている。  図表15は、平成7年と平成27年を比較したものである。 図表 15 人口ピラミッド(世田谷区)  平成7年では人口構成のピークが当時20代前半の団塊ジュニア世代であったが、20年後の平成27年でも40代がピークとなっていることから、この世代がピークを形成している。その一方で、20代の層は20年前と比べて半分程度となっている。 2.3 核家族世帯数は横ばい、単身世帯数は増加が続く 図表 16 世帯構成の推移(世田谷区) 図表 17 世帯構成の推移(東京23区)  近年、世田谷区、東京23区ともに核家族世帯は横ばいである。なお、核家族世帯の世帯全体に占める割合は、昭和60年から一貫して減少している。一方、単身世帯は増加を続け、世帯全体の約5割を占め、核家族世帯を上回る最も多い世帯となった。  核家族の内訳を見ると、下図のとおり夫婦と子の世帯数は横ばいだが、全国においては夫婦と子の世帯数が減少を続けている 。夫婦のみ世帯、ひとり親と子から成る世帯 は、本区及び東京23区ともに増加を続けている。なお、ひとり親と子から成る世帯のうち、母子世帯はやや減少している。 図表 18 世帯構成の推移 うち核家族の内訳(世田谷区) 図表 19 世帯構成の推移 うち核家族の内訳(東京23区) 2.4 世帯構成は東京23区とほぼ同じ 図表 20 世帯構成の比較(全国・東京23区・世田谷区)  世帯構成で見ると、世田谷区と東京23区はほぼ同じ世帯構成の比率であることが分かる。全国では、「核家族世帯」が全体の56.3%を占め最も多い世帯となっているが、本区及び東京23区では「単身世帯」が49%と最も多い世帯となっている。「単身・核家族以外世帯」 が全国では11.3%であるのに対し、本区は4.6%である。 2.5 北沢地域は単身世帯率が約6割、持ち家世帯率は約4割 図表 21 地域別の単身世帯率と持ち家世帯率  図表は、区内5地域ごとの単身世帯率を縦軸、持ち家世帯率を横軸に示している。単身世帯率が最も高い北沢地域は、同時に持ち家世帯率が最も低いことが分かる。玉川地域・砧地域は単身世帯率が低く、持ち家世帯率が高くなっている。 2.6 核家族世帯率は南西部で高く、単身世帯率は北東部で高い 図表 22 社会地図 単身世帯率 図表 23 社会地図 核家族世帯率  単身世帯率は、北沢地域や世田谷地域の都心の近いエリアほど高く、隣接する渋谷区と杉並区の傾向に似ている。核家族世帯率は、砧地域及び玉川地域に多く、隣接する川崎市の傾向に近い。 図表 24 社会地図 持ち家世帯率  持ち家世帯率は単身世帯の多いところで低く、核家族世帯率が高いところで高くなっており、概ね隣接する自治体でも同様の傾向が見られる。  なお、区内の高齢単身世帯数は、単身世帯率の高い地区と概ね重なっているが、独自の動きも見られる。玉川地域の南部と砧地域の一部にも多い地区が点在している。 図表 25 社会地図 高齢単身世帯数  第3章 世田谷区の自然増減と社会増減を詳しく見てみよう 3.1 世田谷区の自然増は23区でトップクラス  世田谷区の自然増減(出生数−死亡数)を東京23区で比較してみよう。 図表 26 東京23区の人口増減比較 図表 27 東京23区の自然増減比較  近年、世田谷区の出生数は東京23区でもトップクラスといえる。本区は住宅都市であり、人口が東京23区の中で最も多く、面積も大田区に次いで2番目に広いことが背景にある。  本区では、人口に比して死亡数も多いが、それを上回る出生数があるのは、30代〜40代の子育てする年代が人口構成のピークを形成しているためだと考えられる。  この点について、合計特殊出生率の動向等から詳しく見ていきたい。 図表 28 合計特殊出生率と出生数の推移比較(全国・東京都・世田谷)  本区の合計特殊出生率は、平成18年からのデータを見ると全国及び東京都と同じように上昇傾向にあり、率だけでなく総出生数も増えている。 3.2 出生数の中心を担っているのは30代 図表 29 母親の年齢別出生数推移(世田谷区)  母親の年齢別出生数の推移と総出生数の推移を見比べると、平成7年(1995)ごろから、30代後半の母親が増える一方、20代の減少は著しく、晩婚化・晩産化の傾向が見られる。30代前半の母親が20代を抜いて最も子どもを産む年代となり、平成24年の総出生数は昭和62年(1987)の水準に近づいている。 図表 30 世田谷区における0歳人口と女性人口推移  平成26年5月以降から平成28年2月までの世田谷区の0歳人口の変化を見ると、32歳の女性人口とほぼ対応していることが分かる。 3.3 東京23区では約20年前まで社会減が続いた  人口増減は、4つの要素(転入者・転出者・出生数・死亡数)に分けられる。これらを2つにまとめると、社会増減(転入者−転出者)と自然増減(出生数−死亡数)と呼ぶことができる。東京23区ではどのように推移しているのかについて概観したい。 図表 31 東京23区における人口移動推移   昭和34年(1959)から平成26年(2014)の人口推移を見ると、東京23区への転入者がピークを迎えたのは昭和38年(1963)である。この時の転入者数は638,550人となっている。また、23区外への転出者がピークを迎えたのは昭和45年(1970)の733,626人である。東京23区は、昭和39年から33年間ほど社会減(転出超過)であった。ところが、平成9年から平成26年の間は、再び社会増(転入超過)になる。  背景には、社会減の期間は郊外化の進展によって23区外に転出する者が転入者を上回り、平成9年からは都心回帰の流れで転入者が増加した。大きな変化として、昭和40年代に比べると転出者・転入者の数そのものが大幅に減っていることが分かる。他道府県からの転入者・転出者は、過去のピーク時と平成26年を比べると、転入者はピーク時の約6割、転出者は約4割まで縮小している。  次に、世田谷区と東京23区の人口増減を比較して見ていきたい。 3.4 世田谷区では近年、社会増が続いている 図表 32 世田谷区の人口増減 図表 33 東京23区の人口増減  世田谷区の人口増のうち社会増は約7割、自然増が約3割(平成26年)となっている。本区および東京23区では過去、都心の地価が高騰したバブル景気(昭和61年〜平成3年)およびバブル崩壊(平成4年)の時期に社会減となったが、近年では、社会増が続いている。なお、平成20年のリーマンショック後は、社会増が落ち込んだが、社会減にはならなかった。 3.5 世田谷区の社会増は毎年3〜5千人  本区における人の流れは、どのように推移しているのだろうか。 図表 34 世田谷区の人口増減・社会増減・自然増減  昭和45年(1970)から平成26年(2014)までの本区における推移を見ると、昭和45年(1970)から平成7年(1995)ごろまでは、一部の期間を除いて転出超過にあったことが分かる。この間の人口移動は、前述の東京23区における人口移動推移と概ね一致する。  本区の自然増減については、昭和40年代は死亡数に対する出生数の超過が年間1万人となっていた時期では、本区の人口を増加させる唯一の要因となっていた。一方、平成に入ってからはその数が減少し、死亡数に対する出生数の超過は近年では1千〜2千人で推移している。今後、高齢化に伴う死亡数の増加が見込まれることから、将来的には自然減の局面を迎えると考えられる。平成7年以降の人口増加の要因は、主として転入超過による社会増によるものといえる。近年は、都心回帰を背景に本区は毎年3〜5千人の社会増となっている 。 3.6 世田谷区民のうち転入してきた人たちは7割  ここでは本区の住民がどのような人たちで構成されているのかについて、転入経験の有無の観点から見ていきたい。下図に内訳を円グラフにまとめた。 図表 35 世田谷区民の構成(転入経験の有無) 図表 36 転入経験のある世帯のうち30代・40代の占める割合  現在、世田谷区に居住している世帯(460,448世帯)のうち、過去から現在までに転入したことのある世帯 は、全体の8割(390,024世帯)で、そのうち世帯主が30代・40代の世帯(171,408世帯)は44%となっている。 図表 37 世田谷区の年齢別転入経験の有無  過去から現在までに本区へ転入してきた人たちは、平成26年8月時点で年齢別にみると10代以下の人口は転入経験がない人たちが多いが、それ以外の年代では転入経験ありの人たちが過半数を占めている。 3.7 転入者の前住地は首都圏が約8割  本区の住民の7割がかつて転入してきた人によって占められていることを前述したが、前住地はどのようになっているのだろうか。以下にまとめていきたい。 図表 38 世田谷区へ転入してきた人たちの転入元住所(都道府県別)  転入元住所を都道府県別にみると、東京都内からの転入が53%も占めている。また、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)が全体の約8割を占め、転入の多くは近隣の自治体からと考えられる。 3.8 近くの自治体へ転出し、近くの自治体から転入する人が多い 図表 39 世田谷区へ転入してきた人たちの転入元住所(市区町村別) 図表 40 1年間の転入者の転入元住所(市区町村別)  転入元住所については、本区と隣接する目黒区、川崎市などが多いことが分かる。この傾向は、直近1年間で見ても同じであることが分かる。転入者の流れが、長期的にあまり変化していないと考えられる。更に詳しくみると、隣接する自治体と接する地区であるほど、その自治体からの転入者が多いことも確認されている 。本区に近い自治体ほど、そこからの転入者が多いと言える。では、転出でも同じことが言えるのだろうか。次は転出先について見ていきたい。  世田谷区から転出した人たちの転出先について、直近1年間のデータを以下に見ていく 。 図表 41 1年間の転出者の転出先住所(都道府県別) 図表 42 1年間の転出者の転出先住所(市区町村別)  転出先は、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)で7割が説明できる。転入元住所の傾向と同じく、近隣であるほど転出者が多い。都道府県別にみると、転出先の上位5位までは転入元と一致している。市区町村別に見ても、特に隣接する自治体への転出が多い傾向に変わりない。つまり、転入者・転出者ともに本区に近ければ近いほど多くなると考えられる。 第4章 もっと詳しく社会増減を見てみよう 4.1 転出者の居住年数は5年未満が約6割 図表 43 転出者の世帯と居住年数の関係  世田谷区外への転出者、それに区内の転居者について詳しく見ていきたい。世田谷区において、平成26年〜平成27年の1年間に転出した人たち(n=57,481人) のうち、居住年数で最も多かったのは「5年未満」(転出者全体の57%)であった。居住年数5年未満が一つの目安になるといえる。居住年数の中央値は4年、最頻値は2年であった。単身世帯(=1人世帯, 32,923人)は転出者全体の57%を占め、そのうち「5年未満」は19,011人(転出者全体の33%)。居住年数別に見て単身世帯は、他の世帯よりも3倍以上多い。 図表 44 居住年数に関する円グラフ  世田谷区民の居住年数5年未満の住民は28%(246,412人)、居住年数5年以上は72%(634,559人)となっている。 図表 45 居住年数(5年未満・以上)の年代別内訳  世田谷区の20代〜30代のうち約5割は居住年数5年未満だが、40代以上では7割以上が居住年数5年以上となっている。この違いは、就職、結婚、子育てなどが背景になっていると考えられる。では、1年間でどの年齢の人たちが異動しているのだろうか。このことについて、次の年齢別の転出入を見ていきたい。 4.2 転入者・転出者ともに20代〜30代が多い 図表 46 転出入者の年齢別比較(1年間)  世田谷区では転出、転入ともに20〜30代の層が多くを占めている。年齢別にみると、平成27年は19歳(+962人)の転入超過が最も多く、20代が主な社会増(=転入超過)となっている。一方、その他の年齢では概ね社会減となっている。次に、月別でどのような移動の流れがあるのかについて詳細に見ていきたい。 図表 47 月別の転出入者数・転居者数 図表 48 月別の社会増減数  平成25年は転入、転出ともに3月がピーク(計19,399人)で、次いで4月(計14,897人)が高く、この2ヶ月だけで異動者数全体の3割近くを占めている。一方、他の月では転入、転出が4,000人〜6,000人の幅で推移している。転入超過は、3月〜4月に集中し、全体の7割を占め、他の月では転出超過の期間もある。  区内で異動する人たち(転居者)は、毎月2,000人前後とほぼ一定で推移している。この転居の流れについて、これまで転居したことのある住民がどの地域からどの地域へと動いているのかについて、5地域別にまとめてみたい。 4.3 砧地域では区内外からの流入で人口が増えている  世田谷区の人口動態について、地域ごとにどのような違いが見られるのか分析する。図表は、地域別に区外からの転入超過(転入者数−転出者数)を枠外に、区内の人の動きとして、転居増減数を枠内に記載した。転居は区外からの人口の流入ではないため、区全体の社会増には関係ないが、地域ごとの人口増減には影響する。そして、転入超過と転居増減にともなう地域ごとの社会増減数を下図にまとめた。 図表 49 地域別の社会増減(1年間)  社会増が最も多い世田谷地域(1,311人の増加)では、転入超過で区外からの流入による人口増の割合が最も高いが、転居減となっている。着目すべきは、次に社会増が多い砧地域(1,127人の増加)で、転入超過・転居増ともに増えており、転居増が転入超過を上回っている唯一の地域となっている。 4.4 転居は同じ地域内が約7割 図表 50 地域別の転居状況  上図は、本区に住む過去に転居したことがある人がどの地域からどの地域へ転居したのかをまとめたものである。同地域内での「転居入」と「転居出」が差し引き0人となっている。この読み方としては、同じ地域内で転居した人が「転居入」と「転居出」の両方にカウントされ、差引きが0人となる。着目したいのは、転居が同じ地域内で行われることが全体の約7割を占めている点である。前述の転入・転出の傾向と同様に、転居も以前に住んでいたところから近い場所が転居先に選ばれていることが分かる。  その一方で、転居による社会増減は地域間で差がみられる。砧地域では、他の地域からの転居者が差引きでプラス(+8,400人)だが、世田谷地域は転居で出て行く人の方が多く、マイナス(−5,697人)となっている。 第5章 東京23区最大級の団地建替えのインパクト 5.1 大規模な団地建替え後に地区の人口が2倍に  世田谷区では、平成27年に東京23区でも最大級の大規模な団地の建替え(旧桜上水団地) が完了した。建替え前は、築50年近い団地17棟404戸だった建物が、建替え後には878戸のマンション9棟(地上6階建て〜14階建て)に生まれ変わった。この9棟は、もとの住民の居住部分に加え、新たに516戸が分譲された 。東京23区最大級ともいわれるこの大規模な建替えが、地区の人口構成にどのような影響をもたらしたのだろうか。 図表 51 大規模な団地建替えが行われた地区の人口推移 図表 52 大規模な団地建替えが行われた地区の世帯数推移  建替え前の地区(桜上水4丁目1番)の人口と世帯は、工期前と思われる平成21年を基準にすると、平成28年には両方とも2倍となった。1世帯当たり人員も2.05人(平成21年)から、2.24人(平成28年)となり、2人以上の世帯が流入していると考えられる。  続いて、この丁目(桜上水4丁目)の人口構成の変化を比較してみよう。 5.2 大規模団地建替え後は地区の年少人口が1.8倍に 図表 53 大規模な団地建替えが行われた地区の人口構成  大規模な団地建替えが行われた桜上水4丁目の人口構成は、大きく変化した。人口ピラミッドを見ると、年少人口が顕著に増え、30代と40代の厚みも増している。具体的には、年少人口が平成21年に258人だったのに対し、平成28年は466人となっており1.8倍になった。また、年少人口の人口全体に占める割合も10%から12.8%へと上昇、生産年齢人口比率と老年人口比率はともに1.7%ほど下げている。なお、生産年齢人口と老年人口も人数で見れば、それぞれ1.4倍と1.3倍に増えている。この大規模な団地建替えによって、建物だけでなく人口の観点からもこの地区が様変わりしたことが分かる。 5.3 近隣でも大規模マンションが人口構成を変化させている  ここまで大規模な団地の建替えの行われた地区における人口構成の変化を見てきたが、他でも同じことが起きているのだろうか。社会地図を使って大規模マンションが建ったと思われる地区を赤枠で囲み、人口の変化を俯瞰していこう。 図表 54 社会地図 大規模マンション完成前 0〜4歳人口 図表 55 社会地図 大規模マンション完成後 0〜4歳人口  上記のとおり、本区および近隣エリアでも大規模マンションの完成後に0〜4歳の人口が増え、子どもの多い地区へと変化している。次の図表56〜59は、大規模マンションが完成した地区の世帯数を示しており、図表60〜63は子育てしていると考えられる30〜40代の人口を並べている。見比べると、両者がともに増えていることが分かる。なお、ここでの大規模マンションの定義は、国勢調査における「共同住宅」の分類のうち「6階建〜10階建」と「11階建以上」とした。 図表 56 社会地図 大規模マンション完成前 共同住宅6階建〜10階建の世帯 図表 57 社会地図 大規模マンション完成後 共同住宅6階建〜10階建の世帯 図表 58 社会地図 大規模マンション完成前 共同住宅11階建以上の世帯 図表 59 社会地図 大規模マンション完成後 共同住宅11階建以上の世帯 図表 60 社会地図 大規模マンション完成前 35〜39歳 図表 61 社会地図 大規模マンション完成後 35〜39歳 図表 62 社会地図 大規模マンション完成前 40〜44歳 図表 63 社会地図 大規模マンション完成後 40〜44歳 発行 平成28年3月 広報印刷物登録番号 No.1357 編集・発行 せたがや自治政策研究所 (世田谷区政策経営部政策研究・調査課) 〒154-0021 東京都世田谷区豪徳寺2-28-3 電 話:03-3425-6124 FAX:03-3425-6895